JP3829334B2 - ポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類の分散紡糸方法 - Google Patents

ポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類の分散紡糸方法 Download PDF

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Description

本発明はポリ(テトラフルオロエチレン)または関連ポリマー類の分散液を繊維に紡糸する方法または上記分散液を成形品に成形する方法に関し、ここでは、焼結を受けさせたフッ素置換ポリマー構造物から工程酸、塩および他の不純物を実質的に除去する。
発明の背景
ポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類は光、熱、溶媒、化学的攻撃および電気応力にさらされた時に卓越した安定性を示すことから、このようなポリマー類およびこのポリマー類から作られた製品は多様な用途で用いるに望ましいものである。しかしながら、そのようなポリマー類の溶融加工および溶液加工に伴う複雑さが原因で、それらを通常の方法で紡糸または成形するのは非常に困難である。
ポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類の成形または紡糸で用いられている1つの方法は、このポリマーの粒子が入っている水分散液とビスコースの混合物からポリマーを成形または紡糸する方法であり、この場合、米国特許第3,655,853号、3,114,672号および2,772,444号に教示されているように、キサントゲン酸セルロースが可溶形態のマトリックスポリマー(matrix polymer)である。
ポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類から繊維を製造しようとする時、ビスコースが通常用いられているにも拘らず、ビスコースを用いると重大な欠点がいくつか生じる。
米国特許第3,147,323号、3,118,846号および2,951,047号に教示されているように、ビスコースを生じさせる方法の代替法も知られているが、また、他のマトリックスポリマーの使用も一般に有機溶媒、界面活性剤または両方の使用を伴っていた。
受け入れられる焼結フッ素置換オレフィンポリマー品(sintered fluorinated olefinic polymer articles)または繊維を製造する方法では、一般に、中間体である繊維がイオンも不純物も含まないことが確保されるようにマトリックスポリマーを注意深く選択する必要がある。本方法ではいろいろな構造および化学タイプの幅広い範囲のマトリックスポリマーを用いることができると同時に強い焼結繊維および製品がもたらされる。
分散紡糸(dispersion spinning)または成形中にイオンが凝固用浴液から中間体である構造物の中に取り込まれる。このようなイオンは、例えば水素イオン、ナトリウムイオンおよび硫酸塩イオンであり、それらは中間体である繊維構造物を完成した焼結(融合)フッ素置換オレフィンポリマー繊維に変換する時に重大な問題を引き起こす可能性がある。
分散成形で用いられる典型的な凝固用浴液は硫酸と硫酸ナトリウムが入っている酸性浴液である。この硫酸に由来する酸残渣によって、その中間体である繊維構造物は、フッ素置換ポリマーの融合に要求される温度条件下で分解を起こす。塩類が存在(これは時には繊維構造物の25重量%の如きレベルにまで蓄積し得る)していると、容認されない機械的強度を示す繊維がもたらされる可能性がある。大部分の場合、中間体である繊維構造物に塩類が高濃度で存在していると、焼結繊維の生成が邪魔される可能性さえある、と言うのは、中間体である繊維構造物に残存塩類が入っていると、それの焼結を行うのは不可能でないにしても非常に困難であるからである。
本発明の発明者らは、本質的に逃散性(fugitive)イオンを担持する中間体構造物から高い純度の強い焼結フッ素置換ポリマー繊維を製造することができることを見い出した。または、別法として、本発明は、非逃散性イオン残渣を本質的に含まない中間体構造物も提供する。
発明の要約
本発明は分散紡糸フッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法を提供する。この方法は、
