JP6425025B2 - 高濃度浸炭鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高濃度浸炭鋼の製造方法に関し、特に炭化物量を増加させつつ、炭化物形態を所望の形態に制御可能な高濃度浸炭鋼の製造方法に関する。
材料表面近傍の炭素濃度を高めて炭化物を析出させる浸炭処理として、高濃度浸炭が知られている。高濃度浸炭を用いると、ショットピーニング等の他の表面硬化処理に比べて低コストで面疲労強度の向上を図ることが可能である。例えば、下記特許文献1に記載されている高濃度浸炭は、炭素を過飽和に固溶させる1次浸炭工程と、焼入れ温度よりも低い2次浸炭温度で浸炭する2次浸炭初期工程と、焼入れ温度で浸炭する2次浸炭後期工程とを備え、2次浸炭工程を2回に分けて実施するようにしている。この高濃度浸炭によれば、2次浸炭初期工程にて微細かつ球状の炭化物を分散させ、2次浸炭後期工程にてその炭化物を球状のまま大きく成長させることが可能である。
特開2008−115427号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように2次浸炭後期工程の浸炭温度である焼入れ温度を900℃以下に設定した場合、炭化物量の増加が少なく期待したほど十分な強度が得られなかった。2次浸炭後期工程の浸炭温度を900℃以下に設定したのは、2次浸炭後期工程の浸炭温度を2次浸炭初期段階の表面炭素濃度に相当するAcm温度の近傍領域まで加熱してその温度で浸炭すれば炭化物量を容易に増加させることはできるものの、粒界に板状の炭化物が析出しやすくなり、ピッチング寿命の低下を招来すること、鋼材表面の固溶炭素濃度が一定値を超えるようになると、残留γが極端に増加することとなり、却って鋼材表面の強度を低下させてしまうこと、等を考慮に入れたためである。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、鋼材表面の固溶炭素濃度が一定値を超えて残留γが存在する温度領域で2次浸炭を行うようにしても、焼入れ工程の終了後において球状炭化物が多量に分散析出したマルテンサイトを得ることが可能な高濃度浸炭鋼の製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記目的を達成するために本発明の高濃度浸炭鋼の製造方法は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.20〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.00〜5.00%、Mo:0.50%以下、Al:0.10%以下、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材に対して、以下の工程を施すことを特徴とする。
(ア)1次浸炭温度T1(℃)において、前記鋼材の表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)を満たすように浸炭する1次浸炭工程。
ただし、Ceuは前記鋼材の共析炭素濃度、C(Acm)は前記1次浸炭温度T1(℃)における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。
(イ)前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する1次冷却工程。
(ウ)前記1次冷却工程終了後、前記鋼材を2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)まで加熱し、その2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)で浸炭する2次浸炭初期工程。
ただし、Ac1点(℃)≦T2(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
T2(℃)≦1次浸炭終了後の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
(エ)前記2次浸炭初期工程終了後、前記鋼材を2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)まで加熱し、その2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)で浸炭する2次浸炭後期工程。
ただし、T2(℃)≦T3(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−50℃
T3(℃)≦2次浸炭初期工程終了時の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
