JP2019151849A - 研磨用組成物、研磨用組成物製造方法および研磨用組成物調製用キット - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明は、研磨対象物の研磨に利用される研磨用組成物の製造方法に関する。さらに、その製造方法に利用される研磨用組成物調製用キットに関する。
本出願は、2013年3月19日に出願された日本国特許出願2013−057225、日本国特許出願2013−057226、日本国特許出願2013−057227および日本国特許出願2013−057228に基づく優先権を主張しており、それらの出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
かかる水溶性ポリマーを含む研磨用組成物は、例えば、上記水溶性ポリマーを同量のヒドロキシエチルセルロースに置き換えた組成の研磨用組成物に比べて、研磨後の表面のヘイズおよびLPD数を低減する性能により優れたものとなり得る。
[エッチングレート測定]
(1A)上記水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを調製する。
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する。
(3A)上記シリコン基板を上記薬液LEに室温にて12時間浸漬する。
(4A)上記薬液LEから上記シリコン基板を取り出し、室温にてNH3(29%):H2O2(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する。
(5A)洗浄後の上記シリコン基板の質量W1を測定する。
(6A)上記W0と上記W1との差および上記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する。
上記研磨用組成物は、また、以下の砥粒吸着率測定に基づく砥粒吸着率が20%以下であることを特徴とする。
[砥粒吸着率測定]
(1B)上記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って上記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める。
(2B)上記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める。
(3B)上記C0および上記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
上記砥粒の分散性および研磨用組成物の性能安定性の観点から、上記砥粒分散液Cの希釈は、上記砥粒分散液Cに水を添加して該砥粒の濃度が3質量%未満である上記第1組成物が形成されるように行われることが好ましい。また、希釈前の砥粒分散液Cは、その砥粒濃度が例えば3質量%以上であることが好ましい。このことによって、砥粒分散液Cの保管や移送にかかるコストが低減され得る。
あるいは、上記研磨用組成物調製用キットは、上記砥粒を含まない構成であってもよい。かかる構成の研磨用組成物調製用キットは、例えば該キットとは別に用意した砥粒と組み合わせることにより、ここに開示される研磨用組成物製造方法に好適に利用することができる。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記A剤に含まれる態様、すなわち、上記A剤が上記塩基性化合物、上記砥粒および水を含む態様で好ましく実施され得る。このように砥粒と塩基性化合物とを含むA剤を用いる態様は、砥粒の分散安定性の観点から好ましい。また、上記製造方法は、上記砥粒が少なくとも上記B剤に含まれる態様、すなわち、上記B剤が上記水溶性ポリマーH、上記砥粒および水を含む態様で実施されてもよい。上記A剤および上記B剤の両方が上記砥粒を含んでいてもよい。
あるいは、上記研磨用組成物調製用キットは、上記砥粒を含まない構成であってもよい。かかる構成の研磨用組成物調製用キットは、例えば該キットとは別に用意した砥粒と組み合わせることにより、ここに開示される研磨用組成物製造方法に好適に利用することができる。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物は、以下の条件:
SP値の異なる複数種の繰返し単位を含む分子構造を有する;
前記複数種の繰返し単位は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含む;および
前記分子構造に含まれる全種類の繰返し単位について、各種類に係る繰返し単位のSP値と該繰返し単位の合計体積が上記分子構造中の全繰返し単位の体積に占める割合との積を合計して求められる平均SP値が17.5以下である;
を満たす水溶性ポリマーを含有することを特徴とする。
以下、上記第一の態様に係る研磨用組成物について詳しく説明する。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含み、かつ平均SP値が17.5以下である水溶性ポリマーを含むことによって特徴づけられる。
ここでSP値とは、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)を意味する。本明細書において、水溶性ポリマーを構成する繰返し単位のSP値とは、Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blend, Michael M. Coleman et al. (1991) Technomic Publishing Co. Inc.に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΣΔH)およびモル体積の合計(ΣV)から、下記式(1)により算出される値をいう。
SP値(δ(cal/cm3)1/2)=(ΣΔH/ΣV)1/2 (1)
ここに開示される技術は、また、上記水溶性ポリマーとして、繰返し単位Aとしてのビニルアルコール単位と繰返し単位Bとしてのヘキサン酸ビニル単位とを含む水溶性ポリマーを用いる態様で好ましく実施され得る。このような水溶性ポリマーの一例として、ヘキサン酸ビニルの単独重合体または共重合体を部分けん化した構造の水溶性ポリマーが挙げられる。例えば、酢酸ビニルとヘキサン酸ビニルとの共重合体を部分けん化した構造の部分けん化ポリビニルアルコールを好ましく使用し得る。上記部分けん化ポリビニルアルコールの例には、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーと、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位とヘキサン酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーとが含まれる。
このような部分けん化ポリビニルアルコールとしては、水に対する溶解性等の観点から、けん化度が50モル%以上(より好ましくは60モル%以上)であって平均SP値が17.5以下であるものを好ましく用いることができる。平均SP値が17.0以下の部分けん化ポリビニルアルコールがより好ましく、平均SP値が16.5以下(例えば16.0以下)であるものがさらに好ましい。
なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上記水溶性ポリマーのほかに水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には砥粒を含有する。砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
砥粒の平均二次粒子径DP2は、対象とする砥粒の水分散液(水溶性ポリマー等を含有しない組成の分散液)を測定サンプルとして、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には塩基性化合物を含有する。本明細書中において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。典型的には、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物は、研磨対象となる面を化学的に研磨する働きをし、研磨速度の向上に寄与し得る。また、塩基性化合物は、研磨用組成物(特に、砥粒を含む組成の研磨用組成物)の分散安定性の向上に役立ち得る。
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤(典型的には、分子量1×104未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤の使用により、研磨用組成物(特に、砥粒を含む研磨用組成物)の分散安定性が向上し得る。また、研磨面のヘイズを低減することが容易となり得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の分子量のより好ましい範囲は、界面活性剤の種類によっても異なり得る。例えば、界面活性剤としてEOとPOとのブロック共重合体を用いる場合には、Mwが1000以上のものが好ましく、2000以上のものがより好ましく、5000以上のものがさらに好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、上述した水溶性ポリマー(すなわち、所定のSP値を満たす繰返し単位Aおよび繰返し単位Bを含み、かつ所定の平均SP値を満たす水溶性ポリマー)に加えて、必要に応じて、Mwが1×104以上である他の水溶性ポリマー(以下「任意ポリマー」ともいう。)を含有し得る。かかる任意ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーであって上述した水溶性ポリマーに該当しないもののなかから適宜選択することができる。
上記任意ポリマーは、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記任意ポリマーは、例えば、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド構造、第四級窒素構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記任意ポリマーとしてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
また、測定対象のポリマーが例えば部分けん化ポリビニルアルコールのようにカルボン酸ビニル単位およびビニルアルコール単位からなるポリマーである場合は、その測定対象のポリマーを含む試料液に水酸化カリウム(KOH)を添加して加温することにより完全けん化させた際のKOH消費量を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出し、それらのモル数から水酸基量を算出してもよい。
上記水酸基量の測定において、研磨用組成物中に含まれるポリマーを測定対象とする場合には、該研磨用組成物を上記試料液として使用することができる。ここで、上記研磨用組成物が砥粒を含む研磨用組成物である場合には、該砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を上記試料液として用いるとよい。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、種々の材質および形状を有する研磨対象物の研磨に適用され得る。研磨対象物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された研磨対象物であってもよい。なかでも、シリコンからなる表面を備えた研磨対象物の研磨に好適である。ここに開示される技術は、例えば、砥粒としてシリカ粒子を含む研磨用組成物(典型的には、砥粒としてシリカ粒子のみを含む研磨用組成物)であって、研磨対象物がシリコンである研磨用組成物に対して特に好ましく適用され得る。