(a)上記フッ素置換オレフィンポリマーの粒子が入っている水分散液とマトリックスポリマーが入っている水溶液の混合物を生じさせ、
(b)この混合物を押出し加工してそれを該マトリックスポリマーを凝固させる濃度のイオンが入っている凝固用浴の中に入れることで、イオン種を担持している中間体である繊維構造物を生じさせ、そして
(c)該中間体である繊維構造物に焼結を受けさせて該マトリックスポリマーを分解させかつ該フッ素置換オレフィンポリマー粒子を融合させる段階を含んでいる方法であって、前記焼結直前の該イオン種が主に逃散性イオンであり、ここで逃散性イオンは、水素、炭素、酸素/およびまたは窒素の組み合わせで作られていて25℃より高いが350℃より低い温度で揮発または分解する有機酸および有機酸のアンモニウム塩、アンモニアのイオンであることを特徴とする、フッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法である。
本発明を実施する1つの様式は、上記マトリックスポリマーを本質的に逃散性イオンが入っている水溶液中で凝固させることを通して中間体である繊維構造物を生じさせる様式である。
本発明を実施する別の様式では、上記マトリックスポリマーを非逃散性イオン種、逃散性イオン種またはそれらの混合物から成る群から選択されるイオン種が入っている凝固用溶液中で凝固させた後であるが焼結前に中間体である繊維構造物を本質的に逃散性イオンが入っているイオン交換用溶液に接触させることで、本質的に逃散性イオンにもを担持する中間体である繊維構造物を生じさせる。
本発明の方法を用いてマルチフィラメントヤーン(multifilament yarns)またはモノフィラメント、フィルム、リボンおよび他の成形品を生じさせることができる。
詳細な説明
本明細書で用いる如き用語「ポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類」は、ポリ(テトラフルオロエチレン)、およびフッ素置換オレフィンポリマーとして一般に知られるポリマー類、例えばテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペン(FEP)のコポリマー類、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキル−ビニルエーテル類、例えばパーフルオロプロピル−ビニルエーテル(PFA)およびパーフルオロエチル−ビニルエーテルなどから作られたコポリマー類、この上に挙げたモノマー類から作られたターポリマー類を包含するフッ素置換オレフィンターポリマー類、およびテトラフルオロエチレンを基とする他のコポリマー類を意味する。
本明細書で用いる如き用語「PTFE」はポリ(テトラフルオロエチレン)を意味する。
本明細書で用いる如き用語「水分散液」は、いろいろな表面活性添加剤およびpHを調整して分散液を維持するための添加剤が入っていてもよい水中で作られた粒子分散液を意味する。
用語「分散成形」は、不溶なポリマー粒子が入っている分散液を可溶なマトリックスポリマーが入っている溶液と一緒に混合しそしてこの混合物を凝固用溶液(上記マトリックスポリマーが不溶な)に接触させることで上記混合物を凝固させる方法を意味する。
フッ素置換ポリマーから成形品を製造する時、繊維品の分散紡糸として一般に知られる分散成形が有用である。このようなポリマー類の成形の実施は溶融押出し加工でも溶液紡糸でも困難であるが、フッ素置換ポリマー粒子が入っている水分散液を適切なマトリックスポリマーが入っている溶液と混合した混合物を用いると、それの紡糸を成功裏に行うことができる。上記混合物を適切な凝固用浴液と接触させると中間体である構造物が生じる。この中間体である構造物は機械的には健全であるが、一般に、この中間体である構造物を上記フッ素置換ポリマー粒子が融合するに充分な温度に加熱することを通して、焼結を受けた最終的構造物を生じさせる。上記マトリックスポリマーは焼結時に分解を起こして揮発性ガスと炭素系残渣を生じる。
本発明の中間体である構造物は、実質的に、逃散性イオンとして特徴づけられるイオンのみを含有する。本明細書では、25℃より高いがポリ(テトラフルオロエチレン)または関連ポリマー粒子の融合を促す温度より低い温度に加熱された時に揮発するか或は分解して揮発性または炭素系の物質を生じるイオンまたは部分的にイオン化した化合物を意味するように用語「逃散性イオン」を定義する。低い方の好適な揮発もしくは分解温度は約100℃である。
