JP2016102058A - 太陽電池用ガラス基板及びそれを用いた太陽電池 - Google Patents

太陽電池用ガラス基板及びそれを用いた太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高い発電効率、高いガラス転移点温度、所定の平均熱膨張係数をバランスよく有する太陽電池用ガラス基板及びそれを用いた太陽電池を提供する。【解決手段】酸化物基準の質量百分率表示で、ガラス母組成として、SrOを5〜13.0%、BaOを0.5〜4.0%含み、Al2O3−Na2O−K2O−MgOが−4.00〜5.00%であり、ガラス母組成100質量部に対しFeをFe2O3換算で0.08〜0.5質量部含み、β−OHが0.12mm−1〜0.4mm−1である、太陽電池用ガラス基板5。【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池用ガラス基板及びそれを用いた太陽電池に関する。
太陽電池では、ガラス基板に光電変換層として半導体の膜が形成される。太陽電池に用いられる半導体として、カルコパイライト結晶構造を持つ11−13族、11−16族化合物半導体や、立方晶系あるいは六方晶系の12−16族化合物半導体は、可視から近赤外の波長範囲の光に対して大きな吸収係数を有している。そのために、高効率薄膜太陽電池の材料として期待されている。代表的な例として、Cu(In,Ga)Se(以下、「CIGS」または「Cu−In−Ga−Se」と称する。)やCdTeが挙げられる。
CIGS太陽電池では、安価であることと平均熱膨張係数がCIGS化合物半導体のそれに近いことから、ソーダライムガラスを基板として利用できる。
また、効率の良い太陽電池を得るため、高温の熱処理温度に耐えうるガラス材料の提案もされている(特許文献1〜5)。
また、このような太陽電池用ガラス基板として、アルカリ金属、特にNaを含むガラス基板を用いることで、太陽電池の光電変換効率を高めることができることが知られている。ガラス基板にCIGS層等の光電変換層が形成される場合、ガラス基板がCIGS層の形成工程で加熱処理されることによって、ガラス基板に含まれるNa原子がガラス基板表面からCIGS層に拡散していく。その結果、CIGS層のキャリア濃度が高まり、光電変換効率を高めることができる。
特開平11−135819号公報 特開2010−118505号公報 特開2008−280189号公報 特開2010−267965号公報 国際公開番号WO2013/094727号
特許文献1に開示されているように、発電効率の良い太陽電池を作製するには、ガラス基板にCIGS層を形成する際に、より高温で熱処理することが好ましい。そのため、ガラス基板には、高温の熱処理に耐えうること、および、所定の平均熱膨張係数を満たすことが要求される。特許文献1では、比較的徐冷点の高いガラス組成物が提案されているが、このガラス基板が高い発電効率を有するとは必ずしもいえない。
特許文献2及び3には、歪点が高く所定の平均熱膨張係数を満たす太陽電池用ガラス基板が提案されている。しかし、特許文献2の課題は耐熱性の確保と生産性の改善であり、特許文献3の課題は表面品位の向上と耐失透性の改善であり、いずれも発電効率に関する課題を解決するものではない。そのため、特許文献2及び3に記載のガラス基板が高い発電効率を有するとは必ずしもいえない。
さらに、特許文献3では、酸化ホウ素を多く含有し、歪点が高く所定の平均熱膨張係数を満たすガラス基板が提案されている。しかしながら、ガラス中にホウ素が多く存在すると、特許文献4に記載されているように、p型半導体であるCIGS層中にホウ素が拡散してドナーとして働き、発電効率を低下させるおそれがある。さらに、ホウ素の除去設備が必要で、コスト増となりやすいという問題がある。
特許文献4では、ガラス基板中のホウ素を低減させているが、具体的に記載されているガラス組成では発電効率は不十分である。
特許文献5には、ガラス基板から光電変換膜へNaOを拡散させて光電変換効率を高めるために、ガラス組成にNaOを含ませるとともに、歪点を高め、所定の熱膨張係数を有する太陽電池用ガラス基板を提供することが提案されている。
特許文献5の記載によれば、ガラス中の水分量を制限することで高歪点を維持することができ、これによって歪点を高めながらNaO量を増加させることができる(段落0022)。
しかし、発電効率を高めるためには、NaO量を増加させることだけでは限界があり、さらなる改善が期待される。
このように、太陽電池用ガラス基板において、高い発電効率、高いガラス転移点温度、所定の平均熱膨張係数をバランスよく有することは難しい。
本発明は、高い発電効率、高いガラス転移点温度、所定の平均熱膨張係数をバランスよく有する太陽電池用ガラス基板及びそれを用いた太陽電池を提供することを一目的とする。
本発明の一側面としては、酸化物基準の質量百分率表示で、ガラス母組成として、SrOを5〜13.0%、BaOを0.5〜4.0%、KOを3.5〜15%、Alを11〜20%含み、MgO+CaO+SrO+BaOが13〜21%、Al−NaO−KO−MgOが0.00〜5.00%、(2×NaO−2×MgO−CaO)×(NaO/KO)は2以上であり、前記ガラス母組成100質量部に対しFeをFe換算で0.08〜0.5質量部含み、β−OHが0.12mm−1〜0.4mm−1である、太陽電池用ガラス基板である。
本発明の他の側面としては、ガラス基板と、カバーガラスと、前記ガラス基板と前記カバーガラスとの間に配置される光電変換層と、を有し、前記ガラス基板と前記カバーガラスのうち少なくとも一方が、上記太陽電池用ガラス基板である、太陽電池である。
本発明によれば、高い発電効率、高いガラス転移点温度、所定の平均熱膨張係数をバランスよく有する太陽電池用ガラス基板を提供できる。また、この太陽電池用ガラス基板を用いることで発電効率の高い太陽電池を提供できる。
図1は、本発明に係る太陽電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
<太陽電池用ガラス基板>
