JPH0559526A - 耐摩耗性及び転動疲労性に優れた鋼の製造法 - Google Patents

耐摩耗性及び転動疲労性に優れた鋼の製造法

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JPH0559526A
JPH0559526A JP24062291A JP24062291A JPH0559526A JP H0559526 A JPH0559526 A JP H0559526A JP 24062291 A JP24062291 A JP 24062291A JP 24062291 A JP24062291 A JP 24062291A JP H0559526 A JPH0559526 A JP H0559526A
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carbide
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JP24062291A
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Nobuhiro Murai
暢宏 村井
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 靱性劣化を伴うことなく優れた表面硬度が確
保されていて、各種機器類の動力伝達部材等として十分
に満足できる“耐摩耗性”と“常温から300℃の温度
域における転動疲労強度”を発揮する鋼部材の製造手段
を確立する。 【構成】 C:0.1 〜0.7 %,Si:2.0 %以下,Cr:1.
0 〜17.0%,Ni:5.0 %以下,B:0.0010〜0.0050%,
を含むか、或いは更にMo:5.0 %以下, Nb:0.01〜1.0
%,V:0.01〜1.0 %,の1種又は2種以上をも含み、
残部がFe及び不可避的不純物から成る鋼を、事前浸炭し
て表層の炭素量を〔共析点を超えAcm変態点未満〕の範
囲に調整した後、徐冷(炉冷等)によって該表層を〔フ
ェライト+球状化セメンタイト〕組織とし、次いで75
0〜1000℃の温度域で浸炭処理して表面の炭素量を
Acm変態点以上に調整してから900〜750℃より焼
入れ処理し、更に焼戻し処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、各種機器類の動力伝
達部材用等として好適な“耐摩耗性”と“常温から30
0℃の温度域での転動疲労強度”が優れた鋼の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】近年、例えば自動車産業界での
燃費向上施策等に見られるように各種機械,設備におけ
る使用部材の軽量化要請が高まっているが、これに応じ
るためには軽量化と同時に材料の高強度化も必要とな
る。特に、動力伝達部材の場合には軽量化に伴って部材
が負担する応力は相応に大きくなるので、材料の高強度
化は一層重要な要件となってくる。
【0003】ところで、従来から知られている“鋼材料
の高強度化に有効な熱処理手段”の1つに「浸炭処理」
があるが、この浸炭処理は鋼の表面硬化法の1種であ
り、鋼部材の耐摩耗性,曲げ疲労強度,転動疲労強度の
向上に効果的である。しかしながら、通常の浸炭処理で
は、上記諸特性改善に有効な「表面硬度の上昇」に限界
がある。その理由は、表面硬化が“表面層の高炭素化”
と“マルテンサイト変態の機構”のみに依存しているか
らであり、通常の浸炭によって得られる表面硬度はビッ
カ−ス硬さ(Hv)で800程度が限界である。
【0004】そこで、上記問題を解決するためCを多量
に浸透拡散させて鋼の表面部に炭化物を析出させる“高
炭素浸炭技術”が生み出された。この高炭素浸炭技術を
用いると、上述した通常浸炭処理での表面硬化機構に加
えて、硬質の炭化物をマトリックスの高炭素マルテンサ
イト中に分散させる効果も確保できるので、鋼の表面硬
度をHv 850〜900程度にまで上昇させることが可
