JP2008115427A - 高濃度浸炭鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炉の寿命低下、鋼材の変形、作業効率の低下を生じさせることなく、微細かつ球状の炭化物を大量に分散させることが可能な高濃度浸炭鋼の製造方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程を備えた高濃度浸炭鋼の製造方法。(イ)所定の組成を有する鋼材を、1次浸炭温度T1(℃)において、その表面炭素濃度Cが所定の炭素濃度となるまで浸炭させる1次浸炭工程。(ロ)1次浸炭工程終了後、鋼材を冷却速度1℃/分以上でAr1点以下まで冷却する冷却工程。(ハ)鋼材を、1次浸炭温度T1より100℃以上低い2次浸炭開始温度T2sまで昇温させ、2次浸炭温度T2において鋼材を浸炭させる2次浸炭初期工程。(ニ)2次浸炭初期工程終了後、引き続き鋼材を焼入れ温度Tqまで昇温させ、焼入れ温度Tqにおいてさらに浸炭させる2次浸炭後期工程。(ホ)2次浸炭後期工程終了後、鋼材を焼入れする焼入れ工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、高濃度浸炭鋼の製造方法に関し、さらに詳しくは、浸炭処理によって表面に微細、かつ球状の炭化物を多量に析出させることが可能な高濃度浸炭鋼の製造方法に関する。
浸炭とは、鋼を浸炭性雰囲気中で加熱し、表面の炭素濃度を高める処理をいう。浸炭は、一般に低炭素鋼に適用され、浸炭後に焼入れされて使用される。このような浸炭−焼入れ処理された材料は、肌焼鋼あるいは浸炭鋼と呼ばれており、表面が硬く、内部は柔らかいので、軸、軸受け、歯車、ピストンピン、カムなどの機械部品に賞用されている。
浸炭の中でも、材料表面近傍の炭素濃度を高めて炭化物を析出させる処理は、特に「高濃度浸炭」と呼ばれている。高濃度浸炭により得られる材料は、組織中に硬い炭化物が分散しているので、従来より行われている共析浸炭により得られる材料よりも耐摩耗性、面疲労強度が高いという特徴がある。
しかしながら、高濃度浸炭処理材の特性は、炭化物の分散形態の影響を強く受けるので、高い強度を得るためには、炭化物を微細・球状・大量に分散させる必要がある(非特許文献1参照)。特に、粒界に析出した粗大な炭化物は、強度低下の原因となる。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
C:0.05〜0.45%を含有する鋼で製造した機械構造部品を、
(イ) 880℃以上の温度でプラズマ浸炭することにより、部品表面のC濃度を鋼のAcm以上にして表面近傍に炭化物を析出させる一次浸炭を行い、
(ロ) 徐冷して鋼のAr1より低い温度に降温し、いったんそこで保持したのち、Ar1を超える温度に昇温し、
(ハ) 一次浸炭の温度より10〜60℃低い温度において、再びプラズマ浸炭による二次浸炭を行い、
(ニ) 直ちに、または拡散処理を施したのち、焼入れ焼戻しをし、
表面C濃度が1.5%以上であり、浸炭層の炭化物形状がほぼ球形であって、耐摩耗性と耐ピッチング性に優れた部品を得ることからなる鋼の浸炭処理方法
が開示されている。
また、同文献には、
上記工程(ハ)に続いて、
(ホ) 再び徐冷して鋼のAr1より低い温度に降温し、いったんそこに保持したのち、Ar1を超える温度に昇温し、
(ヘ) 二次浸炭の温度よりさらに10〜60℃低い温度において、再びプラズマ浸炭による三次浸炭を行い、
その後に工程(ニ)を行うことにより、
表面C濃度1.7%以上で、浸炭層の炭化物形状がほぼ球形であって、耐摩耗性と耐ピッチング性に優れた部品を得ることからなる鋼の浸炭処理方法
が開示されている。
同文献には、
(1) 浸炭処理法としてプラズマ浸炭を用いると、高いカーボンポテンシャルにもかかわらず、すすの発生が軽微であるので、浸炭ムラの心配がない点、
(2) 一次浸炭においてAcmを超える高度の浸炭を行っているので、炭化物をオーステナイト粒界に塊状に析出させることができる点、
(3) 浸炭後、いったん温度をAr1より低い温度に降温し、再度Ar1を超える温度に昇温すると、オーステナイト粒界が移動し、はじめに粒界に存在していた炭化物は、新オーステナイト粒内に残存することになる点、
(4) さらに二次浸炭を行うことにより、新オーステナイト粒界に炭化物が析出し、この新しく生成した炭化物と、上記の残存炭化物をあわせて、炭化物分布が好ましい浸炭層が得られる点、
