JP2016145130A - ガラス基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス基板を太陽電池用ガラス基板として用いる場合に、ガラス基板の面内のパターニングずれを小さくし、また、ガラス基板毎のパターニングずれのばらつきを小さくする。【解決手段】少なくとも一辺の長さが500mm以上であり、300〜650℃の温度範囲内で少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後に、ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮(C1)、及びこのガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮(C2)が次の関係を満たす、ガラス基板である。(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス基板に関し、詳しくは太陽電池に好適に使用可能なガラス基板に関する。
太陽電池では、ガラス基板に光電変換層として半導体の膜が形成される。太陽電池に用いられる半導体として、カルコパイライト結晶構造を持つ11−13族、11−16族化合物半導体や立方晶系あるいは六方晶系の12−16族化合物半導体は、可視から近赤外の波長範囲の光に対して大きな吸収係数を有している。そのために、高効率薄膜太陽電池の材料として期待されている。代表的な例としてCu(In,Ga)Se(以下、CIGSと称することがある。)が挙げられる。
CIGS太陽電池は、ソーダライムガラスなどの基板の上にモリブデン膜(Mo膜)、CIGS膜等の光電変換層、高抵抗バッファ層、透明導電膜層(TCO)等を順次形成することで製造される。大面積のCIGS太陽電池モジュールを製造する場合は、回路を構成するため、各層の製膜後にパターニングによって膜に溝を形成する工程が含まれる。形成された溝は絶縁部となる。Mo膜、CIGS膜、TCOに施すパターニングをそれぞれP1、P2、P3と称することがある。P1〜P3のパターニングは、通常レーザ光照射によるスクライブ、または金属針等によるメカニカルスクライブによって行われる(非特許文献1参照)。
太陽電池モジュールにおいて、ガラス基板の表面に平行な方向でP1とP2のパターニングの間の領域、及び、P2とP3のパターニングの間の領域は、発電に関与しないデッドスペースとなる。このパターニング間の距離が大きくなるほどデッドスペースは大きくなり、太陽電池の変換効率が低下することがある。一方で、パターニング間の距離が小さすぎる場合はリーク電流が増加し、同様に変換効率が低下することがある(特許文献1参照)。
いわゆるセレン化/硫化法によってCIGS太陽電池を作製する場合、P1とP2のスクライブ工程間にはCIGS膜を形成するための熱処理工程(セレン化/硫化工程)が含まれる。この工程では、基板は一般に300〜650℃の温度で一定時間の熱処理を受けることになり、熱収縮が発生する。また、セレン化/硫化工程では、基板には熱収縮に加え、基板と膜材料の間の熱膨張差や基板の構造緩和に起因した反りが発生する場合もある。
セレン化/硫化工程は、具体的には銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)からなるプリカーサ膜を、セレン化水素(HSe)の雰囲気下において300〜650℃の温度で一定時間熱処理し、その後硫化水素(HS)の雰囲気に置換して300〜650℃の温度でさらに一定時間の熱処理を行う工程である。良好なCIGS膜を得るためには、HSe雰囲気、HS雰囲気での2段階熱処理条件の精密な制御が望ましい。
加熱処理を加え、ガラス基板の上に種々の素子や構造体を形成する際には、ガラスの熱収縮制御が必要であることが知られている。
特許文献2には、プラズマディスプレイ用パネル(PDP)製造時に形成する、基板上の電極パターンのずれを回避するために、フロート法により製造されるフロートガラスであって、600℃で30分の熱処理前後で、このガラスの縦方向と横方向の熱収縮率の差が±5ppm以下であるガラスが開示されている。
また、特許文献3には、上記した電極パターンのずれを回避するために、600℃で1時間の加熱処理前後で、ガラス基板の熱収縮率絶対値が350〜500ppmであり、且つ、各ガラス基板相互間の熱収縮率絶対値のバラツキ及び各ガラス基板内の熱収縮率絶対値のバラツキが±8%以内であるガラス基板が開示されている。
また、特許文献4には、太陽電池用ガラス基板の熱収縮の抑制とキズの発生の抑制のために、ガラス基板の歪点から35℃を差し引いた温度に対して±15℃の範囲内の温度で60分にわたってガラス基板を熱処理する前後で熱収縮率が310ppm以下であるガラス基板が提案されている。しかし、引用文献4には、熱収縮率の方向性については記載されていない。
特許第4439492号公報 特開2007−230817号公報 特許第4924989号公報 特開2014−208565号公報
岡本、電子材料49、3(2010)28−31ページ
太陽電池のP1〜P3のパターニングは、通常は基板内に一定間隔で複数部位に形成される。熱収縮が発生すると、基板内の部位によってP1とP2のパターニング間の距離、及び、P1とP3のパターニング間の距離に変化が生じ、デッドスペースやリーク電流の増加の原因となることがある。予め基板の熱収縮量が分かっている場合には、セレン化/硫化工程での熱収縮を見込んでP2およびP3のパターニング間の距離を調整しておくことも可能である。しかし、この場合も、製造に使用する基板毎の熱収縮のばらつきが大きいと、基板によってはデッドスペースやリーク電流の増加が起こり、安定して生産を行うことができないことがある。
セレン化/硫化工程での基板の反りが大きいと、これもP2およびP3のパターニング時のパターニングずれの一因となる。また、レーザ光照射によるスクライブ、または金属針等によるメカニカルスクライブを行う際、レーザ光の焦点が変化したり、金属針の基板への接触深さが変化したりすることで、スクライブ不良が発生することがある。さらに、反りが大きいと、基板をカバーガラスと一体化して太陽電池パネルを作製する際、基板やカバーガラスの一部に過剰な応力が発生し、基板やカバーガラスが割れてしまうことがある。
特許文献2及び特許文献3は、PDP等に用いられるガラス基板の比較的単純な1段階の熱処理後の熱収縮の制御に関し、特許文献4は1段階の熱処理を想定した太陽電池用ガラス基板の熱収縮の制御に関する。これらは、CIGS太陽電池等の太陽電池の作製工程で必要な温度の異なる2段階以上の熱処理後の熱収縮の制御に対しては十分でない。また、PDPパネル作製工程での熱処理時間(高温での保持時間)は一般的に最大でも1時間程度に満たず、最低でも1時間〜数時間の熱処理が施される太陽電池の作製工程とは工程内で受ける熱量が大幅に異なる。さらに、これらの文献では太陽電池の作製工程で問題となる基板の反りを抑制する方法については言及されていない。
特許文献2では、ガラスの徐冷点から歪点までの領域6でフロートガラスの幅方向に3等分した各部分の温度が均一になるようにし、ガラスの歪点から200〜350℃低温の領域7で、フロートガラスの幅方向に3等分した各部分の温度を両側部分が中央部分に比較して10〜35℃高くなるようにして、上記の特性を得ることが提案されている。
しかし、特許文献2では、歪点以下から歪点から200℃低温以上までの温度域の制御方法については検討されていない。
特許文献3では、加熱・徐冷のオフラインアニール処理を行わないで、オンラインアニールゾーンの温度分布を変更調整することで、上記の特性を得ることが提案されている。このような製造工程では、太陽電池用のより厳しい熱収縮条件に適したガラス基板を得ることは難しい。
特許文献4では、フロート成形で、ガラスリボンが徐冷炉に入ってからのガラスリボンの粘度を制御することで、上記の特性を得ることが提案されている。しかし、ガラス基板の熱収縮の方向性については検討されていない。
本発明の一目的としては、ガラス基板を太陽電池用ガラス基板として用いる場合に、ガラス基板の面内のパターニングずれを小さくし、また、ガラス基板毎のパターニングずれのばらつきを小さくすることである。さらに、本発明の一目的としては、太陽電池パネルを組み立てる際に、ガラス基板の割れを抑制し、ガラス基板の不良率を下げ、生産性を高めることである。
