JP2016160330A - セルロース多孔膜の製造方法及びセルロース多孔膜 - Google Patents

セルロース多孔膜の製造方法及びセルロース多孔膜 Download PDF

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Abstract

【課題】比表面積が大きく、制御された細孔を有し、実用上必要とされる破断強度を有するセルロース多孔膜の製造方法及びセルロース多孔膜を提供する。【解決手段】セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解して、セルロース溶液全量に対し、セルロースを2質量%〜15質量%含有するセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、板状の支持体表面に調製されたセルロース溶液を付与し、支持体表面にセルロース溶液からなるセルロース溶液膜を、セルロース溶液の温度を90℃以上に調整して、セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件で形成する液膜形成工程と、形成されたセルロース溶液膜を冷却速度1℃/分〜300℃/分で冷却し、セルロースを含有するゲル膜を得るゲル膜形成工程と、セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させてセルロースを凝固させ、多孔膜を得る凝固工程と、を含むセルロース多孔膜の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース多孔膜の製造方法及びセルロース多孔膜に関する。
セルロース多孔膜は、多糖類の多孔膜の中では機械強度が大きいこと、タンパク質等の非特異吸着が少ないこと、水酸基を修飾することで多様なリガンドの担持が可能であること、などの特徴を有する。このため、セルロース多孔膜は、担体、分離膜、又はろ過膜として種々の目的に使用される。
セルロース多孔膜を担体、分離膜、又はろ過膜として使用する場合、多孔膜が十分な物理強度を有すること、及び、多孔膜の細孔径が適切に制御されることが性能を決定する上で重要である。
多孔膜の機能は、多孔膜の細孔径に大きく依存している。例えば、ゲルクロマトグラフィーでは、混合物に含まれる各成分の分子サイズによる溶出時間の違いを利用して各成分を分離するため、多孔膜の細孔サイズが分離能に大きく影響を与える。イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等に用いる吸着用担体は、多孔質担体の細孔表面積によって、一定体積内に担持可能な目的吸着物の量が変化する。このように、多孔膜を担体として使用するためには、多孔膜の細孔径を所望の範囲に制御することが求められている。
セルロース多孔膜の機械的強度が十分ではない場合には、セルロース多孔膜を分離膜、又はろ過膜として用いた場合、流体の流量を大きくすると、流体の圧力により多孔膜が圧縮されて変形したり、多孔膜が破断したりすることがある。多孔膜を各種担体に使用するに際しても十分な機械的強度を有することは重要である。
さらに、多孔膜を工業的に製造する場合に、比表面積が大きく、多数の細孔を有する多孔膜の破断強度が十分ではない場合、例えば、シート状に成形した多孔膜を巻き取る際に破断する懸念があり、生産性の観点からも多孔膜は十分な破断強度を有することが求められる。
セルロース多孔膜を製造する方法として、臭化リチウム水溶液にセルロースを溶解し、得られたセルロース溶液を容器中にて冷却し、ゲル化させ、その後、水に浸漬させることにより多孔質体を作製する技術が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、セルロース及びイオン液体を含む溶液を、セルロース非溶解性の液体に接触させることで凝固させ、任意の形状と厚みを持った多孔質セルロース膜を形成するセルロース多孔膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
セルロースの溶媒としてチオシアン酸カルシウム水溶液を用い、セルロースを直接溶解して造粒するセルロース多孔質粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2012−57137号公報 特許第3601229号公報
Cellulose、2014年、vol.21、p1175
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、試験的に容器内においてセルロース溶液を凝固させて、多孔質体を形成することが検討され、得られたセルロース多孔質体は、機械的強度が低く、実用に供する機械的強度を有するとは言い難い。非特許文献1では、多孔膜の細孔の均一性及び多孔膜の強度を向上させることについては検討されていない。
特許文献1に記載の製造方法では、セルロース多孔膜の製造に高価なイオン液体を大量に使用する必要があり、製造コストに問題がある。また、特許文献1に記載の製造方法では、鋳型により多孔膜を形成しており、生産性が悪い。さらに、特許文献1に記載の方法により得られたセルロース多孔膜は、細孔径が大きく、比表面積が小さいことから、クロマトグラフィー等の担体に用いた場合、高い吸着性能が期待できないこと、多孔膜の物理強度が実用上満足する領域には至っていないこと等の問題がある。
特許文献2に記載の製造方法で用いられるチオシアン酸カルシウム水溶液は、毒性及び腐食性が懸念され、廃液の後処理に工数が掛る。また、特許文献2では、セルロース多孔膜を形成することについては検討されていない。
このため、均一で制御された細孔を有し、機械的強度が良好なセルロース多孔膜の簡易な製造方法、及び、均一で制御された細孔を有し、機械的強度が良好なセルロース多孔膜が求められているのが現状である。
本発明の課題は、比表面積が大きく、制御された細孔を有し、実用上必要となる破断強度を有するセルロース多孔膜の効率の良い製造方法、及び、比表面積が大きく、制御された細孔を有し、実用上必要となる破断強度を有するセルロース多孔膜を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、セルロース溶液の組成及び温度を制御することで、板状の支持体表面にセルロース溶液膜を、溶液膜の周縁部が非拘束の状態で形成し、得られたセルロース溶液の液膜を凝固させる工程を経ることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
上記の課題を解決するための本発明は、以下に示す実施形態を含む。
<1> セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解して、セルロース溶液全量に対し、セルロースを2質量%〜15質量%含有するセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、板状の支持体表面に調製されたセルロース溶液を付与し、支持体表面にセルロース溶液からなるセルロース溶液膜を、前記セルロース溶液の温度を90℃以上に調整して、セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件で形成する液膜形成工程と、形成されたセルロース溶液膜を冷却速度1℃/分〜300℃/分で冷却し、セルロースを含有するゲル膜を得るゲル膜形成工程と、セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させてセルロースを凝固させ、多孔膜を得る凝固工程と、を含むセルロース多孔膜の製造方法。
<2> 液膜形成工程が、プレス成形機における板状の支持体表面に一定量のセルロース溶液を付与すること、及び、付与されたセルロース溶液を0.1MPa〜35MPaの圧力でプレス成形してセルロース溶液膜を形成すること、を含む<1>に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<3> 液膜形成工程が、板状の支持体表面に塗布法によりセルロース溶液を連続的に又は断続的に付与してセルロース溶液膜を形成することを含む<1>に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<4> 液膜形成工程が、板状の支持体表面に溶融押出し装置によりセルロース溶液を連続的に又は断続的に付与してセルロース溶液膜を形成すること、を含む<1>に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<5> 凝固工程を経て得られた多孔膜を洗浄する洗浄工程を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<6> 凝固工程を経て得られた多孔膜に、架橋剤を用いて架橋構造を形成する架橋工程を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<7> 溶液調製工程により得られたセルロース溶液の110℃における粘度が0.5Pa・s〜500Pa・sの範囲にある、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<8> セルロースが、平均重合度50〜2000のセルロースである<1>〜<7>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<9> 凝固工程が、セルロースを含有するゲル膜の温度が20℃〜80℃の温度条件において、セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させる工程である<1>〜<8>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<10> セルロース多孔膜を凍結乾燥させて凍結乾燥セルロース多孔膜を得る凍結乾燥工程を含む<1>〜<9>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法。
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜の製造方法により得られたセルロース多孔膜。
<12> 凍結乾燥したセルロース多孔膜を引張強度試験法により測定した引張破断強度が450N/mm以上である<11>に記載のセルロース多孔膜。
<13> 凍結乾燥したセルロース多孔膜を水銀圧入法により測定した平均細孔径が10nm以上2000nm以下である<11>又は<12>に記載のセルロース多孔膜。
<14> 凍結乾燥したセルロース多孔膜を水銀圧入法により測定した比表面積が140m/g以上である<11>〜<13>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜。
<15> 乾燥したセルロース多孔膜多孔膜1kgに含まれるリチウムイオン含有量が0.0001mmol以上100mmol以下である<11>〜<14>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜。
