本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、平均表面粗さ(Ra)は20Å以下であり、好ましくは10Å以下、より好ましくは7Å以下、更に好ましくは5Å以下、最も好ましくは2Å以下である。平均表面粗さ(Ra)が20Åより大きいと、薄膜化合物太陽電池の製造工程において、電極等の正確なパターニングを行うことが困難になり、その結果、電極が断線、ショートしやすくなり、薄膜化合物太陽電池の信頼性が損なわれる。また、ガラス基板の平均表面粗さ(Ra)が20Å以下であれば、レーザー光によるパターニング加工が容易になり、その結果、薄膜化合物太陽電池の大面積化を図ることができる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、その表面が未研磨であることが好ましい。ガラスの理論強度は本来非常に高いのであるが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラス基板の表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。よって、ガラス基板の表面を未研磨とすれば、本来のガラス基板の機械的強度を損ない難くなり、ガラス基板が破壊し難くなる。また、ガラス基板の表面を未研磨とすれば、ガラス基板の製造工程で研磨工程を省略できるため、ガラス基板の製造コストを下げることができる。本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、ガラス基板の両面全体を未研磨とすれば、ガラス基板が更に破壊し難くなる。特に、薄膜化合物太陽電池用カバーガラスは、太陽に対向するように設置されるため、耐衝撃性等の特性を向上させるべく、未研磨の表面を有することが好ましい。また、本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、ガラス基板の切断面から破壊に至る事態を防止するため、ガラス基板の切断面に面取り加工等を施してもよい。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、うねりは、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm未満が更に好ましく、0.01μm以下が最も好ましい。さらに、理想的には、実質的にうねりが存在しないことが望ましい。うねりが0.1μmより大きいと、薄膜化合物太陽電池の製造工程において、電極等のパターニング精度が低下し、結果として、電極等が断線、ショートする確率が上昇する。また、うねりが0.1μmより大きいと、レーザー光によるパターニング加工が困難になる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、最大板厚と最小板厚の差は20μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましい。ガラス基板の最大板厚と最小板厚の差が20μmより大きいと、電極等の配線密度を低下しなければ、薄膜化合物太陽電池の品質を担保することが困難になる。また、ガラス基板の最大板厚と最小板厚の差が20μmより大きいと、薄膜化合物太陽電池の製造工程において、電極等のパターニング精度が低下し、結果として、電極等が断線、ショートする確率が上昇する。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、目標板厚に対する誤差が10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。ガラス基板の目標板厚に対する誤差が10μmより大きいと、薄膜化合物太陽電池の製造工程において、電極等のパターニング精度が低下し、結果として、電極等が断線、ショートする確率が上昇する。
薄膜化合物太陽電池に使用されるガラス基板には、次のような特性も要求される。
(1)薄膜化合物形成時の熱処理工程では、高温で処理することにより高品位の膜が形成できるため、このような熱処理に耐える高い耐熱性を有すること。具体的には、耐熱性の指標となるガラスの歪点が高いこと。
(2)ガラス基板上に形成される薄膜化合物との熱膨張差による膜の剥離などを防ぐために、周辺部材と適合する熱膨張係数を有すること。
(3)薄膜化合物太陽電池全体の重量を軽減するために、低密度であること。
(4)ガラス基板の製造効率を高めるとともに、オーバーフローダウンドロー法等による成形性を向上させるために、ガラスの耐失透性が良好であること。
(5)光電変換効率に悪影響を及ぼすような内部欠陥が存在しないこと、特に泡欠陥が存在しないこと。
