JP2016135882A - 研磨用組成物、研磨用組成物製造方法および研磨用組成物調製用キット - Google Patents

研磨用組成物、研磨用組成物製造方法および研磨用組成物調製用キット Download PDF

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Abstract

【課題】LPD数やヘイズの低減効果に優れた研磨用組成物を提供する。
【解決手段】SP値の異なる複数種の繰返し単位を含む分子構造を有する水溶性ポリマーを含有する研磨用組成物や、所定の方法で求められるエッチングレートおよび砥粒吸着率がそれぞれ所定の範囲にある研磨用組成物が提供される。また、砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを含む研磨用組成物製造方法が提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、研磨対象物の研磨に利用される研磨用組成物に関する。詳しくは、主にシリコンウエハ等の半導体基板その他の基板の研磨に利用される研磨用組成物に関する。
また、本発明は、研磨対象物の研磨に利用される研磨用組成物の製造方法に関する。さらに、その製造方法に利用される研磨用組成物調製用キットに関する。
本出願は、2013年3月19日に出願された日本国特許出願2013−057225、日本国特許出願2013−057226、日本国特許出願2013−057227および日本国特許出願2013−057228に基づく優先権を主張しており、それらの出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
半導体装置の構成要素等として用いられるシリコンウエハの表面は、一般に、ラッピング工程(粗研磨工程)とポリシング工程(精密研磨工程)とを経て高品位の鏡面に仕上げられる。上記ポリシング工程は、典型的には、1次ポリシング工程(1次研磨工程)とファイナルポリシング工程(最終研磨工程)とを含む。シリコンウエハ等の半導体基板を研磨する用途で主に使用される研磨用組成物に関する技術文献として特許文献1が挙げられる。特許文献2は、酸化珪素膜等の絶縁膜を研磨する用途で主に使用される研磨用組成物に関する技術文献である。
日本国特許第4772156号公報 国際公開第2010/143579号
シリコンウエハ等の半導体基板その他の基板を研磨するための研磨用組成物(特に精密研磨用の研磨用組成物)には、研磨後においてヘイズが低くかつ微小パーティクル(Light Point Defect;LPD)数の少ない表面を実現し得る性能が求められる。かかる用途向けの研磨用組成物には、水および砥粒のほかに、研磨対象物表面の保護や濡れ性向上等の目的で水溶性ポリマーを含有させたものが多い。なかでも汎用の水溶性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
しかし、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は天然物(セルロース)に由来するポリマーであるため、人工的にモノマーを重合させて得られるポリマー(合成ポリマー)に比べて化学構造や純度の制御性に限界がある。例えば、市場において容易に入手し得るHECの重量平均分子量や分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、すなわちMw/Mn)の範囲は限られている。また、天然物を原料とするため、表面欠陥を生じる原因となり得る異物やポリマー構造の局所的な乱れ(ミクロな凝集等)等を高度に低減することは困難であり、そのような異物等の量や程度もばらつきやすい。今後、研磨後の表面品位に対する要求がますます厳しくなると見込まれるなか、HECを必須成分としない組成においてLPD数やヘイズの低減効果に優れた研磨用組成物が提供されれば有益である。
かかる事情に鑑み、本発明は、LPD数やヘイズの低減効果に優れた研磨用組成物を提供することを一つの目的とする。関連する他の一つの目的は、かかる研磨用組成物を用いて研磨物を製造する方法を提供することである。
また、シリコンウエハ等の半導体基板その他の基板を研磨するための研磨用組成物の代表的な構成として、砥粒、水および水溶性ポリマーを含み、さらに塩基性化合物を含有させることで塩基性に調整した構成が挙げられる。研磨用組成物を塩基性に調整することは、砥粒の分散安定性や研磨速度向上の観点から好ましい。
しかし、水溶性ポリマーのなかには塩基性条件下で加水分解反応を起こすものがある。研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーが加水分解反応を起こすと、該研磨用組成物の性能が経時により低下する懸念がある。このため、塩基性に調整される研磨用組成物(以下「塩基性の研磨用組成物」ということもある。)では、塩基性条件下で加水分解反応を起こす水溶性ポリマーの使用を避けることにより組成の選択肢が制限される不便があった。
塩基性の研磨用組成物において、塩基性条件下で加水分解反応を起こす水溶性ポリマーを用いつつ、その性能安定性を改善することができれば有益である。そこで本発明は、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーを用いて、より性能安定性に優れた塩基性の研磨用組成物を製造する技術を提供することを他の一つの目的とする。
この明細書により提供される第一の態様(aspect)に係る研磨用組成物は、SP値(Solubility Parameter)の異なる複数種の繰返し単位を含む分子構造を有する水溶性ポリマーを含む。上記水溶性ポリマーにおいて、上記複数種の繰返し単位は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含む。上記水溶性ポリマーは、上記分子構造に含まれる全種類の繰返し単位について、各種類に係る繰返し単位のSP値と該繰返し単位の合計体積が上記分子構造中の全繰返し単位の体積に占める割合との積を合計して求められる平均SP値が17.5以下である。ここで、各種類に係る繰返し単位の合計体積は、該繰返し単位のモル数とモル体積との積として算出される。
かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物は、例えば、上記水溶性ポリマーを同量のヒドロキシエチルセルロースに置き換えた組成の研磨用組成物に比べて、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する性能により優れたものとなり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上記水溶性ポリマーに加えて砥粒を含む組成で研磨対象物の研磨に使用される。かかる態様の研磨用組成物によると、砥粒のメカニカル作用によって研磨効率を向上させることができる。
上記水溶性ポリマーとしては、ノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。繰返し単位A,Bがそれぞれ上述したSP値を満たし、かつ上記平均SP値を満たすノニオン性の水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
上記水溶性ポリマーの一好適例として、上記繰返し単位Aとしてビニルアルコール単位を含むものが挙げられる。ここでビニルアルコール単位とは、ビニルアルコール(CH=CH−OH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記ビニルアルコール単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OH)−;により表される構造部分(SP値18.5)である。かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
上記水溶性ポリマーの他の一好適例として、上記繰返し単位Bとして酢酸ビニル単位を含むものが挙げられる。ここで酢酸ビニル単位とは、酢酸ビニル(CHCOOCH=CH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記酢酸ビニル単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OCOCH)−;により表される構造部分(SP値11.1)である。かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
上記水溶性ポリマーが酢酸ビニル単位を含む場合、該水溶性ポリマーの分子構造に含まれる全繰返し単位のモル数に占める上記酢酸ビニル単位のモル数の割合(モル比)は5%〜80%の範囲にあることが好ましい。かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、さらに塩基性化合物を含む態様で好ましく実施され得る。かかる態様の研磨用組成物によると、塩基性化合物の作用によって研磨効率を向上させることができる。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いて研磨物を製造する方法が提供される。その方法は、研磨対象物に研磨液(ここで「液」とは、スラリーを含む意味である。)を供給することを含む。また、上記研磨対象物の表面を上記研磨液で研磨することを含む。かかる製造方法によると、高品位の(例えば、LPD数が少なくヘイズの低い)表面を備えた研磨物が製造され得る。
ここに開示される技術は、シリコンウエハの研磨、例えばラッピングを経たシリコンウエハのポリシングに好ましく適用することができる。特に好ましい適用対象として、シリコンウエハのファイナルポリシングが例示される。
この明細書により提供される第二の態様(aspect)に係る研磨用組成物は、砥粒と水溶性ポリマーと水とを含む。上記研磨用組成物は、以下のエッチングレート測定に基づくエッチングレートが2.0nm/分以下であることを特徴とする。
[エッチングレート測定]
(1A)上記水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを調製する。
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する。
(3A)上記シリコン基板を上記薬液LEに室温にて12時間浸漬する。
(4A)上記薬液LEから上記シリコン基板を取り出し、室温にてNH(29%):H(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する。
(5A)洗浄後の上記シリコン基板の質量W1を測定する。
(6A)上記W0と上記W1との差および上記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する。
上記研磨用組成物は、また、以下の砥粒吸着率測定に基づく砥粒吸着率が20%以下であることを特徴とする。
[砥粒吸着率測定]
(1B)上記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って上記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める。
(2B)上記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める。
(3B)上記C0および上記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する。
上記エッチングレートおよび砥粒吸着率を満たす研磨用組成物によると、該エッチングレートおよび砥粒吸着率の一方または両方を満たさない研磨用組成物に比べて、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減することができる。また、例えば水溶性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロースを単独で使用した研磨用組成物(典型的には砥粒吸着率20%超)に比べて、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減することができる。
上記水溶性ポリマーとしては、ノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。これにより研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
上記水溶性ポリマーの一好適例として、繰返し単位としてビニルアルコール単位および酢酸ビニル単位を含む分子構造のものが挙げられる。ここでビニルアルコール単位とは、ビニルアルコール(CH=CH−OH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記ビニルアルコール単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OH)−;により表される構造部分である。また、酢酸ビニル単位とは、酢酸ビニル(CHCOOCH=CH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記酢酸ビニル単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OCOCH)−;により表される構造部分である。かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
上記水溶性ポリマーが酢酸ビニル単位を含む場合、該水溶性ポリマーの分子構造に含まれる全繰返し単位のモル数に占める上記酢酸ビニル単位のモル数の割合(モル比)は5%〜80%の範囲にあることが好ましい。かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒、水溶性ポリマーおよび水に加えて、さらに塩基性化合物を含む態様で好ましく実施され得る。かかる態様の研磨用組成物によると、塩基性化合物の作用によって研磨効率を向上させることができる。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いて研磨物を製造する方法が提供される。その方法は、研磨対象物に研磨液(ここで「液」とは、スラリーを含む意味である。)を供給することを含む。また、上記研磨対象物の表面を上記研磨液で研磨することを含む。かかる製造方法によると、高品位の(例えば、LPD数が少なくヘイズの低い)表面を備えた研磨物が製造され得る。
ここに開示される技術は、シリコンウエハの研磨、例えばラッピングを経たシリコンウエハのポリシングに好ましく適用することができる。特に好ましい適用対象として、シリコンウエハのファイナルポリシングが例示される。
この明細書により提供される第一の態様(aspect)に係る研磨用組成物製造方法は、砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを包含する。上記製造方法は、さらに、少なくとも上記A剤を含む第1組成物と少なくとも上記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、上記砥粒、上記塩基性化合物、上記水溶性ポリマーHおよび水を含み上記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である混合物を調製する工程を包含する。かかる製造方法によると、より性能安定性の良い研磨用組成物が製造され得る。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
ここに開示される製造方法の好ましい一態様として、上記A剤が上記砥粒と上記塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液Cであり、上記砥粒分散液Cを希釈して上記第1組成物を調製した後に、該第1組成物と上記第2組成物とを混合して上記混合物を調製する態様が挙げられる。かかる態様によると、砥粒の分散性および性能安定性に優れた研磨用組成物が製造され得る。
この明細書によると、また、砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する他の方法が提供される。その方法は、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを包含する。上記製造方法は、さらに、少なくとも上記A剤を含む第1組成物と少なくとも上記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、上記砥粒、上記塩基性化合物、上記水溶性ポリマーHおよび水を含み上記砥粒の濃度が3質量%未満である混合物を調製する工程を包含する。かかる製造方法によると、より性能安定性の良い研磨用組成物が製造され得る。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
ここに開示される製造方法の好ましい一態様として、上記A剤が上記砥粒と上記塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液Cであり、上記砥粒分散液Cを希釈して上記第1組成物を調製した後に、該第1組成物と上記第2組成物とを混合して上記混合物を調製する態様が挙げられる。かかる態様によると、砥粒の分散性および性能安定性に優れた研磨用組成物が製造され得る。
上記砥粒の分散性および研磨用組成物の性能安定性の観点から、上記砥粒分散液Cの希釈は、上記砥粒分散液Cに水を添加して該砥粒の濃度が3質量%未満である上記第1組成物が形成されるように行われることが好ましい。また、希釈前の砥粒分散液Cは、その砥粒濃度が例えば3質量%以上であることが好ましい。このことによって、砥粒分散液Cの保管や移送にかかるコストが低減され得る。
この明細書によると、また、砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する他の方法が提供される。その製造方法は、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとを共存させると同時またはそれより前に、上記砥粒を3質量%未満の濃度で含む水中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとを共存させることを特徴とする。かかる方法によると、より性能安定性の良い研磨用組成物が製造され得る。
ここに開示される技術は、例えば、上記塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基としてアシルオキシ基(例えばアセトキシ基)を有する水溶性ポリマーHを用いた研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。このような水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物は、上記アシルオキシ基の加水分解によりその性質(ひいては研磨性能)が変動しやすいことから、ここに開示される方法を適用して製造することが特に有意義である。
ここに開示される技術は、また、分子構造中に繰返し単位として酢酸ビニル単位およびビニルアルコール単位を含む水溶性ポリマーHを用いた研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。ここでビニルアルコール単位とは、ビニルアルコール(CH=CH−OH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記ビニルアルコール単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OH)−;により表される構造部分である。また、酢酸ビニル単位とは、酢酸ビニル(CHCOOCH=CH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記酢酸ビニル単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OCOCH)−;により表される構造部分であって、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基としてアセトキシ基を有する繰返し単位である。このような水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物は、上記アシルオキシ基の加水分解によりその性質(ひいては研磨性能)が変動しやすいことから、ここに開示される方法を適用して製造することが特に有意義である。
上記水溶性ポリマーHとしては、ノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。かかる水溶性ポリマーHを用いて製造された研磨用組成物は、より高性能な(例えば、研磨後の表面のヘイズ値および/またはLPD数を低減する効果の高い)ものとなり得る。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物製造方法に好ましく用いられる研磨用組成物調製用キットが提供される。そのキットは、互いに分けて保存される上記A剤と上記B剤とを備える。かかる構成のキットを用いることにより、ここに開示される研磨用組成物製造方法を容易に実施することができる。
このような研磨用組成物調製用キットにおいて、上記A剤は少なくとも上記塩基性化合物を含み、上記B剤は少なくとも上記水溶性ポリマーHを含む。上記砥粒は、上記A剤に含まれていてもよく、上記B剤に含まれていてもよく、上記A剤および上記B剤の両方に含まれていてもよい。また、上記研磨用組成物調製用キットは、上記砥粒が上記A剤および上記B剤とは別のC剤として保管される構成であってもよい。
あるいは、上記研磨用組成物調製用キットは、上記砥粒を含まない構成であってもよい。かかる構成の研磨用組成物調製用キットは、例えば該キットとは別に用意した砥粒と組み合わせることにより、ここに開示される研磨用組成物製造方法に好適に利用することができる。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの方法により製造された研磨用組成物を用いて研磨物を製造する方法が提供される。その方法は、上記研磨用組成物を含む研磨液(ここで「液」とは、スラリーを含む意味である。)を研磨対象物に供給することを含む。また、上記研磨対象物の表面を上記研磨液で研磨することを含む。かかる製造方法によると、高品位の(例えば、LPD数が少なくヘイズの低い)表面を備えた研磨物が製造され得る。
ここに開示される技術は、シリコンウエハの研磨、例えばラッピングを経たシリコンウエハのポリシングに用いられる研磨用組成物の製造に好ましく適用することができる。特に好ましい適用対象(製造対象)として、シリコンウエハのファイナルポリシング用の研磨用組成物が例示される。
この明細書により提供される第二の態様(aspect)に係る研磨用組成物製造方法は、砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを包含する。上記製造方法は、さらに、少なくとも上記A剤と上記B剤とを混合して上記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い研磨用組成物原液を調製する工程と、上記A剤と上記B剤とを混合してから24時間以内に上記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるまで上記研磨用組成物原液を希釈する工程とを包含する。かかる方法によると、性能安定性の改善された研磨用組成物が製造され得る。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
この明細書によると、また、砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する他の方法が提供される。その方法は、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを包含する。上記製造方法は、さらに、少なくとも上記A剤と上記B剤とを混合して上記砥粒の含有量が1質量%以上である研磨用組成物原液を調製する工程と、上記A剤と上記B剤とを混合してから24時間以内に上記砥粒の含有量が1質量%未満となる濃度まで上記研磨用組成物原液を希釈する工程とを包含する。かかる方法によると、性能安定性の改善された研磨用組成物が製造され得る。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
ここに開示されるいずれかの製造方法は、上記研磨用組成物原液を希釈する工程において該原液を体積基準で10倍以上に希釈する態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、上記原液の調製に用いる上記A剤および上記B剤の少なくとも一方として、比較的高濃度のものを使用することができる。このことは、上記原液の調製に使用する材料の製造、流通、保存等の際における利便性やコストの観点から有利である。
ここに開示される技術は、例えば、上記塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基としてアシルオキシ基(例えばアセトキシ基)を有する水溶性ポリマーHを用いた研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。このような水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物は、上記アシルオキシ基の加水分解によりその性質(ひいては研磨性能)が変動しやすいことから、ここに開示される方法を適用して製造することが特に有意義である。
ここに開示される技術は、また、その分子構造中に含まれる全繰返し単位の5%以上のモル比で酢酸ビニル単位を含む水溶性ポリマーHを用いた研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。ここで酢酸ビニル単位とは、酢酸ビニル(CHCOOCH=CH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記酢酸ビニル単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OCOCH)−;により表される構造部分であって、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基としてアセトキシ基を有する繰返し単位である。このような水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物は、上記アシルオキシ基の加水分解によりその性質(ひいては研磨性能)が変動しやすいことから、ここに開示される方法を適用して製造することが特に有意義である。
ここに開示される技術は、また、繰返し単位として酢酸ビニル単位およびビニルアルコール単位を含む分子構造を有する水溶性ポリマーHを用いた研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。ここでビニルアルコール単位とは、ビニルアルコール(CH=CH−OH)のビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を指す。上記ビニルアルコール単位は、具体的には、次の化学式:−CH−CH(OH)−;により表される構造部分である。酢酸ビニル単位の意味は上述のとおりである。このような水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物は、上記アシルオキシ基の加水分解によりその性質(ひいては研磨性能)が変動しやすいことから、ここに開示される方法を適用して製造することが特に有意義である。
上記水溶性ポリマーHとしては、ノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。かかる水溶性ポリマーHを用いて製造された研磨用組成物は、より高性能な(例えば、研磨後の表面のヘイズ値および/またはLPD数を低減する効果の高い)ものとなり得る。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物製造方法に好ましく用いられる研磨用組成物調製用キットが提供される。そのキットは、互いに分けて保存される上記A剤と上記B剤とを備える。かかる構成のキットを用いることにより、ここに開示される研磨用組成物製造方法を容易に実施することができる。
このような研磨用組成物調製用キットにおいて、上記A剤は少なくとも上記塩基性化合物を含み、上記B剤は少なくとも上記水溶性ポリマーHを含む。上記砥粒は、上記A剤に含まれていてもよく、上記B剤に含まれていてもよく、上記A剤および上記B剤の両方に含まれていてもよい。また、上記研磨用組成物調製用キットは、上記砥粒が上記A剤および上記B剤とは別のC剤として保管される構成であってもよい。
あるいは、上記研磨用組成物調製用キットは、上記砥粒を含まない構成であってもよい。かかる構成の研磨用組成物調製用キットは、例えば該キットとは別に用意した砥粒と組み合わせることにより、ここに開示される研磨用組成物製造方法に好適に利用することができる。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの方法により製造された研磨用組成物を用いて研磨物を製造する方法が提供される。その方法は、上記研磨用組成物を含む研磨液(ここで「液」とは、スラリーを含む意味である。)を研磨対象物に供給することを含む。また、上記研磨対象物の表面を上記研磨液で研磨することを含む。かかる製造方法によると、高品位の(例えば、LPD数が少なくヘイズの低い)表面を備えた研磨物が製造され得る。
ここに開示される技術は、シリコンウエハの研磨、例えばラッピングを経たシリコンウエハのポリシングに用いられる研磨用組成物の製造に好ましく適用することができる。特に好ましい適用対象(製造対象)として、シリコンウエハのファイナルポリシング用の研磨用組成物が例示される。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は、それぞれ同義語として扱う。
<<1.第一の態様に係る研磨用組成物>>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物は、以下の条件:
SP値の異なる複数種の繰返し単位を含む分子構造を有する;
