JP2016084247A - ガラス板 - Google Patents

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Abstract

【課題】化合物太陽電池に使用されるガラス基板において高い発電効率、安価な製造コスト、板ガラス生産時の溶解性、成形性、失透防止の特性、取扱容易性等をバランスよく有する。【解決手段】酸化物基準の質量百分率表示でSiO2を63〜75%、Al2O3を3〜12%、MgOを3〜10%、CaOを0.5〜10%、Na2Oを10〜18%、K2Oを0〜8%含有し、MgO/CaOが0.65以下であるガラス板。

Description

本発明の実施形態は、ガラス板に関する。特にCu−In−Ga−Se太陽電池に代表される化合物太陽電池に好適に用いることの出来るガラス板に関するものである。
化合物太陽電池では、ガラス基板上に光電変換層として半導体の膜が形成される。太陽電池に用いられる半導体として、カルコパイライト結晶構造を持つ11−13族、11−16族化合物半導体や立方晶系あるいは六方晶系の12−16族化合物半導体は、可視から近赤外の波長範囲の光に対して大きな吸収係数を有している。そのために、高効率薄膜太陽電池の材料として期待されている。代表的な例としてCu(In,Ga)Se(以下、CIGSと称することがある。)が挙げられる。
このような太陽電池用ガラス基板として、アルカリ金属、特にナトリウム(Na)を含むガラス基板を用いることで、太陽電池の光電変換効率を高めることができることが知られている。ガラス基板にCIGS膜等の光電変換層が形成される場合、ガラス基板が光電変換層の形成工程で加熱処理されることで、ガラス基板に含まれるNa原子がガラス基板表面から光電変換層に拡散していく。これによって、光電変換層の欠陥密度が低下し、キャリア濃度が高まり、結果として光電変換効率を高めることができる。
太陽電池基板への低コスト化の要求は年々高まってきており、中でも太陽電池パネルの重量の大部分を占めるガラス基板を安価に提供することが強く求められている。安価なガラスの例としては、建築用ガラスなどに広く用いられるソーダライムガラスが知られている。そのため、安価に製造可能なソーダライムガラスで、かつ高効率の化合物太陽電池とするのに好適なガラスが求められている。
近年では、化学強化用途のソーダライムガラスとして、アルカリ成分の含有量の多いソーダライムガラス等も検討されてきている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2014/148020号
化合物太陽電池に使用されるガラス基板において高い発電効率、安価な製造コスト、板ガラス生産時の溶解性、成形性、失透防止の特性、取扱容易性等をバランスよく有することが求められている。
本発明の一態様に係るガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示でSiOを63〜75%、Alを3〜12%、MgOを3〜10%、CaOを0.5〜10%、NaOを10〜18%、KOを0〜8%含有し、MgO/CaOが0.65以下である。
化合物太陽電池に使用した場合、高い発電効率、安価な製造コスト、板ガラス生産時の溶解性、成形性、失透防止の特性、取扱容易性等をバランスよく有するガラス板を提供できる。
以下、本発明のガラス板の実施形態について説明する。
本発明の一態様に係るガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示でSiOを63〜75%、Alを3〜12%、MgOを3〜10%、CaOを0.5〜10%、NaOを10〜18%、KOを0〜8%含有し、MgO/CaOが0.65以下であるガラス板、である。
高い発電効率を有する化合物太陽電池を製造するためには、光電変換層の形成工程でのガラス基板表面から光電変換層へのNa原子の十分な拡散を確保する必要がある。例えば、従来の建築用途等で用いられていたソーダライムガラスの場合、ガラス基板表面から光電変換層へのNa原子の十分な拡散を確保することが困難であった。
本実施形態によるガラス基板において、上記組成に限定する理由は以下のとおりである。
SiO:ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、63%以上であり、好ましくは64%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは67%以上である。また、SiOの含有量は75%以下であり、好ましくは73%以下、より好ましくは71%以下、特に好ましくは70%以下である。SiOの含有量が63%以上であるとガラスとしての安定性の点で優位である。また、網目構造を形成することにより膨張の増大を抑制できる。一方、SiOの含有量が75%以下であると溶解性および成形性の点で優位である。