本発明の一側面としては、少なくとも一辺の長さが500mm以上であり、300〜650℃の温度範囲内で少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後に、ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮(C1)、及び前記ガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮(C2)が次の関係を満たす、ガラス基板である。
(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2。
ガラス基板を太陽電池用ガラス基板として用いる場合に、ガラス基板の面内のパターニングずれを小さくし、また、ガラス基板毎のパターニングずれのばらつきを小さくすることができる。さらに、太陽電池パネルを組み立てる際に、ガラス基板の割れを抑制し、ガラス基板の不良率を下げ、生産性を高めることができる。
<ガラス基板>
本発明の一実施形態によるガラス基板としては、少なくとも一辺の長さが500mm以上であり、300〜650℃の温度範囲内で少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後に、ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮(C1)、及びこのガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮(C2)が次の関係を満たすことを特徴とする。
(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2
本実施形態によれば、ガラス基板を太陽電池用ガラス基板として用いる場合に、ガラス基板の面内のパターニングずれを小さくし、同時に基板毎のパターニングずれのばらつきを小さくすることができる。
本実施形態に係るガラス基板は、光電変換層を形成する際の熱処理前後で、ガラス基板の面内のパターニングのずれを抑制することができる。
本実施形態では、熱収縮C1が300ppm以下であり、かつ、熱収縮C1及び熱収縮C2が式1を満たすことで、ガラス基板の平行方向の熱収縮C1を抑えるとともに、熱収縮C1に対して、相対的にガラス基板の垂直方向の熱収縮C2も抑えられて、ガラス基板の面内で、方向性に依存することを抑えて、全体的に熱収縮を抑制することができる。
太陽電池の製造工程において、光電変換層の作製で、熱処理を2段階の温度域に分けて行う際に、ガラス基板の面内で全体的に熱収縮を抑制することができる。そのため、光電変換層用熱処理条件による熱処理前後でガラス基板の熱収縮を抑えて、熱処理前にパターニングした形状を、寸法の収縮や膨張を抑制して、熱処理後にも維持することができる。
ガラス基板にパターニングする一例としては、Mo膜へのパターニングP1、CIGS膜等の光電変換層へのパターニングP2、及び酸化物透明導電膜(TCO)へのパターニングP3を少なくとも含む。
ガラス基板の表面に平行な方向において、P1とP2のパターニングの間隔、及び、P2とP3のパターニングの間隔がそれぞれより小さくなることで、発電効率に寄与しないデッドスペースを少なくすることができる。
本実施形態によれば、光電変換層用熱処理条件による熱処理前後でガラス基板の熱収縮を防ぐため、パターニングのずれを熱処理前後で抑えることができ、より精密にパターニングすることができる。ゆえに、ガラス基板の一方の端部でのP1とP2のパターニングの間隔、及びP2とP3のパターニング間隔と、ガラス基板の他方の端部での同パターニング間隔とを比べた場合に、それぞれのパターニング間隔の差を小さくすることができ。デッドスペースを低減することができる。
また、パターニングをより精密に行うことができるため、P1とP2のパターニング間隔、及びP2とP3のパターニング間隔をより狭めても、Mo膜、光電変換層膜、TCOが接触することを抑制し、リーク電流の発生を抑えることができる。
また、本実施形態に係るガラス基板は、複数のガラス基板の間で、ガラス基板のパターニングのずれのばらつきを防止することができる。
本実施形態では、熱収縮C1が300ppm以下であり、かつ、熱収縮C1及び熱収縮C2が式1を満たすことで、上記の通り、光電変換層用熱処理条件による熱処理前後で、ガラス基板の熱収縮を抑制することができる。
複数のガラス基板に光電変換層をそれぞれ作製する際に、複数のガラス基板がそれぞれ本実施形態に係る熱収縮の条件を満たすことで、複数のガラス基板を通してパターニングのずれを抑制することができ、結果として、複数のガラス基板の間で、ガラス基板のパターニングのずれのばらつきを抑制することができる。
また、本実施形態では、熱収縮C1及び熱収縮C2が式1を満たすことで、ガラス基板の方向性によって、ガラス基板の熱収縮に差が生じることを抑えることができる。例えば、ガラス基板の平行方向と垂直方向とで、熱収縮の差を小さくすることができる。これによって、ガラス基板の向きに関係なく、パターニングをしても、ガラス基板間でパターニングのずれのばらつきを抑制することができる。
ここで、ガラス基板の向きとして、フロート成形後のガラスリボンから、ガラス基板を切り出す際に、フロート成形においてガラスリボンの搬送方向に平行な搬送方向と、この搬送方向に垂直な幅方向と定義する。
ガラス基板の搬送方向と幅方向とで、光電変換層用熱処理前後の熱収縮が小さいことで、ガラス基板をフロート成形後のガラスリボンから切り出す際に、ガラス基板の向きを搬送方向及び幅方向のどちらを長手方向にしても、光電変換層用熱処理前後のパターニングのずれを抑制することができる。
また、搬送方向を長手方向としたガラス基板と、幅方向を長手方向としたガラス基板との間で、光電変換層用熱処理前後のパターニングのずれのばらつきを抑制することができる。
また、このような特性を有することで、ガラスリボンからガラス基板を切り出す際に、ガラス基板の切り出し部位の制限が少なくなり、1つのガラスリボンからより多くのガラス基板を切り出すことができるようになる。
また、本実施形態に係るガラス基板は、太陽電池を組み立てる際に、ガラス基板の割れを抑制し、ガラス基板の不良率を下げ、生産性を高めることができる。
本実施形態では、熱収縮C1が300ppm以下であり、かつ、熱収縮C1及び熱収縮C2が式1を満たすとともに、さらに、ガラス基板の仮想温度Tとガラス転移温度Tとの差をより小さくすることで、ガラス基板が加熱される際に曲げやたわみを防いで、ガラス基板の割れを抑制することができる。
また、光電変換層用の加熱処理前後でガラス基板の曲げやたわみを抑えることができるため、加熱処理前後でパターニングをより精密に行うことができる。例えば、上記した通り、P1〜P3のパターニングのずれをそれぞれ抑え、ガラス基板内のパターニングのずれ、及びガラス基板間のパターニングのずれのばらつきを抑制することができる。
本実施形態に係るガラス基板は、太陽電池用ガラス基板に好ましく用いることができ、より好ましくはCIGS太陽電池用ガラス基板に用いることができる。
<ガラス基板>
本実施形態によるガラス基板は、少なくとも一辺の長さが500mm以上である。
ガラス基板は、フロート成形によりガラスリボンを作製し、このガラスリボンから切り出されたガラス基板を用いることができる。
以下の説明では、フロート成形においてガラスリボンの搬送方向と平行な方向を「搬送方向」と称し、この搬送方向に垂直な方向を「幅方向」と称することがある。
ガラスリボンからガラス基板を切り出す際は、搬送方向及び幅方向のうち少なくとも一方に平行な一辺を有する四角形の形状とすることが好ましい。より好ましくは、搬送方向及び幅方向のうち少なくとも一方に対して平行な一対の辺を有する平行四辺形または台形である。さらに好ましくは、搬送方向に対して平行な一対の辺と、幅方向に対して平行な一対の辺とを有する長方形である。ガラス基板の長手方向は、搬送方向及び幅方向のいずれであってもよい。
太陽電池用として使用する場合、ガラス基板は、太陽電池パネルを現場に設置する際に、太陽電池パネル1枚あたりの発電量を高めるために、なるべく大きいことが好ましい。
