JP5520123B2 - 固体電解コンデンサ用セパレータ及びそれを用いた固体電解コンデンサ - Google Patents

固体電解コンデンサ用セパレータ及びそれを用いた固体電解コンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、固体電解コンデンサ用セパレータ及び固体電解コンデンサに関する。
導電性高分子を用いる固体電解コンデンサ用セパレータとして、ビニロン繊維のみからなるセパレータ、ビニロン繊維を主体とする合繊セパレータ(例えば、特許文献1参照)が開示されている。また、ポリエステル樹脂を含有する湿式不織布からなるセパレータを用いた固体電解コンデンサも開示されている(例えば、特許文献2参照)。これらのセパレータは、繊維間の隙間が大きく、緻密性に欠けるため、セパレータ内部における導電性高分子の担持性が不十分で、固体電解コンデンサの静電容量が小さくなる、ESRのばらつきが大きくなる等の問題と、電極のバリがセパレータを貫通しやすく、ショート不良率が高くなる問題があった。また、ビニロン繊維が皮膜を形成するため、導電性高分子の導通が悪くなり、ESRが高くなる問題があった。担持性が不十分とは、セパレータ中の導電性高分子の充填量が不十分なことを意味する。
固体電解コンデンサ用セパレータとして最も一般的に使用されているのは、エスパルトや麻パルプなどのセルロース繊維100%からなる紙セパレータである。紙セパレータは、導電性高分子を重合する際に用いる酸化剤と反応し、導電性高分子の重合を阻害してしまうという欠点がある。重合を阻害しないように、紙セパレータには予め炭化処理が施される。炭化処理は一般的に280℃以上の温度で行われることが多い。そのため、固体電解コンデンサの製造工程が煩雑になる、炭化処理によって紙セパレータが脆くなり、崩れやすくなる、電極のバリがセパレータを貫通しやすくなり、ショート不良率が高くなる、リード線や封止材などのコンデンサ部品が劣化する等の問題があった。
また、フィブリル化アクリル繊維を含有させた固体電解コンデンサ用セパレータも開示されている(例えば、特許文献3参照)。このフィブリル化アクリル繊維を含有させたセパレータは、フィブリル化アクリル繊維の配合量が少ない場合には、繊維間の隙間が大きすぎるために、セパレータ内部における導電性高分子の担持性が不十分で、固体電解コンデンサの静電容量が小さくなる、ESRのばらつきが大きくなる等の問題と、電極のバリがセパレータを貫通しやすく、ショート不良率が高くなる問題があった。反対に、フィブリル化アクリル繊維の配合量が多い場合には、フィブリルの存在により、導電性高分子の導通が悪くなり、ESRが高くなる問題があった。
ポリアミド繊維を主体繊維とするセパレータを具備した電解コンデンサが開示されている(例えば、特許文献4参照)。ポリアミド繊維を主体繊維とするセパレータは、隙間が大きすぎるために、セパレータ内部における導電性高分子の担持性が不十分で、固体電解コンデンサの静電容量が小さくなる、ESRのばらつきが大きくなる等の問題、電極のバリがセパレータを貫通しやすく、ショート不良率が高くなる問題があった。また、湿熱融着樹脂を含有する場合には、該樹脂が皮膜を形成するため、導電性高分子の導通が悪くなり、ESRが高くなる問題があった。
本発明者らは、アクリル短繊維とフィブリル化セルロースとを含有するセパレータ(例えば特許文献5参照)、セルロース繊維、フィブリル状耐熱性繊維、アクリル短繊維を必須成分とするセパレータ(例えば、特許文献6参照)、フィブリル化セルロース、非フィブリル化繊維、軟化点、融点、熱分解温度の何れもが250℃以上、700℃以下のフィブリル化耐熱性繊維を含有する湿式不織布からなり、該湿式不織布を250℃で50時間熱処理したときのMD(マシンディレクション)とCD(MDに対して直角の方向)の寸法変化率が何れも−3%〜+1%であることを特徴とする電気化学素子用セパレータ(例えば、特許文献7参照)を開示している。これらのセパレータは何れもセルロース繊維の種類と濾水度が最適化されていなかったため、導電性高分子の担持性が不十分な場合があり、静電容量やESRに改善の余地があった。特許文献6及び7のセパレータは、炭化温度を低くすることができていなかった。
さらに、特許文献1〜7のセパレータは、何れもセパレータ表面が滑りやすく、腰がないため、例えば3mm程度以下の巾にスリットして、レコード巻きといわれる同一位置で同心状に巻き取るロールに仕上げた場合、取り扱い時に巻き崩れが起きるという問題があった。
特許第3319501号公報 特許第3606137号公報 特開2006−344742号公報 特開2002−198263号公報 特開2009−59730号公報 特開2009−141047号公報 国際公開第2005/101432号パンフレット
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、レコード巻きの巻き崩れが起きず、炭化温度を低くでき、導電性高分子の担持性に優れる固体電解コンデンサ用セパレータ及びショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さい固体電解コンデンサを提供することである。