(オ)前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する2次冷却工程。
(カ)前記2次冷却工程終了後、前記鋼材を析出処理工程開始温度T4(℃)まで加熱し、その析出処理工程開始温度T4(℃)で析出処理する析出処理工程。
ただし、Ac1点(℃)≦T4(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
(キ)前記析出処理工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。
本発明の高濃度浸炭鋼の製造方法は、1次浸炭工程、1次冷却工程、2次浸炭初期工程及び2次浸炭後期工程に加え、さらに2次冷却工程及び析出処理工程を備えている。2次浸炭後期工程により浸炭した炭素は、析出済みの球状炭化物を増量させるように機能するが一部は粒内に固溶する。2次冷却工程により過飽和固溶体として固溶された炭素は、析出処理工程により炭化物として析出される。したがって、焼入れ工程が終了した後に残留γ量を減少させることが可能であり、分散した多量の球状炭化物とマルテンサイトの混合組織により強度の向上を図ることが可能となる。
本発明の高濃度浸炭鋼の製造方法の各工程と、鋼材表面の組織の断面模式図とを対応付けて示す説明図。 図1の各工程を合金状態図と対応付けて示す説明図。 (a)は表1の実施例2における各工程を合金状態図と対応付けて示す説明図。(b)は(a)の全工程終了後における鋼材表面の組織を示す写真。 (a)は表1の比較例1における各工程を合金状態図と対応付けて示す説明図。(b)は(a)のの全工程終了後における鋼材表面の組織を示す写真。 (a)はローラーピッチング試験で使用される負荷用ローラーとローラーピッチング試験片とを示す正面図。(b)は(a)の側面図。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
最初に、本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法が適用される鋼材について説明する。該鋼材は、各種の合金元素を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる。各合金元素の種類、成分範囲(質量%)及び組成限定理由は、以下の通りである。
(1)C:0.10〜0.30%
Cは鋼の強度を確保するための元素である。この効果を得るには、0.10%以上の含有が必要である。ただし、過度に含有させると、硬さが高くなりすぎ、製造性(特に、被削性)を著しく損なうため、上限を0.30%とする。好ましくは0.15〜0.25%である。
(2)Si:0.10〜1.50%
Siは溶製時の脱酸剤として添加される。また、Siは炭化物に固溶しない元素で微細炭化物を得るのに有効である。さらにSiは焼戻し軟化抵抗を上昇させ、面疲労強度向上に有効である。過剰な含有はCの場合と同様、製造性を著しく損なうため、1.50%以下の含有とする。強度と製造コストのバランスを考慮すると、0.30〜0.80%の含有とするのが好ましい。
(3)Mn:0.20〜1.00%
Mnは添加しすぎると硬さが高くなりすぎ製造性を著しく損なうため、1.00%以下の含有とする。一方、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、所定の内部硬さを得るために0.20%以上の添加が必要である。好ましくは0.30〜0.50%である。
(4)P:0.030%以下
Pは浸炭層の靭性を劣化させる元素である。特に、その含有量が0.030%を超えると、衝撃疲労強度の低下が著しくなる。また、Pは、不純物元素であるので、できるだけ含有量を0%に近づけることが好ましい。
(5)S:0.030%以下
Sも浸炭層の靭性を劣化させる元素であり、Pと同様にその含有量が0.030%を超えると、衝撃疲労強度の低下が著しくなる。また、Sは浸炭鋼中のMnと反応してMnSを生成し、このMnSがき裂伝播経路となって強度低下を引き起こす。したがって、Sは可能な限り低減することが望ましいが、0.030%以下の含有では強度低下の要因となるMnSがき裂伝播経路上に認められないことから、0.030%以下の含有とする。
(6)Cr:1.00〜5.00%
Crは鋼の焼入れ性を高め、強度を向上させるために有効な元素である。これらの効果を得るために1.00%以上の添加が必要である。ただし、5.00%を超えて添加すると、コストの増大をもたらし、被削性を著しく損なうため、5.00%以下の含有とする。好ましくは1.50〜3.0%である。
(7)Mo:0.50%以下
MoもCrと同様、焼入れ性の確保、強度向上のために含有させる。ただし、0.50%を超えて添加すると、コストの増大をもたらし、製造性を著しく損なうため、0.50%以下の含有とする。好ましくは0.10〜0.40%である。
