JP6593726B2 - 太陽電池用ガラス板 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池用ガラス板に関し、特にCIS系太陽電池、CIGS系太陽電池に代表されるカルコパイライト系太陽電池、CZTS系太陽電池に代表されるケステライト系太陽電池、CdTe系太陽電池、色素増感太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池等の各種太陽電池の基材又はカバーガラスに好適な太陽電池用ガラス板に関する。
薄膜太陽電池、例えばCIGS系太陽電池では、Cu、In、Ga、Seからなるカルコパイライト型化合物半導体、Cu(In,Ga)Seが光電変換膜としてガラス基材上に形成される。
カルコパイライト型化合物は、ガラス基材上に多元蒸着法、セレン化法等によりCu、In、Ga、Seを塗布して、500℃程度以上の熱処理を行うことにより形成される。
CIGS系太陽電池を作製する際、CIGS膜を高温で成膜すると、アルカリイオンがガラス基材からCIGS膜に拡散するため、CIGS膜の結晶品位が改善されて、光電変換効率が向上すると考えられていた。そこで、ガラス基材の耐熱性を高めるために、高歪点ガラス板を使用することが検討されている。例えば、特許文献1には、550℃以上の高温で光電変換膜を成膜するために、高歪点ガラス板を用いることが記載されている。特許文献2には、歪点が600℃超の高歪点ガラス板が記載されている。
特開平11−135819号公報 特開2013−018698号公報
ところで、CIGS系太陽電池において、膜構成元素、特にIn,Ga元素の深さ方向の組成プロファイルを最適化すると、CIGS膜中の深さ方向のバンドギャップ構造を最適化することができる。深さ方向の組成プロファイルを最適化するためには、セレン化法ではプリカーサ膜を多層化し、多元蒸着法では各蒸着源からの蒸着量を厳密に管理することになる。
しかし、CIGS膜の成膜温度が高過ぎる場合、膜成分が、熱拡散によりCIGS膜内を移動し易くなる。このため、CIGS膜中の深さ方向のバンドギャップ構造を最適化し難くなる。また、CuSeに代表される低抵抗相が形成されて、CIGS膜のシャントが発生する確率も高まる。結果として、CIGS膜の成膜温度が高過ぎると、CIGS系太陽電池の光電変換効率が低下する虞がある。
一方、CIGS膜の成膜温度を低下させると、成膜装置の低コスト化、成膜工程の短時間化、成膜後のCIGS膜の蒸発又は揮発の防止、CIGS膜の深さ方向バンドギャップ構造の最適化を図ることができると考えられるが、特許文献1、2に記載の高歪点ガラス板を基材に用いる場合、CIGS膜の成膜温度を低下させると、アルカリイオン、特にナトリウムイオンの拡散が不十分になり、CIGS膜の結晶品位の改善効果を享受できなくなる。
また、汎用のソーダ石灰ガラス板は、ガラス組成中にNaOを12〜14質量%含み、歪点が510℃程度と低いため、CIGS膜の成膜時にナトリウムイオンをCIGS膜へ拡散させ易い性質を有している。その一方で、ソーダ石灰ガラス板は、耐候性が低いため、ガラス中のアルカリ成分が大気中の水分や炭酸ガス成分と結合することにより、ガラス基材の表面にアルカリ塩を不均質に析出させ易い性質を有する。析出したアルカリ塩は、洗浄により表面から脱離するが、この場合、ガラス基材の表面近傍のアルカリ分布が不均質になる。結果的に、ガラス基材からのアルカリ成分、特にナトリウムイオンの拡散が不均質になり、ガラス基材上にCIGS結晶を均質に形成することが困難になる。なお、汎用のソーダ石灰ガラスは、低温(例えば550℃未満)の熱処理でも、熱変形や熱収縮のばらつきが大きいため、パターニング不良を招来させる虞もある。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、CIGS膜の成膜温度を低下させても、アルカリイオンの拡散を適正化し得るガラス板を創案することにより、CIGS膜の結晶品位を適正化し、CIGS系太陽電池の光電変換効率を高めることである。
本発明者は、鋭意検討した結果、ガラス組成範囲を厳密に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、NaO 4.4〜30%、KO 0〜20%、ZrO 0〜5%を含有することを特徴とする。
本発明の太陽電池用ガラス板は、上記のようにガラス組成範囲を規制している。このようにすれば、CIGS膜の成膜温度を低下させても、ナトリウムイオンの拡散を適正化させることができる。またCIGS膜の剥離を抑制することができる。更にガラス表面へのアルカリ塩の偏析や不均質なアルカリ脱離を抑制することができる。結果として、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
また、上記のようにガラス組成範囲を規制すれば、高温粘性を低下させつつ、液相粘度を高め易くなり、高品位なガラス板を高い歩留りで作製し易くなる。更に安価な原料構成が選択可能になるため、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。
第二に、本発明の太陽電池用ガラス板は、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.3〜1.0であることが好ましい。ここで、「MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO」は、MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO及びKOの合量を指す。「NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)」は、NaOの含有量をMgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KOの含有量で割った値を指す。