本発明の方法では、溶液に入っているマトリックスポリマーを凝固させて逃散性イオン以外のイオンを実質的に除去するか、或は凝固の後であるが焼結前に上記中間体である構造物をイオン交換用溶液に接触させてその中間体である構造物が担持している非逃散性イオンを逃散性イオンに置き換えることを通して実質的に逃散性イオンのみを担持している中間体である構造物を生じさせる。
本発明の目的でイオン種を2つの種類に分類分けする。これらの種類は逃散性と非逃散性である。全てのイオンまたは部分的にイオン化している化合物は上記2種類の中の1つに入る。例えば、ナトリウムイオンおよび硫酸塩イオンは非逃散性イオンであり、アンモニウム、酢酸塩イオンおよび酢酸が逃散性イオンの例である。本明細書では以降、逃散性イオンで構成されている塩類を逃散性イオンの塩と呼び、そして逃散性イオンまたは部分的にイオン化している酸で構成されている酸を逃散性イオンの酸と呼ぶ。
用語「担持している」または「担持されている」を中間体である繊維構造物に関係させて用いる場合、これは、中間体である構造物の表面に吸収もしくは吸着されているか或はそれの内部に取り込まれていることを意味する。
融合した有用なフッ素置換オレフィンポリマー繊維を達成しようとするには、焼結直前の中間体である繊維構造物からそれが凝固用浴液から吸収したイオンばかりでなく他の不純物、例えば初期のフッ素置換オレフィンポリマー分散液中に存在していた添加剤および/または分散剤[これらは繊維の焼結および/または最終的な融合フッ素置換ポリマー繊維の特性に有害である]を除去しておくことが必須である。本発明は、焼結を邪魔するか或は焼結繊維の有用性を低下させるイオンを含まない製品、特に繊維をポリ(テトラフルオロエチレン)および関連ポリマー類から分散成形する方法を提供する。
本方法では、焼結段階中に逃散し得るイオンを凝固用浴液中でか或はイオン交換用溶液中で用いることを通して、有害なイオンを実質的に含まない中間体である繊維構造物を生じさせる。このようなイオンまたは部分的にイオン化した化合物は揮発するか或は分解して揮発性物質、例えば水蒸気および炭素酸化物などを生じるか或は炭素系物質を生じ、それらは焼結を受けた繊維が一般的に示す使用特性を悪化させない。本方法の逃散性イオンから生じる炭素系材料は、上記マトリックスポリマーの分解で生じる炭素系材料と同様に、その焼結を受けた繊維から「漂白され(bleached)」得る。
逃散性イオンの選択は、ある程度であるが、上記フッ素置換オレフィンポリマーが示す溶融温度に依存するが、一般に、逃散性イオンは25℃を越える温度から約250−350℃以下の温度で分解を起こして揮発性もしくは炭素系材料を生じるイオンである。例えば、FEPの融点は約253から282℃であり、PFAの融点は約306℃であり、そしてPTFEの融点は約335から345℃である。本発明の実施でFEPと一緒に用いる逃散性イオンは、PFAまたはPTFEと一緒に使用可能な逃散性イオンよりも低い沸点または分解温度を示す必要がある。勿論、また、FEPと一緒に使用可能な逃散性イオンをPFAまたはPTFEと一緒に用いることも可能である。
逃散性イオンには、水素、炭素、酸素および/または窒素の組み合わせで作られていて25℃より高いが約350℃より低い温度で揮発または分解する有機酸および有機酸のアンモニウム塩が含まれる。揮発/分解温度範囲の好適な上限は、上記フッ素置換ポリマーが融合し始める温度より約20から30℃低い温度である。逃散性イオン化合物の例にはしゅう酸、酢酸、クエン酸、蟻酸、プロピオン酸、リンゴ酸、酪酸、プロペン酸、しゅう酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、リンゴ酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、プロペン酸アンモニウム、アンモニア水溶液およびそれらの混合物、そして必要な揮発性または分解特性を示す他の化合物が含まれる。逃散性イオンを100℃未満で分解するイオンから選択する場合、上記マトリックスポリマーの溶解度がイオン種の損失によって悪影響を受けないようにマトリックスポリマーの選択に関して注意を払うべきである。
本発明に従う凝固用浴液に逃散性イオンを上記マトリックスポリマーの凝固をもたらすpHおよびまたは塩濃度になるに充分な濃度で入れる。この凝固用浴液に逃散性イオンの塩または酸を単独で入れてもよいか或は逃散性イオンの塩と酸の混合物を入れてもよい。
好適な凝固用浴液は水溶液であるが、水と少量の可溶有機化合物の混合物が入っている浴液中で凝固を行うことも可能である。