前記複数種の繰返し単位は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含む;および
前記分子構造に含まれる全種類の繰返し単位について、各種類に係る繰返し単位のSP値と該繰返し単位の合計体積が上記分子構造中の全繰返し単位の体積に占める割合との積を合計して求められる平均SP値が17.5以下である;
を満たす水溶性ポリマーを含有することを特徴とする。
以下、上記第一の態様に係る研磨用組成物について詳しく説明する。
<1−1.水溶性ポリマー>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含み、かつ平均SP値が17.5以下である水溶性ポリマーを含むことによって特徴づけられる。
ここでSP値とは、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)を意味する。本明細書において、水溶性ポリマーを構成する繰返し単位のSP値とは、Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blend, Michael M. Coleman et al. (1991) Technomic Publishing Co. Inc.に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΣΔH)およびモル体積の合計(ΣV)から、下記式(1)により算出される値をいう。
SP値(δ(cal/cm31/2)=(ΣΔH/ΣV)1/2 (1)
また、本明細書において、水溶性ポリマーの平均SP値とは、該水溶性ポリマーに含まれる全種類の繰返し単位について、各種類に係る繰返し単位のSP値と該繰返し単位の合計体積が上記水溶性ポリマーの全繰返し単位の体積に占める割合(体積比)との積を合計して算出される値をいう。
水溶性ポリマーの平均SP値の下限は特に限定されない。水に対する溶解性等の観点から、水溶性ポリマーの平均SP値は、10.0以上が好ましく、11.0以上がより好ましく、12.0以上(例えば12.5以上)がさらに好ましい。好ましい一態様において、水溶性ポリマーの平均SP値は、13.5以上であってもよく、14.0以上であってもよい。また、研磨対象物(例えばシリコンウエハ)に対して適度な吸着性を示し、ヘイズの低減とLPD数の低減とをバランスよく両立する観点から、水溶性ポリマーの平均SP値は、17.4以下が好ましく、17.2以下がより好ましく、17.0以下がさらに好ましい。
上記水溶性ポリマーは、SP値が14.5以上である繰返し単位Aの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含み得る。繰返し単位Aの具体例としては、以下の表1に示すものが挙げられる。
Figure 2016135882
水溶性ポリマーの平均SP値を調整しやすいという観点から、繰返し単位AのSP値(2種以上の繰返し単位Aを含む場合にはそれらの平均SP値。以下同じ。)としては、15以上が好ましく、16以上がより好ましく、17以上(例えば18以上)がさらに好ましい。
上記水溶性ポリマーは、SP値が14.5未満である繰返し単位Bの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含み得る。繰返し単位Bの具体例としては、以下の表2に示すものが挙げられる。
Figure 2016135882
水溶性ポリマーの平均SP値を調整しやすいという観点から、繰返し単位BのSP値(2種以上の繰返し単位Bを含む場合にはそれらの平均SP値。以下同じ。)としては、13.5以下が好ましく、13.0以下がより好ましく、12.5以下(例えば12.0以下)がさらに好ましい。好ましい一態様において、繰返し単位BのSP値は、11.0以下であってもよく、さらに10.0以下であってもよい。
特に限定するものではないが、水溶性ポリマーの平均SP値を調整しやすいという観点から、繰返し単位AのSP値と繰返し単位BのSP値との差は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上(例えば7以上)がさらに好ましい。また、共重合反応性等の観点から、繰返し単位AのSP値と繰返し単位BのSP値との差は、15以下であることが好ましく、13以下(例えば12以下)であることがより好ましい。
上記水溶性ポリマーの一好適例として、上記繰返し単位Aとして水酸基を有する繰返し単位を含むポリマーが挙げられる。このような水溶性ポリマーは、水溶性に優れたものとなりやすいので好ましい。水酸基を有する繰返し単位Aの代表例としてビニルアルコール単位が挙げられる。
上記水溶性ポリマーの他の好適例として、上記繰返し単位Bとしてモノカルボン酸ビニルエステル単位を含むポリマーが挙げられる。上記モノカルボン酸ビニルエステル単位の好ましい具体例として、酢酸ビニル単位、ヘキサン酸ビニル単位等が挙げられる。
モノカルボン酸ビニルエステル単位を含む水溶性ポリマーの一好適例として、上記繰返し単位Bとして酢酸ビニル単位を含むポリマーが挙げられる。このような水溶性ポリマーにおいて、全繰返し単位のモル数に占める酢酸ビニル単位のモル数は、典型的には5%以上であり、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。全繰返し単位のモル数に占める酢酸ビニル単位のモル数は特に制限されないが、水に対する溶解性等の観点から、通常は80%以下とすることが適当であり、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
モノカルボン酸ビニルエステル単位を含む水溶性ポリマーの他の好適例として、上記繰返し単位Bとしてヘキサン酸ビニル単位を含むポリマーが挙げられる。全繰返し単位のモル数に占めるヘキサン酸ビニル単位のモル数は特に限定されないが、典型的には5%以上であり、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。特に限定するものではないが、全繰返し単位のモル数に占めるヘキサン酸ビニル単位のモル数の上限は、水に対する溶解性等の観点から、通常は80%以下とすることが適当であり、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下(例えば30%以下)であることがさらに好ましい。
ここに開示される技術は、上記水溶性ポリマーとして、繰返し単位Aとしてのビニルアルコール単位と繰返し単位Bとしての酢酸ビニル単位とを含む水溶性ポリマーを用いる態様で好ましく実施され得る。このような水溶性ポリマーの一例として、酢酸ビニルの単独重合体または共重合体を部分けん化した構造の水溶性ポリマーが挙げられる。例えば、酢酸ビニルの単独重合体を部分けん化した構造の部分けん化ポリビニルアルコールを好ましく使用し得る。上記部分けん化ポリビニルアルコールは、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーである。
ここに開示される技術は、また、上記水溶性ポリマーとして、繰返し単位Aとしてのビニルアルコール単位と繰返し単位Bとしてのヘキサン酸ビニル単位とを含む水溶性ポリマーを用いる態様で好ましく実施され得る。このような水溶性ポリマーの一例として、ヘキサン酸ビニルの単独重合体または共重合体を部分けん化した構造の水溶性ポリマーが挙げられる。例えば、酢酸ビニルとヘキサン酸ビニルとの共重合体を部分けん化した構造の部分けん化ポリビニルアルコールを好ましく使用し得る。上記部分けん化ポリビニルアルコールの例には、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーと、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位とヘキサン酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーとが含まれる。
このような部分けん化ポリビニルアルコールとしては、水に対する溶解性等の観点から、けん化度が50モル%以上(より好ましくは60モル%以上)であって平均SP値が17.5以下であるものを好ましく用いることができる。平均SP値が17.0以下の部分けん化ポリビニルアルコールがより好ましく、平均SP値が16.5以下(例えば16.0以下)であるものがさらに好ましい。
上記水溶性ポリマーはノニオン性であることが好ましい。換言すれば、アニオン性やカチオン性の繰返し単位を実質的に含まない水溶性ポリマーが好ましい。ここで、アニオン性やカチオン性の繰返し単位を実質的に含まないとは、これらの繰返し単位のモル比が0.02%未満(例えば0.001%未満)であることをいう。繰返し単位A,Bがそれぞれ上述したSP値を満たし、かつ上記平均SP値を満たすノニオン性の水溶性ポリマーを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。水溶性ポリマーがノニオン性であることは、凝集物の低減や洗浄性向上等の観点からも好ましい。
上記水溶性ポリマーの分子量は特に限定されない。例えば重量平均分子量(Mw)が200×10以下(典型的には1×10〜200×10、例えば1×10〜150×10)の水溶性ポリマーを用いることができる。凝集物の発生をよりよく防止する観点から、通常は、Mwが100×10未満(より好ましくは80×10以下、さらに好ましくは50×10以下、典型的には40×10以下、例えば30×10以下)の水溶性ポリマーの使用が好ましい。また、研磨用組成物の濾過性や洗浄性等の観点から、Mwが25×10以下(より好ましくは20×10以下、さらに好ましくは15×10以下、典型的には10×10以下、例えば5×10以下)の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。一方、一般に水溶性ポリマーのMwが大きくなるとヘイズ低減効果は高くなる傾向にある。かかる観点から、通常は、Mwが0.1×10以上(典型的には0.2×10以上、例えば1×10以上)の水溶性ポリマーを好ましく採用し得る。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物において、Mwが3×10以下の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。上記水溶性ポリマーのMwは、2×10以下であってもよく、1×10以下であってもよく、0.5×10未満(例えば0.4×10未満)であってもよい。水溶性ポリマーのMwは、典型的には0.1×10以上であり、通常は0.2×10以上であることが好ましい。例えば、繰返し単位Aとしてビニルアルコール単位を含む水溶性ポリマー(例えば、上述のような部分けん化ビニルアルコール)について、上記Mwの範囲を好ましく適用し得る。
上記水溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との関係は特に制限されない。凝集物の発生防止等の観点から、例えば分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であるものを好ましく用いることができる。研磨用組成物の性能安定性等の観点から、水溶性ポリマーのMw/Mnは、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下(例えば2.5以下)である。
なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。
なお、水溶性ポリマーのMwおよびMnとしては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。
<1−2.水>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上記水溶性ポリマーのほかに水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が0.01質量%〜50質量%であり、残部が水系溶媒(水または水と上記有機溶剤との混合溶媒)である形態、または残部が水系溶媒および揮発性化合物(例えばアンモニア)である形態で好ましく実施され得る。上記NVが0.05質量%〜40質量%である形態がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める質量の割合を指す。
<1−3.砥粒>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には砥粒を含有する。砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましい。ここに開示される技術において使用し得る砥粒の好適例としてシリカ粒子が挙げられる。例えば、ここに開示される技術をシリコンウエハの研磨に使用され得る研磨用組成物に適用する場合、砥粒としてシリカ粒子を用いることが特に好ましい。その理由は、研磨対象物がシリコンウエハである場合、研磨対象物と同じ元素と酸素原子とからなるシリカ粒子を砥粒として使用すれば研磨後にシリコンとは異なる金属または半金属の残留物が発生せず、シリコンウエハ表面の汚染や研磨対象物内部にシリコンとは異なる金属または半金属が拡散することによるシリコンウエハとしての電気特性の劣化などの虞がなくなるからである。さらに、シリコンとシリカの硬度が近いため、シリコンウエハ表面に過度なダメージを与えることなく研磨加工を行うことができる。かかる観点から好ましい研磨用組成物の一形態として、砥粒としてシリカ粒子のみを含有する研磨用組成物が例示される。また、シリカは高純度のものが得られやすいという性質を有する。このことも砥粒としてシリカ粒子が好ましい理由として挙げられる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。研磨対象物表面にスクラッチを生じにくく、よりヘイズの低い表面を実現し得るという観点から、好ましいシリカ粒子としてコロイダルシリカおよびフュームドシリカが挙げられる。なかでもコロイダルシリカが好ましい。例えば、シリコンウエハのポリシング(特に、ファイナルポリシング)に用いられる研磨用組成物の砥粒として、コロイダルシリカを好ましく採用し得る。
シリカ粒子を構成するシリカの真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の増大によって、研磨対象物(例えばシリコンウエハ)を研磨する際に、研磨速度(単位時間当たりに研磨対象物の表面を除去する量)が向上し得る。研磨対象物の表面(研磨面)に生じるスクラッチを低減する観点からは、真比重が2.2以下のシリカ粒子が好ましい。シリカの真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
ここに開示される技術において、研磨用組成物中に含まれる砥粒は、一次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態の砥粒と二次粒子の形態の砥粒とが混在していてもよい。好ましい一態様では、少なくとも一部の砥粒が二次粒子の形態で研磨用組成物中に含まれている。
砥粒の平均一次粒子径DP1は特に制限されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果(例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果)を得る観点から、平均一次粒子径DP1は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、より平滑性の高い表面が得られやすいという観点から、砥粒の平均一次粒子径DP1は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。ここに開示される技術は、より高品位の表面(例えば、LPDやPID(Polishing Induced Defect)等の欠陥が低減された表面)を得やすい等の観点から、平均一次粒子径DP1が35nm以下(典型的には35nm未満、より好ましくは32nm以下、例えば30nm未満)の砥粒を用いる態様でも好ましく実施され得る。
なお、ここに開示される技術において、砥粒の平均一次粒子径DP1は、例えば、BET法により測定される比表面積S(m/g)から平均一次粒子径DP1(nm)=2727/Sの式により算出することができる。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
砥粒の平均二次粒子径DP2は特に限定されないが、研磨速度等の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。より高い研磨効果を得る観点から、平均二次粒子径DP2は、30nm以上であることが好ましく、35nm以上であることがより好ましく、40nm以上(例えば40nm超)であることがさらに好ましい。また、より平滑性の高い表面を得るという観点から、砥粒の平均二次粒子径DP2は、200nm以下が適当であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。ここに開示される技術は、より高品位の表面(例えば、LPDやPID等の欠陥が低減された表面)を得やすい等の観点から、平均二次粒子径DP2が60nm未満(より好ましくは55nm以下、例えば50nm未満)の砥粒を用いる態様でも好ましく実施され得る。
砥粒の平均二次粒子径DP2は、対象とする砥粒の水分散液(水溶性ポリマー等を含有しない組成の分散液)を測定サンプルとして、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
砥粒の平均二次粒子径DP2は、一般に砥粒の平均一次粒子径DP1と同等以上(DP2/DP1≧1)であり、典型的にはDP1よりも大きい(DP2/DP1>1)。特に限定するものではないが、研磨効果および研磨後の表面平滑性の観点から、砥粒のDP2/DP1は、通常は1.2〜3の範囲にあることが適当であり、1.5〜2.5の範囲が好ましく、1.7〜2.3(例えば1.8以上2.2以下)の範囲がより好ましい。
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす砥粒の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。例えば、砥粒の多くがピーナッツ形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
特に限定するものではないが、砥粒の一次粒子の長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、原理上1.0以上であり、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上である。砥粒の平均アスペクト比の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。また、砥粒の平均アスペクト比は、スクラッチ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
上記砥粒の形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
<1−4.塩基性化合物>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には塩基性化合物を含有する。本明細書中において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。典型的には、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物は、研磨対象となる面を化学的に研磨する働きをし、研磨速度の向上に寄与し得る。また、塩基性化合物は、研磨用組成物(特に、砥粒を含む組成の研磨用組成物)の分散安定性の向上に役立ち得る。
塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。例えば、アルカリ金属の水酸化物、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。水酸化第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。このような塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
研磨速度向上等の観点から好ましい塩基性化合物として、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。なかでも好ましいものとして、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムが例示される。より好ましいものとしてアンモニアおよび水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。特に好ましい塩基性化合物としてアンモニアが挙げられる。
<1−5.界面活性剤>
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤(典型的には、分子量1×10未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤の使用により、研磨用組成物(特に、砥粒を含む研磨用組成物)の分散安定性が向上し得る。また、研磨面のヘイズを低減することが容易となり得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体(ジブロック型、トリブロック型、ランダム型、交互型);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性活性剤の具体例としては、EOとPOとのブロック共重合体(ジブロック体、PEO−PPO−PEO型トリブロック体、PPO−PEO−PPO型トリブロック体等)、EOとPOとのランダム共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシエチレンオレイルアミド、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。なかでも好ましい界面活性剤として、EOとPOとのブロック共重合体(特に、PEO−PPO−PEO型のトリブロック体)、EOとPOとのランダム共重合体およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンデシルエーテル)が挙げられる。
界面活性剤の分子量は、典型的には1×10未満であり、研磨用組成物の濾過性や研磨対象物の洗浄性等の観点から9500以下が好ましい。また、界面活性剤の分子量は、典型的には200以上であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上が好ましく、300以上(例えば500以上)がより好ましい。なお、界面活性剤の分子量としては、GPCにより求められる重量平均分子量(Mw)(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される分子量を採用することができる。
界面活性剤の分子量のより好ましい範囲は、界面活性剤の種類によっても異なり得る。例えば、界面活性剤としてEOとPOとのブロック共重合体を用いる場合には、Mwが1000以上のものが好ましく、2000以上のものがより好ましく、5000以上のものがさらに好ましい。
<1−6.任意ポリマー>
ここに開示される研磨用組成物は、上述した水溶性ポリマー(すなわち、所定のSP値を満たす繰返し単位Aおよび繰返し単位Bを含み、かつ所定の平均SP値を満たす水溶性ポリマー)に加えて、必要に応じて、Mwが1×10以上である他の水溶性ポリマー(以下「任意ポリマー」ともいう。)を含有し得る。かかる任意ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーであって上述した水溶性ポリマーに該当しないもののなかから適宜選択することができる。
上記任意ポリマーは、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記任意ポリマーは、例えば、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド構造、第四級窒素構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記任意ポリマーとしてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
ここに開示される研磨用組成物における任意ポリマーの好適例として、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、平均SP値が17.5よりも高いポリビニルアルコール等が例示される。
オキシアルキレン単位を含むポリマーの例としては、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体、EOとPOとのランダム共重合体等が挙げられる。EOとPOとのブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO−PPO−PEO型トリブロック体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック体がより好ましい。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN−(メタ)アクリロイル型のモノマー単位を含むポリマー、N−ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリロイル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。例えば、N−(メタ)アクリロイルモルホリンの単独重合体および共重合体、N−ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体等を採用し得る。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
任意ポリマーとしてポリビニルアルコールを用いる場合、該ポリビニルアルコールとしては、けん化度90モル%以上のものが好ましく、95モル%以上(例えば98モル%超)のものがより好ましい。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、原理上、100モル%以下である。
ここに開示される研磨用組成物に含有させ得る任意ポリマーの他の例として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体およびプルランが挙げられる。
上記任意ポリマーの分子量および分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されない。例えば、上述した水溶性ポリマーにおける好ましいMwおよび分子量分布を、任意ポリマーにおける好ましいMwおよび分子量分布にも適用することができる。
任意ポリマーの使用量は、研磨用組成物に含まれるMw1×10以上の水溶性成分(上述した水溶性ポリマーおよび必要に応じて使用される任意ポリマーを含む)の総量の30質量%以下とすることが適当であり、15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下(例えば5質量%以下)とすることがより好ましい。ここに開示される研磨用組成物は、任意ポリマーを実質的に含有しない(例えば、上記水溶性成分の総量に占める任意ポリマーの割合が1質量%未満であるか、あるいは任意ポリマーが検出されない)態様で好ましく実施され得る。
また、ここに開示される研磨用組成物が任意ポリマーとしてセルロース誘導体を含む場合、その使用量は、該研磨用組成物に含まれるMw1×10以上の水溶性成分の総量の10質量%以下に抑えることが好ましく、5質量%以下(典型的には1質量%以下)とすることがさらに好ましい。このことによって、天然物に由来するセルロース誘導体の使用に起因する異物の混入や凝集の発生をより高度に抑制することができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、セルロース誘導体を実質的に含有しない(例えば、上記水溶性成分の総量に占めるセルロース誘導体の割合が1質量%未満であるか、あるいはセルロース誘導体が検出されない)態様で好ましく実施され得る。
なお、ここに開示される技術は、次の条件:Mwが1×10以上である;水酸基を有する繰返し単位hを含む;および、水酸基量が4mmol/g以上21mmol/g以下の範囲にある;を満たす水溶性ポリマーQを含む研磨用組成物の態様で実施され得る。上記水溶性ポリマーQは、上述した所定のSP値を満たす繰返し単位Aおよび繰返し単位Bを含みかつ所定の平均SP値を満たす水溶性ポリマーに該当するものであってもよく、上記任意ポリマーに該当するものであってもよい。このような水溶性ポリマーQを含む研磨用組成物は、該水溶性ポリマーQの水酸基量が4mmol/g以上21mmol/g以下の範囲に維持された状態で研磨対象物に供給して該研磨対象物の研磨に用いられることが好ましい。上記繰返し単位hは、例えばビニルアルコール単位であり得る。
ここで、本明細書中において水酸基量とは、ポリマー1g当たりに含まれる水酸基のモル数をいう。水酸基量は、一般的には、測定対象のポリマーを含む試料液にJIS K0070に規定する中和滴定法を適用して求めた水酸基価(mgKOH/g)を56.1で除することにより得られる。
また、測定対象のポリマーが例えば部分けん化ポリビニルアルコールのようにカルボン酸ビニル単位およびビニルアルコール単位からなるポリマーである場合は、その測定対象のポリマーを含む試料液に水酸化カリウム(KOH)を添加して加温することにより完全けん化させた際のKOH消費量を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出し、それらのモル数から水酸基量を算出してもよい。
上記水酸基量の測定において、研磨用組成物中に含まれるポリマーを測定対象とする場合には、該研磨用組成物を上記試料液として使用することができる。ここで、上記研磨用組成物が砥粒を含む研磨用組成物である場合には、該砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を上記試料液として用いるとよい。