<16> 乾燥したセルロース多孔膜1kgに含まれる臭化物イオン含有量が0.0001mmol以上100mmol以下である<11>〜<15>のいずれか1つに記載のセルロース多孔膜。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における室温とは、25℃を指す。
本発明によれば、比表面積が大きく、制御された細孔を有し、実用上必要とされる破断強度を有するセルロース多孔膜の簡易な製造方法、及び比表面積が大きく、制御された細孔し、実用上必要とされる破断強度を有するセルロース多孔膜を提供することができる。
本発明のセルロース多孔膜の製造方法に用いうるセルロース多孔膜製造装置の一例を示す概略構成図である。 実施例3で得られたセルロース多孔膜を200倍で撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られたセルロース多孔膜を3万倍で撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明のセルロース多孔膜の製造方法は、(I)セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解して、セルロース溶液全量に対し、セルロースを2質量%〜15質量%含有するセルロース溶液を調製する溶液調製工程(以下、溶液調製工程と称することがある)、(II)板状の支持体表面に調製されたセルロース溶液を付与し、支持体表面にセルロース溶液からなるセルロース溶液膜を、前記セルロース溶液の温度を90℃以上に調整して、セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件で形成する液膜形成工程(以下、液膜形成工程と称することがある)、(III)形成されたセルロース溶液膜を冷却速度1℃/分〜300℃/分で冷却し、セルロースを含有するゲル膜を得るゲル膜形成工程(以下、ゲル膜形成工程と称することがある)及び(IV)セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させてセルロースを凝固させ、セルロースを含有する多孔膜を得る凝固工程(以下、凝固工程と称することがある)、を含む。
以下、本発明の製造方法を、工程順に詳細に説明する。
(I)セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解して、セルロース溶液全量に対し、セルロースを2質量%〜15質量%含有するセルロース溶液を調製する溶液調製工程(溶液調製工程)
[セルロース]
本発明に用いられるセルロースとしては、後述する臭化リチウム水溶液に溶解するセルロースであれば特に制限なく使用しうる。
本発明に使用しうるセルロースとしては、例えば、結晶性セルロース粉末、再生セルロース、酢酸セルロース等の置換セルロース等が挙げられる。
セルロースは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、製造されたセルロース多孔膜が実用上好ましいレベルの破断強度を達成するためには、セルロース溶液の調製に用いるセルロースは結晶性セルロース、又は、再生セルロースであることが好ましく、結晶性セルロースであることがより好ましい。
セルロースの平均重合度は、50以上2000以下であることが好ましい。セルロースの平均重合度が2000以下であると、セルロース溶解時の溶液の高粘化を抑制できるため、好ましい。セルロースの平均重合度が50以上であることで、支持体上における液膜形成に適する物性が得られ、かつ、形成されるセルロース多孔膜の破断強度が実用上十分なレベルとなるため好ましい。
セルロースの平均重合度は100以上1700以下の範囲であることがより好ましく、200以上1300以下の範囲であることがさらに好ましい。
セルロースの平均重合度は、特開平6−298999号公報段落番号〔0032〕に記載の方法で測定することができる。より具体的には、B.DALBE,A.PEGUY等の「CELLULOSE CHEMISTRY AND TECHNOLOGY」Vol.24、No.3、P327−331(1990年)に記載の方法に準じて測定することができる。即ち、この文献に記載の測定方法において、N−メチルモルフォリン−N−オキシドの水和物と、ジメチルスルホキシドと、没食子酸プロピルとを、それぞれ重量比で100/150/1の割合で混合した溶剤を、セルロースを溶解する溶媒として用い、セルロースを0.2g/100ml〜0.8g/100mlの濃度に溶解し、得られたセルロース溶液の固有粘度をウベローデ型希釈粘度計を用いて、温度34℃において測定し、下記の粘度式(1)によってセルロースの重合度を決定した。
粘度式(1) [η]=1.99×(DP)v0.79
粘度式(1)において、[η]は固有粘度を表し、(DP)vはセルロースの重合度を表す。
セルロースは市販品を使用してもよい。市販品を使用する場合には、カタログに記載の平均重合度を参照することができる。
本発明に使用しうるセルロースの市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製、セオラス(登録商標)PH101(商品名:平均重合度220)、その他セオラスのPHグレード各種、KGグレード各種、UFグレード各種、日本製紙(株)製、KCフロックW−400G(商品名:平均重合度350)、KCフロックW−300G(商品名:平均重合度370)、KCフロックW−200G(商品名:平均重合度510)、KCフロックW−100G(商品名:平均重合度720)、KC−フロックW−50G(商品名:平均重合度820)、サルファイトパルプ NDPT(商品名:平均重合度1000)等が挙げられる。
[臭化リチウム水溶液]
臭化リチウム水溶液は、臭化リチウムを水に溶解して調製する。溶媒として用いる水は、不純物の少ない、イオン交換水、純水等を使用することが好ましい。
臭化リチウム水溶液に含まれる臭化リチウムの含有量は、臭化リチウム水溶液全量に対して50質量%〜70質量%であることが好ましく、54質量%〜69質量%であることがより好ましく、55質量%〜68質量%であることがさらに好ましい。
臭化リチウム水溶液全量における臭化リチウムの含有量が50質量%以上であることで、セルロースの溶解性が良好となり、70質量%以下であることで、臭化リチウム結晶が十分に溶解し、不溶物の残存、臭化リチウム結晶の析出等が抑制される。
臭化リチウム水溶液の調製は、必要に応じて撹拌しながら、水に臭化リチウムを溶解させることで行なわれる。臭化リチウム水溶液の調製は、室温で行なってもよく、所望により0℃〜80℃程度で実施してもよい。
[セルロース溶液の調製]
得られた臭化リチウム水溶液に、セルロースを溶解して、セルロースの臭化リチウム水溶液による溶解液(以下、セルロース溶液と称することがある)を調製する。
セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解させる際には、臭化リチウム水溶液を80℃〜150℃に加温し、必要に応じて撹拌しながら、セルロースを溶解させればよい。溶解させる場合の温度としては、85℃〜140℃の範囲であることがより好ましく、90℃〜130℃の範囲であることがさらに好ましい。
セルロース溶液の調製に用いる臭化リチウム水溶液は、セルロースの溶解性に優れる。よって、本発明の製造方法における溶液調製工程は、任意の濃度のセルロース溶液を容易に調製することができる、セルロース溶液調製工程における加熱に起因するセルロースの着色が低減される等の利点を有する。
セルロース溶液調製工程において調製されたセルロース溶液全量に対するセルロースの含有量は、2質量%〜15質量%の範囲である。セルロースの含有量は、液膜形成工程における諸条件を考慮して2質量%〜15質量%の範囲にて適宜調整することができる。
セルロース溶液中のセルロースの含有量が2質量%以上であることで、セルロース溶液の粘度が適切に維持され、液膜の周縁部を非拘束とした条件下でも、流動性を有しながら適度な液膜の拡がりを維持し、型枠を有しない板状の支持体表面に所望の液膜を形成することができる。また、セルロース溶液中のセルロースの含有量が15質量%以下であることで、セルロース溶液の粘度が適切に維持され、取り扱いが良好となる。
溶液調製工程で調製するセルロース溶液におけるセルロース溶液全量に対するセルロースの含有量は、3質量%〜12質量%であることがより好ましく、4質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
(II)板状の支持体表面に調製されたセルロース溶液を付与し、支持体表面にセルロース溶液からなるセルロース溶液膜を、前記セルロース溶液の温度を90℃以上に調整して、セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件で形成する液膜形成工程(液膜形成工程)
液膜形成工程では、(I)セルロース溶液調製工程で得られたセルロース溶液を板状の支持体表面に付与し、セルロース溶液の温度を90℃以上に調整して、支持体表面にセルロース溶液膜(以下、液膜と称することがある)を形成する。
溶液調製工程において得られたセルロース溶液は、90℃以上の温度に調整されてセルロース溶液膜を形成する。液膜を形成する際のセルロース溶液の温度が90℃以上であることで、セルロース溶液に液膜形成に適する流動性を与えることができる。また、液膜形成工程に付されるセルロース溶液の温度は90℃以上であれば、セルロース溶液におけるセルロースの含有量、形成する液膜の厚さ、液膜の形成方法を適宜選択することができる。温度の上限は特に制限されないが、セルロースの熱による変色を抑制するという観点からは、150℃以下であることが好ましい。
なかでも、取り扱い性及び良好な液膜を形成しうるという観点からは、95℃〜140℃が好ましく、100℃〜130℃がより好ましく、105℃〜120℃がさらに好ましい。
また、セルロース溶液の温度を90℃以上とすることに加え、使用する膜形成装置等においてセルロース溶液と接する部材の温度を90℃以上に制御することが好ましい。セルロース溶液膜を形成するために用いられる液膜の形成装置については後述する。
本発明の製造方法においては、従来公知の型枠内にセルロース溶液を注入して液膜を形成する注型法を用いず、平滑な板状の支持体表面にセルロース溶液を付与し、セルロース溶液により形成されるセルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件にてセルロース溶液膜を形成する。
セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件とは、例えば、支持体表面に付与されたセルロース溶液が支持体表面上に拡がって液膜を形成する際に、液膜の周縁部がセルロース溶液の拡がりを抑制する枠等の液膜周縁部を拘束する部材に接触することなく所望とする形状の液膜を形成する条件が挙げられる。本発明の製造方法によれば、表面より垂直に立ち上がる枠を有しない支持体を用いてセルロース溶液膜を形成することができる。
本発明における液膜形成工程においては、溶液の拡がりを制御するための枠等の部材を有しない支持体を用いても、支持体の端部から溶液が流下したりすることなく、均一な液膜が形成される。このため、形成された液膜は注型法において必要な脱型などの処理を行なうことなく、次工程であるゲル膜形成工程に供することができる。