研磨対象物の形状は特に制限されない。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物の研磨に好ましく適用され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。ここに開示される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
また、ここに開示される研磨用組成物が界面活性剤を含む場合、水溶性ポリマーの含有量w1と界面活性剤の含有量w2との質量比(w1/w2)は特に制限されないが、例えば0.01〜100の範囲とすることができ、0.05〜50の範囲が好ましく、0.1〜30の範囲がより好ましい。
あるいは、組成の単純化等の観点から、ここに開示される研磨用組成物は、界面活性剤を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度が適当である。好ましい一態様に係る研磨用組成物の濃縮倍率は10倍〜40倍であり、例えば15倍〜25倍である。
ここに開示される研磨用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
塩基性砥粒分散液とポリマー水溶液とを混合する際には、塩基性砥粒分散液に対してポリマー水溶液を添加することが好ましい。かかる混合方法によると、例えばポリマー水溶液に対して塩基性砥粒分散液を添加する混合方法に比べて、砥粒の局所的な凝集をよりよく防止することができる。砥粒がシリカ粒子(例えばコロイダルシリカ粒子)である場合には、上記のように塩基性砥粒分散液に対してポリマー水溶液を添加する混合方法を採用することが特に有意義である。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物の研磨に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(典型的にはスラリー状の研磨液であり、研磨スラリーと称されることもある。)を用意する。上記研磨液を用意することには、上述のように、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。また、多剤型の研磨用組成物の場合、上記研磨液を用意することには、それらの剤を混合すること、該混合の前に1または複数の剤を希釈すること、該混合の後にその混合物を希釈すること、等が含まれ得る。
なお、上記研磨工程で使用される研磨パッドは特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨された研磨物は、典型的には、研磨後に洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC−1洗浄液(水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)と水(H2O)との混合液。以下、SC−1洗浄液を用いて洗浄することを「SC−1洗浄」という。)、SC−2洗浄液(HClとH2O2とH2Oとの混合液。)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば常温〜90℃程度とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃〜85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、砥粒と水溶性ポリマーと水とを含む。上記研磨用組成物は、
以下のエッチングレート測定:
(1A)前記水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを用意する;
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する;
(3A)前記シリコン基板を前記薬液LEに室温にて12時間浸漬する;
(4A)前記薬液LEから前記シリコン基板を取り出し、室温にてNH3(29%):H2O2(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する;
(5A)洗浄後の前記シリコン基板の質量W1を測定する;および
(6A)前記W0と前記W1との差および前記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する;
に基づくエッチングレートが2.0nm/分以下であり、かつ
以下の砥粒吸着率測定:
(1B)前記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って前記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める;
(2B)前記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める;
(3B)前記C0および前記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する;
に基づく砥粒吸着率が20%以下である。
以下、上記第二の態様に係る研磨用組成物について詳しく説明する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーのなかから、上記研磨用組成物において所定のエッチングレートおよび砥粒吸着率が実現され得るように適宜選択することができる。
上記水溶性ポリマーは、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記水溶性ポリマーは、例えば、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド構造、第四級窒素構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。
ここに開示される技術は、また、上記水溶性ポリマーとして、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位とを含む水溶性ポリマーを用いる態様で好ましく実施され得る。このような水溶性ポリマーの一例として、ヘキサン酸ビニルの単独重合体または共重合体を部分けん化した構造の水溶性ポリマーが挙げられる。例えば、酢酸ビニルとヘキサン酸ビニルとの共重合体を部分けん化した構造の部分けん化ポリビニルアルコールを好ましく使用し得る。上記部分けん化ポリビニルアルコールの例には、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーと、ビニルアルコール単位とヘキサン酸ビニル単位と酢酸ビニル単位とからなる水溶性ポリマーとが含まれる。
このような部分けん化ポリビニルアルコールとしては、水に対する溶解性等の観点から、けん化度が50モル%以上(より好ましくは60モル%以上)であって所定のエッチングレートおよび砥粒吸着率を満たすものを好ましく用いることができる。上記エッチングレートおよび砥粒吸着率の観点から、けん化度が90モル%以下の部分けん化ポリビニルアルコールが好ましく、85モル%以下のものがより好ましい。好ましい一態様において、けん化度が80モル%以下の部分けん化ポリビニルアルコールを使用することができる。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、原理上、100モル%以下である。
EOとPOとのブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO−PPO−PEO型トリブロック体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック体がより好ましい。
HO−(EO)a−(PO)b−(EO)c−H ・・・(1)
一般式(1)中のEOはオキシエチレン単位(−CH2CH2O−)を示し、POはオキシプロピレン単位(−CH2CH(CH3)O−)を示し、a、bおよびcはそれぞれ1以上(典型的には2以上)の整数を示す。
一般式(1)において、aとcとの合計は、2〜1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜500の範囲であり、さらに好ましくは10〜200の範囲である。一般式(1)中のbは、2〜200の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100の範囲であり、さらに好ましくは10〜50の範囲である。
主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン、N−カプロイルエチレンイミン、N−ベンゾイルエチレンイミン、N−アセチルプロピレンイミン、N−ブチリルエチレンイミン等が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体としては、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−カプロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチリルエチレンイミン)等が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの共重合体の例には、2種以上のN−アシルアルキレンイミン型モノマーの共重合体と、1種または2種以上のN−アシルアルキレンイミン型モノマーと他のモノマーとの共重合体が含まれる。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
N−ビニルラクタム型モノマーの具体例としては、N−ビニルピロリドン(VP)、N−ビニルピペリドン、N−ビニルモルホリノン、N−ビニルカプロラクタム(VC)、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等が挙げられる。N−ビニルラクタム型のモノマー単位を含むポリマーの具体例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム、VPとVCとのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方と他のビニルモノマー(例えば、アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー等)とのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方を含むポリマーセグメントを含むブロック共重合体やグラフト共重合体(例えば、ポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンがグラフトしたグラフト共重合体)等が挙げられる。
N−ビニル鎖状アミドの具体例としては、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオン酸アミド、N−ビニル酪酸アミド等が挙げられる。
なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる水としては、第一の態様に係る研磨用組成物について説明した水と同様のものを用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれる砥粒は、第一の態様に係る研磨用組成物に含まれ得る砥粒と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物に含まれ得る塩基性化合物は、第一の態様に係る研磨用組成物に含まれ得る塩基性化合物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。使用し得る界面活性剤は、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。第二の態様に係る研磨用組成物に含有させ得る添加剤は、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物は、砥粒と水溶性ポリマーと水とを含み、上述したエッチングレート測定によるエッチングレートが2.0nm/分以下であり、かつ上述した砥粒吸着率測定に基づく砥粒吸着率が20%以下であることによって特徴づけられる。
[エッチングレート測定]
(1A)研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを調製する。