一方で、ガラス基板が大きくなりすぎると、太陽電池パネル設置の際に作業者のハンドリング性が低下することがある。また、作業者のハンドリング性を確保するため、ガラス基板は長方形であることが好ましい。
ガラス基板の長手方向は、500mm以上であることが好ましく、より好ましくは700mm以上であり、さらに好ましくは900mm以上である。一方、ガラス基板の長手方向は2500mm以下であることが好ましく、より好ましくは2000mm以下である。
ガラス基板の短手方向は、1600mm以下であることが好ましく、より好ましくは1400mm以下であり、さらに好ましくは1000mm以下である。一方、ガラス基板の短手方向は500mm以上であることが好ましい。
ガラス基板のスクライブと垂直な辺が500mm未満である場合は、ガラス基板の一方の端部におけるパターニング間隔と、ガラス基板の他方の端部におけるパターニング間隔とで大きな差が生じにくいが、500mm以上である場合には、この間隔の差が大きくなり、熱収縮を精密に制御する必要性が高くなる。
一般的な太陽電池用ガラス基板としては、900〜2000mm×500〜1000mmのサイズであり、本実施形態でも好ましく用いることができる。
ガラス基板の厚さとしては、特に制限されないが、0.5〜3mmの範囲で調整することができる。
本実施形態によるガラス基板は、300〜650℃の温度範囲内で少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後に、熱収縮を効果的に抑制することができる。以下、この熱処理条件を「光電変換層用熱処理条件」と称することがある。
この熱処理条件は、太陽電池作製において、ガラス基板に光電変換層を製膜して加熱処理する際の熱処理条件をモデルとしている。
光電変換層の作製のための熱処理は、300〜650℃の温度範囲内で、少なくとも2段階の異なる温度で、各段階で60分〜2000分保持して行われる。
本実施形態において、光電変換層用熱処理条件の温度は、以下の組み合わせであることが好ましい。T1は第1段階の温度、T2は第2段階の温度である。
T1:300〜650℃、より好ましくは350〜600℃、さらに好ましくは400〜550℃。
T2:400〜650℃、より好ましくは450〜630℃、さらに好ましくは500〜610℃。
なお、T1<T2であることが好ましく、T1とT2の温度差は、10〜300℃の間で調整することができる。ここで、T1からT2への温度変化は一旦室温に戻すこと無く行われるものとする。
さらに、第3段階、第4段階と段階的に熱処理を加えてもよい。
光電変換層用熱処理条件の各段階の熱処理温度での保持時間としては、各段階について、それぞれ独立的に、60分以上であることが好ましく、より好ましくは120分以上である。過剰な熱処理を制限する面から、保持時間は2000分以下であることが好ましい。
光電変換層用熱処理条件の各段階の熱処理温度までの昇温速度としては、各段階について、それぞれ独立的に、T1までは2〜50℃/分であることが好ましく、より好ましくは5〜30℃/分であり、さらに好ましくは8〜20℃/分である。また、T1〜T2までは1〜50℃/分であることが好ましく、より好ましくは2〜30℃/分であり、さらに好ましくは3〜20℃/分である。
光電変換層用熱処理条件の熱処理後の降温速度としては、室温まで5〜70℃/分であることが好ましく、より好ましくは10〜50℃/分であり、さらに好ましくは15〜30℃/分である。
光電変換層用熱処理条件の具体的な例としては、以下の通りである。
T1:450℃、昇温速度10℃/分、60分保持。
T2:590℃、昇温速度5℃/分、60分保持。
降温速度:室温まで20℃/分。
本実施形態では、光電変換層用熱処理条件による熱処理の前後で、
ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮C1、及びこのガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮C2が下記式1を満たす。
(式1)(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2。
熱収縮C1は、光電変換層用熱処理条件による熱処理の前後で、ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮である。
ガラス基板はフロート成形によりガラスリボンを作製し、このガラスリボンから切り出したものであることが好ましい。一般的に、ガラス基板は、ガラスリボンの搬送方向及び幅方向の少なくとも一方に対して平行な一対の辺を有する、平行四変形、台形、長方形、正方形の形状に切り出される。
熱収縮C1の測定において、ガラス基板の一辺は、ガラスリボンの搬送方向に平行な一辺、または、ガラスリボンの幅方向に平行な一辺であることが好ましい。
次に、熱収縮C1の測定方法の一例について説明する。
まず、ガラス基板の隣接する部位から、同じ大きさの試験片を2枚切り出す。試験片の大きさは、適宜設定すればよく、例えば30〜300mm×3〜30mmとすることができる。
試験片は、ガラス基板の搬送方向及び/または幅方向に平行な少なくとも一辺を有する四角形であることが好ましい。この際、試験片の長手方向がガラス基板の搬送方向及び幅方向の一方に平行になるようにし、試験片の短手方向がガラス基板の搬送方向及び幅方向の他方に平行になるようにすることが好ましい。
次いで、2枚の試験片に、それぞれ、ガラスリボンの搬送方向または幅方向に平行な方向に所定の距離で離れた2点のけがき線を入れる。けがき線の長さは、適宜設定すればよく、例えば10〜280mmである。
そして、2枚の試験片のうち一方の試験片を、上記した光電変換膜用熱処理条件で熱処理する。
次いで、熱処理した試験片と未処理の試験片のけがき線の間の距離をそれぞれ測定し、次の式で熱収縮C1(単位:ppm)を導き出す。
熱収縮C1(ppm)={(未処理のガラスのけがき線の間の距離−熱処理したガラスのけがき線の間の距離)}/(未処理のガラスのけがき線の間の距離)×1000000
熱収縮C2は、光電変換層用熱処理条件による熱処理の前後で、上記ガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮である。
熱収縮C2の測定方向は、上記した熱収縮C1の測定方向に垂直な方向である。それゆえ、熱収縮C1がガラスリボンの搬送方向である場合は、熱収縮はガラスリボンの幅方向となり、熱収縮C1がガラスリボンの幅方向である場合は、熱収縮はガラスリボンの搬送方向となる。
次に、熱収縮C2の測定方法の一例について説明する。
まず、上記した熱収縮C1と同様に、同じ大きさの2枚の試験片を切り出す。
次いで、2枚の試験片に、それぞれ、熱収縮C1の測定の際に用いたけがき線と垂直な方向に、所定の距離で離れた2点のけがき線を入れる。けがき線の長さは、適宜設定すればよく、例えば10〜280mmである。
そして、2枚の試験片のうち一方の試験片を、上記した光電変換膜用熱処理条件で熱処理する。
次いで、熱処理した試験片と未処理の試験片のけがき線の間の距離をそれぞれ測定し、次の式で熱収縮C2(単位:ppm)を導き出す。
熱収縮C2(ppm)={(未処理のガラスのけがき線の間の距離−熱処理したガラスのけがき線の間の距離)}/(未処理のガラスのけがき線の間の距離)×1000000
上記した熱収縮C1及び熱収縮C2は、同じ2枚の試験片を用いて、一方の試験片にけがき線を2か所に入れて、同じバッチで熱処理して測定することができる。
熱収縮C1及び熱処理C2は、同一条件で複数回にわたり測定して、複数の測定結果の平均値を用いることが好ましい。
熱収縮C1は、300ppm以下であり、好ましくは270ppm以下であり、より好ましくは230ppm以下である。熱収縮C2は、式1を満たすとともに、熱収縮C1の値以下であればよい。
これによって、光電変換層を形成する際の熱処理前後で、ガラス基板の面内のパターニングのずれを防止することができる。
熱収縮C1及び熱収縮C2は、熱収縮のない理想的なガラス基板に近づけるために、0.0ppmに近づけることが好ましいが、実際には30ppm以上で調整すればよい。
本実施形態では、上記した熱収縮C1及び熱収縮C2が下記式1を満たす。
(式1)(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2。