本発明における液膜形成工程では、セルロース溶液膜の形成に型枠を使用しないことから、セルロース溶液を型枠に注入し、所定時間維持した後に脱型を行なう注型法と比較して、液膜形成の生産性がより良好となる。
セルロース溶液により形成される液膜の周縁部が非拘束である条件で良好な液膜を形成するために、液膜形成工程に付するセルロース溶液の粘度を適切な範囲とすることが好ましい。
セルロース溶液粘度の好ましい条件としては、セルロース溶液の110℃における粘度が0.5Pa・s〜500Pa・sの範囲にあることが好ましく、2Pa・s〜300Pa・sの範囲にあることがより好ましく、10Pa・s〜200Pa・sの範囲にあることがさらに好ましく、30Pa・s〜120Pa・sの範囲にあることが特に好ましい。
セルロース溶液の110℃における粘度が500Pa・s以下であることで、例えば、溶融押出し装置にて液膜を形成した場合に、押し出し状態が安定する。従って、形成された液膜の膜厚が不均一となり、液膜が部分的に肉厚になって白化し、斑点状の不均一部分が形成されるといった膜故障の発生が効果的に抑制される。また、セルロース溶液の110℃における粘度が0.5Pa・s以上であることで、膜形成に適する流動性が得られる。
本発明におけるセルロース溶液の粘度は以下の方法で測定した値を用いている。
セルロース溶液試料40mLを50mLガラス製サンプル瓶内に入れて、オイルバスに浸し、溶液温度を110℃に保持する。振動式粘度計(ビスコメイト VM−100A:商品名、(株)セコニック製)のプローブを110℃のセルロース溶液に浸し、粘度を測定する。測定に用いるプローブの種類により、測定可能な粘度が異なるため、粘度と使用しうるプローブの関連を考慮し、適切なプローブを使用して測定を行なう。
粘度が0.04Pa・s〜1Pa・sの範囲ではLプローブを、粘度が0.1Pa・s〜10Pa・sの範囲ではMプローブを、粘度が5Pa・s〜500Pa・sの範囲ではHプローブを用いる。なお、プローブの測定範囲が重複している粘度のセルロース溶液を測定する場合、例えば、粘度が5Pa・s〜10Pa・sのセルロース溶液の粘度を測定する場合には、Mプローブ、Hプローブのいずれのプローブを用いて測定してもよく、どちらのプローブを用いて測定しても同様の結果が得られる。
液膜の形成方法は、セルロース溶液の周縁部が非拘束である条件であれば特に制限されない。生産性及び公知の製造装置を適用できるという観点からは、液膜の形成には、プレス成形法、塗布法、溶融押出し法等を適用することが好ましい。
液膜形成方法の中でも、生産性の観点から、溶融押出し法、塗布法がより好ましく、溶融押出し法がさらに好ましい。
(プレス成形法)
プレス成形法に用いるプレス装置としては、プレス板の温度制御が可能な公知のプレス装置をいずれも用いることができる。本発明に用いうるプレス装置としては、加熱機能、水冷機能及び真空チャンバーを備えたプレス板を備えるプレス装置が好ましい。
本発明に使用しうる市販のプレス装置としては、加熱機能、水冷機能及び真空チャンバーを備えた三枚のプレス板を備えたFontijne Grotnes社製、溶融プレス装置、東洋精機(株)製、溶融プレス装置:ミニテストプレス−10(商品名)等が挙げられる。
これらの装置を用いて、プレス板の温度を90℃以上に制御して、プレス板上に90℃以上に加熱したセルロース溶液を付与し、目的とする膜厚に応じたクリアランスで、上部のプレス板を用いて、好ましくは0.1MPa〜35MPaの圧力でプレス成形することで、プレス板のクリアランスに応じた膜厚の液膜を得ることができる。3枚のプレス板を有する装置を用いる場合には、1工程で、最下段のプレス板と中間のプレス板、及び中間のプレス板と最上段のプレス板との2箇所において液膜を形成することができる。
プレス装置に用いられるプレス板は、温度制御された平板状のプレス板であり、一般的には、プレス板側部に枠を有しないため、セルロース溶液により形成される液膜の周縁部を拘束しない条件で液膜を形成することができる。また、側部に枠を有するプレス板を用いても、プレス板上に付与するセルロース溶液の量を制御することで、液膜の周縁部が枠に接することなく、液膜の周縁部が非拘束な条件で液膜を形成することができる。
プレス成形を行なう際のセルロース溶液の温度は、90℃以上であり、良好な面状を得ることができるという観点からは、95℃〜140℃が好ましく、100℃〜130℃がより好ましく、105℃〜120℃がさらに好ましい。
プレス成形を行なう際のプレス圧は、平滑な面状を得ることができるという観点からは、0.1MPa〜10MPaが好ましく、0.2MPa〜7MPaがより好ましく、0.5MPa〜5MPaがさらに好ましい。
プレス成形の時間は、形成された膜の着色が抑制され、かつ平滑な面状を得ることができるという観点からは、0.5分間〜60分間であることが好ましく、1分間〜30分間であることがより好ましく、5分間〜10分間であることがさらに好ましい。
プレス板のクリアランスは、目的とする多孔膜により適宜選択されるが、作業性、形成された膜の均一性の観点からは、10μm〜5000μmが好ましく、20μm〜3000μmがより好ましく、50μm〜1000μmがさらに好ましい。
プレス板上に付与するセルロース溶液の量は、所望とする液膜のサイズにより適宜決定することができる。
プレス板と、プレス板上に付与されるセルロース液膜との間、及び付与されたセルロース溶液の表面(上部プレス板と接する側の表面)に離型フィルムを挟むことで、プレス後の液膜の剥離を容易に行なうことができる。
離型フィルムとしては、ポリイミドフィルム、表面をポリテトラフルオロエチレンにより処理されたアルミシートなどが挙げられる。
(塗布法)
塗布法は、公知の塗布装置を用いて行なうことができる。
温度を90℃以上としたセルロース溶液を、加熱手段を用いて加熱した公知の塗布装置、例えば、バーコーター、カーテンコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等を用いて行なうことができる。塗布法により支持体上に付与されたセルロース溶液は、塗布により形成される液膜の周縁部が拘束されない条件にて、セルロース溶液膜となる。
塗布法により液膜を形成する場合、均一な液膜を形成する観点から、セルロース溶液が付与される支持体表面の温度を90℃以上に制御することが好ましい。
塗布法により液膜を形成する場合において、セルロース溶液の付与量、即ち、支持体上へのセルロース溶液の塗布量は、目的とする多孔膜の厚みを考慮して制御することができる。セルロース溶液の支持体への付与量は、例えば、バーコーターを用いて付与する場合には、バーコーターのクリアランスにより制御することができる。その他の塗布装置においても、公知の方法で付与量を制御することができる。
塗布法におけるセルロース溶液の支持体への付与量は、目的に応じて適宜決定される。形成される液膜の均一性の観点から、セルロース溶液の支持体上における液膜の膜厚が10μm〜5000μmとなる量を付与することが好ましく、20μm〜3000μmとなる量を付与することがより好ましく、50μm〜1000μmとなる量を付与することがさらに好ましい。
塗布法により液膜を形成する場合、板状の支持体に一定量を塗布するバッチ法により断続的に液膜を形成してもよく、ベルト状の長尺な支持体上に連続的に付与して液膜を形成してもよい。ベルト状の長尺な支持体、例えば、無端ベルトの如き支持体を用いて、支持体上にセルロース溶液を付与することで、連続的に液膜を形成することができる。
ベルト状の支持体の場合には、裏面からヒートロールを接触させる等の公知の温度制御手段を適用することにより支持体の温度を制御することができる。
(溶融押出し法)
溶融押出し法によるセルロース溶液膜の形成は、公知の溶融押出し装置を用いて行なうことができる。溶融押出し装置は、押し出し装置内部のスクリューを有する部分の温度を制御して、セルロース溶液を90℃以上の所望の温度に維持することができる。
通常、溶融押出し装置は、樹脂ペレットなどを溶融し、スクリューで混練りし、ダイを介して溶融樹脂をシート状又はチューブ状に成形する装置である。本発明においては、溶融押出し装置に供給する材料は、液状のセルロース溶液又は冷却してゲル状としたセルロース溶液であり、厳密には、溶融押出しには該当しない。しかしながら、本発明における溶融押出し法では、溶融押出し装置内において液状又はゲル状のセルロース溶液が適切に制御された温度に加熱されて流動状態となり、溶融押出し装置よりダイを介して押出された後に冷却されてゲル膜を形成するため、熱可塑性樹脂を用いた溶融押出し法による製膜と見かけ上同様の挙動をとること、及び、セルロース溶液の温度制御と液膜形成に好適な条件が溶融押出し装置により得られることから、本明細書では、溶融押出し装置を用いた液膜形成を、「溶融押出し法」と称している。
溶液調製工程において調製され、90℃以上の予め規定された温度に維持されたセルロース溶液を、溶融押出し装置内においてスクリューにて撹拌し、Tダイにてシート状に押し出し、温度を90℃以上に制御された支持体上に付与して液膜を形成する。セルロース溶液の押し出し量、即ち、支持体への付与量は、目的とする多孔膜の厚みに応じて適宜決定すればよい。
溶融押出し法におけるセルロース溶液の支持体への付与量は、目的に応じて適宜決定される。形成される液膜の均一性の観点から、セルロース溶液の支持体上における液膜の膜厚が10μm〜5000μmとなる量を付与することが好ましく、20μm〜3000μmとなる量を付与することがより好ましく、50μm〜1000μmとなる量を付与することがさらに好ましい。
Tダイより押し出され、支持体上に付与されたセルロース溶液は、周縁部即ち液膜の先端部及び両即端部が、非拘束な条件にてセルロース溶液膜となる。
液膜形成工程では、既述の如く、種々の公知の方法を適用して、調製されたセルロース溶液の液膜を形成する。
(III)形成されたセルロース溶液膜を冷却速度1℃/分〜300℃/分で冷却し、セルロースを含有するゲル膜を得るゲル膜形成工程(ゲル膜形成工程)
本工程では、形成されたセルロース溶液膜を冷却してセルロースを含有するゲル膜を形成する。
液膜形成工程では、セルロース溶液は90℃以上、好ましい態様によれば、100℃〜130℃の温度に維持され、セルロース溶液膜が形成される。形成された液膜を冷却することにより、液膜に含まれるセルロースのゲル化が行なわれ、セルロースを含有するゲル膜が形成される。セルロース溶液の組成によりゲル化の温度は異なるが、組成物によっては、80℃〜90℃にてゲル化する場合がある。
冷却は、取り扱い性に優れるゲル膜を得ることができるという観点から、液膜の温度が0℃〜80℃の範囲となるまで行なうことが好ましく、1℃〜70℃の範囲となるまで冷却されることがより好ましく、2℃〜60℃の範囲まで冷却されることがさらに好ましい。
生産性を考慮すれば、ゲル膜の形成は、液膜を20℃〜60℃の範囲で行なうことが好ましい。
セルロース溶液膜を目的とする温度まで冷却するのに要する時間が長くなると、ゲル状となったセルロース膜が着色することが懸念される。冷却時間が短すぎると、機械強度の大きな多孔膜が得られなくなる。
既述の観点から、目的に応じて、液膜の冷却速度を制御することが好ましい。具体的には、冷却速度は1℃/分〜300℃/分であることが好ましく、3℃/分〜200℃/分であることがより好ましく、10℃/分〜100℃/分であることがさらに好ましい。