ある場合には、逃散性イオン以外のイオンが入っている凝固用浴液中で上記マトリックスポリマーを凝固させる方が好適であり得る。この場合の方法でも、凝固段階の後であるが焼結段階の前にイオン交換用洗浄液を添加して非逃散性イオンを除去してそれを逃散性イオンに置き換えることを通して、本発明の利点を得ることができる。この接触時間および上記イオン交換用溶液に入れる逃散性イオンの濃度は、上記中間体である繊維構造物が担持している非逃散性イオンの本質的に全部が除去または置換されるように調整可能である。
好適なイオン交換用溶液は逃散性イオンの水溶液であるが、この溶液に水溶性の有機溶媒を少量存在させることも可能である。このような洗浄用溶液の実際の組成は、上記凝固用溶液の組成と同様に、中間体である繊維構造物の強度が最適になるように配合可能である。このイオン交換用溶液に非逃散性イオンを全く入れないことは必須ではない。必須なのは、この上に示したように、上記中間体である繊維構造物が担持する非逃散性イオンの濃度が該繊維が焼結を受けて満足される機械的特性を示すようになり得るに充分なほど低いことのみである。機械的特性が満足されることは、焼結繊維の引張り強度がASTM試験方法D2256−90で測定して約0.5g/dtexより高いことで示される。
例えば、本方法でもし硫酸塩イオンによる凝固を用いるとすると、その硫酸塩イオンで凝固した繊維構造物を例えば酢酸と酢酸アンモニウムが入っているイオン交換用溶液で洗浄してもよい。このような逃散性イオンの濃度は、中間体である繊維が強度を有意に失うことなく硫酸塩イオンが繊維から除去されるまでその繊維構造物に入っている非逃散性イオンが交換されるように調整可能である。
繊維構造物のサンプルを残存する非逃散性イオンの存在に関して試験することを通して、上記中間体である繊維構造物と上記イオン交換用洗浄液を接触させる時間の充分さおよび上記洗浄液のイオン濃度を最適にしてもよい。例えば、本分野の技術者に公知の痕跡元素分析、例えば原子吸収もしくは原子放出方法または他の装置方法などを用いて繊維構造物内に元素が存在するか否かを測定してもよい。
中間体である繊維が担持する非逃散性イオンが容易に交換され得ることを本発明者らは経験した。本発明者らはそのようなイオン交換用洗浄液を用いると中間体である繊維に入っているナトリウムイオンおよび硫酸塩イオンの濃度が非常に低くなって工程サンプルに含まれるそのようなイオンの濃度がある種の痕跡分析技術の感度よりも低くなり得ることを観察した。本発明の実施では焼結直前の非逃散性イオン濃度を非常に低くする必要はない。必要なのは、一般に、湿っている中間体繊維構造物に含まれる非逃散性イオンの濃度を約0.2重量%未満にまで低くすることのみである。
本発明の方法では、強い非逃散性酸の濃度を、中間体である繊維構造物のpHが約5またはそれ以上になるような濃度にすべきである。
非逃散性イオンと逃散性イオンの交換の充分さを試験する非常に有効な試験(あまり正確ではないが)は、中間体である繊維が焼結段階で走り(running)易いことを試験する試験である。非逃散性イオンの含有量があまりにも高い中間体繊維は粘着性を示しかつ破壊を起こす傾向がより高いことが観察される。充分な非逃散性イオン交換を達成する実用的なアプローチは、上記繊維をイオン交換用溶液中で上記繊維が焼結段階で成功裏に走り得るように洗浄するアプローチである。この中間体である繊維が良好に走るようになった時点で、化学分析および装置分析を用いて非逃散性イオンの含有量を検査して、加工および最終使用性能に要求される濃度および洗浄時間を決めてもよい。
繊維の洗浄で用いる溶液に入っている非逃散性イオンの存在を試験する時、通常の化学的試験を用いることができる。例えば、硫酸塩イオンの場合、塩化バリウムの希溶液に使用済み洗浄溶液を1滴加えてもよい。硫酸バリウムの沈澱物が生じると、それによって硫酸塩の存在が示される。また、中間体である繊維構造物を当該非逃散性イオンまたはイオン類の存在の指示で用いる化学試験を邪魔しないと思われる媒体に溶解させる場合にも、上記種類の簡単な化学的手順を中間体である繊維構造物のサンプルに適用することができるであろう。
イオン交換用洗浄液が充分であることの測定を行った後、中間体および焼結繊維の両方の連続製造を可能にするであろう工程条件は同じであり得、必要なのは、イオン交換の充分さを定期的に監視することのみである。
