以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における減衰バルブは、図1に示すように、緩衝器Dの伸側減衰バルブ及び圧側減衰バルブの双方に適用されており、通路としての伸側通路3及び圧側通路4と当該伸側通路3及び圧側通路4の出口端をそれぞれとり囲む環状の伸側弁座2d及び圧側弁座2cとを備えたバルブディスクとしてのピストン2と、ピストン2に積層されて伸側弁座2dに離着座して伸側通路3を開閉する環状の伸側リーフバルブVeと、ピストン2に積層されて圧側弁座2cに離着座して圧側通路4を開閉する環状の圧側リーフバルブVpと、伸側リーフバルブVeにピストン2側へ向けて可変附勢力を作用させるとともに圧側リーフバルブVpにピストン2側へ向けて可変附勢力を作用させる附勢手段とを備えて構成されている。なお、本発明の減衰バルブは、緩衝器Dの伸側減衰バルブのみ、或いは圧側減衰バルブのみに具現化されてもよいことは当然である。
他方、緩衝器Dは、作動油などの液体を満たしたシリンダ1と、シリンダ1内に収容される前記した減衰バルブと、減衰バルブを構成するバルブディスクとしてのピストン2を軸方向へ移動自在にシリンダ1内に挿入することで当該シリンダ1内にピストン2で区画した伸側室R1と圧側室R2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるピストンロッド7とを備えて構成され、シリンダ1に対してピストン2が図1中上下方向となる軸方向に移動する際に、伸側通路3を通過する液体の流れに対しては伸側リーフバルブVeで、圧側通路4を通過する液体の流れに対しては圧側リーフバルブVpで抵抗を与えて減衰力を発揮するようになっている。
なお、シリンダ1の図1中下方には図示はしないが、シリンダ1内を摺動するフリーピストンが設けられており、このフリーピストンによってシリンダ1内に気体室が形成される。また、ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド7の一端に連結され、ピストンロッド7は、シリンダ1の上端部に設けた図外の環状のロッドガイドの内周を貫通してシリンダ1外へ突出されている。なお、ピストンロッド7とシリンダ1との間は図示しないシールでシリンダ1内が液密状態とされている。図示したところでは、緩衝器Dがいわゆる片ロッド型に設定されているため、緩衝器Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド7の体積は、前記した気体室内の気体の体積が膨張あるいは収縮し前記フリーピストンがシリンダ1内を上下方向に移動することによって補償されるようになっている。このように緩衝器Dは、単筒型に設定されているが、フリーピストン及び気体室の設置に変えて、シリンダ1の外周や外部にリザーバを設けて当該リザーバによって前記ピストンロッド7の体積補償を行ってもよい。
また、減衰バルブにおける附勢手段は、この例では、伸側リーフバルブVeを附勢する伸側スプールSeと、内部圧力で伸側スプールSeを押圧する伸側背圧室Ceと、圧側リーフバルブVpを附勢する圧側スプールSpと、内部圧力で圧側スプールSpを押圧する圧側背圧室Cpと、通過する液体の流れに抵抗を与える伸側抵抗要素としての伸側パイロットオリフィスPeを介して圧側背圧室Cpに連通されるともに通過する液体の流れに抵抗を与える圧側抵抗要素としての圧側パイロットオリフィスPpを介して伸側背圧室Ceに連通される連通路24と、伸側室R1から圧側背圧室Cpへ向かう液体の流れのみを許容する伸側圧力導入通路Ieと、圧側室R2から伸側背圧室Ceへ向かう液体の流れのみを許容する圧側圧力導入通路Ipと、連通路24に接続される調整通路Pcと、調整通路Pcの下流を伸側室R1へ連通するとともに調整通路Pcから伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側排出通路Epと、調整通路Pcの下流を圧側室R2へ連通するとともに調整通路Pcから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側排出通路Eeと、調整通路Pcに設けられて調整通路Pcの上流圧力を制御する電磁圧力制御弁6とを備えて構成されている。
以下、減衰バルブ及び緩衝器Dについて詳細に説明する。ピストンロッド7は、この場合、ピストン2を保持するピストン保持部材8と、一端がピストン保持部材8に連結されてピストン保持部材8とともに電磁圧力制御弁6を収容する中空な収容部Lを形成する電磁弁収容筒9と、一端が電磁弁収容筒9に連結されるとともに他端がシリンダ1の上端から外方へ突出するロッド部材10とで形成されている。
ピストン保持部材8は、外周に環状のピストン2が装着される保持軸8aと、保持軸8aの図1中上端外周に設けたフランジ8bと、フランジ8bの図1中上端外周に設けた筒状のソケット8cとを備えている。また、ピストン保持部材8は、保持軸8aの先端から開口して軸方向に伸び前記ソケット8c内に通じる縦孔8dと、フランジ8bの図1中下端に前記保持軸8aを囲むようにして設けた環状溝8eと、環状溝8eをソケット8c内に連通するポート8fと、環状溝8eを縦孔8d内に連通させる横孔8gと、保持軸8aの外周から開口して縦孔8dに通じる伸側抵抗要素としての伸側パイロットオリフィスPeと圧側抵抗要素としての圧側パイロットオリフィスPpと、保持軸8aの図1中下端外周に設けた螺子部8iと、フランジ8bの上端に形成されて縦孔8dに通じる溝8jとを備えて構成されている。