(8)Al(固溶Al):0.10%以下
Alは浸炭時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するのに有効な元素である。ただし、0.10%を超えるとオーステナイト結晶粒の粗大化を防止する効果が飽和するので、0.10%以下の含有とする。
次に、表1、図1及び図2を用いて本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法について説明する。本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法は、1次浸炭工程、1次冷却工程、2次浸炭初期工程、2次浸炭後期工程、2次冷却工程、析出処理工程、及び焼入れ工程を備えている。
(9)1次浸炭工程
1次浸炭工程は、上記した組成を有する鋼材を、1100℃以下である1次浸炭温度T1において浸炭する工程である。1次浸炭温度T1が高いほど、短時間で所定の炭素濃度まで浸炭することができる。ただし、1次浸炭温度T1が高すぎると、炉の寿命を低下させ、また浸炭中における鋼材の変形が増大してしまう場合がある。これらを考慮に入れて、以下の実施例では1次浸炭温度T1を950〜1100℃、1次浸炭時間を表1に記載のとおりとした。
また、1次浸炭工程は、鋼材の表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)を満たすように行う。ここで、「表面炭素濃度」とは、鋼材の表面から10μmの領域内の平均炭素濃度を意味する。「Ceu」とは、上記各元素を含んだ上での鋼材の共析炭素濃度を意味する。以下の実施例では、後述する2次浸炭初期工程にて粒内に炭化物が確実に析出するようにすべく、鋼材の表面炭素濃度CがCeuよりも大きくなるように設定した。
「C(Acm)」とは、1次浸炭温度T1における、上記各元素を含んだ上での鋼材のAcm線に相当する炭素濃度を意味する。鋼材の表面炭素濃度CがC(Acm)以下となるように浸炭を行うということは、鋼材表面がγ単相となるように1次浸炭を行うことを意味する。1次浸炭温度T1を950〜1100℃に設定した場合、C(Acm)は少なくとも1.1〜1.6%程度になっていると考えられる。
以下の実施例では、後述する2次浸炭を含めて、浸炭工程を真空浸炭により行った。具体的には、鋼材を入れた炉内を圧力2kPa以下(例えば1500Pa程度)に減圧した後、1次浸炭温度に加熱し、アセチレン等の炭化水素ガスを炉内に導入することにより浸炭を行った。浸炭量は、炭化水素ガスの導入時間により制御することができる。真空浸炭によれば、例えば1100℃程度の高温下での浸炭も容易に行うことができる。ただし、浸炭工程は、真空浸炭に限らず、ガス浸炭等の各種浸炭方法を採用することができる。
(10)1次冷却工程
1次冷却工程は、1次浸炭工程終了後、鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する工程である。1次冷却工程により炭素の過飽和固溶体が得られる(図1及び図2のA参照)。鋼材表面の組織をこのような過飽和固溶体もしくは微細フェライト+パーライト組織とすることで、2次浸炭初期工程により粒内に微細な炭化物を析出させることができる。この場合、1次冷却速度が遅すぎると、粒界に片状・粗大な炭化物が析出してしまう。この片状・粗大な炭化物は、2次浸炭工程においても消滅せず、鋼材の強度を低下させる原因となる。したがって、冷却速度を1℃/分以上に設定する必要がある。具体的に以下の実施例では、炉内を窒素ガス雰囲気とし、圧力を120kPaに増圧した後、冷却ファンを回転駆動するという冷却条件下で鋼材を冷却した。
(11)2次浸炭初期工程
2次浸炭初期工程は、1次冷却工程終了後、鋼材を2次浸炭初期工程開始温度T2まで加熱し(昇温)、その2次浸炭初期工程開始温度T2で浸炭する工程である。2次浸炭初期工程により粒内に微細な炭化物を析出・成長させることができる(図1及び図2のB,C参照)。ここで、2次浸炭初期工程開始温度T2は、次式(1),(2)の条件を満たす。
Ac1点(℃)≦T2(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃ ・・・(1)
T2(℃)≦1次浸炭終了後の鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)・・・(2)
1次浸炭温度T1と2次浸炭初期工程開始温度T2の温度差が100℃未満になると、粒界に片状・粗大な炭化物が析出するおそれがある。したがって、2次浸炭初期工程開始温度T2は、Ac1点以上であり、かつ1次浸炭終了後の鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度以下である必要がある。これは、鋼材の表面温度がAc1点とAcm線の間の温度(すなわち、表面がγ+FeC相となる温度)で2次浸炭を開始することを意味する。以下の実施例では、1次浸炭温度T1を950〜1100℃に設定したことを踏まえ、2次浸炭初期工程開始温度T2を750〜850℃に設定した。