満足される強度を有する中間体繊維が得られるように酸および塩類の濃度を調整することを通して逃散性イオンが入っている凝固用浴液またはイオン交換用洗浄液の組成を最適にすることで、最適な強度を有する繊維構造物を生じさせることができる。
本発明のマトリックスポリマーは、水素、炭素、酸素および窒素のみを含有していて水溶液に溶解し得るが塩またはpHのシフトで凝固または沈澱を起こし得るポリマー類であり得る。セルロース系ポリマー類は大部分のフッ素置換オレフィンポリマー類が溶融する温度範囲より低い温度で溶融も軟化も起こさせずかつセルロース系ポリマーは焼結時に分解を起こして炭素系材料を生じることから、セルロース系ポリマー類が好適である。そのようなセルロース系ポリマー類は、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースである。本発明の方法では、特に、一般に水に高度に溶解することで洗浄で有害な材料が除去され得る中間体構造物を形成するポリマー類、例えばカルボキシメチルセルロースなどがマトリックスポリマーとして機能を果し得る。また、逃散性イオンが入っている凝固用浴液中で凝固を起こすマトリックスポリマーのみに本発明を制限するものでもない、と言うのは、望ましくない可溶種が存在していてもイオン交換用洗浄液で除去および交換されるからである。
本発明のマトリックスポリマー類のいずれかまたはそれらの混合物が入っているマトリックス溶液の調製は、個々のマトリックスポリマーを必要に応じて水にか或は酸には或はアルカリ溶液に溶解させることを通して実施可能である。
上記凝固用浴液およびイオン交換用洗浄液の温度は中間体である繊維構造物が所望の特性を示すような温度に調整可能であるが、典型的には25℃から90℃の範囲で凝固用浴を操作し、好適な温度範囲は約40℃から約60℃である。
フッ素置換ポリマー粒子が入っている水分散液を本発明のマトリックスポリマーが入っている溶液と一緒に混合することを通して、本発明の方法で用いる紡糸用もしくは成形用組成物を生じさせる。本方法では、本技術分野で公知な如きフッ素置換オレフィンポリマー粒子が入っている水分散液を用いることができる。溶液に入っているマトリックスポリマーの濃度を好適には3から10重量%にする。次に、中間体である繊維構造物に含まれる上記ポリマー粒子の重量とマトリックスポリマーの重量の比率が約3:1から約20:1、好適には約9:1になるように上記成分を混合する。
ほとんどの場合、本方法のマトリックスポリマー溶液は安定して熟成してもゲル化しないが、上記混合物が均一であることを確保しかつ上記フッ素置換ポリマーの分散液に入っている粒子が沈降しないことを確保する目的で、上記マトリックスポリマーの溶液とフッ素置換ポリマーの分散液を使用直前に混合するのが好適である。
試験方法
ポリマーの粘度
粘度を測定すべき溶液のサンプルを濾過して真空チャンバに入れ、痕跡量の気泡も見えなくなるまで真空下に保持した。このサンプルを600mlのビーカーにこのビーカーが10cmの深さにまで満たされるに充分な量で移した。次に、このサンプルを25℃に設定されている恒温浴にサンプル全体に渡る温度が一定になるまで入れた。
BrookfieldモデルHB−T粘度計を用いて粘度を測定した。サンプルが入っている600mlのビーカーを上記粘度計の下に置いて、#2のスピンドルを上記粘度計に取り付けた。粘度計の高さを流体表面がスピンドル軸の刻み目の所に到達するまで調整し、そしてビーカーの位置をスピンドルがサンプルの中心に来るまで調整した。粘度計のスイッチを入れて上記スピンドルを回転させ始め、結果として示される粘度および温度を記録した。
スピンドル番号、RPMおよびBrookfieldの読みから決定される適切なISO 9002認可Brookfieldファクターファインダー(factor finder)を利用して、その記録されたBrookfield読みを粘度に変換した。
実施例
実施例1
水分が6.2重量%で置換度が≒0.30のカルボキシメチルセルロース[CMC]を1.58kg用いて、それを17.7リットルの軟水に入れて〜1.0℃でスラリー状にすることを通して、溶液の調製を行った。このCMCが湿った後、この水/CMC混合物に4.5℃で23%の水酸化ナトリウム溶液を12.3kg加えた。その結果として生じた混合物を真空(〜29mmHg)下で1時間攪拌した後、50μmのポリプロピレン製フェルトバッグフィルターに通して濾過して、薄膜脱気装置に入れて、その脱気装置を〜29mmHg真空で操作した。その結果として生じた溶液が25℃で示した粘度は3516mPa・秒であった。