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する。
(3A)上記シリコン基板を上記薬液LEに室温にて12時間浸漬する。
(4A)上記薬液LEから上記シリコン基板を取り出し、室温にてNH3(29%):H2O2(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する。
(5A)洗浄後の上記シリコン基板の質量W1を測定する。
(6A)上記W0と上記W1との差および上記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する。
なお、2種以上の水溶性ポリマーを含む研磨用組成物についてのエッチングレートは、それら2種以上の水溶性ポリマーを上記研磨用組成物と同じ割合で使用して上記エッチングレート測定を行うことにより求められる。
[砥粒吸着率測定]
(1B)上記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って上記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める。
(2B)上記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める。
(3B)上記C0および上記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する。
水溶性ポリマーは、公知の水溶性ポリマー(例えば、上記で例示した水溶性ポリマー)のなかから、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の水溶性ポリマーを組み合わせて用いる場合には、上記エッチングレートおよび砥粒吸着量を満たすようにそれらの使用量比を設定することができる。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の用途は、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の研磨液および濃縮液に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物の調製に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物を用いる研磨に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物を用いて研磨された研磨物の洗浄に関しては、第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、
砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって:
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;および
少なくとも前記A剤を含む第1組成物と少なくとも前記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、前記砥粒、前記塩基性化合物、前記水溶性ポリマーHおよび水を含み前記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である混合物を調製する工程;
を包含する。
以下、上記第一の態様に係る研磨用組成物製造方法について詳しく説明する。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基(以下「加水分解性基」ともいう。)を有する水溶性ポリマー(水溶性ポリマーH)を含む研磨用組成物の製造に好ましく適用される。上記水溶性ポリマーHは、典型的には、その分子構造中に含まれる全繰返し単位のモル数のうち加水分解性基を有する繰返し単位のモル数の割合(モル比)が2%を超える水溶性ポリマーである。かかる研磨用組成物の製造において、ここに開示される方法を採用することによる効果が良好に発揮され得る。ここに開示される方法の特に好ましい適用対象(製造対象)として、加水分解性基を有する繰返し単位のモル比が5%以上である水溶性ポリマーHを含む研磨用組成物が挙げられる。
水溶性ポリマーHにおける加水分解性基を有する繰返し単位のモル比の上限は特に限定されないが、該水溶性ポリマーHの水に対する溶解性の観点から、典型的には80%以下であり、通常は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下(例えば30%以下)であることがさらに好ましい。
なお、原理上、Mw/Mnは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw/Mnが1.05以上の水溶性ポリマーを好ましく使用し得る。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法に使用し得る砥粒、塩基性化合物および水は、ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、上述のような砥粒、塩基性化合物、水溶性ポリマーHおよび水を用いて実施される。その製造方法は、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程とを包含し、さらに、少なくとも上記A剤を含む第1組成物と少なくとも上記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、以下の(A)および(B)の一方または両方を満たす混合物を調製する工程を包含することを特徴とする。
(A)上記砥粒、上記塩基性化合物、上記水溶性ポリマーHおよび水を含み、上記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である。
(B)上記砥粒、上記塩基性化合物、上記水溶性ポリマーHおよび水を含み、上記砥粒の濃度が3質量%未満である。
この実施形態(embodiment)では、以下のA剤とB剤とが別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:砥粒と塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液(砥粒濃度5〜25質量%、塩基性化合物濃度0.0001〜1モル/Lの塩基性砥粒分散液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
この実施形態において、上記第1組成物にB剤を添加して混合した後、必要に応じてさらに水を加えて研磨用組成物の砥粒濃度を調節してもよい。また、上記第1組成物にB剤を添加して混合した後、必要に応じてさらに塩基性化合物を加えて研磨用組成物のpHを調節してもよい。
かかる効果が得られる一つの理由として、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとを共存する状態が、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態と同時またはそれ以前(本実施形態では同時)に実現されることが考えられる。上記の効果が得られる他の一つの理由として、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が、塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である状態と同時またはそれ以前(実施形態では同時)に実現されることが考えられる。
また、この実施形態で使用されるB剤は、あらかじめ水溶性ポリマーHを水に溶解させた水溶液として調製されているので、上記第1組成物と混合されたときに砥粒の局所的な凝集を高度に防止し得る。このことは、本実施形態により製造される研磨用組成物の濾過性向上や研磨後の表面における欠陥低減等の観点から好ましい。
また、第1組成物(A剤の希釈物)における好ましい塩基性化合物濃度は、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度によっても異なり得るが、通常は0.1モル/L以下とすることが好ましく、0.05モル/L以下とすることがより好ましく、0.02モル/L以下とすることがさらに好ましい。好ましい一態様において、第1組成物の塩基性化合物濃度は、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度と同程度か、それより少し高い濃度とすることができる。例えば、製造対象である研磨用組成物の塩基性化合物濃度(モル/L)に対して1〜10%程度高い濃度(モル/L)とすることができる。
好ましい一態様において、B剤は、第1組成物と混合する前に濾過することができる。濾過の方法は特に限定されず、例えば、常圧で行う自然濾過の他、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の濾過方法を適宜採用することができる。
この実施形態では、以下のA剤、B剤およびC剤が別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:塩基性化合物の水溶液(塩基性化合物濃度0.0001〜1モル/Lの水溶液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
C剤:砥粒と水とを含む分散液(砥粒濃度5〜25質量%の砥粒分散液)
この実施形態では、砥粒濃度が3質量%未満であって塩基性化合物を含まない砥粒分散液(C剤の希釈物)に、まず水溶性ポリマーHの水溶液(B剤)を添加する。これにより、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が実現される。その後、さらにA剤を加えて混合することにより、水溶性ポリマーHを用いながら、研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
この実施形態では、以下のA剤とB剤とが別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:塩基性化合物の水溶液(塩基性化合物濃度0.0001〜1モル/Lの水溶液)
B剤:砥粒と水溶性ポリマーHとを含む水分散液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、砥粒濃度5〜25質量%、pH約7)
この実施形態では、まず砥粒と水溶性ポリマーHとを含む水分散液(B剤)を砥粒濃度3質量%未満に希釈する。これにより砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとが共存する状態が実現される。その後に塩基性化合物の水溶液(A剤)を添加する。したがって、上記塩基性化合物と上記水溶性ポリマーHとを共存させるより前に、砥粒濃度3質量%未満の砥粒分散液中で該砥粒と上記水溶性ポリマーHとを共存させることができる。このことによって、水溶性ポリマーHを用い、かつ研磨性能の安定性に優れた塩基性の研磨用組成物が製造され得る。
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、典型的には、その固形分含量(non-volatile content;NV)が5質量%以下である研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)の製造に好ましく適用され得る。上記NVが0.05質量%〜3質量%(例えば0.05〜2質量%)である研磨用組成物の製造への適用がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める質量の割合を指す。
ここに開示される方法は、典型的には、砥粒の含有量が3質量%未満である研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。好ましい製造対象として、砥粒の含有量が0.05〜2質量%(より好ましくは0.05〜1質量%)である研磨用組成物が挙げられる。
(任意ポリマー)