<1−7.その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の例としては、有機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の例としては、無機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩が挙げられる。有機酸およびその塩、ならびに無機酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
<1−8.用途>
ここに開示される研磨用組成物は、種々の材質および形状を有する研磨対象物の研磨に適用され得る。研磨対象物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された研磨対象物であってもよい。なかでも、シリコンからなる表面を備えた研磨対象物の研磨に好適である。ここに開示される技術は、例えば、砥粒としてシリカ粒子を含む研磨用組成物(典型的には、砥粒としてシリカ粒子のみを含む研磨用組成物)であって、研磨対象物がシリコンである研磨用組成物に対して特に好ましく適用され得る。
研磨対象物の形状は特に制限されない。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物の研磨に好ましく適用され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物のファイナルポリシングに好ましく使用され得る。したがって、この明細書によると、上記研磨用組成物を用いたファイナルポリシング工程を含む研磨物の製造方法(例えば、シリコンウエハの製造方法)が提供される。なお、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。ここに開示される研磨用組成物は、また、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程(粗研磨工程と最終研磨工程との間の工程を指す。典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。)、例えばファイナルポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
ここに開示される研磨用組成物は、シリコンからなる表面の研磨の研磨に好ましく使用することができ、シリコンウエハの研磨に特に好ましく使用され得る。例えば、シリコンウエハのファイナルポリシングまたはそれよりも上流のポリシング工程に用いられる研磨用組成物として好適である。例えば、上流の工程によって表面粗さ0.01nm〜100nmの表面状態に調製されたシリコンウエハのポリシング(典型的にはファイナルポリシングまたはその直前のポリシング)への適用が効果的である。ファイナルポリシングへの適用が特に好ましい。
<1−9.研磨液>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。ここに開示される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
研磨液における水溶性ポリマーの含有量は特に制限されず、例えば1×10−4質量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい含有量は5×10−4質量%以上であり、より好ましくは1×10−3質量%以上、例えば2×10−3質量%以上である。また、研磨速度等の観点から、上記含有量を0.2質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以下(例えば0.05質量%以下)とすることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物が砥粒を含む場合、研磨液における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、例えば0.15質量%以上である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。よりヘイズの低い表面を実現する観点から、通常は、上記含有量は10質量%以下が適当であり、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、例えば1質量%以下である。
ここに開示される研磨用組成物が塩基性化合物を含む場合、研磨液における塩基性化合物の含有量は特に制限されない。研磨速度向上等の観点から、通常は、その含有量を研磨液の0.001質量%以上とすることが好ましく、0.003質量%以上とすることがより好ましい。また、ヘイズ低減等の観点から、上記含有量を0.4質量%未満とすることが好ましく、0.25質量%未満とすることがより好ましい。
研磨液のpHは特に制限されない。例えば、pH8.0〜12.0が好ましく、9.0〜11.0がより好ましい。かかるpHの研磨液となるように塩基性化合物を含有させることが好ましい。上記pHは、例えば、シリコンウエハの研磨に用いられる研磨液(例えばファイナルポリシング用の研磨液)に好ましく適用され得る。
ここに開示される研磨用組成物が界面活性剤を含む場合、研磨液における界面活性剤の含有量は特に制限されず、例えば1×10−4質量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい含有量は5×10−4質量%以上であり、より好ましくは1×10−3質量%以上、例えば2×10−3質量%以上である。また、洗浄性や研磨速度等の観点から、上記含有量は0.2質量%以下が好ましく、0.1質量%以下(例えば0.05質量%以下)がより好ましい。
また、ここに開示される研磨用組成物が界面活性剤を含む場合、水溶性ポリマーの含有量w1と界面活性剤の含有量w2との質量比(w1/w2)は特に制限されないが、例えば0.01〜100の範囲とすることができ、0.05〜50の範囲が好ましく、0.1〜30の範囲がより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物が砥粒を含む研磨液の形態で使用される場合、該砥粒100質量部に対する界面活性剤の含有量は、例えば20質量部以下とすることが適当であり、15質量部以下が好ましく、10質量部以下(例えば6質量部以下)がより好ましい。界面活性剤の使用効果をよりよく発揮させる観点から、砥粒100質量部に対する界面活性剤含有量は、0.001質量部以上が適当であり、0.005質量部以上が好ましく、0.01質量部以上(例えば0.1質量部以上)がより好ましい。
あるいは、組成の単純化等の観点から、ここに開示される研磨用組成物は、界面活性剤を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
<1−10.濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度が適当である。好ましい一態様に係る研磨用組成物の濃縮倍率は10倍〜40倍であり、例えば15倍〜25倍である。
このように濃縮液の形態にある研磨用組成物は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に前述の水系溶媒を加えて混合することにより行うことができる。また、上記水系溶媒が混合溶媒である場合、該水系溶媒の構成成分のうち一部の成分のみを加えて希釈してもよく、それらの構成成分を上記水系溶媒とは異なる量比で含む混合溶媒を加えて希釈してもよい。また、後述するように多剤型の研磨用組成物においては、それらのうち一部の剤を希釈した後に他の剤と混合して研磨液を調製してもよく、複数の剤を混合した後にその混合物を希釈して研磨液を調製してもよい。
上記濃縮液のNVは、例えば50質量%以下とすることができる。研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、通常、濃縮液のNVは、40質量%以下とすることが適当であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、例えば15質量%以下である。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、濃縮液のNVは、0.5質量%以上とすることが適当であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、例えば5質量%以上である。
上記濃縮液における水溶性ポリマーの含有量は、例えば3質量%以下とすることができる。研磨用組成物の濾過性や洗浄性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。また、上記含有量は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、通常は1×10−3質量%以上であることが適当であり、好ましくは5×10−3質量%以上、より好ましくは1×10−2質量%以上である。
ここに開示される研磨用組成物が砥粒を含む場合、上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば50質量%以下とすることができる。研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。好ましい一態様において、砥粒の含有量を30質量%以下としてもよく、20質量%以下(例えば15質量%以下)としてもよい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5質量%以上とすることができ、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上(例えば5質量%以上)である。
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分のうち一部の成分を含むA液(例えば、後述する塩基性砥粒分散液)と、残りの成分を含むB液(例えば、後述するポリマー水溶液)とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成され得る。
<1−11.研磨用組成物の調製>
ここに開示される研磨用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
特に限定するものではないが、水溶性ポリマーと砥粒と塩基性化合物とを含む組成の研磨用組成物については、より凝集の少ない研磨用組成物を安定して(再現性よく)製造する観点から、例えば、砥粒(例えばシリカ粒子)と塩基性化合物と水とを含む分散液(以下「塩基性砥粒分散液」ともいう。)を用意し、この塩基性砥粒分散液と水溶性ポリマーとを混合する製造方法を好ましく採用することができる。
このように砥粒と塩基性化合物とが共存している塩基性砥粒分散液は、上記塩基性化合物により上記砥粒の静電反撥が強められているので、塩基性化合物を含まない(典型的にはほぼ中性の)砥粒分散液に比べて砥粒の分散安定性が高い。このため、中性の砥粒分散液に水溶性ポリマーを加えた後に塩基性化合物を加える態様や、中性の砥粒分散液と水溶性ポリマーと塩基性化合物とを一度に混合する態様に比べて、砥粒の局所的な凝集が生じにくい。このことは、研磨用組成物の濾過性向上や研磨後の表面における欠陥低減等の観点から好ましい。
なお、上記水溶性ポリマーは、あらかじめ水に溶解した水溶液(以下「ポリマー水溶液」ともいう。)の形態で塩基性砥粒分散液と混合することが好ましい。このことによって、砥粒の局所的な凝集がよりよく抑制され得る。
塩基性砥粒分散液とポリマー水溶液とを混合する際には、塩基性砥粒分散液に対してポリマー水溶液を添加することが好ましい。かかる混合方法によると、例えばポリマー水溶液に対して塩基性砥粒分散液を添加する混合方法に比べて、砥粒の局所的な凝集をよりよく防止することができる。砥粒がシリカ粒子(例えばコロイダルシリカ粒子)である場合には、上記のように塩基性砥粒分散液に対してポリマー水溶液を添加する混合方法を採用することが特に有意義である。
上記塩基性砥粒分散液は、製造目的たる研磨用組成物を構成する砥粒、水溶性ポリマー、塩基性化合物および水のうち、砥粒の少なくとも一部と、塩基性化合物の少なくとも一部と、水の少なくとも一部とを含有する。例えば、上記砥粒分散液が、研磨用組成物を構成する砥粒の全部と、塩基性化合物の少なくとも一部と、水の少なくとも一部とを含有する態様を好ましく採用し得る。
塩基性砥粒分散液中における塩基性化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。塩基性化合物の含有量の増加によって、研磨用組成物の調製時における局所的な凝集の発生がよりよく抑制される傾向となる。また、塩基性砥粒分散液中における塩基性化合物の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。塩基性化合物の含有量の低下によって、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。
塩基性砥粒分散液のpHは、8以上が好ましく、より好ましくは9以上である。pHの上昇によって、この塩基性砥粒分散液に水溶性ポリマーまたはその水溶液を添加した場合に、局所的な凝集の発生がよりよく抑制される傾向となる。塩基性砥粒分散液のpHは、12以下が好ましく、より好ましくは11.5以下であり、さらに好ましくは10.5以下である。塩基性砥粒分散液のpHを7以上の範囲においてより低く設定することにより、該分散液の調製に必要な塩基性化合物の量が少なくなるので、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。また、例えば砥粒がシリカ粒子である場合、pHが高すぎないことはシリカの溶解を抑制する観点からも有利である。混合物のpHは、塩基性化合物の配合量等により調整することができる。
かかる塩基性砥粒分散液は、砥粒と塩基性化合物と水とを混合することにより調製することができる。上記混合には、例えば翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いることができる。塩基性砥粒分散液に含まれる各成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。好ましい一態様の一例として、砥粒と水とを含むほぼ中性の分散液と、塩基性化合物またはその水溶液とを混合する態様が挙げられる。
上記水溶性ポリマーを塩基性砥粒分散液に水溶液(ポリマー水溶液)の形態で混合する場合、そのポリマー水溶液中における水溶性ポリマーの含有量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。水溶性ポリマーの含有量の増加によって、研磨用組成物中における水溶性ポリマーの含有量の調整が容易となる。ポリマー水溶液中における水溶性ポリマーの含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。水溶性ポリマーの含有量の減少によって、このポリマー水溶液を塩基性砥粒分散液と混合する際に、砥粒の局所的な凝集がよりよく抑制される傾向となる。
上記ポリマー水溶液のpHは特に限定されず、例えばpH2〜11に調整され得る。上記ポリマー水溶液は、好ましくは中性付近から塩基性付近の液性に調整され、より好ましくは塩基性に調整される。より具体的には、ポリマー水溶液のpHは、8以上が好ましく、より好ましくは9以上である。pH調整は、典型的には、研磨用組成物を構成する塩基性化合物の一部を用いて行うことができる。ポリマー水溶液のpHの上昇によって、塩基性砥粒分散液にポリマー水溶液を添加した場合に、砥粒の局所的な凝集がよりよく抑制され得る。ポリマー水溶液のpHは、12以下が好ましく、より好ましくは10.5以下である。ポリマー水溶液のpHがより低くなると、該ポリマー水溶液の調製に必要な塩基性化合物の量が少なくなるため、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。また、例えば砥粒がシリカ粒子である場合、pHが高すぎないことはシリカの溶解を抑制する観点からも有利である。
塩基性砥粒分散液にポリマー水溶液を投入する際の速度(供給レート)は、該分散液1Lに対してポリマー水溶液500mL/分以下とすることが好ましく、より好ましくは100mL/分以下、さらに好ましくは50mL/分以下である。投入速度の減少によって、砥粒の局所的な凝集をよりよく抑制することができる。
好ましい一態様において、ポリマー水溶液は、塩基性砥粒分散液に投入する前に濾過することができる。ポリマー水溶液を濾過することにより、該ポリマー水溶液中に含まれる異物や凝集物の量をさらに低減することができる。
濾過の方法は特に限定されず、例えば、常圧で行う自然濾過の他、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の濾過方法を適宜採用することができる。濾過に用いるフィルタは、目開きを基準に選択されることが好ましい。研磨用組成物の生産効率の観点から、フィルタの目開きは、0.05μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μmである。また、異物や凝集物の除去効果を高める観点から、フィルタの目開きは、100μm以下が好ましく、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。フィルタの材質や構造は特に限定されない。フィルタの材質としては、例えば、セルロース、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ガラス等が挙げられる。フィルタの構造としては、例えばデプス、プリーツ、メンブレン等が挙げられる。
上記で説明した研磨用組成物製造方法は、塩基性砥粒分散液と水溶性ポリマーまたはその水溶液とを混合して得られる研磨用組成物が研磨液(ワーキングスラリー)またはこれとほぼ同じNVである場合にも、後述する濃縮液である場合にも好ましく適用され得る。
特に限定するものではないが、上記水溶性ポリマーが塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマー(以下「水溶性ポリマーH」ともいう。)である場合には、かかる水溶性ポリマーを用いることの効果をよりよく発揮させる観点から、塩基性砥粒分散液と水溶性ポリマーHの水溶液とを、研磨液またはこれとほぼ同じNVの(典型的には、砥粒の含有量が3質量%未満、より好ましくは1質量%未満の)研磨用組成物が形成されるように混合することが好ましい。あるいは、塩基性砥粒分散液と水溶性ポリマーHの水溶液とを混合した後、その混合から比較的単時間のうちに(例えば、混合後24時間以内に)、該混合物を研磨液またはこれとほぼ同じNVに(典型的には、砥粒の含有量が3質量%未満、より好ましくは1質量%未満に)希釈することが好ましい。水溶性ポリマーHの具体例としては、繰返し単位として5モル%以上の酢酸ビニル単位を含む水溶性ポリマー(例えば、繰返し単位として酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位とを含む水溶性ポリマー)が挙げられる。
<1−12.研磨>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物の研磨に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(典型的にはスラリー状の研磨液であり、研磨スラリーと称されることもある。)を用意する。上記研磨液を用意することには、上述のように、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。また、多剤型の研磨用組成物の場合、上記研磨液を用意することには、それらの剤を混合すること、該混合の前に1または複数の剤を希釈すること、該混合の後にその混合物を希釈すること、等が含まれ得る。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコンウエハのファイナルポリシングを行う場合には、ラッピング工程および1次ポリシング工程を経たシリコンウエハを一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコンウエハの表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコンウエハの表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
なお、上記研磨工程で使用される研磨パッドは特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
上述のような研磨工程は、研磨物(例えば、シリコンウエハ等の基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む研磨物の製造方法(好適には、シリコンウエハの製造方法)が提供される。
上述のような研磨工程において、研磨対象物に供給される研磨液は、ここに開示される水溶性ポリマー(すなわち、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含み、平均SP値が17.5以下である水溶性ポリマー)を含むことが好ましい。このことによって、上記水溶性ポリマーを使用することの効果(ヘイズ低減、LPD数低減等)がより適切に発揮され得る。
<1−13.洗浄>
ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨された研磨物は、典型的には、研磨後に洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC−1洗浄液(水酸化アンモニウム(NHOH)と過酸化水素(H)と水(HO)との混合液。以下、SC−1洗浄液を用いて洗浄することを「SC−1洗浄」という。)、SC−2洗浄液(HClとHとHOとの混合液。)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば常温〜90℃程度とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃〜85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。
<<2.第二の態様に係る研磨用組成物>>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、砥粒と水溶性ポリマーと水とを含む。上記研磨用組成物は、
以下のエッチングレート測定:
(1A)前記水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを用意する;
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する;
(3A)前記シリコン基板を前記薬液LEに室温にて12時間浸漬する;
(4A)前記薬液LEから前記シリコン基板を取り出し、室温にてNH(29%):H(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する;
(5A)洗浄後の前記シリコン基板の質量W1を測定する;および
(6A)前記W0と前記W1との差および前記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する;
に基づくエッチングレートが2.0nm/分以下であり、かつ
以下の砥粒吸着率測定:
(1B)前記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って前記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める;
(2B)前記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める;
(3B)前記C0および前記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する;
に基づく砥粒吸着率が20%以下である。
以下、上記第二の態様に係る研磨用組成物について詳しく説明する。
<2−1.水溶性ポリマー>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーのなかから、上記研磨用組成物において所定のエッチングレートおよび砥粒吸着率が実現され得るように適宜選択することができる。
上記水溶性ポリマーは、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記水溶性ポリマーは、例えば、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド構造、第四級窒素構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。
分子中にアシルオキシ基を有する水溶性ポリマーの一好適例として、少なくともモノカルボン酸ビニルエステル単位を含むポリマーが挙げられる。上記モノカルボン酸ビニルエステル単位の好ましい具体例としては、酢酸ビニル単位、ヘキサン酸ビニル単位等が挙げられる。
モノカルボン酸ビニルエステル単位を含む水溶性ポリマーの一好適例として、酢酸ビニル単位を含むポリマーが挙げられる。このような水溶性ポリマーにおいて、全繰返し単位のモル数に占める酢酸ビニル単位のモル数は、典型的には5%以上であり、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。全繰返し単位のモル数に占める酢酸ビニル単位のモル数は特に制限されないが、水に対する溶解性等の観点から、通常は80%以下とすることが適当であり、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
モノカルボン酸ビニルエステル単位を含む水溶性ポリマーの他の好適例として、ヘキサン酸ビニル単位を含むポリマーが挙げられる。全繰返し単位のモル数に占めるヘキサン酸ビニル単位のモル数は特に限定されないが、典型的には5%以上であり、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。特に限定するものではないが、全繰返し単位のモル数に占めるヘキサン酸ビニル単位のモル数の上限は、水に対する溶解性等の観点から、通常は80%以下とすることが適当であり、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下(例えば30%以下)であることがさらに好ましい。
分子中に水酸基を有する水溶性ポリマーの一好適例として、少なくともビニルアルコール単位を含むポリマーが挙げられる。ここに開示される技術は、上記水溶性ポリマーとして、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位とを含む水溶性ポリマーを用いる態様で好ましく実施され得る。このような水溶性ポリマーの一例として、酢酸ビニルの単独重合体または共重合体を部分けん化した構造の水溶性ポリマーが挙げられる。例えば、酢酸ビニルの単独重合体を部分けん化した構造の部分けん化ポリビニルアルコールを好ましく使用し得る。上記部分けん化ポリビニルアルコールは、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーである。
ここに開示される技術は、また、上記水溶性ポリマーとして、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位とを含む水溶性ポリマーを用いる態様で好ましく実施され得る。このような水溶性ポリマーの一例として、ヘキサン酸ビニルの単独重合体または共重合体を部分けん化した構造の水溶性ポリマーが挙げられる。例えば、酢酸ビニルとヘキサン酸ビニルとの共重合体を部分けん化した構造の部分けん化ポリビニルアルコールを好ましく使用し得る。上記部分けん化ポリビニルアルコールの例には、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーと、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位と酢酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーとが含まれる。
このような部分けん化ポリビニルアルコールとしては、水に対する溶解性等の観点から、けん化度が50モル%以上(より好ましくは60モル%以上)であって所定のエッチングレートおよび砥粒吸着率を満たすものを好ましく用いることができる。上記エッチングレートおよび砥粒吸着率の観点から、けん化度が90モル%以下の部分けん化ポリビニルアルコールが好ましく、85モル%以下のものがより好ましい。好ましい一態様において、けん化度が80モル%以下の部分けん化ポリビニルアルコールを使用することができる。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、原理上、100モル%以下である。
上記水溶性ポリマーとしては、凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、ノニオン性の水溶性ポリマーを好ましく採用し得る。換言すれば、アニオン性やカチオン性の繰返し単位を実質的に含まない水溶性ポリマーが好ましい。ここで、アニオン性やカチオン性の繰返し単位を実質的に含まないとは、これらの繰返し単位のモル比が0.02%未満(例えば0.001%未満)であることをいう。ノニオン性の水溶性ポリマーの例としては、部分けん化ポリビニルアルコール、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー等が挙げられる。
オキシアルキレン単位を含むポリマーは、炭素原子数2〜6のオキシアルキレン単位(典型的には−C2nO−で表される構造単位。ここでnは2〜6の整数である。)の1種または2種以上を含むポリマーであり得る。上記オキシアルキレン単位の炭素原子数が2〜3であるポリマーが好ましい。そのようなポリマーの例として、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体、EOとPOとのランダム共重合体等が挙げられる。
EOとPOとのブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO−PPO−PEO型トリブロック体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック体がより好ましい。
