JP2016108427A - ハイドロタルサイト類組成物、該組成物を含有してなる樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の結晶構造を有するハイドロタルサイト類化合物が、特定の封鎖・捕捉剤で被覆され、樹脂組成物、特に塩素含有樹脂の優れた物性を維持しつつ、耐熱性や経済性を損なうことなく耐候性を向上させ、長寿命化、リサイクル、リユースを可能にするハイドロタルサイト類組成物、該組成物を含有してなる樹脂組成物とその成形体を提供する。
【解決手段】下記(a)の化学式で表わされ、X 線回折結果とSherrer の式から求められる結晶子サイズが10〜40nmであるハイドロタルサイト類化合物が、酸解離定数が1.5 〜3.5 の酸、その塩から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Aと、マグネシウムイオンに対する一次のキレート安定度定数が6以上のキレート剤から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Bとで被覆されていることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物、該組成物を含有してなる樹脂組成物及び成形体。
(a)Mg1-x Alx (OH)2An-1 x/n ・mH2O
式中A n-はn価のアニオンを示し、xは0.1 ≦x≦0.5 、mは0≦m<1である。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の結晶構造を有するハイドロタルサイト類化合物に、特定の化合物を表面に処理するか、または、表面に被覆させたハイドロタルサイト類組成物、該ハイドロタルサイト類組成物を含有してなる樹脂組成物に関する。
詳しくは、ハイドロタルサイト類化合物が特定の結晶構造を有することと、該ハイドロタルサイト類化合物の表面に特定の酸解離定数をもつ酸もしくはその塩と、特定のキレート能力を有する有機物を表面に処理するか、または、表面に被覆させることにより、ハイドロタルサイト類化合物の特徴であるアニオンの吸着性を維持したまま、例えば樹脂組成物の成形・加工時にハイドロタルサイト類化合物から離脱する金属イオンを抑制、捕捉、封鎖し、それらの金属イオンが他の安定剤や添加剤と反応することを抑制し、その結果、樹脂の着色を防止するとともに各種安定剤の性能低下を防ぐハイドロタルサイト類組成物、それを安定剤ないし安定助剤として配合した樹脂組成物及び成形体に関する。
ハイドロタルサイト類化合物は、通常、M2+ 1-x M3+ X (OH)2An- x/n ・mH2Oの組成式で表わされ、結晶構造が層状構造をしており、2価(M2+ )および3価(M3+ )の金属の複合水酸化物からなる基本層と、その基本層間にアニオン(A n-)と水を有する中間層からなる。
基本層は2価の金属イオンの一部の代わりに3価の金属イオンが配位することで正に帯電しており、基本層の層間にアニオンがインターカレートすることで、トータルの電荷が中和している。
ハイドロタルサイト類化合物は、基本層の表層および層間にアニオンを吸着することが可能であり、その能力によって合成樹脂、合成ゴム、セラミック、塗料、紙、トナー等に配合され、ハロゲン捕捉剤や受酸剤、吸収剤としての効能を有する優れた安定剤として広範な用途に使用されている。
ポリ塩化ビニル樹脂などの塩素含有樹脂は、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性に優れ、難燃性と電気絶縁性を有し、熱を加えると軟化し、冷却すると硬化することから加工に好ましく、可塑剤の添加によって成形品自体の柔らかさの変更も可能であり、更に安価である等から用途は多岐にわたり、衣類、壁紙、バッグ、クッション材、断熱材、防音材、保護材、ロープ、電線被覆、網戸、包装材料、水道管、建築材料、農業用フィルム、消しゴムなど幅広く使用されている。
しかしながら、塩素含有樹脂は熱や紫外線等を受けると、分子鎖中の塩化水素が脱離して分子鎖中の炭素の二重結合を生成しやすく、その二重結合や脱離した塩化水素が、更に分子鎖から塩化水素の脱離を誘引し、分子鎖中の炭素の二重結合の連続体を生み出し、着色や脆性を大きくして商品価値を低下させる問題を抱えており、成形加工時の加熱や長時間の使用に対する対策が必要である。
その対策として、以前から様々な安定剤を添加して塩素含有樹脂の安定性を改善、向上させることが行われており、鉛系、有機スズ系、金属石鹸系などの各種安定剤が提案、使用されている。
しかしながら、鉛系や有機スズ系安定剤は近年、鉛やスズ自体が人体や環境に有害で使用が避けられる方向にあり、環境への負荷が少ない金属石鹸系の亜鉛−カルシウム系や亜鉛−バリウム系の安定剤への代替が進んでいる。
ところが、耐熱性の向上を目的に亜鉛金属石鹸系安定剤を多量に塩素含有化合物に配合すると、亜鉛焼けと呼ばれる樹脂が黒化する現象の発生や、亜鉛金属石鹸系安定剤が外部滑剤としても働くため混練を阻害する等の問題がある。
一方、ポリ塩化ビニル樹脂などの塩素含有樹脂の成形品は、用途によって屋外あるいは屋内で太陽光に曝されることがあり、紫外線等による着色や脆性低下といった耐候性劣化の問題があり、それらを抑制する目的で、有機酸金属塩、無機金属塩、亜リン酸エステル類等の酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤等が配合されている。
しかしながら、その酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤が塩素含有樹脂中で金属イオンと反応して着色し、本来の色調を損ねて商品価値を下げるだけでなく、紫外線吸剤等が当初の性能を発揮できず、設計した耐候性が出なくなるなどの問題が生じる。
これらの現象は、マグネシウムやアルミニウムを基本とし、僅かであるが他の金属元素も含有するハイドロタルサイト類化合物を安定助剤として塩素含有樹脂に使用した際にも発生しており、その対策として、βジケトン等の有機安定化助剤の添加が提案されている(特許文献1,2)。
また、例えばメルカプトのエステル化合物を更に添加することで耐候性を損なうことなく、よりいっそう着色を防止する方法等が提案されている(特許文献3)。
近年、環境保護や環境負荷低減の観点から塩素含有樹脂にも、その長寿命化やリサイクル、リユースが求められ、対策としてハイドロタルサイト類化合物などの安定助剤や紫外線吸剤などの各種安定剤の配合量の増加による対応が提案・検討されている。
しかし、ハイドロタルサイト類化合物や紫外線吸収剤等の各種安定剤の配合量を単純に増やすと、金属イオンと紫外線吸収剤との反応機会が増えることになり、樹脂の着色や安定剤の能力低下による耐候性劣化が著しくなる。
その対策として、ハイドロタルサイト類化合物から離脱する各種金属イオンと紫外線吸収剤の反応を抑制する、先に挙げたβジケトン等の配合量を増やすことが提案されているが、βジケトンの配合量を増やすと混練や成形時にβジケトン自体が焼けたり、それが黒化の起点になって樹脂全体を黒色化するという問題がある。また、メルカプトのエステル化合物は、有機物であることからブリードと呼ばれる樹脂から浮き上がる現象が生じるため、電線の如き長期にわたって使用される用途には不向きである。
更に、βジケトン等の安定化助剤やメルカプトのエステル化合物は、鉛系、金属石鹸系の安定剤はもとより、ハイドロタルサイト類化合物等の安定助剤より高価という問題がある。