2次浸炭初期工程での保持時間を長く設定すれば、保持時間の長さに応じて炭化物をある程度の大きさまで成長させ、鋼材表面での炭素濃度を高くすることができる(図1及び図2のB→C参照)。全浸炭時間の長さや炭化物の成長度合いを考慮に入れると、2次浸炭初期工程での保持時間は15〜60分に設定するのが好ましい。以下の実施例では、2次浸炭初期工程での保持時間を30分に設定した。
(12)2次浸炭後期工程
2次浸炭後期工程は、2次浸炭初期工程終了後、鋼材を2次浸炭後期工程開始温度T3まで加熱し(昇温)、その2次浸炭後期工程開始温度T3で浸炭する工程である。2次浸炭後期工程により炭化物をより大きく球状に成長させ、球状炭化物の炭化物量を増加させることができる(図1及び図2のD1,D2参照)。ここで、2次浸炭後期工程開始温度T3は、次式(3),(4)の条件を満たす。
T2(℃)≦T3(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−50℃ ・・・(3)
T3(℃)≦2次浸炭初期工程終了時の鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃) ・・・(4)
2次浸炭後期工程は、2次浸炭初期工程よりも高温で浸炭を行うものであり、粒界に片状・粗大な炭化物を析出させることなく、粒内の炭化物を大きく球状に成長させることを目的としている。したがって、2次浸炭後期工程開始温度T3は、2次浸炭初期工程終了時の鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度以下である必要がある。以下の実施例では、1次浸炭温度T1を950〜1100℃に設定したことを踏まえ、2次浸炭後期工程開始温度T3を850〜1000℃に設定した。
2次浸炭後期工程での浸炭時間を長く設定すれば、浸炭時間の長さに応じて球状炭化物の炭化物量を増加させることができる(図1及び図2のD1→D2参照)。一般に、2次浸炭後期工程での浸炭時間が長くなるほど、炭化物を成長させることができる。耐摩耗性、面疲労強度に優れた高濃度炭素鋼を得るためには、2次浸炭後期工程での保持時間は15〜60分に設定するのが好ましい。以下の実施例では、2次浸炭後期工程での保持時間を30分に設定した。
なお、以下の実施例では、2次浸炭初期工程開始温度T2に所定時間保持した後、温度を所定の温度幅で上昇させ、上昇後の2次浸炭後期工程開始温度T3で所定時間浸炭するように2次浸炭工程を初期と後期の2段階に分けて実施したが、2次浸炭工程を3段階以上に分けて実施することも可能である。また、温度を段階的に上昇させる場合に限らず、2次浸炭初期工程開始温度T2から2次浸炭後期工程終了温度に向けて温度を連続的に上昇(一部の温度領域が連続の場合を含む)させて実施することも可能である。
(13)2次冷却工程
2次冷却工程は、2次浸炭後期工程終了後、鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する工程である。2次冷却工程により球状炭化物と過飽和固溶体の混合組織が得られる(図1及び図2のE参照)。この場合、2次冷却速度が遅すぎると、粒界に片状・粗大な炭化物が析出してしまう。この片状・粗大な炭化物は鋼材の強度を低下させる原因となる。したがって、冷却速度を1℃/分以上に設定する必要がある。なお、以下の実施例では、2次冷却工程においても1次冷却工程と同様の冷却条件下で鋼材を冷却した。
(14)析出処理工程
析出処理工程は、2次冷却工程終了後、鋼材を析出処理工程開始温度T4まで加熱し、その析出処理工程開始温度T4で析出処理する工程である。析出処理工程により過飽和固溶体から炭化物を析出させ、固溶炭素量を減らすことができる(図1及び図2のF,G参照)。ここで、析出処理工程開始温度T4は、次式(5)の条件を満たす。
Ac1点(℃)≦T4(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃ ・・・(5)
析出処理工程は、2次浸炭後期工程のように固溶炭素濃度を高くする目的を有していないため、2次浸炭後期工程と同様の高温に設定する必要がない。したがって、以下の実施例では、1次浸炭温度T1を950〜1100℃に設定したこと、析出処理工程開始温度がAcm線を超えると炭素が固溶してしまうこと、温度が高いほど表面Cが鋼材内部への炭素の拡散が促進されること、等を踏まえ、析出処理工程開始温度T4を750〜850℃に設定した。また、析出処理工程は、1次浸炭工程、2次浸炭工程に引き続いて同じ炉内で行った。この場合、炭化水素ガスは供給せず、例えば炉内を減圧下の窒素ガス雰囲気とした。なお、薄い濃度の炭化水素ガスを供給しながら析出処理工程を行うようにすれば、浸炭効果を得ることも可能である。