保持軸8aに設けた縦孔8d内には、筒状であって外周に設けた環状溝23aで縦孔8d内に伸側パイロットオリフィスPeと圧側パイロットオリフィスPpとを連通させる連通路24を形成するセパレータ23が挿入されている。このセパレータ23の図1中下端には、当該下端の開口を囲む環状弁座23bが設けられている。縦孔8dは、セパレータ23内を介して圧側室R2をソケット8c内へ連通させるが、伸側パイロットオリフィスPeと圧側パイロットオリフィスPpがセパレータ23によって縦孔8d内を介しては圧側室R2及びソケット8c内に通じないようになっている。さらに、横孔8gも連通路24に通じており、この横孔8gもセパレータ23によって縦孔8d内を介しては圧側室R2及びソケット8c内に通じないようになっている。
なお、前記した伸側抵抗要素及び圧側抵抗要素は、通過する液体の流れに対して抵抗を与えればよいので、オリフィスだけではなく、チョーク通路といった他の絞りとされてもよいし、リーフバルブやポペットバルブなどの抵抗を与える弁とされてもよい。
ソケット8cの図1中上端外周には、環状の凹部8kが設けられており、また、ソケット8cには、凹部8kからソケット8c内に通じる貫通孔8mが設けられている。凹部8kには、環状板22aが装着されており、この環状板22aが図1中上方からばね部材22bによって附勢されて、貫通孔8mを閉塞している。
電磁弁収容筒9は、有頂筒状の収容筒部9aと、収容筒部9aよりも外径が小径であって当該収容筒部9aの頂部から図1中上方へ伸びる筒状の連結部9bと、収容筒部9aの側方から開口して内部へ通じる透孔9cとを備えて構成されている。そして、電磁弁収容筒9の収容筒部9aの内周にピストン保持部材8のソケット8cを螺着することで、電磁弁収容筒9にピストン保持部材8が一体化されるとともに、これら電磁弁収容筒9とピストン保持部材8とで収容筒部9a内に電磁圧力制御弁6が収容される収容部Lが形成され、収容部L内に詳しくは後述する調整通路Pcの一部が設けられる。また、収容部Lは、前記したポート8f、環状溝8e及び横孔8gによって連通路24に連通されており、これらポート8f、環状溝8e及び横孔8gで調整通路Pcの一部を形成している。なお、収容部Lが連通路24に連通されていればよいので、ポート8f、環状溝8e及び横孔8gを採用するのではなく、収容部Lと直接的に連通路24に連通する通路を設けるようにしてもよいが、ポート8f、環状溝8e及び横孔8gを採用することで収容部Lと連通路24を連通する通路の加工が容易となる利点がある。
前記したように電磁弁収容筒9にピストン保持部材8が一体化されると、透孔9cが凹部8kに対向して、貫通孔8mと協働して、収容部Lを伸側室R1に連通させるようになっており、環状板22aとばね部材22bとで、収容部L内から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁22が形成されている。よって、圧側排出通路Epは、透孔9c、凹部8k、貫通孔8m及び当該逆止弁22によって形成されている。
また、ピストン保持部材8における縦孔8d内には、セパレータ23の図1中下端に設けた環状弁座23bに離着座する逆止弁25が設けられており、逆止弁25は、圧側室R2側から収容部Lへ向かう液体の流れを阻止するとともに、収容部Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するようになっている。よって、伸側排出通路Eeは、セパレータ23によって、縦孔8d内に形成されている。
ロッド部材10は、筒状であって、図1中下端の内周が拡径されていて電磁弁収容筒9の連結部9bの挿入を許容し、この連結部9bの螺着を可能とする螺子部(符示せず)を備えている。このように、ロッド部材10、電磁弁収容筒9及びピストン保持部材8を一体化することで、ピストンロッド7が形成される。
なお、ロッド部材10内及び電磁弁収容筒9における連結部9b内には、後述するソレノイドへ電力供給するハーネスHが挿通されており、ハーネスHの上端は図示はしないがロッド部材10の上端から外方へ伸びており、電源に接続される。
ピストン保持部材8に設けた保持軸8aの外周には、図3に示すように、環状のピストン2とともに、ピストン2の図3中上方に環状スペーサとしての圧側環状スペーサ60、外形が円形な複数の環状板を積層して構成された軸部材としてのカラー61と、カラー61の外周に摺動自在に装着される環状の圧側リーフバルブVp、同じくカラー61の外周に摺動自在に装着される環状プレートとしての圧側環状プレート62、圧側ストッパ63と、圧側スプールSp、圧側背圧室Cpを形成する圧側チャンバ11とが組付けられ、ピストン2の図3中下方には、環状スペーサとしての伸側環状スペーサ64、外形が円形な複数の環状板を積層して構成された軸部材としてのカラー65と、カラー65の外周に摺動自在に装着される環状の伸側リーフバルブVe、同じくカラー65の外周に摺動自在に装着される環状プレートとしての伸側環状プレート66、伸側ストッパ67、伸側スプールSe、伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ12とが組付けられる。
ピストン2は、この場合、上下二分割されたディスク2a,2bを重ね合わせることで形成されており、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3と圧側通路4とが形成されている。このように、ピストン2を上下に分割されたディスク2a,2bで形成することで、複雑な形状の伸側通路3及び圧側通路4を孔開け加工によらずして形成することができ、安価かつ容易にピストン2を製造することができる。また、図3において上方側のディスク2aの上端には、圧側通路4に連通される環状窓2eと、環状窓2eの外周側に設けられて圧側通路4を囲む環状の圧側弁座2cと、環状窓2eの内周に設けた内周シート部2fとが設けられている。他方、下方側のディスク2bの下端には、伸側通路3に連通される環状窓2gと、環状窓2gの外周側に設けられて伸側通路3を囲む環状の伸側弁座2dと、環状窓2gの内周に設けた内周シート部2hとが設けられている。