得られるセルロース多孔膜中のセルロースの結晶化度は、冷却速度を調節することにより制御できる。例えば、冷却速度を大きくすることで、結晶化度を低くすることができ、冷却速度を小さくすることで、結晶化度を高くすることができる。
結晶化度が低く抑えられることで、異方性の少ないセルロース多孔膜を得ることができ、結晶化度を高くすることで、機械的強度に優れたセルロース多孔膜を得ることができる。
冷却は液膜形成工程に引き続き行なわれる。
プレス成形法にて液膜を形成した場合には、プレス成形装置におけるプレス板の温度を制御することにより、プレス成形装置内において、液膜の形成後に、得られた液膜を、プレス板に備えられた温度制御装置を用いて所望の冷却速度にて冷却し、セルロースを含有するゲル膜の形成を行なうことができる。従って、プレス成形法を適用して液膜を形成する場合、プレス板の温度制御が可能なプレス装置を用いることで、プレス装置内で、液膜の形成、及びセルロースを含有するゲル膜の形成までを連続して行なうことができる。
塗布法、溶融押出し法により液膜を形成する場合には、支持体自体の温度を制御すること、液膜をキャストロールに接触させること、支持体上の液膜を、支持体ごと冷却装置内に誘導すること、などの方法により冷却し、セルロースを含有するゲル膜を形成することができる。ゲル膜形成工程において使用する冷却装置は、公知の冷却装置を適宜使用することができる。
塗布法、溶融押出し法により、長尺の支持体上に連続的又は断続的に液膜を形成する場合には、液膜が形成された支持体を、冷却ゾーン等の冷却装置内に誘導し、冷却装置を通過させる方法、支持体の液膜を形成しない側に冷却ロールを接触させて冷却する方法等をとることができる。
ゲル膜形成工程における冷却速度は、セルロースを含有するゲル膜の表面温度を測定することで算出することができる。
GRAPFTEC社製 midi LOGGER GL900を用いて、装置に備えられた熱電対を、直接セルロースを含有する液膜表面に接触させ、液膜表面温度を測定する。本発明における冷却速度は、既述の方法で測定された製膜工程において形成された液膜の温度から、ゲル膜の表面温度が40℃となるまでの冷却過程における温度差(℃)を時間(分)で除した数値であると定義する。
なお、プレス成形法の如く、プレス板の温度を制御することで、セルロース溶液の温度を90℃以上として液膜を形成し、プレス板間にて形成された液膜を冷却してセルロースを含有するゲル膜を形成する場合には、液膜及びセルロースを含有するゲル膜に接触するプレス板の温度を、それぞれ液膜又はセルロースを含有するゲル膜の表面温度として、本発明における冷却速度を算出することができる。
なお、液膜形成工程において、セルロース液膜を連続的に形成し、連続的に形成された液膜を搬送し、引き続き、ゲル膜形成工程、凝固工程を行なう態様については、以下に詳細に説明する。
(IV)セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させてセルロースを凝固させ、セルロースを含有する多孔膜を得る凝固工程(凝固工程)
本工程では、ゲル膜形成工程を経て得られたセルロースを含有するゲル膜に、凝固溶媒を接触させてセルロースを凝固させ、セルロースを含有する多孔膜を得る。
凝固工程により得られる多孔膜は、凝固溶媒と接触することにより凝固して形成された多孔質構造を有する膜であり、得られた多孔膜中には不純物が残存する。以下では、凝固工程により得られた不純物が膜中に残存する多孔膜を、適宜「未精製の多孔膜」と称する。
セルロースを含有するゲル膜は、膜内に臭化リチウム水溶液等を含む。セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させることで、ゲル膜中のセルロースが凝固し、セルロースが再生され、セルロースを含有する多孔膜が得られる。セルロースが再生し、凝固したセルロースを含む多孔膜が形成されることで、セルロースを含有するゲル膜に含まれる臭化リチウムが分離される。
セルロースを含有するゲル膜に接触させる凝固溶媒としては、臭化リチウム塩を溶解しうる溶媒を用いる。
凝固溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル;テトラヒドロフラン等のエーテル;水等が好ましい。
凝固溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
凝固溶媒の接触は、ゲル膜形成工程において、セルロースを含有するゲル膜が0℃〜80℃程度の温度となるまで冷却された後、行なうことが好ましい。凝固溶媒を接触させるより好ましいゲル膜の温度は、ゲル膜形成工程において述べた冷却温度のとおりである。
セルロースを含有するゲル膜へ凝固溶媒を接触させる方法には特に制限はない。
ゲル膜形成工程において得られたセルロースを含有するゲル膜は自立膜であるため、例えば、支持体から剥離したゲル膜を凝固溶媒中に浸漬してゲル膜を凝固溶媒と接触させる方法が挙げられる。
ゲル膜に凝固溶媒を接触させる他の方法としては、セルロースを含有するゲル膜が形成された支持体ごと、凝固溶媒槽中に浸漬して、接触させる方法、セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒をシャワー、スプレー等で付与して接触させる方法等が挙げられる。
セルロースを含有するゲル膜を凝固溶媒に浸漬する方法をとる場合、セルロースの再生が効率よく行なわれるという観点から、凝固溶媒槽中の凝固溶媒を撹拌することが好ましい。凝固溶媒槽の撹拌速度としては、例えば、30rpm〜1000rpmの範囲とすることができる。凝固溶媒槽の撹拌は、凝固溶媒槽に撹拌翼などの撹拌装置を導入すること、凝固溶媒槽中の凝固溶媒を循環させること等により行なうことができる。
なお、上記撹拌速度は一例であり、使用する分散媒の種類、セルロース原料、セルロース溶液の濃度及び粘度、撹拌機における撹拌羽根の形状及びサイズ、反応容器の種類等によって撹拌条件は適宜選択される。
凝固工程では、凝固溶媒と接触することで、凝固したセルロースを含有する多孔膜凝固膜が形成され、再生したセルロースと臭化リチウムとが分離される。
セルロースを含有する多孔膜凝固膜から臭化リチウムを除去する処理を、以下、脱塩処理と称することがある。
凝固工程にて得たセルロースを含有する多孔膜から、水洗等により残余の凝固溶媒、臭化リチウム塩等の不純物を除去して、本発明のセルロース多孔膜を得ることが好ましい。また、セルロースを含有する多孔膜に架橋剤を接触させてセルロースに架橋構造を形成して架橋構造を有するセルロース多孔膜を得ることもできる。
まず、凝固工程において得られた再生したセルロースを含有する多孔膜から凝固溶媒をデカンテーション、ろ過等により除去して得られた多孔膜は、分散媒、凝固溶媒等の有機溶媒、臭化リチウム塩、界面活性剤等の不純物を含む多孔膜である。
セルロース溶液が冷却されてセルロースを含有するゲル膜となり、ゲル膜が凝固して多孔膜となる際には、いずれの工程においても膜厚が大きく変わることはない。従って、液膜形成工程において、セルロース溶液膜の膜厚を制御することにより、得られるセルロース多孔膜の膜厚を制御することができる。
(IV)付加的な任意の工程
本発明のセルロース多孔膜の製造方法では、既述の工程に加え、さらに、以下に例示する如き付加的な任意の工程を有していてもよい。
任意の工程としては、凝固工程後に未精製の多孔膜を洗浄して不純物を除去する洗浄工程、多孔膜に架橋構造を形成し、膜強度を向上させたセルロース多孔膜を得る架橋工程、洗浄工程及び架橋工程の少なくともいずれかを経て得られた湿潤状態のセルロース多孔膜を十分に乾燥させるための凍結乾燥工程等が挙げられる。
(IV−1)洗浄工程
本発明においては、前記凝固工程を経て得られた多孔膜を洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。
洗浄工程は、凝固工程を経て得られた未精製の多孔膜を、水、水性溶媒等を含む洗浄液により洗浄して不純物を除去し、精製されたセルロース多孔膜を得る工程である。
凝固工程を経て得られた未精製の多孔膜中には、セルロース溶液の調製に使用された臭化リチウムに由来する臭化物イオン、リチウムイオン、溶剤等の種々の不純物が含まれている。
また、多孔膜に、後述する架橋工程を行なった後は、多孔膜中には、架橋剤、界面活性剤、溶剤等の種々の不純物が含まれる。
このため、洗浄工程を実施して不純物を除去することが好ましい。
後述する架橋工程を行なう場合には、洗浄工程は、架橋工程の前及び後に少なくともいずれかに行なうことができる。
架橋工程における架橋反応効率を向上させる観点からは、架橋工程の前に洗浄工程を実施することが好ましい。また、架橋工程の前及び後に洗浄工程を行なうことがより好ましい。
洗浄工程に用いる洗浄液は、水、メタノール、エタノール等の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することができる。洗浄液の主成分としては、水、エタノール、及び水とエタノールとの混合物が好ましく、水がより好ましい。
洗浄液には、目的に応じて、さらに界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
洗浄液に用いられる水には特に制限はないが、不純物が少ないという観点から、蒸留水、イオン交換水、純水等が好ましい。
洗浄工程における洗浄方法は公知の方法を制限なく適用することができる。洗浄方法としては、例えば、多孔膜を洗浄液と接触させて洗浄し、その後、洗浄されたセルロース多孔膜と洗浄液とを分離する方法、液透過性の容器内に配置した多孔膜に洗浄液を連続的に供給して洗浄する方法等が挙げられる。
多孔膜を洗浄液と接触させて洗浄する場合、洗浄液を撹拌する操作を行なってもよい。また、洗浄液を換えて2回以上行なってもよい。多孔膜を洗浄液と接触させて洗浄する場合、使用する洗浄液の量は、多孔膜と十分に接触する量であることが、洗浄性がより良好となるという観点から好ましい。
洗浄工程を経て不純物が除去されたセルロース多孔膜は、そのまま各種の用途に使用することができる。
(IV−2)架橋工程
本発明の製造方法により得られたセルロース多孔膜の強度をさらに高めるため、本発明の製造方法では、得られたセルロースの多孔膜に対し、架橋剤を用いてセルロースに架橋構造を形成させる架橋工程をさらに有していてもよい。
架橋構造を有するセルロース多孔膜は機械的強度、特に破断強度に優れているため、分離膜、ろ過膜等として用いた場合に、高線速度下、高圧力下等における使用にも好適である。
さらに、引張強度が向上することにより、セルロース多孔膜を連続的に製造する際の巻き取りにおいても、多孔膜が破断したりする事態の発生が抑制され、より生産性よく多孔膜を製造することができる。
架橋工程で用いられる架橋剤、及び架橋反応条件に特に制限はなく、得られるセルロース多孔膜に必要な強度を付与する条件を考慮して、公知の技術を用いて行うことができる。