以下、本発明に係る太陽電池用ガラス基板の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、酸化物基準の質量百分率表示で、ガラス母組成として、SrOを5.0〜13.0%、BaOを0.5〜4.0%含み、Al−NaO−KO−MgOが−4.00〜5.00%であり、ガラス母組成100質量部に対しFeをFe換算で0.08〜0.5質量部含み、β−OHが0.12mm−1〜0.4mm−1であることを特徴とする。
本発明では、太陽電池の直列抵抗を低くすることで発電効率が高まるという知見のもと、ガラス中の鉄分量を制御して直列抵抗を低くし、発電効率を高めることができる。
さらに、ガラス基板中の非架橋酸素がNa拡散を促進するという知見のもと、ガラス中のβ−OHを所定量に制御し、非架橋酸素量を十分に得て、Na拡散を促進して光電効率を高めることができる。また、β−OH量を所定量以上で含むことで、直列抵抗を低くすることができる。
また、ガラス組成を上記範囲とすることで、ガラス中で非架橋酸素量を十分に得て、Na拡散を促進して光電効率を高めることができる。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板のガラス母組成の好ましい一例としては、
酸化物基準の質量百分率表示で、
SiOを45〜70%、
Alを11〜20%、
を0.5%以下、
MgOを0〜6%、
CaOを4〜12%、
SrOを5〜13.0%、
BaOを0.5〜4%、
ZrOを0〜8%、
NaOを4.5〜10%、
Oを3.5〜15%含み、
MgO+CaO+SrO+BaOが10〜30%、
NaO+KOが8〜20%、
NaO/KOが0.7〜2.0、
Al−NaO−KO−MgOが−4〜5%である。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板としては、ガラス転移点温度(Tg)が640〜700℃、平均熱膨張係数が60×10−7〜110×10−7/℃、密度が2.45〜2.9g/cm以下が好ましい。このような太陽電池用ガラス基板は、Cu−In−Ga−Se(CIGS)太陽電池用ガラス基板として好ましく提供できる。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板のガラス転移点温度(Tg)は、640℃以上700℃以下が好ましい。これは、ソーダライムガラスのガラス転移点温度より高い。ガラス転移点温度は高温におけるCIGS層等の光電変換層の形成を担保するために、645℃以上が好ましく、650℃以上がより好ましく、655℃以上がさらに好ましい。溶解時の粘性を上げ過ぎないようにするために、690℃以下とすることが好ましい。より好ましくは685℃以下、さらに好ましくは680℃以下である。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板の平均熱膨張係数は、50〜350℃において、60×10−7〜110×10−7/℃が好ましい。60×10−7/℃未満または110×10−7/℃超では、ガラス基板とCIGS層等の光電変換層との熱膨張差が大きくなりすぎ、剥がれ等の欠点が生じやすくなる。好ましくは65×10−7/℃以上、より好ましくは70×10−7/℃以上、さらに好ましくは75×10−7/℃以上である。また、Mo(モリブデン)膜等のプラス電極との膨張差による反りを低減するために、好ましくは100×10−7/℃以下、より好ましくは95×10−7/℃以下、さらに好ましくは90×10−7/℃以下である。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、密度が2.45g/cm以上、2.9g/cm以下であることが好ましい。密度が2.9g/cmを超えると、製品質量が重くなり好ましくない。また、ガラス基板が脆くなり破壊しやすくなり好ましくない。密度はより好ましくは2.85g/cm以下、さらに好ましくは2.8g/cm以下、特に好ましくは2.75g/cm以下である。
また、密度が2.45g/cm未満であると、ガラス基板の構成元素として、原子番号の小さい軽元素しか使用することができず、所望の発電効率、ガラス粘度を得られないおそれがある。より好ましくは2.55g/cm以上、さらに好ましくは2.60g/cm以上、特に好ましくは2.65g/cm以上である。
以下、本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板の組成について説明する。以下の説明において、特に説明のない限り、組成の単位は、酸化物基準の質量百分率表示で表す。
SiO:ガラスの骨格を形成する成分で、45質量%(以下、単に「%」と記載する)未満ではガラス基板の耐熱性および化学的耐久性が低下し、平均熱膨張係数が増大するおそれがある。好ましくは48%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは52%以上である。
しかし、70%超ではガラスの高温粘度が上昇し、溶解性が悪化する問題が生じるおそれがある。好ましくは65%以下であり、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは58%以下である。
Al:ガラス転移点温度を上げ、耐候性(ソラリゼーション)、耐熱性および化学的耐久性を向上し、ヤング率を上げる。その含有量が11%未満では、ガラス転移点温度が低下するおそれがある。また平均熱膨張係数が増大するおそれがある。好ましくは11.5%以上であり、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは12.5%以上である。
しかし、20%超では、ガラスの高温粘度が上昇し、溶解性が悪くなるおそれがある。また、失透温度が上昇し、成形性が悪くなるおそれがある。また発電効率が低下するおそれがある。好ましくは18%以下、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは14%以下である。
また、Alを20%以下で配合することで、Al成分に酸素成分が架橋することを抑制し、非架橋酸素が増加するため、発電効率を高めることができる。
