JP2018135466A - 多孔質ポリアミドイミド被膜形成用ポリアミドイミド溶液 - Google Patents

多孔質ポリアミドイミド被膜形成用ポリアミドイミド溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】PAI溶液を用いて多孔質PAI被膜を形成するに際し、イオン透過性が高められたPAI被膜が形成可能なPAI溶液を提供する。【解決手段】溶媒Aと、テトラグライムおよび/またはトリグライムとからなる均一なポリアミドイミド溶液であって、下記の組成を有することを特徴とする、多孔質ポリアミドイミド被膜形成用ポリアミドイミド溶液。(1)ポリアミドイミドの固形分濃度が、2質量%以上、20質量%以下である。(2)アミド系溶媒比率が、溶媒質量に対し、18質量%未満、2質量%超である。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、リチウム二次電池、キャパシタ、コンデンサ等の蓄電素子電極を製造する際に有用な多孔質ポリアミドイミド(PAI)被膜形成用のPAI溶液に関する。
リチウム二次電池等の蓄電素子に用いられる電極において、過充電等により、熱暴走が起こった場合、電極表面の傷および/または凹凸が原因となって、電極に接しているセパレータの電気絶縁性が破壊され、電気的な内部短絡が発生することがある。
このような内部短絡を防止するため、多孔質構造の電極活物質層表面に、耐熱性を有するポリアミドイミド(PAI)等のポリイミド(PI)系溶液を塗布することにより、多孔質PI被膜を設ける方法が提案されている。このような方法において、多孔質PI被膜を設けた電極は、気孔中に電解液を充填してイオン伝導性を発現させることにより、蓄電素子電極として使用される。従い、これらの多孔質PI被膜は、高いイオン透過性を有することが必要である。例えば、特許文献1には、PI溶液を用い、被膜形成用の塗膜を活物質層表面に形成した後、その乾燥前に、貧溶剤を含む凝固浴に浸漬して塗膜の相分離を起こさせて多孔質被膜を形成させることが提案されている。また、特許文献2には、酸化鉄、シリカ、アルミナ等の微粒子をフィラとしてPI溶液等に配合した塗液を用い、多孔質膜とする方法が提案されている。しかしながら、これらの塗液を用いて得られる積層電極は、活物質層と多孔質被膜との接着性が低いため、短絡に対する防止効果は、必ずしも充分なものではなく、電池の安全性確保の観点から改善すべき点があった。また、このような電極は、活物質の体積変化にともなう応力緩和も充分ではなく、したがって電極のサイクル特性の改善は必ずしも充分ではなかった。また、水やアルコール等の貧溶媒を含む凝固浴を用いて相分離を起こさせる方法で得られる積層電極は、活物質層全体が凝固浴と接するので、その貧溶媒が活物質層本来の特性を損なうことがあった。さらに、この方法については、凝固浴から貧溶媒を含む廃液が発生するので、環境適合性の観点から、製造方法としても問題があった。
これらの問題点を解決する方法として、特許文献3には、PAIに対する貧溶媒を含むPAI溶液を用い、これを電極活物質層表面に塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥する際に、塗膜中で相分離を起こさせて多孔質PAI被膜を得る方法が記載されており、「PAI溶液中の貧溶媒比率としては、溶媒質量に対し、60〜80質量%であることがより好ましい」と記載されている。また、特許文献4には、多孔質PAIフィルムが形成可能なPAI溶液が開示されている。さらに特許文献5には、PAIを含む特定の溶液を用い、多孔質ポリオレフィンからなる多孔質層の表面に、多孔質PAI層を形成させる方法が記載されており、「PAI溶液中のアミド系溶媒比率としては、溶媒質量に対し、20〜40質量%とすることがより好ましい」と記載されている。
しかしながら、特許文献3〜5に記載されたPAI溶液を、蓄電素子電極に適応した場合には、得られる多孔質PAI被膜は、被膜表面の電解液浸透性を充分に確保できないことがあった。また、電極活物質層との界面における密着性が強くなり過ぎることがあった。 そのため、PAI被膜のイオン透過性が充分に高くならないことがあった。
特開平11−185731号公報 特開2011−233349号公報 国際公開2014/106954号 国際公開2015/108114号 国際公開2015/156261号
そこで本発明は、前記課題を解決するものであって、電極活物質層との界面における密着性を確保しつつ、イオン透過性がより高められたPAI被膜が形成できるPAI溶液の提供を目的とする。
蓄電素子電極上にPAI溶液を塗布後、乾燥することにより相分離現象を誘起せしめPAIを多孔質化するに際し、溶液組成を特定のものとしたPAI溶液を用いることにより、意外にも前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は下記を趣旨とするものである。
アミド系溶媒(以下「溶媒A」と略記することがある)と、テトラグライムおよび/またはトリグライム(以下「溶媒B」と略記することがある)とからなる均一なPAI溶液であって、下記の組成を有することを特徴とする、蓄電素子電極への多孔質PAI被膜形成用PAI溶液。
(1)PAIの固形分濃度が、2質量%以上、20質量%以下である。
(2)溶媒A比率が、溶媒質量に対し、18質量%未満、2質量%超である。
蓄電素子電極上に形成された本発明の溶液から得られる多孔質PAI被膜は、イオン透過性に優れるので、安全性に優れた蓄電素子電極に適用される被膜として好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のPAI被膜形成方法においては、均一なPAI溶液を用いる。
PAIは、主鎖にイミド結合とアミド結合の両方を有する耐熱性高分子であり、例えば、原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネートとの重合反応を行うことにより得ることができる。
トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物(TMA)が好ましい。ここで、トリカルボン酸無水物の一部が、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物に置換されたものを用いてもよい。また、トリカルボン酸無水物の一部が、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸に置換されたものを用いてもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルー4,4′−ジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートが用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、MDIが好ましい。
本発明のPAI溶液は、例えば、原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネートとを略等モルで配合し、これを、アミド系溶媒と、テトラグライムおよび/またはトリグライムとからなる混合溶媒中で、150℃〜200℃で、重合反応することにより得られる。このようにして得られるPAI溶液は、均一な溶液である。
ここで、均一な溶液とは、可視光線に対して透明な溶液をいう。このような均一溶液を用いることにより、塗膜乾燥時に均一な相分離現象が誘起される。従い、例えば、特開2007−269575号公報に開示されたような、ミクロ相分離した、不均一なPAI溶液は好ましくない。
本発明のPAI溶液においては、PAI固形分濃度は2質量%以上、20質量%以下とすることが必要であり、5質量%以上、18質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明のPAI溶液においては、溶媒A比率が、溶媒質量に対し、18質量%未満、2質量%超であることが必要であり、18質量%未満、5質量%超とすることが好ましく、18質量%未満、10質量%超とすることがより好ましい。
ここで、溶媒Aの具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を挙げることができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のPAI溶液においては、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、テトラグライムまたはトリグライム以外のエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも一種(以下「溶媒C」と略記することがある)を、溶媒Bに配合することが、イオン透過性を高めることが好ましい。ここで、溶媒Cの具体例としては、以下の溶媒を挙げることができる。すなわち、ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エステル系溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトン等を挙げることができる。炭化水素系溶媒の具体例としては、n―ヘキサン、シクロヘキサン、n―ヘプタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン(o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン)等を挙げることができる。テトラグライムまたはトリグライム以外のエーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グライム、ジオキサン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒Bと溶媒Cとの混合比率としては、90:10〜40:60(質量比)とすることが好ましい。
上記のように、溶液組成として、固形分濃度を規定した上で、溶媒A比率を規定することにより、多孔質PAI被膜とした際に、電極活物質層との界面における密着性を確保しつつ良好なイオン透過性を得ることができる。
本発明のPAI溶液には、フィラを配合することができる。このフィラの種類に制限は無く、有機フィラ、無機フィラおよびその混合物等を用いることができる。有機フィラの具体例としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独または2種類以上の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂等の重合体からなる粉体を挙げることができる。有機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。無機フィラとしては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉体を挙げることができる。具体例としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる粉体を挙げることができる。無機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。これらの無機フィラの中でも、化学的安定性の観点から、アルミナ粉体が好ましい。
フィラの形状に制限はなく、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状等の粒子を用いることができ、略球状粒子が好ましい。略球状粒子のアスペクト比(粒子の長径/粒子の短径)は1以上、1.5以下とすることが好ましい。
フィラの平均粒子径に制限はないが、0.01μm以上、2μm以下であることが好ましい。平均粒子径はレーザ回折散乱法に基づく測定装置により測定することができる。
フィラは、その表面が、界面活性剤やシランカップラのような表面処理剤で処理されていてもよい。
フィラ配合量に制限はないが、通常、PAI固形分に対し、10〜1000質量%であり、50〜600質量%とすることが好ましい。
本発明のPAI溶液には、必要に応じて、各種界面活性剤や有機シランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、PAI以外の他のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