ここに開示される第一の態様に係る研磨用組成物製造方法は、水溶性ポリマーHに加えて、必要に応じて他の水溶性ポリマー(すなわち、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有しない水溶性ポリマー。以下「任意ポリマー」ともいう。)を含む研磨用組成物の製造にも好ましく適用され得る。かかる任意ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーであって水溶性ポリマーHに該当しないもののなかから適宜選択することができる。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤(典型的には、分子量1×104未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤としては、上述した第一の態様に係る研磨用組成物における界面活性剤と同様のものを同様に用いることができる。例えば、界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。界面活性剤の分子量は、典型的には1×104未満であり、研磨用組成物の濾過性や被研磨物の洗浄性等の観点から9500以下が好ましい。また、界面活性剤の分子量は、典型的には200以上であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上が好ましく、300以上(例えば500以上)がより好ましい。なお、界面活性剤の分子量としては、GPCにより求められる重量平均分子量(Mw)(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される分子量を採用することができる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は特に制限されない。通常は、洗浄性等の観点から、上記研磨用組成物に含まれる砥粒100質量部に対する界面活性剤の使用量を20質量部以下とすることが適当であり、15質量部以下が好ましく、10質量部以下(例えば6質量部以下)がより好ましい。界面活性剤の使用効果をよりよく発揮させる観点から、砥粒100質量部に対する界面活性剤の使用量は、0.001質量部以上が適当であり、0.005質量部以上が好ましく、0.01質量部以上(例えば0.1質量部以上)がより好ましい。あるいは、組成の単純化等の観点から、界面活性剤を実質的に使用しなくてもよい。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。これらの添加剤については、上述した第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液としては、上記研磨用組成物をそのまま使用することができる。あるいは、上記研磨用組成物をさらに希釈して研磨液を調製してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。上記濃縮液の研磨液に対する濃縮倍率は特に制限されないが、例えば体積換算で1.2倍〜200倍程度とすることができ、通常は1.5倍〜100倍(典型的には1.5倍〜50倍、例えば2倍〜40倍)程度が適当である。ここに開示される方法により製造される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該研磨用組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物の用途については、上述した第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
研磨対象物の研磨は、例えば以下のようにして行うことができる。
すなわち、ここに開示されるいずれかの方法で製造された研磨用組成物を含む研磨液(典型的にはスラリー状の研磨液であり、研磨スラリーと称されることもある。)を用意する。上記研磨液を用意することには、上述のように、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコンウエハのファイナルポリシングを行う場合には、ラッピング工程および1次ポリシング工程を経たシリコンウエハを一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコンウエハの表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコンウエハの表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
上記研磨工程で使用される研磨パッドは特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
上述のような研磨工程は、研磨物(例えば、シリコンウエハ等の基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む研磨物の製造方法(好適には、シリコンウエハの製造方法)が提供される。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法は、
砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;
少なくとも前記A剤と前記B剤とを混合して前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い研磨用組成物原液を調製する工程;および、
前記A剤と前記B剤とを混合してから24時間以内に前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるまで前記研磨用組成物原液を希釈する工程;
を包含する。
以下、上記第二の態様に係る研磨用組成物製造方法について詳しく説明する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法は、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基(以下「加水分解性基」ともいう。)を有する水溶性ポリマー(水溶性ポリマーH)を含む研磨用組成物の製造に好ましく適用される。第二の態様に係る研磨用組成物製造方法における水溶性ポリマーHは、上述した第一の態様に係る研磨用組成物製造方法における水溶性ポリマーHと同様であるので、重複する説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法に使用し得る砥粒、塩基性化合物および水は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物における砥粒、塩基性化合物および水と同様であるので、重複する説明は省略する。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法は、上述のような砥粒、塩基性化合物、水溶性ポリマーHおよび水を用いて実施され得る。その製造方法では、少なくとも上記塩基性化合物を含むA剤と、少なくとも上記水溶性ポリマーHを含むB剤とを用意し、少なくとも上記A剤と上記B剤とを混合することによって以下の(A)および(B)の一方または両方を満たす研磨用組成物原液を調製する。
(A)上記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い。
(B)上記砥粒濃度が1質量%以上である。
そして、上記研磨用組成物原液を調製してから24時間以内に該原液を希釈する。上記希釈は、上記(A)を満たす研磨用組成物原液では、上記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるように行うことが好ましい。また、上記(B)を満たす研磨用組成物原液では、上記砥粒の濃度が1質量%未満となるように上記希釈を行うことが好ましい。
この実施形態では、以下のA剤とB剤とが別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:砥粒と塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液(砥粒濃度3〜25質量%、塩基性化合物濃度0.02〜1モル/Lの塩基性砥粒分散液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
また、この実施形態で使用されるB剤は、あらかじめ水溶性ポリマーHを水に溶解させた水溶液として調製されているので、上記A剤と混合されたときに砥粒の局所的な凝集を高度に防止し得る。このことは、本実施形態により製造される研磨用組成物の濾過性向上や研磨後の表面における欠陥低減等の観点から好ましい。
A剤における砥粒の含有量は、例えば50質量%以下とすることができる。砥粒の局所的な凝集をよりよく防止する等の観点から、通常は、上記砥粒濃度を40質量%以下とすることが適当であり、30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下(例えば20質量%以下)とすることがより好ましい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、A剤における砥粒の含有量は、例えば2質量%超とすることが適当であり、3質量%超が好ましい。
好ましい一態様において、B剤は、A剤と混合する前に濾過することができる。濾過の方法は特に限定されず、例えば、常圧で行う自然濾過の他、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の濾過方法を適宜採用することができる。
この実施形態では、以下のA剤、B剤およびC剤が別々に保管された研磨用組成物調製用キットを用いて研磨用組成物を製造する。
A剤:塩基性化合物の水溶液(塩基性化合物濃度0.02モル/L以上の水溶液)
B剤:水溶性ポリマーHの水溶液(ポリマー濃度0.02〜50質量%、pH約6のポリマー水溶液)
C剤:砥粒と水とを含む分散液(砥粒濃度3〜25質量%の砥粒分散液)
ここに開示される研磨用組成物製造方法は、典型的には、その固形分含量(non-volatile content;NV)が2質量%以下である研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)の製造に好ましく適用され得る。上記NVが0.05質量%〜1質量%(例えば0.05〜0.8質量%)である研磨用組成物の製造への適用がより好ましい。なお、上記固形分含量(NV)とは、研磨用組成物を105℃で24時間乾燥させた後における残留物が上記研磨用組成物に占める質量の割合を指す。
ここに開示される方法は、典型的には、砥粒の含有量が1質量%未満である研磨用組成物の製造に好ましく適用され得る。好ましい製造対象として、砥粒の含有量が0.05〜0.9質量%(より好ましくは0.05〜0.8質量%)である研磨用組成物が挙げられる。
(任意ポリマー)
ここに開示される技術は、水溶性ポリマーHに加えて、必要に応じてMwが1×104以上である他の水溶性ポリマー(すなわち、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有しない水溶性ポリマー。以下「任意ポリマー」ともいう。)を含有する研磨用組成物の製造にも好ましく適用され得る。かかる任意ポリマーの種類は特に制限されず、研磨用組成物の分野において公知の水溶性ポリマーであって水溶性ポリマーHに該当しないもののなかから適宜選択することができる。
このような任意ポリマーの種類、分子量および分子量分布(Mw/Mn)、使用量等は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物製造方法と同様であるので、詳しい説明は省略する。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤(典型的には、分子量1×104未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤の種類、具体例、分子量、使用量等は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物における界面活性剤と同様であるので、詳しい説明は省略する。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。これらの添加剤は、上述した第一の態様に係る研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