:Bは、溶解性を向上させる等のために0.5%まで含有してもよい。含有量が0.5%を超えると、ガラス転移点温度が下がる、または平均熱膨張係数が小さくなるおそれがあり、光電変換層を形成するプロセスにとって好ましくない。また失透温度が上昇して失透しやすくなり板ガラス成形が難しくなるおそれがある。さらに、大規模な除去設備が必要となり、環境負荷が大きくなるため好ましくない。
また、CIGS太陽電池用ガラス基板では、p型半導体であるCIGS層中にB(ホウ素)が拡散してドナーとして働き、発電効率を低下させるおそれがあり好ましくない。好ましくは含有量が0.3%以下である。実質的に含有しないことがより好ましい。
なお、本発明において「実質的に含有しない」は、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。
MgO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので含有してもよい。好ましくは0.02%以上であり、より好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.08%以上である。
しかし、6%超では、失透温度が上昇するおそれがある。さらに、発電効率が低下するおそれがある。好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下、一層好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1.0%以下である。
CaO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので4%以上含有させる。好ましくは4.5%以上、より好ましくは4.8%以上、さらに好ましくは5%以上である。しかし、12%超ではガラス基板の平均熱膨張係数が増大するおそれがある。また、Naがガラス基板中で移動しにくくなり発電効率が低下するおそれがある。好ましくは11%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下、特に好ましくは8.5%以下である。
ZrO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので含有できる。しかし、8%超含有するとガラス基板の平均熱膨張係数が低下し、発電効率が低下し、また失透温度が上昇して失透しやすくなり板ガラス成形が難しくなる。7%以下が好ましく、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは5.5%以下である。また、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。
NaO:NaOは太陽電池の発電効率向上に寄与するための成分であり、必須成分である。また、ガラス溶解温度での粘性を下げ、溶解しやすくする効果があるので4.5〜10%含有させる。Naはガラス基板上に構成されたCIGS層等の光電変換層中に拡散し、発電効率を高めるが、含有量が4.5%未満ではガラス基板上のCIGS層へのNa拡散が不十分となり、発電効率も不十分となるおそれがある。含有量は5%以上が好ましく、5.5%以上がより好ましい。
NaO含有量が10%を超えると平均熱膨張係数が大きくなり、ガラス転移点温度が低下する傾向がある。または化学的耐久性が劣化することがある。または、ヤング率が低下するおそれがある。または、過剰なNaにより、Mo(モリブデン)膜等のプラス電極を劣化させて発電効率の低下につながるおそれがある。含有量が9%以下であると好ましく、8%以下であるとより好ましく、7%以下であるとさらに好ましい。
O:NaOと同様の効果があるため、また、太陽電池の製造工程における高温でのCIGS層等の光電変換層の結晶成長において、CIGS組成の変化を抑えるはたらきがあり、それにより、短絡電流の低下が抑えられるため、3.5〜15%含有させる。
しかし、15%超ではガラス転移点温度が低下し、平均熱膨張係数が大きくなるおそれがある。または、ヤング率が低下するおそれがある。3.8%以上であるのが好ましく、4%以上であるのがより好ましく、4.2%以上であるのがさらに好ましく、4.5%以上であるのが特に好ましい。また、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。
MgO、CaO、SrOおよびBaO:MgO、CaO、SrOおよびBaOは、ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進させる点から合量で10%以上含有することが好ましい。13%以上が好ましく、15%以上がより好まく、17%以上がさらに好ましい。しかし、合量で30%超では失透温度が上昇し、成形性が悪くなる恐れがある。そのため、26%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、21%以下がさらに好ましい。
NaOおよびKO:ガラス溶解温度での粘性を十分に下げるために、また太陽電池の発電効率向上のために、NaOおよびKOの合量は8〜20%である。好ましくは8.5%以上であり、より好ましくは9%以上、さらに好ましくは9.5%以上である。
しかし、20%超ではガラス転移点温度が下がりすぎるおそれがある。また、平均熱膨張係数が小さくなるおそれがある。18%以下が好ましく、16%以下がより好ましく、14%以下がさらに好ましい。
また、NaOとKOの比NaO/KOは0.7以上である。NaO量がKO量に対して少なすぎると、ガラス基板上のCIGS層へのNa拡散が不十分となり、発電効率も不十分となるおそれがある。好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1.0以上である。
しかし、2.0超ではガラス転移点温度が下がりすぎるおそれがある。また、前述のKOによる、CIGS太陽電池の製造工程における高温でのCIGSの結晶成長において、CIGS組成の変化を抑えて、短絡電流の低下を抑える効果が得られなくなるおそれがある。そのため1.7以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましい。