架橋工程に用いうる架橋剤としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリン等のハロヒドリン;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能性ポリエポキシドを挙げることができる。なかでも、セルロース多孔膜の強度がより向上するという観点から、架橋剤としてエピクロロヒドリンを用いることが好ましい。
架橋工程は、凝固工程を経て得られた多孔膜を、架橋剤を含むアルカリ性水溶液もしくは架橋剤を含む有機溶媒に接触させ、0℃〜90℃の温度範囲で、1時間〜24時間、十分に反応させる方法により行うことができる。
アルカリ性水溶液もしくは有機溶媒における架橋剤の含有量には特に制限はないが、セルロース多孔膜1容量部に対して、架橋剤0.1容量部〜10容量部の範囲であることが好ましい。また、架橋反応の効率を高めるため、架橋剤を含有するアルカリ性水溶液もしくは有機溶媒に水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を含有させることが望ましい。
多孔膜に対し、架橋工程を実施することで、多孔膜に含まれるセルロースが架橋構造を形成し、その結果、架橋工程を経て得られたセルロース多孔膜は、凝固工程を経て得られた架橋工程を実施していない多孔膜に比較して、強度がより向上する。
既述の架橋工程の実施に先だって、凝固工程で得られた多孔膜を、水を含む洗浄液で洗浄する水洗工程を行なうことが好ましい。
未精製の多孔膜中には、多孔膜の形成に使用された臭化リチウムに由来する臭化物イオン、リチウムイオン、さらに溶剤などの種々の不純物が含まれている。
本発明者らの検討によれば、架橋工程時に、多孔膜中に臭化物イオン、リチウムイオン等が残存すると、セルロース分子同士の凝集、及び、架橋剤によるセルロース同士の架橋構造の形成が阻害される懸念があることがわかった。一方、リチウムイオン、臭化物イオンの残存量が少ないことで、セルロース分子同士の凝集が強固となり、強固な架橋構造が形成され、得られたセルロース多孔膜はより良好な機械的強度を発現できると考えられる。
従って、機械的強度のより高いセルロース多孔膜を得る観点から、未精製の多孔膜を得た後、水洗工程を行なって多孔膜中の不純物を除去した上で架橋工程を実施することが好ましい。
水洗工程に用いる洗浄液は、水であってもよく、水と親水性溶剤及び界面活性剤等から選ばれる1種以上の成分とを含む洗浄液であってもよい。なかでも、洗浄液としては、水が好ましい。
洗浄液に用いられる水には特に制限はないが、不純物が少ないという観点から、蒸留水、イオン交換水、純水等が好ましい。
架橋工程に先立つ水洗工程では、多孔膜に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンのそれぞれが、多孔膜の乾燥質量1kg当たり2000mmol以下となるまで水洗を行なうことが、架橋構造の形成効率をより向上させる観点から好ましい。リチウムイオン、及び臭化物イオンは、それぞれ多孔膜の乾燥質量1kg当たり、1000mmol以下であることがより好ましく、800mmol以下であることがさらに好ましく、200mmol以下であることが特に好ましい。
架橋工程前の多孔膜中に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量の測定対象である乾燥したセルロース多孔膜は、以下の如くして得ることができる。
リチウムイオン及び臭化物イオンの含有量の測定対象として好適な乾燥したセルロース多孔膜は、凝固工程を経て得られた多孔膜、好ましくは水洗処理を行なった湿潤状態のセルロース多孔膜をアセトンにより溶媒置換し、乾燥して作製することができる。乾燥条件としては、例えば、真空下、40℃にて5時間乾燥する条件が好ましく挙げられる。
多孔膜中の残存リチウムイオンの測定は、ICP発光分光分析装置(Optima 7300 DV、パーキンエルマー社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なうことができる。測定は、乾燥した多孔膜を酸(硝酸の70質量%水溶液)で溶液化し、溶液に含まれるリチウムイオンを定量し、多孔膜の乾燥質量1kg当たりのリチウムイオン含有量を算出する。
多孔膜中の残存臭化物イオンの測定は、燃焼式ハロゲン分析装置(AQF−100、三菱化学アナリテック社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なうことができる。乾燥した多孔膜を燃焼させ、発生した臭素を吸収液(過酸化水素水)に吸収させる。臭化物イオンの定量はイオンクロマトグラフ(ICS−1500、ダイオネクス社製)を用いて行ない、多孔膜の乾燥質量1kg当たりの臭化物イオン含有量を算出する。
架橋工程に先立つ洗浄工程では、測定されたリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量がそれぞれ2000mmol以下となるまで洗浄することが好ましいことは既述の通りである。洗浄方法には特に制限はなく、目的とするリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量低減が達成できる限り、公知の洗浄方法を任意に適用することができる。
洗浄工程としては、例えば、十分な量の水を含む洗浄液による洗浄処理を1回行なってもよく、洗浄液を換えて洗浄処理を2回以上行なってもよい。
洗浄工程における洗浄処理の回数、条件等は、必要とするセルロース多孔膜の強度、目的とする不純物含有量の低減量を勘案して適宜決定することができる。
架橋工程の後に、既述の洗浄工程をさらに行なって、架橋構造を形成したセルロース多孔膜中に残存する架橋剤、溶媒等の不純物を除去することが好ましい。
(IV−3)凍結乾燥工程
得られたセルロース多孔膜から、膜内に残存する洗浄液、水分、溶媒等の液状成分を除去し、乾燥したセルロース多孔膜を得るため、本発明の製造方法は、セルロース多孔膜を凍結乾燥する凍結乾燥工程をさらに含んでもよい。
凍結乾燥工程は、まず、湿潤状態のセルロース多孔膜にエタノール等を接触させ、セルロース多孔膜に含まれる水分等をエタノール等で溶媒置換した後、エタノールをさらにt−ブタノールで溶媒置換する処理を行なう溶媒置換工程と、溶媒置換工程後のセルロース多孔膜を、−18℃以下にて凍結し、常法により凍結乾燥を行なう工程と、を含むことができる。
所望により凍結乾燥工程を行なうことで、水、有機溶剤等の液状成分を含まない乾燥したセルロース多孔膜を得ることができる。
セルロース多孔膜の比表面積、細孔径等を測定する場合には、乾燥したセルロース多孔膜を用いることが好ましく、凍結乾燥したセルロース多孔膜を用いることがより好ましい。
[多孔膜の連続的な製造]
既述の工程のうち、液膜形成工程において支持体上に連続的に液膜を形成し、形成された液膜を搬送しながら冷却してセルロースを含有するゲル膜を形成し、凝固溶媒に接触させることで、連続的に多孔膜を製造することができる。
以下、溶融押出し装置を用いた多孔膜の連続的な製造方法の一例を説明する。
図1は、多孔膜の連続的な製造方法に用いられる多孔膜製造装置10の一例を示す概略構成図である。多孔膜製造装置10は、セルロース溶液を充填した原料タンク12とヒーター14とスクリュー16とを備える溶融押出し装置18、得られたセルロース溶液膜を冷却してゲル膜を形成する冷却装置20、形成されたゲル膜を凝固溶媒と接触させて多孔膜を形成させる、ゲル膜搬送用の駆動ロール22Aを備えた凝固溶媒槽22、形成された多孔膜を水洗する、多孔膜搬送用の駆動ロール24Aを備えた水洗槽24、水洗されたセルロース多孔膜を搬送し、巻取機28へ誘導する引取機26及び形成されたセルロース多孔膜を巻き取る巻取機28を備える。
セルロース溶液調製工程で調製されたセルロース溶液を溶融押出し装置18の原料タンク12に供給する。セルロース溶液は、取り扱い性向上等を目的として冷却してゲル状とした上で原料タンク12に供給してもよい。原料タンク12内のセルロース溶液は、ヒーター14とスクリュー16とを備える溶融押出し装置18内に供給される。溶融押出し装置18内は、ヒーターにより90℃以上の予め定めた温度に維持され、溶融押出し装置18内においてセルロース溶液は90℃以上の温度に維持され、スクリュー16で混合され、Tダイを備えた吐出口18Aに誘導され、吐出口18Aに備えられたTダイを介して目的とする膜厚のセルロース溶液膜(F)が支持体上に供給される。
支持体上のセルロース溶液膜(F)は、冷却装置20に連結されたサイジングダイ20Aを経て冷却装置20内に搬送される。
冷却装置20は図示されない冷却部材を備え、冷却装置20内を搬送されたセルロース溶液膜(F)は、冷却装置20内において、予め定められた冷却速度で冷却されて冷却装置20の搬出口に至る間にゲル膜(G1)となる。冷却速度は、冷却装置20内の温度と、搬送速度を制御することにより制御することができる。
形成されたゲル膜(G1)は、自立膜である。ここで自立膜とは、形成されたゲル膜を把持して持ち上げた場合、伸びたり破断したりせず、膜としての形状を維持する膜を指す。
形成されたゲル膜(G1)は、凝固溶媒槽22に備えたられた駆動ローラ22Aにより凝固溶媒を含む凝固溶媒槽22に導入され、ゲル膜(G1)と凝固溶媒とが接触し、ゲル膜が凝固した多孔膜(G2)が凝固溶媒槽22中で形成される。凝固溶媒槽22中には、ゲル膜と凝固溶媒とを十分に接触させるための凝固溶媒を撹拌する図示されない撹拌装置が備えられている。凝固溶媒槽22中において凝固溶媒と効率よく接触したゲル膜(G1)は、ゲル膜に含まれるセルロースが再生された未精製の多孔膜(G2)となる。
形成された未精製の多孔膜(G2)は、凝固溶媒槽22から搬出され、駆動ロール24Aにより水洗槽24に搬送され、水洗槽24内にて洗浄処理されて、多孔膜内に残存する余分な凝固溶媒、臭化リチウム塩等の不純物が除去され、精製されたセルロース多孔膜(C)が形成される。
セルロース多孔膜(C)は、破損を防止し、効率よく巻き取りを行なうための引取機26を介して巻取機28に搬送され、巻取機28に巻取られる。
図1に示すような多孔膜製造装置10を用いることで、連続的にセルロース多孔膜を製造することができる。
図1の多孔膜製造装置10では、水洗槽24中において洗浄処理されたセルロース多孔膜(C)は、そのまま巻取機28に巻取られるが、本発明の製造方法は本実施形態に限定されない。
例えば、必要に応じて、水洗槽24と引取機26との間に乾燥装置を設けて、セルロース多孔膜(C)を乾燥してから巻取機28で巻取ってもよい。
さらに、任意の工程である架橋工程を行なうために、凝固溶媒槽22の下流側であり水洗槽24の前に、或いは、水洗槽24の下流側に、凝固工程を経て得られた多孔膜と架橋剤と接触させて架橋を行なう、温度調節装置を備えた架橋剤含有槽を設けてもよい。
凝固工程を経て得られた多孔膜を架橋剤含有槽内において架橋剤溶液と接触させて、多孔膜に含まれるセルロースに架橋構造を形成させることで、未架橋の多孔膜よりも、より強度の高いセルロース多孔膜を連続的に形成することもできる。
なお、架橋工程は、既述の如く架橋剤含有槽を用いて連続的に行なってもよいが、得られた多孔膜を、取り出して所定の長さに裁断し、裁断した多孔膜を架橋剤と接触させるバッチ処理により行なってもよい。
[セルロース多孔膜]
本発明のセルロース多孔膜は、既述の本発明のセルロース多孔膜の製造方法により得られたセルロース多孔膜である。