また、鋼材表面がγ+FeCとなる温度領域で析出処理を開始する必要があるため、析出処理工程開始温度T4をAc1点以上に設定した。時間は鋼材全体が均熱化できる範囲で短い方がよい。時間を長くすると、表面Cが内部に拡散し表面硬さが低下する。全浸炭時間の長さや鋼材全体の均熱化(変形抑止)を考慮に入れると、析出処理工程での保持時間は15〜60分に設定するのが好ましい。以下の実施例では、析出処理工程での保持時間を30分に設定した。
なお、析出処理工程は、炉内で実施する場合に限らず、鋼材を例えば一旦炉外へ搬出し、高周波処理装置による高周波表面処理により鋼材を析出処理工程開始温度T4まで加熱するようにしてもよい。これによれば、鋼材表面の温度がAc1点を超えたところ(加熱完了)からの保持時間を短時間(例えば1分以下)に設定することができる。
(15)焼入れ工程
焼入れ工程は、析出処理工程終了後、鋼材を焼入れする工程である。焼入れ工程により球状炭化物とマルテンサイトの混合組織が得られる(図1のH参照)。焼入れ方法としては、油焼入れ、ガス焼入れなどがある。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、表1に示す合金組成(残部はFe及び不可避不純物)の鋼材を小型溶解炉(50kg)を用いて溶製し、インゴットに鋳造した。次に、1250℃×2時間の条件下でφ30×1000mmの棒鋼に鍛伸した後、950℃×2時間の条件下で空冷による焼ならし処理を行った。
次に、上記棒鋼から図5に示されるようなローラー部21と軸部22が一体のローラーピッチング試験片20を作成した。各ローラーピッチング試験片20に対し、図1に示した浸炭処理パターンで真空浸炭処理を施した。ただし、比較例6に相当するローラーピッチング試験片20に対してはガス浸炭を施した。各浸炭処理では、表面炭素濃度が1.2〜3.0%の範囲内となるように浸炭条件を調整した。
浸炭は、1次浸炭工程においては、以下の(1)及び(2)の操作を合計4回繰り返すことにより行い、2次浸炭初期工程及び2次浸炭後期工程においては、以下の(1)及び(3)の操作を合計10回繰り返すことにより行った。
(1)総浸炭時間の2%に当たる時間、浸炭ガスを流して真空浸炭を行う操作
(2)総浸炭時間の23%に当たる時間、真空引きをして拡散させる操作
(3)総浸炭時間の8%に当たる時間、真空引きをして拡散させる操作
なお、比較例1〜5については、2次浸炭後期工程を行っていない。また、比較例6についてはガス浸炭を採用した。
ローラーピッチング試験片20の横断面を研磨してピラクル液で腐食した後、最表面から10μmの位置をSEMで写真撮影し(観察倍率3000倍)、画像解析することにより炭化物面積率の測定を行った。また、上記と同じ条件で画像解析することにより、炭化物形態を調査した。
ローラーピッチング試験は、図5に示されるように、負荷用ローラー30とローラーピッチング試験片20(例えば、直径26mm、全長130mm)、を油潤滑下にて一定面圧で接触させ、すべりを与えながら回転させることにより、対象物(例えばギア、プーリ等)の剥離損傷を再現する試験である。試験条件は、面圧3.6,3.3,3.0,2.7,2.4GPaとし、すべり率(−60)%、回転数1500rpmとした。潤滑油はATF油を用い、油温90℃、流量2L/minで試験を行った。負荷用ローラー30は、軸受鋼SUJ2を焼入れ・焼戻し後に表面研削したもの(例えば、直径130mm、曲率半径150mmのクラウニング加工を施したもの)を用いた。そして、各面圧と剥離寿命の関係から10^7サイクルで剥離を起こす面圧(10^7強度)を算出した。
表1に試験結果を示す。また、図3に実施例2の表面組織の写真を、図4に比較例1の表面組織の写真をそれぞれ例示する。
比較例1〜3は、いずれも1次浸炭が過剰であるため(Acm線を超えるか、あるいはAcm線に接近)、粒界に板状の炭化物(図4の炭化物100参照)が析出した。これにより、ローラーピッチング試験の結果において、上記した算出面圧がいずれも3GPa未満となった。
比較例4〜6は、いずれも2次浸炭後期工程及び析出処理工程を実施しなかったため、炭化物面積率が30%を下回ることとなった。これにより、ローラーピッチング試験の結果において、上記した算出面圧がいずれも3GPa未満となった。
これに対し、実施例1〜18は、いずれも炭化物面積率が30%を超えるとともに、炭化物形態がすべて球状(図3の炭化物10参照)となった。これにより、ローラーピッチング試験の結果において、上記した算出面圧がいずれも3GPa以上となった。