Al、NaO、KOおよびMgO:ガラス中の非架橋酸素が増加し、Naが非架橋酸素に配位すると、光電変換層へのNaの拡散が促進される効果を得ることができる。Al成分が多いとガラス中の非架橋酸素を減少させるためAlは少ない方が良いが、一方でAlに対しNa、Kが過剰であるとガラス転移点が下がりすぎるおそれがある。また、MgOは非架橋酸素に配位しやすいため、MgOが多くなりすぎると光電変換層へのNaの拡散が阻害されることがある。そのため、Al、NaO、KOおよびMgOの適度なバランスが重要である。そこで、Al−NaO−KO−MgOは−4.00%以上5.00%以下とする。
Al−NaO−KO−MgOが−4.00%より小さいと、ガラス転移温度が低くなりすぎて、高温での熱処理ができなくなるおそれがある。好ましくは−2.00%以上、より好ましくは0.00%以上、さらに好ましくは1.00%以上、特に好ましくは2.00%以上である。また、5.00%より大きいと、Alの割合が多くなりすぎて光電変換層へNaが拡散しにくくなるおそれがある。好ましくは4.50%以下、より好ましくは4.00%以下、更に好ましくは3.50%以下、特に好ましくは3.00%以下である。
BaO:BaOは、他のアルカリ土類元素に比べ、Alに配位する割合が多いと考えられる。そのため、BaO量が多くなると、BaOがAlに配位し、NaがAlに配位することを抑制するため、Naが非架橋酸素に配位する割合が高くなる。そうすると前述のとおり、光電変換層へのNaの拡散が促進される。そのため、BaOは0.5%以上含有する。ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果も期待できる。BaOが0.5%より小さいと、光電変換層へのNaの拡散が十分に得られないおそれがある。好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.5%以上である。
しかし、4%超含有するとガラス転移温度が下がりの耐熱性が低下するおそれがある。その結果、光電変換層形成時に高い温度での処理ができなくなり、その結果十分な発電効率が得られないおそれがある。またガラス基板の平均熱膨張係数が増大、密度が増大し、ガラスが脆くなるおそれがある。また、ヤング率が低下し基板の剛性が低下するおそれがある。3.7%以下が好ましく、3.4%以下がより好ましく、3.1%以下が更に好ましく、2.8%以下が一層好ましい。
また、BaOが4%を超えて過剰に配合されると、ガラス構造が不規則になり、欠陥が発生することがある。このような欠陥が発生すると、Naイオンが欠陥にトラップされて、Na拡散量が低下することがあり、発電効率の低下につながる可能性がある。
SrO:SrOは、上記BaOと同様に、Alに配位し、Naが非架橋酸素に配位する割合を多くして、発電効率を高めることができる。また、ガラスの溶解時の粘性を下げ溶解を促進する効果とともに、平均熱膨張係数を所望の値に維持する効果も期待できる。そのため、SrOは、5%以上含有する。好ましくは5.5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは6.5%以上、特に好ましくは7.0%以上である。
しかし、13%超含有するとガラス基板の平均熱膨張係数が増大、密度が増大し、ガラスが脆くなるおそれがある。12%以下が好ましく、11%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、9%以下が特に好ましい。
また、SrOが13%を超えて過剰に配合されると、ガラス構造が不規則になり、欠陥が発生することがある。このような欠陥が発生すると、Naイオンが欠陥にトラップされて、Na拡散量が低下することがあり、発電効率の低下につながる可能性がある。
MgO、CaO、NaOおよびKO:NaOはNaの拡散によって光電変換層の特性向上に有効であり、CaOはNaの拡散に悪影響を与える因子であり、MgOはCaの拡散に影響を与える因子である。さらに、NaOがKOよりも多い状態のほうが混合アルカリ効果によりNaOの拡散が促進される。そのため、発電効率向上のためには、(2×NaO(含有%)−2×MgO(含有%)−CaO(含有%))×(NaO(含有%)/KO(含有%))は0以上とする。0より小さいと十分な発電効率が得られないおそれがある。より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.5以上、特に好ましくは2以上、一層好ましくは2.5以上である。
また、NaOが多すぎる場合、耐熱性や化学的耐久性、耐候性が低下することがある。また、前述のとおり、KOが少ない場合も、太陽電池の製造工程における高温でのCIGS層等の光電変換層の結晶成長において、CIGS組成の変化を抑えて、短絡電流の低下を抑える効果が得られなくなるおそれがある。そのために、(2×NaO(含有%)−2×MgO(含有%)−CaO(含有%))×(NaO(含有%)/KO(含有%))は8以下とする。より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは4.5以下、一層好ましくは4以下である。
Fe:Feは、Fe換算で、ガラス母組成100質量部に対し0.08〜0.5質量部含まれる。ここで、ガラス母組成は、上記した各成分、任意成分及び不可避的不純物成分の総量、具体的にはFe成分を除いた各成分の総量を100質量部とする。
Feを0.08質量部以上添加すると、太陽電池、なかでもCIGS太陽電池の直列抵抗成分を低下させる働きがあり、発電効率に対し良い効果を示すことを発明者らは見出した。その原理については定かではないが、直列抵抗成分の大きな太陽電池では、CIGS結晶を分析すると、Ga成分の不均一が見られたことから、Fe成分がガラス中のアルカリ拡散の仕方に影響を与えているものと考えられる。Feはガラスの特性を微妙に変化させアルカリ拡散に変化を与え、Na拡散を促進して、発電効率を高める作用があると考えられる。
また、ガラス基板にFeが配合されることで、ガラス基板が鉄によって着色されるため、ガラス基板を加熱する際にガラス基板の加熱効率を高めることができる。Feが適度に配合されることで、太陽電池の光電変換層形成の際に、ガラス基板の加熱効率によって温度が変化し、直列抵抗成分をより低減できる。