ハイドロタルサイト類化合物は、反応時の条件によって、その金属水酸化物からなる基本層中の金属イオンの置き換えが可能であり、例えば上述のハイドロタルサイト類化合物の2価の金属イオンであるマグネシウムの一部ないし全てを他の金属に置き換えることも可能である。
例えば、マグネシウムの全てを亜鉛に置き換えた化学式Znx Al2(OH)4+2x CO3 ・mH2O(式中、3.5 ≦x≦4.5 、0≦m≦4)で表わされるハイドロタルサイト類化合物が提案され、該ハイドロタルサイト類化合物のハロゲン吸収・受酸能力が従来品より優れていることから、塩素含有樹脂の耐熱性が向上すると報告されている(特許文献4)。
また、マグネシウムの一部を亜鉛に置き換えた組成 (Mgy Znz )1-xAlx (OH)2An- x/n ・mH2O(式中、0.1 ≦x≦0.5 、y+z=1、0.5 ≦y≦1、0≦z≦0.5 、A はn価のアニオン、0≦m≦1)を有するハイドロタルサイト類化合物が提案され、塩素含有樹脂の耐熱性を向上させることが報告されている(特許文献5,6)。
しかしながら、上記の技術は、あくまでもハイドロタルサイト類化合物を塩素含有樹脂に配合した場合の耐熱性の向上にのみ着目しており、先に挙げた初期着色の改善や耐候性劣化の防止には関与せず、根本的な問題解決に寄与しない。
特開昭57-80444号公報 特開平06-192520 号公報 特開2013-10834号公報 特公平11-255973 号公報 W099/01409 号公報 W099/05219 号公報
本発明は、塩素含有樹脂等の樹脂の特性である優れた耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、難燃性、電気絶縁性、加工性等を維持しつつ、耐熱性や耐候性、経済性を向上させ、長寿命化、リサイクル、リユースにも対応可能なハイドロタルサイト類組成物を提供し、昨今の環境負荷低減に寄与することを目的とする。
具体的には、優れたアニオン吸着性を維持したまま、マグネシウムやアルミニウム等の金属イオンの脱離を厳しく抑制し、更にそれでも脱離する金属イオンを捕捉、封鎖することで、それらの金属イオンと紫外線吸収剤等の安定剤が反応して着色することを防ぐハイドロタルサイト類組成物を提供する。
また、該ハイドロタルサイト類組成物は、特に塩素含有樹脂に配合した場合には、βジケトン等の安定化助剤を使用しないか、もしくは、使用量を極めて少なくしても、塩素含有樹脂の特性を損なうことなく優れた耐候性を付与し、長寿命化、リサイクル、リユースの要請にも対応可能である。
本発明者は、かかる実情を鑑み、上記目的を達成せんとして鋭意検討の結果、特定の結晶構造を持つハイドロタルサイト類化合物が、ハイドロタルサイト類化合物自体のマグネシウムやアルミニウム等の金属イオンの脱離を抑制し、更に、特定の封鎖・捕捉剤で被覆されることにより、それらの封鎖・捕捉剤がハイドロタルサイト類化合物から金属イオンの脱離を封鎖し、また金属イオンが脱離しても反応して捕捉することで紫外線吸収剤等の各種安定剤との反応を阻害し、その結果、着色や耐候性劣化を抑制することを見出した。
具体的には、本発明のハイドロタルサイト類組成物を、例えば塩素含有樹脂に配合した場合、ハイドロタルサイト類化合物からのマグネシウムやアルミニウム等の金属イオンの脱離を、先ず、特定の結晶構造を有するハイドロタルサイト類化合物自体が厳しく抑制し、更にそれでも脱離する金属イオンについては封鎖・捕捉剤と反応させて封鎖または捕捉することによって、紫外線吸収剤等の各種安定剤との反応を抑制する。これにより、ハイドロタルサイト類化合物から離脱する金属イオンと紫外線吸収剤等の安定剤との反応を阻害するため、βジケトン等の安定化助剤の添加量を少なくするか、もしくは、なくすことが可能になり、耐熱性を始めとする塩素含有樹脂の特性を損なうことなく、近年の環境負荷低減の要請に応える優れた耐候性劣化を抑制することができる。
本発明は下記の発明を包含する。
(1)下記(a)の化学式で表わされ、X 線回折結果とSherrer の式から求められる(003)面の結晶子サイズが10〜40nmであるハイドロタルサイト類化合物が、酸解離定数が1.5 〜3.5 の酸、その塩から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Aと、マグネシウムイオンに対する一次のキレート安定度定数が6以上のキレート剤から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Bとで被覆されていることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物。
(a)Mg1-x Alx (OH)2An-1 x/n ・mH2O
ただし、式中A n-はn価のアニオンを示し、xは0.1 ≦x≦0.5 、mは0≦m<1である。
(2)上記ハイドロタルサイト類化合物が下記(b)〜(d)を満足することを特徴とする、ハイドロタルサイト類組成物。
(b)0.5 ≦Dp50≦2 (μm )
(c)D Max ≦9.250 (μm )
(d)5≦Sw≦20 (m2/g)
ただし、
Dp50:レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の50%平均粒子径(μm )、
D Max :レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の最大粒子径(μm )、
Sw:窒素吸着法で測定したBET 比表面積(m2/g)。
(3)上記封鎖・捕捉剤Aが亜硫酸、ホスホン酸、サリチル酸、マレイン酸、それらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物。
(4)上記封鎖・捕捉剤Bがヒドロキシエチリジエンジホスホン酸であることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかのハイドロタルサイト類組成物が、脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸、それらの金属塩、それらのエステルから選択される少なくとも1種の表面処理剤で被覆されていることを特徴とする表面処理ハイドロタルサイト類組成物。
(6)上記(1)〜(5)の何れかのハイドロタルサイト類組成物と樹脂とを含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(7)上記(6)の樹脂が塩化ビニル樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
(8)上記(6)の樹脂組成物からなる成形体。
(9)上記(7)の樹脂組成物からなる成形体。
本発明によれば、特定の結晶構造を有することにより、従来のハイドロタルサイト類化合物よりも効果的にマグネシウムやアルミニウム等の金属イオンの脱離を抑制し、更に、特定の化合物を封鎖・捕捉剤としてハイドロタルサイト類化合物の表面に被覆させたハイドロタルサイト類組成物を、例えば、塩素含有樹脂に配合した際には、それらの化合物がハイドロタルサイト類化合物から脱離しやすい金属イオンと反応して封鎖するか、または、遊離したそれらの金属イオンと反応して紫外線吸収剤等の安定剤との反応を阻害する。その結果、着色や耐候性劣化が低減され、βジケトン等の安定化助剤を使用しなくても、もしくは、添加量を極めて少量にしても優れた耐候性を付与することが可能になる。