PEO−PPO−PEO型トリブロック体としては、下記一般式(1)で表されるポリマーを好ましく使用し得る。
HO−(EO)−(PO)−(EO)−H ・・・(1)
一般式(1)中のEOはオキシエチレン単位(−CHCHO−)を示し、POはオキシプロピレン単位(−CHCH(CH)O−)を示し、a、bおよびcはそれぞれ1以上(典型的には2以上)の整数を示す。
一般式(1)において、aとcとの合計は、2〜1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜500の範囲であり、さらに好ましくは10〜200の範囲である。一般式(1)中のbは、2〜200の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100の範囲であり、さらに好ましくは10〜50の範囲である。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。
主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン、N−カプロイルエチレンイミン、N−ベンゾイルエチレンイミン、N−アセチルプロピレンイミン、N−ブチリルエチレンイミン等が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体としては、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−カプロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチリルエチレンイミン)等が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの共重合体の例には、2種以上のN−アシルアルキレンイミン型モノマーの共重合体と、1種または2種以上のN−アシルアルキレンイミン型モノマーと他のモノマーとの共重合体が含まれる。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN−(メタ)アクリロイル型のモノマー単位を含むポリマー、N−ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリロイル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。
N−(メタ)アクリロイル型のモノマー単位を含むポリマーの例には、N−(メタ)アクリロイル型モノマーの単独重合体および共重合体(典型的には、N−(メタ)アクリロイル型モノマーの共重合割合が50質量%を超える共重合体)が含まれる。N−(メタ)アクリロイル型モノマーの例には、N−(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドおよびN−(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドが含まれる。
N−(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドの例としては、(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。N−(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドをモノマー単位として含むポリマーの例として、N−イソプロピルアクリルアミドの単独重合体およびN−イソプロピルアクリルアミドの共重合体(例えば、N−イソプロピルアクリルアミドの共重合割合が50質量%を超える共重合体)が挙げられる。
N−(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの例としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン等が挙げられる。N−(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドをモノマー単位として含むポリマーの例として、N−アクリロイルモルホリンの単独重合体およびN−アクリロイルモルホリンの共重合体(例えば、N−アクリロイルモルホリンの共重合割合が50質量%を超える共重合体)が挙げられる。
N−ビニル型のモノマー単位を含むポリマーの例には、N−ビニルラクタム型モノマーの単独重合体および共重合体(例えば、N−ビニルラクタム型モノマーの共重合割合が50質量%を超える共重合体)、N−ビニル鎖状アミドの単独重合体および共重合体(例えば、N−ビニル鎖状アミドの共重合割合が50質量%を超える共重合体)が含まれる。
N−ビニルラクタム型モノマーの具体例としては、N−ビニルピロリドン(VP)、N−ビニルピペリドン、N−ビニルモルホリノン、N−ビニルカプロラクタム(VC)、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等が挙げられる。N−ビニルラクタム型のモノマー単位を含むポリマーの具体例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム、VPとVCとのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方と他のビニルモノマー(例えば、アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー等)とのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方を含むポリマーセグメントを含むブロック共重合体やグラフト共重合体(例えば、ポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンがグラフトしたグラフト共重合体)等が挙げられる。
N−ビニル鎖状アミドの具体例としては、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオン酸アミド、N−ビニル酪酸アミド等が挙げられる。
ペンダント基に窒素原子を有するポリマーの他の例として、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の、アミノ基を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー)の単独重合体および共重合体が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物に含有させ得る水溶性ポリマーの他の例として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体およびプルランが挙げられる。
上記水溶性ポリマーの分子量は特に限定されない。例えば重量平均分子量(Mw)が200×10以下(典型的には1×10〜200×10、例えば1×10〜150×10)の水溶性ポリマーを用いることができる。凝集物の発生をよりよく防止する観点から、通常は、Mwが100×10未満(より好ましくは80×10以下、さらに好ましくは50×10以下、典型的には40×10以下、例えば30×10以下)の水溶性ポリマーの使用が好ましい。また、研磨用組成物の濾過性や洗浄性等の観点から、Mwが25×10以下(より好ましくは20×10以下、さらに好ましくは15×10以下、典型的には10×10以下、例えば5×10以下)の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。一方、一般に水溶性ポリマーのMwが大きくなるとヘイズ低減効果は高くなる傾向にある。かかる観点から、通常は、Mwが0.1×10以上(典型的には0.2×10以上、例えば1×10以上)の水溶性ポリマーを好ましく採用し得る。
ここに開示される技術において、水溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との関係は特に制限されない。凝集物の発生防止等の観点から、例えば分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であるものを好ましく用いることができる。研磨用組成物の性能安定性等の観点から、水溶性ポリマーのMw/Mnは、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下(例えば2.5以下)である。
なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。
なお、水溶性ポリマーのMwおよびMnとしては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。
<2−2.水>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる水としては、第一の態様に係る研磨用組成物について説明した水と同様のものを用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が0.01質量%〜50質量%であり、残部が水系溶媒(水または水と上記有機溶剤との混合溶媒)である形態、または残部が水系溶媒および揮発性化合物(例えばアンモニア)である形態で好ましく実施され得る。上記NVが0.05質量%〜40質量%である形態がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める質量の割合を指す。
<2−3.砥粒>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる砥粒は、第一の態様に係る研磨用組成物に含まれ得る砥粒と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−4.塩基性化合物>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれ得る塩基性化合物は、第一の態様に係る研磨用組成物に含まれ得る塩基性化合物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−5.界面活性剤>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。使用し得る界面活性剤は、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−7.その他の成分>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。第二の態様に係る研磨用組成物に含有させ得る添加剤は、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−8.エッチングレートおよび砥粒吸着比>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、砥粒と水溶性ポリマーと水とを含み、上述したエッチングレート測定によるエッチングレートが2.0nm/分以下であり、かつ上述した砥粒吸着率測定に基づく砥粒吸着率が20%以下であることによって特徴づけられる。
エッチングレート測定は以下のようにして行われる。より詳しくは、例えば、後述する実施例に記載のエッチングレート測定と同様にして行うことができる。
[エッチングレート測定]
(1A)研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを調製する。
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する。
(3A)上記シリコン基板を上記薬液LEに室温にて12時間浸漬する。
(4A)上記薬液LEから上記シリコン基板を取り出し、室温にてNH(29%):H(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する。
(5A)洗浄後の上記シリコン基板の質量W1を測定する。
(6A)上記W0と上記W1との差および上記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する。
なお、2種以上の水溶性ポリマーを含む研磨用組成物についてのエッチングレートは、それら2種以上の水溶性ポリマーを上記研磨用組成物と同じ割合で使用して上記エッチングレート測定を行うことにより求められる。
砥粒吸着率測定は以下のようにして行われる。より詳しくは、例えば、後述する実施例に記載の砥粒吸着率測定と同様にして行うことができる。
[砥粒吸着率測定]
(1B)上記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って上記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める。
(2B)上記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める。
(3B)上記C0および上記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する。
上記砥粒吸着率が20%以下であることは、研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーのうち大部分(典型的には80質量%超)が砥粒に吸着していない状態にあることを意味する。このように砥粒に吸着していない状態の水溶性ポリマー(以下、フリーポリマーということもある。)は、該ポリマーが砥粒に吸着している場合に比べて研磨対象物の表面へ早く吸着し得ることから、該表面の保護性が高いと考えられる。したがって、フリーポリマーの割合がより高い(砥粒吸着率が低い)研磨用組成物を用いた研磨においては、該研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーがより有効に研磨対象物の表面保護に利用され得る。
一方、水溶性ポリマーが研磨対象物表面を保護する性能は、該水溶性ポリマーの特性によっても異なり得る。上記エッチングレートは、砥粒によるメカニカル作用の影響を除いた条件で、水溶性ポリマーがアルカリによる腐食から研磨対象物表面を保護する性能を評価する指標となり得る。エッチングレートがより低いということは、研磨対象物の表面に水溶性ポリマーが吸着し、該表面が塩基性化合物等により化学的にエッチングされる事象を抑制する性能、すなわち研磨対象物の表面を保護する性能がより高いことを示す傾向にある。ここに開示される研磨用組成物は、エッチングレートが所定値以下となる表面保護性能を示す水溶性ポリマーを含む。つまり、該水溶性ポリマーの大部分はフリーポリマーとして液相中に存在し、一部は砥粒に吸着することにより、研磨対象物表面のヘイズを低減する効果を的確に発揮し得るものと考えられる。また、砥粒吸着性が低いので砥粒と水溶性ポリマーとの凝集物が発生しにくい。このことがLPD数の低減および研磨用組成物の濾過性の向上に有利に寄与し得るものと考えられる。
上記エッチングレートは、表面保護性能(ひいてはヘイズ低減効果)の観点から、2.0nm/分未満であることが好ましく、1.8nm/分以下であることがより好ましく、1.5nm/分以下であることがさらに好ましい。ここに開示される研磨用組成物は、より高いヘイズ低減効果を得る観点から、上記エッチングレートが1.2nm/分以下(さらには1.0nm/分未満)である態様でも好ましく実施され得る。上記エッチングレートの下限は特に限定されないが、研磨効率の観点から、通常は0.3nm/分以上であることが好ましく、0.5nm/分以上であることがより好ましい。
上記砥粒吸着率は、ヘイズ低減効果とLPD数低減効果とを高レベルで両立させる観点から、20%以下(典型的には20%未満)であることが好ましく、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。ここに開示される研磨用組成物は、より高品位の表面を実現する観点から、砥粒吸着率が5%以下である(より好ましくは3%以下であり、実質的に0%であってもよい)態様でも好ましく実施され得る。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーの種類および量(濃度)は、使用する砥粒の種類(材質、サイズ、形状)や濃度、研磨用組成物のpH等に応じて、上述したエッチングレートおよび砥粒吸着量を満たすように選択することができる。
水溶性ポリマーは、公知の水溶性ポリマー(例えば、上記で例示した水溶性ポリマー)のなかから、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の水溶性ポリマーを組み合わせて用いる場合には、上記エッチングレートおよび砥粒吸着量を満たすようにそれらの使用量比を設定することができる。
特に限定するものではないが、ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、1種類の水溶性ポリマーを単独で含む態様(典型的には、該研磨用組成物に含まれる成分のうちMwが1×10を超える水溶性成分が1種類のみである態様)で好ましく実施され得る。かかる研磨用組成物は、その組成が単純であるため、原料コストの低減、生産設備の簡略化、品質安定性の向上、品質管理の容易化等の点で有利なものとなり得る。かかる態様の研磨用組成物において採用し得る水溶性ポリマーの一好適例として、けん化度が95モル%未満(より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、典型的には80モル%以下)のポリビニルアルコールが挙げられる。このような研磨用組成物の水溶性ポリマーとして用いられるポリビニルアルコールとしては、けん化度が60モル%以上のものが好ましく、65モル%以上(例えば70モル%以上)のものがより好ましい。
このように1種類の水溶性ポリマーを単独で含む態様において、該水溶性ポリマー(例えば、けん化度95モル%未満のポリビニルアルコール)としては、濾過性や洗浄性等の観点から、Mwが25×10以下(より好ましくは20×10以下、さらに好ましくは15×10以下、典型的には10×10以下、例えば5×10以下)のものを好ましく使用し得る。また、ヘイズ低減の観点から、上記水溶性ポリマーのMwは1×10以上であることが好ましい。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物において、Mwが3×10以下の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。上記水溶性ポリマーのMwは、2×10以下であってもよく、1×10以下であってもよく、0.5×10以下(例えば0.4×10以下)であってもよい。水溶性ポリマーのMwは、典型的には1×10以上であり、通常は0.2×10以上であることが好ましい。例えば、少なくともビニルアルコール単位を含む水溶性ポリマーについて、上記Mwの範囲を好ましく適用し得る。
特に限定するものではないが、上記水溶性ポリマーのMw/Mnは、凝集物の発生防止等の観点から、5.0以下(典型的には1.05以上5.0以下)が適当であり、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下(例えば2.5以下)がさらに好ましい。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の構成成分として使用する水溶性ポリマーを選択するにあたっては、例えば、該水溶性ポリマーの平均SP値を考慮することができる。このことによって、所望のエッチングレートおよび砥粒吸着量を満たす水溶性ポリマーを効率よく選択することができる。より具体的には、ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物における水溶性ポリマーとして、上記平均SP値が17.5以下である水溶性ポリマーを好ましく採用し得る。このような水溶性ポリマーを含む研磨用組成物は、水に対する溶解性、砥粒(典型的にはシリカ砥粒)への吸着性および研磨対象物(例えばシリコン基板)への吸着性のバランスが適当であり、ここに開示される好ましいエッチングレートおよび砥粒吸着率を満たすものとなりやすい。なかでも好ましい水溶性ポリマーとして、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含み、かつ平均SP値が17.5以下である水溶性ポリマーが挙げられる。
水溶性ポリマーの平均SP値の下限は特に限定されない。水に対する溶解性等の観点から、水溶性ポリマーの平均SP値は、10.0以上が好ましく、11.0以上がより好ましく、12.0以上(例えば12.5以上)であることがさらに好ましい。好ましい一態様において、水溶性ポリマーの平均SP値は、13.5以上であってもよく、14.0以上であってもよい。また、研磨対象物(例えばシリコンウエハ)に対して適度な吸着性を示し、ヘイズの低減とLPD数の低減とをバランスよく両立する観点から、水溶性ポリマーのSP値は、17.4以下が好ましく、17.2以下がより好ましく、17.0以下がさらに好ましい。
上記水溶性ポリマーは、SP値が14.5以上である繰返し単位Aの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含み得る。繰返し単位Aの具体例としては、上記表1に示すものが挙げられる。
水溶性ポリマーの平均SP値を調整しやすいという観点から、繰返し単位AのSP値(2種以上の繰返し単位Aを含む場合にはそれらの平均SP値。以下同じ)としては、15以上が好ましく、16以上がより好ましく、17以上(例えば18以上)がさらに好ましい。
上記水溶性ポリマーは、SP値が14.5未満である繰返し単位Bの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含み得る。繰返し単位Bの具体例としては、上記表2に示すものが挙げられる。
水溶性ポリマーの平均SP値を調整しやすいという観点から、繰返し単位BのSP値(2種以上の繰返し単位Bを含む場合にはそれらの平均SP値。以下同じ)としては、13.5以下が好ましく、13.0以下がより好ましく、12.5以下(例えば12.0以下)がさらに好ましい。好ましい一態様において、繰返し単位BのSP値は、11.0以下であってもよく、さらに10.0以下であってもよい。
特に限定するものではないが、水溶性ポリマーの平均SP値を調整しやすいという観点から、繰返し単位AのSP値と繰返し単位BのSP値との差は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上(例えば7以上)がさらに好ましい。また、共重合反応性等の観点から、繰返し単位AのSP値と繰返し単位BのSP値との差は、15以下であることが好ましく、13以下(例えば12以下)であることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物が水溶性ポリマーとしてセルロース誘導体を含む場合、その使用量は、該研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマー全体の40質量%以下に抑えることが好ましく、25質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下(典型的には5質量%以下)とすることがさらに好ましい。このことによって、天然物に由来するセルロース誘導体の使用に起因する異物の混入や凝集の発生をより高度に抑制することができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、水溶性ポリマーとしてのセルロース誘導体を実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。
特に限定するものではないが、水溶性ポリマーの含有量は、砥粒100質量部に対して例えば0.01質量部以上とすることができる。砥粒100質量部に対する水溶性ポリマーの含有量は、研磨後の表面平滑性向上(例えばヘイズや欠陥の低減)の観点から0.05質量部以上が適当であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上(例えば1質量部以上)である。また、砥粒100質量部に対する水溶性ポリマーの含有量は、研磨速度や洗浄性等の観点から、例えば40質量部以下とすることができ、通常は20質量部以下が適当であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
また、ここに開示される技術は、次の条件:Mwが1×10以上である;水酸基を有する繰返し単位hを含む;および、水酸基量が4mmol/g以上21mmol/g以下の範囲にある;を満たす水溶性ポリマーQを含む研磨用組成物の態様で実施され得る。上記水溶性ポリマーQは、上述したいずれかの水溶性ポリマーに該当するものであり得る。このような水溶性ポリマーQを含む研磨用組成物は、該水溶性ポリマーQの水酸基量が4mmol/g以上21mmol/g以下の範囲に維持された状態で研磨対象物に供給して該研磨対象物の研磨に用いられることが好ましい。上記繰返し単位hは、例えばビニルアルコール単位であり得る。
<2−9.用途>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の用途は、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−10.研磨液および濃縮液>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の研磨液および濃縮液に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−11.研磨用組成物の調製>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の調製に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−12.研磨>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物を用いる研磨に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<2−13.洗浄>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物を用いて研磨された研磨物の洗浄に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<<3.第一の態様に係る研磨用組成物製造方法>>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、
砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって:
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;および
少なくとも前記A剤を含む第1組成物と少なくとも前記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、前記砥粒、前記塩基性化合物、前記水溶性ポリマーHおよび水を含み前記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である混合物を調製する工程;
を包含する。
以下、上記第一の態様に係る研磨用組成物製造方法について詳しく説明する。
<3−1.水溶性ポリマーH>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基(以下「加水分解性基」ともいう。)を有する水溶性ポリマー(水溶性ポリマーH)を含む研磨用組成物の製造に好ましく適用される。上記水溶性ポリマーHは、典型的には、その分子構造中に含まれる全繰返し単位のモル数のうち加水分解性基を有する繰返し単位のモル数の割合(モル比)が2%を超える水溶性ポリマーである。かかる研磨用組成物の製造において、ここに開示される方法を採用することによる効果が良好に発揮され得る。ここに開示される方法の特に好ましい適用対象(製造対象)として、加水分解性基を有する繰返し単位のモル比が5%以上である水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物製造方法は、塩基性条件下で加水分解性を示す官能基としてエステル基を有する水溶性ポリマーHを用いる態様で好ましく実施され得る。エステル基を有する水溶性ポリマーHの例としては、カルボン酸ビニルエステルや(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、共重合体、それらの変性物(例えば部分けん化物)等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステルの具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。このようなエステル基を有する水溶性ポリマーHは、加水分解反応により、例えばカルボン酸ビニルエステル重合体は主鎖骨格がポリオールである重合体に、(メタ)アクリル酸エステル重合体はポリ(メタ)アクリル酸に、それぞれ変換される。
水溶性ポリマーHの他の例として、塩基性条件下で加水分解性を示す官能基としてアミド基を有するポリ(メタ)アクリルアミド、アルコキシシリル基を有するポリアルコキシシラン誘導体、およびポリアセタール等が挙げられ、それらは加水分解によりそれぞれポリカルボン酸、ポリシラノール、ポリアルデヒド等に変換される。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味であり、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。
ここに開示される技術における水溶性ポリマーHの好適例として、その分子構造中にカルボン酸ビニルエステル単位を含むものが挙げられる。例えば、次式:RCOOCH=CH;で表されるカルボン酸ビニルエステルのビニル基が重合して生じる構造に相当する構造部分を含む水溶性ポリマーHが好ましい。ここで、Rは一価の有機基であり、好ましくは炭素原子数1〜6の炭化水素基である。かかる構造部分は、具体的には、次式:−CH−CH(OCOR)−;により表される。カルボン酸ビニルエステル単位の代表例として、酢酸ビニル(CHCOOCH=CH)のビニル基が重合して生じる酢酸ビニル単位(次式:−CH−CH(OCOCH)−;で表される構造部分)が挙げられる。
