JP2016125113A - Cu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット、Cu−Ga合金円筒型鋳塊、Cu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットの製造方法及びCu−Ga合金円筒型鋳塊の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸線に沿って延在する円筒状をなし、スパッタ面となる円筒外面11と、バッキングチューブが接合される円筒内面12と、を有するCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット10であって、Gaを15原子%以上35原子%以下の範囲内で含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、円筒外面11から円筒内面12に向けて成長した柱状晶組織からなる。
【選択図】図2
Description
ここで、Cu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法として、蒸着法が知られている。蒸着法においては、成膜された光吸収層を備えた太陽電池のエネルギー交換効率が高くなるといった利点を有しているものの、成膜速度が遅く、生産効率が低いといった問題があった。
特許文献1においては、バッチ式の一方向凝固法によって、平板型スパッタリングターゲットの素材となる板状鋳塊を製造している。また、特許文献2においては、連続鋳造法によって、平板型スパッタリングターゲットの素材となる板状鋳塊を製造している。
また、対向面において互いに対向する柱状晶同士は、その成長条件が異なっており、結晶粒径等に差が生じることになる。スパッタリングターゲットにおいては、マグネットの配置等のスパッタ条件によってスパッタ面の一部が優先的に消費されることがある。このとき、スパッタ面の一部が前記対向面を超えるように消費された場合には、スパッタ面に局所的に結晶粒径が異なる部位が存在することになり、異常放電が発生しやすくなるおそれがあった。
上述のCu−Ga合金は、脆性材料であることから、鋳造後に熱間加工等によって結晶組織を制御することが難しいため、鋳塊段階において結晶組織を制御することが重要である。
また、円筒外面から円筒内面に向けて成長した柱状晶組織からなり、スパッタリングターゲットの内部に柱状晶の対向面が形成されていないので、スパッタ面の一部が優先的に消費された場合であっても、スパッタ面の結晶組織が局所的に大きく異なる箇所が存在せず、異常放電の発生を抑制することができる。また、最終凝固部がスパッタリングターゲット内に残存していないので、鋳造欠陥に起因する異常放電を防止することができる。よって、Cu−Ga合金の薄膜を安定して成膜することが可能となる。
Fe、Mn、Ni、P、Sn、Znといった元素がCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層に混入した場合には、太陽電池の変換効率が低下するおそれがある。そこで、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、不純物元素であるFe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量をそれぞれ10質量ppm未満に制限することにより、成膜されたCu−Ga薄膜にFe、Mn、Ni、P、Sn、Znといった元素が混入することを抑制している。
鋳造時に用いる耐火物を選定すること等により、Fe、Mn、Ni、P、Sn、Znといった元素の含有量をそれぞれ10質量ppm未満に制限することで、高品質なCu−Ga合金スパッタリングターゲットの素材とすることができる。
本実施形態に係るCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット10は、例えば太陽電池のCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を形成するために、Cu−Ga合金薄膜をスパッタによって成膜する際に用いられるものである。
ここで、Cu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット10の外周面が、スパッタ面とされる。
また、本実施形態では、不可避不純物であるFe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量が、それぞれ10質量ppm未満に制限されている。
このCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット10においては、軸線O方向に沿った断面における結晶粒の平均粒径が5mm以下の範囲内とされており、円筒外面11側と円筒内面12側とで平均結晶粒径に大きな差がなく、その最大差が3mm以下とされている。また、円筒外面11側の平均結晶粒径DOと円筒内面12側の平均結晶粒径DIとの比DO/DIが、1≦DO/DI≦5の範囲内とされている。
このCu−Ga合金円筒型鋳塊20は、図3に示すように、鋳塊外周面21から鋳塊内周面22に向けて成長した柱状晶組織を有し、当該柱状晶組織が鋳塊内周面22から3mm以内の領域まで延在している。
また、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20の軸線方向におけるGa濃度の最大差が2原子%以下の範囲内とされている。
さらに、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20の深さ方向(径方向)におけるGa濃度の最大差が2原子%以下の範囲内とされている。
本実施形態であるCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット10の製造方法は、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20を鋳造する連続鋳造工程S01と、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20に対して機械加工を行う加工工程S02と、加工後にボンディングを行うボンディング工程S03を備えている。