本発明は、下記(a)の化学式で表わされ、X 線回折結果とSherrer の式から求められる(003)面の結晶子サイズが10〜40nmであるハイドロタルサイト類化合物が、酸解離定数が1.5 〜3.5 の酸、その塩から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Aと、マグネシウムイオンに対する一次のキレート安定度定数が6以上のキレート剤から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Bとで被覆されていることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物であることを特徴とする。
(a)Mg1-x Alx (OH)2An-1 x/n ・mH2O
ただし、式中A n-はn価のアニオンを示し、xは0.1 ≦x≦0.5 、mは0≦m<1である。
尚、本発明において、被覆とはハイドロタルサイト類化合物と物理的又は化学的に吸着している場合と、ハイドロタルサイト類化合物と単に接している場合の両方を含む。
本発明に用いられるハイドロタルサイト類化合物は、上記(a)の化学式で表わされ、X 線回折結果とSherrer の式から求められる(003)面の結晶子サイズが10〜40nmであり、好ましくは20〜30nmである。ハイドロタルサイト類化合物の結晶子のサイズが上記の範囲内にあることによって、樹脂に配合された場合にハイドロタルサイト類化合物のマグネシウムやアルミニウム等の金属イオンがハイドロタルサイト類化合物から離脱するのを効率的に抑制し、紫外線吸着剤などの各種安定剤と反応して着色することを防止したり、各種安定剤としての効能の低下を防ぐことが出来る。
上記結晶子サイズが10nm未満の場合、例えば軟質塩化ビニル樹脂に配合すると、初期着色と呼ばれる着色が発生する上、紫外線や熱などによって軟質塩化ビニル樹脂自体が黒色化しやすくなるため好ましくない。
この現象が起きる理由は必ずしも明らかでないが、結晶子サイズが10nm未満のハイドロタルサイト類化合物は、DSC 等の測定で求められる室温から190 ℃までの吸熱量が大きいことから、熱エネルギーを吸収して相変化または融解する量が多く、その際にマグネシウムやアルミニウム、炭酸、水等のハイドロタルサイト類化合物の構成イオンや内包するイオンがハイドロタルサイトの結晶または粒子中にとどまらずに脱離することが多くなり、それらが例えば塩化ビニル樹脂との加工・成形時の加熱で樹脂中の紫外線吸剤などの各種安定剤と反応して着色するものと考えられる。
一方、結晶子のサイズが40nmを超えた場合、例えば軟質塩化ビニル樹脂に配合すると、初期着色と呼ばれる着色が発生する上、紫外線や熱などによって軟質塩化ビニル樹脂自体が黒色化しやすくなるため好ましくない。
この理由も必ずしも明らかでないが、結晶子が大きくなると結晶子サイズのばらつきが大きくなって結晶子間で間隙が生じ、その間隙にはハイドロタルサイトでない物質が埋められていると推測し、そして、その間隙にハイドロタルサイトでない物質で埋められている場合は、熱によってそれらの系外への脱離が多くなる。一方、その間隙が埋められないで空間である場合は、外部に曝される結晶子表面が増えることで分解などの反応性が上がるばかりでなく、ハイドロタルサイト類化合物の層内水の排出が起きやすくなり、樹脂に配合すると加工・成形時の加熱でハイドロタルサイト自体の分解を促進させ、樹脂中の紫外線吸剤などの安定剤と反応して着色するものと考えられる。
X線回折装置としては、(株)リガク製全自動水平型多目的X線回折装置Ultima IVを使用し、CuK α線(波長λ=0.15418nm )を用いたX線回折結果から得られる(003)面の回折ピークを測定した。
そして、Sherrer の式 D hkl = K ・λ/βcos θ を用いた、該回折装置に付属するソフトで結晶子サイズを算出した。
ここで、D hkl は結晶子の大きさ、λは測定に用いたX線の波長、βは結晶子の大きさによる回折線の広がり、θは回折線のブラッグ角、K はSherrer 定数を表す。
また、本発明における室温から190 ℃までの吸熱量の測定は、(株)パーキンエルマー製示差走査熱量測定装置DSC-8500で測定した。
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、下記の(a)の化学式で表わされる。
(a)Mg1-x Alx (OH)2An- x/n ・mH2O
ただし、式中A n-はn価のアニオンを示し、xは0.1 ≦x≦0.5 、m は0≦m <1である。n価のアニオンは、2価のCO3 2- ,SO4 2- と1価のOH- , F- ,Cl- ,Br- ,NO3 - ,I - が挙げられる。これらの中では2価CO3 2- が、入手しやすく経済的にも有効であり、環境への負荷の点でも有利である上、ハイドロタルサイト類化合物としても安定で良好ある。
ハイドロタルサイト類化合物には、例えば(Mg y Znx )1-xAlx (OH)2An-1 x/n ・mH2O(式中、0.1 ≦x≦0.5 、y+z=1、0.5 ≦y≦1、0≦z≦0.5 、Aはn価のアニオン、0≦m ≦1)等で示されるハイドロタルサイト類化合物もあるが、上記(a)の化学式で表わされるものがコストやハンドリングの点で好ましい。
上記の如き特定の結晶構造を有するハイドロタルサイト類化合物は、下記の反応条件を考慮することにより製造することができる。
上記の如き、(003)面の結晶子サイズ、平均粒子径Dp50、最大粒子径D Max 、BET 比表面積Swは、これまでの検討でMg・Al・CO3 ・OH等の各原料を溶解した溶液を混合してハイドロタルサイト類化合物を反応生成時のpH設定、得られたハイドロタルサイト類化合物の反応溶液に水熱反応を行う際の温度、時間、撹拌が影響していることが判明している。
ただ、上記の条件は本発明のハイドロタルサイト類化合物の各物性に影響しており、その個々の影響の大きさや相関関係等は必ずしも明確でない。
傾向としては、先ず、溶液反応時のpHを低くすると結晶子サイズが小さくなる。次に、水熱反応時の温度を高くすると結晶子サイズ、平均粒子径Dp50、最大粒子径D Max が大きくなり、BET 比表面積Swは小さくなる傾向がある。なお、最大粒子径D Max は、設定温度を低くし過ぎると大きくなるが、これは微粒子の凝集によって発生したと考えられる。
水熱反応時の時間については、長くするほど結晶子サイズ、平均粒子径Dp50、最大粒子径D Max が大きくなり、BET 比表面積Swは小さくなる傾向がある。ただ、最大粒子径D Max は、時間が短いと大きくなるが、これは微粒子の凝集によって生じると考えられる。
水熱反応時の撹拌について、撹拌数を大きくすると結晶子サイズは大きく、平均粒子径Dp50は小さく、最大粒子径D Max が小さくなる傾向がある。
BET 比表面積Swについては、撹拌数が大きくても小さくても大きくなるため、反応装置や反応条件によって適宜撹拌数を選ぶ必要がある。
尚、ハイドロタルサイト類化合物は、上記の条件を満足するならば天然品であっても差し支えない。
本発明のハイドロタルサイト類組成物は、上述の特定の結晶構造を有するハイドロタルサイト類化合物の表面が酸解離定数が1.5 〜3.5 の酸、その塩から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Aと、マグネシウムに対する一次のキレート安定度定数が6以上のキレート剤から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Bとで被覆されていることを特徴とする。