この上に示した溶液の流れにTEF 3311ポリ(テトラフルオロエチレン)[PTFE]分散液[DuPont de Nemours and Company(Wilmington、DE)から入手可能]の流れをCMCに対するPTFEの比率が8.1になるような相対速度で溶け込ませた。その溶け込ませた流れをインラインスタティックミキサー(in−line static mixer)で混合した。次に、その結果として生じた混合物を、凝固用溶液の液面下に存在する紡糸口金[各穴の直径が7ミルの穴が120個含まれている]に通して輸送した。上記凝固用溶液は5%が硫酸で18%が硫酸ナトリウムであった。これの温度を52℃±2℃に保持した。
次に、その結果として生じた中間体である繊維を44℃に保持されている0.4%の酢酸が入っている洗浄用浴の中に通した後、1組の回転している熱ロールの上に導いた。これらのロールの表面温度を250±5℃に保持することで、上記中間体である繊維を乾燥させた。
このヤーン(yarn)を別の組の回転している熱ロールに送り込んだ。これらのロールの表面温度を375℃±5℃に保持することで、上記繊維に焼結を受けさせた。
このヤーンを1組の加熱されていない「延伸用ロール」[これの上に複数のラップ(wrap)を位置させた]に送り込んだ。上記2番目の組の熱ロールと「延伸用ロール」の間の速度の差をヤーンが8.08倍引き伸ばされるような差にした。この差が延伸比として知られる。この延伸用ロールから出るヤーンを紙管で巻き取った。
その結果として得た焼結ヤーンの線形密度は757dtexであった。それのじん性は1.63g/dtexであった。
実施例2
延伸比を7.73にする以外は実施例1と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は770dtexであった。それのじん性は1.67g/dtexであった。
実施例3
延伸比を6.31にする以外は実施例1と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は882dtexであった。それのじん性は1.48g/dtexであった。
イオン交換用洗浄を行った後、乾燥および焼結を受けさせた繊維構造物に入っているナトリウムの濃度を測定する方法と同様にして、中間体である繊維構造物のサンプルを発光分光測定でナトリウムに関して分析した。測定ナトリウム含有量は570ppmであった。
実施例4
延伸比を5.05にする以外は実施例1と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は1187.7dtexであった。それのじん性は1.21g/dtexであった。
実施例5
延伸比を4.29にする以外は実施例1と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は1187.7dtexであった。それのじん性は1.19g/dtexであった。
実施例6
1.26kgのメチルセルロース[MC](水分3.3%)を30.3リットルの軟水に入れて〜80℃でスラリー状にすることを通して、溶液の調製を行った。このMCが湿った後、温度を〜25℃にまで下げた。その結果として生じた混合物を真空(〜29mmHg)下で1時間撹拌した後、10μmのポリプロピレン製フェルトバッグフィルターに通して濾過して、薄膜脱気装置に入れて、その脱気装置を〜29mmHg真空で操作した。その結果として生じた溶液が25℃で示した粘度は〜5000mPa・秒であった。
この上に示した溶液の流れにDuPont TEF 3311ポリ−(テトラフルオロエチレン)[PTFE]分散液の流れをMCに対するPTFEの比率が7.9になるような相対速度で溶け込ませてインラインスタティックミキサーで混合した。次に、その結果として生じた混合物を、凝固用浴液の液面下に存在する紡糸口金[直径が6ミルの穴が180個含まれている]に通して輸送した。上記凝固用浴液の組成は40%が酢酸アンモニウムであった。これの温度を65℃±5℃に保持した。次に、その結果として生じた繊維を1組の回転している熱ロールの上に導いた。これらのロールの表面温度を200±5℃に保持することで、上記繊維を乾燥させた。
このヤーンを別の組の回転している熱ロールに送り込んだ。これらのロールの表面温度を360℃±5℃に保持することで、上記繊維に焼結を受けさせた。
このヤーンを1組の加熱されていない「延伸用ロール」[これの上に複数のラップを位置させた]に送り込んだ。上記2番目の組の熱ロールと「延伸用ロール」の間の速度の差をヤーンが4.3倍引き伸ばされるような差にした。この差が延伸比として知られる。この延伸用ロールから出るヤーンを紙管で巻き取った。