第三に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 5〜18%、B 0〜4%、MgO 0〜3.4%、CaO 0〜2%未満、MgO+CaO 2〜5.4%、LiO 0〜2%、NaO 4.6〜30%、KO 0〜4%未満、ZrO 0〜3%、SiO+Al+MgO+CaO+NaO+KO 90%以上を含有することが好ましい。ここで、「MgO+CaO」は、MgOとCaOの合量を指す。「SiO+Al+MgO+CaO+NaO+KO」は、SiO、Al、MgO、CaO、NaO及びKOの合量を指す。
第四に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 0〜30%、B 0〜3.5%、MgO 3.4超〜20%、CaO 1.0超〜20%、NaO 5.5〜23%、KO 1.4〜20%、ZrO 0〜1.9%を含有し、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.47〜0.79であることが好ましい。
第五に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 3〜30%、B 0〜1.5%未満、MgO 3.4超〜20%、CaO 1.0超〜20%、NaO 4.4〜23%、KO 0.5〜20%、ZrO 0〜1.9%を含有し、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.46〜0.82であることが好ましい。
第六に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 10〜30%、B 0〜10%、MgO 3.3超〜20%、CaO 0〜20%、NaO 11.5超〜30%、KO 0〜1.5%、ZrO 0〜3%未満を含有することが好ましい。
第七に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 4.7超〜30%、B 0〜3.5%、MgO 4.0超〜20%、CaO 0.3〜20%、NaO 4.9〜23%、KO 1.4〜20%、ZrO 0〜1.9%を含有し、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.46〜0.80であることが好ましい。
第八に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 2.5〜30%、B 0〜20%、MgO 3.1〜20%、CaO 1.0超〜20%、NaO 4.4〜23%、KO 1〜20%、ZrO 0〜1.9%を含有し、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.46〜0.81であることが好ましい。
第九に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 3〜30%、B 0〜3%、MgO 3.2〜5.1%、CaO 1.0超〜20%、NaO 6〜23%、KO 2〜20%、ZrO 0〜5%未満を含有し、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.49〜0.78であることが好ましい。
第十に、本発明の太陽電池用ガラス板は、歪点が560℃以下であることが好ましい。このようにすれば、CIGS膜の成膜温度を低下させた場合に、アルカリイオン、特にナトリウムイオンの拡散を適正化し易くなる。また成膜装置で使用するエネルギーの低減、太陽電池製造装置への負荷の低減、成膜時の高温工程でのCIGS膜成分の揮発や蒸発を抑制し得るため、光電変換膜を安価に形成することができる。更にCIGS膜成分の過剰拡散を抑制し得るため、バンドギャップ構造の最適化が容易になる。結果として、光電変換効率の高い太陽電池を安価に作製することができる。ここで、「歪点」は、ASTM C336−71に基づいて測定した値を指す。
第十一に、本発明の太陽電池用ガラス板は、ナトリウム溶出量が0.3mg以下であることが好ましい。このようにすれば、大気中の水分や炭酸ガス成分とガラス中のアルカリ成分とが反応し難くなるため、ガラス表面のアルカリ成分の偏析を抑制することができる。結果として、ガラス基材の面方向に均質な光電変換膜を形成し易くなる。ここで、「ナトリウム溶出量」は、JIS R 3502に基づく方法により測定した値であり、例えばナトリウム溶出量の特定に際し、原子吸光分析装置を用いることができる。
第十二に、本発明の太陽電池用ガラス板は、熱膨張係数が80〜110×10−7/℃であることが好ましい。このようにすれば、ガラス板と光電変換膜、電極膜との熱膨張係数差による膜剥離を低減することができる。また光電変換膜に発生する応力を適正化することができる。結果として、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターにより30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した値を指す。
第十三に、本発明の太陽電池用ガラス板は、104.0dPa・sにおける温度が1200℃未満であることが好ましい。このようにすれば、板成形に必要なエネルギーを低減することができる。特にフロート法でガラス板を安価に作製することができる。ここで、「104.0dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