上記封鎖・捕捉剤Aについては、無機酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、亜硫酸、o−リン酸、ヒ酸、亜塩素酸、亜テルル酸、亜セレン酸、亜硝酸、フッ化水素酸、シアン酸が挙げられるが、毒性、安定性、環境負荷軽減への配慮、水への溶解性、入手のしやすさなどの点から、亜硫酸とホスホン酸が好ましい。
有機酸としては、アセチルサリチル酸、イノシン、1,10−フェナントロリン、2,2 −ビビリジン、2−クロロプロピオン酸、2−フランカルボン酸、3,4 −ジヒドロキシフェニルアラニン、4−ヒドロキシプロリン、4−メチルピラゾール、DL−ロイシン、(d 、R,R )−酒石酸、L −2,4 −ジアミノ酪酸、L −アラニル−L −アラニン、L −アラニル−L −フェニルアラニン、L −アラニルグリシルグリシルグリシン、(L ,β)−アラニルグリシルグリシン、(L ,β)−アラニルグリシン、L −ヒスチジルグリシン、L −フェニルアラニルグリシン、L −プロリルグリシン、L −ロイシル−L −チロシン、2 −アミノ安息香酸、3 −アミノ安息香酸、4 −アミノ安息香酸、m −ニトリロアニリン、2 −ニトロ安息香酸、3 −ニトロ安息香酸、4 −ニトロ安息香酸、2 −ベンゼンジカルボン酸、3 −ベンゼンジカルボン酸、N,N ’−ジメチルグリシン、N,N ’−ジメチルシステイン、2 −クロロアニリン、4 −クロロアニリン、2 −クロロ安息香酸、2 −フルオロ安息香酸、2 −ブロモ安息香酸、2 −ヨード安息香酸、4 −アニリンスルホン酸、γ−L −グルタミル−L −システイニルグリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、アデノシン、アラニン、アルギニン、イソニコチン酸、イソロイシン、オキサロ酢酸、オルニチン、グアニン、グアニシン、クエン酸、グリオキシル酸、グリシル−DL−ヒスチジルグリシン、グリシル−L −アラニン、グリシル−L −ヒスチジン、グリシル−L −ロイシン、グリシルグリシル−L −アラニン、グリシルグリシル−L −ヒスチジン、グリシルグリシルグリシル−L −ヒスチジン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシン、グリシン、グルタミン、クロロ酢酸、サルコシルグリシン、サルコシン、シアノ酢酸、システイン、シトルリン、セリン、チオグリコール酸、チロシン、トリエチレンテトラミン、トリプトファン、トレオニン、ニコチンアミド、ニコチン酸、バリン、ヒスチジン、ヒポキサンチン、ピラゾール、ピルビン酸、フェニキシ酢酸、フェニルアラニン、フマル酸、プリン、フルオロ酢酸、プロモ酢酸、プロリン、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メチオニン、メルカプト酢酸、ヨード酢酸、リシン、リンゴ酸、ロイシンが挙げられる。毒性、安定性、環境負荷軽減への配慮、水への溶解性、入手のしやすさなどの点から、2-アミノ安息香酸、2-クロロ安息香酸、2-フルオロ安息香酸、サリチル酸、マレイン酸、マンデル酸、リンゴ酸、2-ニトロ安息香酸、2-ブロモ安息香酸が好ましく、中でもサリチル酸とマレイン酸がより好ましい。
無機酸の塩としては、例えば亜リン酸カルシウム、亜リン酸水素二ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸ビスマス、o−リン酸亜鉛、o−リン酸アルミニウム、o−リン酸アンモニウムコバルト、o−リン酸一アンモニウム,o−リン酸一カリウム、o−リン酸一水素カルシウム、o−リン酸一ナトリウム、o−リン酸インジウム、o−リン酸エストラムスチン二ナトリウム、o−リン酸銀、o−リン酸一クロム(III)、o−リン酸コバルト(II)、o−リン酸サマリウム(III)、o−リン酸三カリウム、o−リン酸三カルシウム、o−リン酸α三カルシウム、o−リン酸β三カルシウム、o−リン酸三ナトリウム、o−リン酸三マグネシウム、o−リン酸三リチウム、o−リン酸水素アンモニウムナトリウム、o−リン酸水素カリウム、o−リン酸水素カルシウム、o−リン酸水素ナトリウム、o−リン酸水素二アンモニウム、o−リン酸水素二カリウム、o−リン酸水素二ナトリウム、o−リン酸水素バリウム、o−リン酸水素マグネシウム、o−リン酸セリウム(II)、o−リン酸鉄(III)、o−リン酸銅(II)、o−リン酸ナトリウム、o−リン酸二水素アンモニウム、o−リン酸二水素カリウム、o−リン酸二水素カルシウム、o−リン酸二水素ナトリウム、o−リン酸二水素マンガン(II)、o−リン酸二水素リチウム、o−リン酸ネオジウム(III)、o−リン酸ビスマス(III)、o−リン酸ヒドロキシアミン、o−リン酸プラセオジム(III)、o−リン酸ペンタクロリド、o−リン酸ホウ素、o−リン酸マグネシウムアンモニウム、o−リン酸マグネシウム、o−リン酸マンガン(II)、o−リン酸マンガン(III)、o−リン酸四カルシウム、o−リン酸ランタン(III)、ヒ酸カリウム、ヒ酸カルシウム、ヒ酸水素二ナトリウム、ヒ酸二水素セシウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸銅、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸バリウム、亜テルル酸カドミウム、亜テルル酸カリウム、亜テルル酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸バリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸銀、亜硝酸ジアミンパラジウム(II)、亜硝酸ジアミン白金アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、フッ化亜鉛、フッ化アルミニウム、フッ化アンチモン、フッ化アンモニウム、フッ化イッテルビウム、フッ化エルビウム、フッ化カドミウム、フッ化カリウム、フッ化カリウムチタン、フッ化カルシウム、フッ化コバルト(II)、フッ化コバルト(III)、フッ化サマリウム、フッ化酸化イッテルビウム、フッ化酸化テルビウム、フッ化ジスプロビウム、フッ化水銀(II)、フッ化水素アンモニウム、フッ化水素カリウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化スカンジウム、フッ化スズ(II)、フッ化ストロンチウム、フッ化セシウム、フッ化セリウム(III)、フッ化タンタル(V)、フッ化チタンカリウム、フッ化ツリウム、フッ化鉄(III)、フッ化テルビウム(III)、フッ化銅(II)、フッ化ナトリウム、フッ化鉛(II)、フッ化ニッケル(II)、フッ化ネオジム(II)、フッ化バリウム、フッ化ビスマス(III)、フッ化プラセオジム(III)、フッ化ホルミウム、フッ化マグネシウム、フッ化マンガン(III)、フッ化モリブデン(VI)、フッ化ユウロビウム、フッ化ランタン、フッ化リチウム、フッ化ルテチウム、フッ化ルビジウム、シアン酸アンモニウム、シアン酸カリウム、シアン酸銀、シアン酸ナトリウムが挙げられる。毒性、安定性、環境負荷軽減への配慮、水への溶解性、入手のしやすさなどの点から、亜硫酸ナトリウムとホスホン酸ナトリウムが好ましい。