水溶性ポリマーHは、加水分解性基を有する繰返し単位(例えばカルボン酸ビニルエステル単位)の1種または2種以上を合計で2モル%より多く含むことが好ましく、5モル%以上(モル比5%以上)の割合で含むことがより好ましく、10モル%以上含むことがさらに好ましい。ここに開示される製造方法の適用効果がよりよく発揮され得るという観点から、加水分解性基を有する繰返し単位のモル比が15%以上(さらには20%以上)である水溶性ポリマーHを好ましく採用し得る。
水溶性ポリマーHにおける加水分解性基を有する繰返し単位のモル比の上限は特に限定されないが、該水溶性ポリマーHの水に対する溶解性の観点から、典型的には80%以下であり、通常は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下(例えば30%以下)であることがさらに好ましい。
水溶性ポリマーHの一好適例として、酢酸ビニルの単独重合体または共重合体の部分けん化物が挙げられる。なかでも好ましい水溶性ポリマーHとして、酢酸ビニルの単独重合体の部分けん化物が挙げられる。かかる水溶性ポリマーHは、酢酸ビニル単位(−CH−CH(OCOCH)−)と、該酢酸ビニル単位がけん化されて生じたビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)とを、そのけん化度に応じた割合(モル比)で含む部分けん化ポリビニルアルコールとしても把握され得る。かかる部分けん化ポリビニルアルコールのけん化度は、典型的には2モル%超、通常は5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上(例えば20モル%以上)であり得る。また、上記部分けん化ポリビニルアルコールのけん化度は、典型的には80モル%以下、通常は60モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下(例えば30モル%以下)である。
上記水溶性ポリマーの分子量は特に限定されない。例えば重量平均分子量(Mw)が200×10以下(典型的には1×10〜200×10、例えば1×10〜150×10)の水溶性ポリマーを用いることができる。凝集物の発生をよりよく防止する観点から、通常は、Mwが100×10未満(より好ましくは80×10以下、さらに好ましくは50×10以下、典型的には40×10以下、例えば30×10以下)の水溶性ポリマーの使用が好ましい。また、得られる研磨用組成物の濾過性や洗浄性等の観点から、Mwが25×10以下(より好ましくは20×10以下、さらに好ましくは15×10以下、典型的には10×10以下、例えば5×10以下)の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。一方、一般に水溶性ポリマーのMwが大きくなるとヘイズ低減効果は高くなる傾向にある。かかる観点から、通常は、Mwが1×10以上の水溶性ポリマーを好ましく採用し得る。
ここに開示される技術において、水溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との関係は特に制限されない。凝集物の発生防止等の観点から、例えば分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であるものを好ましく用いることができる。研磨用組成物の性能安定性等の観点から、水溶性ポリマーのMw/Mnは、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下(例えば2.5以下)である。
なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。
なお、水溶性ポリマーのMwおよびMnとしては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。
水溶性ポリマーHは、ノニオン性であることが好ましい。換言すれば、アニオン性やカチオン性の繰返し単位を実質的に含まない水溶性ポリマーHが好ましい。ここで、アニオン性やカチオン性の繰返し単位を実質的に含まないとは、これらの繰返し単位の全繰返し単位に対するモル比が0.02%未満(例えば0.001%未満)であることをいう。ノニオン性の水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物によると、研磨後の表面のヘイズ値およびLPD数を低減する効果がよりよく発揮され得る。水溶性ポリマーHがノニオン性であることは、凝集物の低減や洗浄性向上等の観点からも好ましい。
<3−2.砥粒、塩基性化合物、水>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法に使用し得る砥粒、塩基性化合物および水は、ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<3−3.研磨用組成物の製造>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、上述のような砥粒、塩基性化合物、水溶性ポリマーHおよび水を用いて実施される。その製造方法は、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを包含し、さらに、少なくとも上記A剤を含む第1組成物と少なくとも上記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、以下の(A)および(B)の一方または両方を満たす混合物を調製する工程を包含することを特徴とする。
(A)上記砥粒、上記塩基性化合物、上記水溶性ポリマーHおよび水を含み、上記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である。
(B)上記砥粒、上記塩基性化合物、上記水溶性ポリマーHおよび水を含み、上記砥粒の濃度が3質量%未満である。
ここに開示される技術により製造された研磨用組成物は、上記特徴を有する製造方法の適用により、塩基性の研磨用組成物でありながら研磨性能の経時安定性に優れる。したがって、上記(A)および上記(B)の一方または両方を満たす混合物を調製してから該混合物を含む研磨用組成物を使用するまでの時間(保存時間)に特段の制限はない。このことは、研磨用組成物の保存プロセスや使用プロセス(例えば、該研磨用組成物を用いた研磨対象物の研磨プロセスや該研磨を伴う研磨物の製造プロセス)の自由度が高いという観点から好ましい。上記(A)および上記(B)の一方または両方を満たす混合物を調製してから該混合物を含む研磨用組成物を使用するまでの時間は、例えば12時間超であってもよく、24時間超であってもよく、48時間超(例えば48時間を超えて3ヶ月以内)であってもよい。もちろん、これより短い時間内に研磨用組成物を使用することは妨げられない。例えば、研磨用組成物を製造してから使用するまでの時間を3時間以内としてもよく、1時間以内としてもよく、30分以内としてもよい。
以下、砥粒としてシリカ粒子、塩基性化合物としてアンモニア、水溶性ポリマーHとして部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度73モル%)を用いて研磨用組成物を製造する場合を主な例として、ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法の代表的な実施形態を説明するが、本発明の実施形態や製造対象を限定する意図ではない。
(第1実施形態)
この実施形態(embodiment)では、以下のA剤とB剤とが別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:砥粒と塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液(砥粒濃度5〜25質量%、塩基性化合物濃度0.0001〜1モル/Lの塩基性砥粒分散液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
具体的には、例えば、A剤(砥粒分散液C)に水を加えて、砥粒濃度3質量%未満および塩基性化合物濃度0.1モル/L以下の少なくとも一方を満たす第1組成物を調製する。その後、上記第1組成物(本実施形態ではA剤の希釈物)にB剤を添加して混合することにより研磨用組成物を得る。
この実施形態において、上記第1組成物にB剤を添加して混合した後、必要に応じてさらに水を加えて研磨用組成物の砥粒濃度を調節してもよい。また、上記第1組成物にB剤を添加して混合した後、必要に応じてさらに塩基性化合物を加えて研磨用組成物のpHを調節してもよい。
この実施形態によると、砥粒濃度3質量%未満および塩基性化合物濃度0.1モル/L以下の少なくとも一方を満たす第1組成物に水溶性ポリマーHの水溶液(B剤)を添加することにより、水溶性ポリマーHを用いながら、研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
かかる効果が得られる一つの理由として、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとを共存する状態が、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態と同時またはそれ以前(本実施形態では同時)に実現されることが考えられる。上記の効果が得られる他の一つの理由として、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が、塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である状態と同時またはそれ以前(実施形態では同時)に実現されることが考えられる。
この実施形態で使用されるA剤(砥粒分散液C)は、砥粒と塩基性化合物とが共存した状態にあるので、上記塩基性化合物により上記砥粒の静電反撥が強められており、該砥粒の分散安定性が高い。したがって、水溶性ポリマーと混合されたときに砥粒の局所的な凝集を高度に防止し得る。
また、この実施形態で使用されるB剤は、あらかじめ水溶性ポリマーHを水に溶解させた水溶液として調製されているので、上記第1組成物と混合されたときに砥粒の局所的な凝集を高度に防止し得る。このことは、本実施形態により製造される研磨用組成物の濾過性向上や研磨後の表面における欠陥低減等の観点から好ましい。
この実施形態におけるA剤(砥粒分散液C)は、製造対象の研磨用組成物に比べて濃縮された形態(砥粒濃度の高い形態)であるので、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。このように濃縮された形態のA剤における砥粒の含有量は、例えば50質量%以下とすることができる。上記A剤を用いて製造される研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。好ましい一態様において、砥粒の含有量を30質量%以下としてもよく、20質量%以下(例えば15質量%以下)としてもよい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5質量%以上とすることができ、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
A剤における塩基性化合物の含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。塩基性化合物の含有量の増加によって、このA剤の希釈時やB剤との混合時における局所的な凝集の発生がよりよく抑制される傾向となる。また、A剤における塩基性化合物の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。塩基性化合物の含有量の低下によって、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。
A剤のpHは、9以上が好ましく、より好ましくは9.5以上である。pHの上昇によって、このA剤の希釈時やB剤との混合時において局所的な凝集の発生がよりよく抑制される傾向となる。また、一般にpHが高くなると水溶性ポリマーHの加水分解速度が大きくなるため、ここに開示される製造方法を適用することがさらに有意義となり得る。A剤のpHは、12以下が好ましく、より好ましくは11.5以下であり、さらに好ましくは10.5以下である。A剤のpHをより低く設定することにより、該A剤の調製に必要な塩基性化合物の量が少なくなるので、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。また、例えば砥粒がシリカ粒子である場合、pHが高すぎないことはシリカの溶解を抑制する観点からも有利である。A剤のpHは、塩基性化合物の配合量(濃度)等により調整することができる。
B剤における水溶性ポリマーHの含有量(濃度)は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。水溶性ポリマーHの含有量の増加によって、研磨用組成物中における水溶性ポリマーHの含有量の調整が容易となる。B剤における水溶性ポリマーHの含有量は、好ましくは50質量%以下であり、例えば20質量%以下とすることができる。水溶性ポリマーHの含有量の減少によって、上記第1組成物(本実施形態ではA剤の希釈物)にB剤を添加する際に、砥粒の局所的な凝集がよりよく抑制される傾向となる。
B剤は、水溶性ポリマーHの加水分解を抑制する観点から、概ね中性付近に調製されることが好ましい。B剤のpHは、通常、4以上9未満とすることが好ましく、5.5〜7.5とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、例えば、B剤のpHが約6(例えば6±0.3)である態様で実施され得る。また、好ましい一態様において、B剤は、塩基性化合物を実質的に含まない組成(例えば、水溶性ポリマーHと水のみからなる組成)に調製され得る。
この実施形態では、砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を希釈して第1組成物を調製した後に、その第1組成物にB剤を添加する。A剤を希釈する倍率は、第1組成物において砥粒濃度3質量%未満および塩基性化合物濃度0.1モル/L以下の少なくとも一方が実現されるように設定することができる。希釈倍率は、例えば、体積換算で2倍〜200倍程度とすることができ、通常は5倍〜100倍程度が適当である。好ましい一態様に係る希釈倍率は10倍〜80倍であり、例えば15倍〜40倍に希釈することが好ましい。
第1組成物(A剤の希釈物)における好ましい砥粒濃度は、製造対象である研磨用組成物の砥粒濃度によっても異なり得るが、通常は2質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下(例えば0.7質量%以下)とすることがより好ましい。好ましい一態様において、第1組成物の砥粒濃度は、製造対象である研磨用組成物の砥粒濃度と同程度か、それより少し高い濃度とすることができる。例えば、製造対象である研磨用組成物の砥粒濃度に対して1〜10質量%程度高い濃度とすることができる。
また、第1組成物(A剤の希釈物)における好ましい塩基性化合物濃度は、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度によっても異なり得るが、通常は0.1モル/L以下とすることが好ましく、0.05モル/L以下とすることがより好ましく、0.02モル/L以下とすることがさらに好ましい。好ましい一態様において、第1組成物の塩基性化合物濃度は、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度と同程度か、それより少し高い濃度とすることができる。例えば、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度(モル/L)に対して1〜10%程度高い濃度(モル/L)とすることができる。
A剤とB剤との混合は、上述のように、第1組成物(A剤の希釈物)に対してB剤を添加する態様で行うことが好ましい。かかる混合方法によると、例えばB剤に対して第1組成物を添加する混合方法に比べて、砥粒の局所的な凝集をよりよく防止することができる。砥粒がシリカ粒子(例えばコロイダルシリカ粒子)である場合には、上記のように、第1組成物に対してB剤を添加する混合方法を採用することが特に有意義である。
第1組成物にB剤を投入する際の速度(供給レート)は、1リットル(1L)の第1組成物に対してB剤500mL/分以下とすることが好ましく、より好ましくは100mL/分以下、さらに好ましくは50mL/分以下である。投入速度の減少によって、砥粒の局所的な凝集をよりよく抑制することができる。
なお、A剤およびB剤の各々を調製する際や、A剤を希釈して第1組成物を調製する際、第1組成物にB剤を添加して混合する際等に使用する装置は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いることができる。
好ましい一態様において、B剤は、第1組成物と混合する前に濾過することができる。濾過の方法は特に限定されず、例えば、常圧で行う自然濾過の他、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の濾過方法を適宜採用することができる。
この実施形態において、第1組成物(A剤の希釈物)にB剤を添加するまでは、A剤中の塩基性化合物とB剤中の水溶性ポリマーHとの共存が回避されている。したがって、A剤を希釈してから(すなわち、第1組成物を調製してから)B剤を添加するまでの時間は特に限定されない。このことは、研磨用組成物の製造プロセスの自由度が高いという観点から好ましい。第1組成物を調製してからB剤を添加するまでの時間は、例えば12時間超であってもよく、24時間超であってもよく、48時間超(例えば48時間を超えて3ヶ月以内)であってもよい。もちろん、これより短い時間内に第1組成物にB剤を添加してもよい。例えば、第1組成物を調製してからB剤を添加するまでの時間を3時間以内としてもよく、1時間以内としてもよく、30分以内としてもよい。
上記第1実施形態の変形例として、例えば、B剤に水を加えて第2組成物(B剤の希釈物)を調製し、その第2組成物をA剤に添加して混合することにより砥粒濃度3質量%未満および塩基性化合物濃度0.1モル/L以下の一方または両方を満たす混合物を調製する態様が挙げられる。あるいは、A剤とB剤と希釈用の水とを同時に混合することにより砥粒濃度3質量%未満および塩基性化合物濃度0.1モル/L以下の一方または両方を満たす混合物を調製してもよい。また、この第1実施形態に係るキットは、あらかじめ希釈された形態(すなわち、砥粒濃度3質量%未満および塩基性化合物濃度0.1モル/L以下の少なくとも一方を満たす形態)の砥粒分散液をA剤として備え、かかるA剤に上記B剤を添加することで研磨用組成物が調製されるように構成されていてもよい。これらの変形例によっても、性能安定性に優れた研磨用組成物を製造することができる。
(第2実施形態)
この実施形態では、以下のA剤、B剤およびC剤が別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:塩基性化合物の水溶液(塩基性化合物濃度0.0001〜1モル/Lの水溶液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
C剤:砥粒と水とを含む分散液(砥粒濃度5〜25質量%の砥粒分散液)
具体的には、例えば、C剤に水を加えて砥粒濃度3質量%未満に希釈する。そのC剤の希釈物にB剤を添加して混合する。その後、さらにA剤を加えて混合することにより研磨用組成物を得る。
この実施形態では、砥粒濃度が3質量%未満であって塩基性化合物を含まない砥粒分散液(C剤の希釈物)に、まず水溶性ポリマーHの水溶液(B剤)を添加する。これにより、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が実現される。その後、さらにA剤を加えて混合することにより、水溶性ポリマーHを用いながら、研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
この実施形態において、C剤の希釈物とB剤との混合物にA剤を添加するまでは、A剤中の塩基性化合物とB剤中の水溶性ポリマーHとの共存が回避されている。したがって、C剤の希釈物とB剤との混合物を調製してからA剤を添加するまでの時間は特に限定されない。このことは、研磨用組成物の製造プロセスの自由度が高いという観点から好ましい。C剤の希釈物とB剤との混合物を調製してからA剤を添加するまでの時間は、例えば12時間超であってもよく、24時間超であってもよく、48時間超(例えば48時間を超えて3ヶ月以内)であってもよい。もちろん、これより短い時間内に上記混合物にA剤を添加してもよい。例えば、上記混合物を調製してからA剤を添加するまでの時間を3時間以内としてもよく、1時間以内としてもよく、30分以内としてもよい。
上記第2実施形態の変形例として、例えば、B剤の希釈物をC剤に添加して混合することにより砥粒と水溶性ポリマーHとが共存する砥粒濃度3質量%未満の混合物を調製した後、その混合物にA剤を添加する態様が挙げられる。この変形例によると、B剤の希釈物をC剤に添加して混合することにより、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が実現される。その混合物にA剤を添加することにより、水溶性ポリマーHを用いながら、研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。あるいは、B剤とC剤と希釈用の水とを混合することにより、砥粒と水溶性ポリマーHとが共存する砥粒濃度3質量%未満の混合物を調製した後、その混合物にA剤を添加してもよい。
本実施形態のさらに他の変形例として、A剤とC剤と希釈用の水とを混合することにより、砥粒濃度3質量%未満の第1組成物を調製した後、その第1組成物にB剤を加えて混合することにより研磨用組成物を得る態様が挙げられる。この変形例によると、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態と同時に実現される。このことによって、水溶性ポリマーHを用いながら、研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
本実施形態のさらに他の変形例として、A剤とC剤と希釈用の水とを混合することにより、塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下の第1組成物を調製した後、その第1組成物にB剤を加えて混合することにより研磨用組成物を得る態様が挙げられる。この変形例によると、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が、塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である状態と同時に実現される。このことによって、水溶性ポリマーHを用いながら、研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
(第3実施形態)
この実施形態では、以下のA剤とB剤とが別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:塩基性化合物の水溶液(塩基性化合物濃度0.0001〜1モル/Lの水溶液)
B剤:砥粒と水溶性ポリマーHとを含む水分散液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、砥粒濃度5〜25質量%、pH約7)
具体的には、例えば、B剤に水を加えて砥粒濃度が3質量%未満となるまで希釈する。その希釈されたB剤にA剤を添加して混合する。
この実施形態では、まず砥粒と水溶性ポリマーHとを含む水分散液(B剤)を砥粒濃度3質量%未満に希釈する。これにより砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が実現される。その後に塩基性化合物の水溶液(A剤)を添加する。したがって、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとを共存させるより前に、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとを共存させることができる。このことによって、水溶性ポリマーHを用い、かつ研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
<3−4.研磨用組成物>
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、典型的には、その固形分含量(non-volatile content;NV)が5質量%以下である研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)の製造に好ましく適用され得る。上記NVが0.05質量%〜3質量%(例えば0.05〜2質量%)である研磨用組成物の製造への適用がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める質量の割合を指す。
ここに開示される方法は、典型的には、砥粒の含有量が3質量%未満である研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。好ましい製造対象として、砥粒の含有量が0.05〜2質量%(より好ましくは0.05〜1質量%)である研磨用組成物が挙げられる。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物における水溶性ポリマーHの含有量は特に制限されず、例えば1×10−4質量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい含有量は5×10−4質量%以上であり、より好ましくは1×10−3質量%以上、例えば2×10−3質量%以上である。また、研磨速度等の観点から、上記含有量を0.5質量%以下とすることが好ましく、0.2質量%以下(例えば0.1質量%以下)とすることがより好ましい。
特に限定するものではないが、水溶性ポリマーHの含有量は、砥粒100質量部に対して例えば0.01質量部以上とすることができる。砥粒100質量部に対する水溶性ポリマーHの含有量は、研磨後の表面平滑性向上(例えばヘイズや欠陥の低減)の観点から0.05質量部以上が適当であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上(例えば1質量部以上)である。また、砥粒100質量部に対する水溶性ポリマーHの含有量は、研磨速度や洗浄性等の観点から、例えば40質量部以下とすることができ、通常は20質量部以下が適当であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
製造される研磨用組成物のpHは特に制限されないが、ここに開示される技術の適用意義が大きいという観点から、7.5以上が適当であり、8.0以上が好ましく、9.0以上(例えば9.5以上)がより好ましい。また、この研磨用組成物を含む研磨液のpHを調製しやすいという観点から、研磨用組成物のpHは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。かかるpHの研磨用組成物となるように塩基性化合物を含有させることが好ましい。
<3−5.任意成分>
(任意ポリマー)
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、水溶性ポリマーHに加えて、必要に応じて他の水溶性ポリマー(すなわち、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有しない水溶性ポリマー。以下「任意ポリマー」ともいう。)を含む研磨用組成物の製造にも好ましく適用され得る。かかる任意ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーであって水溶性ポリマーHに該当しないもののなかから適宜選択することができる。
上記任意ポリマーは、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記任意ポリマーは、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アミド構造、第四級窒素構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記任意ポリマーとしてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
上記任意ポリマーの好適例として、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、完全けん化ポリビニルアルコール(典型的には、けん化度98モル%超のポリビニルアルコール)等が例示される。
オキシアルキレン単位を含むポリマーとしては、上述した第二の態様に係る研磨用組成物における水溶性ポリマーの一例として説明したオキシアルキレン単位を含むポリマーと同様のものを使用することができる。オキシアルキレン単位を含むポリマーの例としては、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体、EOとPOとのランダム共重合体等が挙げられる。EOとPOとのブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO−PPO−PEO型トリブロック体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック体がより好ましい。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
窒素原子を含有するポリマーとしては、上述した第二の態様に係る研磨用組成物における水溶性ポリマーの一例として説明した窒素原子を含有するポリマーと同様のものを使用することができる。窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN−(メタ)アクリロイル型のモノマー単位を含むポリマー、N−ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリロイル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。例えば、N−(メタ)アクリロイルモルホリンの単独重合体および共重合体、N−ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体等を採用し得る。