上記要求特性(1)〜(5)の特性等に関し、本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、好ましい特性値およびその限定理由を下記に説明する。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、ガラスの耐熱性の指標となる歪点が500℃以上(より好ましくは550℃以上、更に好ましくは600℃以上、特に好ましくは610℃以上、最も好ましくは630℃以上)であることが好ましい。歪点が高い程、ガラスの耐熱性が高くなり、薄膜化合物太陽電池の成膜工程、例えば、ガラス基板上に透明電極を形成するための熱CVD工程でガラス基板に熱変形や熱収縮等が生じ難くなる。また、高温での処理が可能になるため膜の品位が向上し、薄膜化合物太陽電池の特性が向上する。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、30〜380℃における熱膨張係数が50〜95×10−7/℃であり、好ましくは50〜90×10−7/℃であり、より好ましくは55〜85×10−7/℃、更に好ましくは60〜80×10−7/℃、特に好ましくは65〜80未満×10−7/℃、最も好ましくは65〜75×10−7/℃である。ガラス基板の熱膨張係数を上記範囲とすれば、基板上に形成される薄膜化合物、および金属、有機系接着剤等の部材と熱膨張係数が整合しやすくなり、それらの部材との剥離を防止することができる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、密度は3.7g/cm3以下であることが好ましく、3.0g/cm3以下であることがより好ましく、2.9g/cm3以下であることが更に好ましい。ガラスの密度が低い程、ガラス基板の軽量化を図ることができ、薄膜化合物太陽電池の軽量化に寄与することができる。密度が3.7g/cm3より大きいと、薄膜化合物太陽電池の軽量化に寄与し難くなる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、液相温度は1200℃以下が好ましく、1080℃以下がより好ましく、1050℃以下が更に好ましく、1000℃以下が最も好ましい。一般的に、オーバーフローダウンドロー法は、他の成形方法と比較して、成形時のガラスの粘度が高いため、ガラスの耐失透性が悪いと、成形中に失透ブツが発生し、ガラス基板に成形できなくなるおそれが生じる。具体的には、液相温度が1200℃より高いと、オーバーフローダウンドロー法の適用が困難になる。それ故、液相温度が1200℃より高いと、薄膜化合物太陽電池用ガラス基板の成形方法に不当な制約が課され、所望の表面形状のガラスを成形できなくなるおそれが生じる。なお、液相温度が低いほど、ガラスの耐失透性は良好である。一般的に、ガラスの特性改善は、何らかの特性を低下させることによって達成され、他の特性といわゆるトレードオフの関係となりやすい。ここで、粘度、密度、熱膨張係数等のガラスに要求される種々の特性を満たすためのバランスを考慮すると、ガラスの液相温度は850℃以上に設計することが目安となる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、液相粘度は104.5dPa・s以上が好ましく、105.0dPa・s以上がより好ましく、105.5dPa・s以上が更に好ましく、105.8dPa・s以上が最も好ましい。一般的に、オーバーフローダウンドロー法は、他の成形方法と比較して、成形時のガラスの粘度が高いため、ガラスの耐失透性が悪いと、成形中に失透ブツが発生し、ガラス基板に成形できなくなるおそれがある。具体的には、液相粘度が104.5dPa・s未満であると、オーバーフローダウンドロー法の適用が困難になる。よって、液相粘度が104.5dPa・s未満であると、薄膜化合物太陽電池用ガラスの成形方法に不当な制約が課され、所望の形状のガラスを成形できなくなるおそれが生じる。なお、液相粘度が高いほど、ガラスの耐失透性は良好である。ここで、粘度、密度、熱膨張係数等のガラスに要求される種々の特性を満たすためのバランスを考慮すると、ガラスの液相粘度は106.5dPa・s以下に設計することが目安となる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、高温粘度102.5dPa・sに
おける温度は1650℃以下が好ましく、1620℃以下がより好ましく、1600℃以
下が更に好ましい。この温度が低いほど、溶融時にガラス中に存在する気泡の浮上速度が
速くなるため、泡を低減しやすくなり、泡品位が向上する。高温粘度102.5dPa・
sにおける温度が1650℃よりも高いと、溶融時にガラス中に存在する気泡の浮上速度
が遅くなるため、泡を低減し難くなり、泡品位が悪化する。また、高温粘度102.5d
Pa・sにおける温度が1650℃よりも高いと、炉体耐火物の耐久性も低下し、その結
果、溶融炉等の耐久性が低下し、ガラス基板の製造コストが高騰する。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、紫外線照射前後で波長400nmにおける透過率差は2%以内、好ましくは1.5%以内、より好ましくは1%以内、更に好ましくは0.5%以内である。この透過率差が小さいほど、ガラスのソラリゼーションを抑制することができ、長期にわたって薄膜化合物太陽電池の光電変換効率を維持できる。ここで、「透過率」は、板厚0.7mmのガラス基板を用いて、分光光度計で測定した値を指す。また、「紫外線照射前後で波長400nmにおける透過率差」とは、波長185nm(2.7mW/cm2)および波長254nm(13mW/cm2)の紫外線を12時間照射した場合に、波長400nmにおける透過率が変化した量を指す。