が記載されている。
さらに、特許文献2には、
浸炭処理により表面炭素濃度を0.8%以上とした鋼製部品をこの浸炭処理後300℃以下の温度まで0.1℃/sec以上の冷却速度で冷却し、次いで、鋼のAc1変態温度よりも50℃高くかつ150℃低い温度域に鋼製部品を加熱した後同温度で保持し、更に、10℃/sec以下の加熱温度で心部がオーステナイト単相ないしはオーステナイトとフェライトの2相であってフェライト面積率が30%以下となる温度まで昇温して保持した後、直接焼入れを行うかもしくは所定の焼入れ温度まで温度を下げたあと焼入れを行う鋼製部品の浸炭熱処理方法が開示されている。
同文献には、浸炭処理した鋼製部品を鋼のAc1変態温度より50℃高くかつ150℃低い温度域に保持することによって、微細炭化物を成長させることができる点が記載されている。
下村哲也、森田敏之、井上幸一郎、電気製鋼、77(2006)、11 特許第2808621号公報 特開平6−108226号公報
特許文献2に開示されているように、1回の浸炭処理のみによって、微細かつ球状の炭化物を大量に分散させるのは難しい。そのため、従来行われている高濃度浸炭は、1次浸炭及び2次浸炭の2回の浸炭を行うものが多い。1次浸炭は、主として、表面に高濃度の炭素を固溶させ、2次浸炭を行うための再加熱時に微細な炭化物を多量に析出させることを目的として行われる。一方、2次浸炭は、主として、1次浸炭後の再加熱時に生成した微細な炭化物を成長させることを目的として行われる。そのためには、1次浸炭と2次浸炭の温度差が十分あることが望ましい。
しかしながら、1次浸炭と2次浸炭の温度差を大きくするために、1次浸炭の温度を上昇させると、炉の寿命が低下する。また、肌焼鋼は、通常、仕上げ加工することなくそのまま使用されるが、必要以上の高温加熱は、材料の変形を増大させる原因となる。
一方、この問題を解決するために、1次浸炭の温度を下げると同時に2次浸炭の温度を下げると、2次浸炭時の炭素の拡散速度が低下する。そのため、必要量の炭化物を析出させるのに長時間を要し、作業効率が低下する。
さらに、1次浸炭の温度のみを下げ、2次浸炭の温度を高く維持すると、1次浸炭と2次浸炭の温度差が小さくなる。そのため、粒界に片状・粗大な炭化物が析出しやすくなり、組織の再現性が低下する。
本発明が解決しようとする課題は、炉の寿命を低下させることなく、微細かつ球状の炭化物を大量に分散させることが可能な高濃度浸炭鋼の製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、浸炭処理後に大きな変形を生じさせることのない高濃度浸炭鋼の製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、作業効率を低下させることなく、微細かつ球状の炭化物を大量に分散させることが可能な高濃度浸炭鋼の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、粒界に片状・粗大な炭化物が析出せず、組織の再現性が高い高濃度浸炭鋼の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法は、以下の工程を備えていることを要旨とする。
(イ) C:0.15〜0.30mass%、Si:0.40〜0.80mass%、Mn:0.3〜0.8mass%、Cr:1.25〜2.00mass%、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を、1次浸炭温度T1(℃)において、その表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)となるまで浸炭させる1次浸炭工程。
但し、
Ceuは、前記鋼材の共析炭素濃度、
C(Acm)は、前記1次浸炭温度T1における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。
(ロ) 前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する冷却工程。
(ハ) 前記鋼材を2次浸炭開始温度T2sまで昇温させ、2次浸炭温度T2において前記鋼材を浸炭させる2次浸炭初期工程。
但し、