Al:化学的耐久性を向上し、ヤング率を上げる成分である。Alの含有量は、3%以上であり、好ましくは4%以上、より好ましくは4.5%以上である。また、Alの含有量は、12%以下であり、より好ましくは11%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下、最も好ましくは7%以下である。Alの含有量が3%以上であると、化学的耐久性向上やヤング率増加の効果が得られる。一方、Alの含有量が12%以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きくは上昇せず、また、原料コストの上昇も抑えられるため、ソーダライムガラス生産ラインでの溶解、成形の点で優位である。
MgO:ガラスを安定化させ、溶解性を向上させ、かつこれを添加することでアルカリ金属の含有量を低下させて熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion;CTE)の上昇を抑制することのできる成分である。MgOの含有量は、3%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上である。また、MgOの含有量は、10%以下であり、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下である。MgOの含有量が3.5%以上であると、CTEの上昇抑制効果を発揮する。一方、MgOの含有量が10%以下であると、失透の起こりにくさが維持される。より好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは4.5%以下である。
CaO:ガラスを安定化させる成分であり、MgOの存在による失透を防止し、かつCTEの上昇を抑制しながら溶解性を向上する効果を有する。CaOの含有量は、0.5%以上であり、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上、特に好ましくは5%以上、最も好ましくは6%以上である。また、CaOの含有量は、10%以下であり、好ましくは9%以下、より好ましくは8%以下である。CaOの含有量が0.5%以上であると、高温での溶解性が良好になり、失透が起こりにくくなり、CTEの上昇も抑制される。一方、CaOの含有量が10%以下であると、失透の起こりにくさが維持される。
SrO:ガラスの粘性および失透温度を下げるために有効な成分である。しかし、MgO、CaOに比べて原料コストが高いので、含有する場合であっても3%以下である。3%以下とすることで、溶解性が良好になり、CTEおよび密度が必要以上に上昇することを抑制できる。
BaO:SrOと同じく、ガラスの粘性および失透温度を下げるために有効な成分である。しかし、MgO、CaOに比べて原料コストが高いので、含有する場合であっても3%以下である。3%以下とすることで、溶解性が良好になり、CTEおよび密度が必要以上に上昇することを抑制できる。
NaO:CIGS等の光電変換層を備える太陽電池の発電効率向上に寄与するための成分であり、必須成分である。またガラスの溶解温度と失透温度を下げ、ガラスの溶解性、成形性を向上させる成分である。
NaOの含有量は、10%以上であり、好ましくは11%以上、より好ましくは13%以上である。また、NaOの含有量は、18%以下であり、好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下である。NaOの含有量が10%以上であると、Naをガラス基板上に構成された光電変換層中に十分に拡散させることができる。一方、NaOの含有量が18%以下であると、十分な化学的耐久性が得られ、CTEが必要以上に上昇することを抑制できる。
O:ガラスの溶解温度を下げる効果があり、8%以下の範囲で含有してもよい。KOの含有量が8%超であると、Naの拡散が阻害されて発電効率が低下したり、CTEが必要以上に上昇したりするおそれがある。また、NaOに比べて原料コストが高いので製造コストの増加につながる。KOを含有させる場合は5%以下が好ましく、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。
ZrO:必須ではないが、CTEを上げずに高温での粘性を低下させるために、または耐酸性を向上させるために3%までの範囲で含有してもよい。ZrOを過剰に添加すると逆に溶解温度が上昇するが、3%以下とすることにより粘性の増加と失透の発生を抑制できる。好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