(C1−C2)/C1×100の値(CR)は、ガラス基板の搬送方向及び幅方向の一方の熱収縮と、他方の熱収縮との差を表す。CRは、ガラス基板の熱収縮のばらつきの度合いを規定する値であり、ガラス基板のCRが小さいことで、太陽電池作製の際に、ガラス基板ごとのパターニングのすれのばらつきを小さくすることができる。
CRが3以下であることで、光電変換層用熱処理条件による熱処理前後で、ガラス基板の方向性に依存しないで、ガラス基板の熱収縮を抑制することができる。これによって、光電変換層の作製の際に、熱処理前後で、パターニングのずれを防止することができる。また、複数のガラス基板の間で、パターニングのずれのばらつきを防止することができる。この効果は、ガラス基板の向きに依存しないでも得ることができる。
CRは、好ましくは2以下であり、より好ましくは1以下である。ガラス基板の向きによる熱収縮の差を実質的に0に近づけるため、この値は0.0に近づけることが好ましい。
本実施形態によるガラス基板のガラス転移温度Tとしては、580℃以上であることが好ましい。このTは、600℃以上であるのが好ましく、610℃以上であるのがより好ましく、620℃以上であるのがさらに好ましく、630℃以上であるのが特に好ましい。
このTは通常のソーダライムガラスのTよりも高く、これによって、CIGS膜等の光電変換層を形成するプロセスにおいて、高温で熱処理する際の熱収縮を小さくし、また、膜の特性を維持することができる。
ガラス基板のTの上限値は750℃以下であることが好ましい。このTは、より好ましくは720℃以下、さらに好ましくは700℃以下である。これによって、ガラス原料の溶融時の粘性を適度に低く抑えて、ガラス基板を製造しやすくできる。
本実施形態によるガラス基板の50〜350℃における平均熱膨張係数は、70×10−7〜110×10−7/℃であることが好ましい。この範囲であることで、ガラス基板に形成されるCIGS膜等の光電変換層との熱膨張差が大きくなりすぎることを防ぎ、膜剥がれ、膜クラック等を防止することができる。
さらに、太陽電池を組み立てる際に、例えば、CIGS膜等の光電変換層を有するガラス基板とカバーガラスとを加熱して貼りあわせる際等に、ガラス基板が変形することを防止することができる。
この平均熱膨張係数は、好ましくは100×10−7/℃以下、より好ましくは95×10−7/℃以下、さらに好ましくは90×10−7/℃以下である。一方、この平均熱膨張係数は、好ましくは73×10−7/℃以上、より好ましくは75×10−7/℃以上、さらに好ましくは80×10−7/℃以上である。
本実施形態によるガラス基板は、仮想温度Tとガラス転移温度Tとの差「T−T」が20℃以下であることが好ましい。
ガラス基板に光電変換層を形成する際に、熱処理によってガラス基板が変形すると、その後の太陽電池の組み立ての際に、ガラス基板に割れ等の損傷が発生することがある。本発明では、上記した熱収縮C1及び熱収縮C2を制御するとともに、T−Tを20℃以下にすることで、ガラス基板が加熱される際に、ガラス基板の曲げやたわみ等の変形を防止することができる。
ガラス基板のT−Tが20℃以下であることで、ガラス基板に光電変換層を作製するために加熱処理する際に、ガラス基板の反りをより小さくすることができる。
ガラス基板のT−Tが20℃超過であると、ガラス基板に光電変換層を作製する際の加熱処理でガラス基板の反りが大きくなることがあり、ガラス基板の中央部と端部でパターニングのずれが大きくなることがある。また、ガラス基板とカバーガラスとを一体化して太陽電池パネルを作製する際に、ガラス基板やカバーガラスの一部に過剰な応力が発生し、ガラス基板やカバーガラスに割れが発生するおそれがある。
例えば、ガラス基板にCIGS膜を作製する際に、セレン化/硫化工程の加熱処理の際にガラス基板の反りを小さくすることができる。
このT−Tは、好ましくは15℃以下であり、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下である。
フロート法において現実的な冷却速度でガラスを製造する観点から、このT−Tは、−40℃以上であることが好ましい。
仮想温度Tは、公知の方法で測定することができる。仮想温度Tの測定方法の一例について、以下に説明する。
仮想温度Tの測定は、基準ガラス基板を用いて仮想温度Tとd線(587.6nm)における屈折率nの関係の検量線を作成し、測定対象のガラス基板の屈折率nを測定し検量線を用いて仮想温度Tを求めることができる。
まず、基準ガラス基板を所定の大きさに加工し、T+80〜T+120℃で1〜30分間保持し、冷却速度0.05〜10℃/分で保持温度Tまで冷却し、保持温度Tで24〜336時間保持し、その後、室温まで冷却する。基準ガラス基板の大きさは、厚さ0.01〜5mmで、1辺が0.1〜10cmであることが好ましい。
保持温度TをT−100〜T+50℃で設定して、複数の基準ガラス基板を用いて異なる保持温度Tで上記熱処理を複数回行う。
基準ガラス基板の厚さが薄いことより、基準ガラス基板の仮想温度Tは保持温度Tと等しくなる。
各基準ガラス基板のd線における屈折率測定を行い、仮想温度Tと屈折率nの関係の検量線を作成する。
次に、測定対象のガラス基板の屈折率nを測定し、上記検量線を用いて仮想温度Tを求めることができる。
屈折率の測定には、精密屈折率計(カルニュー製KPR−2000)等を用いることができる。
本実施形態によるガラス基板の仮想温度Tは、ガラス組成に応じて適宜調整可能である。
(ガラス組成)
以下、本実施形態によるガラス基板の組成について説明する。以下の説明において、ガラス基板の組成は、ガラス基板の表面から深さ5000nm以上において、酸化物基準の質量百分率表示で表す。
本実施形態によるガラス基板の組成に制限はないが、主成分がSiOであり、NaO+KOが1〜30%であることで、太陽電池用ガラス基板として優れた光電変換効率を得ることができる。より好ましくは、NaOを1〜20%、KOを0〜15%含むガラス基板を用いることができる。
より好ましいガラス基板の組成の一例としては、ガラス基板の表面から深さ5000nm以上において、下記酸化物基準の質量百分率表示で、
SiOを45〜75%、
Alを0.1〜20%、
MgOを0〜15%、
CaOを0〜15%、
SrOを0〜18%、
BaOを0〜18%、
ZrOを0〜10.5%、
NaOを1〜20%、
Oを0〜15%含み、
NaO+KOが1〜30%、
MgO+CaO+SrO+BaOが1〜40%である。
本実施形態によるガラス基板において、上記組成に限定する理由は以下のとおりである。
SiO:ガラスの骨格を形成する成分であり、45質量%(以下単に%と記載する)未満ではガラスの耐熱性及び化学的耐久性が低下し、また、平均熱膨張係数が増大して光電変換層を形成するプロセスでの熱処理後の基板の反りが大きくなるおそれがある。好ましくは48%以上であり、より好ましくは51%以上である。
しかし、75%超ではガラスの高温粘度が上昇し、溶解性が悪化する問題が生じるおそれがある。好ましくは70%以下であり、より好ましくは65%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。
Al:ガラス転移点温度を上げ、耐候性(ヤケやソラリゼーション)、耐熱性及び化学的耐久性を向上し、ヤング率を上げる成分である。その含有量が0.1%未満だとガラス転移点温度が低下し、光電変換層を形成するプロセスでの高温熱処理後の熱収縮が大きくなるおそれがある。また平均熱膨張係数が増大するおそれがある。好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは8%以上である。
しかし、20%超では、ガラスの高温粘度が上昇し、溶解性が悪くなるおそれがある。また、失透温度が上昇し、成形性が悪くなるおそれがある。好ましくは18%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは14%以下である。
MgO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果がある成分であり、15%以下で含有させてもよい。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.2%以上である。