Ac1点(℃)≦T2s(℃)≦1次浸炭温度T1−100℃≦2次浸炭開始直後における前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)、
T2S≦T2≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。
(ニ) 前記2次浸炭初期工程終了後、引き続き前記鋼材を焼入れ温度Tq(℃)まで昇温させ、前記焼入れ温度Tqにおいてさらに浸炭させる2次浸炭後期工程。
但し、
Tq≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。
(ホ) 前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。
1次浸炭温度T1で1次浸炭を行った後、さらに2次浸炭を行う場合において、2次浸炭を焼入れ温度Tqより低い2次浸炭温度T2で浸炭を行う2次浸炭初期工程と、焼入れ温度Tqにおいて浸炭を行う2次浸炭後期工程に分割すると、1次浸炭温度T1が相対的に低温であっても、1次浸炭温度T1と2次浸炭温度T2の温度差を十分に取ることができる。そのため、炉の寿命低下や浸炭処理後の大きな変形を生じさせることなく、微細かつ球状の炭化物を大量に分散させることができる。また、2次浸炭後期工程においては、相対的に高温で浸炭が行われるので、作業効率を低下させることもない。さらに、1次浸炭温度T1と2次浸炭温度T2の温度差を十分に取ることができるので、材料間に組成のバラツキがあっても、粒界への片状・粗大な炭化物の析出を確実に抑制することができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
初めに、本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法が適用される鋼材について説明する。
本発明に係る方法が適用される鋼材は、以下のような合金元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。合金元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(1) C:0.15〜0.30mass%。
C量が少ないと、心部にフェライトが生成し、強度を低下させる。従って、C量は、0.15mass%以上が好ましい。
一方、C量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、C量は、0.30mass%以下が好ましい。
(2) Si:0.40〜0.80mass%。
Si量が少ないと、マトリックスの焼戻し硬さが低下し、強度を低下させる。従って、Si量は、0.40mass%以上が好ましい。
一方、Si量が過剰になると、炭化物の生成量が低下し、強度を低下させる。また、心部にフェライトが生成し、強度を低下させる。従って、Si量は、0.80mass%以下が好ましい。
(3) Mn:0.3〜0.8mass%。
Mn量が少ないと、マトリックスの焼入れ性が低下し、不完全焼入れにより強度が低下する。従って、Mn量は、0.3mass%以上が好ましい。
一方、Mn量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、Mn量は、0.8mass%以下が好ましい。
(4) Cr:1.25〜2.00mass%。
Cr量が少ないと、炭化物の生成量が低下し、強度を低下させる。また、心部にフェライトが生成し、強度を低下させる。従って、Cr量は、1.25mass%以上が好ましい。
一方、Cr量が過剰になると、素材の硬さを上げ、製造性(特に、被削性)を低下させる。従って、Cr量は、2.00mass%以下が好ましい。
次に、本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法について説明する。
本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法は、1次浸炭工程と、冷却工程と、2次浸炭初期工程と、2次浸炭後期工程と、焼入れ工程とを備えている。
1次浸炭工程は、上述の組成を有する鋼材を、1次浸炭温度T1(℃)において、その表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)となるように浸炭させる工程である。