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定範囲の変法濾水度を有する溶剤紡糸セルロース繊維と合成短繊維とを必須成分として含有し、特定範囲の空孔率を有する湿式不織布からなる固体電解コンデンサ用セパレータが、レコード巻きの巻き崩れが起きず、炭化温度を低くでき、導電性高分子の担持性に優れること、該セパレータを具備した固体電解コンデンサはショート不良率とESRが低く優れ、ESRのばらつきが小さいことを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、合成短繊維と、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維とを必須成分として含有してなり、セパレータ中の合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維の合計含有率が40〜100質量%であり、合成短繊維、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維以外の繊維が、溶剤紡糸セルロースや再生セルロースの短繊維、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、変法濾水度250ml超の溶剤紡糸セルロース繊維、無機繊維から選ばれる繊維であり、皮膜を含有せず、空孔率が60.0〜86.0%である湿式不織布からなることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータである。
本発明は、本発明の固体電解コンデンサ用セパレータを具備してなる固体電解コンデンサである。
本発明の固体電解コンデンサ用セパレータは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維と合成短繊維とを必須成分として含有してなり、皮膜を含有せず、空孔率が60.0〜86.0%である湿式不織布からなるため、セパレータの空孔が均一に形成され、適度な緻密性を有し、モノマー溶液や重合溶液がセパレータ中に偏ることなく満遍なく含浸されるため、導電性高分子の担持性に優れ、導電性高分子を均一に十分な量で形成させることができる。また、導電性高分子を重合した後のセパレータの強度も強く、破れにくい。そのため、該セパレータを具備してなる固体電解コンデンサはショート不良率とESRとが低く、ESRのばらつきが小さく、優れている。本発明の固体電解コンデンサ用セパレータは、合成短繊維を含有するため、炭化温度を低くでき、溶剤紡糸セルロース繊維を含有するため、表面が滑りにくく、静電気を帯びにくいため、レコード巻きの巻き崩れが起きない。
本発明の実施例3で作製したセパレータの表面の電子顕微鏡写真(500倍率)である。 本発明の比較例11で作製したセパレータの表面の電子顕微鏡写真(100倍率)である。
本発明において、「セパレータ」と表記する場合は、固体電解コンデンサ用セパレータを意味する。本発明における皮膜とは、繊維形状ではなく、平面的に不定形に形成された膜で、貫通孔のない部分の面積が少なくとも2500μm以上である膜を指す。
本発明における合成短繊維は、繊維長0.5〜10mmのものが用いられ、1〜6mmが好ましく用いられる。繊維長が0.5mm未満だと、セパレータから脱落しやすくなる場合があり、10mmより長いと繊維同士がよれて、地合や厚みが不均一になる場合がある。合成短繊維の繊度は0.001〜1.7dtexが好ましく、0.05〜1.1dtexがより好ましい。0.001dtex未満では繊維自身の強度が弱く、セパレータが破断しやすくなる場合がある。1.7dtexより太くなると、セパレータの厚みを薄くしにくくなる場合がある。本発明における合成短繊維としては、ポリエステル類、アクリル類、ポリアミド類の樹脂を紡糸して得られる短繊維が挙げられる。
ポリエステル類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレートなどが挙げられる。アクリル類としては、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものが挙げられる。ポリアミド類としては、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドが挙げられる。ポリエステル類とアクリル類からなる合成短繊維は、低ESRが得られる傾向がある。全芳香族ポリアミドからなる合成短繊維は、セパレータの耐熱性を向上させ、炭化処理を不要にできる場合がある。
本発明における変法濾水度とは、JIS P8121のカナダ標準濾水度の測定方法に規定されているふるい板の代わりに80メッシュの金網を用い、試料濃度を0.1%にして測定した濾水度である。80メッシュの線径は直径0.14mmで、目開き0.18mmの金網(PULP AND PAPER RESEARCH INSTITUTE OF CANADA製)を使用した。変法濾水度を用いる理由は、溶剤紡糸セルロース繊維を微細化していき、ある程度繊維長が短くなると、JIS P8121に規定されているふるい板を溶剤紡糸セルロース繊維自体がすり抜けてしまい、正確なカナダ標準濾水度が計測されないからである。