Feが0.08質量部より小さいと、直列抵抗成分を低下させる効果が十分でなく、発電効率の向上が十分でないおそれがある。好ましくは0.11質量部以上、より好ましくは0.14質量部以上、さらに好ましくは0.18質量部以上、特に好ましくは0.20質量部以上である。
また、Feが0.5質量部より大きいと、ガラス基板の製造の際、加熱のための熱輻射がガラスの深部まで届かなくなり、効果的に溶解ができなくなるため好ましくない。好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.35質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、特に好ましくは0.25質量部以下である。
β−OH:ガラス水分量β−OHが0.12mm−1以上、0.4mm−1以下であると、太陽電池の直列抵抗成分を低下させる働きがあり、発電効率に対し良い効果を示すことを発明者らは見出した。その原理については定かではないが、直列抵抗成分の大きな太陽電池では、CIGS結晶を分析すると、Ga成分の不均一が見られたことから、β−OHがガラス中のアルカリ拡散の仕方に影響を与えているものと考えられる。
また、ガラス水分量が増加すると、ガラス中の非架橋酸素が増加し、その結果非架橋酸素に配位するNaも増加する。その結果、CIGS層等の光電変換層へのNaの拡散が促進されると思われる。その原因としては、前述のAlの増加によるNa拡散減少や、BaOの不足によるCIGS層へのNa拡散の減少はいずれも、ガラス中の非架橋酸素の減少に繋がると考察されるためである。
また、ガラス水分量は波長2700nm付近に強い吸収があるため、CIGS成膜時において、400〜600℃付近の熱輻射を吸収しやすくなるため、ガラスの加熱を促進することもプラスに働いていると考えられる。
β−OHが0.12mm−1より小さいと、直列抵抗成分を低下させる効果が十分でなく、発電効率の向上が十分でないおそれがある。好ましくは0.13mm−1以上、より好ましくは0.14mm−1以上、さらに好ましくは0.15mm−1以上、特に好ましくは0.16mm−1以上である。
また、β−OHが0.4mm−1より大きいと、ガラス転移点温度の低下が顕著になり、CIGS層を高温で成膜できなくなり効率低下のおそれがある。好ましくは0.35mm−1以下、より好ましくは0.3mm−1以以下、さらに好ましくは0.25mm−1以以下、特に好ましくは0.2mm−1以下である。
ガラス水分量β−OHは、以下の方法により、波長2700nmにおける光吸収から算出できる。まず、汎用のFTIR装置を用い、波長2500〜6500nmにおける透過率および反射率を測定する。波長2700nm付近での吸収の極大での透過率をT、反射率をRとする。内部透過率Tは、下記式で表される。
=1−T−R
ガラス厚みをd(mm)とすると、β−OH(mm−1)は、下記式で表される。
(β−OH)=(1/d)×Log10{1/T
Feとβ−OH:Feとガラス水分量β−OHはともに大きいほうが好ましい。β−OHが大きくなると、ガラス中の2価の鉄イオンによる近赤外領域の光吸収が大きくなる。その結果、CIGS層等の光電変換層の成膜時において、400〜600℃付近の熱輻射を吸収しやすくなり、ガラスの加熱が促進されるためである。
好ましくはFeを0.11質量%以上、かつβ−OHが0.13mm−1以上、より好ましくはFeを0.14質量%以上、かつβ−OHが0.14mm−1以上、さらに好ましくはFeを0.16質量%以上、かつβ−OHが0.16mm−1以上、特に好ましくはFeを0.18質量%以上、かつβ−OHが0.18mm−1以上である。
また、鉄イオンは修飾イオン的に働く場合が多いので、鉄量が多くかつガラス水分量が多いと、ガラス転移点温度の低下がさらに顕著になりやすい。そのため、好ましくはFeが0.4質量%以下、かつβ−OHが0.4mm−1以下、より好ましくはFeが0.35質量%以下、かつβ−OHが0.35mm−1以下、さらに好ましくはFeが0.3質量%以下、かつβ−OHが0.3mm−1以下、さらに好ましくはFeが0.25質量%以下、かつβ−OHが0.25mm−1以下である。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、実質的に上記ガラス母組成からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を、それぞれ1%以下、合計で5%以下含有してもよい。たとえば、耐候性、溶解性、失透性、紫外線遮蔽、屈折率等の改善を目的に、ZnO、LiO、WO、Nb、V、Bi、TiO、MoO、TlO、P等を含有してもよい場合がある。
また、ガラスの溶解性、清澄性を改善するため、ガラス基板中にSO、F、Cl、SnOをそれぞれ1%以下、合量で2%以下含有するように、これらの原料をガラス母組成原料に添加してもよい。
また、ガラス基板の化学的耐久性向上のため、ガラス基板中にY、Laを合量で2%以下含有させてもよい。
また、ガラス基板の色調を調整するため、ガラス基板中にTiO等の着色剤を含有してもよい。このような着色剤の含有量は、合量で1%以下が好ましい。
また、本発明のCIGS太陽電池用ガラス基板は、環境負荷を考慮すると、As、Sbを実質的に含有しないことが好ましい。また、安定してフロート成形することを考慮すると、ZnOを実質的に含有しないことが好ましい。しかし、本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、フロート法による成形に限らず、フュージョン法による成形により製造してもよい。
<太陽電池用ガラス基板の製造方法>
以下、本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板の製造方法について説明する。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、従来の太陽電池用ガラス基板を製造する際と同様に、溶解・清澄工程および成形工程によって製造できる。なお、本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、アルカリ金属酸化物(NaO、KO)を含有するアルカリガラス基板であるため、清澄剤としてSOを効果的に用いることができ、成形方法としてフロート法およびフュージョン法(ダウンドロー法)に適している。