伸側リーフバルブVeは、図3に示すように、ピストン保持部材8の保持軸8aの挿通を許容するため環状とされており、この例では、一枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板を積層して構成してもよい。そして、このように構成された伸側リーフバルブVeは、ピストン2の内周シート部2hに積層される伸側環状スペーサ64を介してピストン2の図3中下方に積層される。また、伸側リーフバルブVeは、その外周に伸側弁座2dへ着座した際にオリフィスとして機能する切欠Oeを備えており、カラー65の外周に摺動自在に装着されている。カラー65の外周には、伸側リーフバルブVeに積層される伸側環状プレート66が摺動自在に装着されている。なお、本実施の形態では、伸側環状プレート66の反伸側リーフバルブ側に伸側環状プレート66よりも外径が小径な環状の補助バルブ71が積層されており、この補助バルブ71もまたカラー65の外周に摺動自在に装着されている。伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート66および補助バルブ71を積層した際の軸方向長さは、カラー65の軸方向長さよりも短くなるようにしてある。さらに、カラー65の図3中下方には、環状であって外径が補助バルブ71および伸側環状プレート66の内径よりも大径に設定される伸側ストッパ67が設けられており、この伸側ストッパ67の下方に伸側チャンバ12が積層される。よって、伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート66および補助バルブ71は、軸部材としてのカラー65によってガイドされて伸側環状スペーサ64と伸側ストッパ67との間で軸方向となる図3中上下方向へ移動することができるようになっている。
そして、伸側リーフバルブVeは、伸側通路3側から圧力によって押圧されることで、外周が伸側環状プレート66とともに撓むとともに、伸側環状プレート66および補助バルブ71とともに全体がピストン2から後退することが可能とされている。伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート66および補助バルブ71のピストン2からの後退量は、カラー65の軸方向長さによって設定される。この場合、カラー65が複数枚の環状板で構成されるので、環状板の積層枚数で調節可能であるが、カラー65を単一の環状板で構成してもよい。
前述したように、伸側リーフバルブVeは、ピストン2の内周シート部2hに積層される伸側環状スペーサ64を介してピストン2の図3中下方に積層されており、伸側リーフバルブVeに負荷が作用しない状態では、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間に隙間が形成される。この隙間の図3中上下方向長さは、厚みの異なる伸側環状スペーサ64に交換するか、伸側環状スペーサ64の積層枚数を変更することによって調節することができる。なお、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間の隙間は、内周シート部2hの高さを伸側弁座2dの高さよりも高くしておくことで、伸側環状スペーサ64を廃して伸側リーフバルブVeを直接に内周シート部2hへ積層することでも形成することができる。ただし、伸側環状スペーサ64を設けることで、前記隙間の長さの調節を容易に行うことができる。
また、伸側リーフバルブVeは、背面側となる反ピストン側から附勢手段によって附勢力が負荷されると撓むが、この附勢力が大きくなると伸側弁座2dに着座するようになって伸側通路3を閉塞するようになる。この状態では切欠Oeのみで伸側通路3を圧側室R2に連通させることになる。
伸側環状プレート66は、伸側リーフバルブVeよりも撓み剛性が高くなっている。そのため、伸側環状プレート66の軸方向長さ(厚み)を伸側リーフバルブVeの軸方向長さ(厚み)より長くしてあるが、軸方向長さによって剛性を強くするだけでなく、伸側リーフバルブVeよりも高剛性の材料で伸側環状プレート66を形成するようにしてもよい。
ここで、伸側環状プレート66の内径は、ピストン2に設けた内周シート部2hの外径よりも小径に設定されている。伸側環状プレート66の外径は、伸側弁座2dの内径よりも大径に設定されている。そして、伸側環状プレート66が背面側から伸側背圧室Ce内の圧力と伸側スプールSeによって押圧されると、伸側環状プレート66が伸側リーフバルブVeを押し上げて撓ませるようになる。伸側リーフバルブVeが伸側弁座2dに着座するまで撓むと、伸側環状プレート66の内外径の前述のように設定されているため、伸側環状プレート66が内周シート部2hと伸側弁座2dとで支持される格好になるため、伸側背圧室Ce内の圧力と伸側スプールSeによる附勢力を伸側環状プレート66で受け止めるようになり、伸側リーフバルブVeのそれ以上の変形が抑制され、伸側リーフバルブVeに過負荷がかからないようになっている。また、補助バルブ71は、伸側リーフバルブVeおよび伸側環状プレート66よりも外径が小径に設定されている。そのため、伸側リーフバルブVeおよび伸側環状プレート66が伸側通路3の圧力で撓む場合に、補助バルブ71よりも外周側の方が撓みやすくなっていて、補助バルブ71を用いることで伸側減衰力の減衰特性をチューニングすることができる。緩衝器Dに発生させる減衰特性により補助バルブ71が不要であれば省略することができる。反対に、補助バルブ71を複数枚積層することも可能である。