第十四に、本発明の太陽電池用ガラス板は、102.5dPa・sにおける温度が1600℃未満であることが好ましい。このようにすれば、ガラス溶解窯への負荷が低減されるため、ガラス溶融に必要なエネルギーを低減でき、ガラス板を安価に作製することができる。ここで、「102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
第十五に、本発明の太陽電池用ガラス板は、液相粘度が103.7dPa・s以上であることが好ましい。このようにすれば、フロート法、オーバーフローダウンドロー法等により、表面品位が高いガラス板を作製し易くなる。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、この白金ボートを温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値を指す。
第十六に、本発明の太陽電池用ガラス板は、イオン交換による表面圧縮応力層を有していないことが好ましい。このようにすれば、イオン交換処理が不要になるため、ガラス板の製造コストを低廉化し易くなる。
第十七に、本発明の太陽電池用ガラス板は、イオン交換による表面圧縮応力層を有していることが好ましい。このようにすれば、ガラス板の機械的強度を高めることができる。
第十八に、本発明の太陽電池用ガラス板は、圧縮応力層の圧縮応力値が200〜1200MPa、圧縮応力層の厚みが5〜60μmであることが好ましい。
第十九に、本発明の太陽電池用ガラス板は、カルコパイライト太陽電池の基材に用いることが好ましい。
第二十に、本発明の太陽電池用ガラス板は、薄膜太陽電池又は色素増感太陽電池の基材に用いることが好ましい。
第二十一に、本発明の太陽電池用ガラス板は、太陽電池のカバーガラスに用いることが好ましい。このようにすれば、基材とカバーガラスの熱膨張特性を一致させることができるため、基材とカバーガラスの熱膨張係数差による太陽電池(特に薄膜太陽電池)の反りを改善することができる。
第二十二に、本発明のガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 4.7超〜30%、B 0〜1.5%未満、MgO 3.4超〜20%、CaO 1.0超〜20%、NaO 5.6〜23%、KO 1.4〜20%、ZrO 0〜1.9%、ZnO 0〜5%を含有し、質量比NaO/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)が0.49〜0.80であることを特徴とする。
第二十三に、本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、NaO 4.4〜30%、KO 0〜20%、ZrO 0〜5%を含有することを特徴とする。なお、本発明のガラスは、各種太陽電池の基材やカバーガラスに限られず、太陽電池に用いられるガラス管に適用することもできる。
本発明の太陽電池用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、NaO 4.4〜30%、KO 0〜20%、ZrO 0〜5%を含有することを特徴とする。上記のように、各成分の含有量を規制した理由を下記に示す。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、質量%を指す。
SiOは、ガラスネットワークを形成する成分である。その含有量は50〜80%である。SiOの含有量が多過ぎると、高温粘度が不当に高くなり、溶融性や成形性が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が低くなり過ぎて、CIGS系太陽電池の電極膜、CIGS膜の熱膨張係数に整合させ難くなる。一方、SiOの含有量が少な過ぎると、耐失透性、化学的耐久性、耐候性が低下し易くなる。また原料コストが高騰し易くなる。更に熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなり、結果として、成膜工程でガラス板に割れが発生し易くなる。したがって、SiOの好適な下限範囲は55%以上、58%以上、特に61%以上であり、好適な上限範囲は75%以下、70%以下、特に67%以下である。
Alは、歪点を高める成分であると共に、耐候性、化学的耐久性を高める成分であり、更にはガラス表面の硬度を高める成分である。またアルカリイオンの拡散性を高める成分である。Alの含有量は0〜30%である。Alの含有量が多過ぎると、高温粘度が不当に高くなり、溶融性や成形性が低下し易くなる。一方、Alの含有量が少な過ぎると、歪点が低下し易くなる。なお、ガラスの表面硬度が高いと、CIGS系太陽電池のパターニングにおいて、CIGS膜を除去する工程で、ガラス板が破損し難くなる。Alの好適な下限範囲は2.5%以上、3%以上、4%以上、4.7超%、5%以上、7%以上、特に10%以上であり、好適な上限範囲は25%以下、20%以下、18%以下、特に15%以下である。
は、高温粘度を低下させて、溶融温度や成形温度を低下させる成分であり、また耐失透性を改善する成分であるが、溶融時の成分蒸発に伴い、炉耐火物材料を消耗させる成分であり、また原料コストを高騰させる成分である。よって、Bは任意成分であり、好適な上限範囲は20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3.52%以下、3.5%以下、3%以下、1.5%未満、特に1%以下である。