変法濾水度が0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維は、繊維径が細く、均一性が高いため、セパレータの孔径が比較的均一に形成され、セパレータ中でのモノマー溶液や重合溶液の偏りを防ぐことができ、導電性高分子がセパレータ上に満遍なく形成される。本発明の溶剤紡糸セルロース繊維は、変法濾水度が0〜200mlであることがより好ましく、0〜160mlであることがさらに好ましい。変法濾水度が250mlを超える場合は、微細化処理が不十分で、繊維の分割が十分に進まず、元の太い繊維径のまま残る割合が多くなるため、セパレータに大きな貫通孔ができ、導電性高分子を形成した後でも電極箔のエッジ部分のバリが貫通しやすくなり、ショート不良率が高くなる。
変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を得るには、溶剤紡糸セルロースの短繊維を適度な濃度で水などに分散させ、これをリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、高圧ホモジナイザーなどに通して、刃の形状、試料濃度、流量、処理回数、処理速度などの条件を調節して微細化処理すれば良い。
本発明における変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は0.2〜3.0mmが好ましく、0.2〜2.0mmがより好ましい。0.2mm未満だと、繊維長が短すぎて、セパレータから脱落しやすくなる場合がある。3.0mm超では、微細化が不十分で、太い繊維径の割合が多くなり、セパレータに大きな貫通孔が開きやすくなる場合や、繊維のよれが生じ、地合と厚みのばらつきが生じ、ESRのばらつきが大きくなる場合がある。本発明における溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、繊維にレーザー光を当てて得られる偏向特性を利用して求める市販の繊維長測定器を用いて測定することができる。
本発明のセパレータ中の合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維の合計含有率は、40〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましい。40質量%未満だと、導電性高分子の含浸性が不十分になる場合や、該セパレータを具備した固体電解コンデンサのESRが高くなる場合やESRのばらつきが大きくなる場合がある。本発明のセパレータ中の合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維の質量比率は、1:9〜9:1が好ましく、1:5〜5:1がより好ましい。合成短繊維の比率が1:9より少ないと、セパレータの炭化温度を十分低くできなくなる場合があり、9:1より多いと、レコード巻きの巻き崩れが生じる場合やESRが高くなる場合がある。
本発明のセパレータは、合成短繊維、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、溶剤紡糸セルロースや再生セルロースの短繊維、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、変法濾水度250ml超の溶剤紡糸セルロース繊維、ガラス、アルミナ、シリカ、ロックウールなどからなる無機繊維などである。溶剤紡糸セルロース、再生セルロースの短繊維の繊度は0.001〜2.0dtexが好ましい。繊度が0.001dtex未満だと、繊維自身の強度が弱く、セパレータが破断しやすくなる場合があり、2.0dtexより太いと、セパレータの厚みを薄くしにくくなる場合や、厚みむらが生じる場合がある。無機繊維の平均繊維径は0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましく、0.1〜3μmがさらに好ましい。無機繊維の平均繊維径が0.1μm未満だと、無機繊維が折れやすいため、セパレータから脱落しやすくなる場合があり、セパレータの空隙を閉塞する場合があり、10μmより太いと、取り扱い時にセパレータから脱落する場合がある。無機繊維の平均繊維長は0.1〜10mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましい。平均繊維長が0.1mm未満では、無機繊維がセパレータから脱落しやすくなる場合があり、10mmより長いと、セパレータの地合や厚みが不均一になりやすい場合がある。
天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物を含有させる場合、その変法濾水度は0〜400mlであることが好ましい。変法濾水度が400mlを超えると、太い繊維径の割合が多くなり、セパレータに厚みむらが生じやすくなる場合がある。