ここに開示される方法により製造される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液としては、上記研磨用組成物をそのまま使用することができる。あるいは、上記研磨用組成物をさらに希釈して研磨液を調製してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。上記濃縮液の研磨液に対する濃縮倍率は特に制限されないが、例えば体積換算で1.05倍〜200倍程度とすることができ、通常は1.2倍〜100倍程度が好ましく、1.5倍〜70倍程度がより好ましい。ここに開示される方法により製造される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該研磨用組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
ここに開示される第二の態様に係る研磨用組成物製造方法により製造される研磨用組成物の用途、該研磨組成物を用いる研磨および研磨工程度の研磨物の洗浄に関しては、上述した第一の態様に係る研磨用組成物製造方法により製造される研磨用組成物と同様であるので、詳しい説明は省略する。
(1)分子構造中に加水分解反応性を示す官能基を有する繰返し単位fを含む水溶性ポリマーPと水とを用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
その製造された研磨用組成物中において、上記水溶性ポリマーPに含まれる全繰返し単位のモル数mTに対する上記繰返し単位fのモル数mfの比(mf/mT)が5%以上に維持されていることを特徴とする、研磨用組成物の製造方法。
(2)上記(1)の方法により製造された研磨用組成物を研磨対象物に供給して該研磨対象物を研磨する工程を含み、
上記研磨対象物に供給される研磨用組成物に含まれる上記水溶性ポリマーPにおいて、上記比(mf/mT)が5%以上に維持されていることを特徴とする、研磨物の製造方法。
上記(1)の製造方法は、例えば、ここに開示されるいずれかの製造方法(例えば、上述した第一の態様に係る製造方法における第1〜第3実施形態、上述した第二の態様に係る製造方法における第1,第2実施形態、およびそれらの変形例に係る態様の製造方法)を適用して実施され得るが、これに限定されない。
(3)水酸基を有する繰返し単位hを含む水溶性ポリマーQと水とを用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
その製造された研磨用組成物中において、上記水溶性ポリマーQの水酸基量が4ミリモル/g以上21ミリモル/g以下であることを特徴とする、研磨用組成物の製造方法。
(4)上記(3)の方法により製造された研磨用組成物を研磨対象物に供給して該研磨対象物を研磨する工程を含み、
上記研磨対象物に供給される研磨用組成物に含まれる上記水溶性ポリマーQにおいて、該水溶性ポリマーQの水酸基量が4ミリモル/g以上21ミリモル/g以下の範囲にあることを特徴とする、研磨物の製造方法。
また、測定対象のポリマーが例えば部分けん化ポリビニルアルコールのようにカルボン酸ビニル単位およびビニルアルコール単位からなるポリマーである場合は、その測定対象のポリマーを含む試料液に水酸化カリウム(KOH)を添加して加温することにより完全けん化させた際のKOH消費量を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出し、それらのモル数から水酸基量を算出してもよい。
上記水酸基量の測定において、研磨用組成物中に含まれるポリマーを測定対象とする場合には、該研磨用組成物を上記試料液として使用することができる。ここで、上記研磨用組成物が砥粒を含む研磨用組成物である場合には、該砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を上記試料液として用いるとよい。
<研磨用組成物の調製>
(実施例A1)
砥粒、水溶性ポリマーHA、アンモニア水(濃度29%)および超純水を混合して研磨用組成物の濃縮液を調製した後、この濃縮液を上記混合から1時間以内に超純水で20倍(体積基準)に希釈することにより、砥粒の濃度が0.5%、アンモニア(NH3)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨用組成物のpHは10.2であった。
砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカを使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
水溶性ポリマーHAとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコールを使用した。この水溶性ポリマーHAにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比(全繰返し単位のモル数に占めるビニルアルコール単位びモル数の割合)は73%であり、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は27%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHAの平均SP値は15.1である。
本例では、砥粒として、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカを使用した。この砥粒とアンモニア水(濃度29%)および超純水を混合して研磨用組成物の濃縮液を調製した後、この濃縮液を上記混合から1時間以内に超純水で20倍(体積基準)に希釈することにより、砥粒の濃度が0.2%、アンモニアの濃度が0.005%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.010%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨液のpHは10.1であった。
なお、本例の研磨用組成物における水溶性ポリマーHAおよびアンモニアの濃度は、単位体積の研磨液中に含まれる砥粒の表面積当たりの水溶性ポリマーおよびアンモニアの含有量が実施例A1の研磨液と概ね同程度となるように調整したものである。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、けん化度78モル%、Mw2.7×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHBにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比は78%であり、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は22%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHBの平均SP値は15.6である。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、Mwが2.8×104のポリビニルアルコール(ビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含む;以下「水溶性ポリマーHJ」と表記することがある。)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えてMwが0.3×104のポリビニルアルコール(ビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含む;以下「水溶性ポリマーHK」と表記することがある。)を使用した。また、研磨用組成物における水溶性ポリマーHKの濃度を0.003%とした。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×104のポリビニルアルコール;以下、水溶性ポリマーHCともいう。)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHCにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比は98%、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は2%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHCの平均SP値は18.2である。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、アクリルアミドとアクリル酸とのランダム共重合体(水溶性ポリマーHD)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHDは、アクリル酸に由来する繰返し単位(SP値20.2)とアクリルアミドに由来する繰返し単位(SP値14.5)とを40:60のモル比で含むMw20×104の共重合体である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHDの平均SP値は16.5である。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(水溶性ポリマーHE)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHEは、エチレンオキサイドに由来する繰返し単位(SP値9.4)とプロピレンオキサイドに由来する繰返し単位(SP値9.0)とを92:8のモル比で含むMw10×104の共重合体である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHEの平均SP値は9.4である。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、Mwが6×104のポリ(N−ビニルピロリドン)(水溶性ポリマーHF)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
上記水溶性ポリマーHFは、N−ビニルピロリドン(SP値11.0)の単独重合体である。したがって、この水溶性ポリマーHFの平均SP値は11.0である。
本例では、実施例A1における水溶性ポリマーHAに代えて、Mwが25×104のヒドロキシエチルセルロース(水溶性ポリマーHG;SP値18.3)を使用した。その他の点は実施例A1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。なお、各研磨用組成物の調製から研磨開始までの時間は約1時間とした。
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
研磨後のシリコンウエハを、NH4OH(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
<研磨用組成物の調製>
(実施例B1)
砥粒、アンモニアおよび超純水からなるNV約0.46%の塩基性砥粒分散液に、水溶性ポリマーP1を1.5質量%の濃度で含むポリマー水溶液を加えて混合することにより、砥粒の濃度が0.46%、アンモニア(NH3)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨用組成物のpHは10.2であった。
砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカを使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
水溶性ポリマーP1としては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコールを使用した。この水溶性ポリマーP1は、ポリビニルアルコール単位73モル%および酢酸ビニル単位27モル%を含む共重合体である。