有機酸の塩として、例えばサリチル酸亜鉛、サリチル酸アンモニウム、サリチル酸カルシウム、サリチル酸銀、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸リチウム等のサリチル酸塩、モノクロロ酢酸ナトリウムといったモノクロロ酢酸塩、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸アンモニウム、乳酸カルシウム、乳酸銀、乳酸ナトリウム、乳酸ニッケル、乳酸バリウム、乳酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、乳酸リチウムなどの乳酸塩が挙げられ、中でもサリチル酸亜鉛や乳酸マグネシウムが好ましい。
封鎖・捕捉剤Aとしては、2種以上を組み合わせて使用するのが好ましく、特に無機酸塩と有機酸との併用が好ましい。
封鎖・捕捉剤Aとして、酸解離定数が1.5 未満もしくは3.5 を超える酸やその塩を使用した場合は、例えば塩化ビニル樹脂などに配合した場合、着色や耐候性劣化を起こしやすくなるため好ましくない。
これらの理由は必ずしも明らかでないが、酸解離定数が1.5 未満の酸やその塩の場合、それらがハイドロタルサイト類化合物表面と強力に反応して、その結晶構造の一部を損ねてハイドロタルサイト類化合物からの金属イオンの脱離を促し、紫外線吸収剤等の各種安定剤との反応を妨げることが出来なくなることが原因と推定される。
一方、酸解離定数が3.5 を超える酸やその塩の場合、ハイドロタルサイト類化合物の懸濁液に添加しても、十分にハイドロタルサイト類化合物の表面に被覆できずにハイドロタルサイト類組成物の製造時に排出されたり、塩化ビニル樹脂にそれらの酸や塩とハイドロタルサイト類化合物を別個に配合することと変わりなくなる。そのため、それらがハイドロタルサイト類化合物から脱離する金属イオンと効率的に反応・捕捉できず、紫外線吸収剤等の各種安定剤との反応を妨げることが出来なくなることが原因と推定される。
封鎖・捕捉剤Aの使用量については、ハイドロタルサイト類化合物に対して0.01〜3.0wt %が良好である。使用量が0.01wt%未満の場合、無添加の場合と変わりなく本発明の目的とする十分な効能が得られない。一方、添加量が3.0wt %を超えると、塩化ビニル樹脂に配合時や加工成形時に加熱した際、それら自体が黒化や焼けなどの原因となったり、滑性を付与しすぎてハンドリングを悪化させることがあり好ましくない。
上記封鎖・捕捉剤Bとしては、例えば、2−ヒドロキシベンジルイミノジ酢酸、ホスホノメチルイミノジ酢酸、ホスホノエチルイミノジ酢酸等のイミノジ酢酸誘導体、N ’−(オルトヒドロキシシクロヘキシル)エチレンジアミントリ酢酸等のトリ酢酸類、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミン−N,N ’−ジ酢酸−N,N ’−ジプロピオン酸、エチレンジアミン−N,N ’−ジ酢酸−N,N ’−ジ(2−プロピオン酸)、1,2 −プロピレンジアミンテトラ酢酸、トリメチレンジアミンテトラ酢酸、1,2 −シクロペンタンジアミンテトラ酢酸、trans −シクロヘキサン−1,2 −ジアミンテトラ酢酸、オルトフェニレンジアミンテトラ酢酸、ビス(イミノジ酢酸エチル)メチルアミン、トリメチレンテトラアミンヘキサ酢酸等のエチレンジアミンテトラ酢酸類、ヒドロキシエチリジエンジホスホン酸、ニトロトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類が挙げられ、中でもヒドロキシエチリジエンジホスホン酸が良好である。
封鎖・捕捉剤Bとして、マグネシウムイオンに対する一次のキレート安定度定数が6未満のキレート剤を使用した場合は、例えば塩化ビニル樹脂に配合した場合、着色や耐候性劣化を起こすため好ましくない。この理由は必ずしも明らかでないが、ハイドロタルサイト類組成物として塩化ビニル樹脂に配合しても、キレート能力の低さからハイドロタルサイト類化合物から脱離して遊離する金属イオンと効率よく反応・捕捉できず、紫外線吸収剤等の各種安定剤との反応を妨げることが出来なくなることが原因と推定される。
一方、上記安定度定数の上限については特に制限されないが、該安定度定数の値が大きくなるほど分子の構造が複雑、かつ大きくなるためコストがかさむ上に、例えば塩素含有樹脂に配合した際に系内へ想定していない悪影響を及ぼす可能性があるので通常、8程度が好ましく、7程度がより好ましい。
封鎖・捕捉剤Bの使用量については、ハイドロタルサイト類化合物に対して0.01〜3.0wt %の添加が好ましい。使用量が0.01wt%未満の場合、無添加の場合と変わりなく本発明の目的とする十分な効能が得られない。一方、使用量が3.0wt %を超えると、塩化ビニル樹脂に配合時や加工成形時に加熱した際、それら自体が黒化や焼けなどの原因となる場合があり好ましくない。
本発明における好ましい態様として、本発明に用いられるハイドロタルサイト類化合物は、レーザー回折散乱式粒度分布計により測定した50%平均粒子径Dp50が0.5 ≦Dp50≦2(μm )、好ましくは0.5 ≦Dp50≦1.5 (μm )の範囲にあり、同じくレーザー回折散乱式粒度分布計により測定した最大粒子径D Max が DMax ≦9.250 (μm )、好ましくはD Max ≦7.780 (μm )の範囲にあり、二次凝集が殆どないか、あるいは、少ないものが好ましい。
50%平均粒子径Dp50が0.5 μm 未満のものは製造が困難であり、また、電子顕微鏡観測等により該50%平均粒子径Dp50が0.5 μm 未満の粒子を得ることは出来るが、微細になりすぎるために粒子の表面エネルギーが大きくなり、凝集して安定化を図る傾向があるため、粒度測定でその様な値を示す粒子を得るのは困難である。
一方、50%平均粒子径Dp50が2μm を超えると、例えば塩素含有樹脂に配合した際に耐熱性が若干劣り、電線用途に使用した場合に絶縁性が低下する傾向があるため好ましくない。
この理由については必ずしも明らかではないが、例えば塩素含有樹脂に配合した際、粒子1個が大きいために樹脂中での個数の密度が下がってアニオンの吸着能力が低下するためと推測される。
最大粒子径D Max が9.250 μm を超えると、例えば塩素含有樹脂に配合した際に耐熱性が若干劣り、初期着色と呼ばれる着色が悪化する傾向があるため好ましくない。
この理由も必ずしも明らかではないが、塩素含有樹脂に配合した際、極めて大きな粒子が樹脂中に存在することが悪い影響を与えていると推測される。
本発明における好ましい態様として、ハイドロタルサイト類化合物の窒素吸着法で測定したBET 比表面積Swが5〜20m2/g の範囲内にあることが好ましい。比表面積Swがこの範囲にあると、ハイドロタルサイト類化合物ないし組成物の製造時や使用時のハンドリングが良好になり、さらに例えば塩化ビニル樹脂に配合して安定剤や受酸剤としてその効能を発揮する際に、樹脂中に良好に分散してハロゲンの吸着反応が起こりやすくなる。
BET 比表面積Swが5m2/g 未満のものは製造が困難であり、一方、20m2/g を超えると、該ハイドロタルサイト類化合物ないし組成物の製造時のコストやハンドリングが悪化して好ましくなく、また、例えば塩素含有樹脂に配合した際に初期着色等の問題を起こしやすくなり、電線等の用途に使用した際には絶縁性が低下する傾向があるなど好ましくない。
塩素含有樹脂等に配合した場合に初期着色の悪化や絶縁性が低下する理由は必ずしも明らかではないが、ハイドロタルサイト類化合物粒子の表面積が大きいため、ハイドロタルサイト類化合物からの金属イオンの離脱が容易になり、紫外線吸収剤等の安定剤と反応しやすくなるためと推測される。
本発明における窒素吸着式BET 比表面積の測定は、ユアサアイオニクス(株)製NOVA2000で測定した。