Fe:ガラスの溶解時に熱を吸収するので溶解性向上のための成分である。Feの含有量は、0.005%以上であり、好ましくは0.008%以上、より好ましくは0.01%以上である。またFeの含有量は、0.25%以下であり、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.15%以下である。窯の敷温度上昇を防ぐためには、Feの含有量が0.005%以上であると良い。一方、Feの含有量が0.25%以下であると、着色を抑えることができる。
さらに本発明者は、ガラスの溶解性や化学的耐久性を確保し、CTEを低下させ、Na原子の拡散の向上効果を得るためには、(SiO−Al−2*NaO)/NaOを2.5以下に設定することが有効であることを見出した。
SiOは、化学的耐久性を向上させ、CTEを低下させる効果がある。Alは、ガラスの化学的耐久性を向上させる作用の一方で、溶解温度の上昇をもたらす。NaOはNa原子の拡散原となるため、拡散を促進する効果がある。加えて、ガラスの溶解温度の上昇を抑制する一方で、化学的耐久性を低下させ、CTEを上昇させる作用がある。
SiO−Alを小さくすることは、Alがガラス中で4配位構造をとってSiOのネットワーク構造に入ることにより化学的耐久性を向上させる一方で、溶解温度を上昇させる効果がある。また、SiO−2*NaOを小さくすることは、ガラス中で非架橋酸素の割合が増加して化学的耐久性を低下させ、CTEを増加させる一方で、溶解温度を低下させる効果がある。
したがって、SiO、Al、NaOを所定の比率で含有することにより、溶融温度の上昇抑制、CTEの上昇抑制、化学的耐久性の確保と同時に、Na原子の拡散の効果を高めることができる。より好ましく2.4以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。2.5超であると、ガラス基板から光電変換層へのNa原子の拡散が不十分となるおそれがある。
MgO/CaOは、溶解時の高温粘度や失透特性に関係する。CaOに対するMgOの量を0.65以下とすることにより、ガラス溶解時の基準となる粘度である10dPa・sとなる温度(T2)の上昇を抑制すると同時に失透を発生しにくくする作用があり、ガラス板の生産性を高めることが出来る。MgO/CaOの比率は、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下である。
また、(NaO+KO)/Alが2.0〜4.6であることが好ましい。ここで(NaO+KO)/Al2.0以上であることにより、溶解温度の上昇を抑えることができ、生産性を高められるためコストを低く抑えることが出来る。(NaO+KO)/Alが4.6以下であることにより、CTEの上昇を抑制し、化学的耐久性を高めることが出来る。
この他、ガラスの溶融の清澄剤として、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。本実施形態のガラスは本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それらの成分の含有量の合計は5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、典型的には1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
TiO:必須ではないが、天然原料中に多く存在し、黄色の着色源となることが知られている。TiOを含有する場合は、0.2%以下であることが好ましい。
SO:必須ではないが、ガラスの溶融の清澄剤として知られている。SOを含有する場合は、0.3%以下であることが好ましい。
ZnO:ガラスの高温での溶解性を向上するために、たとえば2%まで含有してもよい。しかし、フロート法で製造する場合には、フロートバスで還元され製品欠点となるので実質的に含有しないことが好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。以下同じである。
:高温での溶融性またはガラス強度の向上のために、4%以下の範囲で含有してもよい。4%超では、ガラス転移温度が下がる、またはCTEが小さくなり、CIGS膜等の光電変換層を形成するプロセスにとって好ましくない。好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。一般的には、NaOまたはKOのアルカリ成分とBを同時に含有すると揮散が激しくなり、レンガを著しく浸食するので、Bは実質的に含有しないことが好ましい。
LiO:歪点を低くする成分であり、NaOに比べて原料コストが高いので含有しないことが好ましく、含有する場合であってもその含有量は1%未満であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下、特に好ましくは0.01%未満である。
本実施形態のガラス板は、通常、板形状をしているが、平板でも曲げ加工を施したガラス板でもよい。本実施形態のガラスは、フロート法、フュージョン方法、スロットダウンドロー法など、既知のガラス成形方法によって平板形状に成形されたガラス板である。