続いて、伸側チャンバ12は、ピストン保持部材8における保持軸8aの外周に嵌合される筒状の装着部12aと、装着部12aの図3中下端外周に設けたフランジ部12bと、フランジ部12bの外周からピストン2側へ向けて伸びる摺接筒12cと、装着部12aの内周に設けた環状溝12dと、装着部12aの外周から環状溝12dに通じる切欠12eとを備えて構成されている。そして、伸側チャンバ12を保持軸8aに組み付けると、環状溝12dは保持軸8aに設けた圧側パイロットオリフィスPpに対向するようになっている。なお、伸側チャンパ12における装着部12aとカラー65との間には、伸側ストッパ67を介装してあるが、伸側ストッパ67を廃止して装着部12aをストッパとして機能させて伸側環状プレート66の移動下限を規制するようにしてもよい。ただし、伸側チャンバ12をピストン保持部材8の保持軸8aへ組みつけた際に、圧側パイロットオリフィスPpと環状溝12dとを対向させる位置へ調整する必要がある場合には、伸側ストッパ67を設けることで伸側チャンバ12のピストン保持部材8に対する位置を調節することができる。
この摺接筒12c内には、伸側スプールSeが収容されている。伸側スプールSeは、外周を摺接筒12cの内周に摺接させており、当該摺接筒12c内で軸方向へ移動することができるようになっている。伸側スプールSeは、環状のスプール本体13と、スプール本体13の図3中上端内周から立ち上がる環状突起14とを備えている。この環状突起14の内径は、伸側環状プレート66の外径よりも小径に設定されており、環状突起14が伸側環状プレート66の背面となる図3中下面に当接することができるようになっている。
そして、このように、伸側チャンバ12に伸側スプールSeを組み付け、当該伸側チャンバ12を保持軸8aに組み付けると、伸側リーフバルブVeの背面側である図3中下方側に伸側背圧室Ceが形成される。なお、スプール本体13の内径は、装着部12aの外径より大きくしているが、これを装着部12aの外周に摺接する径に設定して、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで封じるようにすることも可能である。
また、伸側チャンバ12の装着部12aの内周には、環状溝12dが設けられるとともに、装着部12aの外周から当該環状溝12dに通じる切欠12eとを備えているので、伸側チャンバ12を保持軸8aに組み付けると、環状溝12dは保持軸8aに設けた圧側パイロットオリフィスPpに対向して、伸側背圧室Ceが圧側パイロットオリフィスPpに通じるようになっている。
さらに、伸側チャンバ12には、フランジ部12bの外周から開口する圧側圧力導入通路Ipが設けられていて、圧側室R2を伸側背圧室Ce内へ通じさせている。伸側チャンバ12のフランジ部12bの図3中上端には、環状板15が積層され、この環状板15と伸側スプールSeにおけるスプール本体13との間に介装されたばね部材16によって当該環状板15がフランジ部12bへ押しつけられて圧側圧力導入通路Ipを閉塞するようになっている。なお、圧側圧力導入通路Ipは、通過液体の流れに対して抵抗を生じさせないように配慮されている。
この環状板15は、緩衝器Dの収縮作動時において、圧側室R2が圧縮されて圧力が高まると当該圧力によって押圧されてフランジ部12bから離座して圧側圧力導入通路Ipを開放し、伸側背圧室Ce内の圧力が圧側室R2より高くなる緩衝器Dの伸長作動時にはフランジ部12bに押しつけられて圧側圧力導入通路Ipを閉塞し、圧側室R2からの液体の流れのみを許容する圧側逆止弁Tpの逆止弁弁体として機能している。この圧側逆止弁Tpによって圧側圧力導入通路Ipが圧側室R2から伸側背圧室Ceへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。
ばね部材16は、環状板15をフランジ部12bに押し付ける役割を担って、逆止弁弁体である環状板15とともに圧側逆止弁Tpを構成するとともに、伸側スプールSeを伸側リーフバルブVeへ向けて附勢する役割をも担っている。伸側スプールSeをばね部材16で附勢することで、伸側リーフバルブVeが撓んで伸側スプールSeがピストン2から離間する図3中下方へ押し下げられた状態となってから、伸側リーフバルブVeの撓みが解消しても、ばね部材16によって附勢されているので、伸側スプールSeは伸側リーフバルブVeに追従して速やかに元の位置(図3に示す位置)へ戻ることができる。伸側スプールSeの附勢を別途のばね部材で附勢することも可能であるが、圧側逆止弁Tpとばね部材16を共用することができ部品点数を削減できるとともに構造が簡単となる利点がある。なお、伸側スプールSeの外径は、環状突起14の内径よりも大径に設定されていて、環状突起14が伸側環状プレート66に当接するようになっているので、伸側スプールSeは伸側背圧室Ceの圧力によって常に伸側リーフバルブVeへ向けて附勢される。
ピストン2の上方に積層される圧側リーフバルブVpは、図3に示すように、伸側リーフバルブVe同様に、ピストン保持部材8の保持軸8aの挿通を許容するため環状とされており、この例では、一枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板を積層して構成してもよい。そして、このように構成された圧側リーフバルブVpは、ピストン2の内周シート部2fに積層される圧側環状スペーサ60を介してピストン2の図3中下方に積層される。そして、このように構成された圧側リーフバルブVpは、ピストン2の内周シート部2fに積層される圧側環状スペーサ60を介してピストン2の図3中上方に積層される。また、圧側リーフバルブVpは、その外周に圧側弁座2cへ着座した際にオリフィスとして機能する切欠Opを備えており、カラー61の外周に摺動自在に装着されている。カラー61の外周には、圧側リーフバルブVpに積層される圧側環状プレート62が摺動自在に装着されている。なお、本実施の形態では、圧側環状プレート62の反圧側リーフバルブ側に圧側環状プレート62よりも外径が小径な環状の補助バルブ81が積層されており、この補助バルブ81もまたカラー61の外周に摺動自在に装着されている。圧側リーフバルブVp、圧側環状プレート62および補助バルブ81を積層した際の軸方向長さは、カラー61の軸方向長さよりも短くなるようにしてある。さらに、カラー61の図3中上方には、環状であって外径が補助バルブ81および圧側環状プレート62の内径よりも大径に設定される圧側ストッパ63が設けられており、この圧側ストッパ63の上方に圧側チャンバ11が積層される。よって、圧側リーフバルブVp、圧側環状プレート62および補助バルブ81は、軸部材としてのカラー61によってガイドされて圧側環状スペーサ60と圧側ストッパ63との間で軸方向となる図3中上下方向へ移動することができるようになっている。