図1は、本発明のセパレータの表面の電子顕微鏡写真である。皮膜を含有していないことがわかる。図2は、本発明外のセパレータの表面の電子顕微鏡写真である。0.4mm程度の皮膜が存在していることがわかる。ポリビニルアルコールからなる繊維や粉末などの湿熱融着樹脂が皮膜を形成する。本発明のセパレータは、これらの湿熱融着樹脂を含有しないため、皮膜を有さない。
本発明のセパレータは空孔率が60.0〜86.0%である。より好ましくは、62.0〜80.0%であり、さらに好ましくは65.0〜80.0%である。空孔率は、セパレータの比重からセパレータの密度を差し引いて得られる値をセパレータの比重で除して100倍した値を意味する。セパレータの比重は、セパレータを構成する繊維の比重と比率から算出される。空孔率が60.0%未満では、導電性高分子の導通が悪くなり、固体電解コンデンサのESRが高くなる。また、表面が滑りやすくなり、レコード巻きの巻き崩れが起きる。空孔率が86.0%より大きいと、導電性高分子の担持性が不十分になり、固体電解コンデンサの容量が小さくなり、電極のバリが貫通しやすく、ショート不良率が高くなる。
本発明のセパレータは、湿式抄紙法で製造することができる。1層でも良いし、2層以上の漉き合わせで製造しても良い。具体的には所定の繊維を所定濃度に分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、短網抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらを組み合わせたコンビネーション抄紙機の何れかを用いて湿式抄紙すれば良い。湿式抄紙した後は、必要に応じて熱処理、カレンダー処理、熱カレンダー処理などが施される。
本発明のセパレータの空孔率を60.0〜86.0%にするには、セパレータの比重を基にして、所望の空孔率になるようにセパレータの密度を調節すれば良い。太い繊維の含有率を高くすると、セパレータの密度は小さくなる方向になり、空孔率は大きくなる方向になる。カレンダー処理により厚みを薄くしてセパレータの密度を大きくすると、空孔率は小さくなる方向になる。比重の重い繊維の含有率を多くすると、空孔率を大きくする方向になる。
本発明のセパレータは、厚みが15〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。厚みが15μm未満では、取り扱い時や加工時に破れたり、穴が開いたりする場合がある。100μmより厚いと、固体電解コンデンサのESRが高くなる場合がある。
本発明のセパレータは、ガーレー透気度が0.01〜3.00s/100mlが好ましく、0.05〜2.00s/100mlがより好ましく、0.10〜2.00s/100mlがさらに好ましい。ガーレー透気度はJIS P8117に準拠して測定される。ガーレー透気度が0.02s/100ml未満では、電極箔のエッジのバリが貫通しやすくなり、固体電解コンデンサのショート不良率が高くなる場合がある。3.00s/100mlより大きいと、固体電解コンデンサのESRが高くなる場合がある。
本発明における固体電解コンデンサとは、電解質として導電性高分子を用いる固体電解コンデンサを指す。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体が挙げられる。本発明においては、固体電解コンデンサが導電性高分子と電解液とを併用したものでも良い。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
表1に示したスラリー1〜22を調製し、湿式抄紙用のスラリーとした。
実施例1、3、7
表2に示した通り、実施例1、3、7に対応するスラリーを所定濃度に希釈して、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、180℃に加熱した金属ロールに両面を接触させて熱処理し、さらに、カレンダー処理して厚みを調整し、実施例1、3、7のセパレータを作製した。
実施例2、4〜6、8〜14
表2に示した通り、実施例2、4〜6、8〜14に対応するスラリーを所定濃度に希釈して、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、さらに、カレンダー処理して厚みを調整し、実施例2、4〜6、8〜14のセパレータを作製した。実施例8のカレンダー圧力は実施例7のカレンダー圧力より高くした。実施例11のカレンダー圧力は実施例10のカレンダー圧力より高くした。実施例14のカレンダー圧力は実施例13のカレンダー圧力より強くした。
(比較例1、2、4〜8、10〜13)
表2に示した通り、比較例1、2、4〜8、10〜13に対応するスラリーを所定濃度に希釈して、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、カレンダー処理して厚みを調整し、比較例1、2、4〜8、10〜13のセパレータを作製した。
(比較例3)