ハイドロタルサイト類化合物の粒度特性が上記範囲内にあることによって、樹脂に配合されて安定剤としてその効能を発揮する際に、樹脂中に良く分散し、更に適度に微細であるから配合された樹脂中でハロゲンと接する面積が適切になり、ハロゲンの吸着反応が起こりやすくなる。
上記の如くして得られる本発明のハイドロタルサイト類組成物は、樹脂に配合され成形されて樹脂成形体とした際に、耐久性・強度等の諸物性向上を目的として、及び粒子の安定性、分散性,樹脂との親和性向上や撥水性付与の目的で脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸、それらの金属塩、それらのエステル等の表面処理剤で被覆することが好ましい。この場合の被覆も、封鎖・捕捉剤の被覆と同様で、ハイドロタルサイト類組成物と物理的又は化学的に吸着している場合と、単に接している場合の両方を含む。
上記の表面処理剤について、上記の諸物性や、用途、環境への影響、ハンドリング性、コストの観点から、例えば脂肪酸やその金属塩が好ましい。
脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸としては、例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;ソルビン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸;シクロペンタン環やシクロヘキサン環を持つナフテン酸等の脂環族カルボン酸、安息香酸、フタル酸等に代表されるベンゼンカルボン酸類、ナフトエ酸やナフタル酸等のナフタレンのカルボン酸等の芳香族カルボン酸;アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸等の樹脂酸が挙げられ、中でもハイドロタルサイト類化合物との反応性や、粒子の安定性、分散性、入手しやすさ、コストの点でステアリン酸とパルミチン酸の混合酸が好ましい。
脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸の各金属塩としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸コバルト(II)、ステアリン酸錫(IV)、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸鉛(II)等の飽和脂肪酸塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸コバルト(II)、オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪酸塩;ナフテン酸鉛、シクロヘキシル酪酸鉛等の脂環族カルボン酸塩;安息香酸ナトリウム等の芳香族カルボン酸塩が挙げられる。
また、本発明のハイドロタルサイト類組成物の表面処理時または以前に、既述の脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、鉛、コバルト、錫を持つ化合物を混合・反応させて、これらの金属塩を作成しても良い。
以上の脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸の金属塩の中でもハイドロタルサイト類化合物との反応性や、粒子の安定性、分散性、入手しやすさ、コストの点でステアリン酸ないしパルミチン酸を主成分とする混合石鹸の使用が好ましい。
脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸の各エステルとしては、例えば、カプロン酸エチル、カプロン酸ビニル、アジピン酸ジイソプロピル、カプリル酸エチル、カプリン酸アリル、カプリン酸エチル、カプリン酸ビニル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、イソオクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、ベヘニン酸メチル、ベヘニン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸エステル、オレイン酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、エルカ酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル、その他、長鎖脂肪酸高級アルコールエステル、ネオペンチルポリオール( 長鎖・中鎖を含む) 脂肪酸系エステルおよび部分エステル化合物、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、コンプレックス中鎖脂肪酸エステル、12- ステアロイルステアリン酸イソセチル・イソステアリル・ステアリル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、多価アルコール脂肪酸エステル/アルキルグリセリルエーテルの脂肪酸エステル等の耐熱性特殊脂肪酸エステル、安息香酸エステル系に代表される芳香族エステルが挙げられる。中でもハイドロタルサイト類組成物との反応性や、粒子の安定性、分散性、コストの点で多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコールステアリン酸またはパルミチン酸ないし、ステアリン酸ステアリルの使用が好ましい。
上記表面処理剤は、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
表面処理剤の処理量は、本発明で得られるハイドロタルサイト類組成物が使用される樹脂の種類や用途によって適宜選択されるが、例えばポリ塩化ビニル系樹脂の安定剤として使用される場合、通常、ハイドロタルサイト類組成物100 重量%に対して0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜8重量%である。
表面処理量が、0.01重量%未満の場合、表面処理剤の効能が認められず、製造時のハンドリングの悪化とコストアップを招くだけで好ましくない。一方、表面処理量が15重量%を超えると、粒子表面に処理されずに混合状態で存在する割合が大幅に増える等、無駄であるばかりか、樹脂に配合して成形体を作成した場合、樹脂の強度の低下や着色等の問題を起こすため好ましくない。
本発明の第二は、本発明のハイドロタルサイト類組成物と樹脂とを含有してなることを特徴とする樹脂組成物に関する。
本発明のハイドロタルサイト類組成物は、通常、樹脂100 重量部に対して0.001 〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部配合される。
本発明のハイドロタルサイト類組成物が配合される樹脂は、通常、成形品として使用されるものであればよいが、特に、熱可塑性樹脂が好ましい。
