JP6176941B2 - 不均質セルロースフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
使用原料とともに表中の略号を説明する。各実施例並びに比較例はいずれもセルロース原料として、溶解パルプ(日本製紙ケミカル株式会社製)を使用した。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(下記式(ii)参照)(メルク株式会社製),略号“BMIMCl”を使用した。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド(下記式(iii)参照)(メルク株式会社製),略号“BMIMBr”を使用した。
N,N−ジメチルアセトアミド(東京化成工業株式会社製),略号“DMAc”、
ジメチルスルホキシド(ナカライテスク株式会社製),略号“DMSO”、
アセトニトリル(ナカライテスク株式会社製),略号“AcNt”、及び
nヘキサン(キシダ化学株式会社製),略号“nHex”を使用した。
トルエン(キシダ化学株式会社製)、
ベンゼン(キシダ化学株式会社製)、
キシレン(キシダ化学株式会社製)、
テトラヒドロフラン(キシダ化学株式会社製),略号“THF”、
酢酸エチル(キシダ化学株式会社製),略号“EtOAc”、
nヘキサン(前記同様)、
シクロヘキサン(キシダ化学株式会社製),略号“CHex”、及び
メチルシクロヘキサン(キシダ化学株式会社製),略号“MeCHx”を使用した。
アセトン(キシダ化学株式会社製)、
メチルエチルケトン(キシダ化学株式会社製),略号“MEK”を使用した。
はじめにセルロース原料(溶解パルプ)を粉砕機により綿状に粉砕した。粉砕したセルロース原料を非プロトン性有機溶媒中に投入し、セルロース原料をマグネティックスターラー(アズワン株式会社製,HOT−STIRRER HS−5BH)により同溶媒中に均一状に分散し分散物とした。
各実施例並びに比較例の条件により調製した粘質液を適量ガラス板に垂らし、アプリケータを用いて伸ばし膜状物とした。その後、表1ないし表6に開示の凝固用有機溶媒に常温下(20ないし30℃)、約5分間、ガラス板ごと膜状物を浸漬した。この時点でほぼ無色透明に変化した。凝固用有機溶媒から引き上げ、直ちにガラス板ごと膜状物を水浴に浸漬した。水浴への浸漬は常温下(15ないし25℃)においてほぼ瞬時(1分未満の秒単位)とした。たいてい、良品例の場合、水との接触により膜状物は白濁し、ガラス板から剥離した。続いて、膜状物を親水性有機溶媒で満たされた槽内に浸漬した。親水性有機溶媒との浸漬は常温下(15ないし25℃)においてほぼ瞬時(1分未満の秒単位)とした。
図2ないし図6は不均質セルロースフィルムのガラス板と接触していない面を電子顕微鏡で撮影した写真である。図3は倍率3000倍でありその他は倍率1500倍である。図2及び図3は実施例2の表面である。フィルム表面に凹凸が存在する。この凹凸は細かな窪みの無数の連続である。図4は実施例4の表面である。実施例2と同様にフィルム表面に同形状の凹凸が存在する。図5は実施例15の表面である。幾分、フィルム表面の凹凸量は少なくなっているものの、同形状の凹凸が存在する。図6は比較例13の表面である。実施例のフィルムとの比較から自明であるように、表面の凹凸はほとんどなく、平滑面である。
電子顕微鏡観察に加え、Micrometritics社製,TriStar 3000 V6.08Aを使用し、窒素吸着法により不均質セルロースフィルムの比表面積(m2/g)を測定して比較を試みた。測定結果は実施例1及び2、比較例1について、厚さ(mm)とともに比表面積を示した表7である。測定方法の「P/P0」とは、窒素の分圧(P)と窒素の飽和蒸気圧(P0)の相対圧から求めた比表面積である。「BET」はBrunauer,Emmett,Teller(BET)の吸着等温式から算出した比表面積である。
・使用原料の種類
N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルを使用した実施例からは、白濁したセルロースの膜状物を得ることができた。しかしながら、比較例4のnヘキサンの使用からは膜状物の生成自体ができなかった。この比較から、反応に際し極性を有する種類の非プロトン性有機溶媒(非プロトン性極性有機溶媒)の選択が必要である。
実施例9の場合、非プロトン性有機溶媒としてのアセトニトリル量を相対的に少なくすることができる。このことから、イオン液体(前者):非プロトン性有機溶媒(後者)として70:30の重量混合比を導き出すことができる。ただし、アセトニトリル使用の場合、出来上がるフィルムが幾分脆い。そこで、フィルム強度の観点から、非プロトン性有機溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドやジメチルスルホキシドがより好ましい。この場合、比較例2では非プロトン性有機溶媒へのセルロース原料の分散が不十分であり、イオン液体による溶解ができなかった。実施例2と比較例1との対比から、非プロトン性有機溶媒の相対量40は製膜可能ではある。しかし相対量33では製膜不能となる。従って、添加するイオン液体との均衡からより好ましいイオン液体(前者):非プロトン性有機溶媒(後者)との重量混合比は60:40である。
非プロトン性有機溶媒に分散したセルロース原料にイオン液体を添加しセルロース成分を溶解するに際し、実施例7のように80℃の条件においても製膜可能である。そこで、溶解温度の上限を80℃とすることができる。80℃以上の加熱は可能ではあるものの、過剰な加熱であることと反応性が高まりすぎて制御に支障を来すと考える。そこで、好ましい上限は実施例6の60℃前後である。ここで、常温の下限15℃の比較例5では、低温につき反応性に乏しくイオン液体による溶解が進まなかった。以上から、反応系の取り扱いやすさから常温域による反応促進が望ましく、そのうち15℃よりも液温を高めた20℃付近が温度の下限として適切である。
以上の実施例及び比較例の対比から、本発明に規定したセルロース原料のイオン液体による溶解後、凝固用有機溶媒、水、そして親水性有機溶媒の順の浸漬による接触を行わなければいずれも所望の不均質セルロースフィルムに至らないことを明らかにした(比較例6ないし10参照)。その上で前述のとおり、適切な原料と配合割合、反応温度の選択が重要であることを見出した。特に、イオン液体との反応後の凝固に関する処理は、迅速に進むため、生産効率上有利である。
Claims (3)
- N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルの少なくとも1種から選択した非プロトン性有機溶媒に、セルロース原料を分散して分散物を得る原料分散工程と、
前記分散物に(i)式で表されるイオン液体を添加して20〜60℃の温度条件下で前記セルロース原料を溶解し粘質液を得る溶解工程と、
前記粘質液を膜状物に加工する膜化工程と、
前記膜状物を、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロキシフラン、酢酸エチルから選択される凝固用有機溶媒、水の順に接触させてセルロース凝固物を得る凝固工程と、
前記セルロース凝固物を親水性有機溶媒に接触させてセルロース固定化物を得る固定化工程とを有する
ことを特徴とする不均質セルロースフィルムの製造方法。
- 前記溶解工程における前記イオン液体と前記非プロトン性有機溶媒の重量混合比が、前記イオン液体:前記非プロトン性有機溶媒として、40:60〜70:30である請求項1に記載の不均質セルロースフィルムの製造方法。
- 前記セルロース原料がパルプである請求項1または2に記載の不均質セルロースフィルムの製造方法。
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