JP2016156037A - 高濃度浸炭鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(ア)1次浸炭温度T1(℃)において、前記鋼材の表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)を満たすように浸炭する1次浸炭工程。
ただし、Ceuは前記鋼材の共析炭素濃度、C(Acm)は前記1次浸炭温度T1(℃)における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。
(イ)前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する1次冷却工程。
(ウ)前記1次冷却工程終了後、前記鋼材を2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)まで加熱し、その2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)で浸炭する2次浸炭初期工程。
ただし、Ac1点(℃)≦T2(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
T2(℃)≦1次浸炭終了後の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
(エ)前記2次浸炭初期工程終了後、前記鋼材を2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)まで加熱し、その2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)で浸炭する2次浸炭後期工程。
ただし、T2(℃)≦T3(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−50℃
T3(℃)≦2次浸炭初期工程終了時の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
(オ)前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する2次冷却工程。
(カ)前記2次冷却工程終了後、前記鋼材を析出処理工程開始温度T4(℃)まで加熱し、その析出処理工程開始温度T4(℃)で析出処理する析出処理工程。
ただし、Ac1点(℃)≦T4(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
(キ)前記析出処理工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。
Cは鋼の強度を確保するための元素である。この効果を得るには、0.10%以上の含有が必要である。ただし、過度に含有させると、硬さが高くなりすぎ、製造性(特に、被削性)を著しく損なうため、上限を0.30%とする。好ましくは0.15〜0.25%である。
Siは溶製時の脱酸剤として添加される。また、Siは炭化物に固溶しない元素で微細炭化物を得るのに有効である。さらにSiは焼戻し軟化抵抗を上昇させ、面疲労強度向上に有効である。過剰な含有はCの場合と同様、製造性を著しく損なうため、1.50%以下の含有とする。強度と製造コストのバランスを考慮すると、0.30〜0.80%の含有とするのが好ましい。
Mnは添加しすぎると硬さが高くなりすぎ製造性を著しく損なうため、1.00%以下の含有とする。一方、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、所定の内部硬さを得るために0.20%以上の添加が必要である。好ましくは0.30〜0.50%である。
Pは浸炭層の靭性を劣化させる元素である。特に、その含有量が0.030%を超えると、衝撃疲労強度の低下が著しくなる。また、Pは、不純物元素であるので、できるだけ含有量を0%に近づけることが好ましい。
Sも浸炭層の靭性を劣化させる元素であり、Pと同様にその含有量が0.030%を超えると、衝撃疲労強度の低下が著しくなる。また、Sは浸炭鋼中のMnと反応してMnSを生成し、このMnSがき裂伝播経路となって強度低下を引き起こす。したがって、Sは可能な限り低減することが望ましいが、0.030%以下の含有では強度低下の要因となるMnSがき裂伝播経路上に認められないことから、0.030%以下の含有とする。
Crは鋼の焼入れ性を高め、強度を向上させるために有効な元素である。これらの効果を得るために1.00%以上の添加が必要である。ただし、5.00%を超えて添加すると、コストの増大をもたらし、被削性を著しく損なうため、5.00%以下の含有とする。好ましくは1.50〜3.0%である。
MoもCrと同様、焼入れ性の確保、強度向上のために含有させる。ただし、0.50%を超えて添加すると、コストの増大をもたらし、製造性を著しく損なうため、0.50%以下の含有とする。好ましくは0.10〜0.40%である。
Alは浸炭時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するのに有効な元素である。ただし、0.10%を超えるとオーステナイト結晶粒の粗大化を防止する効果が飽和するので、0.10%以下の含有とする。
1次浸炭工程は、上記した組成を有する鋼材を、1100℃以下である1次浸炭温度T1において浸炭する工程である。1次浸炭温度T1が高いほど、短時間で所定の炭素濃度まで浸炭することができる。ただし、1次浸炭温度T1が高すぎると、炉の寿命を低下させ、また浸炭中における鋼材の変形が増大してしまう場合がある。これらを考慮に入れて、以下の実施例では1次浸炭温度T1を950〜1100℃、1次浸炭時間を表1に記載のとおりとした。
1次冷却工程は、1次浸炭工程終了後、鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する工程である。1次冷却工程により炭素の過飽和固溶体が得られる(図1及び図2のA参照)。鋼材表面の組織をこのような過飽和固溶体もしくは微細フェライト+パーライト組織とすることで、2次浸炭初期工程により粒内に微細な炭化物を析出させることができる。この場合、1次冷却速度が遅すぎると、粒界に片状・粗大な炭化物が析出してしまう。この片状・粗大な炭化物は、2次浸炭工程においても消滅せず、鋼材の強度を低下させる原因となる。したがって、冷却速度を1℃/分以上に設定する必要がある。具体的に以下の実施例では、炉内を窒素ガス雰囲気とし、圧力を120kPaに増圧した後、冷却ファンを回転駆動するという冷却条件下で鋼材を冷却した。
2次浸炭初期工程は、1次冷却工程終了後、鋼材を2次浸炭初期工程開始温度T2まで加熱し(昇温)、その2次浸炭初期工程開始温度T2で浸炭する工程である。2次浸炭初期工程により粒内に微細な炭化物を析出・成長させることができる(図1及び図2のB,C参照)。ここで、2次浸炭初期工程開始温度T2は、次式(1),(2)の条件を満たす。
Ac1点(℃)≦T2(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃ ・・・(1)
T2(℃)≦1次浸炭終了後の鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)・・・(2)