上記任意ポリマーの他の例として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体およびプルランが挙げられる。
上記任意ポリマーの分子量および分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されない。例えば、上述した水溶性ポリマーHにおける好ましいMwおよび分子量分布を、任意ポリマーにおける好ましいMwおよび分子量分布にも適用することができる。
任意ポリマーの使用量は、研磨用組成物に含まれるMw1×10以上の水溶性成分(上述した水溶性ポリマーHおよび必要に応じて使用される任意ポリマーを含む)の総量の30質量%以下とすることが適当であり、15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下(例えば5質量%以下)とすることがより好ましい。ここに開示される方法は、任意ポリマーを実質的に含有しない研磨用組成物(例えば、上記水溶性成分の総量に占める任意ポリマーの割合が1質量%未満であるか、あるいは任意ポリマーが検出されない研磨用組成物)の製造に好ましく適用され得る。
なお、任意ポリマーとしてのセルロース誘導体を用いる場合、その使用量は、研磨用組成物に含まれるMw1×10以上の水溶性成分の総量の10質量%以下に抑えることが好ましく、5質量%以下(典型的には1質量%以下)とすることがさらに好ましい。このことによって、天然物に由来するセルロース誘導体の使用に起因する異物の混入や凝集の発生をより高度に抑制することができる。ここに開示される方法は、例えば、セルロース誘導体を実質的に含有しない(例えば、上記水溶性成分の総量に占めるセルロース誘導体の割合が1質量%未満であるか、あるいはセルロース誘導体が検出されない)研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。
(界面活性剤)
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤(典型的には、分子量1×10未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤としては、上述した第一の態様に係る研磨用組成物における界面活性剤と同様のものを同様に用いることができる。例えば、界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。界面活性剤の分子量は、典型的には1×10未満であり、研磨用組成物の濾過性や被研磨物の洗浄性等の観点から9500以下が好ましい。また、界面活性剤の分子量は、典型的には200以上であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上が好ましく、300以上(例えば500以上)がより好ましい。なお、界面活性剤の分子量としては、GPCにより求められる重量平均分子量(Mw)(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される分子量を採用することができる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は特に制限されない。通常は、洗浄性等の観点から、上記研磨用組成物に含まれる砥粒100質量部に対する界面活性剤の使用量を20質量部以下とすることが適当であり、15質量部以下が好ましく、10質量部以下(例えば6質量部以下)がより好ましい。界面活性剤の使用効果をよりよく発揮させる観点から、砥粒100質量部に対する界面活性剤の使用量は、0.001質量部以上が適当であり、0.005質量部以上が好ましく、0.01質量部以上(例えば0.1質量部以上)がより好ましい。あるいは、組成の単純化等の観点から、界面活性剤を実質的に使用しなくてもよい。
(添加剤)
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。これらの添加剤については、上述した第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法において、このような任意成分の添加タイミングは特に限定されない。例えば、上述した実施形態において、A剤、B剤、C剤のいずれに含有させてもよい。あるいは、ここに開示される方法で製造された研磨用組成物に、さらに任意成分を添加(後添加)してもよい。
<3−6.研磨液>
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液としては、上記研磨用組成物をそのまま使用することができる。あるいは、上記研磨用組成物をさらに希釈して研磨液を調製してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。上記濃縮液の研磨液に対する濃縮倍率は特に制限されないが、例えば体積換算で1.2倍〜200倍程度とすることができ、通常は1.5倍〜100倍(典型的には1.5倍〜50倍、例えば2倍〜40倍)程度が適当である。ここに開示される方法により製造される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該研磨用組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
研磨液における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。ここに開示される製造方法を適用しやすいという観点から、通常は、研磨液における砥粒の含有量は3質量%未満が適当であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
研磨液のpHは特に制限されないが、ここに開示される技術の適用意義が大きいという観点から、7.5以上が適当であり、8.0以上が好ましく、9.0以上(例えば9.5以上)がより好ましい。また、研磨後の表面の平滑性等の観点から、研磨液のpHは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。かかるpHの研磨液となるように塩基性化合物を含有させることが好ましい。上記pHは、例えば、シリコンウエハの研磨に用いられる研磨液(例えばファイナルポリシング用の研磨液)に好ましく適用され得る。
<3−7.用途>
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物の用途については、上述した第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
<3−8.研磨>
研磨対象物の研磨は、例えば以下のようにして行うことができる。
すなわち、ここに開示されるいずれかの方法で製造された研磨用組成物を含む研磨液(典型的にはスラリー状の研磨液であり、研磨スラリーと称されることもある。)を用意する。上記研磨液を用意することには、上述のように、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコンウエハのファイナルポリシングを行う場合には、ラッピング工程および1次ポリシング工程を経たシリコンウエハを一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコンウエハの表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコンウエハの表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
上記研磨工程で使用される研磨パッドは特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
上述のような研磨工程は、研磨物(例えば、シリコンウエハ等の基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む研磨物の製造方法(好適には、シリコンウエハの製造方法)が提供される。
研磨工程後の研磨物は、典型的には洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC−1洗浄液(水酸化アンモニウム(NHOH)と過酸化水素(H)と水(HO)との混合液。以下、SC−1洗浄液を用いて洗浄することを「SC−1洗浄」という。)、SC−2洗浄液(HClとHとHOとの混合液。)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば常温〜90℃程度とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃〜85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。
<<4.第二の態様に係る研磨用組成物製造方法>>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法は、
砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;
少なくとも前記A剤と前記B剤とを混合して前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い研磨用組成物原液を調製する工程;および、
前記A剤と前記B剤とを混合してから24時間以内に前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるまで前記研磨用組成物原液を希釈する工程;
を包含する。
以下、上記第二の態様に係る研磨用組成物製造方法について詳しく説明する。
<4−1.水溶性ポリマーH>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法は、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基(以下「加水分解性基」ともいう。)を有する水溶性ポリマー(水溶性ポリマーH)を含む研磨用組成物の製造に好ましく適用される。第二の態様に係る研磨用組成物製造方法における水溶性ポリマーHは、上述した第一の態様に係る研磨用組成物製造方法における水溶性ポリマーHと同様であるので、重複する説明は省略する。
<4−2.砥粒、塩基性化合物、水>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法に使用し得る砥粒、塩基性化合物および水は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物における砥粒、塩基性化合物および水と同様であるので、重複する説明は省略する。
<4−3.研磨用組成物の製造>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法は、上述のような砥粒、塩基性化合物、水溶性ポリマーHおよび水を用いて実施され得る。その製造方法では、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤とを用意し、少なくとも上記A剤と上記B剤とを混合することによって以下の(A)および(B)の一方または両方を満たす研磨用組成物原液を調製する。
(A)上記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い。
(B)上記砥粒濃度が1質量%以上である。
そして、上記研磨用組成物原液を調製してから24時間以内に該原液を希釈する。上記希釈は、上記(A)を満たす研磨用組成物原液では、上記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるように行うことが好ましい。また、上記(B)を満たす研磨用組成物原液では、上記砥粒の濃度が1質量%未満となるように上記希釈を行うことが好ましい。
ここに開示される方法により製造された研磨用組成物は、塩基性でありながら研磨性能の経時安定性に優れる。また、上記方法では、上記研磨用組成物原液を調製してから該原液を希釈するまでの時間については一定の制約を設ける一方、上記A剤と上記B剤を用意してからこれらを混合するまでの時間や、上記研磨用組成物原液を希釈して研磨用組成物を調製してから該研磨用組成物を使用するまでの時間(保存時間)に特段の制限はない。換言すれば、上記研磨用組成物原液を調製してから該原液を塩基性化合物濃度0.02モル/L以下または砥粒濃度1質量%未満に希釈するまでの時間を守ることにより、研磨用組成物の製造に係る他のプロセスの自由度を高めることができる。また、いったん塩基性化合物濃度0.02モル/L超または砥粒濃度1質量%以上の研磨用組成物原液を調製してから該原液を希釈して研磨用組成物を調製するので、上記原液の調製に用いる材料の製造、流通、保存等の際における利便性が高く、製造コスト低減の観点からも好ましい。
ここに開示される技術において、上記研磨用組成物原液を調製してから該原液を希釈するまでの時間は、具体的には24時間以内とすることが適当であり、20時間以内とすることが好ましく、16時間以内とすることがより好ましい。上記時間を12時間以内(例えば8時間以内)とすることにより、ここに開示される製造方法を適用することの効果がよりよく発揮され得る。上記時間の下限は特に限定されず、例えば上記原液の調製から希釈までの時間を30秒以内としてもよい。特に限定するものではないが、好ましい一態様において、いったん研磨用組成物原液を調製してから該原液を希釈して研磨用組成物を調製することの利便性を活かす観点から、上記原液の調製から希釈までの時間を1時間〜10時間(例えば2時間〜8時間)程度に設定することができる。
上記(A)を満たす研磨用組成物原液を調製する態様において、該原液における塩基性化合物の濃度は、0.02モル/Lより高い濃度であれば特に限定されない。研磨用組成物原液またはその調製に用いる材料の製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、該原液における塩基性化合物の濃度は、0.03モル/L以上が好ましく、0.05モル/L以上がより好ましい。上記原液における塩基性化合物の濃度の上限は特に限定されず、例えば0.4モル/L以下とすることができる。水溶性ポリマーHの加水分解速度を遅くするために、通常は、上記塩基性化合物の濃度を0.3モル/L以下とすることが適当であり、0.15モル/L以下とすることが好ましい。
上記(A)を満たす研磨用組成物原液の希釈は、その希釈物における塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるように行うことが好ましい。上記希釈物における好ましい塩基性化合物濃度は、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度によっても異なり得るが、通常は0.015モル/L以下とすることが好ましく、0.01モル/L以下とすることが好ましい。好ましい一態様において、上記希釈物の塩基性化合物濃度を、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度と同等の濃度とすることができる。あるいは、例えば上記希釈物の塩基性化合物濃度が製造対象の研磨用組成物より少し(例えば1〜10質量%程度)高くなるようにしておき、上記原液を上記所定時間内に塩基性化合物濃度0.02モル/L以下に希釈した後に、任意のタイミングでさらに水を加えて塩基性化合物濃度を調節してもよい。
上記(B)を満たす研磨用組成物原液を調製する態様において、該原液における砥粒濃度は、1質量%以上であれば特に限定されない。研磨用組成物原液またはその調製に用いる材料の製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、該原液における砥粒濃度は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。上記原液における砥粒濃度の上限は特に限定されず、例えば50質量%以下とすることができる。砥粒の局所的な凝集をよりよく防止する等の観点から、通常は、上記砥粒濃度を40質量%以下とすることが適当であり、30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下(例えば20質量%以下)とすることがより好ましい。
上記(B)を満たす研磨用組成物原液の希釈は、その希釈物における砥粒濃度が1質量%未満となるように行うことが好ましい。上記希釈物における好ましい砥粒濃度は、製造対象である研磨用組成物の砥粒濃度によっても異なり得るが、通常は0.9質量%以下とすることが好ましく、0.8質量%以下(例えば0.7質量%以下)とすることがより好ましい。好ましい一態様において、上記希釈物の砥粒濃度を、製造対象である研磨用組成物の砥粒濃度と同等の濃度とすることができる。あるいは、例えば上記希釈物の砥粒濃度が製造対象の研磨用組成物より少し(例えば1〜10質量%程度)高くなるようにしておき、上記原液を上記所定時間内に砥粒濃度が1質量%未満まで希釈した後に、任意のタイミングでさらに水を加えて砥粒濃度を調節してもよい。
上記研磨用組成物原液を希釈する際の希釈倍率は、体積換算で例えば3倍超〜200倍程度とすることが適当であり、通常は5倍〜100倍程度とすることが好ましく、10〜70倍程度(例えば15〜50倍程度)とすることが好ましい。
上記研磨用組成物原液における塩基性化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。塩基性化合物の含有量の増加によって、砥粒の分散安定性が向上する傾向となる。また、原液における塩基性化合物の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。塩基性化合物の含有量の低下によって、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。
上記研磨用組成物原液のpHは、9以上が好ましく、より好ましくは9.5以上である。pHの上昇によって、砥粒の分散安定性が向上する傾向となる。また、一般にpHが高くなると水溶性ポリマーHの加水分解速度が大きくなるため、ここに開示される製造方法を適用することがさらに有意義となり得る。上記原液のpHは、12以下が好ましく、より好ましくは11.5以下であり、さらに好ましくは10.5以下である。上記原液のpHをより低く設定することにより、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。また、例えば砥粒がシリカ粒子である場合、pHが高すぎないことはシリカの溶解を抑制する観点からも有利である。
上記研磨用組成物原液における水溶性ポリマーHの含有量(濃度)は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。水溶性ポリマーHの含有量の増加によって、研磨用組成物中における水溶性ポリマーHの含有量の調整が容易となる。上記原液における水溶性ポリマーHの含有量は、好ましくは20質量%以下であり、例えば15質量%以下とすることができる。水溶性ポリマーHの含有量の減少によって、砥粒の局所的な凝集がよりよく抑制される傾向となる。
以下、砥粒としてシリカ粒子、塩基性化合物としてアンモニア、水溶性ポリマーHとして部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度73モル%)を用いて研磨用組成物を製造する場合を主な例として、ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法の代表的な実施形態を説明するが、本発明の実施形態や製造対象を限定する意図ではない。
(第1実施形態)
この実施形態では、以下のA剤とB剤とが別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:砥粒と塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液(砥粒濃度3〜25質量%、塩基性化合物濃度0.02〜1モル/Lの塩基性砥粒分散液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
具体的には、例えば、A剤に対してB剤を添加して混合することにより、塩基性化合物濃度0.02モル/L超および砥粒濃度1質量%以上の少なくとも一方を満たす研磨用組成物原液を調製する。この原液を調製してから上述した好ましい時間内に、該原液に超純水を加えて塩基性化合物濃度0.02モル/L以下および砥粒濃度1質量%未満の少なくとも一方を満たす濃度まで希釈することにより、保存安定性に優れた研磨用組成物を製造することができる。
この実施形態で使用されるA剤は、砥粒と塩基性化合物とが共存した状態にあるので、上記塩基性化合物により上記砥粒の静電反撥が強められており、該砥粒の分散安定性が高い。したがって、B剤と混合されたときに砥粒の局所的な凝集を高度に防止し得る。
また、この実施形態で使用されるB剤は、あらかじめ水溶性ポリマーHを水に溶解させた水溶液として調製されているので、上記A剤と混合されたときに砥粒の局所的な凝集を高度に防止し得る。このことは、本実施形態により製造される研磨用組成物の濾過性向上や研磨後の表面における欠陥低減等の観点から好ましい。
この実施形態において使用するA剤およびB剤は、製造対象の研磨用組成物に比べて濃縮された形態(砥粒濃度または塩基性化合物濃度の少なくとも一方がより高い形態)であるので、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。
A剤における砥粒の含有量は、例えば50質量%以下とすることができる。砥粒の局所的な凝集をよりよく防止する等の観点から、通常は、上記砥粒濃度を40質量%以下とすることが適当であり、30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下(例えば20質量%以下)とすることがより好ましい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、A剤における砥粒の含有量は、例えば2質量%超とすることが適当であり、3質量%超が好ましい。
A剤における塩基性化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。塩基性化合物の含有量の増加によって、B剤との混合時における局所的な凝集の発生がよりよく抑制される傾向となる。また、A剤における塩基性化合物の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。塩基性化合物の含有量の低下によって、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。
A剤のpHは、9以上が好ましく、より好ましくは9.5以上である。pHの上昇によって、B剤との混合時において局所的な凝集の発生がよりよく抑制される傾向となる。また、一般にpHが高くなると水溶性ポリマーHの加水分解速度が大きくなるため、ここに開示される製造方法を適用することがさらに有意義となり得る。A剤のpHは、12以下が好ましく、より好ましくは11.5以下であり、さらに好ましくは10.5以下である。A剤のpHをより低く設定することにより、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の調整が容易となる。また、例えば砥粒がシリカ粒子である場合、pHが高すぎないことはシリカの溶解を抑制する観点からも有利である。A剤のpHは、塩基性化合物の配合量(濃度)等により調整することができる。
B剤における水溶性ポリマーHの含有量(濃度)は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。水溶性ポリマーHの含有量の増加によって、研磨用組成物中における水溶性ポリマーHの含有量の調整が容易となる。B剤における水溶性ポリマーHの含有量は、好ましくは50質量%以下であり、例えば20質量%以下とすることができる。水溶性ポリマーHの含有量の減少によって、希釈されたA剤にB剤を添加する際に、砥粒の局所的な凝集がよりよく抑制される傾向となる。
B剤は、水溶性ポリマーHの加水分解を抑制する観点から、概ね中性付近に調製されることが好ましい。B剤のpHは、通常、4以上9未満とすることが好ましく、5.5〜7.5とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、例えば、B剤のpHが約6(例えば6±0.3)である態様で実施され得る。また、好ましい一態様において、B剤は、塩基性化合物を実質的に含まない組成(例えば、水溶性ポリマーHと水のみからなる組成)に調製され得る。
A剤とB剤との混合は、上述のように、A剤に対してB剤を添加する態様で行うことが好ましい。かかる混合方法によると、例えばB剤に対してA剤を添加する混合方法に比べて、砥粒の局所的な凝集をよりよく防止することができる。砥粒がシリカ粒子(例えばコロイダルシリカ粒子)である場合には、上記のように、A剤に対してB剤を添加する混合方法を採用することが特に有意義である。
A剤に対してB剤を投入する際の速度(供給レート)は、1リットル(1L)のA剤に対してB剤500mL/分以下とすることが好ましく、より好ましくは100mL/分以下、さらに好ましくは50mL/分以下である。投入速度の減少によって、砥粒の局所的な凝集をよりよく抑制することができる。
なお、A剤およびB剤の各々を調製する際や、A剤にB剤を添加して混合する際、研磨用組成物原液を希釈する際等に使用する装置は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いることができる。
好ましい一態様において、B剤は、A剤と混合する前に濾過することができる。濾過の方法は特に限定されず、例えば、常圧で行う自然濾過の他、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の濾過方法を適宜採用することができる。
(第2実施形態)
この実施形態では、以下のA剤、B剤およびC剤が別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:塩基性化合物の水溶液(塩基性化合物濃度0.02モル/L以上の水溶液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
C剤:砥粒と水とを含む分散液(砥粒濃度3〜25質量%の砥粒分散液)
具体的には、例えば、まずA剤とC剤とを混合して砥粒と塩基性化合物とを含む塩基性砥粒分散液を調製する。その分散液に対してB剤を添加して混合することにより、塩基性化合物濃度0.02モル/L超および砥粒濃度1質量%以上の少なくとも一方を満たす研磨用組成物原液を調製する。この原液を調製してから上述した好ましい時間内に、該原液に超純水を加えて塩基性化合物濃度0.02モル/L以下および砥粒濃度1質量%未満の少なくとも一方を満たす濃度まで希釈することにより、保存安定性に優れた研磨用組成物を製造することができる。
<4−4.研磨用組成物>
ここに開示される研磨用組成物製造方法は、典型的には、その固形分含量(non-volatile content;NV)が2質量%以下である研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)の製造に好ましく適用され得る。上記NVが0.05質量%〜1質量%(例えば0.05〜0.8質量%)である研磨用組成物の製造への適用がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める質量の割合を指す。
ここに開示される方法は、典型的には、砥粒の含有量が1質量%未満である研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。好ましい製造対象として、砥粒の含有量が0.05〜0.9質量%(より好ましくは0.05〜0.8質量%)である研磨用組成物が挙げられる。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物における水溶性ポリマーHの含有量は特に制限されず、例えば1×10−4質量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい含有量は5×10−4質量%以上であり、より好ましくは1×10−3質量%以上、例えば2×10−3質量%以上である。また、研磨速度等の観点から、上記含有量を0.5質量%以下とすることが好ましく、0.2質量%以下(例えば0.1質量%以下)とすることがより好ましい。
特に限定するものではないが、水溶性ポリマーHの含有量は、砥粒100質量部に対して例えば0.01質量部以上とすることができる。砥粒100質量部に対する水溶性ポリマーHの含有量は、研磨後の表面平滑性向上(例えばヘイズや欠陥の低減)の観点から0.05質量部以上が適当であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上(例えば1質量部以上)である。また、砥粒100質量部に対する水溶性ポリマーHの含有量は、研磨速度や洗浄性等の観点から、例えば40質量部以下とすることができ、通常は20質量部以下が適当であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
製造される研磨用組成物のpHは特に制限されないが、ここに開示される技術の適用意義が大きいという観点から、7.5以上が適当であり、8.0以上が好ましく、9.0以上(例えば9.5以上)がより好ましい。また、この研磨用組成物を含む研磨液のpHを調製しやすいという観点から、研磨用組成物のpHは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。かかるpHの研磨用組成物となるように塩基性化合物を含有させることが好ましい。
<4−5.任意成分>
(任意ポリマー)
ここに開示される技術は、水溶性ポリマーHに加えて、必要に応じてMwが1×10以上である他の水溶性ポリマー(すなわち、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有しない水溶性ポリマー。以下「任意ポリマー」ともいう。)を含有する研磨用組成物の製造にも好ましく適用され得る。かかる任意ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーであって水溶性ポリマーHに該当しないもののなかから適宜選択することができる。