しかし、15%超では平均熱膨張係数が増大するおそれがある。また失透温度が上昇するおそれがある。好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。
CaO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があり、15%以下で含有させることができる。好ましくは1%以上であり、より好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは3%以上、特に好ましくは4%以上である。しかし、15%超ではガラスの平均熱膨張係数が増大するおそれがある。好ましくは10%以下であり、より好ましくは9%以下であり、さらに好ましくは8%以下である。
SrO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があり、18%以下で含有させることができる。しかし、18%超含有するとガラス基板の平均熱膨張係数が増大するとともに密度が増大し、ガラスが脆くなるおそれがある。15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、7.5%以下であることが特に好ましい。また、好ましくは0.5%以上、より好ましくは2%以上、さら好ましくは3.5%以上、特に好ましくは5%以上である。
BaO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があり、18%以下で含有させることができる。好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。しかし、18%超含有すると、ガラス基板の平均熱膨張係数が大きくなるおそれがある。また比重も大きくなるとともに密度が増大し、ガラスが脆くなるおそれがある。8%以下が好ましく、5%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下である。
NaO:NaOは、CIGS等の光電変換層を備える太陽電池の発電効率向上に寄与するための成分であり、必須成分である。また、ガラス溶解温度での粘性を下げ、溶解しやすくする効果があるので1〜20%含有させることができる。Naはガラス基板上に構成された光電変換層中に拡散し、発電効率を高めることができるが、含有量が1%未満ではガラス基板上の光電変換層へのNa拡散量が不十分となり、発電効率も不十分となるおそれがある。含有量が2%以上であると好ましく、含有量が2.5%以上であるとより好ましく、3%以上であるとさらに好ましく、含有量が3.5%以上であると特に好ましい。
O:NaOと同様の効果があるため、0〜15%含有させることができる。しかし、15%超では発電効率が低下、すなわちNaの拡散が阻害され、また、ガラス転移点温度が低下し、平均熱膨張係数が大きくなるおそれがある。3%以上であるのが好ましく、4%以上であるのがより好ましく、5%以上であるのがさらに好ましい。14%以下が好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、8%以下であることが特に好ましい。
ZrO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進し、Tgを上げる効果がある成分であり、10.5%以下で含有させてもよい。好ましくは0.5%以上で含有させる。より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。しかし、10.5%超含有すると発電効率が低下し、失透温度が上昇し、またガラス基板の平均熱膨張係数が増大するおそれがある。9%以下が好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
NaO及びKO:ガラス溶解温度での粘性を十分に下げるために、またCIGS太陽電池の発電効率向上のために、NaO及びKOの合量は、1〜30%とすることができる。好ましくは5%以上であり、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上である。
しかし、30%超ではTgが下がりすぎ、平均熱膨張係数が上がりすぎるおそれがある。好ましくは20%以下であり、より好ましくは17%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは13%以下である。
MgO、CaO、SrO及びBaO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進させる点から、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量は1〜40%とすることができる。しかし、合量で40%超では平均熱膨張係数が大きくなり、失透温度が上昇するおそれがある。6%以上が好ましく、9%以上がより好ましく、12%以上がさらに好ましく、14%以上が特に好ましい。また、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
本実施形態によるガラス基板は本質的に上記組成からなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分を、典型的には合計5%以下で含有してもよい。たとえば、耐候性、溶解性、失透性、紫外線遮蔽等の改善を目的に、B、ZnO、LiO、WO、Nb、V、Bi、MoO、P等を含有してもよい。
は、溶解性を向上させる等のために2%まで含有してもよい。含有量が2%を超えるとガラス転移点温度が下がる、または平均熱膨張係数が小さくなり、CIGS膜等の光電変換層を形成するプロセスにとって好ましくない。より好ましくは含有量が1%以下である。含有量が0.5%以下であると特に好ましく、さらに好ましくは実質的に含有しない。
なお、「実質的に含有しない」とは、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。以下同じである。
また、ガラスの溶解性、清澄性を改善するため、ガラス中にSO、F、Cl、SnOを合量で、上記したガラス母組成100%に対し2%以下で含有するように、これらの原料を母組成原料に添加してもよい。
また、ガラスの化学的耐久性向上のため、ガラス中にY、La、TiOを合量で5%以下で含有させてもよい。これらのうちY、La及びTiOは、ガラスのヤング率向上にも寄与する。
ガラス母組成100%に対して、Feを0〜1%含むことができる。ガラス基板に適度にFeが配合されることによって、ガラス基板が鉄によって着色されるため、ガラス基板を加熱する際にガラス基板の加熱効率を高めることができる。一方、Feが1%より大きいと、ガラス基板の製造の際、加熱のための熱輻射がガラスの深部まで届かなくなり、効果的に溶解ができなくなるため好ましくない。
ここで、ガラス母組成は、上記したSiO、Al、MgO、CaO、SrO、BaO、ZrO、NaO、KOの総量である。
また、本実施形態によるガラス基板は、環境負荷を考慮すると、As、Sbを実質的に含有しないことが好ましい。また、安定してフロート成形することを考慮すると、ZnOを実質的に含有しないことが好ましい。
<ガラス基板の製造方法>
以下、本発明の一実施形態によるガラス基板の製造方法について説明する。
本実施形態によるガラス基板の製造方法は、大面積のガラス基板を安定して作製することができ、また、生産性およびコストの面で優れるため、フロート法が好ましく用いられる。
本実施形態によるガラス基板の製造方法の一例としては、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを溶融スズ上でガラス基板に成形し、ガラス基板を徐冷する方法である。
ガラス原料の溶融では、得られるガラス基板の組成に応じて原料を調整し、この原料を溶解炉に連続的に投入し、加熱して溶融ガラスを得る。ガラス基板の組成が上記したガラス組成となるように原料を調整することが好ましい。
ガラス原料の溶融温度としては、通常1450〜1700℃とすることができ、より好ましくは1500〜1650℃である。溶融時間は、特に制限されず、通常1〜48時間である。
溶融工程では清澄剤を用いることができる。ガラス基板としてアルカリ金属酸化物(NaO、KO)を含有するアルカリガラス基板を用いる場合では、上記した清澄剤のなかから清澄剤としてSOを効果的に用いることができる。