表2に示した通り、比較例3に対応するスラリーを所定濃度に希釈して、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、180℃に加熱した金属ロールに両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚みを調整し、比較例3のセパレータを作製した。
(比較例9)
表2に示した通り、比較例9に対応するスラリーを所定濃度に希釈して、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、カレンダー処理せずにそのまま比較例9のセパレータとした。
表1中のA1〜A6は溶剤紡糸セルロース繊維を意味し、その変法濾水度は表1に示した通りである。B1は繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル)、B2は繊度0.4dtex、繊維長5mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル)、B3は繊度1.0dtex、繊維長5mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル)、B4は繊度0.06dtex、繊維長3mmのポリエステル短繊維(帝人ファイバー製、商品名:TP04N)、B5は繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリエステル短繊維(帝人ファイバー製、商品名:TM04PN)、B6は繊度0.5dtex、繊維長5mmのポリエステル短繊維(帝人ファイバー製、商品名:TA04N)、B7は繊度1.1dtex、繊維長5mmのポリエステル短繊維(帝人ファイバー製、商品名:TJ04CN)、B8は繊度0.3dtex、繊維長3mmのナイロン6,6短繊維、B9はカナダ標準濾水度100mlのフィブリル化アクリル繊維、B10はポリビニルアルコール樹脂粉末(電気化学工業製、商品名:デンカポバールK−VG)、B11はカナダ標準濾水度80mlのフィブリル化全芳香族ポリアミド繊維(フィブリル状耐熱性繊維)を意味する。C1は繊度1.7dtex、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース短繊維(レンチング社製、商品名:テンセル)、C2は変法濾水度270ml、長さ加重平均繊維長0.21mmのリンター繊維を意味する。D1はカナダ標準濾水度640mlのマニラ麻を意味し、D2はカナダ標準濾水度640mlのエスパルトパルプを意味する。D1、D2の変法濾水度は何れも800mlであった。各種変法濾水度の溶剤紡糸セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース短繊維、リンター繊維、マニラ麻、エスパルトパルプの比重は1.50とした。アクリル短繊維の比重は1.17とした。ポリエステル短繊維の比重は1.40とした。ナイロン6,6繊維の比重は1.14とした。ポリビニルアルコール樹脂粉末の比重は1.25とした。フィブリル化全芳香族ポリアミド繊維の比重は1.44とした。
実施例及び比較例のセパレータについて、下記の試験方法により評価を行い、結果を表2に示した。
<厚み>
セパレータの厚みをJIS C2111に準拠して測定した。
<密度>
セパレータの密度をJIS C2111に準拠して測定した。
<空孔率>
セパレータの空孔率は、セパレータの比重からセパレータの密度を差し引いて得られる値をセパレータの比重で除した後100倍して算出した。
<透気度>
外径28.6mmの円孔を有するガーレー透気度計を用いて、100mlの空気がセパレータを通過するに要した時間を1試料につき任意の5箇所以上で計測し、その平均値とした。
<巻き崩れ>
セパレータを2.8mm巾にスリット加工し、長さ500mのレコード巻きを作製した。セパレータの先端をテープで留め、レコード巻きの側面を指で押さえたときにセパレータ表面が滑って巻き崩れが生じるか否か調べた。
<皮膜>
セパレータの表面を電子顕微鏡で観察し、皮膜の有無を調べた。貫通孔のない膜面積が2500μm以上である膜を皮膜とし、任意の観察領域40000μm当りに皮膜が1つ以上ある場合を「あり」、ない場合を「なし」とした。
<担持性>
50mm角に切り取ったセパレータを、3,4−エチレンジオキシチオフェン液に浸漬した後、濾紙で余剰液を吸い取り、そのままp−トルエンスルホン酸第二鉄の50質量%ブタノール溶液に浸して十分しみ込ませた後、余剰液を濾紙で吸い取り、100℃に加熱してポリエチレンジオキシチオフェンを重合した。重合回数は1回とした。重合後、メタノールで洗浄して、未反応物を除去し、乾燥後のセパレータの質量W1を秤量した。W1からセパレータの元の質量W0を差し引いて得られる値W2をW0で除して100倍した値(%)を担持性とした。
<重合強度>
<担持性>の評価において、ポリエチレンジオキシチオフェンを重合し、乾燥後のセパレータをピンセットでつまんだときのセパレータ強度を判定した。セパレータが切断することや破れることなく持ち上げられた場合を○、セパレータが脆く、破れた場合や崩れた場合を×とした。
<固体電解コンデンサ>