1次浸炭温度T1は、少なくとも、後述する2次浸炭開始温度T2sよりも100℃以上高い温度であればよい。一般に、1次浸炭温度T1が高くなるほど、短時間で所定の炭素濃度まで浸炭することができる。1次浸炭温度T1は、具体的には、900℃以上が好ましい。
一方、1次浸炭温度T1が高くなりすぎると、炉の寿命を低下させ、あるいは、浸炭中における鋼材の変形が増大する場合がある。従って、1次浸炭温度T1は、具体的には、1100℃以下が好ましく、さらに好ましくは、1000℃以下である。
また、浸炭は、鋼材の表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)となるように行う。
ここで、「表面炭素濃度」とは、表面から10μmの領域内の平均炭素濃度をいう。
また、「Ceu」とは、上述した範囲のSi、Mn、及びCrを含む鋼材の共析炭素濃度をいう。上述した鋼材の場合、いずれも、共析炭素濃度は、0.5mass%以上となる。
さらに、「C(Acm)」とは、1次浸炭温度T1における、上述した範囲のSi、Mn及びCrを含む鋼材のAcm線に相当する炭素濃度をいう。C≦C(Acm)となるまで浸炭を行うことは、鋼材の表面温度がAcm線以上となる温度(すなわち、表面がγ相単相となる温度)で1次浸炭を行うことを意味する。
表面炭素濃度Cが少ないと、後述する2次浸炭の昇温中に、マトリックス内に炭化物が析出しない。昇温中にマトリックス内に炭化物が析出しないと、2次浸炭時に粒界に粗大な炭化物が生成する。従って、1次浸炭は、表面炭素濃度CがCeuより大きくなるように行う必要がある。
一方、表面の炭素濃度Cが過剰になると、1次浸炭中に粒界に炭化物が生成する。1次浸炭で生成した炭化物は、そのまま残存するため、粗大な炭化物の生成は防止しなければならない。具体的には、長径5μm以上の粗大な炭化物が存在しないことが好ましい。従って、1次浸炭は、表面炭素濃度CがC(Acm)以下となるように行う必要がある。
例えば、上述した組成を有する鋼材の場合、1次浸炭温度T1を950〜1000℃とすると、C(Acm)は、1.25〜1.4mass%程度となる。
1次浸炭を行う際の浸炭方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。特に、ガス浸炭及び真空浸炭は、取り扱いが容易で、処理時間も短いので、浸炭方法として好適である。特定の浸炭方法を採用した場合において、浸炭条件を最適化すると、表面の炭素濃度Cを上述の範囲に収めることができる。
例えば、ガス浸炭は、浸炭性ガス雰囲気中で鋼材を加熱することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、浸炭雰囲気のカーボンポテンシャルにより制御することができる。カーボンポテンシャルとは、雰囲気と平衡する純鉄の表面平衡炭素濃度であり、雰囲気中のCO/CO2比やH2O量に依存する。一般に、カーボンポテンシャルが高くなるほど、及び/又は、1次浸炭温度T1が高くなるほど、短時間で表面の炭素濃度を高めることができる。
また、例えば、真空浸炭は、鋼材を挿入した炉内を1.3Pa程度に減圧した後、浸炭温度に加熱し、メタン、プロパンなどの炭化水素ガスを炉内に導入することにより浸炭を行う。この場合、浸炭量は、炭化水素ガスの導入時間により制御することができる。なお、真空浸炭を行うと、表面近傍の炭素濃度が高くなりすぎる場合があるので、このような場合には、浸炭後に炭化水素ガスの供給を止め、その状態で保持する拡散処理を行うのが一般的である。
冷却工程は、1次浸炭工程終了後、鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する工程である。
1次浸炭終了後、鋼材は、一端、700℃以下の温度まで冷却される。700℃以下の温度まで冷却するのは、2次浸炭の再加熱の際に、粒内に微細な炭化物を析出させるためである。この場合、冷却速度が遅すぎると、冷却中に片状・粗大な炭化物が粒界に析出するので好ましくない。冷却時に生じた粗大な炭化物は、後述の工程においても消滅せず、鋼材の強度を低下させる原因となる。従って、冷却速度は、1℃/分以上が好ましい。冷却速度は、速いほどよい。
2次浸炭初期工程は、冷却された鋼材を2次浸炭開始温度T2sまで昇温させ、2次浸炭温度T2において鋼材を浸炭させる工程である。
ここで、「2次浸炭開始温度T2s」とは、次の(1)式の条件を満たす温度をいう。