この連続鋳造工程S01においては、鋳塊外周面21側からの抜熱を促進させるとともに鋳塊内周面22側からの抜熱を抑制することにより、鋳塊外周面21から鋳塊内周面22に向けて柱状晶組織を成長させている。
この連続鋳造装置30は、鋳造炉31と、鋳造炉31に連結された連続鋳造用鋳型40と、連続鋳造用鋳型40から製出されたCu−Ga合金円筒型鋳塊20を引き抜くピンチロール39と、を備えている。
本実施形態では、鋳造炉31は、チャンバー34内に収容されている。チャンバー34内は、チャンバー34の側壁及び蓋部35から不活性ガス(本実施形態では窒素ガス)が導入されることによって、不活性ガス雰囲気とされている。
また、坩堝32の上部には、坩堝32の損耗を抑制するために、セラミックス製の坩堝カバー37が配置されている。
モールド41は、概略筒状をなしており、一方側から他方側に向けて貫通する貫通孔が設けられている。この貫通孔の一方側からマンドレル50が挿入されている。マンドレル50は、モールド41の貫通孔の内壁から間隔をあけて配置され、モールド41内には、断面円環状をなすキャビティが画成されることになる。なお、本実施形態においては、モールド41は、黒鉛で構成されている。
フランジ部51には、坩堝32内の銅溶湯を前記キャビティ内に導入する溶湯供給用切欠部52が複数箇所形成されている。
そして、マンドレル本体55には、フランジ部51側から軸線方向に向けて延在する溶湯保持部56が穿設されている。
まず、鋳造炉31の坩堝32内に溶解原料を投入し、加熱ヒータ33によって坩堝32内に装入された溶解原料を加熱して溶解し、所定の組成に調製された銅溶湯を製出する。この銅溶湯は、坩堝32内において所定の温度にまで加熱されて保持される。そして、この銅溶湯が、連続鋳造用鋳型40へと供給される。
モールド41内に供給された銅溶湯は、冷却部48によってモールド41の外周側(鋳塊外周面21側)から抜熱され、凝固してCu−Ga合金円筒型鋳塊20となる。このCu−Ga合金円筒型鋳塊20を、ピンチロール39で間欠的に引き出すことによって、モールド41内に銅溶湯が順次供給され、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20が連続的に製造される。
また、本実施形態では、円筒外面11側と円筒内面12側とで平均結晶粒径に大きな差がなく、その最大差が3mm以下とされており、円筒外面11側の平均結晶粒径DOと円筒内面12側の平均結晶粒径DIとの比DO/DIが、1≦DO/DI≦5の範囲内とされているので、スパッタ面が不均一に消耗した場合であっても、異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことができる。
また、本実施形態では、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20の軸線O方向におけるGa濃度の最大差が2原子%以下の範囲内とされており、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20の深さ方向(径方向)におけるGa濃度の最大差が2原子%以下の範囲内とされているので、Ga濃度のばらつきが少なく、均一な組成のCu−Ga薄膜を成膜することが可能となる。
また、本実施形態では、蛍光X線分析によってFe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量がそれぞれ0.1mass%未満の耐火物を選択して使用しているので、Cu−Ga合金円筒型鋳塊20にこれらの不純物が混入することを確実に抑制することができ、Fe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量をそれぞれ10質量ppm未満とすることが可能となる。
例えば、本実施形態では、太陽電池においてCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を形成するために、Cu−Ga合金薄膜をスパッタによって成膜する際に用いられるものとして説明したが、これに限定されることなく、他の用途に使用されるCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットであってもよい。
図5に示す連続鋳造装置により、外径:160mm、内径:130mm、軸線方向長さ:2000mmのCu−Ga合金円筒型鋳塊を連続鋳造した。このとき、銅溶湯温度を1200℃、鋳造速度を30mm/minとした。なお、比較例においては、溶湯保持部を有していないマンドレルを用いた。
このCu−Ga合金円筒型鋳塊に機械加工を施し、外径R:150mm、内径r:135mm、軸線方向長さL:450mmのCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットを製造した。
作製されたCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットの組成分析を次のように実施した。測定結果を表1に示す。
Ga濃度は、蛍光X線分析によって測定した。
不純物であるFe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量は、各鋳塊の先端から500、1000、1500mmからサンプリングを行い、ICP−MSにて測定を行った平均値である。
作製されたCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットの軸線方向に沿った断面において、結晶組織観察を行った。観察面について、耐水研磨紙で機械研磨を行った後、ダイヤモンドペーストを用いて仕上げ研磨を行い、その後にエッチングを行い、光学顕微鏡を用いて観察した。円筒外面から円筒内面に向けて成長した柱状晶組織からなるものを「○」、円筒外面から成長する柱状晶と円筒内面から成長する柱状晶との対向面を有するものを「×」と評価した。評価結果を表1に示す。
作製されたCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットを用いて、以下の条件でスパッタ試験を実施し、スパッタ装置に付属されたアーキングカウンターを用いて、異常放電回数をカウントした。評価結果を表1に示す。