そして、圧側リーフバルブVpは、圧側通路4側から圧力によって押圧されることで、外周が圧側環状プレート62とともに撓むとともに、圧側環状プレート62および補助バルブ81とともに全体がピストン2から後退することが可能とされている。圧側リーフバルブVp、圧側環状プレート62および補助バルブ81のピストン2からの後退量は、カラー61の軸方向長さによって設定される。この場合、カラー61が複数枚の環状板で構成されるので、環状板の積層枚数で調節可能であるが、カラー61を単一の環状板で構成してもよい。
前述したように、圧側リーフバルブVpは、ピストン2の内周シート部2fに積層される圧側環状スペーサ60を介してピストン2の図3中上方に積層されており、圧側リーフバルブVpに負荷が作用しない状態では、圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間に隙間が形成される。この隙間の図3中上下方向長さは、厚みの異なる圧側環状スペーサ60に交換するか、圧側環状スペーサ60の積層枚数を変更することによって調節することができる。なお、圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間の隙間は、内周シート部2fの高さを圧側弁座2cの高さよりも高くしておくことで、圧側環状スペーサ60を廃して圧側リーフバルブVpを直接に内周シート部2fへ積層することでも形成することができる。ただし、圧側環状スペーサ60を設けることで、前記隙間の長さの調節を容易に行うことができる。
また、圧側リーフバルブVpは、背面側となる反ピストン側から附勢手段によって附勢力が負荷されると撓むが、この附勢力が大きくなると圧側弁座2cに着座するようになって圧側通路4を閉塞するようになる。この状態では切欠Opのみで圧側通路4を伸側室R1に連通させることになる。
圧側環状プレート62は、圧側リーフバルブVpよりも撓み剛性が高くなっている。そのため、圧側環状プレート62の軸方向長さ(厚み)を圧側リーフバルブVpの軸方向長さ(厚み)より長くしてあるが、軸方向長さによって剛性を強くするだけでなく、圧側リーフバルブVpよりも高剛性の材料で圧側環状プレート62を形成するようにしてもよい。
ここで、圧側環状プレート62の内径は、ピストン2に設けた内周シート部2fの外径よりも小径に設定されている。圧側環状プレート62の外径は、圧側弁座2cの内径よりも大径に設定されている。そして、圧側環状プレート62が背面側から圧側背圧室Cp内の圧力と圧側スプールSpによって押圧されると、圧側環状プレート62が圧側リーフバルブVpを押し下げて撓ませるようになる。圧側リーフバルブVpが圧側弁座2cに着座するまで撓むと、圧側環状プレート62の内外径の前述のように設定されているため、圧側環状プレート62が内周シート部2fと圧側弁座2cとで支持される格好になるため、圧側背圧室Cp内の圧力と圧側スプールSpによる附勢力を圧側環状プレート62で受け止めるようになり、圧側リーフバルブVpのそれ以上の変形が抑制され、圧側リーフバルブVpに過負荷がかからないようになっている。また、補助バルブ81は、圧側リーフバルブVpおよび圧側環状プレート62よりも外径が小径に設定されている。そのため、圧側リーフバルブVpおよび圧側環状プレート62が圧側通路4の圧力で撓む場合に、補助バルブ81よりも外周側の方が撓みやすくなっていて、補助バルブ81を用いることで圧側減衰力の減衰特性をチューニングすることができる。緩衝器Dに発生させる減衰特性により補助バルブ81が不要であれば省略することができる。反対に、補助バルブ81を複数枚積層することも可能である。
続いて、圧側チャンバ11は、ピストン保持部材8における保持軸8aの外周に嵌合される筒状の装着部11aと、装着部11aの図3中上端外周に設けたフランジ部11bと、フランジ部11bの外周からピストン2側へ向けて伸びる摺接筒11cと、装着部11aの内周に設けた環状溝11dと、装着部11aの外周から環状溝11dに通じる切欠11eとを備えて構成されている。そして、圧側チャンバ11を保持軸8aに組み付けると、環状溝11dは保持軸8aに設けた伸側パイロットオリフィスPeに対向するようになっている。なお、圧側チャンパ11における装着部11aとカラー61との間には、圧側ストッパ63を介装してあるが、圧側ストッパ63を廃止して装着部11aをストッパとして機能させて圧側環状プレート62の移動上限を規制するようにしてもよい。ただし、圧側チャンバ11をピストン保持部材8の保持軸8aへ組みつけた際に、伸側パイロットオリフィスPeと環状溝11dとを対向させる位置へ調整する必要がある場合には、圧側ストッパ63を設けることで圧側チャンバ11のピストン保持部材8に対する位置を調節することができる。
この摺接筒11c内には、圧側スプールSpが収容されている。圧側スプールSpは、外周を摺接筒11cの内周に摺接させており、当該摺接筒11c内で軸方向へ移動することができるようになっている。圧側スプールSpは、環状のスプール本体17と、スプール本体17の図3中下端外周から立ち上がる環状突起18とを備えている。この環状突起18の内径は、圧側環状プレート62の外径よりも小径に設定されており、環状突起18が圧側環状プレート62の背面となる図3中上面に当接することができるようになっている。