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、波長400nm〜1000nmでの透過率が90%以上であることが好ましい。波長400nm〜1000nmでの透過率が90%未満であると、薄膜化合物太陽電池の光電変換効率が低下しやすくなる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、ガラスの比ヤング率は、25GPa/(g/cm3)以上が好ましく、26GPa/(g/cm3)以上がより好ましく、26.5GPa/(g/cm3)以上が更に好ましい。ガラスの比ヤング率が高い程、自重によるガラス基板のたわみが低減される。その結果、ガラス基板をカセット等に収納する際、ガラス基板同士のクリアランスを狭くして収納することが可能になるため、薄膜化合物太陽電池の生産性が向上する。なお、ヤング率は、周知の共振法で測定した値を使用する。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、板厚が3.0mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、0.7mm以下、0.5mm以下であることが好ましい。ガラス基板の板厚が薄い程、ガラス基板を軽量化することができ、薄膜化合物太陽電池を軽量化することができる。なお、アモルファスシリコン太陽電池の製造工程では、一般的にプラズマCVD法やスパッタリング法が採用されており、このような工程でガラス基板上に薄膜を形成する場合において、ガラス基板の板厚が薄ければ、薄膜を形成するに際し、高速加熱が可能となるため、太陽電池の製造効率を向上させることができる。さらに、ガラス基板の板厚が薄ければ、ガラス基板による光の吸収が抑制され、薄膜化合物太陽電池の光電変換効率が損なわれにくくなる。
ガラス基板の汚染防止等の観点から、ガラス製造設備の多くは、白金族元素または白金族元素合金からなる、或いは白金族元素または白金族元素合金で被覆されている。溶融炉や成形体に白金族元素又は白金族元素合金が使用されていると、これらが溶融ガラス中に取り込まれ、白金族元素ブツとなるおそれが生じる。この溶融ガラスをガラス基板に成形する際、溶融ガラスは所定の厚みに延伸されるが、ガラス中に存在する白金族元素ブツは固体であり、ほとんど延伸されない。そのため、白金族元素ブツが存在する部分は、白金族元素ブツの厚みが減少しない分だけ板厚が増大する。この板厚の増大は、白金族元素ブツ周囲のガラスの粘性流動および延伸によりやがて緩和される。しかし、白金族元素ブツがガラス基板表面近傍に存在する場合、白金族元素ブツ周囲のガラス量が少ないため、板厚増加が緩和されないうちにガラスが固まり、ガラス基板表面に突起として現れやすくなる。白金族元素等のブツがガラス基板内に存在すると、薄膜化合物太陽電池の電極の断線、ショートを惹起する。このような事情から、本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板において、ガラス基板表面の突起は1ヶ/m2以下であることが好ましく、0.4ヶ/m2以下がより好ましく、0.25ヶ/m2以下が更に好ましく、0.1ヶ/m2以下が最も好ましい。ガラス基板表面の突起が2ヶ/m2以下であると、成膜工程における電極の断線やショートが少なくなる。また、突起を少なくすることで、研磨が不要となるため、表面品位の高いガラス基板を得ることができる。ガラス基板表面の突起を2ヶ/m2以下にするには、突起の原因となる白金族元素ブツを40ヶ/kg以下(好ましくは20ヶ/kg以下、10ヶ/kg以下、5ヶ/kg以下、特に1ヶ/kg以下)にすることが望ましい。ここで、「突起」とは、表面粗さ計にて1000μmの距離を検査したときに、突部の先端とガラス基板表面との高低差(突部の高さ)が1μm以上となる部位を指す。また、「白金族元素ブツ」とは、最長径が3μm以上のものを指す。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、ガラス組成として、質量%でNa2O+K2Oを0.1〜20質量%含有し、且つモル分率Al2O3/BaOの値を0.1〜1.03およびモル分率Na2O/K2Oの値を0〜2とするのが好ましい。Na2O+K2Oは、高温粘性を低下させて、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0.1〜20%であり、好ましくは0.2〜16%、より好ましくは1〜12%である。Na2O+K2Oの含有量が0.1%より少ないと、高温粘性を低下させる効果が得られ難くなる。一方、Na2O+K2Oの含有量が20%より多いと、歪点が低下したり、熱膨張係数が高くなり過ぎる。