本例では、砥粒として、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカを使用した。この砥粒とアンモニアと超純水とからなるNV約0.18%の塩基性砥粒分散液に、水溶性ポリマーP1を1.5質量%の濃度で含むポリマー水溶液を加えて混合することにより、砥粒の濃度が0.18%、アンモニアの濃度が0.005%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.010%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨液のpHは10.1であった。
なお、本例の研磨用組成物における水溶性ポリマーP1およびアンモニアの濃度は、単位体積の研磨液中に含まれる砥粒の表面積当たりの水溶性ポリマーおよびアンモニアの含有量が実施例B1の研磨液と概ね同程度となるように調整したものである。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、けん化度79モル%、Mw2.7×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーP2)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、ポリビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含みMwが2.8×104であるポリビニルアルコール(水溶性ポリマーP3)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、ポリビニルアルコール単位80モル%およびヘキサン酸ビニル単位20モル%を含みMwが0.3×104であるポリビニルアルコール(水溶性ポリマーP4)を使用した。また、研磨用組成物における水溶性ポリマーP4の濃度を0.003%とした。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×104のポリビニルアルコール;以下、水溶性ポリマーP5ともいう。)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、Mwが6.0×104のポリ(N−ビニルピロリドン)(水溶性ポリマーP6)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、Mwが25×104のヒドロキシエチルセルロース(水溶性ポリマーP7)を使用した。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
本例では、実施例B1における水溶性ポリマーP1に代えて、ポリビニルアルコールにポリ(N−ビニルピロリドン)がグラフトしたグラフト共重合体(水溶性ポリマーP8)を使用した。このグラフト共重合体は、全体のMwが17.5×104であり、該グラフト共重合体1分子に含まれるポリビニルアルコール鎖のMwは7.5×104であり、ポリ(N−ビニルピロリドン)鎖の合計Mwは10×104である。また、上記ポリビニルアルコール鎖のけん化度は98モル%以上である。その他の点は実施例B1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
実施例B1,B2で使用した水溶性ポリマーP1を1.5質量%の濃度で含むポリマー水溶液とアンモニア水(29%)と超純水とを混合して、水溶性ポリマーP1の濃度が0.18%、アンモニアの濃度が1.3%であり、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを調製した。
縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状のシリコン基板(伝導型:P型、結晶方位:<100>)を用意し、その表面の自然酸化膜をフッ化水素(3%)水溶液に1分間浸漬することにより除去した後、該シリコン基板の質量W0を測定した。
上記シリコン基板を上記薬液LEに室温(25℃)にて12時間浸漬した後、該薬液LEからシリコン基板を取り出し、NH3(29%):H2O2(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液に室温(25℃)にて10秒間浸漬した。該洗浄液から取り出したシリコン基板を水洗し、その質量W1を測定した。上記W0と上記W1との差、上記シリコン基板の比重(2.33g/cm3)および該シリコン基板の表面積(18cm2)からエッチングレートを算出したところ、0.8nm/分であった。
他の実施例および比較例で使用した水溶性ポリマーP2〜P8についても同様にしてエッチングレートを測定した。得られた結果を、各水溶性ポリマーを用いた実施例および比較例に対応させて表4に示した。
実施例B1に係る研磨用組成物に対し、ベックマン・コールター社製の遠心分離器、型式「Avanti HP−30I」を用いて20000rpmの回転数で30分間の遠心分離処理を行った。上記遠心分離処理後の上澄み液を回収し、その上澄み液の全有機炭素量(TOC)を、島津製作所社製の全有機体炭素計(燃焼触媒酸化方式、型式「TOC−5000A」)を用いて測定した。測定結果を上記上澄み液の体積で換算することにより、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量(上記上澄み液中にフリーポリマーとして含まれる水溶性ポリマーに由来する有機炭素の総量)C1を求めた。なお、研磨用組成物の調製から遠心分離処理開始までの時間は約1時間とした。
実施例B1に係る研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を調製した。すなわち、アンモニア(NH3)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーP1の濃度が0.018%であり、残部が水からなる試験液L0を調製した。この試験液L0のTOCを上記全有機体炭素計で測定し、体積換算して該試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求めた。
上記C0および上記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出したところ、ほぼ0%であった。
実施例B2〜B5および比較例B1〜B4に係る研磨用組成物についても同様にして砥粒吸着率を測定した。得られた結果を表4に示した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。なお、各研磨用組成物の調製から研磨開始までの時間は約1時間とした。
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
研磨後のシリコンウエハを、NH3(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
各例に係る研磨液を、温度25℃、濾過差圧50kPaの条件で吸引濾過した。フィルタとしては、日本ポール社製のディスクフィルタ、商品名「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を使用した。上記フィルタを通過する研磨用組成物の流れが止まるまでに該フィルタを通過した研磨用組成物の体積から、以下の2水準で濾過性を評価した。得られた結果を表4の「濾過性」の欄に示した。
A:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL以上。
C:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL未満。
これに対して、砥粒吸着率20%以下およびエッチングレート2.0nm/分以下の両方を満たす実施例B1〜B5の研磨液によると、比較例B1と同様の良好な濾過性を確保しつつ、比較例B1に比べてヘイズ値およびLPD数を大幅に低下させることができた。実施例B1〜B5の研磨液により実現されたヘイズ値およびLPD数の低減効果は、比較例B3と比べてもさらに高いものであった。
一方、エッチングレートは低いが砥粒吸着率の高い比較例B2の研磨液は、ヘイズ低減およびLPD数低減のいずれにおいても効果が低かった。これは、砥粒吸着率が高すぎるためにフリーポリマーの量が不足し、充分な表面保護効果が発揮されなかったためと考えられる。比較例B3およびこれと同等の砥粒吸着率を示す比較例B4の研磨液もまた、実施例B1〜B5に比べてヘイズ値低減効果およびLPD数低減効果のいずれにも劣るものであった。
<研磨用組成物の調製>
(実施例C1)
砥粒12%およびアンモニア0.26%(0.16モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカ(砥粒GA)を使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
上記水溶性ポリマーとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHA)を使用した。この水溶性ポリマーHAは、アセトキシ基を有する繰返し単位としての酢酸ビニル単位を27モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A剤808gを超純水19000gで希釈して、砥粒濃度約0.49%、アンモニア濃度0.006モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤246gを添加して混合することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
砥粒GA9.4%およびアンモニア0.20%(0.12モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記水溶性ポリマーとしては、けん化度79モル%、Mw2.7×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。この水溶性ポリマーHBは、酢酸ビニル単位を21モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A剤1030gを超純水19000gで希釈して、砥粒濃度約0.48%、アンモニア濃度0.006モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤25gを添加して混合することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHBの濃度が0.019%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
砥粒GA19.2%およびアンモニア0.41%(0.28モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーHBを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記A剤1005gを超純水39000gで希釈して、砥粒濃度約0.48%、アンモニア濃度0.006モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤49gを添加して混合することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHBの濃度が0.019%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
砥粒5.2%およびアンモニア0.11%(0.067モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A剤)と、水溶性ポリマーHAを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B剤)とを用意した。
上記砥粒としては、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカ(砥粒GB)を使用した。