そして、このように、圧側チャンバ11に圧側スプールSpを組み付け、当該圧側チャンバ11を保持軸8aに組み付けると、圧側リーフバルブVpの背面側である図3中上方側に圧側背圧室Cpが形成される。なお、スプール本体17の内径は、装着部11aの外径より大きくしているが、これを装着部11aの外周に摺接する径に設定して、圧側背圧室Cpを圧側スプールSpで封じるようにすることも可能である。
また、圧側チャンバ11の装着部11aの内周には、環状溝11dが設けられるとともに、装着部11aの外周から当該環状溝11dに通じる切欠11eとを備えており、伸側チャンバ11を保持軸8aに組み付けると、環状溝11dは保持軸8aに設けた伸側パイロットオリフィスPeに対向して、圧側背圧室Cpが伸側パイロットオリフィスPeに通じるようになっている。圧側背圧室Cpは、伸側パイロットオリフィスPeに通じることで、保持軸8aの縦孔8d内に形成した連通路24及び圧側パイロットオリフィスPpを通じて伸側背圧室Ceにも連通される。
さらに、圧側チャンバ11には、フランジ部11bの外周から開口する伸側圧力導入通路Ieが設けられており、伸側室R1を圧側背圧室Cp内へ通じさせている。圧側チャンバ11のフランジ部11bの図3中下端には、環状板19が積層され、この環状板19と圧側スプールSpにおけるスプール本体17との間に介装されたばね部材20によって当該環状板19がフランジ部11bへ押しつけられて伸側圧力導入通路Ieを閉塞するようになっている。なお、伸側圧力導入通路Ieは、通過液体の流れに対して抵抗を生じさせないように配慮されている。
この環状板19は、緩衝器Dの伸長作動時において、伸側室R1が圧縮されて圧力が高まると当該圧力によって押圧されてフランジ部11bから離座して伸側圧力導入通路Ieを開放し、圧側背圧室Cp内の圧力が伸側室R1より高くなる緩衝器Dの収縮作動時にはフランジ部11bに押しつけられて伸側圧力導入通路Ieを閉塞し、伸側室R1からの液体の流れのみを許容する伸側逆止弁Teの逆止弁弁体として機能している。この伸側逆止弁Teによって伸側圧力導入通路Ieが伸側室R1から圧側背圧室Cpへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定される。
ここで、前述したように、連通路24は、ピストン保持部材8に設けた環状溝8e、ポート8f及び横孔8gを通じて収容部L内に連通されている。よって、伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpは、伸側パイロットオリフィスPe、圧側パイロットオリフィスPp及び連通路24を介して互いが連通されるだけでなく、伸側圧力導入通路Ieを介して伸側室R1に連通され、圧側圧力導入通路Ipを介して圧側室R2に連通され、さらには、ポート8f及び横孔8gによって収容部Lへも連通されている。
戻って、ばね部材20は、環状板19をフランジ部11bに押し付ける役割を担って、逆止弁弁体である環状板19とともに伸側逆止弁Teを構成するとともに、圧側スプールSpを圧側リーフバルブVpへ向けて附勢する役割をも担っている。圧側スプールSpをばね部材20で附勢することで、圧側リーフバルブ弁体Vpが撓んで圧側スプールSpがピストン2から離間する図3中上方へ押し上げられた状態となってから、圧側リーフバルブVpの撓みが解消しても、ばね部材20によって附勢されているので、圧側スプールSpは圧側リーフバルブVpに追従して速やかに元の位置(図3に示す位置)へ戻ることができる。圧側スプールSpの附勢を別途のばね部材で附勢することも可能であるが、伸側逆止弁Teとばね部材20を共用することができ部品点数を削減できるとともに構造が簡単となる利点がある。なお、圧側スプールSpの外径は、環状突起18の内径よりも大径に設定されていて、環状突起18が圧側環状プレート62に当接するようになっているので、圧側スプールSpは圧側背圧室Cpの圧力によって常に圧側リーフバルブVpへ向けて附勢されるので、圧側スプールSpのみを附勢することを目的としたばね部材であれば設置をしなくともよい。
そして、伸側スプールSeは、伸側背圧室Ceの圧力を受けて伸側環状プレート66を介して、伸側リーフバルブVeをピストン2へ向けて附勢するが、伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積は、伸側スプールSeの外径を直径とする円の面積から環状突起14の内径を直径とする円の面積の差分となる。同様に、圧側スプールSpは、圧側背圧室Cpの圧力を受けて圧側環状プレート62を介して、圧側リーフバルブVpをピストン2へ向けて附勢するが、圧側スプールSpの圧側背圧室Cpの圧力を受ける受圧面積は、圧側スプールSpの外径を直径とする円の面積から環状突起18の内径を直径とする円の面積の差分となる。そして、この実施の形態の液圧緩衝器Dの場合、伸側スプールSeの受圧面積は、圧側スプールSpの受圧面積よりも大きくしてある。
伸側環状プレート66の背面には伸側スプールSeの環状突起14が当接するとともに、伸側環状プレート66がカラー65の外周に装着されているので、伸側環状プレート66に伸側背圧室Ceの圧力が直接的に作用する受圧面積は、環状突起14の内径を直径とする円の面積からカラー65の外径を直径とする円の面積を除いた面積となる。よって、伸側スプールSeの外径を直径とする円の面積からカラー65の外径を直径とする円の面積を除いた面積に伸側背圧室Ceの圧力を乗じた力を伸側荷重として、この伸側荷重によって伸側リーフバルブVeがピストン2へ向けて附勢される。なお、伸側環状プレート66を廃止して伸側リーフバルブVeの背面に環状突起14を直接当接させることも可能であり、この場合も、伸側リーフバルブVeがカラー65の外周に装着されているので、伸側環状プレート66を設ける場合と同じ伸側荷重が伸側リーフバルブVeに作用する。