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、MgOは、アルカリ土類酸化物の中では、ガラスを割れ難くする効果が大きい成分である。しかし、MgOは、液相粘度を低下させ易い成分である。またCaOと共存する場合に、CaMgSiO系の失透結晶を析出させ易い成分である。よって、MgOの含有量は0〜20%である。MgOの好適な下限範囲は1%以上、2%超、3.1%以上、3.1%超、3.2%以上、3.3%超、3.4%超、特に3.5%以上であり、高温粘性の低下を優先する場合、3.7%以上、特に4%超であり、MgOの好適な上限範囲は10%以下、8%以下、6%以下、5.1%以下、特に5%以下であり、耐失透性の向上を優先する場合、4%以下、4%未満、3.4%以下、特に3%以下である。
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、アルカリ土類成分の内、最も安価に導入し得る成分である。CaOの含有量は0〜20%である。CaOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下して、ガラス板に成形し難くなる。CaOの好適な下限範囲は0.3%以上、0.5%以上、1%超、1.5%超であり、高温粘性と原料コストの低下を優先する場合、2%超、特に3%以上であり、好適な上限範囲は10%以下、8%以下、特に5%以下であり、耐失透性の向上を優先する場合、3%以下、特に2%未満である。
SrOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、またアルカリ溶出量を低減させる成分であり、更にCIGS膜へのアルカリイオン拡散量を調整し得る成分であるが、原料コストを高騰させる成分である。よって、SrOは任意成分であり、その含有量は0〜20%が好ましい。SrOの含有量が多過ぎると、長石族の失透結晶が析出し易くなり、また密度が増大して、太陽電池の支持部材のコストが高騰し易くなる。更にガラス基材からアルカリイオンの拡散を不当に抑制する虞がある。SrOのより好適な範囲は8%以下、5%以下、3%以下、2%以下、2%未満、特に1%以下である。
BaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、またアルカリ溶出量を低減させる成分であり、更にCIGS膜へのアルカリイオン拡散量を調整し得る成分であるが、原料コストを高騰させる成分である。よって、BaOは任意成分であり、その含有量は0〜20%が好ましい。BaOの含有量が多過ぎると、バリウム長石族の失透結晶が析出し易くなり、また密度が増大して、太陽電池の支持部材のコストが高騰し易くなる。更にガラス基材からアルカリイオンの拡散を不当に抑制する虞がある。BaOのより好適な範囲は8%以下、5%以下、3%以下、2%以下、2%未満、特に1%以下である。
LiOは、熱膨張係数を調整し得る成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であるが、原料コストを高騰させる成分であり、更にアルカリイオン同士の拡散の競合により、ナトリウムイオンの拡散を抑制させる成分である。よって、LiOは任意成分であり、その含有量は10%以下、2%以下、1%以下、特に0.1%未満が好ましい。
NaOは、熱膨張係数を調整し得る成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、NaOは、CIGS系太陽電池において、CIGS結晶の成長に効果的な成分であり、光電変換効率を高めるために重要な成分である。よって、NaOの含有量は4.4〜30%である。NaOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、熱膨張係数が不当に上昇して、耐熱衝撃性が低下し易くなる。結果として、成膜工程で、ガラス板に熱収縮や熱変形が生じたり、割れが発生し易くなる。また太陽電池膜へ不当な応力が発生し易くなる。NaOの好適な下限範囲は4.6%以上、4.6%超、4.9%以上、5%以上、特に5.5%以上であり、CIGS結晶の成長を優先する場合、6%以上、7%以上、9%以上、10%以上、特に11.5%超であり、好適な上限範囲は23%以下、22%以下、20%以下、18%以下、特に15%以下、歪点の維持を優先する場合、13%以下、特に11%以下である。
Oは、熱膨張係数を調整し得る成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。その一方で、KOの導入量は、カリウムイオンの拡散がナトリウムイオンの拡散と競合するため、ある程度規制される。また、Alを多く含むガラス系において、KOの含有量が多過ぎると、カリウム長石族の失透が形成され易くなる。更に、KOの含有量が多過ぎると、CIGS膜へのナトリウムイオンの拡散量が減少して、高品位のCIGS膜を形成し難くなったり、原料コストが高騰し易くなる。更に、KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなって、耐熱衝撃性が低下し易くなる。結果として、成膜工程で、ガラス板に熱収縮や熱変形が生じたり、割れが発生し易くなる。よって、KOの含有量は0〜20%であり、好適な下限範囲は0.45%以上、0.5%以上、1%以上、1.34%以上、特に1.4%以上であり、高温粘度の低下を優先する場合、2%以上、3.39%以上、特に4.5%以上であり、好適な上限範囲は10%以下、8%以下、7%以下、6%以下、特に5%以下であり、耐失透性の向上やナトリウムイオンの拡散性を優先する場合、4%以下、4%未満、特に1.5%以下である。