また、モル分率Al2O3/BaOの値を0.1〜2(好ましくは、0.3〜2、0.5〜1.5、0.7〜1.3、0.8〜1.1)に設定すると、ガラスの耐失透性を悪化させることなく、高歪点化を達成できるため、好ましい。モル分率Al2O3/BaOの値が2より大きいと、耐失透性が悪化する傾向がある。モル分率Al2O3/BaOの値が0.1より小さいと、耐失透性が悪化するとともに、歪点が低下する傾向がある。さらに、Al2O3/BaOのモル分率を0.1〜2の範囲に設定して、耐失透性を抑制しつつ歪点を高くする効果は、モル分率でNa2O/K2Oの値を0〜2(好ましくは、0.3〜1.5、0.5〜1.3、0.7〜1.1、0.8〜0.9)の範囲に調整することで、より的確に享受することができる。モル分率Na2O/K2Oの値が小さくなると、モル分率Al2O3/BaOの値を調整することによる上記効果が若干得られにくくなるため、モル分率Na2O/K2Oの値を0.3以上にすることがより好ましい。また、モル分率Na2O/K2Oの値が2より大きいと、歪点が低下したり、ガラス組成のバランスを欠いて、失透が生じやすくなる。
また、本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、ガラス組成として、質量%でSiO2 45〜70%、Al2O3 8.2〜20%、B2O3 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜17%、BaO 0〜17%、Na2O+K2O 0.1〜20%、ZrO2 0〜8%を含有する。ガラス組成を上記範囲に規制すれば、ガラスの耐失透性を向上させることができ、ガラスの失透性に起因して、ガラス基板の表面品位が損なわれる事態を防止することができる。オーバーフローダウンドロー法による成形を精度よく実行するためには、一般的に、ガラスの耐失透性として、液相温度1200℃以下、液相粘度104.5dPa・s以上が要求されるが、ガラス組成を上記範囲に規制すれば、液相温度で1200℃以下、液相粘度で104.5dPa・s以上の特性を達成することができる。また、ガラス組成を上記範囲に規制すれば、オーバーフローダウンドロー法に適した粘度特性を得ることができる。なお、ガラスの製造工程において、ガラスの耐失透性が良好である程、ガラス基板の製造効率が向上する。また、オーバーフローダウンドロー法以外の成形方法(例えば、フロート法)であっても、ガラスの耐失透性が良好である程、ガラス基板の製造効率が向上する。
上記のようにガラス組成範囲を限定した理由を詳述する。なお、以下の%表示は特に限定がある場合を除き、質量%を指す。
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマーであり、その含有量は45〜70%、好ましくは48〜65%、より好ましくは50〜60%、更に好ましくは52〜58%、最も好ましくは55〜58%である。SiO2の含有量が70%より多いと、ガラスの溶融、成形が難しくなったり、熱膨張係数が小さくなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数と整合し難くなったりする。一方、SiO2の含有量が45%より少ないと、熱膨張係数が大きくなり過ぎて、ガラスの耐熱衝撃性が低下したり、ガラス化が困難になる傾向にある。
Al2O3は、ガラスの歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は8.2〜20%、好ましくは8.2〜18%、より好ましくは8.2〜15%、更に好ましくは8.2〜13%である。Al2O3の含有量が20%より多いと、ガラスの耐失透性が悪化するとともに、高温粘性が高くなり、ガラスの溶融性が悪化する傾向がある。Al2O3の含有量が8.2%より少ないと、熱膨張係数が大きくなり、ガラスの耐熱衝撃性が低下したり、ガラスの歪点が低下する傾向があり、薄膜化合物太陽電池を製造する際の熱処理工程でガラス基板に割れが発生したり、熱変形や反りや熱収縮が生じやすくなる。また、ガラスの耐失透性を改善する観点から、Al2O3の含有量を11%以下、更に10%以下、特に9.5%以下に抑えると、より的確に上記効果を享受することができる。
B2O3は、ガラスの溶融性を向上させ、ガラスの失透を抑制する効果を有する成分であり、その含有量は0〜10%であり、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.5〜5%である。B2O3の含有量が10%より多いと、歪点やヤング率が低下しやすくなり、薄膜化合物太陽電池を製造する際の熱処理工程でガラス基板に割れが発生したり、熱変形や熱収縮が生じやすくなる。更に、ガラスの歪点やヤング率を上昇させる観点から、B2O3の含有量を3%以下(好ましくは2.5%以下、2%以下)に低下させると、より的確に上記効果を享受することができる。
MgOは、ガラスの歪点を高め、また高温粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜10%、より好ましくは0〜8%、更に好ましくは0〜5%、最も好ましくは0〜3%である。MgOの含有量が10%より多いと、熱膨張係数が高くなり過ぎたり、密度が高くなったり、耐失透性が悪化する傾向がある。
CaOは、歪点をあまり低下させることなく、高温粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜10%、より好ましくは0〜8%、更に好ましくは0〜5%、最も好ましくは0〜1%である。CaOの含有量が10%より多いと、熱膨張係数が高くなり過ぎたり、密度が高くなり、耐失透性が悪化する傾向がある。