能である。しかし、この方法にも次のような問題があっ
た。即ち、“高炭素浸炭”は通常浸炭の場合よりも浸炭
雰囲気のカ−ボンポテンシャル(C.P)を高くし、固溶限
を超えてオ−ステナイト中へCを侵入させることにより
炭化物を析出させる技術であるが、この際に析出する炭
化物は一般に網状又は塊状の粗大なものとなりがちであ
って鋼の靱性低下を招き、転動疲労寿命等にも悪影響を
及ぼすことが指摘されたのである。
【0005】このため、高炭素浸炭処理を行うに際して
事前浸炭を行い、引き続く冷却によって表層部をベイナ
イト,パ−ライト或いはマルテンサイト組織とし、この
ベイナイト,パ−ライト中の炭化物、或いは昇温中にマ
ルテンサイトの中から生成する炭化物を炭化物析出浸炭
の際の析出核として利用することで球状の炭化物を析出
させようとの提案もなされた(特開昭55−69252
号)。ところが、浸炭処理の前組織をパ−ライトにした
場合には、パ−ライト中の炭化物はフレ−ク状であるの
で炭化物析出浸炭過程で十分に球状化された炭化物が析
出し難く、また前組織をベイナイト,マルテンサイトに
した場合には硬度が高くなるので前組織での加工が困難
となり、何れも動力伝達部材用鋼等の製造手段としては
好ましいとは言えなかった。
【0006】このようなことから、本発明が目的とした
のは、靱性劣化を伴うことなく優れた表面硬度が確保さ
れていて、各種機器類の動力伝達部材等として十分に満
足できる“耐摩耗性”と“常温から300℃の温度域に
おける転動疲労強度”を発揮する鋼部材の製造手段を確
立することであった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成すべく、特に前記高炭素浸炭処理の長所を生かしつ
つ浸炭層の靱性改善につながると考えられる析出炭化物
を微細化する手段を求めて、「浸炭により鋼の表層部に
炭化物を効果的に析出・分散させるためには、原則とし
て浸炭前の組織の中に炭化物析出浸炭時の析出サイトと
なるべき核を予め分散させておく必要がある」との観点
に立って鋭意研究を重ねた。即ち、「前組織の中に前記
核の分散が無ければ浸炭時における炭化物の析出は優先
的にオ−ステナイト粒界で起きることとなって機械構造
部品として必要な靭性が大幅に劣化する」との認識か
ら、120〜300℃の温度域においても高い転動疲労
寿命を確保すると共に靱性を劣化させないためには、高
炭素浸炭処理に当ってオ−ステナイト粒界への炭化物析
出を極力阻止してオ−ステナイト粒内に炭化物を析出さ
せることが必要であり、それには浸炭の前組織に炭化物
の析出サイトとなる核を分散させておくことが不可欠で
あると考えたからである。
【0008】そして、上記観点から行われた種々の研究
により、本発明者は次のような事実を見出したのであ
る。 a) 浸炭によって炭化物を析出させる際、析出サイトと
して最も有効に働く核は "浸炭時に析出する炭化物の結
晶構造と同じもの" であり、核としてこのようなものを
選ぶことが重要である。例えば、浸炭時に析出する炭化
物がM3 C型の場合には、前組織にM3 C型の炭化物を
予め分散しておけば、浸炭にて粒内に均一に炭化物を析
出させることが可能となる。
【0009】b) ところで、前記析出核は炭化物析出浸
炭の際にマトリックス中へ溶解してはならない。浸炭中
に核(炭化物)がマトリックス中へ溶解すると、浸炭に
よる炭化物の析出は粒界において優先的に生じることと
なる。このため、炭化物析出浸炭は、核がマトリックス
に完全に溶解しない“温度−時間バランス”で行う必要
がある。
【0010】c) 前記条件に沿う炭化物析出浸炭の前組
織としては、球状化焼鈍組織を挙げることができる。即
ち、該組織の球状化した炭化物は炭化物析出浸炭の際に
不溶で安定な炭化物の析出核として有効に作用し、同一
結晶構造の炭化物の析出を促す。そして、中,低炭素鋼
においてこの球状化焼鈍組織を実現するには、該鋼を事
前浸炭し表面を高炭素化してから徐冷により球状化する
手法が実際上有利である。
【0011】d) 従って、中,低炭素軸受鋼を事前浸炭
して表層部を高炭素化してから炉冷等により徐冷して