他方、圧側環状プレート62の背面には圧側スプールSpの環状突起18が当接するとともに、圧側環状プレート62がカラー61の外周に装着されているので、圧側環状プレート62に圧側背圧室Cpの圧力が直接的に作用する受圧面積は、環状突起18の内径を直径とする円の面積からカラー61の外径を直径とする円の面積を除いた面積となる。よって、圧側スプールSpの外径を直径とする円の面積からカラー61の外径を直径とする円の面積を除いた面積に圧側背圧室Cpの圧力を乗じた力を圧側荷重として、この圧側荷重によって圧側リーフバルブVpがピストン2へ向けて附勢される。なお、圧側環状プレート62を廃止して圧側リーフバルブVpの背面に環状突起18を直接当接させることも可能であり、この場合も、圧側リーフバルブVpがカラー61の外周に装着されているので、圧側環状プレート62を設ける場合と同じ圧側荷重が圧側リーフバルブVpに作用する。
したがって、伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Cpの圧力が等圧である場合、伸側リーフバルブVeが伸側背圧室Ceから受ける荷重である伸側荷重は、圧側リーフバルブVpが圧側背圧室Cpから受ける荷重である圧側荷重よりも大きくなるように設定されている。なお、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで閉鎖して伸側背圧室Ceの圧力を伸側環状プレート66に直接に作用させない場合には、伸側荷重は伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積のみによって決まり、圧側も同様に、圧側背圧室Cpを圧側スプールSpで閉鎖して圧側背圧室Cpの圧力を圧側環状プレート62に直接に作用させない場合には、圧側荷重は圧側スプールSpの圧側背圧室Cpの圧力を受ける受圧面積のみによって決まる。伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Cpの圧力が等圧である場合に、伸側リーフバルブVeが伸側背圧室Ceから受ける伸側荷重が、圧側リーフバルブVpが圧側背圧室Cpから受ける圧側荷重よりも大きくなるように設定されればよいので、伸側リーフバルブVeにも圧側リーフバルブVpにも直接背圧室Ce,Cpから圧力を作用させない場合には、伸側スプールSeの受圧面積を圧側スプールSpの受圧面積より大きくすれば足りる。前記したように伸側環状プレート66及び圧側環状プレート62を廃止する場合、伸側背圧室Ceの圧力を伸側リーフバルブVeに直接に作用させてもよし、圧側背圧室Cpの圧力を圧側リーフバルブVpに直接作用させることができるし、伸側背圧室Ceを伸側スプールSeで閉鎖する構造では伸側スプールSeを伸側リーフバルブVeへ当接させることができ、圧側背圧室Cpを圧側スプールSpで閉鎖する構造では圧側スプールSpを圧側リーフバルブVpへ当接させることができる。伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpをスプールで閉鎖するか否かは、任意に選択することができる。本発明では、伸側スプールSeと圧側スプールSpを用いているので、伸側リーフバルブVeに実質的に伸側背圧室Ceの圧力を作用させる受圧面積を伸側リーフバルブVeのみの受圧面積よりも大きく設定することができる。このように、圧側スプールSpと伸側スプールSeの受圧面積差を大きく設定することができるので、伸側荷重と圧側荷重に大きな差を持たせることができ伸側荷重と圧側荷重の設定幅に非常に高い自由度を与えることができる。
そして、緩衝器Dの伸長作動時には、伸側リーフバルブVeは、伸側通路3を通じて伸側室R1からの圧力を受けるとともに、前記伸側荷重を背面側から受ける。伸側リーフバルブVeは、伸側室R1の圧力によって押し下げられる力より伸側荷重の方が上回って伸側弁座2dへ当接するまで撓むと、伸側通路3を閉塞する。伸側リーフバルブVeが緩衝器Dの伸長作動時に或るピストン速度で伸側通路3を閉塞する際の伸側荷重は、前記受圧面積、伸側リーフバルブVeおよび伸側環状プレート66の撓み剛性等によって設定することができる。圧側リーフバルブVpについても伸側リーフバルブVeと同様に、圧側リーフバルブVpが緩衝器Dの収縮作動時に或るピストン速度で圧側通路4を閉塞する際の圧側荷重は、前記受圧面積、圧側リーフバルブVpおよび圧側環状プレート62の撓み剛性等によって設定することができる。
続いて、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpを上流として、伸側排出通路Ee及び圧側排出通路Epを下流として、調整通路Pcでこれらを連通しており、電磁圧力制御弁6は、この調整通路Pcの途中に設けられていて、上流の伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpの圧力を制御できるようになっている。よって、電磁圧力制御弁6によって伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cp内の圧力を制御するに際して、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cp内の圧力が同じであっても伸側荷重を圧側荷重よりも大きくすることができる。したがって、大きな伸側荷重が要求される場合に伸側背圧室Ce内の圧力を然程大きくする必要がなくなるため、伸側の減衰力を大きくしたい場合にあっても、電磁圧力制御弁6で制御すべき最大圧力を低くすることができるのである。
なお、本実施の形態では、伸側スプールSeは、内周が伸側チャンバ12の装着部12aの外周に摺接しておらず、伸側背圧室Ceの圧力が伸側リーフバルブVeの背面側であって環状突起14の当接部位の内側にも作用して当該伸側リーフバルブVeを附勢するので、伸側荷重の設定に当たり、伸側背圧室Ceの圧力で伸側リーフバルブVeを直接に附勢する荷重を加味して設定するとよい。圧側スプールSpも内周が圧側チャンバ11の装着部11aの外周に摺接しておらず、圧側背圧室Cpの圧力が圧側リーフバルブVpの背面側であって環状突起18の当接部位の内側にも作用して当該圧側リーフバルブVpを附勢するので、圧側荷重の設定に当たり、圧側背圧室Cpの圧力で圧側リーフバルブVpを直接に附勢する荷重を加味して設定するとよい。