本発明のセルロース多孔膜は、凝固工程を経て再生されたセルロースを含有する多孔膜から臭化リチウム等が除かれることにより形成された細孔を有し、機械的強度の良好な多孔膜となる。
本発明の製造方法により得られたセルロース多孔膜は、内部に細孔を有し、機械的強度が良好であるため、各種の用途に好適に使用しうる。
以下に、本発明のセルロース多孔膜の好ましい物性を挙げる。
[平均細孔径]
本発明のセルロース多孔膜の細孔径は、平均細孔径で10nm以上2000nm以下であることが好ましい。セルロース多孔膜の細孔径は、20nm以上1000nm以下がより好ましく、50nm以上800nm以下がさらに好ましい。
得られたセルロース多孔膜の細孔径が上記範囲であると、例えば、クロマトグラフィーの担体、ろ過膜、分離膜等として使用した場合、試料として適用される物質の拡散が十分に行なわれ、セルロース多孔膜が以下に示す如き高い比表面積を有するために、優れた吸着性能が発現される。
平均細孔径の測定方法については、実施例において詳述する。
[比表面積]
セルロース多孔膜の比表面積は、140m/g以上であることが好ましく、150m/g以上であることがより好ましく、160m/g以上であることがさらに好ましく、180m/g以上であることが特に好ましい。
比表面積の上限には、特に制限はないが、比表面積が大きすぎると多孔膜内の物質拡散が阻害されることがあり、多孔膜内の物質拡散阻害を抑制するという観点からは1000m/g以下であることが好ましい。
例えば、比表面積が140m/g以上である場合には、例えば、クロマトグラフィーの担体に用いた場合等に吸着性能がより向上する。
本発明の製造方法によれば、既述の諸条件を調整することで、任意の膜厚、比表面積を有するセルロース多孔膜を調製できることが大きな特徴である。
比表面積の測定方法については、実施例において詳述する。
[引張破断強度]
本発明のセルロース多孔膜を、ろ過膜、分離膜、各種担体等に使用することを考慮すれば、セルロース多孔膜は実用上の必要を満たす程度の良好な機械的強度を有することが好ましい。
本発明における「機械的強度」とは、セルロース多孔膜の引張破断強度が実用上十分な強度であることを意味する。
本発明における引張破断強度は、既述の凍結乾燥工程を経て得られた凍結乾燥膜を2cm×7cmの短冊状に切り出し、両端1cmずつをチャック部にて挟み、エー・アンド・デイ社製、引張破断機:テンシロンRTG−1310(商品名)を使用し、室温において1cm/minにて引張試験を行なった際の、破断時までの最大応力の点を引張破断強度と定義する。
本発明の製造方法により得られるセルロース多孔膜は、既述の測定条件で測定した引張強度が、450N/mm以上であることが好ましく、550N/mm以上であることがより好ましく、650N/mm以上であることがさらに好ましい。
[イオン含有量]
セルロース多孔膜におけるリチウムイオン含有量及び臭化物イオン含有量は、乾燥多孔膜1kg当たり、それぞれ0.0001mmol以上100mmol以下であることが好ましい。
本発明のセルロース多孔膜は、残存するリチウムイオン量及び臭化物イオン量が、得られたセルロース多孔膜の機械的強度及び抗体精製などの不純物の少ない用途への適合性の観点から、それぞれ、乾燥多孔膜1kgあたり100mmol以下であることが好ましく、20mmol以下であることがさらに好ましい。 リチウムイオン、及び臭化物イオンのうち、少なくともいずれかのイオンが、セルロース多孔膜に多く残存すると、例えば、セルロース多孔膜を吸着用担体、各種クロマトグラフィー担体等に用いる場合に、分離精製物に、セルロース多孔膜中に残存するリチウムイオン、臭化物イオンが混入して、精製物の品質の悪化を招く可能性があるためである。得られた精製物中に不純物としてのイオンが含まれる場合には、イオンの含有量を低減するために精製物の洗浄回数を増やすことが必要となり、製造コストの増大を招くため、セルロース多孔膜中のリチウムイオン、及び臭化物イオンの含有量は、既述の如く、いずれも、乾燥したセルロース多孔膜1kgあたり100mmol以下の範囲とすることが好ましい。
セルロース多孔膜の生産性及び一般的な測定装置を用いて測定した場合の検出限界を考慮すると、リチウムイオン含有量及び臭化物イオン含有量は、乾燥粒子1kg当たり、それぞれ0.01mmol以上100mmol以下であってもよく、0.1mmol以上100mmol以下であってもよく、1mmol以上100mmol以下であってもよい。
リチウムイオン又は臭化物イオンの含有量の測定に用いる乾燥セルロース多孔膜は、水湿潤状態のセルロース多孔膜をアセトンにより溶媒置換し、40℃にて5時間、減圧下にて真空乾燥することにより作製することができる。
残存リチウムイオンの含有量の測定は、ICP発光分光分析装置(Optima 7300 DV、パーキンエルマー社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なう。測定は、乾燥セルロース多孔膜を酸(硝酸の70質量%水溶液)で溶解した溶液を得て、得られた溶液中のリチウムイオンを定量することで行なう。
残存臭化物イオンの含有量の測定は、燃焼式ハロゲン分析装置(AQF−100、三菱化学アナリテック社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なう。乾燥セルロース多孔膜を燃焼させ、発生した臭素を吸収液(過酸化水素水)に吸収させ、吸収液中の臭化物イオンの量を測定した。臭化物イオンの定量にはイオンクロマトグラフ(ICS−1500、ダイオネクス社製)を用いる。
本発明の新規なセルロース多孔膜は、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー用の担体、分離膜、ろ過膜、吸着材、検査薬やバイオリアクター等の担体、細胞培養用の足場材等として利用可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
[実施例1]
(セルロース溶液調製工程)
結晶性セルロース粉末〔KCフロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕〕2.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液47.5gに加え、110℃にて加熱溶解して、セルロース溶液を調製した。
(液膜形成工程)
得られたセルロース溶液を、温度が40℃となるまで放冷し、ゲル化させた。ゲル化したセルロース溶液を10g秤量し、厚さ500μmのクリアランスにて2枚のステンレス板の間に挟み、プレス装置によりプレスしてセルロース溶液膜を成形した。
プレス製膜には溶融プレス装置(東洋精機(株)製 ミニテストプレス−10)を用いた。ステンレス板の間に挟んだゲル状のセルロース溶液を、プレス装置により110℃、2MPaの圧力にて圧縮し、セルロース溶液膜を形成した。温度調整は、プレス板に備えられた温度調節装置により行なった。
(ゲル膜形成工程)
形成されたセルロース溶液膜を、プレス板に挟んだまま、プレス板に備えられた温度調節装置を制御して1℃/分にて室温付近まで冷却して、セルロースを含有するゲル膜を形成した。得られたゲル膜は自立膜であった。
(凝固工程)
プレス板間から得られたセルロースを含有するゲル膜を取りだし、凝固溶媒であるメタノール 500mL(500cm)を入れた容器に得られたゲル膜を浸漬し、振とう機(アズワン社製、ネオシェーカーNS−S:商品名)を用いて、振とう回転数:30rpmの条件で室温において1日間振とうしてゲル膜に含まれるセルロースを凝固させ、セルロースを含有する多孔膜を得た。
得られた多孔膜をメタノールで洗浄後、大量のイオン交換水により洗浄し、残存する塩、溶媒等を除去し、湿潤状態の厚さ500μmのセルロース多孔膜を得た。
[セルロース多孔膜の評価]
実施例1において得られたセルロース多孔膜を、50容量%エタノール水溶液、70容量%エタノール水溶液、95容量%エタノール水溶液、及び、100容量%エタノールにて順次置換処理を行った。さらにセルロース多孔膜に含まれるエタノールをt−ブタノールに置換した後、凍結(−18℃以下)し、その後、凍結乾燥することにより、イオン含有量、細孔径測定用の凍結乾燥セルロース多孔膜を得た。以下の実施例、比較例においても、評価用の多孔膜は、凍結乾燥セルロース多孔膜を用いた。
以下の実施例、比較例において得られたセルロース多孔膜の評価結果を下記表1〜表4に示す。
(イオン含有量の測定)
セルロース多孔膜中のリチウムイオンの測定は、ICP発光分光分析装置(Optima 7300 DV、パーキンエルマー社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なう。まず、凍結乾燥セルロース多孔膜を酸(硝酸の70質量%水溶液)で溶解し、溶液に含まれるリチウムイオンを定量し、多孔膜の乾燥質量1kg当たりのリチウムイオン含有量を算出した。
セルロース多孔膜中の臭化物イオンの測定は、燃焼式ハロゲン分析装置(AQF−100、三菱化学アナリテック社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なう。凍結乾燥セルロース多孔膜を燃焼させ、発生した臭素を吸収液(過酸化水素水)に吸収させた。臭化物イオンの定量はイオンクロマトグラフ(ICS−1500、ダイオネクス社製)を用いて行ない、多孔膜の乾燥質量1kg当たりの臭化物イオン含有量を算出した。
凍結乾燥セルロース多孔膜に残存するリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量を測定したところ、リチウムイオンが乾燥膜1kgあたり14.5mmolであり、臭化物イオンが乾燥膜1kgあたり16.3mmolであった。
(平均細孔径、最大細孔径、及び比表面積の測定)
得られた凍結乾燥セルロース多孔膜を使用し、島津製作所製、マイクロメリティックス細孔分布測定装置 オートポア9520形(商品名)を用いた水銀圧入法により、細孔分布解析を実施した。
凍結乾燥セルロース多孔膜を試料として約0.05gを5cmのセルに量り取り、初期圧約5kPaにて測定した。算出されたメジアン径を平均細孔径として採用した。
得られた細孔分布において、検出された最も大きい細孔径の値を最大細孔径とした。得られた細孔分布より単位質量あたりの表面積を計算し、得られた数値を比表面積とした。
(引張強度の測定)
凍結乾燥セルロース多孔膜を2cm×7cmの短冊状に切り出し、両端1cmずつをチャック部で挟み、引張試験を実施した。引張試験は、エー・アンド・デイ社製、テンシロンRTG−1310を使用し、室温において1cm/minの速度にて引張、破断するまでの最大応力の点を引張強度とした。各実施例において10回測定した平均値を求め、下記基準にて評価した。
A〜Cランクはセルロース多孔膜として実用上十分な破断強度であり、Dランクは実用に供し得ない破断強度である。
A:650N/mm以上
B:550N/mm以上650N/mm未満
C:450N/mm以上550N/mm未満
D:450N/mm未満