〔フェライト+球状化炭化物〕組織とし、この後に炭化
物析出浸炭を実施すると、事前浸炭部の球状化炭化物を
核にして鋼表面の結晶粒内に炭化物が微細に分散析出さ
れ、靱性の著しい劣化を伴うことなく鋼の表面硬度が顕
著に上昇して耐摩耗性が改善される上、前記炭化物の微
細分散析出により転動疲労寿命も向上する。
【0012】本発明は、上記知見事項等を基にして完成
されたものであり、 「C:0.1 〜0.7 %(以降、 成分割合を表わす%は重量
%とする), Si:2.0 %以下, Cr:1.0 〜17.0%, Ni:5.0
%以下, B:0.0010〜0.0050% を含むか、 或いは更に Mo:5.0 %以下, Nb:0.01〜1.0%, V:0.01
〜1.0 % の1種又は2種以上をも含み、 残部がFe及び不可避的不
純物から成る鋼を、 事前浸炭して表層の炭素量を〔共析
点を超えAcm変態点未満〕の範囲に調整した後、徐冷
(炉冷等)によって該表層を〔フェライト+球状化セメ
ンタイト〕組織とし、 次いで750〜1000℃の温度
域で浸炭処理して表面の炭素量をAcm変態点以上に調整
してから900〜750℃より焼入れ処理し、 更に焼戻
し処理を施すことにより、 耐摩耗性及び常温から300
℃の温度域での転動疲労強度に優れた鋼を安定提供し得
るようにした点」に大きな特徴を有している。
【0013】なお、上記本発明法においては、事前浸炭
に次ぐ徐冷後の炭化物析出浸炭の前に機械加工(冷間鍛
造加工等)を施しても良い。徐冷後の組織は〔フェライ
ト+球状化セメンタイト〕組織となっているので加工性
に優れており、従って、形状を整えるのが非常に容易だ
からである。
【0014】次に、本発明において適用鋼の化学成分組
成及びその処理条件を前記の如くに限定した理由を説明
する。 (A) 鋼の化学成分組成 Cは鋼の硬度を確保する作用を有しているが、その含有
量が 0.1%未満であると芯部の強度不足を招き機械部品
として必要な基本的性能を確保できなくなる。一方、
0.7%を超えてCを含有させると材料芯部の靱性を大幅
に損ね、やはり機械部品としての所望性能を確保できな
くなる。特に、本発明は炭化物析出により鋼表面を強化
する表面硬化手段を取り入れたものであるが、表面硬化
を行う場合には硬化により著しく低下した表面の靱性を
芯部の靱性で補う必要があるため芯部に十分な靱性を確
保することが非常に重要であり、それ故にC含有量の上
限には十分に注意しなければならない。従って、C含有
量は 0.1〜 0.7%と定めた。
【0015】Si Siには基地組織のマルテンサイトに固溶してマルテンサ
イトを強靭化する作用があるが、一方で炭化物析出浸炭
の際に炭化物を析出させ難くする作用をも有しており、
2.0%を超えてSiを含有させると炭化物が析出しなくな
る恐れがある。従って、Si含有量は2.0 %以下と定め
た。
【0016】Cr Crは炭化物析出元素であり、炭化物析出浸炭の際の析出
反応を促進する作用があるが、その含有量が 1.0%未満
では炭化物析出反応の促進作用が不十分で、浸炭処理中
に核である球状化炭化物も凝集粗大化してしまい、表面
硬度向上に寄与する炭化物分散組織を得ることができな
い。一方、17.0%を超えてCrを含有量させても上記作用
による効果が飽和してしまって経済的な不利を招くよう
になる。従って、Cr含有量は 1.0〜17.0%と定めた。
【0017】Ni Niも、Siと同様、基地組織のマルテンサイトに固溶して
これを強靭化する作用を有しており、この作用を通じて
転動疲労強度を向上させる効果を発揮するが、一方で炭
化物析出浸炭処理時に炭化物を析出させ難くする作用も
ある。特に、Ni含有量が 5.0%を超えると炭化物の析出
が不十分となることから、Ni含有量については 5.0%以
下と定めた。
【0018】 Bには浸炭部の靱性を向上させる作用があるが、その含
有量が0.0010%未満であると上記作用による所望の効果
が得られず、一方、0.0050%を超えて含有させてもそれ
以上の向上効果が認められないことから、B含有量は0.
