JP2016178246A - 固体電解コンデンサ用セパレーター、固体電解コンデンサ、固体電解コンデンサ用セパレーターの製造方法 - Google Patents
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Description
一般に、固体電解コンデンサは、使用温度範囲が広く、小型で、等価直列抵抗(以下、「ESR特性」という。)が低く、耐リプル電流が高いという特徴を有している。そのため、高速度応答性や高リプル電流が求められる機器に適している。一方、固体電解コンデンサは、電解液を使用する従来の電解コンデンサに比べて、誘電体皮膜の修復性に乏しいこと等から、例えば、35v以上といった高耐電圧性能の実現が難しかった。そのため固体電解コンデンサは回路部品として使用機器が限定されている。このような背景において、電機・電子機器の小型化や高性能化実現に向けて、固体電解コンデンサの低ESR特性を維持しながら高耐電圧化することが大きな課題となっている。
固体電解コンデンサの高耐電圧化を実現するには、所用部材、特に導電性高分子を担うセパレーターの高耐電圧化が重要である。セパレーターの耐電圧性能を向上させるには、セパレーターをより緻密にする必要がある。セパレーターの緻密性に影響する因子としては、セパレーターの密度が挙げられ、一般に、密度を増加させればセパレーターは緻密になると考えられる。しかし、セパレーターの密度の増加はコンデンサのESR特性の悪化を招きかねない。固体電解コンデンサの耐電圧向上の目的に適するセパレーターは、高い耐電圧性能と低いESR特性を同時に満足しなければならないので、セパレーターには緻密性と多孔性とが要求される。
セパレーターの緻密性と多孔性とを同時に実現するためには、超極細繊維の使用が有効な手段とされている。しかしながら、単に超極細繊維を配合するだけでは、セパレーターの耐電圧性問題を解決することはできない。超極細繊維の配合率を高くするとセパレーターの機械的強度が低下したりするおそれがある。これによって、コンデンサ製造工程において、作業性が悪くなったり、ショート率が増加する一因ともなる。
また、上記課題を解決する固体電解コンデンサ用セパレーターの製造方法は、前記海島構造を有する合成繊維を脱海処理し、得られたバンドル状繊維に解繊処理と叩解処理の少なくともいずれか一方を行って平均繊維径が100nm以上且つ300nm以下である超極細繊維の第1の繊維を作製し、該超極細繊維の第1の繊維が全繊維に対して5質量%以上且つ65質量%以下の割合で含有されるように他の繊維を配合し、湿式抄造することを特徴とする。
図1は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡(型式JTB−4600F型SEM)を用いて倍率250倍で撮影した本発明の固体電解コンデンサ用セパレーター10の電子顕微鏡写真である。図1において、超極細繊維の第1の繊維11は、全繊維に対して30質量%の割合で含有されている。
本実施形態の固体電解コンデンサ用セパレーター10は、平均繊維径が100nm以上且つ300nm以下である超極細繊維の第1の繊維11の割合が全繊維に対して5質量%以上且つ65質量%以下となるように他の繊維を配合した後、湿式抄造することにより製造することができる。
本実施形態の固体電解コンデンサ用セパレーター10は、空孔率が65%以上であり、且つ、平均細孔径が15μm以下であることにより、緻密性と多孔性を兼ね備える。そのため、固体電解質をセパレーター10の内部に均一に分散させて且つ大量に保持することができ、良好なESR特性を実現し、維持する上に、セパレーターの緻密性が高まり、セパレーター内部でのショートを抑制させ、耐電圧性を向上できる。
・上記実施形態において、超極細繊維の第1の繊維11、第2の繊維以外に、超極細繊維の第1の繊維11、第2の繊維とは平均繊維径が異なる第3の繊維を含有していてもよい。
(実施例1)
まず、海島構造を有する合成繊維として、東レ株式会社製のナノファイバーを用いた。該ナノファイバーは、島成分にナイロンを含有し、海成分にポリ乳酸を含有している。このナノファイバーを、繊維長が約1mmとなるように裁断した後に、アルカリ浴液に含浸して脱海処理し、島成分のみとなったバンドル状繊維を作製した。作製したバンドル状繊維を濃度が1質量%になるように水に分散させ、ディスクリファイナーにより0.3gのカナダ変法ろ水度が200mlになるように解繊処理と叩解処理とを行った。0.3gのカナダ変法ろ水度とは、試料重量を0.3gとした以外は、JIS P8121のカナダ標準形ろ水度試験に準拠して測定した値を意味する。
また、バインダーとして、平均繊維径が13μm、長さが5mmのクラレ株式会社製の芯鞘複合繊維(商品名:ソフィット)(登録商標)を用いた。そして、超極細繊維の第1の繊維11、上記ポリエステル繊維、及び、上記芯鞘複合繊維の質量比率が、5:47.5:47.5となるように配合し、水に分散させてスラリーを作製した。
まず陽極箔と陰極箔とをセパレーターを介して巻回し、コンデンサ素子を作製した。次に、作製したコンデンサ素子を化成液に浸漬し、修復化成を行った。そして、固体電解質層を形成するため、このコンデンサ素子をモノマー3,4−エチレジオキシチオフェンと酸化剤p−トルエンスルホン酸第二鉄を所定量含有する混合液に浸漬し、重合反応を進行させ、固体電解質層を形成した。この素子を乾燥した後、ケースに挿入し、開口部をゴム封口して、定格電圧100v、定格静電容量47μF、φ10mm×12mmLの固体電解コンデンサを作製した。
超極細繊維の第1の繊維11、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、10:45:45としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
超極細繊維の第1の繊維11、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、30:35:35としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
超極細繊維の第1の繊維11、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、50:25:25としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
超極細繊維の第1の繊維11、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、65:17.5:17.5としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