Ac1点(℃)≦T2s(℃)≦1次浸炭温度T1−100℃≦2次浸炭開始直後における前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃) ・・・(1)
2次浸炭開始温度T2sと1次浸炭温度T1との温度差は、100℃以上が好ましい。両者の温度差が100℃未満になると、粒界に片状・粗大な炭化物が生成するおそれがある。両者の温度差は、大きいほどよい。
また、2次浸炭開始温度T2sは、Ac1点以上であり、かつ、2次浸炭開始直後における鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度以下である必要がある。これは、鋼材の表面温度がAc1点とAcm線の間の温度(すなわち、表面がγ+Fe3C相となる温度)で2次浸炭を開始することを意味する。
「2次浸炭温度T2」とは、次の(2)式の条件を満たす温度をいう。
T2S≦T2≦前記鋼材の表面の炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)・・・(2)
2次浸炭温度T2は、2次浸炭開始温度T2sと同一であっても良く、あるいは、それより高い温度であってもよい。
2次浸炭温度T2が2次浸炭開始温度T2sと同一である場合、2次浸炭温度T2での保持時間は、後述する焼入れ温度Tqまで昇温したときに、鋼材の表面温度がAcm線温度を超えない時間であればよい。一般に、2次浸炭温度T2での保持時間が長くなるほど、表面の炭素濃度が上昇し、これに応じて表面のAcm線温度も上昇するので、鋼材の表面温度をAcm線以下に保ったまま、浸炭を行うことができる。後述する焼入れ温度Tqに昇温したときに鋼材の表面温度を確実にAcm線以下とするためには、2次浸炭温度T2での保持時間は、15分以上が好ましい。
一方、2次浸炭温度T2が2次浸炭開始温度T2sより高い場合、2次浸炭温度T2は、2次浸炭開始温度T2sから階段状に温度を上昇させても良く、あるいは、連続的に上昇させてもよい。
「階段状」とは、一定温度で所定時間保持した後、温度を所定の温度幅で上昇させ、さらにその温度で所定時間保持することを繰り返すことをいう。階段状に温度を上昇させる場合であっても、温度の上昇幅及び保持温度での保持時間を最適化すると、鋼材の表面温度をAcm線以下に保ったまま、浸炭を行うことができる。
また、「連続的」とは、所定の昇温速度で温度を上昇させることをいう。連続的に温度を上昇させる場合であっても、昇温速度を最適化することによって、鋼材の表面温度をAcm線以下に保ったまま、浸炭を行うことができる。
2次浸炭後期工程は、2次浸炭初期工程終了後、引き続き鋼材を焼入れ温度Tq(℃)まで昇温させ、焼入れ温度Tqにおいてさらに浸炭させる工程である。
但し、Tq≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。
2次浸炭後期工程は、単に鋼材の温度を焼入れ温度Tqまで上昇させるためだけではなく、より高温において浸炭を行わせ、粒界に片状・粗大な炭化物を析出させることなく、短時間で表面の炭素濃度を目的とする炭素濃度とするための工程でもある。従って、焼入れ温度Tqは、鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度以下である必要がある。2次浸炭初期工程の浸炭条件を最適化すると、鋼材の表面温度をAcm線温度以下に保ったまま、焼入れ温度Tqまで昇温することができる。
一般に、焼入れ温度Tqが低くなるほど、保持中に、粒界に片状・粗大な炭化物が生成しにくくなる。しかしながら、焼入れ温度Tqが低くなりすぎると、炭素の拡散速度が低下するだけでなく、心部の焼入れが不十分となる。従って、焼入れ温度Tqは、鋼材の心部がオーステナイト単相となる温度以上とするのが好ましい。
焼入れ温度Tqでの保持時間は、特に限定されるものではなく、鋼材の組成、焼入れ温度Tq、鋼材に要求される特性等に応じて、最適な時間を選択する。一般に、保持時間が長くなるほど、鋼材の表面炭素濃度を上昇させることができる。耐摩耗性、面疲労強度に優れた高濃度浸炭鋼を得るためには、焼入れ温度Tqでの保持時間(すなわち、浸炭時間)は、15分以上が好ましい。