SrOは、耐失透性を悪化させることなく、高温粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜25%、好ましくは0〜17%、より好ましくは2〜15%、更に好ましくは7〜13%、特に好ましくは5〜13%である。SrOの含有量が25%より多いと、熱膨張係数や密度が高くなり過ぎたり、ガラス組成のバランスを欠いて耐失透性が悪化する。また、ガラスの耐失透性を向上させる観点から、SrOの含有量を11%以下、更に10.5%以下にすると、上記効果をより的確に享受することが可能となる。
BaOは、耐失透性を悪化させずに、高温粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜25%(好ましくは0〜17%、2〜17%、5〜16%、7〜15%、9〜14%、11.5〜14%)である。BaOの含有量が25%より多いと、熱膨張係数が高くなり過ぎたり、密度が高くなったり、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に耐失透性が悪化したりする。
MgO+CaO+SrO+BaOの合量は、15〜60%とするのが好ましく、15〜28%とするのがより好ましく、17〜26%が更に好ましく、19〜24%が特に好ましい。MgO+CaO+SrO+BaOの合量が60%を超えると、ガラスの密度や熱膨張係数が高くなる傾向があるとともに、耐失透性も悪化する傾向がある。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの合量が15%より少ないと、ガラスの溶融性が悪化したり、熱膨張係数が小さくなり過ぎる。
SrO、BaOは、ガラス組成に導入しても液相温度付近における粘性があまり低下しないため、オーバーフローダウンドロー法による成形に際し、適正な液相粘度となりやすい。よって、他のアルカリ土類金属酸化物と比較して、SrO、BaOを積極的に含有させることが望ましい。さらに、ガラスの耐失透性を向上させる観点から、質量分率(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値を0〜0.2(好ましくは0〜0.1、0〜0.05)に設定することが有効である。更に、ガラスの耐失透性を向上させる観点から、質量分率SrO/BaOの値を0.4〜1.2(好ましくは、0.5〜1.2、0.5〜1.1、0.6〜1.0、0.6〜0.9、0.6〜0.8)に設定することが有効である。上記範囲外であると、想定した効果を最大限に享受できなくなる。
Na2O+K2Oは、高温粘性を低下させ、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0.1〜20%であり、好ましくは0.2〜16%、より好ましくは1〜12%である。Na2O+K2Oの含有量が0.1%より少ないと、高温粘性を低下させる効果が得られにくくなる。一方、Na2O+K2Oの含有量が20%より多いと、歪点が低下したり、熱膨張係数が高くなり過ぎる。
Na2Oは、高温粘性を低下させるとともに、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.5〜6%、更に好ましくは1〜5%である。Na2Oの含有量が10%より多いと、歪点が低下したり、熱膨張係数が高くなり過ぎる。また、アルカリ成分が薄膜化合物中に拡散して、基板の反りを発生させたり、膜の品位を悪化させる場合がある。
K2Oは、高温粘性を低下させ、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.5〜6%である。K2Oの含有量が10%より多いと、歪点が低下したり、熱膨張係数が高くなり過ぎる。また、アルカリ成分が薄膜化合物中に拡散して基板のそりを発生させたり、膜の品位を悪化させる場合がある。一方、高温粘性を低下させる効果および熱膨張係数を調整する効果を的確に享受するために、K2Oを1%以上(好ましくは2%以上、3%以上)含有させることが望ましい。
ZrO2は、歪点やヤング率を上昇させる成分であり、ZrO2の含有量は0〜8%(好ましくは、0.01〜8%、0.1〜8%、0.5〜7%、1〜6%、2〜5%、2.5〜4%)である。ZrO2の含有量が8%より多いと、耐失透性が悪化したり、密度や熱膨張係数の異なるZrO2リッチな生地が成形体まで流出しやすくなり、平均表面粗さ、うねり等のガラス基板の表面品位に悪影響を及ぼすおそれが生じる。
また、モル分率Al2O3/BaOの値を0.1〜2(好ましくは、0.3〜2、0.5〜1.5、0.7〜1.3、0.8〜1.1)に設定すると、ガラスの耐失透性を悪化させることなく、高歪点化を達成できるため、好ましい。モル分率Al2O3/BaOの値が2より大きいと、耐失透性が悪化する傾向がある。モル分率Al2O3/BaOの値が0.1より小さいと、ガラスの耐失透性が悪化するとともに、歪点が低下する傾向がある。
さらに、モル分率Al2O3/BaOの値を0.1〜2に設定して、耐失透性を抑制しつつ歪点を高くする効果は、モル分率Na2O/K2Oの値を0〜2(好ましくは、0.3〜1.5、0.5〜1.3、0.7〜1.1、0.8〜0.9)の範囲に調整することで、より的確に享受することができる。モル分率Na2O/K2Oの値が小さくなると、Al2O3/BaOのモル分率を調整することによる上記効果が若干得られにくくなるため、モル分率Na2O/K2Oの値を0.3以上にすることがより好ましい。また、モル分率Na2O/K2Oの値が2より大きいと、歪点が低下したり、ガラス組成のバランスを欠いて、失透が生じやすくなる。