本実施形態のガラス板は、既存の成形方法で成形可能な寸法を有する。すなわち、フロート法で成形すれば、フロート成形幅の連続したリボン状のガラスが得られる。また、本実施形態のガラスは、最終的には使用目的に適した大きさに切断される。一般的には矩形に切断されるが、台形などの他の形状でも構わない。
本実施形態によるガラス基板を化合物太陽電池用ガラス基板に用いる場合、ガラス基板の厚さは3mm以下とするのが好ましく、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。また、ガラス基板上に光電変換層としてCIGS膜を形成する場合、CIGS膜の少なくとも一部がセレン化法、または蒸着法で形成されるものが好ましい。
本実施形態のガラス板を化合物太陽電池のガラス基板のみに使用する場合、カバーガラス等は特に制限されない。
本実施形態によるガラス板を化合物太陽電池用カバーガラスとして用いる場合、カバーガラスの厚さは4mm以下とするのが好ましく、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。また光電変換層を有するガラス基板にカバーガラスを組立てる方法は特に制限されない。
本実施形態のガラス板を化合物太陽電池用のガラス基板及びカバーガラスに併用すると、平均熱膨張係数が同等であるため太陽電池パネル組立時の熱変形等が発生せず好ましい。
本実施形態のガラス板は、製造特性、商品特性の両面で、従来のソーダライムガラスから容易に変更可能である。通常のソーダライムガラスは、T2が、一般に1445〜1475℃である。
溶解時にT2の上昇がプラス50℃くらいまでの範囲であれば、従来のソーダライムガラスを溶解していた生産窯で容易に製造可能である。本実施形態のガラスの溶解におけるT2が1525℃以下であり、好ましくは1510℃以下であり、より好ましくは1500℃以下、さらに好ましくは1490℃以下である。またT2は、1450℃以上であることが好ましい。
またT2の調整は、SiO、Alの総量とROおよびRO(式中、ROはMgO、CaO、SrOまたはBaOである)総量の差分、すなわちNBO量を調整すること等により可能である。
従来のソーダライムガラスは、フロート法によるガラス成形時の基準となる粘度である10dPa・sとなる温度(T4)が、一般に1020〜1050℃である。この粘性となる温度T4の上昇がプラス30℃くらいまでの範囲であれば、通常のソーダライムガラスを成形していた生産窯で容易に製造可能である。本実施形態のガラスの成形におけるT4が1080℃以下であることが好ましく、より好ましくは1070℃以下、さらに好ましくは1060℃以下である。
失透温度は、フロート法でガラスを製造する際には、前述のT4と比較して失透発生の危険性に関係する。本実施形態のガラスの失透温度がT4より15℃高い温度以下であればフロート法で失透の発生なしに製造可能であり、好ましくはT4以下、より好ましくはT4より10℃低い温度以下、さらに好ましくはT4より20℃低い温度以下、最も好ましくはT4より30℃低い温度以下である。
本実施形態における失透温度は、白金性の皿の上に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラスの表面および内部に結晶が析出する最高温度と結晶が析出しない最低温度との平均値である。
本実施形態のガラス転移温度(Tg)は、530℃以上であり、540℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましく、550〜600℃であることがさらに好ましい。Tgが530℃未満であると、光電変換層の作製時における基板の反りや変形、熱収縮が十分に抑制できず、膜の特性を担保することができないおそれがある。またTgの調整は、SiO、Alの総量とROおよびROの量を調整すること等により可能である。基板の反りや変形を議論する際の指標として歪点が用いられることがあるが、歪点の測定は熟練した技術を必要とするため、熱膨張係数を測定してTgを求め、これで代用することがある。一般にTgは歪点よりも約40℃高い温度となる。
本実施形態のCTEは、50〜350℃の温度範囲において、例えば80×10−7〜100×10−7−1であり、好ましくは80×10−7〜95×10−7−1である。CTEが80×10−7−1以上であることにより、太陽電池のMo等の金属電極やCIGS膜等の光電変換層、他の物質との熱膨張係数のマッチングの点で有利となり、膜剥がれ、膜クラック等を防止することができる。さらに、太陽電池パネルを組立てる際(具体的には光電変換層を有するガラス基板とカバーガラスとを加熱して貼りあわせる際)、ガラス基板が変形することを抑制することができる。
またCTEが100×10−7−1以下であることにより、耐熱衝撃性、反り特性等の点で有利となる。またCTEの調整は、ROおよびROの量を調整すること等により可能である。