SiO+Al+MgO+CaO+NaO+KOは、ガラス組成中の主要成分の合量である。SiO+Al+MgO+CaO+NaO+KOの含有量が少な過ぎると、高価な成分を導入する必要があり、原料コストが高騰する虞がある。よって、SiO+Al+MgO+CaO+NaO+KOの好適な範囲は85%以上である。好ましい下限範囲は90%以上、92%以上、95%以上、特に98%以上である。一方、清澄剤、着色剤を導入したり、不純物を含む原料を使用する場合、SiO+Al+MgO+CaO+NaO+KOの上限含有量が制限される。好適な上限範囲は99.95%以下、99.9%以下、特に99.8%以下である。
MgOとCaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、高温粘度を低下させることにより、ガラス溶解窯内の上昇流、下降流、バッチ投入口方向への後退流の移動速度を高めて、溶融ガラスを均質化させる成分である。また、MgO+CaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では、ガラスの割れ難さを最も維持させると共に、密度を最も低下させる2成分の総和である。MgO+CaOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。一方、MgO+CaOの含有量が少な過ぎると、ガラス溶解窯内で溶融ガラスの移動速度が低下して、溶融ガラスが均質化されず、結果として、溶融性や成形性が低下する傾向がある。よって、MgO+CaOの含有量は0〜40%である。好適な下限は1%以上、2%以上、2%超、3%以上、4.2%以上、特に4.5%以上であり、溶融ガラスの均質化を優先する場合、5%以上、特に6%以上であり、好適な下限は12%以下、10%以下、9%以下、8%以下、特に8%未満であり、耐失透性の向上を優先する場合、5.4%以下、特に5%以下である。なお、「MgO+CaO」は、MgOとCaOの合量である。
LiO+NaO+KOは、アルカリ金属酸化物の総量である。LiO+NaO+KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。結果として、成膜工程で、ガラス板に熱収縮や熱変形が生じたり、割れが発生し易くなる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が少な過ぎると、熱膨張係数が低くなり、光電変換膜との熱膨張係数の不一致により膜剥がれが発生し易くなる。また、光電変換効率を高める効果を享受し難くなる。よって、LiO+NaO+KOの含有量は5.2〜40%が好ましい。好適な下限範囲は5.5%以上、6%以上、8%以上、特に10%以上であり、好適な上限範囲は30%以下、25%以下、22%以下、20%以下、17%以下、特に15%以下である。なお、「LiO+NaO+KO」は、LiO、NaO及びKOの合量である。
NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)は、ガラスネットワークを修飾する成分の合量に対するNaOの比率である。NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が少ないと、ナトリウムイオンが少なくなること、ナトリウムイオンの拡散を抑制するアルカリ土類が多くなること、或いはナトリウムイオンの拡散と競合するアルカリイオンが多くなることにより、CIGS膜へ拡散するナトリウムイオンが少なくなる。結果として、太陽電池の高効率化を達成し難くなる。一方、NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が大きいと、ガラスネットワークを修飾する成分の内、NaOの割合が高くなり過ぎて、耐候性が低下する虞がある。また、ガラス表面へアルカリ塩が偏析して、均質なCIGS膜を成膜し難くなったり、歪点が低くなり過ぎて、ナトリウムイオンがCIGS膜に過剰に供給されて、太陽電池の光電変換効率が低下する虞がある。よって、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)は0.3〜1.0が好ましい。好適な下限範囲は0.46以上、0.47以上、0.49以上、0.495以上、0.50以上、0.51以上、0.52以上、0.53以上、0.54以上、特に0.55以上であり、好適な下限範囲は0.82以下、0.81以下、0.80以下、0.79以下、0.78以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、特に0.58以下である。
NaO/(LiO+NaO+KO)は、一価のカチオンであるアルカリイオンが拡散する際に、ナトリウムイオンが拡散する優先度合いを示している。NaO/(LiO+NaO+KO)が少ないと、CIGS膜へ拡散するアルカリイオンの内、ナトリウムイオンの割合が少ないことを示し、太陽電池の高効率化を達成し難くなる。よって、質量比NaO/(LiO+NaO+KO)は0.1〜1.0が好ましい。好適な下限範囲は0.5以上、0.6以上、0.7以上、特に0.75以上であり、好適な上限範囲は0.95以下、0.9以下、0.85以下、特に0.8以下である。なお、「NaO/(LiO+NaO+KO)」は、NaOの含有量をLiO+NaO+KOの含有量で割った値である。
ZrOは、高温粘度を上げずに、歪点を高める成分である。しかし、ZrOの含有量が多過ぎると、密度や原料コストが高くなり易く、またガラスが割れ易くなり、更にはZrO系の失透結晶が析出し易くなり、ガラス板に成形し難くなる。よって、ZrOは任意成分であり、好適な上限範囲は5%以下、5%未満、4.5%以下、3%以下、3%未満、1.95%以下、1.9%以下、1.8%以下、1%以下、特に0.5%以下が好ましい。