なお、2次浸炭初期工程において、段階的又は連続的に2次浸炭温度T2を上昇させる場合において、焼入れ温度Tqに達した時点で十分な浸炭量が得られ、かつ、鋼材の均熱も十分であるときには、焼入れ温度Tqに到達後、焼入れ温度Tqでの浸炭を実質的に行うことなく、直ちに焼入れを行ってもよい。
焼入れ工程は、2次浸炭後期工程終了後、鋼材を焼入れする工程である。
焼入れは、表面の浸炭層及び心部をマルテンサイト変態させるために行われる。そのためには、2次浸炭後期工程終了後の鋼材は、急冷することが好ましい。焼入れ方法としては、具体的には、油焼入れ、ガス焼入れなどがある。
次に、本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法の作用について説明する。
図1(a)〜図1(d)に、各種条件で高濃度浸炭した場合における組織変化の模式図を示す。なお、図1(a)〜図1(d)には、状態図も併せて示した。
高濃度浸炭は、1次浸炭と2次浸炭の2回の浸炭を行うものが多い。浸炭を2段階に分けて行う従来の高濃度浸炭は、図1(a)の状態図に示すように、1次浸炭終了時の表面の炭素濃度は、浸炭温度に対応するAcm線濃度より低い濃度になっている。すなわち、1次浸炭終了後の表面は、オーステナイト単相状態にある。そのため、この状態から所定の冷却速度で700℃以下まで冷却すると、鋼材の組織は、図1(a)の左図に示すように、粒界に粗大な炭化物が生成していない状態となる。
この状態から鋼材を2次浸炭温度まで昇温すると、図1(a)の中図に示すように、2次浸炭の昇温過程で粒内に球状・微細な炭化物が生成する。これは、2次浸炭は、鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度より低い温度(すなわち、表面がγ+Fe3C相となる温度)で行われ、1次浸炭に比べて炭素の拡散速度が遅くなるので、粒界に炭化物が析出しにくくなるためである。
2次浸炭温度に到達後、その温度で2次浸炭を開始すると、図1(a)の右図に示すように、昇温過程で生じた微細な炭化物が核となり、炭化物が成長する。
図1(a)に示すような組織を得るためには、1次浸炭終了時の温度はAcm線より高く、2次浸炭開始時の温度はAcm線より低くなっている必要がある。製造された鋼材にはロット間の成分バラツキがあり、鋼材ごとにAcm線の位置が多少変動するので、図1(a)に示すような組織を確実に得るためには、1次浸炭温度と2次浸炭温度の温度差を十分に取る必要がある。
しかしながら、温度差を十分に取るために、1次浸炭温度を上昇させると、炉の耐久性が低下する。一方、これを回避するために、2次浸炭温度を下げると、2次浸炭時における炭素の拡散速度が低下するので、生産性が大幅に低下する。
さらに、炉の耐久性と生産性とを両立させるために、1次浸炭温度と2次浸炭温度の温度差を小さくすると、Acm線を挟んだ2段階の浸炭処理を再現性良く行うのが困難となる。
例えば、2次浸炭温度を従来と同等の温度に維持し、1次浸炭温度を下げた場合において、1次浸炭温度がAcm線より上にあるときには、1次浸炭終了後の鋼材の組織は、図1(b)の左図に示すように、粒界に粗大な炭化物が生成していない状態となる。しかしながら、2次浸炭開始温度がAcm線を越えると、図1(b)の中図に示すように、2次浸炭温度に保持している間に、2次浸炭の昇温過程で粒内に生成した微細な炭化物が再固溶する。粒内には炭化物を成長させるための核が無くなるので、炭化物は、形成エネルギーのより小さい粒界において優先的に生成する。その結果、図1(b)の右図に示すように、粒界に粗大な炭化物が生成する。
一方、2次浸炭温度を従来と同様の温度に維持し、1次浸炭温度を下げた場合において、1次浸炭温度がAcm線より下にあるときには、1次浸炭終了後の鋼材の組織は、図1(c)の左図に示すように、粒界に片状の炭化物が生成した状態となる。これを2次浸炭開始温度に昇温すると、図1(c)の中図に示すように、昇温過程で粒内に微細な炭化物が生成する。この状態から2次浸炭を行うと、図1(c)の右図に示すように、粒内の微細な炭化物と粒界に生成した片状の炭化物の双方が成長する。
図1(b)及び図1(c)のいずれの場合においても、粒界に生成した片状・粗大な炭化物は、高濃度浸炭鋼の強度を低下させる原因となる。