一般的なソーダライムガラスは、室温での比重が2.490〜2.505である。本実施形態のガラスと通常のソーダライムガラスを同一の窯で交互に生産することを考えると、比重の変動が0.01以下であると組成変更が容易である。本実施形態のガラスの比重は、2.480以上、2.515以下であることが好ましい。
<CIGS太陽電池またはCZTS太陽電池>
次に、本発明の一態様に係るガラス板を用いた太陽電池について説明する。
好ましい形態としては、ガラス基板、ガラス基板上に設けられCIGS系化合物やCZTS系化合物(例えば、CuZnSnS、CuZnSnSe)等を含む光電変換層、光電変換層上に設けられたカバーガラスを有し、少なくともガラス基板が、上記した本実施形態によるガラス板である。
以下に、本発明の一態様に係るガラス板を用いた太陽電池の一例を示す。
本発明の一態様に係るガラス板を用いた太陽電池は、ガラス基板上に裏面電極層としてプラス電極であるMo膜を有し、その上にCIGS膜を有する。ガラス基板とMo膜との間には、1〜100nmの薄いシリカ膜等のアルカリ金属制御層を設けることで、ガラス基板からのアルカリ金属や不純物元素の光電変換膜への拡散量を制御することもできる。
光電変換膜は、CIGS系化合物或いはCZTS系化合物を含む光電変換層である。CIGS系化合物の組成としては、例えば、Cu(In1−XGa)Seである。ここで、xは、InとGaの組成比を示すもので0<x<1である。CZTS層の組成はCuZnSnS、CuZnSnSeが例示できる。
CIGS膜上には、バッファ層としてのCdS(硫化カドミウム)またはZnS(亜鉛硫化物)層を介して、ZnOまたはITOの透明導電膜を有し、さらにその上にマイナス電極であるAl電極(アルミニウム電極)等の取出し電極を有する。これらの層の間の必要な場所には反射防止膜を設けてもよい。
また、取出し電極上にカバーガラスが設けられ、必要な場合は取出し電極とカバーガラスとの間は、樹脂封止したり接着用の透明樹脂で接着されたりする。なお、カバーガラスは設けなくてもよい。
本発明の一態様に係るガラス板を用いた太陽電池において、光電変換層の端部または太陽電池の端部は封止されていてもよい。封止するための材料としては、例えば本実施形態によるガラス基板と同じ材料、そのほかのガラス、樹脂等が挙げられる。
以下、光電変換層にCIGS膜を使用した際のCIGS膜形成方法の一例について具体的に説明する。
CIGS膜の形成では、まず、Mo膜上に、スパッタ装置を用いて、CuGa合金ターゲットでCuGa合金層を成膜し、続いてInターゲットを使用してIn層を成膜することで、In−CuGaのプリカーサ膜を成膜する。成膜温度は特に制限されないが通常室温とすることができる。
プリカーサ膜の組成は、蛍光X線による測定において、Cu/(Ga+In)比(原子比)が0.7〜0.95、Ga/(Ga+In)比(原子比)が0.1〜0.5となることが好ましい。CuGa合金層及びIn層の膜厚を調整することで、この組成を得ることができる。
次いで、プリカーサ膜を、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて加熱処理する。
加熱処理では、第1段階として、セレン化水素混合雰囲気において200〜700℃で1〜120分保持し、CuとInとGaとを、Seと反応させる。セレン化水素混合雰囲気は、アルゴンや窒素などの不活性ガス中にセレン化水素を1〜20体積%で含むことが好ましい。
その後、第2段階として、セレン化水素混合雰囲気を硫化水素混合雰囲気に置換し、さらに200〜700℃で1〜120分保持し、CIGS結晶を成長させることで、CIGS膜を形成する。硫化水素混合雰囲気は、アルゴンや窒素などの不活性ガス中に硫化水素を1〜30体積%で含むことが好ましい。CIGS膜の厚さは、1〜5μmであることが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。実施例、比較例を表1〜4に示す。なお、表中の括弧内の数値は計算値である。
<評価方法>
(1)比重
比重はアルキメデス法で測定した。
(2)CTE、ガラス転移点(Tg)
CTEはJIS R 1618:2002に基づき、ガラス転移点(Tg)の測定と同時に熱膨張計(ブルカー・エイエックスエス社製、TD5000SA)を用いて5℃/分の昇温速度で測定し50〜350℃の平均線熱膨張係数を求めた。
(3)高温粘性
粘度が10dPa・sとなる温度(T2)、粘度が10dPa・sとなる温度(T4)は回転式粘度計を用いて測定した。
(4)Na拡散量
ガラス基板表面から光電変換層へのNa原子の拡散量は、ガラス基板上にプラス電極としてMo電極を形成し、次いでCIGS膜を形成し、その後、CIGS膜中のNa量を測定し求めた。計算値は得られた実測値を元に、組成と実測値とで重回帰分析を行い、それにより得られた回帰式を用いて算出した。