このような任意ポリマーの種類、分子量および分子量分布(Mw/Mn)、使用量等は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物製造方法と同様であるので、詳しい説明は省略する。
(界面活性剤)
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤(典型的には、分子量1×10未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤の種類、具体例、分子量、使用量等は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物における界面活性剤と同様であるので、詳しい説明は省略する。
(添加剤)
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。これらの添加剤は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
ここに開示される研磨用組成物製造方法において、このような任意成分の添加タイミングは特に限定されない。例えば、上述した実施形態において、A剤、B剤、C剤のいずれに含有させてもよい。あるいは、ここに開示される方法で製造された研磨用組成物に、さらに任意成分を添加(後添加)してもよい。
<4−6.研磨液>
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液としては、上記研磨用組成物をそのまま使用することができる。あるいは、上記研磨用組成物をさらに希釈して研磨液を調製してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。上記濃縮液の研磨液に対する濃縮倍率は特に制限されないが、例えば体積換算で1.05倍〜200倍程度とすることができ、通常は1.2倍〜100倍程度が好ましく、1.5倍〜70倍程度がより好ましい。ここに開示される方法により製造される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該研磨用組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
研磨液における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。ここに開示される製造方法を適用しやすいという観点から、通常は、研磨液における砥粒の含有量は1質量%未満が適当であり、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下である。
研磨液のpHは特に制限されないが、ここに開示される技術の適用意義が大きいという観点から、7.5以上が適当であり、8.0以上が好ましく、9.0以上(例えば9.5以上)がより好ましい。また、研磨後の表面の平滑性等の観点から、研磨液のpHは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。かかるpHの研磨液となるように塩基性化合物を含有させることが好ましい。上記pHは、例えば、シリコンウエハの研磨に用いられる研磨液(例えばファイナルポリシング用の研磨液)に好ましく適用され得る。
<4−7.用途、研磨および洗浄>
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法により製造される研磨用組成物の用途、該研磨組成物を用いる研磨および研磨工程度の研磨物の洗浄に関しては、上述した第一の態様に係る研磨用組成物製造方法により製造される研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
以上の説明および以下の実施例から理解されるように、この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1)分子構造中に加水分解反応性を示す官能基を有する繰返し単位fを含む水溶性ポリマーPと水とを用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
その製造された研磨用組成物中において、上記水溶性ポリマーPに含まれる全繰返し単位のモル数mに対する上記繰返し単位fのモル数mの比(m/m)が5%以上に維持されていることを特徴とする、研磨用組成物の製造方法。
(2)上記(1)の方法により製造された研磨用組成物を研磨対象物に供給して該研磨対象物を研磨する工程を含み、
上記研磨対象物に供給される研磨用組成物に含まれる上記水溶性ポリマーPにおいて、上記比(m/m)が5%以上に維持されていることを特徴とする、研磨物の製造方法。
上記繰返し単位fは、酸性または塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基であり得る。そのような官能基の代表例としてエステル基が挙げられる。エステル基を有する繰返し単位fの代表例として、カルボン酸ビニルエステルや(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、共重合体、それらの変性物(例えば部分けん化物)等が挙げられる。上記研磨用組成物は、上記水溶性ポリマーPおよび水の他に、任意成分として砥粒、塩基性化合物および酸性化合物のいずれかまたは2以上を含み得る。
上記(1)の製造方法は、例えば、ここに開示されるいずれかの製造方法(例えば、上述した第一の態様に係る製造方法における第1〜第3実施形態、上述した第二の態様に係る製造方法における第1,第2実施形態、およびそれらの変形例に係る態様の製造方法)を適用して実施され得るが、これに限定されない。
また、以上の説明および以下の実施例から理解されるように、この明細書により開示される事項には、さらに以下のものが含まれる。
(3)水酸基を有する繰返し単位hを含む水溶性ポリマーQと水とを用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
その製造された研磨用組成物中において、上記水溶性ポリマーQの水酸基量が4ミリモル/g以上21ミリモル/g以下であることを特徴とする、研磨用組成物の製造方法。
(4)上記(3)の方法により製造された研磨用組成物を研磨対象物に供給して該研磨対象物を研磨する工程を含み、
上記研磨対象物に供給される研磨用組成物に含まれる上記水溶性ポリマーQにおいて、該水溶性ポリマーQの水酸基量が4ミリモル/g以上21ミリモル/g以下の範囲にあることを特徴とする、研磨物の製造方法。
ここで、上記水酸基量とは、ポリマー1g当たりに含まれる水酸基のモル数をいう。上記水酸基量は、一般的には、測定対象のポリマーを含む試料液にJIS K0070に規定する中和滴定法を適用して求めた水酸基価(mgKOH/g)を56.1で除することにより得られる。
また、測定対象のポリマーが例えば部分けん化ポリビニルアルコールのようにカルボン酸ビニル単位およびビニルアルコール単位からなるポリマーである場合は、その測定対象のポリマーを含む試料液に水酸化カリウム(KOH)を添加して加温することにより完全けん化させた際のKOH消費量を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出し、それらのモル数から水酸基量を算出してもよい。
上記水酸基量の測定において、研磨用組成物中に含まれるポリマーを測定対象とする場合には、該研磨用組成物を上記試料液として使用することができる。ここで、上記研磨用組成物が砥粒を含む研磨用組成物である場合には、該砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を上記試料液として用いるとよい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
<<実験例1>>
<研磨用組成物の調製>
(実施例A1)
砥粒、水溶性ポリマーHA、アンモニア水(濃度29%)および超純水を混合して研磨用組成物の濃縮液を調製した後、この濃縮液を上記混合から1時間以内に超純水で20倍(体積基準)に希釈することにより、砥粒の濃度が0.5%、アンモニア(NH)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨用組成物のpHは10.2であった。
砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカを使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
水溶性ポリマーHAとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×10のポリビニルアルコールを使用した。この水溶性ポリマーHAにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比(全繰返し単位のモル数に占めるビニルアルコール単位びモル数の割合)は73%であり、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は27%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHAの平均SP値は15.1である。
(実施例A2)
本例では、砥粒として、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカを使用した。この砥粒とアンモニア水(濃度29%)および超純水を混合して研磨用組成物の濃縮液を調製した後、この濃縮液を上記混合から1時間以内に超純水で20倍(体積基準)に希釈することにより、砥粒の濃度が0.2%、アンモニアの濃度が0.005%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.010%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨液のpHは10.1であった。
なお、本例の研磨用組成物における水溶性ポリマーHAおよびアンモニアの濃度は、単位体積の研磨液中に含まれる砥粒の表面積当たりの水溶性ポリマーおよびアンモニアの含有量が実施例A1の研磨液と概ね同程度となるように調整したものである。
(実施例A3)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、けん化度78モル%、Mw2.7×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHBにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比は78%であり、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は22%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHBの平均SP値は15.6である。
(実施例A4)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、Mwが2.8×10のポリビニルアルコール(ビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含む;以下「水溶性ポリマーHJ」と表記することがある。)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(実施例A5)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えてMwが0.3×10のポリビニルアルコール(ビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含む;以下「水溶性ポリマーHK」と表記することがある。)を使用した。また、研磨用組成物における水溶性ポリマーHKの濃度を0.003%とした。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(比較例A1)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×10のポリビニルアルコール;以下、水溶性ポリマーHCともいう。)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHCにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比は98%、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は2%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHCの平均SP値は18.2である。
(比較例A2)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、アクリルアミドとアクリル酸とのランダム共重合体(水溶性ポリマーHD)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHDは、アクリル酸に由来する繰返し単位(SP値20.2)とアクリルアミドに由来する繰返し単位(SP値14.5)とを40:60のモル比で含むMw20×10の共重合体である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHDの平均SP値は16.5である。
(比較例A3)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(水溶性ポリマーHE)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHEは、エチレンオキサイドに由来する繰返し単位(SP値9.4)とプロピレンオキサイドに由来する繰返し単位(SP値9.0)とを92:8のモル比で含むMw10×10の共重合体である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHEの平均SP値は9.4である。
(比較例A4)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、Mwが6×10のポリ(N−ビニルピロリドン)(水溶性ポリマーHF)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHFは、N−ビニルピロリドン(SP値11.0)の単独重合体である。したがって、この水溶性ポリマーHFの平均SP値は11.0である。
(比較例A5)
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、Mwが25×10のヒドロキシエチルセルロース(水溶性ポリマーHG;SP値18.3)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
<シリコンウエハの研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。なお、各研磨用組成物の調製から研磨開始までの時間は約1時間とした。
[研磨条件]
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
<洗浄>
研磨後のシリコンウエハを、NHOH(29%):H(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
<微小パーティクル(LPD)数評価>
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
<ヘイズ測定>
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
上記LPD数評価およびヘイズ測定により得られた結果を、水溶性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を単独で使用した比較例A5のLPD数およびヘイズ値をそれぞれ100%とする相対値に換算して表3に示した。この表3には、各例において使用した水溶性ポリマーの構成を併せて示している。実施例A1〜A5および比較例A1〜A3については、使用した各水溶性ポリマーに含まれる2種類の繰返し単位のうち、SP値が大きいほうの繰返し単位を第1の繰返し単位とし、SP値が小さいほうの繰返し単位を第2の繰返し単位として示している。また、LPD数を示す欄において「測定不可」とは、上記ウエハ検査装置による欠陥測定においてData Overloadとなった、すなわちLPD数が測定上限を超えたことを表している。
Figure 2016135882
表3に示されるように、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含み、平均SP値が17.5以下である水溶性ポリマーを用いた実施例A1〜A5の研磨液によると、水溶性ポリマーとしてHECを用いた比較例A5に比べて、ヘイズ値およびLPD数のいずれにおいても明らかな改善がみられた。
これに対して、実施例A1〜A5で用いた水溶性ポリマーと同種の繰返し単位からなるが平均SP値が高すぎる水溶性ポリマーを用いた比較例A1は、ヘイズ値およびLPD数のいずれの点でも実施例A1〜A5に及ばない結果であった。平均SP値は17.5以下であるがSP値14.5未満の繰返し単位Bを含まない水溶性ポリマーを用いた比較例A2、平均SP値は17.5以下であるがSP値14.5以上の繰返し単位Aを含まない水溶性ポリマーを用いた比較例A3,A4もまた、ヘイズ値およびLPD数のいずれの点でも実施例A1〜A5に及ばないものであった。
<<実験例2>>
<研磨用組成物の調製>
(実施例B1)
砥粒、アンモニアおよび超純水からなるNV約0.46%の塩基性砥粒分散液に、水溶性ポリマーP1を1.5質量%の濃度で含むポリマー水溶液を加えて混合することにより、砥粒の濃度が0.46%、アンモニア(NH)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨用組成物のpHは10.2であった。
砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカを使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
水溶性ポリマーP1としては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×10のポリビニルアルコールを使用した。この水溶性ポリマーP1は、ポリビニルアルコール単位73モル%および酢酸ビニル単位27モル%を含む共重合体である。
(実施例B2)
本例では、砥粒として、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカを使用した。この砥粒とアンモニアと超純水とからなるNV約0.18%の塩基性砥粒分散液に、水溶性ポリマーP1を1.5質量%の濃度で含むポリマー水溶液を加えて混合することにより、砥粒の濃度が0.18%、アンモニアの濃度が0.005%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.010%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨液のpHは10.1であった。
なお、本例の研磨用組成物における水溶性ポリマーP1およびアンモニアの濃度は、単位体積の研磨液中に含まれる砥粒の表面積当たりの水溶性ポリマーおよびアンモニアの含有量が実施例B1の研磨液と概ね同程度となるように調整したものである。
(実施例B3)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、けん化度79モル%、Mw2.7×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーP2)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(実施例B4)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、ポリビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含みMwが2.8×10であるポリビニルアルコール(水溶性ポリマーP3)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(実施例B5)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、ポリビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含みMwが0.3×10であるポリビニルアルコール(水溶性ポリマーP4)を使用した。また、研磨用組成物における水溶性ポリマーP4の濃度を0.003%とした。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(比較例B1)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×10のポリビニルアルコール;以下、水溶性ポリマーP5ともいう。)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(比較例B2)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、Mwが6.0×10のポリ(N−ビニルピロリドン)(水溶性ポリマーP6)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(比較例B3)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、Mwが25×10のヒドロキシエチルセルロース(水溶性ポリマーP7)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(比較例B4)
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、ポリビニルアルコールにポリ(N−ビニルピロリドン)がグラフトしたグラフト共重合体(水溶性ポリマーP8)を使用した。このグラフト共重合体は、全体のMwが17.5×10であり、該グラフト共重合体1分子に含まれるポリビニルアルコール鎖のMwは7.5×10であり、ポリ(N−ビニルピロリドン)鎖の合計Mwは10×10である。また、上記ポリビニルアルコール鎖のけん化度は98モル%以上である。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
<エッチングレート測定>
実施例B1,B2で使用した水溶性ポリマーP1を1.5質量%の濃度で含むポリマー水溶液とアンモニア水(29%)と超純水とを混合して、水溶性ポリマーP1の濃度が0.18%、アンモニアの濃度が1.3%であり、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを調製した。
縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状のシリコン基板(伝導型:P型、結晶方位:<100>)を用意し、その表面の自然酸化膜をフッ化水素(3%)水溶液に1分間浸漬することにより除去した後、該シリコン基板の質量W0を測定した。
上記シリコン基板を上記薬液LEに室温(25℃)にて12時間浸漬した後、該薬液LEからシリコン基板を取り出し、NH(29%):H(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液に室温(25℃)にて10秒間浸漬した。該洗浄液から取り出したシリコン基板を水洗し、その質量W1を測定した。上記W0と上記W1との差、上記シリコン基板の比重(2.33g/cm)および該シリコン基板の表面積(18cm)からエッチングレートを算出したところ、0.8nm/分であった。
他の実施例および比較例で使用した水溶性ポリマーP2〜P8についても同様にしてエッチングレートを測定した。得られた結果を、各水溶性ポリマーを用いた実施例および比較例に対応させて表4に示した。
<砥粒吸着率測定>
実施例B1に係る研磨用組成物に対し、ベックマン・コールター社製の遠心分離器、型式「Avanti HP−30I」を用いて20000rpmの回転数で30分間の遠心分離処理を行った。上記遠心分離処理後の上澄み液を回収し、その上澄み液の全有機炭素量(TOC)を、島津製作所社製の全有機体炭素計(燃焼触媒酸化方式、型式「TOC−5000A」)を用いて測定した。測定結果を上記上澄み液の体積で換算することにより、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量(上記上澄み液中にフリーポリマーとして含まれる水溶性ポリマーに由来する有機炭素の総量)C1を求めた。なお、研磨用組成物の調製から遠心分離処理開始までの時間は約1時間とした。
実施例B1に係る研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を調製した。すなわち、アンモニア(NH)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーP1の濃度が0.018%であり、残部が水からなる試験液L0を調製した。この試験液L0のTOCを上記全有機体炭素計で測定し、体積換算して該試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求めた。
上記C0および上記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出したところ、ほぼ0%であった。
実施例B2〜B5および比較例B1〜B4に係る研磨用組成物についても同様にして砥粒吸着率を測定した。得られた結果を表4に示した。
<シリコンウエハの研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。なお、各研磨用組成物の調製から研磨開始までの時間は約1時間とした。
[研磨条件]
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
<洗浄>
研磨後のシリコンウエハを、NH(29%):H(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
<微小パーティクル(LPD)数評価>
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
<ヘイズ測定>
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
上記LPD数評価およびヘイズ測定により得られた結果を、水溶性ポリマーとして完全けん化ポリビニルアルコール(PVA)を単独で使用した比較例B1のLPD数およびヘイズ値をそれぞれ100%とする相対値に換算して表4に示した。表4のLPD数を示す欄において「測定不可」とは、上記ウエハ検査装置による欠陥測定においてData Overloadとなった、すなわちLPD数が測定上限を超えたことを表している。
<濾過性評価>
各例に係る研磨液を、温度25℃、濾過差圧50kPaの条件で吸引濾過した。フィルタとしては、日本ポール社製のディスクフィルタ、商品名「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を使用した。上記フィルタを通過する研磨用組成物の流れが止まるまでに該フィルタを通過した研磨用組成物の体積から、以下の2水準で濾過性を評価した。得られた結果を表4の「濾過性」の欄に示した。
A:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL以上。
C:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL未満。
Figure 2016135882
表4に示されるように、水溶性ポリマーとして完全けん化PVAを用いた比較例B1の研磨液は、砥粒吸着率は20%以下であるが、エッチングレートが2.0nm/分よりも高いことから表面保護性能が低いものであった。そのため、HECを用いた比較例B3に比べて濾過性は向上したもののヘイズが明らかに高くなった。
これに対して、砥粒吸着率20%以下およびエッチングレート2.0nm/分以下の両方を満たす実施例B1〜B5の研磨液によると、比較例B1と同様の良好な濾過性を確保しつつ、比較例B1に比べてヘイズ値およびLPD数を大幅に低下させることができた。実施例B1〜B5の研磨液により実現されたヘイズ値およびLPD数の低減効果は、比較例B3と比べてもさらに高いものであった。
一方、エッチングレートは低いが砥粒吸着率の高い比較例B2の研磨液は、ヘイズ低減およびLPD数低減のいずれにおいても効果が低かった。これは、砥粒吸着率が高すぎるためにフリーポリマーの量が不足し、充分な表面保護効果が発揮されなかったためと考えられる。比較例B3およびこれと同等の砥粒吸着率を示す比較例B4の研磨液もまた、実施例B1〜B5に比べてヘイズ値低減効果およびLPD数低減効果のいずれにも劣るものであった。
<<実験例3>>
<研磨用組成物の調製>
(実施例C1)
砥粒12%およびアンモニア0.26%(0.16モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカ(砥粒GA)を使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
上記水溶性ポリマーとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHA)を使用した。この水溶性ポリマーHAは、アセトキシ基を有する繰返し単位としての酢酸ビニル単位を27モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A剤808gを超純水19000gで希釈して、砥粒濃度約0.49%、アンモニア濃度0.006モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤246gを添加して混合することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
(実施例C2)