太陽電池用ガラス基板の製造工程において、ガラスを板状に成形する方法としては、太陽電池の大型化に伴い、大面積のガラス基板を容易に安定して成形できるフロート法を用いることが好ましい。
太陽電池用ガラス基板の製造方法の一例としては、まず、原料を溶解して得た溶融ガラスを板状に成形する。例えば、得られるガラス基板が上記組成となるように原料を調製し、上記原料を溶解炉に連続的に投入し、1500〜1700℃に加熱して溶融ガラスを得る。そしてこの溶融ガラスを、例えば、フロート法を適用してリボン状のガラス板に成形する。
次に、リボン状のガラス板をフロート成形炉から引出した後に、冷却手段によって室温状態まで冷却し、切断後、太陽電池用ガラス基板を得ることができる。
<太陽電池用ガラス基板の用途>
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、太陽電池用のガラス基板やカバーガラス等として利用できる。例えば、CIGS太陽電池用のガラス基板やカバーガラスとして好ましく利用できる。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板をガラス基板に適用する場合、ガラス基板の厚さは3mm以下とするのが好ましく、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板を用いることで、CIGS層等の光電変換層を形成する際の加熱温度を500〜700℃、好ましくは600〜650℃とすることができる。また、ガラス基板にCIGS層を付与する方法は、特に制限されないが、セレン化法による方法が特に好ましい。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板をガラス基板のみに使用する場合、カバーガラス等は特に制限されない。カバーガラスの組成の他の例は、ソーダライムガラス等が挙げられる。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板をカバーガラスとして使用する場合、カバーガラスの厚さは3mm以下とするのが好ましく、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。また、光電変換層を有するガラス基板にカバーガラスを組立てる方法は特に制限されない。本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板をカバーガラスとして用いることで、加熱して組立てる場合、その加熱温度を500〜700℃、好ましくは600〜650℃とすることができる。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板を、太陽電池用のガラス基板およびカバーガラスに併用すると、平均熱膨張係数が同等であるため太陽電池組立時の熱変形等の発生を防止することができ好ましい。
本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板は、上記したガラス母組成を有することで、膨張係数がソーダライムガラスに近く、ガラス転移点温度が高いという特徴から、CIGS太陽電池以外のその他の太陽電池用の基板ガラス、またはカバーガラスに用いることも可能である。
例えば、CIGS太陽電池と同様に、光電変換層形成の際に500〜700℃の加熱温度が必要なCd−Te系化合物の太陽電池やCu−Zn−Sn−S系(SはSeまたはS)化合物の太陽電池の光電変換層を形成するガラス基板に好適に利用できる。
<太陽電池>
以下、本実施形態に係る太陽電池について説明する。
本実施形態に係る太陽電池は、ガラス基板と、カバーガラスと、上記ガラス基板と上記カバーガラスとの間に光電変換層として配置されるCIGS(Cu−In−Ga−Se)層とを有し、上記ガラス基板と上記カバーガラスとの少なくとも一方が、本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板であることを特徴とする。
以下添付の図面を使用して本実施形態に係る太陽電池を詳細に説明する。なお、本発明は添付の図面に限定されない。
図1は、一実施形態としてCIGS太陽電池を模式的に表す断面図である。
図1において、CIGS太陽電池1は、ガラス基板5、カバーガラス19、及びガラス基板5とカバーガラス19との間にCIGS層9を有する。ガラス基板5及び化バーガラス19のうち少なくとも一方は、上記で説明した本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板であることが好ましい。
CIGS太陽電池1は、ガラス基板5上にプラス電極7であるMo膜の裏面電極層を有し、その上にCIGS層9を有する。CIGS層9の組成はCu(In1−xGa)Seが例示できる。xはInとGaの組成比を示すもので0<x<1である。
CIGS層9上には、バッファ層11としてのCdS(硫化カドミウム)層、ZnS(亜鉛硫化物)層、ZnO(酸化亜鉛)層、Zn(OH)(水酸化亜鉛)層、またはこれらの混晶層を有する。バッファ層11を介して、ZnOまたはITO、またはAlをドープしたZnO(AZO)等の透明導電膜13を有し、さらにその上にマイナス電極15であるAl電極(アルミニウム電極)等の取出し電極を有する。これらの層の間の必要な場所には反射防止膜を設けてもよい。図1においては、透明導電膜13とマイナス電極15との間に反射防止膜17が設けられている。
マイナス電極15上にカバーガラス19が設けられる。必要な場合は。マイナス電極15とカバーガラス19との間は、樹脂封止される、または接着用の透明樹脂で接着される。