ガラス基板の成形工程では、溶融ガラスを溶融スズ浴中の溶融スズ上で板状のガラスリボンに成形する。
詳しくは、溶融スズを満たした溶融スズの浴面上に、溶融窯から溶融ガラスが連続的に流入され、ガラスリボンが形成される。次に、このガラスリボンを溶融スズ浴の浴面に沿って浮かしながら前進させることで、温度低下とともにガラスリボンが板状に成形される。その後、製板されたガラス基板が引出しロールによって引き出され、徐冷炉に搬送される。
溶融スズ浴内の雰囲気ガスとしては、水素と窒素とからなる混合ガスを用いることができる。水素ガス濃度は、1〜10体積%であることが好ましい。溶融スズ浴内は、正圧であることが好ましい。また、溶融スズ浴の温度は、650〜1350℃であることが好ましい。溶融スズ浴内でのガラスリボンの滞在時間は、1〜10分であることが好ましい。
徐冷炉内の雰囲気ガスは、通常空気が好ましく用いられる。徐冷炉内の温度は、100〜750℃であることが好ましい。徐冷炉内の温度は、ガラスリボンの幅方向の中心部上方で測定する値である。ガラスリボン温度は、ガラス基板の上面温度を接触式のK型熱電対で測定することができる。
徐冷工程では、ガラスリボンの幅方向の中心部と端部における最大温度勾配(以下、単に幅方向の最大温度勾配と称することがある。)が、少なくともガラス転移点以下、(ガラス転移点−200)℃以上の温度域で、10℃/m以下であることが好ましい。
ここで、ガラスリボンの幅方向の端部の温度は、ガラスリボンの端部から、ガラスリボンの幅方向の長さの10%の長さ以内の部位で測定した温度である。例えば、幅1〜10mのガラスリボンでは、ガラスリボンの縁部から300mm以内の部位で、ガラスリボンの端部の温度を測定することができる。
ガラス転移点以下、(ガラス転移点−200)℃以上の温度域で、幅方向の最大温度勾配が10℃/m超過になると、徐冷過程においてガラスリボンの幅方向で構造緩和の度合いが大きく変化し、ガラスリボンの搬送方向での構造緩和の度合いとのバランスが崩れ、結果として、上記した熱収縮C1と熱収縮C2とのばらつきが大きくなることがある。ガラス転移点以下、(ガラス転移点−200)℃以上の温度域で、幅方向の最大温度勾配は、より好ましくは8℃/m以下であり、さらに好ましくは7℃/m以下である。
ガラス転移点以下、(ガラス転移点−200)℃以上の温度域で、ガラスリボンの幅方向の最大温度勾配は、実質的に0.0℃/mであることが好ましい。
ガラス転移点以下、(ガラス転移点−200)℃未満の温度域では、ガラスリボンは十分に徐冷されて、構造緩和への影響が少ないため、幅方向の最大温度勾配は特に制御しなくてもよい。
徐冷工程を通して、徐冷速度はフロート法で用いられる速度範囲であれば特に限定されず、通常10〜100℃/分の範囲であればよい。
(ガラス転移点−200)℃未満の温度域における徐冷速度R1は、ガラス転移点以下、(ガラス転移温度−200℃)以上の温度域における徐冷速度R2よりも大きくてもよい。熱収縮に対する影響の小さい温度域の徐冷速度R2を調整することで、徐冷炉の長さを短縮することができる。R2を調整する場合、R1に対して120%以上とすることが好ましく、150%以上とすることがより好ましく、200%以上とすることがさらに好ましい。
徐冷炉の内部には、ガラスリボンの上方および下方に複数のヒーターが設置される。ヒーターは、ガラスリボン幅方向全域を加熱できるよう、ガラスリボンの一方の端部から他方の端部までが全て覆われるように設置されることが好ましい。このとき、ヒーターは、ガラスリボンの幅方向に複数個に分割され、個別に出力制御されるような構造であってもよい。ガラスリボンの幅方向でヒーター出力を制御することにより、ガラスリボンの幅方向の中心部と端部での熱容量の差によって生じる温度分布を補填することができる。
例えば、一般的にガラスリボンの幅方向の端部は中心部よりも熱容量が小さく、より冷却されやすいことから、端部に設置されるヒーターの出力を中心部のヒーターの出力よりも大きくすることで、ガラスリボンの幅方向の温度分布を調整することができる。
ヒーターをガラスリボンの幅方向に分割する場合、制御性を向上させる観点から分割個数は3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましい。一方、オペレーションの煩雑さを避ける観点から、9個以下であることが好ましい。
本実施形態では、フロート成形後に、徐冷工程を含む室温までの冷却工程において、冷却速度が100℃/分以下であることが好ましい。これによって、ガラス基板の仮想温度とガラス転移温度の差「T−T」を20℃以下に調整することができ、ガラス基板の反りをより抑制することができる。
この冷却速度は、フロート成形の加熱温度から100℃までの温度範囲において、70℃/分以下であることが好ましく、より好ましくは50℃/分以下である。
冷却工程の短縮化の観点から、この冷却速度は、10℃/分以上とすることができる。
また、フロート成形及び徐冷工程後に、ガラス基板を200℃以上、好ましくは300℃以上に再加熱し、上記した範囲の冷却速度で冷却する方法を用いても、ガラス基板の仮想温度とガラス転移温度の差「T−T」を20℃以下に調整することができる。
フロート法においては、徐冷工程においてガラス基板をロール搬送する際、ロールによるガラス基板表面へのキズを防止するために、温度の高いガラス板にSOガス(亜硫酸ガス)を大気中で吹き付けて、ガラスの成分とSOとを反応させてガラス表面に硫酸塩を析出させて保護する方法を用いてもよい。硫酸塩としては代表的なものとして、Na塩、K塩、Ca塩、Sr塩、Ba塩等が挙げられ、通常、これらの塩の複合物として析出される。
SO処理後は、ガラス基板を洗浄して、硫酸塩等の膜を除去することが好ましい。
ガラス基板の洗浄方法は、特に制限されず、例えば、水による洗浄、洗浄剤による洗浄、酸化セリウムを含有したスラリーを散布しながらブラシ等でこする洗浄等を用いることができる。酸化セリウム含有のスラリーで洗浄する場合は、その後に塩酸や硫酸等の酸性洗浄剤等を用いて洗浄することが好ましい。
洗浄後のガラス基板表面には、汚れや上記酸化セリウム等の付着物によるガラス基板表面の凹凸等がないことが好ましい。凹凸があると、上記電極膜やその下地層等の成膜の際に、膜表面の凹凸や膜厚偏差や膜のピンホール等が生じ、発電効率が低下するおそれがあるためである。
洗浄後は、ガラスリボンを所定の大きさに切断して、ガラス基板を得ることができる。ガラス基板を長方形に切断する際は、ガラス基板の長手方向がガラスリボンの搬送方向と平行になるように切断してもよいし(基板a)、またはガラス基板の長手方向がガラスリボンの幅方向に平行になるように切断してもよい(基板b)。ガラスリボン中の泡や砂利等の欠点を避けながら、ガラスリボンから一番多くのガラス基板が採取できるよう、ガラスリボンの中で基板a、基板bの形状を組み合わせながら切断を行うことで、生産効率を向上することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の説明において、特に説明のない限り、「搬送方向」は、ガラスリボンのフロート成形及び徐冷工程におけるガラスリボンの搬送方向に平行な方向を示し、「幅方向」は、ガラスリボンのフロート成形及び徐冷工程におけるガラスリボンの搬送方向に垂直な方向を示す。
<ガラス基板の作製>
以下に示すガラス組成となるように配合したガラス原料を、温度1450〜1700℃で加熱し溶融ガラスを得た。なお、各成分は、ガラス基板の表面からの深さ5000nm以上において、酸化物基準の質量百分率表示「質量%」で示す。FeおよびSOは、ガラス母組成100質量%に対して外添した配合割合で示す。
SiO:54.1、
Al:13.6、
ZrO:4.5、
NaO:5.5、
O:5.2、
MgO:0.2、
CaO:7.8、
SrO:7.4、
BaO:1.8、
SO(外添):0.07、
Fe(外添):0.12。
次いで、溶融ガラスを溶融スズで満たしたスズ浴上に流し込み、板状のガラスリボンを成形した。スズ浴は、H及びNの混合ガス雰囲気とし、温度は750〜1150℃とした。ガラスリボンは、幅5m、厚さ1.8mmであった。
つづいて、ガラスリボンを200〜700℃の温度に制御された徐冷炉内に搬入し、徐冷した。