前記のようにして得られたPAI溶液(均一なPAI溶液またはフィラを配合した前記PAI溶液のことであり、以下「PAI塗液」と略記することがある)、を、蓄電素子電極上に塗布後、乾燥することにより相分離現象を誘起せしめ、蓄電素子電極に積層一体化された多孔質PAI被膜を形成させることができる。
蓄電素子電極としては、リチウム二次電池用の電極を好適に用いることができる。ここで、リチウム二次電池用電極とは、リチウムイオン二次電池を構成する電極であって、正極活物質層が正極集電体に接合された正極、もしくは、負極活物質層が負極集電体に接合された負極を言う。電極活物質層は、正極活物質層と負極活物質層の総称である。
正極または負極の集電体としては、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔、アルミ箔等の金属箔を使用することができる。正極活物質層は、正極活物質粒子を樹脂バインダで結着して得られる層である。正極活物質粒子として用いられる材料としては、リチウムイオンを吸蔵保存できるものが好ましく、リチウム二次電池の正極活物質として一般に用いられるものを挙げることができる。例えば、酸化物系(LiCoO、LiNiO、LiMn等)、リン酸鉄系(LiFePO、LiFePOF等)、高分子化合物系(ポリアニリン、ポリチオフェン等)等の活物質粒子を挙げることができる。正極活物質層には、その内部抵抗を低下させるため、カーボン(黒鉛、カーボンブラック等)粒子や金属(銀、銅、ニッケル等)粒子等の導電性粒子が、1〜30質量%程度配合されていてもよい。 負極活物質層は、負極活物質粒子を樹脂バインダで結着して得られる層である。負極活物質粒子として用いられる材料としては、リチウムイオンを吸蔵保存できるものが好ましく、リチウム二次電池の負極活物質として一般に用いられるものを挙げることができ、例えばグラファイト、アモルファスカーボン、シリコン系、錫系等の活物質粒子を挙げることができる。負極活物質層には、その内部抵抗を低下させるため、カーボン(黒鉛、カーボンブラック等)粒子や金属(銀、銅、ニッケル等)粒子等の導電性粒子が、1〜30質量%程度配合されていてもよい。
電極活物質層の気孔率は、通常、正極、負極いずれも10〜50体積%である。また、電極活物質層の厚みは、通常20〜200μm程度である。また、活物質粒子を結着させるための樹脂バインダの具体例としてはポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、イミド系高分子等を挙げることができる。
PAI塗液を、電極活物質層上に、塗布後、塗膜を100℃〜200℃で乾燥することにより、多孔質PAI被膜を形成させることができる。乾燥の際、PAI溶液中のテトラグライムまたはトリグライム(PAIに対する貧溶媒)の作用で、塗膜内で相分離が起こり、多孔質PAI被膜となる。乾燥の際は、水分を含まない、窒素または空気雰囲気下で行うことが、被膜における均一な多孔質構造を形成させる観点から好ましい。 従い、例えば特許文献1に記載されたような、多湿雰囲気下での乾燥は好ましくない。 多湿雰囲気下での乾燥は、PAIの加水分解を誘起する虞もあり、この観点からも好ましくない。
ここで、必要に応じ、得られたPAI多孔質層の表面に、サンドブラスト処理やスクラッチブラスト処理等の物理的な研磨処理、もしくは化学的なエッチング処理を行うことができる。これにより、多孔質PAI被膜の表面開孔率が上昇するので、多孔質PAI被膜のイオン透過性をより高めることができる。
多孔質PAI被膜の気孔率は、30〜90体積%とすることが好ましい。ここで、気孔率は、多孔質PAI被膜の見掛け密度と、PAIの真密度(比重)とから算出される値である。詳細には、気孔率(体積%)は、多孔質PAI被膜の見掛け密度がA(g/cm)、PAIの真密度がB(g/cm)の場合、次式により算出される。
気孔率(体積%) = 100−A*(100/B)
気孔率をこのように設定することにより、良好なイオン透過性が確保される。イオン透過性の良否は、電池を構成する電解液用の溶媒を電極表面に滴下した際の、その溶媒の浸透時間から判定することができる。その判定方法の詳細は後述する。本発明の電極においては、この浸透時間が100秒以下であることが好ましく、70秒以下であることがより好ましい。なお、活物質層上に形成される多孔質PAI被膜の厚さは、通常1〜100μmである。
PAI塗液を蓄電素子電極活物質上に塗布するに際しては、ロールツーロールにより連続的に塗布する方法、枚様で塗布する方法が採用でき、いずれの方法でもよい。塗布装置としては、ダイコータ、多層ダイコータ、グラビアコータ、コンマコータ、リバースロールコータ、ドクタブレードコータ等が使用できる。
以上述べた如く、本発明の溶液を用いることにより、蓄電素子電極上に、電極活物質層との界面における密着性を確保しつつイオン透過性が良好な多孔質PAI被膜を、簡単なプロセスで容易に形成させることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例で使用した、集電体上に形成された電極活物質層を以下のようにして得た。すなわち、正極活物質であるLiFePO粒子(平均粒径0.5μm)88質量部と、導電助剤のカーボンブラック(アセチレンブラック)7質量部と、バインダ樹脂であるポリフッ化ビニリデン5質量部とを、溶媒としてのN−メチルピロリドン中に均一に分散して、正極用活物質分散体を得た。この分散体を正極集電体である厚さ15μmのアルミ箔に塗布し、得られた塗膜を130℃で10分乾燥後、熱プレスして、気孔率が39体積%の正極活物質層を得た。
下記の実施例及び比較例において得られた電極のイオン透過性を、以下の方法で評価した。すなわち、多孔質PAI被膜表面にエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1:1)であって30℃に設定されたもの3μLを滴下し、これが完全に浸透することを目視で観測してその浸透時間を測定し、この浸透時間によってイオン透過性を評価した。
<実施例1>