図1において、CIGS層9の端部またはCIGS太陽電池11の端部は封止されていてもよい。封止するための材料としては、例えば本実施形態に係る太陽電池用ガラス基板と同じ材料、そのほかのガラス、樹脂等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(ガラス板の製造)
表1及び表2に、実施例(例1〜7)および比較例(例8〜13)のCIGS太陽電池用ガラス基板の組成及び評価結果を示す。
各表において、Feは、ガラス母組成100質量部に対する値(質量部)である。また、ROは、MgO、CaO、SrO及びBaOの総量である。ROは、NaO及びKOの総量である。Al−Na−K−Mgは、(Al)−(NaO)−(KO)−(MgO)である。
各表に示す組成になるように各成分の原料を調合し、ガラス基板用成分のガラス母組成原料100質量部に対し、硫酸塩をSO換算で0.1質量部原料に添加し、さらに、Fe成分が所定の量になるように原料に添加し、白金坩堝を用いて1600℃の温度で3時間加熱し溶解した。溶解にあたっては、白金スターラーを挿入し1時間攪拌しガラスの均質化を行った。次いで、溶融ガラスを流し出し、板状に成形後冷却し、ガラス板を得た。
(ガラス板の評価)
こうして得られたガラス板のガラス転移点温度Tg(℃)、平均熱膨張係数(×10−7/℃)、密度(g/cm)、β−OH(mm−1)、発電効率(%)、直列抵抗(Ω)を測定した。結果を各表に併せて示す。以下に各物性の測定方法を説明する。
(1)Tg:ガラス転移点温度TgはTMA(熱機械分析装置)を用いて測定し、JIS R3103−3(2001年度)により求めた。
(2)平均熱膨張係数:平均熱膨張係数は、50〜350℃の範囲で、示差熱膨張計(TMA)を用いて測定し、JIS R3102(1995年度)により求めた。
(3)密度:ガラス板を用いて、アルキメデス法により測定した。
(4)β−OH:β−OHは、FTIR装置を用い、波長2700nmにおける光吸収から、以下の方法により算出した。
まず、ガラス板の波長2500〜6500nmにおける透過率および反射率を測定した。波長2700nm付近での吸収の極大での透過率をT、反射率をRとする。内部透過率Tは、下記式より求めることができる。
=1−T−R
ガラス板の厚みをd(mm)とすると、β−OH(mm−1)は、下記式より求めることができる。
(β−OH)=(1/d)×Log10{1/T
(5)発電効率:得られたガラス板を太陽電池用ガラス基板に用い、以下に示すように評価用太陽電池を作製し、これを用いて発電効率について評価を行った。
評価用太陽電池の層構成は、上記した図1に示す太陽電池のカバーガラス19及び反射防止膜17を備えない以外は、図1に示す太陽電池の層構成とほぼ同様である。
得られたガラス板を大きさ3cm×3cm、厚さ1.1mmに加工し、ガラス基板を得た。ガラス基板の上に、スパッタ装置にて、プラス電極としてMo(モリブデン)膜を成膜した。成膜は室温にて実施し、厚み500nmのMo膜を得た。
プラス電極(Mo膜)上にスパッタ装置にて、CuGa合金ターゲットでCuGa合金層を成膜し、続いてInターゲットを使用してIn層を成膜することで、In−CuGaのプリカーサ膜を成膜した。成膜は室温にて実施した。蛍光X線によって測定したプリカーサ膜の組成が、Cu/(Ga+In)比が0.8、Ga/(Ga+In)比が0.25となるように各層の厚みを調整し、厚み650nmのプリカーサ膜を得た。
プリカーサ膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いてアルゴンおよびセレン化水素混合雰囲気(セレン化水素はアルゴンに対し5体積%、「セレン雰囲気」と呼ぶ)にて加熱処理した。
まず、第1段階としてセレン雰囲気中において450℃で30分保持を行い、Cu、InおよびGaとSeとを反応させた後、第2段階として硫化水素雰囲気(硫化水素はアルゴンに対し5体積%)に置換した。その後、さらに580℃で30分保持してCIGS結晶を成長させることでCIGS層を得た。
得られたCIGS層の厚みは約2μmであった。
CIGS層上にCBD(Chemical Bath Deposition)法にて、バッファ層としてCdS層を成膜した。具体的には、まず、ビーカー内で、濃度0.01Mの硫酸カドミウム、濃度1.0Mのチオウレア、濃度15Mのアンモニア、および純水を混合させた。次に、CIGS層を上記混合液に浸し、ビーカーごと予め水温を70℃にしておいた恒温バス槽に入れ、CdS層を50〜80nm成膜した。
さらに、CdS層上にスパッタ装置にて、透明導電膜を以下の方法で成膜した。まず、ZnOターゲットを使用してZnO層を成膜し、次に、AZOターゲット(Alを1.5質量%含有するZnOターゲット)を使用してAZO層を成膜した。各層の成膜は室温にて実施し、厚み480nmの2層構成の透明導電膜を得た。
透明導電膜のAZO層上にEB蒸着法により、U字型のマイナス電極として膜厚1μmのアルミ膜を成膜した(U字の電極長(縦8mm、横4mm)、電極幅0.5mm)。
最後に、メカニカルスクライブによって透明導電膜側からCIGS層までを削り、セル化を行った。一つのセルは幅0.6cm、長さ1cmで、マイナス電極を除いた面積が0.51cmであり、合計8個のセルを1枚のガラス基板5上に形成した。
ソーラーシミュレータ(山下電装株式会社製、YSS−T80A)に、評価用CIGS太陽電池(上記8個のセルを作製した評価用ガラス基板5a)を設置し、あらかじめInGa溶剤を塗布したプラス電極にプラス端子を、マイナス電極のU字の下端にマイナス端子をそれぞれ電圧発生器に接続した。ソーラーシミュレータ内の温度は25℃一定に温度調節機にて制御した。疑似太陽光を照射し、60秒後に、電圧を−1Vから+1Vまで0.015V間隔で変化させ、8個のセルのそれぞれの電流値を測定した。
この照射時の電流と電圧特性から発電効率を下記式(1)により算出した。8個のセルのうち最も効率の良いセルの値を、各ガラス基板の発電効率の値として各表に示す。試験に用いた光源の照度は0.1W/cmであった。
発電効率[%]=Voc[V]×Jsc[A/cm]×FF[無次元]×100/試験に用いる光源の照度[W/cm] 式(1)
発電効率は、式(1)に示す通り、開放電圧(Voc)と短絡電流密度(Jsc)と曲線因子(FF)の掛け算で求めることができる。