得られたガラス基板を大きさ3cm×3cm、厚さ1.8mmに加工した、ガラス基板5aの上に、スパッタ装置にて、プラス電極としてMo(モリブデン)膜を成膜した。成膜は室温にて実施し、厚み250nmのMo膜を得た。
Mo膜上にスパッタ装置にて、CuGa合金ターゲットでCuGa合金層を成膜し、続いてInターゲットを使用してIn層を成膜することで、In−CuGaのプリカーサ膜を成膜した。成膜は室温にて実施した。蛍光X線によって測定したプリカーサ膜の組成が、Cu/(Ga+In)比が0.88、Ga/(Ga+In)比が0.34となるように各層の厚みを調整し、厚み600nmのプリカーサ膜を得た。
プリカーサ膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて加熱処理した。まず、第1段階としてアルゴンおよびセレン化水素混合雰囲気(セレン化水素はアルゴンに対し5体積%)にて400℃で10分保持を行い、Cu、In、GaおよびSeとを反応させて、その後、第2段階としてセレン化水素混合雰囲気を硫化水素混合雰囲気に置換し、さらに500℃で30分保持してCIGS結晶を成長させることでCIGS層を得た。得られたCIGS層の厚みは1.7μmであった。
上記RTA装置による加熱処理の第2段階終了後、資料を二次イオン質量分析法(SIMS)にてCIGS層中の23Naの積分強度を測定した。表中に示す値は、比較例1で用いたガラス基板の23Naの積分強度を1としたときの相対量である。
各実施例、比較例のガラスは、ケイ砂、ソーダ灰、ドロマイト、長石、ボウ硝、その他の酸化物、炭酸塩、水酸化物等、一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、温度1450〜1700℃で加熱し溶融ガラスを得られたものである。なお、表1〜4の組成は、ガラス基板の表面からの深さ5000nm以上において、酸化物基準の質量百分率表示で示したものである。
次いで、溶融ガラスを溶融スズで満たしたスズ浴上に流し込み、板状のガラスリボンを成形した。つづいて、ガラスリボンを徐冷炉内に引き込み、徐冷を行った。徐冷炉から引き出したガラスリボンから、所定の大きさのガラス基板を切り出した。ガラス基板の厚みは1.8mmであった。
下記表1〜4の酸化物基準の質量百分率表示で示す組成になるように、硅砂、ソーダ灰、ドロマイト、長石、芒硝、その他の酸化物、炭酸塩、水酸化物等、一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、ガラスとして1kgとなるように秤量した。ただし、芒硝はSO3量にして2倍の量を投入量とした。秤量した原料を混合し、白金製るつぼに入れ、抵抗加熱式電気炉に投入し、1450〜1600℃で3時間溶融し、脱泡、均質化した。
得られた溶融ガラスを型材に流し込み、Tg+50℃の温度で1時間保持した後、0.5℃/分の速度で室温まで冷却し、数個のガラスブロックを得た。
得られたガラス基板の特性を表1〜4に示した。
Figure 2016084247
Figure 2016084247
Figure 2016084247
Figure 2016084247
前記した表1〜表4より、実施例1のガラス板は、比較例1のガラス板と比較して、特にNaOの含有量、ならびにRO/AlおよびRO/(RO+RO)が特定範囲であることにより、Na原子の拡散を向上させることができ、化合物太陽電池のガラス基板に好適である。また、各実施例のガラスは従来のソーダライムガラスと比較してT2やT4の大きな上昇がなく、比重やCTEも同等であるため、従来のフロート設備を利用して容易に製造することができる。さらに、ガラスの各成分の割合が特定範囲であることにより、従来のソーダライムガラスと比較して大幅なコスト増加を抑制しながら製造することができる。

Claims (9)

  1. 酸化物基準の質量百分率表示でSiOを63〜75%、Alを3〜12%、MgOを3〜10%、CaOを0.5〜10%、NaOを10〜18%、KOを0〜8%含有し、MgO/CaOが0.65以下であるガラス板。
  2. (SiO−Al−2*NaO)/NaOが2.5以下である請求項1に記載のガラス板。
  3. (NaO+KO)/Alが2.0〜4.6である請求項1または2に記載のガラス板。
  4. CaOを1〜10%含有する請求項1または2に記載のガラス板。
  5. Alを4〜12%、MgOを3.5〜10%含有する請求項1または2に記載のガラス板。
  6. CaOを5〜10%含有する請求項5に記載のガラス板。
  7. Alを4.5〜10%含有する請求項5に記載のガラス板。
  8. T2が1525℃以下である請求項1または2に記載のガラス板。
  9. T2が1510℃以下である請求項8に記載のガラス板。
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