電源:直流方式
スパッタ出力:5000W
スパッタ圧:0.5Pa
スパッタ時間:1時間
到達真空度:5×10−5Pa
雰囲気ガス組成:Arガス
図7(a)に示すように、軸線方向長さ500mm,1100mm,1400mm、1700mmの位置でCu−Ga合金円筒型鋳塊を切断し、鋳造時における上側部分、下側部分、水平位置部分の3か所か分析サンプルを採取し、蛍光X線分析によってGa濃度を測定した。測定結果を図7(b)に示す。
各測定位置において、Ga濃度の最大差が0.7原子%以下であり、軸線方向の濃度ばらつきが小さいことが確認された。
図8(a)に示すように、Cu−Ga合金円筒型鋳塊の軸線に直交する断面において、鋳造時における上側部分、下側部分、水平位置部分からそれぞれ分析サンプルを採取し、EPMA(電子線マイクロアナライザ)にて鋳塊の外周面から内周面側に向けて2、4、6、8、10、12、14mm深さ位置で幅5mmの線分析を行い、その平均値を各深さ位置のGa濃度とした。線分析は、加速電圧15kV、ビーム径100μm、停止時間1秒、インターバル10μmで行った。測定結果を図8(b)に示す。
各測定位置において、Ga濃度の最大差が1.5原子%以下であり、深さ方向(径方向)の濃度ばらつきが小さいことが確認された。
Cu−Ga合金円筒型鋳塊のから鋳造時における上側部分、下側部分、水平位置部分からそれぞれ軸線方向長さ25mmの観察試料を採取した。この観察試料の縦断面(軸線方向に沿った断面)を観察面として、耐水研磨紙で機械研磨を行った後、ダイヤモンドペーストを用いて仕上げ研磨を行い、その後に硝酸でエッチングを行い、光学顕微鏡を用いて観察した。
図9(a)に示すように、鋳塊の外周面から深さ4mm、鋳塊中心部(中間)、鋳塊の内周面から深さ4mm位置で、軸線に平行な直線を描き、この直線と結晶粒界との交点をカウントし、カウント数を試料長さ(25mm)で除した値を、その深さ位置の平均結晶粒径とした。測定結果を図9(b)に示す。
平均結晶粒径は、鋳塊の外周面側から内周面側に向けて大きく変化しておらず、平均結晶粒径の最大差が2.5mm以下とされていることが確認された。
Cu−Ga合金円筒型鋳塊の鋳造時における上側部分、下側部分、水平位置部分からそれぞれ観察試料を採取した。この観察試料の縦断面(軸線方向に沿った断面)を観察面として、耐水研磨紙で機械研磨を行った後、ダイヤモンドペーストを用いて仕上げ研磨を行い、その後にエッチングを行い、光学顕微鏡を用いて観察した。
図10(a)に示すように、鋳塊の外周面からの表層組織の厚さ、及び、鋳塊の内周面からの表層組織の厚さを測定した。測定結果を図10(b)に示す。
鋳塊の内周面側の表層組織は1mm以下と非常に小さく、内周面側での冷却が抑制されていることが確認される。
20 Cu−Ga合金円筒型鋳塊
Claims (6)
- 軸線に沿って延在する円筒状をなし、スパッタ面となる円筒外面と、バッキングチューブが接合される円筒内面と、を有するCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットであって、
Gaを15原子%以上35原子%以下の範囲内で含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、
前記円筒外面から前記円筒内面に向けて成長した柱状晶組織からなることを特徴とするCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット。 - 不可避不純物であるFe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量が、それぞれ10質量ppm未満であることを特徴とする請求項1に記載のCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲット。
- 軸線に沿って延在する円筒状をなし、Cu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットの素材として用いられるCu−Ga合金円筒型鋳塊であって、
Gaを15原子%以上35原子%以下の範囲内で含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、
鋳塊外周面から鋳塊内周面に向けて成長した柱状晶組織を有し、当該柱状晶組織が前記鋳塊内周面から4mm以内の領域まで延在していることを特徴とするCu−Ga合金円筒型鋳塊。 - 不可避不純物であるFe、Mn、Ni、P、Sn、Znの含有量が、それぞれ10質量ppm未満であることを特徴とする請求項3に記載のCu−Ga合金円筒型鋳塊。
- 請求項1又は請求項2に記載のCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットを製造するCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットの製造方法であって、
連続鋳造装置を用いて、Gaを15原子%以上35原子%以下の範囲内で含み、残部がCu及び不可避不純物からなる組成のCu−Ga合金円筒型鋳塊を得る連続鋳造工程と、鋳塊外周面及び鋳塊内周面の表層を除去する加工工程と、を有し、
前記連続鋳造工程では、鋳塊外周面側からの抜熱を促進させるとともに鋳塊内周面側からの抜熱を抑制することにより、前記鋳塊外周面から前記鋳塊内周面に向けて成長した柱状晶組織を有し、当該柱状晶組織が前記鋳塊内周面から4mm以内の領域まで延在したCu−Ga合金円筒型鋳塊を得て、
前記加工工程では、前記鋳塊内周面の表層を4mm以上除去することを特徴とするCu−Ga合金円筒型スパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項3又は請求項4に記載のCu−Ga合金円筒型鋳塊を製造するCu−Ga合金円筒型鋳塊の製造方法であって、
連続鋳造装置を用いて、鋳塊外周面側からの抜熱を促進させるとともに鋳塊内周面側からの抜熱を抑制することにより、前記鋳塊外周面から前記鋳塊内周面に向けて柱状晶組織を成長させることを特徴とするCu−Ga合金円筒型鋳塊の製造方法。
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