2次浸炭後期工程は、2次浸炭初期工程終了後、鋼材を2次浸炭後期工程開始温度T3まで加熱し(昇温)、その2次浸炭後期工程開始温度T3で浸炭する工程である。2次浸炭後期工程により炭化物をより大きく球状に成長させ、球状炭化物の炭化物量を増加させることができる(図1及び図2のD1,D2参照)。ここで、2次浸炭後期工程開始温度T3は、次式(3),(4)の条件を満たす。
T2(℃)≦T3(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−50℃ ・・・(3)
T3(℃)≦2次浸炭初期工程終了時の鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃) ・・・(4)
2次冷却工程は、2次浸炭後期工程終了後、鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する工程である。2次冷却工程により球状炭化物と過飽和固溶体の混合組織が得られる(図1及び図2のE参照)。この場合、2次冷却速度が遅すぎると、粒界に片状・粗大な炭化物が析出してしまう。この片状・粗大な炭化物は鋼材の強度を低下させる原因となる。したがって、冷却速度を1℃/分以上に設定する必要がある。なお、以下の実施例では、2次冷却工程においても1次冷却工程と同様の冷却条件下で鋼材を冷却した。
析出処理工程は、2次冷却工程終了後、鋼材を析出処理工程開始温度T4まで加熱し、その析出処理工程開始温度T4で析出処理する工程である。析出処理工程により過飽和固溶体から炭化物を析出させ、固溶炭素量を減らすことができる(図1及び図2のF,G参照)。ここで、析出処理工程開始温度T4は、次式(5)の条件を満たす。
Ac1点(℃)≦T4(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃ ・・・(5)
焼入れ工程は、析出処理工程終了後、鋼材を焼入れする工程である。焼入れ工程により球状炭化物とマルテンサイトの混合組織が得られる(図1のH参照)。焼入れ方法としては、油焼入れ、ガス焼入れなどがある。
まず、表1に示す合金組成(残部はFe及び不可避不純物)の鋼材を小型溶解炉(50kg)を用いて溶製し、インゴットに鋳造した。次に、1250℃×2時間の条件下でφ30×1000mmの棒鋼に鍛伸した後、950℃×2時間の条件下で空冷による焼ならし処理を行った。
(1)総浸炭時間の2%に当たる時間、浸炭ガスを流して真空浸炭を行う操作
(2)総浸炭時間の23%に当たる時間、真空引きをして拡散させる操作
(3)総浸炭時間の8%に当たる時間、真空引きをして拡散させる操作
なお、比較例1〜5については、2次浸炭後期工程を行っていない。また、比較例6についてはガス浸炭を採用した。
20 ローラーピッチング試験片
100 炭化物(板状)
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.10〜1.50%、
Mn:0.20〜1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:1.00〜5.00%、
Mo:0.50%以下、
Al:0.10%以下、
残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材に対して、以下の工程を施すことを特徴とする高濃度浸炭鋼の製造方法。
(ア)1次浸炭温度T1(℃)において、前記鋼材の表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)を満たすように浸炭する1次浸炭工程。
ただし、Ceuは前記鋼材の共析炭素濃度、C(Acm)は前記1次浸炭温度T1(℃)における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。
(イ)前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する1次冷却工程。
(ウ)前記1次冷却工程終了後、前記鋼材を2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)まで加熱し、その2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)で浸炭する2次浸炭初期工程。
ただし、Ac1点(℃)≦T2(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
T2(℃)≦1次浸炭終了後の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
(エ)前記2次浸炭初期工程終了後、前記鋼材を2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)まで加熱し、その2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)で浸炭する2次浸炭後期工程。
ただし、T2(℃)≦T3(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−50℃
T3(℃)≦2次浸炭初期工程終了時の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
(オ)前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する2次冷却工程。
(カ)前記2次冷却工程終了後、前記鋼材を析出処理工程開始温度T4(℃)まで加熱し、その析出処理工程開始温度T4(℃)で析出処理する析出処理工程。
ただし、Ac1点(℃)≦T4(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
(キ)前記析出処理工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。 - 前記析出処理工程は、炉内において前記鋼材を前記析出処理工程開始温度T4(℃)に15〜60分間保持するものである請求項1に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
- 前記析出処理工程は、高周波表面処理により前記鋼材を前記析出処理工程開始温度T4(℃)まで加熱した後、1分以下に保持するものである請求項1に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
- 前記析出処理工程開始温度T4(℃)は、750〜850℃に設定されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
- 前記2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)は、900〜1000℃に設定されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
- 前記1次浸炭工程、前記2次浸炭初期工程及び前記2次浸炭後期工程は、真空浸炭により行われる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
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