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を導入してもよい。
ガラス中のFeはFe2+又はFe3+の状態で存在するが、特にFe2+は近赤外領域に強い光吸収特性を有する。このため、Fe2+は、大容量のガラス溶解窯において、ガラス溶解窯内の輻射エネルギーを吸収し易く、溶融効率を高める効果を有する。また、Fe3+は、鉄の価数変化の際に酸素を放出するため、清澄効果も有する。
ガラス板の製造コストを低廉化するために、高純度原料(Feの含有量が極めて少ない原料)の使用を制限して、少量のFeを含む原料を使用することが好ましい。一方、Feの含有量が多過ぎると、太陽光を吸収し易くなるため、太陽電池の表面温度が上昇し易くなり、結果として、太陽電池の光電変換効率が低下する虞がある。また、Feの含有量が多過ぎると、窯の輻射エネルギーが、エネルギー源の近傍で吸収されて、窯の中央部に到達せず、ガラス溶解窯の熱分布にムラが生じ易くなる。よって、Feの含有量は0〜1%、特に0.01〜1%が好ましい。また、Feの好適な下限範囲は0.02%超、0.03%超、特に0.05%超である。なお、本発明では、酸化鉄は、Feの価数に係らず、「Fe」に換算して表記するものとする。
TiOは、紫外線による着色を防止すると共に、耐候性を高める成分である。しかし、TiOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透したり、ガラスが茶褐色に着色したり、原料コストが高騰し易くなる。よって、TiOの含有量は0〜10%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
は、耐失透性を高める成分、特にZrO系の失透結晶の析出を抑制する成分であり、またガラスを割れ難くする成分である。しかし、Pの含有量が多過ぎると、ガラスが乳白色に分相し易くなり、また原料コストが高騰し易くなる。よって、Pの含有量は0〜10%、0〜0.2%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
ZnOは、高温粘度を低下させる成分である。ZnOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなり、原料コストが高騰し易くなる。よって、ZnOの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、0〜0.1%が好ましい。
SOは、清澄剤として作用する成分であり、その含有量は0〜1%、特に0.01〜0.3%が好ましい。なお、フロート法で成形すると、大量のガラス板を安価に作製し得るが、この場合、清澄剤として芒硝を用いることが好ましい。
Clは、清澄剤として作用する成分であり、その含有量は0〜0.5%、0.01〜0.1%、特に0.001〜0.06%が好ましい。また、Clは、アルカリ塩として導入することが好ましい。
Sbは、清澄剤として作用する成分であるが、フロート法でガラス板を成形する場合、ガラスを着色させる成分であり、また環境的負荷が懸念される成分である。よって、Sbの含有量は0〜1%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
Asは、清澄剤として作用する成分であるが、フロート法でガラス板を成形する場合、ガラスを着色させる成分であり、また環境的負荷が懸念される成分である。よって、Asの含有量は0〜1%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
SnOは、清澄剤として作用する成分であるが、耐失透性を低下させる成分である。但し、ダウンドロー法による成形ではSnOを清澄剤とすることが好ましい。よって、SnOの含有量は0〜1%、特に0〜0.3%未満が好ましい。
上記成分以外にも、溶解性、清澄性、成形性を高めるために、F、CeOを各々1%、好ましくは0.5%まで添加してもよい。また、化学的耐久性を高めるために、Nb、HfO、Ta、Y、Laを各々3%、好ましくは1%まで添加してもよい。更に、色調の調整のために、上記以外の希土類酸化物、遷移金属酸化物を合量で2%、好ましくは1%まで添加してもよい。
本発明の太陽電池用ガラス板は、以下の特性を有することが好ましい。
熱膨張係数は80×10−7〜110×10−7/℃が好ましい。熱膨張係数の好適な下限範囲は83×10−7/℃以上、85×10−7/℃以上、90×10−7/℃以上、特に95×10−7/℃以上であり、好適な上限範囲は105×10−7/℃以下、103×10−7/℃以下、100×10−7/℃以下、特に95×10−7/℃以下である。このようにすれば、CIGS系太陽電池の電極膜、CIGS膜等の周辺部材の熱膨張係数に整合させ易くなる。なお、熱膨張係数が高過ぎると、耐熱衝撃性が低下し易くなり、結果として、成膜工程でガラス板に割れが発生し易くなる。
密度は2.75g/cm以下、2.6g/cm以下、2.55g/cm以下、特に2.50g/cm以下が好ましい。このようにすれば、太陽電池の支持部材のコストを低廉化し易くなる。なお、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定可能である。
歪点は475℃〜570℃が好ましい。歪点の好適な下限範囲は510℃超、515℃以上、520℃以上、特に525℃以上であり、好適な上限範囲は560℃以下、550℃以下、540℃以下、535℃以下、特に530℃以下である。このようにすれば、CIGS膜の成膜温度を低下させた場合に、アルカリイオンの拡散を適正化し易くなる。また膜構成成分の拡散が抑制されるため、バンドギャップの最適化が達成し易くなる。結果として、太陽電池の光電変換効率を十分に高めることが可能になる。