例えば、ポリエチレン、ポリプリピレン、エチレン/プロピル重合体、ポリブテン、ポリ−(4 −メチルペンテン−1 )等の如きC2〜C8のオレフィン( αオレフィン) の重合体もしくは共重合体のようなポリオレフィン系樹脂や、これらオレフィンとジエンの共重合体類、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン、ABS 樹脂、AAS 樹脂、AS樹脂、MBS 樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−プロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびメタクリロ系の樹脂等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、本発明のハイドロタルサイト類組成物による熱劣化防止効果および機械強度保持特性の優れた例としては、ポリオレフィンまたはその共重合体、ハロゲン含有樹脂等であり、具体的には、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンプロピレン共重合体の如きポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EEA (エチレンエチルアクリレート樹脂)、EVA (エチレンビニルアセテート樹脂)、EMA (エチレンアクリルメチル共重合樹脂)、EAA (エチレンアクリル酸共重合樹脂)、超高分子ポリエチレンの様なポリエチレン系樹脂、およびポリブデン、ポリ(4 −メチルペンテン−1 )等のC2〜C6のポリオレフィン(α−エチレン)の重合体もしくは共重合体等が挙げられる。
中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリ(4 −メチルペンテン−1 )またはこれらの共重合体が特に好ましい。更にポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリアミド11、ポリヒドロキシ酪酸等の生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックも使用可能である。
これらのポリオレフィン樹脂は、チーグラー系の重合触媒に由来するハロゲンをその樹脂中に含有するが、本発明のハイドロタルサイト類化合物がそれらハロゲンの吸収・受酸に極めて優れていることから、そのハロゲンが原因となって生じる熱劣化の抑制効果が優れている。
また、ポリ塩化ビニル樹脂もしくはその共重合体に対しても本発明のハイドロタルサイト類化合物は、同様の理由で熱劣化の抑制効果が優れている。
更に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂および尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、および、EPDM、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR 、NBR 、クロロスルホン化ポリエチレン、NIR 、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムおよびフッ素ゴム等の合成ゴムにも適用することができる。
本発明のハイドロタルサイト類組成物の樹脂やゴムへの配合方法には特別な制約はなく、例えば上述の樹脂やゴムに用いられる各種安定剤や充填剤等をこれらの樹脂やゴムに配合する公知の方法と同様の手段で、他の樹脂配合剤と共に、もしくは、別個に樹脂やゴムに可能な限り均一になるよう配合すればよい。
具体的には、リボンブレンダー、高速ミキサー、ニーダー、ペレタイザー、押し出し機等の公知の混合装置を利用して配合する方法や、ハイドロタルサイト類組成物を有効成分としてなる熱劣化防止剤の懸濁液を重合後のスラリーに攪拌しつつ添加して混合し乾燥する方法を挙げることができる。
本発明のハイドロタルサイト類組成物を含有する樹脂組成物には、本発明の効能を損なわない限り、上記成分以外に他の添加剤を配合することが出来る。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤、可塑剤、充填剤、補強剤、難燃剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、上記以外の無機系あるいは有機系安定剤が挙げられる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、ハイドロタルサイト類化合物の平均粒子径Dp50および最大粒子径D Max は、マイクロトラック・ベル(株)社製マイクロトラックMT3300EX II レーザー回折散乱式粒度分布計で測定した。
ハイドロタルサイト類化合物のBET比表面積Swは、ユアサアイオニクス(株)製NOVA2000で測定した。
ハイドロタルサイト類化合物の結晶子の大きさは、(株)リガク製全自動水平型多目的X線回折装置Ultima IVで求めた回折結果から、Sherrer の式を用いて結晶子のサイズを算出する付属ソフトを用いて行った。
ハイドロタルサイト類化合物の組成分析はICP-MS法で、CO3 はCHN 測定法で、水酸基と層内水量は熱量分析法で測定・算出した。
実施例1
3.5mol/L の塩化マグネシウム溶液と1.0mol/L 硫酸アルミニウム溶液をマグネシウムとアルミニウムのモル比が2.1 :1 になるように混合し20℃に調整した。
次に、18.08mol/L の水酸化ナトリウム溶液と0.51mol /L の炭酸ソーダ溶液を水酸化物と炭酸基のモル比が6.4 :1 になるよう混合し20℃に調整した。
両混合溶液を撹拌下で、pHが11.5±0.1 の範囲内に維持しつつ混合して反応を行い、更に反応タンクの上部から反応液を溢流させる連続法で、ハイドロタルサイト類化合物の反応液を作成した。
更に得られた反応液をオートクレーブに投入し、120rpmの回転数で攪拌下、70分で150 ℃まで昇温し6時間維持した後、室温まで放冷してハイドロタルサイト類化合物の懸濁液を得た。
得られたハイドロタルサイト類化合物の懸濁液をプレスフィルターで脱水、水道水で洗浄を行い、洗浄廃水が水道水の電気伝導度より20μS /cm高くなった時点で洗浄を終了した。
洗浄後のプレスケーキ状のハイドロタルサイト類化合物を再び水で懸濁液化し、封鎖・捕捉剤A、Bとして、ハイドロタルサイト類化合物に対して0.1 重量%のサリチル酸(A1:酸解離定数2.81)と0.1 重量%の亜硫酸ナトリウム(A2:酸解離定数1.86)、1重量%のヒドロキシエチリジエンジホスホン酸(HEDP) (B:キレート安定度定数6.55)を各々水に溶解し、撹拌下で、ハイドロタルサイト類化合物溶液にサリチル酸溶液、亜硫酸ナトリウム溶液、ヒドロキシエチリジエンジホスホン酸溶液の順に30分毎に添加してハイドロタルサイト類化合物が封鎖・捕捉剤で被覆されたハイドロタルサイト類組成物の懸濁液を得た。
更に、液温を80℃に調整し、該ハイドロタルサイト類組成物の懸濁液中のハイドロタルサイト類化合物に対して2.2 重量%に当る、市販のステアリン酸ナトリウム65%−パルミチン酸ナトリウム35%の混合石鹸(工業用)からなる表面処理剤を80℃の温水に溶かしたのちに添加し、60分間攪拌して表面処理剤で被覆されたハイドロタルサイト類組成物の懸濁液を得た。
得られた表面処理剤で被覆されたハイドロタルサイト類組成物の懸濁液を再びプレスフィルターで脱水してケーキ状とし、次いでギアオーブンで105 ℃・12時間乾燥後、コロフレックス解砕機で解砕して、表面被覆ハイドロタルサイト類組成物の乾粉を得た。
ハイドロタルサイト類化合物の懸濁液の一部を採取して分析や測定を行ったところ、化学式がMg0.677Al0.323(OH)2(CO3)0.15・0.55H2O で、(003 )面の結晶子サイズが25nmで、BET 比表面積Swが 18.5 m2/g、平均粒子径Dp50が 2.36 μm、最大粒子径D Max が9.250 μm の粒子であった。