その結果として得たヤーンの線形密度は731dtexであった。それのじん性は0.891g/dtexであった。
実施例7
延伸比を5.1にする以外は実施例6と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は460dtexであった。それのじん性は0.981g/dtexであった。
実施例8
延伸比を6.22にする以外は実施例6と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は413dtexであった。それのじん性は1.44g/dtexであった。
実施例9
延伸比を7.07にする以外は実施例6と同様にして繊維の紡糸を行った。
その結果として得たヤーンの線形密度は616dtexであった。それのじん性は1.42g/dtexであった。

Claims (6)

  1. 分散紡糸フッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法であって、
    (a)該フッ素置換オレフィンポリマーの粒子が入っている水分散液とマトリックスポリマーが入っている水溶液の混合物を生じさせ、
    (b)該混合物を押出し加工してそれを該マトリックスポリマーを凝固させる濃度のイオンが入っている凝固用浴の中に入れることで、イオン種を担持している中間体である繊維構造物を生じさせ、そして
    (c)該中間体である繊維構造物に焼結を受けさせて該マトリックスポリマーを分解させかつ該フッ素置換オレフィンポリマー粒子を融合させる段階を含んでいる、方法であって、前記焼結直前の該イオン種が主に逃散性イオンであり、ここで逃散性イオンは、水素、炭素、酸素/およびまたは窒素の組み合わせで作られていて25℃より高いが350℃より低い温度で揮発または分解する有機酸および有機酸のアンモニウム塩、アンモニアのイオンであることを特徴とする、フッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法。
  2. 該中間体である繊維構造物を、逃散性イオンのみからなる凝固用溶液中で凝固させる請求の範囲第1項記載のフッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法。
  3. 該マトリックスポリマーを非逃散性イオン種が含まれる凝固用溶液中で凝固させた後、焼結前に該中間体である繊維構造物を逃散性イオンが入っているイオン交換用溶液に接触させる請求の範囲第1項記載のフッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法。
  4. 該フッ素置換ポリマーをポリ(テトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンのコポリマー類、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキル−ビニルエーテルのコポリマー類、およびこれらのモノマー類から作られたフッ素置換オレフィンターポリマー類からなる群から選択する請求の範囲第1項記載のフッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法。
  5. 該マトリックスポリマーをメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択する請求の範囲第1項記載のフッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法。
  6. 該逃散性イオンをしゅう酸、酢酸、クエン酸、蟻酸、プロピオン酸、リンゴ酸、酪酸、プロペン酸、しゅう酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、リンゴ酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、プロペン酸アンモニウム、アンモニア水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択する請求の範囲第1項記載のフッ素置換オレフィンポリマー繊維の製造方法。
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