104.0dPa・sにおける温度は1230℃以下、1200℃以下、1180℃以下、特に1150℃以下が好ましい。このようにすれば、低温でガラス板を成形し易くなる。
102.5dPa・sにおける温度は1600℃以下、1550℃以下、特に1500℃以下が好ましい。このようにすれば、低温でガラス原料を溶解し易くなる。
液相温度は1200℃以下、1100℃以下、1050℃以下、特に1000℃以下が好ましい。液相温度が高くなると、成形時にガラスが失透し易くなり、成形性が低下し易くなる。
液相粘度は103.7dPa・s以上、104.0dPa・s以上、104.3dPa・s以上、104.5dPa・s以上、104.7dPa・s以上、特に105.0dPa・以上が好ましい。液相粘度が低くなると、成形時にガラスが失透し易くなり、成形性が低下し易くなる。
ナトリウム溶出量は0.3mg以下が好ましい。ナトリウム溶出量の好適な上限範囲は0.25mg以下、0.20mg以下、特に0.15mg以下である。このようにすれば、大気中の水分や炭酸ガスとガラス中のアルカリ成分との反応性が低下するため、ガラス表面に形成されるアルカリ塩の偏析を抑制することができる。結果として、CIGS膜等の太陽電池膜の均質性や耐剥離性が改善されて、太陽電池の光電変換効率を十分に高めることが可能になる。
本発明の太陽電池用ガラス板は、上記のガラス組成範囲になるように、調合済みのガラスバッチを連続溶融炉に投入し、加熱溶融した後、得られた溶融ガラスを脱泡した上で、成形装置に供給し、板状に成形、徐冷することにより、作製することができる。
ガラス板の成形方法としては、フロート法、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法等を例示し得るが、大量のガラス板を安価に作製したい場合、フロート法を採択することが好ましい。
本発明の太陽電池用ガラス板は、製造コストの観点から、イオン交換処理が行われていないことが好ましい。つまりイオン交換による表面圧縮応力層を有していないことが好ましい。このようにすれば、イオン交換処理が不要になるため、ガラス板の製造コストを低廉化し易くなる。また表面圧縮応力層の不存在により、ガラス板の切断加工、端面加工等の加工処理の効率も向上する。なお、成膜温度が高い場合、表面圧縮応力層が消失する虞があり、化学強化処理を行う実益が乏しくなる。
本発明の太陽電池用ガラスは、光電変換効率の観点から、イオン交換処理が行われていることが好ましい。つまりイオン交換による表面圧縮応力層を有することが好ましい。このようにすれば、イオン交換によりガラス表面のナトリウム濃度が減少するため、ガラス表面のナトリウム濃度が過剰である場合に、CIGS系太陽電池の光電変換効率を改善することができる(逆に言えば、ガラス表面のナトリウム濃度が過剰でない場合は、イオン交換による表面圧縮応力層を形成しないことが好ましい)。また、イオン交換によりガラス表面のナトリウム濃度を低減すると、太陽電池カバーガラスに用いる場合に、太陽電池モジュールに高電圧が印加された際に発生するPID現象を緩和することができる。
圧縮応力層の圧縮応力値は200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、600MPa以上、特に800MPa以上が好ましい。一方、ガラス表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、ガラス板に内在する引っ張り応力が極端に高くなり、ガラス板が自己破壊する虞がある。またイオン交換処理の前後でガラス板の寸法変化が大きくなる虞がある。よって、圧縮応力層の圧縮応力値は1200MPa以下が好ましい。
圧縮応力層の応力深さは1μm以上、5μm以上、10μm以上、特に20μm以上が好ましい。圧縮応力層の応力深さが大きい程、ガラス板に深い傷が付いても、ガラス板が割れ難くなると共に、機械的強度のばらつきが小さくなる。また、圧縮応力層の応力深さが大き過ぎると、ガラス板に内在する引っ張り応力が極端に高くなり、ガラス板が自己破壊する虞がある。更にガラス板の切断加工、端面加工等の加工処理の効率が低下し易くなる。よって、圧縮応力層の応力深さは60μm以下が好ましい。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1〜3は、本発明の実施例(試料No.1〜57)及び比較例(試料No.58)を示している。なお、試料No.58は、特許文献2の試料No.2に相当している。
次のようにして、試料No.1〜58を作製した。まず表中のガラス組成になるように調合したガラスバッチを白金坩堝に入れて、1550℃の電気炉内で2時間溶融した。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、平板形状に成形した後、徐冷した。その後、各測定に応じて、所定の加工を行った。得られた各試料について、熱膨張係数α、密度d、歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Ts、104.0dPa・sにおける温度、103.0dPa・sにおける温度、102.5dPa・sにおける温度、液相温度TL、液相粘度logηTL、ナトリウム溶出量、圧縮応力層の圧縮応力値CS、圧縮応力層の応力深さDOLを評価した。これらの結果を表1〜3に示す。
熱膨張係数αは、ディラトメーターにより30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した値である。なお、測定試料として、直径5.0mm、長さ20mmの円柱試料を用いた。
密度dは、公知のアルキメデス法で測定した値である。
歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Tsは、ASTM C336−71に基づいて測定した値である。
104.0dPa・sにおける温度、103.0dPa・sにおける温度及び102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。なお、104.0dPa・sにおける温度は、成形温度に相当しており、102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当している。
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、この白金ボートを温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。液相粘度logηTLは、液相温度TLにおけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。なお、液相温度が低い程、また液相粘度が高い程、耐失透性が向上し、成形時にガラス中に失透結晶が析出し難くなり、結果として、ガラス板を安価に作製し易くなる。
ナトリウムの溶出量は、JIS R3502に記載の方法により測定した値であり、溶液中のNaO濃度を原子吸光分析装置で測定し、そのNaO濃度からナトリウムの溶出量を計算したものである。なお、ナトリウムの溶出量は、耐候性や耐水性の目安になる。ナトリウムの溶出量が多い場合、大気中の水分や炭酸ガスとガラス板のガラス成分が反応し易く、アルカリ塩がガラス表面に析出し易いと言える。
次にようにして圧縮応力層の圧縮応力値CSと圧縮応力層の応力深さDOLを測定した。まず各試料の両表面に光学研磨を施した後、430℃のKNO溶融塩中に4時間浸漬することにより、イオン交換処理を行った。次に、得られた試料の表面を洗浄した。続いて、表面応力計(株式会社東芝製FSM−6000)を用いて観察される干渉縞の本数とその間隔から圧縮応力層の圧縮応力値CSと圧縮応力層の応力深さDOLを算出した。算出に当たり、各試料の屈折率を1.50、光学弾性定数を29.5[(nm/cm)/MPa]とした。
表1〜3から明らかなように、試料No.1〜57は、ガラス組成が所定範囲に規制されているため、歪点が478〜568℃であり、CIGS膜の成膜温度を低下させた場合、アルカリイオンの拡散を適正化し易くなるものと考えられる。また、試料No.1〜57は、熱膨張係数が81×10−7〜103×10−7/℃であるため、CIGS系太陽電池の電極膜、CIGS膜の熱膨張係数に整合させ易い。更に、試料No.1〜57は、104.0dPa・sにおける温度が1227℃以下、液相粘度が103.6dPa・s以上であるため、ガラス板の生産性に優れている。また、ナトリウム溶出量が0.042〜0.29mgであるため、アルカリ塩がガラス表面に析出し難い。更に、圧縮応力層の圧縮応力値が260〜955MPa、圧縮応力層の応力深さが9〜30μmであるため、機械的強度が高いものと考えられる。
一方、試料No.58は、歪点が高過ぎるため、CIGS膜中の深さ方向のバンドギャップ構造を最適化し難いものと考えられる。また、試料No.58は、NaOの含有量が少なく、質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が低過ぎるため、CIGS膜へのナトリウムイオンの拡散量が少なく、高品位のCIGS膜を形成し難いものと考えられる。

Claims (10)

  1. ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 2.5%、B 0〜20%、MgO 0〜20%、CaO 3.8〜20%、NaO 4.4〜30%、KO 0〜20%、ZrO 0〜5%を含有することを特徴とする太陽電池用ガラス板。
  2. 質量比NaO/(MgO+CaO+SrO+BaO+LiO+NaO+KO)が0.3〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用ガラス板。
  3. 歪点が560℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池用ガラス板。
  4. ナトリウム溶出量が0.3mg以下であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
  5. 熱膨張係数が80〜110×10−7/℃であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
  6. 104.0dPa・sにおける温度が1200℃未満であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
  7. 102.5dPa・sにおける温度が1600℃未満であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
  8. 液相粘度が103.7dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
  9. イオン交換による表面圧縮応力層を有していないことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
  10. カルコパイライト太陽電池の基材に用いることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の太陽電池用ガラス板。
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