以上の説明からも明らかなように、本実施例の高濃度浸炭鋼の製造方法では、2次浸炭後期工程により過飽和固溶体として固溶された炭素が、析出処理工程により炭化物として析出される。したがって、焼入れ工程が終了した後に残留γ量を減少させることが可能であり、分散した多量の球状炭化物とマルテンサイトの混合組織により強度を十分に向上させることができる。
その他、本発明は上記実施例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。
10 炭化物(球状)
20 ローラーピッチング試験片
100 炭化物(板状)

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.10〜1.50%、
    Mn:0.20〜1.00%、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Cr:1.00〜5.00%、
    Mo:0.50%以下、
    Al:0.10%以下、
    残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材に対して、以下の工程を施すことを特徴とする高濃度浸炭鋼の製造方法。
    (ア)1次浸炭温度T1(℃)において、前記鋼材の表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)を満たすように浸炭する1次浸炭工程。
    ただし、Ceuは前記鋼材の共析炭素濃度、C(Acm)は前記1次浸炭温度T1(℃)における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。
    (イ)前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する1次冷却工程。
    (ウ)前記1次冷却工程終了後、前記鋼材を2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)まで加熱し、その2次浸炭初期工程開始温度T2(℃)で浸炭する2次浸炭初期工程。
    ただし、Ac1点(℃)≦T2(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
    T2(℃)≦1次浸炭終了後の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
    (エ)前記2次浸炭初期工程終了後、前記鋼材を2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)まで加熱し、その2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)で浸炭する2次浸炭後期工程。
    ただし、T2(℃)≦T3(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−50℃
    T3(℃)≦2次浸炭初期工程終了時の前記鋼材の表面炭素濃度でのAcm温度(℃)
    (オ)前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する2次冷却工程。
    (カ)前記2次冷却工程終了後、前記鋼材を析出処理工程開始温度T4(℃)まで加熱し、その析出処理工程開始温度T4(℃)で析出処理する析出処理工程。
    ただし、Ac1点(℃)≦T4(℃)≦1次浸炭温度T1(℃)−100℃
    (キ)前記析出処理工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。
  2. 前記析出処理工程は、炉内において前記鋼材を前記析出処理工程開始温度T4(℃)に15〜60分間保持するものである請求項1に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  3. 前記析出処理工程は、高周波表面処理により前記鋼材を前記析出処理工程開始温度T4(℃)まで加熱した後、1分以下に保持するものである請求項1に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  4. 前記析出処理工程開始温度T4(℃)は、750〜850℃に設定されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  5. 前記2次浸炭後期工程開始温度T3(℃)は、900〜1000℃に設定されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  6. 前記1次浸炭工程、前記2次浸炭初期工程及び前記2次浸炭後期工程は、真空浸炭により行われる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
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