[実施例2]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から3℃/分に変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例3]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から10℃/分に変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
また、実施例3で得た凍結乾燥セルロース多孔膜に対し、撮影のため、オスミウムによる蒸着処理を実施した。その後、オスミウムによる蒸着処理を施したセルロース多孔膜に対し、走査型電子顕微鏡(SEM)像(倍率:200倍及び3万倍)を撮影した。図2は、実施例3で得た凍結乾燥セルロース多孔膜を、走査型電子顕微鏡で撮影した倍率200倍のSEM像であり、図3は、実施例3で得た凍結乾燥セルロース多孔膜を撮影した倍率3万倍のSEM像である。
図2のSEM像より、実施例3で得たセルロース多孔膜は平滑な表面を有していることが分かる。図3のSEM像より、実施例3で得たセルロース多孔膜は微細であり均一な空隙を有していることが分かる。
[実施例4]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から20℃/分に変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例5]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から60℃/分に変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例6]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から100℃/分に変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例7]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から300℃/分に変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例8]
凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをアセトンに換えた以外は実施例3と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例9]
凝固工程における凝固溶媒であるメタノールを水に換えた以外は実施例3と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例10]
セルロース溶液調製工程において、結晶性セルロース粉末3.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液46.5gに加え、110℃にて加熱溶解して、濃度が7質量%のセルロース溶液を調製した。得られたセルロース溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例11]
実施例3と同様にしてセルロース多孔膜を形成し、得られた多孔膜をメタノールで洗浄後、大量のイオン交換水により洗浄した。その後、洗浄後の多孔膜に対して、以下の架橋工程を実施した。
(架橋工程)
湿潤状態のセルロース多孔膜10gに、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、45℃にて10分間加温した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を20mg、架橋剤としてエピクロロヒドリン10mLを加え、45℃で3時間反応させ、セルロース多孔膜に架橋構造を形成させた。その後、多量の水で洗浄して架橋構造が形成されたセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例12]
(セルロース溶液調製工程)
結晶性セルロース粉末〔KC−フロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕2.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液47.5gに加え、110℃にて加熱溶解してセルロース溶液を得た。
(セルロース溶液粘度の測定)
セルロース溶液調製工程で得たセルロース溶液40mLを50mLガラス製サンプル瓶内に入れて、オイルバスに浸し、溶液温度を110℃に保持した。振動式粘度計(ビスコメイト VM−100A:商品名、(株)セコニック製)のプローブを110℃のセルロース溶液に浸し、粘度を測定した。測定に用いるプローブの種類により、測定可能な粘度が異なるため、粘度と使用しうるプローブの関連を考慮し、適切なプローブを使用して測定を行なった。
粘度が0.04Pa・s〜1Pa・sの範囲ではLプローブを、粘度が0.1Pa・s〜10Pa・sの範囲ではMプローブを、粘度が5Pa・s〜500Pa・sの範囲ではHプローブを用いた。
実施例12にて調製したセルロース溶液の110℃における粘度は46Pa・sであった。
(液膜形成工程)
事前に恒温機にて使用するバーコーター(クリアランス500μm)及び支持体に用いるステンレス板を110℃に加熱した。
溶液調製工程で得られたセルロース溶液を110℃に加熱し、バーコーターを用いて支持体である平板状のステンレス板上に素早く塗布してステンレス板上にセルロース溶液膜を形成した。セルロース溶液は支持体上に適度に拡がり、厚みの均一な液膜が形成された。
その後、直ちにステンレス板ごと110℃の恒温機に戻した。
(ゲル膜形成工程)
液膜を形成した支持体を入れた恒温機の温度設定を下げることによりセルロース溶液膜を冷却速度1℃/分にて室温まで冷却し、室温においてゲル膜を形成した。
冷却速度は、以下のように測定した。まず、液膜表面の温度をGRAPFTEC社製 midi LOGGER GL900を用いて、装置に備えられた熱電対を直接セルロースを含有する液膜表面に接触させて測定し、その後、室温まで冷却して形成されたゲル膜の温度を液膜表面温度の測定と同様にして行なった。液膜表面温度とゲル膜表面温度との差を、液膜を室温に冷却するまでに掛かった時間で除したところ、冷却速度は1℃/分であった。
(凝固工程)
得られたゲル膜を支持体上から剥離し、凝固溶媒であるメタノール 500mLに浸漬し、振とう機を用いて室温において1日振とうした。
得られたセルロースを含有する多孔膜をメタノールで洗浄後、大量のイオン交換水により洗浄し、残存する塩、溶媒等を除去し、湿潤状態のセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例13]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から3℃/分に変えた以外は実施例12と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例14]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から10℃/分に変えた以外は実施例12と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例15]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から100℃/分に変えた以外は実施例12と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例16]
ゲル膜形成工程における液膜の冷却速度を、1℃/分から300℃/分に変えた以外は実施例12と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例17]
凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをアセトンに換えた以外は実施例14と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例18]
セルロース溶液調製工程において、結晶性セルロース粉末3.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液46.5gに加え、110℃にて加熱溶解して、セルロース濃度7質量%のセルロース溶液を調製した。得られたセルロース溶液を用いたこと以外は、実施例14と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
セルロース溶液の110℃における粘度を実施例12と同様に測定したところ、114Pa・sであった。セルロース溶液は支持体上に適度に拡がり、厚みの均一な液膜が形成された。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例19]
実施例14と同様にしてセルロース多孔膜を形成し、得られた多孔膜をメタノールで洗浄後、大量のイオン交換水により洗浄した。その後、洗浄後の多孔膜に対して、以下の架橋工程を実施した。
(架橋工程)
湿潤状態のセルロース多孔膜10gに、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、45℃にて10分間加温した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を20mg、架橋剤としてエピクロロヒドリン10mLを加え、45℃で3時間反応させ、セルロース多孔膜に架橋構造を形成させた。その後、多量の水で洗浄して架橋構造が形成されたセルロース多孔膜を得た。
[実施例20]
本実施例では、図1に示すセルロース多孔膜製造装置10を用いてセルロース多孔膜を作製した。
(セルロース溶液調製工程)
結晶性セルロース粉末〔KC−フロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕250gを60質量%の臭化リチウム水溶液4750gに加え、110℃にて加熱溶解してセルロース溶液を得た。
(液膜形成工程)
得られたセルロース溶液を室温まで放冷することで、ゲル状のセルロース溶液を得た。得られたゲル状のセルロース溶液を原料として、
ゲル状のセルロース溶液を、図1に示すセルロース多孔膜製造装置10における溶融押し出し装置18の原料タンク12に供給した。溶融押し出し装置18はヒーター14を備え、装置内部の温度が110℃に維持される。原料タンク12から供給されたゲル状のセルロース溶液は、50mmφの口径を有する溶融押し出し装置18内のスクリュー16により混合し、温度を110℃に維持した状態で、幅40mmのTダイ18Aによりシート状に連続的に押し出すことで、セルロース溶液膜(F)を形成した。
セルロース溶液の押し出し量は、厚み500μmのとなるセルロース溶液膜(F)が形成される量に調整した。
(ゲル膜形成工程)
押し出し成形されたセルロース溶液膜(F)を、サイジングダイ20Aを介して冷却装置20内に導入し、冷却装置内の温度及び冷却装置20内における搬送速度を制御することで、冷却速度を15℃/分とし、膜の表面温度が50℃となるまで冷却してセルロースを含有するゲル膜(G1)を形成した。
(凝固工程)