上記A剤532gを超純水19000gで希釈して、砥粒濃度約0.18%、アンモニア濃度0.002モル/Lの第1組成物を調製した。この第1組成物(上記A剤の希釈液)に上記B剤123gを添加して混合することにより、砥粒GBの濃度が0.18%、アンモニアの濃度が0.003%(0.002モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.009%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
なお、本例の研磨用組成物における水溶性ポリマーHAおよびアンモニアの濃度は、単位体積の研磨用組成物中に含まれる砥粒の表面積当たりの水溶性ポリマーHAおよびアンモニアの含有量が実施例C1の研磨用組成物と概ね同程度となるように調整したものである。
砥粒GAの濃度が9.2%、アンモニアの濃度が0.20%(0.12モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.35%であり、残部が水からなる濃縮液を調製した。
上記濃縮液の調製から約24時間経過後に、該濃縮液1055gを超純水19000gで希釈することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
本例では、実施例C1における水溶性ポリマーHAに代えて、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×104のポリビニルアルコール;以下「PVA」と表記することがある。)を使用した。その他の点は実施例C1と同様にして、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、PVAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
本例では、実施例C2における水溶性ポリマーHBに代えて、Mwが6×104のポリ(N−ビニルピロリドン)(以下「PVP」と表記することがある。)を使用した。その他の点は実施例C2と同様にして、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、PVPの濃度が0.019%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
砥粒GAの濃度が9.2%、アンモニアの濃度が0.2%(0.12モル/L)、水溶性ポリマーの濃度が0.35%であり、残部が水からなる濃縮液を調製した。
上記水溶性ポリマーとしては、Mwが25×104のヒドロキシエチルセルロース(以下「HEC」と表記することがある。)を使用した。
上記濃縮液の調製から約24時間経過後に、該濃縮液1055gを超純水19000gで希釈することにより、砥粒GAの濃度が0.48%、アンモニアの濃度が0.010%(0.006モル/L)、HECの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物(pH10.2)を調製した。この研磨用組成物を室温で約1時間攪拌した後、後述するシリコンウエハの研磨に使用した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
研磨後のシリコンウエハを、NH3(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
各例に係る研磨用組成物を、温度25℃、濾過差圧50kPaの条件で吸引濾過した。フィルタとしては、日本ポール社製のディスクフィルタ、商品名「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を使用した。上記フィルタを通過する研磨用組成物の流れが止まるまでに該フィルタを通過した研磨用組成物の体積から、以下の2水準で濾過性を評価した。得られた結果を表5の「濾過性」の欄に示した。
A:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL以上。
C:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL未満。
一方、水溶性ポリマーHA,HBと同様にビニルアルコール単位を含むが酢酸ビニル単位を実質的に含まないPVAを用いた比較例C2の研磨用組成物は、実施例C1〜C4と同様の方法により製造されたものであるが、実施例C1〜C4のようなヘイズ値およびLPD数の低減効果を実現するものではなかった。エステル結合を含まない水溶性ポリマーであるPVPを用いて実施例C1〜C4と同様の方法により製造された比較例C3の研磨用組成物もまた、ヘイズ値およびLPD数の点で実施例C1〜C4に及ばないものであった。
また、実施例C1〜C4の各研磨用組成物を研磨に使用する直前に、各研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーを構成するモノマーの全繰返し単位のモル数に対する酢酸ビニル単位のモル数の比を算出したところ、実施例C1では25%、実施例C2では19%、実施例C3では19%、実施例C4では16%であった。すなわち、実施例C1〜C4に係る研磨用組成物は、実際に研磨に使用される時点で、酢酸ビニル単位のモル比が5%以上に維持された水溶性ポリマー(けん化度95モル%以下のポリビニルアルコール)を含んでいることが確認された。
なお、上記モル比は、研磨用組成物に含まれる砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を試料液として、該試料液に塩基性化合物を添加して加温することにより完全けん化させた際の塩基性化合物消費量を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出することにより算出したものである。
<研磨用組成物の調製>
(実施例D1)
A剤として、砥粒12%およびアンモニア0.26%(0.16モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A1剤)を用意した。上記砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカ(砥粒GA)を使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
B剤として、水溶性ポリマーを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B1剤)を用意した。上記水溶性ポリマーとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHA)を使用した。この水溶性ポリマーHAは、アセトキシ基を有する繰返し単位としての酢酸ビニル単位を27モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A1剤808gに上記B1剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から1分後に(すなわち、A1剤とB1剤とを混合してから1分後に)超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
A剤として、砥粒GA9.4%およびアンモニア0.20%(0.12モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A2剤)を用意した。
B剤として、水溶性ポリマーを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B2剤)を用意した。上記水溶性ポリマーとしては、けん化度79モル%、Mw2.7×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。この水溶性ポリマーHBは、酢酸ビニル単位を21モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A2剤1030gに上記B2剤25gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から1時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
実施例D1において、研磨用組成物原液を調製してから超純水で希釈するまでの時間を6時間に変更した。その他の点は実施例D1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
A剤として、砥粒GA19.2%およびアンモニア0.41%(0.28モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A3剤)を用意した。
B剤として、水溶性ポリマーを15%の濃度で含むポリマー水溶液(B2剤)を用意した。上記水溶性ポリマーとしては、けん化度79モル%、Mw2.7×104のポリビニルアルコール(水溶性ポリマーHB)を使用した。この水溶性ポリマーHBは、酢酸ビニル単位を21モル%の割合で含む分子構造を有する。
上記A3剤1005gに上記B2剤49gを添加して、砥粒濃度18.3%、アンモニア濃度0.24モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から12時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で40倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
A剤として、砥粒4.4%およびアンモニア0.11%(0.067モル/L)を含み残部が水からなる塩基性砥粒分散液(A4剤)を用意した。上記砥粒としては、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径46nmのコロイダルシリカ(砥粒GB)を使用した。
B剤としては、水溶性ポリマーHAを1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B1剤)を使用した。
上記A4剤532gに上記B1剤123gを添加して、砥粒濃度3.6%、アンモニア濃度0.055モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から20時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.18%、アンモニア濃度0.003モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
実施例D1において、研磨用組成物原液を調製してから超純水で希釈するまでの時間を30時間に変更した。その他の点は実施例D1と同様にして、本例に係る研磨用組成物(砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/L)を調製した。
実施例D2において、研磨用組成物原液を調製してから超純水で希釈するまでの時間を64時間に変更した。その他の点は実施例D1と同様にして、本例に係る研磨用組成物(砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/L)を調製した。
本例では、B剤として、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、Mw2.2×104のポリビニルアルコール;以下「PVA」と表記することがある。)を1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B3剤)を使用した。
上記A1剤808gに上記B3剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から1分後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
本例では、B剤として、Mwが6×104のポリ(N−ビニルピロリドン)(以下「PVP」と表記することがある。)を1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B4剤)を使用した。