なお、開放電圧(Voc)は端子を開放したときの出力であり、短絡電流(Isc)は短絡したときの電流である。短絡電流密度(Jsc)はマイナス電極を除いたセルの面積でIscを割ったものである。
また、最大の出力を与える点が最大出力点と呼ばれ、その点の電圧が最大電圧値(Vmax)、電流が最大電流値(Imax)と呼ばれる。最大電圧値(Vmax)と最大電流値(Imax)の掛け算の値を、開放電圧(Voc)と短絡電流(Isc)の掛け算の値で割った値が曲線因子(FF)として求められる。上記の値を使用し、発電効率を求めた。
(6)直列抵抗(Rser)
直列抵抗(Rser)は素子を電流が流れる時の抵抗成分であり、光照射時に、電圧が開放電圧(Voc)と等しいときの、電圧に対する電流の勾配である。この関係を用いて、上記した評価用太陽電池の直列抵抗を求めた。
(ガラス板のその他成分)
ガラス中のSO残存量は100〜1000ppmであった。
なお、ガラス組成物中のSOの残存量は、ガラス板から切り出したガラスの塊を粉末状にして蛍光X線で評価し、測定した。
また、例1〜13のガラスは、意図的にTiOを含有させていないが、原料から不可避に混入した量は、ともに100〜500ppmであった。
なお、ガラス組成物中のTiOの含有量は、ガラス板から切り出したガラスの塊を粉末状にして蛍光X線で評価し、測定した。
Figure 2016102058
Figure 2016102058
表1及び表2より明らかなように、実施例(例1〜7)のガラス基板は、Al−NaO−KO−MgOが−4以上5以下であり、鉄量とβ−OHのバランスが良く、直列抵抗が低く、発電効率が高かった。
また、実施例のガラス基板は、ガラス転移点温度Tgが640℃以上と高く、平均熱膨張係数が60×10−7〜110×10−7/℃であり、密度が2.9g/cm以下であり、太陽電池用ガラス基板の特性をバランスよく有している。
したがって、実施例のガラス基板は、高い発電効率、高いガラス転移点温度、所定の平均熱膨張係数をバランスよく有する。そのため、CIGS層がMo膜付ガラス基板から剥離することがない。さらに太陽電池を組立てる際、ガラス基板が変形しにくく発電効率により優れる。例えば、CIGS層を有するガラス基板とカバーガラスとを加熱して貼り合わせる際に、ガラス基板の変形を防止できる。
ガラス母組成Aを用いた例1〜3、及びガラス母組成を用いた例4〜7では、Fe量が増加するにつれて直列抵抗が低下する傾向が見られた。
また、例1〜3、及び例4〜7では、β−OHが増加するにつれて発電効率が高まる傾向が見られた。
例8では、β−OHが少なく、共通するガラス母組成Aの例1〜3に比べ、直列抵抗及び発電効率が低下した。
例9では、β−OH及び鉄成分が少なく、共通するガラス母組成Bの例4及び5に比べ、直列抵抗及び発電効率が低下した。
例10〜13では、Al−NaO−KO−MgOが−4未満であり、発電効率を十分に得ることができず、また、Tgが低かった。
例10及び11では、さらにBaO量が多く、発電効率の低下に影響した。
例12及び13では、さらにSrO量及びBaO量が少なく、発電効率の低下に影響した。
本発明に係る太陽電池用ガラス基板は、高い発電効率、高いガラス転移点温度、所定の平均熱膨張係数、低いガラス密度をバランスよく有する。好ましくは、CIGS太陽電池用のガラス基板やカバーガラス等として利用できる。また、本発明に係る太陽電池用ガラス基板を用いることで発電効率の高い太陽電池を提供できる。
1 太陽電池
5 ガラス基板
7 プラス電極
9 CIGS層
11 バッファ層
13 透明導電膜
15 マイナス電極
17 反射防止膜
19 カバーガラス

Claims (7)

  1. 酸化物基準の質量百分率表示で、ガラス母組成として、SrOを5〜13.0%、BaOを0.5〜4.0%、KOを3.5〜15%、Alを11〜20%含み、MgO+CaO+SrO+BaOが13〜21%、Al−NaO−KO−MgOが0.00〜5.00%、(2×NaO−2×MgO−CaO)/(NaO/KO)が2以上であり、前記ガラス母組成100質量部に対しFeをFe換算で0.08〜0.5質量部含み、β−OHが0.12mm−1〜0.4mm−1である、太陽電池用ガラス基板。
  2. 前記ガラス母組成100質量部に対しFeがFe換算で0.11%以上である、請求項1に記載の太陽電池用ガラス基板。
  3. 前記ガラス母組成は、酸化物基準の質量百分率表示で、
    SiOを45〜70%、
    Alを11〜20%、
    を0.5%以下、
    MgOを0〜6%、
    CaOを4〜12%、
    SrOを5〜13.0%、
    BaOを0.5〜4%、
    ZrOを0〜8%、
    NaOを4.5〜10%、
    Oを3.5〜15%含み、
    MgO+CaO+SrO+BaOが13〜21%、
    NaO+KOが8〜20%、
    NaO/KOが0.7〜2.0、
    Al−NaO−KO−MgOが0.00〜5%である、請求項1または2に記載の太陽電池用ガラス基板。
  4. Al−NaO−KO−MgOが2.00%以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池用ガラス基板。
  5. 前記ガラス母組成100質量部に対しFeをFe換算で0.11〜0.35質量部含み、β−OHが0.13mm−1〜0.35mm−1である、請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池用ガラス基板。
  6. SiO/Alが2.6〜5.3である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用ガラス基板。
  7. ガラス基板と、カバーガラスと、前記ガラス基板と前記カバーガラスとの間に配置される光電変換層と、を有し、前記ガラス基板と前記カバーガラスのうち少なくとも一方が、請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池用ガラス基板である、太陽電池。
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