0010〜0.0050%と定めた。
【0019】Mo Moは、Ni及びSiと同様、基地組織であるマルテンサイト
に固溶して強靭化させる作用のほか、Crほどではないが
浸炭地の炭化物析出反応を促進させる作用をも有してい
ることから必要により含有せしめられるが、5.0%を超
えて含有させても基地強靭化による転動疲労の向上効果
が飽和してしまうので、Mo含有量は 5.0%以下と定め
た。
【0020】Nb及びV Nb並びにVには何れも浸炭中にCと結合してMC型の特
殊炭化物となり、Fe,Crの炭化物と共に分散析出して耐
摩耗性と転動疲労寿命を向上させる作用があるので、必
要により1種又は2種が添加されるが、何れも含有量が
0.01%未満であると上記作用による所望の効果が得られ
ず、一方、 1.0%を超えて含有させても転動疲労寿命の
向上効果が飽和してしまう。従って、Nb及びVの含有量
は、それぞれ0.01〜 1.0%と定めた。
【0021】(B) 前処理(事前浸炭−徐冷処理) 炭化物析出浸炭によって球状化炭化物を微細分散させる
ためには、炭化物の析出核の存在する前組織が必要であ
る。そして、事前浸炭は鋼の表層部を高炭素化させて析
出核を形成する下地を作るために欠かせない処理であ
る。
【0022】事前浸炭によって鋼表層のC量を共析点を
超える値に調整する理由は、炭化物析出浸炭中にあって
も析出核を溶解させずに安定に残しておくことにある。
前述したように、炭化物析出浸炭の際、事前浸炭により
得られた析出核は溶解してはならない。これらの核が溶
解した場合には炭化物の析出が結晶粒界から生じるよう
になり、機械的性質が大幅に劣化する。そして、共析点
未満の浸炭を行っても、生成した核は炭化物析出浸炭中
に安定して残存しない。
【0023】一方、該事前浸炭によって増加する鋼表層
のC量をAcm変態点未満に抑える理由は、この処理中に
炭化物を析出させないことにある。即ち、析出核として
好適な炭化物の析出は次プロセスである徐冷で行われる
ためこの事前浸炭処理において析出させる必要はない。
【0024】事前浸炭後の徐冷(炉冷等)は、炭化物析
出浸炭の際に析出核となる好適な炭化物が均一分散した
組織、即ち〔フェライト+球状化セメンタイト〕組織を
得るために実施される。このような前組織を形成してお
くことにより、炭化物析出浸炭時に結晶粒内に球状炭化
物が微細分散析出して、優れた耐摩耗性,靱性を発揮す
るようになる。
【0025】(C) 炭化物析出浸炭処理 炭化物析出浸炭処理は、先立つ球状化焼鈍で生成された
炭化物を核にして更なる炭化物を球状微細に析出させ、
鋼表面部の硬度や軟化抵抗を増大させて転動疲労強度,
耐摩耗性を向上させるために施される。なお、上述のよ
うに転動疲労強度,耐摩耗性向上のためには表面硬度を
上昇させることが必要であり、このためには炭化物の分
散析出に加えてマトリックスをC量がAcm変態点以上の
高炭素マルテンサイトにする必要がある。そして、高炭
素マルテンサイトを得るためにはC固溶度が大きいオ−
ステナイト領域で浸炭する必要がある。しかし、浸炭温
度が750℃未満ではオ−ステナイト領域での浸炭が不
可能となる。一方、1000℃を超える温度域で浸炭す
ると炭化物析出の核となる球状化焼鈍炭化物が消失する
ので、浸炭によって供給される炭化物はオ−ステナイト
粒界に粗大化して析出することとなり、靱性,転動疲労
強度を劣化させる。従って、浸炭処理温度は750〜1
000℃と定めた。
【0026】浸炭処理の方法としては固体法,塩浴法,
ガス法,イオン法があるが、何れの方法によっても本発
明の目的を達成できるので特に指定する必要はない。ま
た、浸炭時間については、製品によって必要な炭化物分
散層の濃度が変わるのでそれに応じて適正な時間を選ぶ
必要がある。
【0027】(D) 焼入れ処理 焼入れ処理は、マトリックスを高炭素マルテンサイトに
変態させ、炭化物析出層及び芯部の硬度を上昇させるた
めに実施される。ここで、焼入れによって高炭素マルテ