ガラスの歪点を高く保ち、熱膨張係数を高くし過ぎない観点から、質量分率(Na2O+K2O)/(MgO+CaO+SrO+BaO)の値を0〜0.5に設定することが好ましく、0.1〜0.4に設定することがより好ましく、0.2〜0.4に設定することが更に好ましい。質量分率(Na2O+K2O)/(MgO+CaO+SrO+BaO)の値が0.5より大きいと、上記効果を的確に享受できないおそれがある。
Fe2O3は、ガラスの透過率に影響を及ぼす成分であり、その含有量は0〜0.05%、好ましくは1ppm〜0.03%、更に好ましくは0.005〜0.02%、最も好ましくは0.005〜0.015%である。Fe2O3の含有量が多くなると、ガラスの可視域の透過率が低下しすぎて、薄膜化合物太陽電池素子に照射される太陽光の量が低減する上に、ソラリゼーションが起こりやすくなり、その結果、薄膜化合物太陽電池の光電変換効率が低下しやすくなる。また、Fe2O3の含有量が少なくなると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、ガラス基板の製造コストの高騰を招く。また、Fe2O3の含有量が少なくなると、紫外域の透過率が高くなり過ぎることで、ガラス基板上に存在する樹脂の劣化を招き、薄膜化合物太陽電池の寿命が短くなるおそれもある。
TiO2は、ガラスのソラリゼーションを抑制する効果があり、0〜10%(好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%、更に好ましくは0.001〜1%、最も好ましくは0.005〜0.1%)含有させることができる。TiO2の含有量が多くなると、ガラスの耐失透性が悪化したり、ガラスが着色したりする。なお、TiO2導入源としてTiO2を主成分とする原料を用いても良いが、他の原料に含まれる微量成分から含有させても差し支えない。
ZnOは、ガラスのヤング率を高めたり、溶融性を改善する成分であり、0〜10%(好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%、更に好ましくは0〜1%、最も好ましくは0〜0.5%)含有させることができる。ZnOの含有量が多くなると、ガラスの密度や熱膨張係数が高くなったりする。また、ZnOの含有量が多くなると、ガラスの耐失透性や歪点が低下する傾向にある。
As2O3は、ガラスの清澄剤として作用するが、ガラス組成中に多量に含有させると、ガラスがソラリゼーションしやすくなり、薄膜化合物太陽電池の光電変換効率が経時的に劣化しやすくなるため、その含有量は0〜1%、好ましくは0〜0.8%、より好ましくは0〜0.5%、更に好ましくは0〜0.3%であり、実質的に含有しないことが最も好ましい。また、実質的にAs2O3を含有しないガラス組成にすれば、近年の環境的要請を満たすことができる。
SnO2は、ガラスの清澄剤として作用するととともに、ガラスのソラリゼーションを抑制する効果がある。また白金族元素ブツの発生を抑制する効果があり、その含有量は0.001〜2%、好ましくは0.005〜1.5%、より好ましくは0.01〜1%、更に好ましくは0.05〜0.5%、最も好ましくは0.05〜0.3%である。SnO2の含有量が多くなると、ガラスの耐失透性が悪化する。また、SnO2の含有量が少なくなると、ガラスのソラリゼーションを抑制する効果が乏しくなったり、清澄効果が低減する。また、白金族元素ブツの発生量が増加する傾向にある。なお、SnO2導入源としてSnO2を主成分とする原料を用いても良いが、他の原料に含まれる微量成分から含有させても差し支えない。
ガラスのソラリゼーション抑制効果をより効果的に発現させるためには、質量分率SnO2/(Fe2O3+SnO2)の値を0.9以上、好ましくは0.92以上、0.94以上、0.96以上に規制すればよい。質量分率SnO2/(Fe2O3+SnO2)の値が0.9未満であると、所望のソラリゼーション抑制効果が得られにくくなり、薄膜化合物太陽電池の光電変換効率が経時的に劣化しやすくなる。
Sb2O3は、ガラスの清澄剤として働く成分であり、0〜2%(好ましくは0〜1.5%、より好ましくは0〜1%、更に好ましくは0〜0.5%、最も好ましくは0〜0.1%)含有することができる。Sb2O3の含有量が多くなると、ガラスの密度が高くなりやすい。
ClやF等のハロゲン化物は、ガラスの清澄剤として働く成分であり、0〜1%(好ましくは0〜0.5%、より好ましくは0〜0.1%、更に好ましくは0〜0.01%、最も好ましくは0〜0.001%)含有することができる。Clの含有量が多くなると、ガラス融液からの成分揮発が多くなり、ガラスに脈理が発生しやすくなったり、薄膜化合物太陽電池素子の特性を劣化させるおそれがある。
Nb2O5やLa2O3等の希土類酸化物は、ガラスのヤング率を高める成分である。しかし、希土類酸化物は、原料自体のコストが高く、また多量に含有すると、耐失透性が悪化する。それ故、希土類酸化物の含有量は、3%以下、2%以下、1%以下、特に0.5%以下に制限することが望ましい。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラスは、上記成分以外にもガラスの特性を損なわない範囲で種々の成分を10%まで添加することができる。