ガラスリボンを徐冷炉に搬入後、35秒後及び82秒後に、ガラスリボンの搬送方向に対し垂直な方向、すなわち幅方向の中心部と端部とのガラスリボン温度を徐冷炉内でモニターした。ガラスリボンの端部の温度は、ガラスリボンの縁部から30cmの範囲内で測定した。ガラスリボンの幅方向の中心部の温度、及び幅方向の最大温度勾配(中心部の温度−端部の温度)を表1に示す。
ガラスリボンの徐冷工程において、徐冷炉内でSO処理を同時にした。SOガスはガラスリボンのB面(ボトム面)側から総量で0.2〜1.0リットル/mとなるように吹き付けた。SOガスは、SOと空気の混合気体である。このとき、SO処理の雰囲気温度は500〜700℃であった。
徐冷炉から搬出したガラスリボンの幅方向の中心部から、所定の大きさのガラス基板を切り出した。ガラス基板の厚さは1.8mmであった。
<評価>
上記して得られたガラス基板について、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
表1は、ガラス基板の徐冷条件とともに、光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後の熱収縮の評価結果を示す。例1及び例3は実施例、例2及び例4は比較例である。
表2は、ガラス基板の仮想温度T及びT−Tとともに、ビームベンディング試験後の変形量及び自重たわみ試験後の変形の評価結果を示す。例1、例5及び例6は実施例である。
(平均熱膨張係数)
50〜350℃の平均熱膨張係数(α:単位は×10−7/K)を示差熱膨張計(TMA)を用いて測定し、JISR3102(1995年度)より求めた。
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg:単位は℃)は示差熱膨張計(TMA)を用いて測定し、JISR3103−3(2001年度)により求めた。
得られたガラス基板の特性は、いずれも以下のとおりであった。
平均熱膨張係数:83×10−7/℃。
ガラス転移温度:689℃。
(光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後の熱収縮)
以下の説明では、光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後において、ガラス基板の搬送方向の熱収縮をCfとし、幅方向の熱収縮をCwとする。
「搬送方向の熱収縮Cf」
ガラス基板の隣接する部位から、95mm×8mmの大きさの測定用の試験片を2枚切り出した。この際に、ガラスリボンの幅方向を8mmの辺と平行とし、ガラスリボンの搬送方向を95mmの辺と平行とした。2枚の試験片に、それぞれ、ガラスリボンの搬送方向に85mm離れた2点のけがき線を入れた。2枚の試験片のうち一方の試験片を、以下に示す光電変換膜用熱処理条件で熱処理した。
1)室温から450℃まで10℃/分で昇温。
2)450℃で60分保持。
3)450℃から590℃まで5℃/分で昇温。
4)590℃で60分保持。
5)590℃から室温まで20℃/分で降温。
次いで、熱処理したガラスと未処理のガラスのけがき線の間の距離をそれぞれ測定し、次の式で搬送方向の熱収縮Cf(単位:ppm)を計算した。
搬送方向の熱収縮Cf(ppm)={(未処理のガラスのけがき線の間の距離−熱処理したガラスのけがき線の間の距離)}/(未処理のガラスのけがき線の間の距離)×1000000
同一製造条件で得られたガラスに対して上記の試験を2回実施し、得られた平均値を搬送方向の熱収縮Cfの値とした。
「幅方向の熱収縮Cw」
上記の搬送方向の熱収縮Cfと切り出し方向を90度ずらし、その他は同様にして2枚の試験片を用意した。2枚の試験片に、それぞれ、ガラスリボンの幅方向に85mm離れた2点のけがき線を入れた。2枚の試験片のうち一方の試験片を、上記の搬送方向の熱収縮Cfと同じバッチで光電変換膜用熱処理条件で熱処理した。
次いで、熱処理したガラスと未処理のガラスのけがき線の間の距離をそれぞれ測定し、次の式で幅方向の熱収縮Cw(単位:ppm)を計算した。
幅方向の熱収縮Cw(ppm)={(未処理のガラスのけがき線の間の距離−熱処理したガラスのけがき線の間の距離)}/(未処理のガラスのけがき線の間の距離)×1000000
同一製造条件で得られたガラスに対して上記の試験を2回実施し、得られた平均値を幅方向の熱収縮Cwの値とした。
「(C1−C2)/C1×100」
上記した搬送方向の熱収縮Cf及び幅方向の熱収縮Cwの結果から、(C1−C2)/C1×100を求めた。ここで、Cf>CwではC1=Cf、C2=Cwであり、Cf≦CwではC1=Cw、C2=Cfである。
(仮想温度T
例1のガラス基板を用いて、仮想温度Tを以下の方法により測定した。
まず、例1のガラス基板を厚さが0.4mm、大きさが1cm角のガラス板に加工した。このガラス板をボックス型電気炉に入れて790℃まで昇温し、790℃に10分間保持後、プログラム制御により1℃/分の冷却速度で保持温度Tまで冷却し、Tにて140時間保持後、試料を電気炉から取り出し、大気雰囲気で室温まで急冷した。
は、700℃、690℃、680℃、660℃、640℃にした。ガラスの厚みが十分に薄いことから、それぞれのガラス板のTはTになる。これらのサンプルのd線における屈折率測定を行い、仮想温度Tと屈折率nの関係の検量線を作成した。
未処理の例1のガラス基板についても屈折率nの測定を行い、先に述べた検量線を用いてTを求めたところ、699℃であった。
(例5及び例6)
例5及び例6では、未処理の例1のガラス基板を用いて、次の条件で再加熱をし試験片を作製した。例5及び例6の仮想温度T及び光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後の熱収縮を次の条件で測定した。
例5及び例6では、それぞれ未処理の例1のガラス基板を用いて、以下のガラス板を加工した。
仮想温度T評価用:厚さが1.8mm、大きさが30mm×5mmの1枚のガラス板。
光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後の熱収縮評価用:上記した搬送方向の熱収縮Cfと同様の2枚のガラス板(厚さが1.8mm、大きさが95mm×8mm)と、上記した幅方向の熱収縮Cwと同様の2枚のガラス板(厚さが1.8mm、大きさが8mm×95mm)。
例5では、作製した合計5枚のガラス板を集光加熱型の電気炉に入れて、790℃まで昇温し、790℃で3分間保持後、プログラム制御により冷却速度を40℃/分で冷却し、例5の試験片を得た。仮想温度T評価用の30mm×5mmの試験片のd線における屈折率測定を行い、先に述べた検量線を用いてTを求めたところ、688℃であった。
また、例6では、作製した合計5枚のガラス板を集光加熱型の電気炉に入れて、790℃まで昇温し、790℃で3分間保持後、プログラム制御により冷却速度を126℃/分で冷却し、例6の試験片を得た。仮想温度T評価用の30mm×5mmの試験片のd線における屈折率測定を行い、先に述べた検量線を用いてTを求めたところ、713℃であった。
例5及び例6の光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後の熱収縮評価用の95mm×8mm及び8mm×95mmの試験片を用いて、上記した例1のガラス基板と同様に、搬送方向の熱収縮Cf及び幅方向の熱収縮Cwを測定し、また、(C1−C2)/C1×100を求めた。
(ビームベンディング試験)
例1、例5及び例6のガラス試験片について、ビームベンディング試験を行った。
ビームベンディング試験は、JIS R3013−2(2001年度)に準拠したビームベンディング式粘度測定計を用いて行った。まず、ガラス試験片を、30mm×5mm×1.8mmのガラスに成形して、ガラスの長手方向の両端部のみを空中で保持した。ガラスの中心部にワイヤーをかけ、ワイヤーの先に440gのおもりを吊り下げて炉内に設置した。次いで、5℃/分の速度で580℃まで昇温し、580℃で5時間保持した後のガラスのたわみによる変形量を記録した。
(自重たわみ)
例1、例5及び例6のガラス試験片について、自重たわみ試験後の変形を評価した。