厚み50μm、エッチング孔1〜5μmのアルミニウム箔の表面を酸化処理して、酸化アルミニウム誘電体を形成させ、これを陽極として用いた。酸化処理する前のアルミニウム箔を陰極として用いた。固体電解コンデンサ用セパレータを陽極の誘電体上に配置し、陰極と合わせて巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。この素子を所定の温度で一定時間加熱してセパレータを炭化処理した後、該素子を3,4−エチレンジオキシチオフェン:p−トルエンスルホン酸第二鉄の50質量%ブタノール溶液を質量比で1:20になるように混合した溶液(重合溶液)に浸漬し、引き上げて200℃で5分加熱してポリエチレンジオキシチオフェンを重合した。この素子をメタノールで洗浄してセパレータに残留している未反応の3,4−エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸第二鉄を除去した後、120℃で乾燥させた。同様に、ポリエチレンジオキシチオフェンの重合作業をもう1回繰り返した後、素子をアルミニウム製外装缶に収納して封口し、定格電圧25V、定格静電容量33μFの固体電解コンデンサを作製した。実施例及び比較例のセパレータの炭化処理条件は表3に示した通りである。
実施例及び比較例の固体電解コンデンサについて、下記の試験方法により評価を行い、その結果を表3に示した。
<静電容量>
固体電解コンデンサの静電容量を測定し、1000個の平均値を算出した。
<ESR>
固体電解コンデンサのESRを20℃、100kHzの周波数でLCRメーターを用いて測定し、1000個の平均値を算出した。
<ばらつき>
固体電解コンデンサのESRの標準偏差をばらつきの指標とした。標準偏差の値が小さいほどばらつきが小さく優れている。
<ショート不良率>
固体電解コンデンサの導通の有無をテスターで確認した。固体電解コンデンサ1000個中に占める導通した個体の割合をショート不良率とした。
実施例1〜14のセパレータは、合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維とを必須成分として含有してなり、皮膜を含有せず、空孔率60.0〜86.0%の湿式不織布からなるため、レコード巻きの巻き崩れがなく、導電性高分子の担持性に優れていた。実施例1〜14のセパレータを具備した固体電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。実施例2〜14のセパレータは炭化温度を大幅に低くすることができ、実施例1は炭化処理が不要であった。
比較例1のセパレータは、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を含有せず、変法濾水度260mlの溶剤紡糸セルロース繊維を含有してなるため、セパレータの貫通孔が大きくなり、電極箔のバリが貫通しやすくなったため、該セパレータを具備した比較例1の固体電解コンデンサはショート不良率がやや高かった。また、繊維径の太い溶剤紡糸セルロース繊維が多く混在することにより、セパレータの地合むらや厚みむらがあり、導電性高分子の重合が不均一であったため、該セパレータを具備した比較例1の固体電解コンデンサは、ESRのばらつきが大きくなった。
比較例2のセパレータは、合成短繊維を含有せず、セルロース繊維100%からなるため、炭化処理温度を低くすることができない。また、炭化処理後の強度が著しく弱く、導電性高分子を重合した後も強度が著しく弱く、該セパレータを具備した比較例2の固体電解コンデンサはショート不良率が高かった。
比較例3のセパレータは、合成短繊維100%からなるため、表面が滑りやすく、3mm以下の巾にスリットして作製したレコード巻きの巻き崩れが生じた。また、セパレータ中の繊維間の隙間が大きすぎて、導電性高分子の担持性が悪く、該セパレータを具備した比較例3の固体電解コンデンサは、容量が小さく、ESRのばらつきが大きかった。また、電極箔のバリが貫通しやすく、該セパレータを具備した比較例3の固体電解コンデンサは、ショート不良率が高かった。
比較例4のセパレータは、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を含有せず、アクリル短繊維を主体としてなるため、表面が滑りやすく、3mm以下の巾にスリットして作製したレコード巻きの巻き崩れが生じた。また、セパレータ中の繊維間の隙間が大きすぎて、導電性高分子の担持性が悪く、該セパレータを具備した比較例4の固体電解コンデンサは容量が小さく、ESRのばらつきが大きかった。
比較例5のセパレータは、合成短繊維を含有せず、変法濾水度80mlの溶剤紡糸セルロース繊維100%からなるため、炭化処理温度を低くすることができない。また、炭化処理後の強度が著しく弱く、導電性高分子を重合した後も強度が著しく弱く、該セパレータを具備した比較例5の固体電解コンデンサはショート不良率が高かった。