上記ガラス組成範囲において、各成分の好ましい含有範囲を任意に組み合わせて、好ましいガラス組成範囲を選択することは当然に可能であるが、その中にあって、薄膜化合物太陽電池用ガラス基板として、より好ましいガラス組成範囲は、SiO2 40〜65%、Al2O3 8.2〜18%、B2O3 0〜7%、MgO 0〜7%、CaO 0〜7%、SrO 0〜12.5%、BaO 0〜14%、Na2O 0〜5%、K2O 0〜6%、ZrO2 0〜4%、SnO2 0.001〜1%である。ガラスの組成範囲を上記のように規制すれば、耐失透性を改善できるとともに、オーバーフローダウンドロー法による成形に際し、好適な粘度特性を確保することができる。また、さらに好ましい範囲はSiO2 50〜65%、Al2O3 8.2〜10%、B2O3 0〜5%、MgO 0〜5%、CaO 0〜5%、SrO 5〜12.5%、BaO 5〜14%、Na2O 0〜5%、K2O 0.1〜6%、ZrO2 0.001〜4%、SnO2 0.01〜0.5%である。ガラスの組成範囲を上記のように規制すれば、耐失透性を大幅に改善できるとともに、オーバーフローダウンドロー法による成形に際し、好適な粘度特性を確保することができる。また最も好ましい範囲はSiO2 50〜60%、Al2O3 8.2〜10%、B2O3 0〜5%、MgO 0〜3%、CaO 0〜3%、SrO 5〜12.5%、BaO 9〜14%、Na2O 0〜5%、K2O 3〜6%、ZrO2 1〜4%、SnO2 0.05〜0.4%である。ガラスの組成範囲を上記のように規制すれば、耐失透性を大幅に改善できるとともに、オーバーフローダウンドロー法による成形に際し、好適な粘度特性を確保することができ、かつ耐熱性に優れたガラス基板を得ることができる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、所望のガラス組成となるように調合したガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を1400〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することで製造することができる。
本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法でガラス基板を成形すれば、未研磨で平均表面粗さ(Ra)が20Å以下のガラス基板を製造することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラス基板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されることにより、無研磨で表面品位が良好なガラス基板を成形できるからである。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス基板を製造する方法である。樋状構造物の構造や材質は、ガラス基板の寸法や表面品位を所望の状態とし、ガラス基板に使用できる品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うためにガラス基板に対してどのような方法で力を印加するものであってもよい。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラス基板に接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラス基板の端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板は、耐失透性が優れるとともに、オーバーフローダウンドロー法に適した粘度特性を有している。
薄膜化合物太陽電池用ガラス基板の成形方法として、オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の方法を採用することができる。例えば、フロート法、スロットダウンドロー法、ロールアウト法等の様々な成形方法を採用することができ、フロート法でガラスを板状に成形すれば、安価でガラス基板を製造することができる。ただし、一般的に、フロート法により未研磨で表面品位が良好なガラス基板、具体的には、うねりが0.1μm以下のガラス基板を成形することは困難である。よって、本発明の太陽電池用ガラス基板の製造方法に関し、成形方法としてフロート法を採用しないことが好ましい。また、ロールアウト法でガラスを板状に成形すれば、安価でガラス基板を製造できる。ただし、一般的に、ロールアウト法により未研磨で表面品位が良好なガラス基板、具体的には、平均表面粗さ(Ra)が20Å以下のガラス基板を成形することは困難である。よって、本発明の薄膜化合物太陽電池用ガラス基板の製造方法に関し、成形方法としてロールアウト法を採用しないことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
表1は、薄膜化合物太陽電池用ガラス基板のガラス組成(試料No.1、2、4)を示している。なお、試料No.3は参考例である。