ガラス試験片を500mm×500mmのガラス基板に成形して、ガラス基板の4か所の辺縁部のみを空中で保持した状態で熱処理炉の炉内に設置した。次いで、10℃/分の速度で580℃まで昇温し、580℃で24時間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温した。熱処理後のガラス基板を定盤に載せ、自重たわみによる変形の有無を目視で観察した。
Figure 2016145130
Figure 2016145130
表1の結果から、次のことがわかる。
例1〜例4では、同組成の溶融ガラスを異なるバッチでフロート成形しており、徐冷炉に搬入開始から35秒後と82秒後のガラスリボンの中心部の温度、及び幅方向の最大温度勾配が異なった。
例1及び例3では、ガラスリボンを徐冷炉に搬入開始から35秒後と82秒後で、ガラスリボンの幅方向の最大温度勾配が小さかった。
例2では、ガラスリボンを徐冷炉に搬入開始から35秒後で、ガラスリボンの幅方向の最大温度勾配が大きかった。
例4では、ガラスリボンを徐冷炉に搬入開始から35秒後と82秒後で、ガラスリボンの幅方向の最大温度勾配が大きかった。
例1〜例4のガラス基板を用いて、光電変換膜用熱処理条件で熱処理を行ったところ、熱処理前後で、ガラスリボンの幅方向の熱収縮及び搬送方向の熱収縮の絶対値は、いずれも300ppmよりも小さかった。これは、ガラス基板のガラス転移温度が689℃であり高かったことから、熱収縮しにくかったものと考えられる。
例1及び例3では、徐冷工程を通してガラスリボンの幅方向の温度勾配が小さく、(C1−C2)/C1×100が小さい、すなわち光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後においてガラスリボンの幅方向の熱収縮と搬送方向の熱収縮の差が小さかった。
光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後においてガラスリボンの幅方向の熱収縮と搬送方向の熱収縮の差が小さいことで、ガラスリボンから長方形の基板を切り出すとき、長方形の長辺がガラスリボンの搬送方向と平行であった場合(基板a)と、垂直であった場合(基板b)との特性差が小さい基板を得ることができる。このようなガラス基板を用いることで、太陽電池を作製する際、基板aと基板bを用いた場合のパターニングずれの差を小さくできるため、歩留りを改善することができる。
一方、例2及び例4では、徐冷工程を通してガラスリボンの幅方向の温度勾配が大きく、(C1−C2)/C1×100が大きい、すなわち光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後においてガラスリボンの幅方向の熱収縮と搬送方向の熱収縮の差が大きかった。
光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後においてガラスリボンの幅方向の熱収縮と搬送方向の熱収縮の差が大きいことで、ガラスリボンから長方形の基板を切り出すとき、長方形の長辺がガラスリボンの搬送方向と平行であった場合(基板a)と、垂直であった場合(基板b)とで基板の特性差が大きくなる傾向にある。このようなガラス基板を用いると、太陽電池を作製する際、基板aと基板bを用いた場合のパターニングずれの差が大きくなるため、歩留りが低下することがある。
表2の結果から、次のことがわかる。
例1は、ガラスリボンをフロート成形後に、200〜700℃の徐冷炉で徐冷したガラス基板を用いている。
例5は、例1のガラス基板を790℃、30分間で再加熱して、40℃/分で冷却したガラス基板である。
例6は、例1のガラス基板を790℃、30分間で再加熱して、126℃/分で冷却したガラス基板である。
例5及び例6では、例1と同様に、徐冷工程を通してガラスリボンの幅方向の温度勾配が小さく、(C1−C2)/C1×100が小さい、すなわち光電変換膜用熱処理条件による熱処理前後においてガラスリボンの幅方向の熱収縮と搬送方向の熱収縮の差が小さかった。
例1及び例5では、T−Tが低く、ビームベンディング試験後の変形量が小さかった。また、例1及び例5では、自重たわみ試験後の変形が目視で観察されなかった。
一方、例6では、T−Tが20℃より大きく、ビームベンディング試験後の変形量が大きかった。また、例6では、自重たわみ試験後に目視で変形が観察された。
この結果から、T−Tが低いことで、ガラス基板の強度をより高めることができることがわかる。また、ガラス基板の冷却速度を100℃/分以下とすることで、T−Tをより適正な範囲とすることができることがわかる。
本発明に係るガラス基板は、太陽電池用ガラス基板、なかでもCIGS太陽電池用ガラス基板に好ましく用いることができる。例えば、太陽電池用ガラス基板及び/または太陽電池用カバーガラスに用いることができる。これによって、ガラス基板の基板毎のパターニングずれのばらつきを小さくし、ガラス基板の不良率を下げて生産性を向上させることができる。
本発明の一側面としては、少なくとも一辺の長さが500mm以上であり、ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮(C1)、及び前記ガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮(C2)が次の関係を満たす、ガラス基板である。
(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2。
(C1、C2は、ガラス基板を、300〜650℃の温度範囲内の少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後の熱収縮)
<ガラス基板>
本発明の一実施形態によるガラス基板としては、少なくとも一辺の長さが500mm以上であり、ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮(C1)、及びこのガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮(C2)が次の関係を満たすことを特徴とする。
(式1)(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2
(C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2。
(C1、C2は、ガラス基板を、300〜650℃の温度範囲内の少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後の熱収縮)

Claims (7)

  1. 少なくとも一辺の長さが500mm以上であり、
    300〜650℃の温度範囲内で少なくとも2段階の異なる熱処理温度で、各段階で60分〜2000分保持した後に、
    ガラス基板の一辺に対して平行な方向の熱収縮(C1)、及び
    前記ガラス基板の一辺に対し垂直な方向の熱収縮(C2)が次の関係を満たす、
    ガラス基板。
    (C1−C2)/C1×100≦3、C1≦300ppmかつC1≧C2
  2. 仮想温度Tとガラス転移温度Tとの差が20℃以下である、請求項1に記載のガラス基板。
  3. 前記ガラス基板の一辺は、ガラス基板の製造におけるフロート成形の搬送方向に平行または垂直な辺である、請求項1または2に記載のガラス基板。
  4. ガラス基板の表面から深さ5000nm以上において、下記酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを45〜75%、Alを0.1〜20%、MgOを0〜15%、CaOを0〜15%、SrOを0〜18%、BaOを0〜18%、ZrOを0〜10.5%、NaOを1〜20%、KOを0〜15%含み、NaO+KOが1〜30%であり、MgO+CaO+SrO+BaOが1〜40%である、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板。
  5. Alが8%以上である、請求項4に記載のガラス基板。
  6. BaOが2%以下である、請求項4又は5に記載のガラス基板。
  7. CaOが3%以上、SrOが7.5%未満である、請求項4から6のいずれか1項に記載のガラス基板。
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