これに対し、1次浸炭温度を従来と同等以下にした状態で1次浸炭を終了させると、図1(d)の左図に示すように、1次浸炭終了後の鋼材の組織は、粒界に粗大な炭化物が生成していない状態となる。また、鋼材を冷却後、2次浸炭開始温度に昇温する場合において、2次浸炭開始温度を1次浸炭温度より100℃以上低い温度にすると、鋼材の表面温度をAcm線より低い温度に確実に持っていくことができる。そのため、2次浸炭開始温度に到達した時点では、図1(d)の中図に示すように、粒内に微細な炭化物が生成する。 この状態から、2次浸炭開始温度と同一温度で保持し、又は、2次浸炭開始温度から段階的若しくは連続的に温度を上昇させながら一定時間浸炭を行うと、粒界に炭化物が生成することなく、粒内の炭化物が成長する。
また、2次浸炭の進行に伴い、表面の炭素濃度が上昇し、表面のAcm線温度も上昇する。そのため、2次浸炭初期工程の条件を最適化すれば、鋼材を焼入れ温度に昇温しても、焼入れ温度が表面のAcm線温度を超えることがない。その結果、図1(d)の右図に示すように、粒界に炭化物を生成させることなく、粒内の炭化物を成長させることができる。
粒界に片状・粗大な炭化物の析出を防止するためには、1次浸炭をAcm線より高い温度で行い、2次浸炭をAcm線より低い温度で行う必要がある。本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法は、1次浸炭終了後と2次浸炭開始時の温度差を十分に取ることができるので、鋼材の成分にロット間バラツキがある場合であっても、片状・粗大な炭化物の生成を確実に抑えることができる。また、充分な温度差を取るために1次浸炭温度を上昇させる必要がないので、炉の耐久性を低下させることもない。さらに、2次浸炭開始温度に到達した後、所定時間経過後に焼入れ温度に上昇させて浸炭が続行されるので、表面の炭素濃度を短時間で目的とする濃度に到達させることができる。
(実施例1〜15、比較例1〜5)
[1. 試料の作製]
種々の組成を有する鋼材について、種々の条件下で浸炭を行った。なお、浸炭は、いずれも1次浸炭と2次浸炭の2段階で行った。また、2次浸炭は、実施例15及び比較例1を除き、一定の温度(低温)で一定時間保持する2次浸炭初期工程と、焼入れ温度(高温)に昇温して一定時間保持する2次浸炭後期工程の2段階に分けて行った。図2に、典型的な浸炭処理パターンを示す。
浸炭は、1次浸炭、2次浸炭初期及び2次浸炭後期のいずれも、
(1) 総浸炭時間の2%に当たる時間、浸炭ガスを流して浸炭を行う操作、及び
(2) 総浸炭時間の23%に当たる時間、真空引きをして拡散させる操作、
を合計4回繰り返すことにより行った。
但し、実施例15については、2次浸炭開始温度を750℃とし、焼入れ温度850℃に達するまで、浸炭しながら40分かけて昇温し、焼入れ温度に到達後、直ちに焼入れを行った。
また、比較例2の2次浸炭初期工程は、総浸炭時間の3%に当たる時間、浸炭ガスを流して浸炭する操作と、総浸炭時間の22%に当たる時間、真空引きをして拡散する操作を、合計4回繰り返した。
さらに、比較例3の2次浸炭初期工程は、総浸炭時間の1%に当たる時間、浸炭ガスを流して浸炭を行い、総浸炭時間の24%に当たる時間、真空引きをして拡散する操作を、合計4回繰り返した。
[2. 試験方法]
1次浸炭終了後の表面炭素濃度は、断面の炭素濃度分布をEPMAにより測定し、表面から10μmの領域内の平均炭素濃度を算出した。また、1次浸炭終了後及び焼入れ後の炭化物粒径は、試料断面をピクラルで腐食後、SEMを用いて写真撮影することにより測定し、1mm2中に存在する炭化物の粒径の最大値を「炭化物粒径」とした。さらに、焼入れ後の疲労強度は、回転曲げ疲労試験(JIS Z 2274に準拠)により測定した。
[3. 結果]
表1に、各種鋼材の成分、浸炭条件、及び試験結果を示す。
比較例1は、焼入れ後において、10μmを超える粗大な炭化物が生成した。これは、2次浸炭初期工程を省略し、直ちに885℃での2次浸炭後期工程を行っているために、2次浸炭の昇温過程で生じた微細な炭化物が再固溶したためと考えられる。
また、比較例2は、焼入れ後において、10μmを超える粗大な炭化物が生成した。これは、1次浸炭が過剰であり、1次浸炭終了時点で粗大な炭化物が既に生成していたためである。
また、比較例3は、6μmを超える粗大な炭化物が生成した。これは、1次浸炭が不十分であり、表面炭素濃度が共析炭素濃度に満たないために、2次浸炭開始温度到達時点で、粒内に微細な炭化物が生成しなかったためと考えられる。