比較例6のセパレータは、合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を含有せず、カナダ標準濾水度640ml(変法濾水度800ml)のマニラ麻とエスパルトからなるため、炭化処理温度を低くすることができない。また、炭化処理後の強度が著しく弱く、導電性高分子を重合した後も強度が著しく弱く、該セパレータを具備した比較例6の固体電解コンデンサはショート不良率が高かった。
比較例7のセパレータは、フィブリル化アクリル繊維とアクリル短繊維からなるため、表面が滑りやすく、3mm以下の巾にスリットして作製したレコード巻きの巻き崩れが生じた。また、フィブリル化アクリル繊維の配合率が80%と多いため、導電性高分子の導通が悪くなり、該セパレータを具備した比較例7の固体電解コンデンサは、ESRが高かった。
比較例8のセパレータは、合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維とを含有するが、空孔率が60.0%未満だったため、導電性高分子の導通が悪くなり、該セパレータを具備した比較例8の固体電解コンデンサはESRが高かった。
比較例9のセパレータは、合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維とを含有するが、空孔率が86.0%を超えていたため、電極のバリが貫通しやすく、該セパレータを具備した比較例9の固体電解コンデンサは、同スラリーから作製され、空孔率が60.0〜86.0%である実施例13及び14のセパレータよりもショート不良率が高かった。また、導電性高分子の担持性が不十分になり、容量が小さく、ESRのばらつきが大きかった。
比較例10のセパレータは、ポリアミド繊維と湿熱融着性樹脂からなるため、湿熱融着性樹脂が皮膜を形成しており、導電性高分子の担持性と導通が悪く、該セパレータを具備した比較例10の固体電解コンデンサは、容量が小さく、ESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。また、セパレータ表面が滑りやすく、3mm以下の巾にスリットして作製したレコード巻きの巻き崩れが生じた。
比較例11のセパレータは、湿熱融着性樹脂を含有するため、該樹脂が皮膜を形成しており、導電性高分子の担持性と導通が悪く、該セパレータを具備した比較例11の固体電解コンデンサは、容量が小さく、ESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。このように炭化温度230℃では、静電容量やESRで十分な特性が得られなかったことから、比較例11のセパレータは、炭化温度を低くすることができないといえる。
比較例12のセパレータは、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を含有せず、セルロース繊維、フィブリル状耐熱性繊維、アクリル短繊維からなるため、フィブリル状耐熱繊維の存在により、導電性高分子の導通が悪く、該セパレータを具備した比較例12の固体電解コンデンサは、ESRが高かった。このように炭化温度230℃では、静電容量やESRで十分な特性が得られなかったことから、比較例12のセパレータは、炭化温度を低くすることができないといえる。さらにフィブリル状耐熱性繊維を多く含有するため、スリット作業の際に静電気を帯び、レコード巻きの巻き崩れが生じた。
比較例13のセパレータは、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を含有せず、セルロース繊維、フィブリル状耐熱性繊維、アクリル短繊維からなり、繊維間の隙間が大きすぎたため、導電性高分子の担持性が不十分で、該セパレータを具備した比較例13の固体電解コンデンサは、容量が小さく、ESRのばらつきが大きかった。このように炭化温度230℃では、静電容量やESRで十分な特性が得られなかったことから、比較例13のセパレータは、炭化温度を低くすることができないといえる。

Claims (2)

  1. ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維と合成短繊維とを必須成分として含有してなり、セパレータ中の合成短繊維と変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維の合計含有率が40〜100質量%であり、合成短繊維、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維以外の繊維が、溶剤紡糸セルロースや再生セルロースの短繊維、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、変法濾水度250ml超の溶剤紡糸セルロース繊維、無機繊維から選ばれる繊維であり、皮膜を含有せず、空孔率が60.0〜86.0%である湿式不織布からなることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータ。
  2. 請求項1に記載の固体電解コンデンサ用セパレータを具備してなる固体電解コンデンサ。
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