ポリエステル繊維に加えて、帝人株式会社製のアラミドパルプ(商品名:トワロン)(登録商標)を叩解処理したものを用いた。叩解処理したアラミドパルプは、平均繊維径が800nmであった。そして、超極細繊維の第1の繊維11、上記アラミドパルプ、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、15:15:35:35としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
超極細繊維の第1の繊維11を用いず、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、50:50としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
超極細繊維の第1の繊維11、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、70:15:15としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。
超極細繊維の第1の繊維11に代えて、平均繊維径が20μmである繊維(以下、「繊維A」という。)を用い、繊維A、ポリエステル繊維、及び、芯鞘複合繊維の質量比率を、50:25:25としたこと以外は、実施例1と同じ条件で固体電解コンデンサ用セパレーター10を作製した。繊維Aは、実施例1の海島構造を有する合成繊維を脱海処理し、解繊・叩解処理を行わなかった繊維である。
(耐電圧)
上記実施例に記載した方法でA4サイズの大きさを有するセパレーターを2枚作製し、1枚当たりの厚さE(単位:mm)を測定した。このセパレーターを抄紙方向に折りたたんで5枚重ねとし、折りたたんだセパレーターの抄紙方向と垂直な方向に等間隔に10箇所の厚さを測定し、平均厚さD(単位:mm)を測定した。その後、岐阜愛知電機株式会社製の試験用変圧機(型式PSIT―CS)に5枚重ねの試験片を挟んで電圧をかけ、高村電機株式会社製の絶縁破壊試験機(型式PSIT−TC)を用いて、セパレーターの絶縁破壊電圧C(単位:kv)を測定した。そして、耐電圧(V)=C(kv)/D(mm)×E(mm)×1000より、耐電圧を求めた。
上記各実施例及び比較例で作製したセパレーターを用い、定格静電容量47μF、定格電圧100v、サイズφ10mm×12mmLの固体電解コンデンサを各160個作製した。そして、横河・ヒューレットパッカード株式会社製のプレシジョンLCRメーター(型式HP4284A)を用いて、25℃、100kHzでの等価直列抵抗値を測定した。
上記のように作製した固体電解コンデンサの個々のショートの有無を測定し、ショート不良が発生した割合をショート不良率とした。
JISP8113紙及び板紙―引張特性試験方法により測定した。
(保液率)
上記実施例に記載した方法で作製したセパレーターから、縦5cm、横5cmの試験片を切り取り、電子天秤で重量A(単位:g)を測定した。次に、23℃で粘度を10mPa・Sに調整したグリセリンとメタノールの混合液中に上記試験片を30分間浸漬した。30分後に試験片を取り出し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下、30秒間自然落下により上記混合液を切った後、電子天秤で重量B(単位:g)を測定した。そして、保液率(%)=(B−A)/A×100より、保液率を求めた。
上記実施例に記載した方法で作製したセパレーターから、縦5cm、横5cmの試験片を切り取り、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で24時間調湿した後、試験片の重量と厚さを測定した。その後、測定液のプロピレングリコールに1分間含浸させた後、試験片の表面に付着した余分なプロピレングリコールをろ紙で吸収して除去し、再度重量を測定した。そして、空孔率(%)=100×[吸液後の試験片重量(g)―吸液前の試験片重量(g)]/プロピレングリコールの密度(g/cm3)×5(cm)×5(cm)×厚さ(cm)より、空孔率を求めた。
PMI社製の細孔径分布測定器(型式ASTMF316−86)を用いて、バブルポイント試験方法により測定した。
JISP8118:1998紙及び板紙―厚さと密度の試験方法により測定した。
Claims (6)
- 海島構造を有する合成繊維を脱海処理して得られたバンドル状繊維に、解繊処理と叩解処理の少なくともいずれか一方を行って得られる平均繊維径が100nm以上且つ300nm以下である超極細繊維の第1の繊維が、全繊維に対して5質量%以上且つ65質量%以下の割合で含有されており、空孔率が65%以上であり、平均細孔径が15μm以下であり、引張強度が8N/15mm以上であることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレーター。
- 前記超極細繊維の第1の繊維に加えて、平均繊維径が3μm以上且つ25μm以下である第2の繊維を含有していることを特徴とする請求項1に記載された固体電解コンデンサ用セパレーター。
- 前記第2の繊維として、天然繊維、ポリエステル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アラミド繊維の群から選ばれる1または2以上の繊維を含有していることを特徴とする請求項2に記載された固体電解コンデンサ用セパレーター。
- 前記超極細繊維の第1の繊維に加えて、バインダー繊維を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載された固体電解コンデンサ用セパレーター。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載された固体電解コンデンサ用セパレーターを用いたことを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載された固体電解コンデンサ用セパレーターの製造方法であって、
前記海島構造を有する合成繊維を脱海処理し、得られたバンドル状繊維に解繊処理と叩解処理の少なくともいずれか一方を行って平均繊維径が100nm以上且つ300nm以下である超極細繊維の第1の繊維を作製し、該超極細繊維の第1の繊維が全繊維に対して5質量%以上且つ65質量%以下の割合で含有されるように他の繊維を配合し、湿式抄造することを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレーターの製造方法。
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