また、比較例4は、粗大な炭化物はないが、疲労強度が低い。これは、2次浸炭初期温度と2次浸炭後期温度が同一であり、炭素の拡散速度が遅いために、十分な量の炭化物が生成しなかったためと考えられる。
さらに、比較例5は、7μmを超える粗大な炭化物が生成した。これは、2次浸炭初期温度における保持時間が短いために、2次浸炭後期温度に昇温したときに鋼材の表面温度がAcm線を越えたためと考えられる。
そのため、比較例1〜5は、いずれも疲労強度が700MPa未満であった。
これに対し、実施例1〜15は、いずれも疲労強度が700MPa以上であった。これは、適正な条件下で1次浸炭、2次浸炭初期、及び2次浸炭後期が行われているので、粒界に片状・粗大な炭化物を生成させることなく、微細かつ球状の炭化物を粒内に多量に形成することができたためと考えられる。
Figure 2008115427
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る高濃度浸炭鋼の製造方法は、軸、軸受け、歯車ピストンピン、カムなどの機械部品の製造方法として使用することができる。
各種条件下で高濃度浸炭した場合における組織変化の模式図、及び、状態図である。 実施例で用いた典型的な浸炭処理パターンを示す図である。

Claims (5)

  1. 以下の工程を備えた高濃度浸炭鋼の製造方法。
    (イ) C:0.15〜0.30mass%、Si:0.40〜0.80mass%、Mn:0.3〜0.8mass%、Cr:1.25〜2.00mass%、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を、1次浸炭温度T1(℃)において、その表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)となるまで浸炭させる1次浸炭工程。
    但し、
    Ceuは、前記鋼材の共析炭素濃度、
    C(Acm)は、前記1次浸炭温度T1における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。
    (ロ) 前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する冷却工程。
    (ハ) 前記鋼材を2次浸炭開始温度T2sまで昇温させ、2次浸炭温度T2において前記鋼材を浸炭させる2次浸炭初期工程。
    但し、
    Ac1点(℃)≦T2s(℃)≦1次浸炭温度T1−100℃≦2次浸炭開始直後における前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)、
    T2S≦T2≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。
    (ニ) 前記2次浸炭初期工程終了後、引き続き前記鋼材を焼入れ温度Tq(℃)まで昇温させ、前記焼入れ温度Tqにおいてさらに浸炭させる2次浸炭後期工程。
    但し、
    Tq≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。
    (ホ) 前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。
  2. 前記1次浸炭温度T1は、1100℃以下である請求項1に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  3. 前記2次浸炭初期工程は、前記2次浸炭温度T2を前記2次浸炭開始温度T2sに維持したまま、15分以上浸炭を行うものである請求項1又は2に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  4. 前記2次浸炭初期工程は、前記2次浸炭温度T2を前記2次浸炭開始温度T2sから前記焼入れ温度Tqに至るまで、段階的又は連続的に上昇させながら浸炭を行うものである請求項1又は2に記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
  5. 前記2次浸炭後期工程は、前記焼入れ温度Tqにおいて15分以上浸炭を行うものである請求項1から4までのいずれかに記載の高濃度浸炭鋼の製造方法。
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