得られたハイドロタルサイト類化合物の反応条件と諸物性、化学式を表1に、表面被覆ハイドロタルサイト類組成物の処理方法を表2に示す。なお、実施例14〜18、比較例1〜3は、同一のハイドロタルサイト類化合物である。
実施例2〜18,比較例1〜5
溶液反応時のpH、水熱反応時の温度、時間、撹拌を表1に示すように変更し、封鎖・捕捉剤、表面処理剤、処理量を表2に示すように変更する以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示す物性、化学式のハイドロタルサイト類化合物、ならびに表2に示す表面被覆ハイドロタルサイト類組成物を得た。尚、実施例2で封鎖・捕捉剤A1として用いたサリチル酸ナトリウムの酸解離定数は2.81、実施例3で封鎖・捕捉剤A1として用いたマレイン酸の酸解離定数は1.75である。
実施例19〜36,比較例6〜10
実施例1〜18、比較例1〜5で得られた表面処理ハイドロタルサイト類組成物を、下記の配合組成で混合した後、161 ℃に設定した混練押出機でペレットを作成した。
配合組成
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100 重量部
DOP 50重量部
ステアリン酸亜鉛 0.5 重量部
表面被覆ハイドロタルサイト類組成物 1.5 重量部
更に、得られたペレットを160 ℃のロールとヒーター付圧力プレスを使用し、厚さ1mmのシートを作成した。得られたシートの物性を下記の方法で測定・評価した。結果を表3、表4に示す。
<耐熱劣化性>
作成したシートを20mm×10mmに切り取り、190 ℃でダンパー開度50%にしたギアオーブン( タバイエスペック社製ギアオーブンGPHH−100)に置いて15分毎に取り出し、試験片が黒色化するまでの時間を求めた。
<初期着色性>
作成したシートを20mm×20mmに切り取り、ヒーター付圧力プレスを使用して圧力をかけながら、190 ℃で30分間、シートを加熱した後に取り出し、シートの色相を測定した。
なお、装置は、日本電色工業(株)製測色色差計ZE 2000 を用い、透過光のYI値を評価した。
<耐ヒケ、耐発泡性>
作成したシートを20mm×20mmに切り取り、ヒーター付圧力プレスを使用して圧力をかけながら、190 ℃で5分、15分および30分間、シートを加熱した後に取り出し、気泡や、ヒケと呼ばれる表面のくぼみやシート内の空隙を肉眼で観察し、以下の5段階で評価した。
5:シートにヒケ・気泡なし
4:シートの端に微細(0.1 mm以下)な気泡がみられる
3:シートに2〜5個の1〜2mm程度のヒケと微細な気泡がみられる
2:シートに1〜2mm程度のヒケが6個以上みられる
1:シート全面に著しいヒケ、気泡がある
<体積固有抵抗>
JIS K6723 に準拠して下記の手順で測定した。即ち、作成したシートから縦横120mm 以上のシートを打ち抜き、試験片の厚みを5個所測定してその平均値を厚みとし、試験装置と打ち抜いたシートを30℃に設定した恒温槽に30分以上置き、印加電圧500 V、充電時間1分で体積固有抵抗を測定した。なお、装置は、Agilent Technologies製4339B High Resistance Mater を使用した。
Figure 2016108427
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Figure 2016108427
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本発明によれば、特定の結晶構造を有することにより、従来のハイドロタルサイト類化合物よりマグネシウムやアルミニウム等の金属イオンの脱離を抑制し、更に、特定の化合物を封鎖・捕捉剤としてハイドロタルサイト類化合物の表面に被覆させたハイドロタルサイト類組成物は、例えば、塩素含有樹脂に配合した際には、それらの化合物がハイドロタルサイト類化合物から脱離しやすい金属イオンと反応して封鎖するか、または、遊離したそれらの金属イオンと反応して紫外線吸収剤等の安定剤との反応を阻害する。その結果、着色や耐候性劣化が低減され、βジケトン等の安定化助剤を使用しなくても、もしくは、添加量を極めて少量にしても優れた耐候性を付与することが可能になる。

Claims (9)

  1. 下記(a)の化学式で表わされ、X 線回折結果とSherrer の式から求められる(003)面の結晶子サイズが10〜40nmであるハイドロタルサイト類化合物が、酸解離定数が1.5 〜3.5 の酸、その塩から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Aと、マグネシウムイオンに対する一次のキレート安定度定数が6以上のキレート剤から選択される少なくとも1種の封鎖・捕捉剤Bとで被覆されていることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物。
    (a)Mg1-x Alx (OH)2An-1 x/n ・mH2O
    ただし、式中A n-はn価のアニオンを示し、xは0.1 ≦x≦0.5 、mは0≦m<1である。
  2. ハイドロタルサイト類化合物が下記(b)〜(d)を満足することを特徴とする、請求項1記載のハイドロタルサイト類組成物。
    (b)0.5 ≦ Dp50 ≦2 (μm )
    (c)D Max ≦ 9.250 (μm )
    (d)5≦ Sw ≦ 20 (m2/g)
    ただし、
    Dp50:レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の50%平均粒子径(μm )、
    D Max :レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の最大粒子径(μm )、
    Sw:窒素吸着法で測定したBET 比表面積(m2/g)。
  3. 封鎖・捕捉剤Aが亜硫酸、ホスホン酸、サリチル酸、マレイン酸、それらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のハイドロタルサイト類組成物。
  4. 封鎖・捕捉剤Bがヒドロキシエチリジエンジホスホン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイドロタルサイト類組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイドロタルサイト類組成物が、脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸、それらの金属塩、それらのエステルから選択される少なくとも1種の表面処理剤で被覆されていることを特徴とするハイドロタルサイト類組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイドロタルサイト類組成物と樹脂とを含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
  7. 樹脂が塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項6記載の樹脂組成物。
  8. 請求項6記載の樹脂組成物からなる成形体。
  9. 請求項7記載の樹脂組成物からなる成形体。
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