上記A1剤808gに上記B4剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から6時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
本例では、B剤として、Mwが25×104のヒドロキシエチルセルロース(以下「HEC」と表記することがある。)を1.5%の濃度で含むポリマー水溶液(B5剤)を使用した。
上記A1剤808gに上記B5剤246gを添加して、砥粒濃度9.2%、アンモニア濃度0.12モル/Lの研磨用組成物原液を調製した。上記原液の調製から6時間後に超純水を加えて該原液を体積換算で20倍に希釈することにより、砥粒濃度0.46%、アンモニア濃度0.006モル/Lの研磨用組成物(pH10.2)を調製した。
このようにして調製した実施例D1〜D5および比較例D1〜D5に係る研磨用組成物を、室温で約1時間、攪拌しながら保存した。その後、各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウエハの表面を下記の条件で研磨した。シリコンウエハとしては、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であるものを、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド製、商品名「GLANZOX 2100」)を用いて予備研磨を行うことにより表面粗さ0.1nm〜10nmに調整して使用した。
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」
研磨テーブル:上記研磨機の有する3テーブルのうち後段の2テーブルを用いて、予備研磨後のファイナル研磨1段目および2段目を実施した。
(以下の条件は各テーブル同一である。)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:2分
研磨液の温度:20℃
研磨液の供給速度:2.0リットル/分(掛け流し使用)
研磨後のシリコンウエハを、NH3(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、研磨後のシリコンウエハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウエハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。
洗浄後のシリコンウエハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置、商品名「Surfscan SP2」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。
各例に係る研磨用組成物を、温度25℃、濾過差圧50kPaの条件で吸引濾過した。フィルタとしては、日本ポール社製のディスクフィルタ、商品名「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を使用した。上記フィルタを通過する研磨用組成物の流れが止まるまでに該フィルタを通過した研磨用組成物の体積から、以下の2水準で濾過性を評価した。得られた結果を表6の「濾過性」の欄に示した。
A:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL以上。
C:フィルタを通過した研磨用組成物の体積が25mL未満。
また、実施例D2と実施例D4の比較から、原液を調製してから希釈までの時間を10時間以内とすることにより、原液の調製から12時間後に希釈を行う場合に比べて、ヘイズ値およびLPD数の点でさらに高性能な研磨用組成物が製造され得ることがわかる。実施例D3と実施例D5とのLPD値にも同様の傾向が表れている。
一方、水溶性ポリマーHA,HBと同様にビニルアルコール単位を含むが酢酸ビニル単位を実質的に含まないPVAを用いた比較例D3の研磨用組成物は、原液を調製してから希釈するまでの時間を実施例D1と同様に1分として製造されたものであるが、実施例D1のようなヘイズ値およびLPD数の低減効果を実現するものではなかった。エステル結合を含まない水溶性ポリマーであるPVPを用いて実施例D1〜D5と同様の方法により製造された比較例D4の研磨用組成物もまた、ヘイズ値およびLPD数の点で実施例D1〜D5に及ばないものであった。
また、実施例D1〜D5の各研磨用組成物を研磨に使用する直前に、各研磨用組成物に含まれる水溶性ポリマーを構成するモノマーの全繰返し単位のモル数に対する酢酸ビニル単位のモル数の比を算出したところ、実施例D1では27%、実施例D2では18%、実施例D3では15%、実施例D4では10%、実施例D5では8%であった。すなわち、実施例D1〜D5に係る研磨用組成物は、実際に研磨に使用される時点で、酢酸ビニル単位のモル比が5%以上に維持された水溶性ポリマー(けん化度95モル%以下のポリビニルアルコール)を含んでいることが確認された。
なお、上記モル比は、研磨用組成物に含まれる砥粒を遠心分離により沈降させた上澄み液を試料液として、該試料液に塩基性化合物を添加して加温することにより完全けん化させた際の塩基性化合物を滴定により求め、その結果からカルボン酸ビニル単位のモル数およびビニルアルコール単位のモル数を算出することにより算出したものである。
Claims (14)
- 以下の条件:
SP値の異なる複数種の繰返し単位を含む分子構造を有する;
前記複数種の繰返し単位は、SP値が14.5以上の繰返し単位Aと、SP値が14.5未満の繰返し単位Bとを含む;および
前記分子構造に含まれる全種類の繰返し単位について、各種類に係る繰返し単位のSP値と該繰返し単位の合計体積が上記分子構造中の全繰返し単位の体積に占める割合との積を合計して求められる平均SP値が17.5以下である;
を満たす水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、研磨用組成物。 - 前記水溶性ポリマーはノニオン性のポリマーである、請求項1に記載の研磨用組成物。
- 砥粒と水溶性ポリマーと水とを含む研磨用組成物であって、
以下のエッチングレート測定:
(1A)前記水溶性ポリマー0.18質量%およびアンモニア1.3質量%を含み、残部が水からなるエッチングレート測定用薬液LEを用意する;
(2A)表面の自然酸化膜を除去したシリコン基板(縦6cm、横3cm、厚さ775μmの長方形状)を用意し、その質量W0を測定する;
(3A)前記シリコン基板を前記薬液LEに室温にて12時間浸漬する;
(4A)前記薬液LEから前記シリコン基板を取り出し、室温にてNH3(29%):H2O2(31%):超純水=1:1:8(体積比)の洗浄液で10秒間洗浄する;
(5A)洗浄後の前記シリコン基板の質量W1を測定する;および
(6A)前記W0と前記W1との差および前記シリコン基板の比重からエッチングレート(nm/分)を算出する;
に基づくエッチングレートが2.0nm/分以下であり、かつ
以下の砥粒吸着率測定:
(1B)前記研磨用組成物に対して遠心分離処理を行って前記砥粒を沈降させ、その上澄み液の全有機炭素量を測定して、該上澄み液に含まれる有機炭素の総量C1を求める;
(2B)前記研磨用組成物の組成から砥粒を除いた組成の試験液L0を用意し、該試験液L0の全有機炭素量を測定して、上記試験液L0に含まれる有機炭素の総量C0を求める;
(3B)前記C0および前記C1から、次式:
砥粒吸着率(%)=[(C0−C1)/C0]×100;
により砥粒吸着率を算出する;
に基づく砥粒吸着率が20%以下である、研磨用組成物。 - 前記水溶性ポリマーはノニオン性のポリマーである、請求項3に記載の研磨用組成物。
- 前記水溶性ポリマーは、繰返し単位としてビニルアルコール単位および酢酸ビニル単位を含む分子構造を有する、請求項3または4に記載の研磨用組成物。
- 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって:
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;および
少なくとも前記A剤を含む第1組成物と少なくとも前記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、前記砥粒、前記塩基性化合物、前記水溶性ポリマーHおよび水を含み前記塩基性化合物の濃度が0.1モル/L以下である混合物を調製する工程;
を包含する、研磨用組成物製造方法。 - 前記A剤は、前記砥粒と前記塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液Cであり、
前記砥粒分散液Cを希釈して前記第1組成物を調製した後に、該第1組成物と前記第2組成物とを混合して前記混合物を調製する、請求項6に記載の研磨用組成物製造方法。 - 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;および
少なくとも前記A剤を含む第1組成物と少なくとも前記B剤を含む第2組成物とを混合することにより、前記砥粒、前記塩基性化合物、前記水溶性ポリマーHおよび水を含み前記砥粒の濃度が3質量%未満である混合物を調製する工程;
を包含する、研磨用組成物製造方法。 - 前記A剤は、前記砥粒と前記塩基性化合物と水とを含む砥粒分散液Cであり、
前記砥粒分散液Cを希釈して前記第1組成物を調製した後に、該第1組成物と前記第2組成物とを混合して前記混合物を調製する、請求項8に記載の研磨用組成物製造方法。 - 請求項6から9のいずれか一項に記載の製造方法に用いられる研磨用組成物調製用キットであって、
互いに分けて保管される前記A剤と前記B剤とを備える、研磨用組成物調製用キット。 - 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;
少なくとも前記A剤と前記B剤とを混合して前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/Lより高い研磨用組成物原液を調製する工程;および、
前記A剤と前記B剤とを混合してから24時間以内に前記塩基性化合物の濃度が0.02モル/L以下となるまで前記研磨用組成物原液を希釈する工程;
を包含する、研磨用組成物製造方法。 - 砥粒、塩基性化合物、塩基性条件下で加水分解反応性を示す官能基を有する水溶性ポリマーHおよび水を用いて研磨用組成物を製造する方法であって、
少なくとも前記塩基性化合物を含むA剤を用意する工程;
少なくとも前記水溶性ポリマーHを含むB剤を用意する工程;
少なくとも前記A剤と前記B剤とを混合して前記砥粒の含有量が1質量%以上である研磨用組成物原液を調製する工程;および、
前記A剤と前記B剤とを混合してから24時間以内に前記砥粒の含有量が1質量%未満となる濃度まで前記研磨用組成物原液を希釈する工程;
を包含する、研磨用組成物製造方法。 - 前記研磨用組成物原液を希釈する工程では、該原液を体積基準で10倍以上に希釈する、請求項11または12に記載の研磨用組成物製造方法。
- 請求項11から13のいずれか一項に記載の製造方法に用いられる研磨用組成物調製用キットであって、
互いに分けて保管される前記A剤と前記B剤とを備える、研磨用組成物調製用キット。
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C211 | Notice of termination of reconsideration by examiners before appeal proceedings |
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C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
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C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
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