等モルのTMAとDMIとを、NMP20質量部とテトラグライム60質量部とからなる混合溶媒中で重合して、PAI固形分濃度が20質量%であるPAI溶液(S−1)を得た。このPAIのDSCによるガラス転移温度は280℃であり、GPCによる重量平均分子量(Mw)は、68900であった。S−1に、テトラグライム40質量部を添加し、PAI固形分濃度を14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率を16.7質量%とした均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を前記正極活物質層の外表面に塗布し、乾燥空気中、150℃で10分乾燥することにより、厚みが18μm、気孔率が64体積%のPAI多孔質被膜(A−1)を形成させた。A−1の浸透時間を測定したところ、46秒であった。
<実施例2>
S−1に添加する溶媒を、「トリグライム40質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI固形分濃度が14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率が16.7質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(A−2 厚み:20μm 気孔率:62体積%)を形成させた。A−2の浸透時間を測定したところ、51秒であった。
<実施例3>
S−1に添加する溶媒を、「テトラグライム100質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI固形分濃度が10.0質量%、溶媒質量に対するNMP比率が11.1質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(A−3 厚み:16μm 気孔率:58体積%)を形成させた。A−3の浸透時間を測定したところ、47秒であった。
<実施例4>
S−1に添加する溶媒を、「グライム40質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI固形分濃度が14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率が16.7質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(A−4 厚み:17μm 気孔率:61体積%)を形成させた。A−4の浸透時間を測定したところ、35秒であった。
<実施例5>
S−1に添加する溶媒を、「MEK40質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI固形分濃度が14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率が16.7質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(A−5 厚み:18μm 気孔率:59体積%)を形成させた。A−5の浸透時間を測定したところ、31秒であった。
<実施例6>
S−1に添加する溶媒を、「THF40質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI固形分濃度が14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率が16.7質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(A−6 厚み:16μm 気孔率:63体積%)を形成させた。A−6の浸透時間を測定したところ、39秒であった。
<比較例1>
PAI重合溶媒を、「NMP25質量部と、テトラグライム55質量部とからなる混合溶媒」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI固形分濃度が14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率が20.8質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(B−1 厚み:16μm 気孔率:54体積%)を形成させた。B−1の浸透時間を測定したところ、124秒であった。
<比較例2>
S−1を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(B−2 厚み:21μm 気孔率:58体積%)を形成させた。B−2の浸透時間を測定したところ、165秒であった。
<比較例3>
重合溶媒を「NMPのみ」として得た、PAI固形分濃度が20質量%であるPAI溶液に、NMP20質量部とテトラグライム20質量部を添加し、PAI固形分濃度が14.3質量%、溶媒質量に対するNMP比率が83.3質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、前記正極活物質層上に多孔質PAI被膜(B−3 厚み:14μm 気孔率:1体積%未満)を形成させた。B−3には前記混合溶媒が全く浸透しなかった。
<比較例4>
重合溶媒を「テトラグライムのみ」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI溶液を得ようとしたが、均一なPAI溶液を得ることはできなかった。
実施例、比較例で示した様に、本発明の溶液組成としたPAI溶液を用いることにより、イオン透過性が向上した多孔質PAI被膜を、電極活物質層上に形成できることが判る。
本発明の溶液を用いて形成される多孔質PAI被膜は、イオン透過性に優れるので、例えば、リチウム二次電池、キャパシタ、コンデンサ等の蓄電素子電極製造の際に有用である。

Claims (1)

  1. アミド系溶媒と、テトラグライムおよび/またはトリグライムとからなる均一なポリアミドイミド溶液であって、下記の組成を有することを特徴とする、蓄電素子電極への多孔質ポリアミドイミド被膜形成用ポリアミドイミド溶液。
    (1)ポリアミドイミドの固形分濃度が、2質量%以上、20質量%以下である。
    (2)アミド系溶媒比率が、溶媒質量に対し、18質量%未満、2質量%超である。
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