砥粒GA9.4%およびアンモニア0.20%(0.12モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記水溶性ポリマーとしては、けん化度79モル%、Mw2.7×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。この水溶性ポリマーHBは、酢酸ビニル単位を21モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A剤1030gを超純水19000gで希釈して、砥粒濃度約0.48%、アンモニア濃度0.006モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤25gを添加して混合することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHBの濃度が0.019%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
(実施例C3)
砥粒GA19.2%およびアンモニア0.41%(0.28モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーHBを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記A剤1005gを超純水39000gで希釈して、砥粒濃度約0.48%、アンモニア濃度0.006モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤49gを添加して混合することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHBの濃度が0.019%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
(実施例C4)
砥粒5.2%およびアンモニア0.11%(0.067モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーHAを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記砥粒としては、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカ(砥粒GB)を使用した。
上記A剤532gを超純水19000gで希釈して、砥粒濃度約0.18%、アンモニア濃度0.002モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤123gを添加して混合することにより、砥粒GBの濃度が0.18%、アンモニアの濃度が0.003%(0.002モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.009%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
なお、本例の研磨用組成物における水溶性ポリマーHAおよびアンモニアの濃度は、単位体積の研磨用組成物中に含まれる砥粒の表面積当たりの水溶性ポリマーHAおよびアンモニアの含有量が実施例C1の研磨用組成物と概ね同程度となるように調整したものである。
(比較例C1)
砥粒GAの濃度が9.2%、アンモニアの濃度が0.20%(0.12モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.35%であり、残部が水からなる濃縮液を調製した。
上記濃縮液の調製から約24時間経過後に、該濃縮液1055gを超純水19000gで希釈することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
(比較例C2)
本例では、実施例C1における水溶性ポリマーHAに代えて、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×10のポリビニルアルコール;以下「PVA」と表記することがある。)を使用した。その他の点は実施例C1と同様にして、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、PVAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
(比較例C3)
本例では、実施例C2における水溶性ポリマーHBに代えて、Mwが6×10のポリ(N−ビニルピロリドン)(以下「PVP」と表記することがある。)を使用した。その他の点は実施例C2と同様にして、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、PVPの濃度が0.019%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
(比較例C4)
砥粒GAの濃度が9.2%、アンモニアの濃度が0.2%(0.12モル/L)、水溶性ポリマーの濃度が0.35%であり、残部が水からなる濃縮液を調製した。
上記水溶性ポリマーとしては、Mwが25×10のヒドロキシエチルセルロース(以下「HEC」と表記することがある。)を使用した。
上記濃縮液の調製から約24時間経過後に、該濃縮液1055gを超純水19000gで希釈することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、HECの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
<シリコンウエハの研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。
[研磨条件]
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
<洗浄>
研磨後のシリコンウエハを、NH(29%):H(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
<微小パーティクル(LPD)数評価>
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
<ヘイズ測定>
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
上記LPD数評価およびヘイズ測定により得られた結果を、水溶性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を単独で使用した比較例C4のLPD数およびヘイズ値をそれぞれ100%とする相対値に換算して表5に示した。表5のLPD数を示す欄において「測定不可」とは、上記ウエハ検査装置による欠陥測定においてData Overloadとなった、すなわちLPD数が測定上限を超えたことを表している。
<濾過性評価>
各例に係る研磨用組成物を、温度25℃、濾過差圧50kPaの条件で吸引濾過した。フィルタとしては、日本ポール社製のディスクフィルタ、商品名「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を使用した。上記フィルタを通過する研磨用組成物の流れが止まるまでに該フィルタを通過した研磨用組成物の体積から、以下の2水準で濾過性を評価した。得られた結果を表5の「濾過性」の欄に示した。
A:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL以上。
C:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL未満。
Figure 2016135882
表5に示されるように、砥粒および塩基性化合物を含むA剤を、砥粒濃度3質量%未満およびアンモニア濃度0.1モル/L以下の少なくとも一方を満たすように希釈した後、その希釈液に水溶性ポリマーHAの水溶液を添加して製造された実施例C1の研磨用組成物は、塩基性化合物と水溶性ポリマーHAとが共存する濃縮液を希釈して製造された比較例C1の研磨用組成物に比べて、ヘイズ値およびLPD数のいずれの点でも明らかに優れていた。また、実施例C1の研磨用組成物は、汎用の水溶性ポリマーであるHECを用いた比較例C4に対してもヘイズ値およびLPD数の低減効果が高く、かつ比較例C4に比べて濾過性の点で明らかに優れていた。実施例C1と同様の方法で製造された実施例C2〜C4の研磨用組成物もまた、ヘイズ値およびLPD数の低減効果が高く、かつ濾過性の良いものであった。
一方、水溶性ポリマーHA,HBと同様にビニルアルコール単位を含むが酢酸ビニル単位を実質的に含まないPVAを用いた比較例C2の研磨用組成物は、実施例C1〜C4と同様の方法により製造されたものであるが、実施例C1〜C4のようなヘイズ値およびLPD数の低減効果を実現するものではなかった。エステル結合を含まない水溶性ポリマーであるPVPを用いて実施例C1〜C4と同様の方法により製造された比較例C3の研磨用組成物もまた、ヘイズ値およびLPD数の点で実施例C1〜C4に及ばないものであった。
なお、実施例C1〜C4では研磨用組成物を調製してから研磨に使用するまでの保存時間を室温で約1時間としたが、この保存時間を12時間や48時間とした場合にも、比較例C1〜C4との比較において表5と同様の効果が得られることが確認された。
また、実施例C1〜C4の各研磨用組成物を研磨に使用する直前に、各研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーを構成するモノマーの全繰返し単位のモル数に対する酢酸ビニル単位のモル数の比を算出したところ、実施例C1では25%、実施例C2では19%、実施例C3では19%、実施例C4では16%であった。すなわち、実施例C1〜C4に係る研磨用組成物は、実際に研磨に使用される時点で、酢酸ビニル単位のモル比が5%以上に維持された水溶性ポリマー(けん化度95モル%以下のポリビニルアルコール)を含んでいることが確認された。
なお、上記モル比は、研磨用組成物に含まれる砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を試料液として、該試料液に塩基性化合物を添加して加温することにより完全けん化させた際の塩基性化合物消費量を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出することにより算出したものである。
<<実験例4>>
<研磨用組成物の調製>
(実施例D1)
A剤として、砥粒12%およびアンモニア0.26%(0.16モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A1剤)を用意した。上記砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカ(砥粒GA)を使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
B剤として、水溶性ポリマーを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B1剤)を用意した。上記水溶性ポリマーとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHA)を使用した。この水溶性ポリマーHAは、アセトキシ基を有する繰返し単位としての酢酸ビニル単位を27モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A1剤808gに上記B1剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から1分後に(すなわち、A1剤とB1剤とを混合してから1分後に)超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
(実施例D2)
A剤として、砥粒GA9.4%およびアンモニア0.20%(0.12モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A2剤)を用意した。
B剤として、水溶性ポリマーを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B2剤)を用意した。上記水溶性ポリマーとしては、けん化度79モル%、Mw2.7×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。この水溶性ポリマーHBは、酢酸ビニル単位を21モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A2剤1030gに上記B2剤25gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から1時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
(実施例D3)
実施例D1において、研磨用組成物原液を調製してから超純水で希釈するまでの時間を6時間に変更した。その他の点は実施例D1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
(実施例D4)
A剤として、砥粒GA19.2%およびアンモニア0.41%(0.28モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A3剤)を用意した。
B剤として、水溶性ポリマーを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B2剤)を用意した。上記水溶性ポリマーとしては、けん化度79モル%、Mw2.7×10のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。この水溶性ポリマーHBは、酢酸ビニル単位を21モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A3剤1005gに上記B2剤49gを添加して、砥粒濃度18.3%、アンモニア濃度0.24モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から12時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で40倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
(実施例D5)
A剤として、砥粒4.4%およびアンモニア0.11%(0.067モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A4剤)を用意した。上記砥粒としては、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカ(砥粒GB)を使用した。
B剤としては、水溶性ポリマーHAを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B1剤)を使用した。
上記A4剤532gに上記B1剤123gを添加して、砥粒濃度3.6%、アンモニア濃度0.055モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から20時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.18%、アンモニア濃度0.003モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
(比較例D1)
実施例D1において、研磨用組成物原液を調製してから超純水で希釈するまでの時間を30時間に変更した。その他の点は実施例D1と同様にして、本例に係る研磨用組成物(砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/L)を調製した。
(比較例D2)
実施例D2において、研磨用組成物原液を調製してから超純水で希釈するまでの時間を64時間に変更した。その他の点は実施例D1と同様にして、本例に係る研磨用組成物(砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/L)を調製した。
(比較例D3)
本例では、B剤として、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×10のポリビニルアルコール;以下「PVA」と表記することがある。)を1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B3剤)を使用した。
上記A1剤808gに上記B3剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から1分後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
(比較例D4)
本例では、B剤として、Mwが6×10のポリ(N−ビニルピロリドン)(以下「PVP」と表記することがある。)を1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B4剤)を使用した。
上記A1剤808gに上記B4剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から6時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
(比較例D5)
本例では、B剤として、Mwが25×10のヒドロキシエチルセルロース(以下「HEC」と表記することがある。)を1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B5剤)を使用した。
上記A1剤808gに上記B5剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から6時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
<シリコンウエハの研磨>
このようにして調製した実施例D1〜D5および比較例D1〜D5に係る研磨用組成物を、室温で約1時間、攪拌しながら保存した。その後、各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。
[研磨条件]
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
<洗浄>
研磨後のシリコンウエハを、NH(29%):H(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
<微小パーティクル(LPD)数評価>
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
<ヘイズ測定>
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
上記LPD数評価およびヘイズ測定により得られた結果を、水溶性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を単独で使用した比較例D5のLPD数およびヘイズ値をそれぞれ100%とする相対値に換算して表6に示した。表6のLPD数を示す欄において「測定不可」とは、上記ウエハ検査装置による欠陥測定においてData Overloadとなった、すなわちLPD数が測定上限を超えたことを表している。
<濾過性評価>
各例に係る研磨用組成物を、温度25℃、濾過差圧50kPaの条件で吸引濾過した。フィルタとしては、日本ポール社製のディスクフィルタ、商品名「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を使用した。上記フィルタを通過する研磨用組成物の流れが止まるまでに該フィルタを通過した研磨用組成物の体積から、以下の2水準で濾過性を評価した。得られた結果を表6の「濾過性」の欄に示した。
A:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL以上。
C:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL未満。
Figure 2016135882
表6に示されるように、水溶性ポリマーHとして部分けん化ポリビニルアルコールを用いた実施例D1〜D5および比較例D1〜D2のうち、研磨用組成物原液を調製してから希釈するまでの時間を24時間以内として製造された実施例D1〜D5の研磨用組成物は、上記時間が24時間よりも長い比較例D1〜D2に比べて、ヘイズ値およびLPD数のいずれの点でも明らかに優れていた。また、実施例D1〜D5の研磨用組成物は、汎用の水溶性ポリマーであるHECを用いた比較例D5に対してもヘイズ値およびLPD数の低減効果が高く、かつ比較例D5に比べて濾過性の点で明らかに優れていた。
また、実施例D2と実施例D4の比較から、原液を調製してから希釈までの時間を10時間以内とすることにより、原液の調製から12時間後に希釈を行う場合に比べて、ヘイズ値およびLPD数の点でさらに高性能な研磨用組成物が製造され得ることがわかる。実施例D3と実施例D5とのLPD値にも同様の傾向が表れている。
一方、水溶性ポリマーHA,HBと同様にビニルアルコール単位を含むが酢酸ビニル単位を実質的に含まないPVAを用いた比較例D3の研磨用組成物は、原液を調製してから希釈するまでの時間を実施例D1と同様に1分として製造されたものであるが、実施例D1のようなヘイズ値およびLPD数の低減効果を実現するものではなかった。エステル結合を含まない水溶性ポリマーであるPVPを用いて実施例D1〜D5と同様の方法により製造された比較例D4の研磨用組成物もまた、ヘイズ値およびLPD数の点で実施例D1〜D5に及ばないものであった。
なお、実施例D1〜D5では研磨用組成物を調製してから研磨に使用するまでの保存時間を室温で約1時間としたが、この保存時間を12時間や48時間とした場合にも、比較例D1〜D5との比較において表6と同様の効果が得られることが確認された。
また、実施例D1〜D5の各研磨用組成物を研磨に使用する直前に、各研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーを構成するモノマーの全繰返し単位のモル数に対する酢酸ビニル単位のモル数の比を算出したところ、実施例D1では27%、実施例D2では18%、実施例D3では15%、実施例D4では10%、実施例D5では8%であった。すなわち、実施例D1〜D5に係る研磨用組成物は、実際に研磨に使用される時点で、酢酸ビニル単位のモル比が5%以上に維持された水溶性ポリマー(けん化度95モル%以下のポリビニルアルコール)を含んでいることが確認された。
なお、上記モル比は、研磨用組成物に含まれる砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を試料液として、該試料液に塩基性化合物を添加して加温することにより完全けん化させた際の塩基性化合物を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出することにより算出したものである。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (14)

  1. 以下の条件:
    SP値の異なる複数種の繰返し単位を含む分子構造を有する;
    前記複数種の繰返し単位は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含む;および
    前記分子構造に含まれる全種類の繰返し単位について、各種類に係る繰返し単位のSP値と該繰返し単位の合計体積が上記分子構造中の全繰返し単位の体積に占める割合との積を合計して求められる平均SP値が17.5以下である;
    を満たす水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、研磨用組成物。
  2. 前記水溶性ポリマーはノニオン性のポリマーである、請求項1に記載の研磨用組成物。
  3. 砥粒と水溶性ポリマーと水とを含む研磨用組成物であって、
    以下のエッチングレート測定:
    (1A)前記水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを用意する;
    (2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する;
    (3A)前記シリコン基板を前記薬液LEに室温にて12時間浸漬する;
    (4A)前記薬液LEから前記シリコン基板を取り出し、室温にてNH(29%):H(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する;
    (5A)洗浄後の前記シリコン基板の質量W1を測定する;および
    (6A)前記W0と前記W1との差および前記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する;
    に基づくエッチングレートが2.0nm/分以下であり、かつ
    以下の砥粒吸着率測定:
    (1B)前記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って前記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める;
    (2B)前記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める;
    (3B)前記C0および前記C1から、次式:
    砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
    により砥粒吸着率を算出する;
    に基づく砥粒吸着率が20%以下である、研磨用組成物。
  4. 前記水溶性ポリマーはノニオン性のポリマーである、請求項3に記載の研磨用組成物。
  5. 前記水溶性ポリマーは、繰返し単位としてビニルアルコール単位および酢酸ビニル単位を含む分子構造を有する、請求項3または4に記載の研磨用組成物。
  6. 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって:
    少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
    少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;および
    少なくとも前記A剤を含む第1組成物と少なくとも前記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、前記砥粒、前記塩基性化合物、前記水溶性ポリマーHおよび水を含み前記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である混合物を調製する工程;
    を包含する、研磨用組成物製造方法。
  7. 前記A剤は、前記砥粒と前記塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液Cであり、
    前記砥粒分散液Cを希釈して前記第1組成物を調製した後に、該第1組成物と前記第2組成物とを混合して前記混合物を調製する、請求項6に記載の研磨用組成物製造方法。
  8. 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
    少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
    少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;および
    少なくとも前記A剤を含む第1組成物と少なくとも前記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、前記砥粒、前記塩基性化合物、前記水溶性ポリマーHおよび水を含み前記砥粒の濃度が3質量%未満である混合物を調製する工程;
    を包含する、研磨用組成物製造方法。
  9. 前記A剤は、前記砥粒と前記塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液Cであり、
    前記砥粒分散液Cを希釈して前記第1組成物を調製した後に、該第1組成物と前記第2組成物とを混合して前記混合物を調製する、請求項8に記載の研磨用組成物製造方法。
  10. 請求項6から9のいずれか一項に記載の製造方法に用いられる研磨用組成物調製用キットであって、
    互いに分けて保管される前記A剤と前記B剤とを備える、研磨用組成物調製用キット。
  11. 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
    少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
    少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;
    少なくとも前記A剤と前記B剤とを混合して前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い研磨用組成物原液を調製する工程;および、
    前記A剤と前記B剤とを混合してから24時間以内に前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるまで前記研磨用組成物原液を希釈する工程;
    を包含する、研磨用組成物製造方法。
  12. 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
    少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
    少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;
    少なくとも前記A剤と前記B剤とを混合して前記砥粒の含有量が1質量%以上である研磨用組成物原液を調製する工程;および、
    前記A剤と前記B剤とを混合してから24時間以内に前記砥粒の含有量が1質量%未満となる濃度まで前記研磨用組成物原液を希釈する工程;
    を包含する、研磨用組成物製造方法。
  13. 前記研磨用組成物原液を希釈する工程では、該原液を体積基準で10倍以上に希釈する、請求項11または12に記載の研磨用組成物製造方法。
  14. 請求項11から13のいずれか一項に記載の製造方法に用いられる研磨用組成物調製用キットであって、
    互いに分けて保管される前記A剤と前記B剤とを備える、研磨用組成物調製用キット。
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