形成されたセルロースを含有するゲル膜(G1)を、駆動ロール22Aにより搬送し、凝固溶媒であるメタノールを満たした容量50Lの凝固溶媒槽22内に導入した。凝固溶媒槽中で、ゲル膜(G1)とメタノールとを接触させることでゲル膜中のセルロースを凝固させ、セルロースを含有する多孔膜(G2)を形成した。
(セルロース多孔膜の形成)
セルロースを含有する多孔膜(G2)を、駆動ロール24Aにより搬送して、イオン交換水を満たした容量200Lの水洗槽24中に導入し、過剰のイオン交換水により洗浄した。洗浄後のセルロース多孔膜(C)を、引取機26を介して巻取機28に搬送し、巻取機28でロールに巻き取って、長尺のセルロース多孔膜(C)を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[実施例21]
実施例20において使用したセルロース多孔膜形成装置10の水洗槽24の下流側にて、凝固工程まで実施例20と同様にして形成した多孔膜を回収した。
長尺のセルロースを含有する多孔膜を、長さ100mmに切断し、以下の架橋工程に供した。
(架橋工程)
湿潤状態のセルロース多孔膜10g当たり、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液10mLを満たした反応槽で、45℃にて10分間加温した後、セルロース多孔膜10g当たり、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を20mg、架橋剤としてエピクロロヒドリン10mLを加えて調製した架橋剤含有液を満たした架橋剤含有槽内で、45℃で3時間反応させ、セルロース多孔膜に架橋構造を形成させた。
その後、多量の水で洗浄して架橋構造が形成されたセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[比較例1]
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(シグマ・アルドリッチ社)80gに、結晶性セルロース粉末〔KC−フロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕2.9gを加え、セルロース含有量が3.5質量%のセルロース溶液を調製した。
得られたセルロース溶液2.5gを、縦5cm、酢酸エチル/エタノールの体積比率が80/20の混合溶媒を500mL含んだ横10cm、高さ8cmの直方体容器に流し込んだ。セルロース溶液が容器底面に広がり、セルロース多孔膜が形成された。30℃で2時間保持し、セルロース多孔膜を回収した。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[比較例2]
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(シグマ・アルドリッチ社)80gに、結晶性セルロース粉末〔KC−フロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕2.9gを加え、セルロース含有量が3.5質量%のセルロース溶液を調製した。
得られたセルロース溶液を実施例1で用いた溶融プレス装置のプレス板上に10g付与し、室温において、プレス板の温度を110℃とし、プレス圧2MPaにて厚さ1mmのクリアランスにて圧縮成形し、セルロース溶液膜を形成した。得られた液膜をプレス板間に挟んだまま10℃/分にて40℃となるまで冷却したが、ゲル膜は得られなかった。
[比較例3]
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(シグマ・アルドリッチ社)80gに,結晶性セルロース粉末〔KC−フロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕2.9gを加え、セルロース含有量が3.5質量%のセルロース溶液を調製した。
得られたセルロース溶液を、実施例12で用いたバーコーターを用いて液膜を形成した。事前に恒温機にて、使用するバーコーター(クリアランス 500μm)及びステンレス板を110℃に加熱した。セルロース溶液を110℃に加熱し、バーコーターを用いてステンレス板上に素早く塗布し、ステンレス板ごと110℃の恒温機に戻した。その後、恒温機の温度設定を下げることでセルロース溶液膜を冷却速度10℃/分にて40℃まで冷却したが、ゲル膜は得られなかった。
[比較例4]
実施例3においてセルロース溶液の調製に用いた臭化リチウムに換えてチオシアン酸カルシウムを等量用いてセルロース溶液を調製し、得られたセルロース溶液を用いた以外は実施例3と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[比較例5]
実施例14においてセルロース溶液の調製に用いた臭化リチウムに換えてチオシアン酸カルシウムを等量用いてセルロース溶液を調製し、得られたセルロース溶液を用いた以外は実施例14と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[比較例6]
セルロース溶液調製工程において、結晶性セルロース粉末の配合量を2.5gから0.5gに変えてセルロース溶液を調製し、得られた濃度1質量%セルロース溶液を用いた以外は実施例9と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。
[比較例7]
セルロース溶液調製工程において、結晶性セルロース粉末の配合量を2.5gから0.5gに変えてセルロース溶液を調製し、得られた濃度1質量%セルロース溶液を用いたこと、凝固溶媒としてメタノールに換えて水を用いたこと以外は実施例14と同様にしてセルロース多孔膜を得た。
得られたセルロース多孔膜を実施例1と同様に評価した。


表1〜表4の結果より、本発明の製造方法により得られたセルロース多孔膜は、微細な細孔を有し、比表面積が大きく、引張強度が実用上十分なレベルにあるため、クロマトグラフィーの担体、ろ過膜、分離膜等の種々の用途に好適に使用しうることがわかる。
他方、比較例の方法で得たセルロース多孔膜はいずれも、実施例に比較して細孔径が大きく、比表面積は小さく、多孔膜の引張強度も実用レベルに達していないことが分かる。比較例1〜3の結果より、セルロースの溶媒としてイオン液体を用いた場合には、セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件では多孔膜は形成できなかいことがわかる。比較例6及び7の結果より、セルロース溶液の濃度が低すぎる場合には、得られた多孔膜の細孔径が実施例に比較して大きく、且つ、実用上十分な引張り強度が得られないことがわかる。

Claims (16)

  1. セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解して、セルロース溶液全量に対し、セルロースを2質量%〜15質量%含有するセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、
    板状の支持体表面に調製されたセルロース溶液を付与し、支持体表面にセルロース溶液からなるセルロース溶液膜を、前記セルロース溶液の温度を90℃以上に調整して、セルロース溶液膜の周縁部が非拘束である条件で形成する液膜形成工程と、
    形成されたセルロース溶液膜を冷却速度1℃/分〜300℃/分で冷却し、セルロースを含有するゲル膜を得るゲル膜形成工程と、
    セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させてセルロースを凝固させ、多孔膜を得る凝固工程と、
    を含むセルロース多孔膜の製造方法。
  2. 前記液膜形成工程が、プレス成形機における板状の支持体表面に一定量のセルロース溶液を付与すること、及び、付与されたセルロース溶液を0.1MPa〜35MPaの圧力でプレス成形してセルロース溶液膜を形成することを含む請求項1に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  3. 前記液膜形成工程が、板状の支持体表面に塗布法によりセルロース溶液を連続的に又は断続的に付与してセルロース溶液膜を形成することを含む請求項1に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  4. 前記液膜形成工程が、板状の支持体表面に溶融押し出し装置によりセルロース溶液を連続的に又は断続的に付与してセルロース溶液膜を形成することを含む請求項1に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  5. 前記凝固工程を経て得られた多孔膜を洗浄する洗浄工程を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  6. 前記凝固工程を経て得られた多孔膜に、架橋剤を用いて架橋構造を形成する架橋工程を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  7. 前記溶液調製工程により得られたセルロース溶液の110℃における粘度が0.5Pa・s〜500Pa・sの範囲にある請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  8. 前記セルロースが、平均重合度50〜2000のセルロースである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  9. 前記凝固工程が、セルロースを含有するゲル膜の温度が20℃〜80℃の温度条件において、セルロースを含有するゲル膜に凝固溶媒を接触させる工程である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  10. 前記セルロース多孔膜を凍結乾燥させて凍結乾燥セルロース多孔膜を得る凍結乾燥工程を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜の製造方法により得られたセルロース多孔膜。
  12. 凍結乾燥した前記セルロース多孔膜を引張強度試験法により測定した引張破断強度が450N/mm以上である請求項11に記載のセルロース多孔膜。
  13. 凍結乾燥した前記セルロース多孔膜を水銀圧入法により測定した平均細孔径が10nm以上2000nm以下である請求項11又は請求項12に記載のセルロース多孔膜。
  14. 凍結乾燥した前記セルロース多孔膜を水銀圧入法により測定した比表面積が140m/g以上である請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜。
  15. 乾燥した前記セルロース多孔膜を1kgに含まれるリチウムイオン含有量が0.0001mmol以上100mmol以下である請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜。
  16. 乾燥した前記セルロース多孔膜1kgに含まれる臭化物イオン含有量が0.0001mmol以上100mmol以下である請求項11〜請求項15のいずれか1項に記載のセルロース多孔膜。
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