ンサイトを得ようとすると一般には高温相のオ−ステナ
イトがマトリックスの中に残留しがちである。これを
“残留オ−ステナイト”と称するが、多量に残留すれば
表面硬度の低下と寸法変化を引き起こす。そして、焼入
れ温度が高くなるほど残留オ−ステナイトは多量に残留
するようになる。特に、900℃を超える温度域から焼
入れを行うと急激に残留オ−ステナイトが増加し、表面
硬度の低下と寸法変化が著しくなる。一方、マトリック
スを高炭素マルテンサイトにするためにはオ−ステナイ
ト域から焼入れる必要があるが、焼入れ温度が750℃
未満であるとオ−ステナイト域からの焼入れが不可能と
なる。従って、焼入れ温度は900〜750℃と定め
た。
【0028】(E) 焼戻し処理 焼戻しは、焼入れによって生成した高炭素マルテンサイ
トに靭性を付与するため施される。この場合、焼戻し温
度は特に限定されるものではないが、使用温度よりも5
0〜100℃高い温度で行うことが望ましい。
【0029】続いて、本発明の効果を実施例によって更
に具体的に説明する。
【実施例】表1に示す如き成分組成の鋼を真空溶製し、
得られた鋳塊を熱間鍛造して各々直径70mmと直径20
mmの丸棒材を製作した。次に、各丸棒材から機械加工に
より「直径60mm,厚さ7mmの円盤状試験片」と「直径
15mm,長さ(厚さ)20mmの試験片」を作成し、表2
に示す条件の熱処理を施した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】次いで、上記熱処理を施した「直径60m
m,厚さ7mmの円盤状試験片」の表面を鏡面研磨した
後、各々について転動疲労試験(スラスト式)を行っ
た。なお、試験条件は 接触応力:560kgf/mm2, 油温:250℃, 鋼球: 3/8″適正仕上軸受鋼 に設定した。
【0033】一方、「直径15mm,長さ20mmの試験
片」にて表面(表面下 0.1mm)の硬度と表面部の炭化物
粒径を調査した。
【0034】これらの結果を表2に併せて示す。表2に
示される結果からも明らかなように、本発明で規定する
条件に従って製造された鋼材では、何れも優れた耐摩耗
性を裏付ける高い表面硬度を有すると共に、250℃と
いう温間での転動疲労寿命が何れも従来品に比べ顕著に
向上していることが確認できる。これは、炭化物析出浸
炭に先立ち、事前浸炭によりC量調整を行った素地から
炉冷により炭化物が微細分散した前組織を形成しておい
た場合には、炭化物析出浸炭によって生じる炭化物がよ
り球状となって均一微細に分散することとなり、温間で
の転動疲労寿命の大幅な改善につながったものと考えら
れる。また、本発明に係わる鋼材は何れも高炭素浸炭用
鋼として提案された「試験番号19」に係わる鋼材よりも
炭化物が細かく分散しており、表層部の靱性も優れてい
るであろうことが確認される。
【0035】
【効果の総括】以上に説明した如く、本発明によれば、
従来の高炭素浸炭法に指摘されていた炭化物粗大析出の
問題点が解消され、表面層に微細炭化物が高い濃度で析
出して優れた転動疲労寿命,耐摩耗性,表層部靱性を示
す鋼材を安定提供することができ、各種機器類の動力伝
達部材等に適用してその性能・寿命を一段と向上させる
ことが可能となるなど、産業上極めて有用な効果がもた
らされる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量割合にて C:0.1 〜0.7 %, Si:2.0 %以下, Cr:1.0
    〜17.0%, Ni:5.0 %以下, B:0.0010〜0.0050% を含み、残部がFe及び不可避的不純物から成る鋼を、事
    前浸炭して表層の炭素量を〔共析点を超えAcm変態点未
    満〕の範囲に調整した後、徐冷によって該表層を〔フェ
    ライト+球状化セメンタイト〕組織とし、次いで750
    〜1000℃の温度域で浸炭処理して表面の炭素量をA
    cm変態点以上に調整してから900〜750℃より焼入