各試料は、次のようにして作製した。
まず表1の組成となるように各種ガラス原料を調合した。これらの原料を、白金ポットを用いて1580℃で5.5時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、各種の評価に供した。
このようにして作製した各試料について、密度、熱膨張係数、歪点、液相温度、液相粘度および高温粘度を測定した。結果を表1に示す。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した。
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲で測定したものである。
歪点は、ASTM C336−71に準拠した方法により測定した。
液相温度は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に48時間保持した後、結晶が析出する温度を示している。液相粘度は、液相温度における各ガラスの粘度を周知の白金球引き上げ法で測定した値を示している。
高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、周知の白金球引き上げ法で測定した。
表1から明らかなように、試料No.1、2、4は、いずれも密度が3.7g/cm3以下、熱膨張係数も50〜90×10−7/℃の範囲内であり、歪点が610℃以上、液相温度が1200℃以下、液相粘度が104.5dPa・s以上、高温粘度102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下であった。
表2は、薄膜化合物太陽電池用ガラス基板の表面品位を示しており、試料A、B、D、Eは、本発明の実施例であり、試料Cは、本発明の参考例であり、試料F、Gは、本発明の比較例である。試料A〜Gの目標板厚は0.700mmであり、試料A〜Gは未研磨の600mm×700mmサイズのガラス基板である。
試料A〜Eのガラス基板は、表1に記載のガラスを量産試作溶融炉で溶融し、オーバーフローダウンドロー法で成形することにより作製した。オーバーフローダウンドロー法では、引っ張りローラーの速度、冷却ローラーの速度、加熱装置の温度分布、ガラス融液の温度、ガラスの流量、板引き速度、攪拌スターラーの回転数等を適宜調整することで、表2に示した表面品位を有した薄膜化合物太陽電池用ガラス基板を作製した。
試料Fのガラス基板は、表中のガラスを量産試作溶融炉で溶融し、フロート法で成形することにより作製した。フロート法の成形に際し、常法に従い、錫バス内の加熱装置の温度分布、トップロールの速度、錫バス内のガラス融液の温度等を適宜調整した。試料Gのガラス基板は、表中のガラスを量産試作溶融炉で溶融し、ロールアウト法で成形することにより作製した。ロールアウト法の成形に際し、常法に従い、延伸ロールの回転速度、ガラスの流量、ガラス融液の温度等を適宜調整した。
平均表面粗さ(Ra)は、SEMI D7−94「FPDガラス基板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法により測定した。
うねりは、触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B−0610に記載のWCA(ろ波中心線うねり)を測定した値であり、この測定は、SEMI STD D15−1296「FPDガラス基板の表面うねりの測定方法」に準拠した方法で測定し、測定時のカットオフは0.8〜8mm、ガラス基板の引き出し方向に対して垂直な方向に300mmの長さで測定した値である。
板厚差は、レーザー式厚み測定装置を用いて、ガラス基板の任意の一辺に板厚方向からレーザーを走査することにより、ガラス基板の最大板厚と最小板厚を測定した上で、最大板厚の値から最小板厚の値を減じた値である。
目標板厚に対する誤差は、目標板厚から上記方法で得られる最大板厚または最小板厚の値を減じた絶対値の大きい方を示している。
表2から明らかなように、試料A、B、D、Eは、平均表面粗さ(Ra)が1.4〜3.0Å、うねりが0.004〜0.021μm、板厚差が0.005〜0.015mm、目標板厚に対する誤差が0.003〜0.013mmであり、いずれも平均表面粗さ(Ra)が20Å以下、うねりが0.1μm以下、最大板厚と最小板厚の板厚差が20μm以下、目標板厚に対する誤差が10μm以下であり、ガラス基板の表面品位が良好であった。したがって、試料A、B、D、Eは、薄膜化合物太陽電池用ガラス基板として好適であると判断できる。
一方、表2から明らかなように、試料Fは、平均表面粗さ(Ra)が96Å、うねりが0.120μm、板厚差が0.030mm、目標板厚に対する誤差が0.026mmであり、ガラス基板の表面品位が悪かった。なお、試料Fは、フロート法で成形されているため、所望の光電変換効率を確保するため、錫バスに接触している面(汚染部分)を研磨する必要があると考えられる。また、試料Gは、平均表面粗さ(Ra)が512Å、うねりが200μm、板厚差が0.366mm、目標板厚に対する誤差が0.192mmであり、ガラス基板の表面品位が悪かった。したがって、試料F、Gは、薄膜化合物太陽電池用ガラス基板として不適であると判断できる。