    れ処理し、更に焼戻し処理を施すことを特徴とする、耐
    摩耗性及び常温から300℃の温度域での転動疲労強度
    に優れた鋼の製造法。
  2. 【請求項2】 重量割合にて C:0.1 〜0.7 %, Si:2.0 %以下, Cr:1.0
    〜17.0%, Ni:5.0 %以下, B:0.0010〜0.0050%, M
    o:5.0 %以下 を含み、残部がFe及び不可避的不純物から成る鋼を、事
    前浸炭して表層の炭素量を〔共析点を超えAcm変態点未
    満〕の範囲に調整した後、徐冷によって該表層を〔フェ
    ライト+球状化セメンタイト〕組織とし、次いで750
    〜1000℃の温度域で浸炭処理して表面の炭素量をA
    cm変態点以上に調整してから900〜750℃より焼入
    れ処理し、更に焼戻し処理を施すことを特徴とする、耐
    摩耗性及び常温から300℃の温度域での転動疲労強度
    に優れた鋼の製造法。
  3. 【請求項3】 重量割合にて C:0.1 〜0.7 %, Si:2.0 %以下, Cr:1.0
    〜17.0%, Ni:5.0 %以下, B:0.0010〜0.0050% を含有すると共に、更に Nb:0.01〜1.0 %, V:0.01〜1.0 % の1種又は2種をも含み、残部がFe及び不可避的不純物
    から成る鋼を、事前浸炭して表層の炭素量を〔共析点を
    超えAcm変態点未満〕の範囲に調整した後、徐冷によっ
    て該表層を〔フェライト+球状化セメンタイト〕組織と
    し、次いで750〜1000℃の温度域で浸炭処理して
    表面の炭素量をAcm変態点以上に調整してから900〜
    750℃より焼入れ処理し、更に焼戻し処理を施すこと
    を特徴とする、耐摩耗性及び常温から300℃の温度域
    での転動疲労強度に優れた鋼の製造法。
  4. 【請求項4】 重量割合にて C:0.1 〜0.7 %, Si:2.0 %以下, Cr:1.0
    〜17.0%, Ni:5.0 %以下, B:0.0010〜0.0050%, M
    o:5.0 %以下 を含有すると共に、更に Nb:0.01〜1.0 %, V:0.01〜1.0 % の1種又は2種をも含み、残部がFe及び不可避的不純物
    から成る鋼を、事前浸炭して表層の炭素量を〔共析点を
    超えAcm変態点未満〕の範囲に調整した後、徐冷によっ
    て該表層を〔フェライト+球状化セメンタイト〕組織と
    し、次いで750〜1000℃の温度域で浸炭処理して
    表面の炭素量をAcm変態点以上に調整してから900〜
    750℃より焼入れ処理し、更に焼戻し処理を施すこと
    を特徴とする、耐摩耗性及び常温から300℃の温度域
    での転動疲労強度に優れた鋼の製造法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2722212A1 (fr) * 1994-07-07 1996-01-12 Solo Fours Industriels Sa Procede et installation de traitement de cementation et de carbonitruration des aciers
JPH116048A (ja) * 1997-06-12 1999-01-12 Daihatsu Motor Co Ltd 浸炭部材、および含ボロン鋼に対する浸炭方法
JP2001330101A (ja) * 2000-05-19 2001-11-30 Nissan Motor Co Ltd 無段変速機用転動体
CN113652606A (zh) * 2021-07-16 2021-11-16 安徽瑞泰新材料科技有限公司 一种高硬度高韧性耐磨钢球及其制备方法

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