転じて、電磁圧力制御弁6は、この実施の形態では、非通電時に調節通路Pcを閉じるとともに通電時に圧力制御を行うよう設定され、また、調整通路Pcの途中には、電磁圧力制御弁6を迂回するフェール弁FVが設けられている。
電磁圧力制御弁6は、図1及び図2に示すように、弁収容筒30aと制御弁弁座30dとを備えた弁座部材30と、制御弁弁座30dに離着座する電磁弁弁体31と、電磁弁弁体31に推力を与えこれを軸方向に駆動するソレノイドSolとを備えて構成されている。
そして、弁座部材30は、ピストン保持部材8のソケット8c内に嵌合されて、フランジ8bの図2中上端に積層される環状のバルブハウジング32の内周に弁収容筒30aを挿入することで径方向へ位置決められつつ、収容部L内に収容されている。
バルブハウジング32は、図2に示すように、環状であって、図2中上端に設けた環状窓32aと、環状窓32aから開口して図2中下端に通じるポート32bと、図2中上端内周から開口してポート32bに通じる切欠溝32cと、外周に設けられて軸方向に沿って設けた溝32dと、前記環状窓32aの外周を囲む環状のフェール弁弁座32eとを備えて構成されている。
このバルブハウジング32をソケット8c内に挿入してフランジ8bの図2中上端に積層すると、ポート32bがポート8fのフランジ8bの上端に面する開口に対向してポート32b及び切欠溝32cがポート8fに連通され、さらに、溝32dがフランジ8cに設けた溝8jに対向してこれらが連通されるようになっている。
よって、ポート32b及び切欠溝32cは、環状溝8e、ポート8f及び横孔8gを通じて連通路24に連通され、さらには、この連通路24、伸側パイロットオリフィスPe及び圧側パイロットオリフィスPpを介して伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpに連通されている。また、溝32dは、溝8jを通じてセパレータ23内、逆止弁25で形成される伸側排出通路Eeを通じて圧側室R2に連通されるとともに、透孔9c、凹部8k、貫通孔8m及び逆止弁22によって形成される圧側排出通路Epを通じて伸側室R1に連通されている。
バルブハウジング32内には、筒状の弁座部材30における弁収容筒30aが収容されている。この弁座部材30は、有底筒状であって図2中上端外周にフランジ30bを備えた弁収容筒30aと、弁収容筒30aの側方から開口して内部へ通じる透孔30cと、弁収容筒30aの図2中上端に軸方向へ向けて突出する環状の制御弁弁座30dとを備えて構成されている。
また、弁座部材30の弁収容筒30aの外周には、環状のリーフバルブであるフェール弁弁体33が装着されており、弁収容筒30aをバルブハウジング32に挿入して弁座部材30をバルブハウジング32に組み付けると、フェール弁弁体33は、内周が弁座部材30におけるフランジ30bとバルブハウジング32の図2中上端内周とで挟持されて固定されるともに、外周側がバルブハウジングに設けた環状のフェール弁弁座32eに初期撓みが与えられた状態で着座し、環状窓32aを閉塞する。このフェール弁弁体33は、ポート32bを通じて環状窓32a内に作用する圧力が開弁圧に達すると撓んで、環状窓32aを開放してポート32bを伸側排出通路Ee及び圧側排出通路Epへ連通させるようになっており、このフェール弁弁体33とフェール弁弁座32eとでフェール弁FVを形成している。
また、弁収容筒30aをバルブハウジング32に挿入して弁座部材30をバルブハウジング32に組み付けると、バルブハウジング32に設けた切欠溝32cが弁収容筒30aに設けた透孔30cが対向して、伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpがポート32bを通じて弁収容筒30a内に連通される。
弁座部材30の図1中上方には、環状であってフランジ30bの図1中上端に当接する弁固定部材35が積層されており、さらに、弁固定部材35の図1中上方には電磁弁収容筒9内に収容されるソレノイドSolが配置されていて、電磁弁収容筒9にピストン保持部材8を螺着して一体化する際に、バルブハウジング32、フェール弁弁体33、弁座部材30、弁固定部材35及びソレノイドSolが電磁弁収容筒9とピストン保持部材8に挟持されて固定される。なお、弁固定部材35には、弁座部材30のフランジ30bに当接しても、弁固定部材35の内周側の空間が弁座部材30の外周側の空間に連通できるように切欠溝35aが設けられている。この連通は、切欠溝35aではなく、ポートなどの孔で行うようにしてもよい。
ソレノイドSolは、巻線37と巻線37に通電するハーネスHとをモールド樹脂で一体化した有頂筒状のモールドステータ36と、有頂筒状であってモールドステータ36の内周に嵌合される第一固定鉄心38と、モールドステータ36の図1中下端に積層される環状の第二固定鉄心39と、第一固定鉄心38と第二固定鉄心39との間に介装されて磁気的な空隙を形成するフィラーリング40と、第一固定鉄心38と第二固定鉄心39の内周側に軸方向移動可能に配置された筒状の可動鉄心41と、可動鉄心41の内周に固定されるシャフト42とを備えて構成されており、巻線37に通電することによって、可動鉄心41を吸引してシャフト42に図1中下方向きの推力を与えることができるようになっている。
さらに、弁座部材30内には、電磁弁弁体31が摺動自在に挿入されている。電磁弁弁体31は、詳しくは、弁座部材30における弁収容筒30a内に摺動自在に挿入される小径部31aと、小径部31aの図2中上方側である反弁座部材側に設けられて弁収容筒30aには挿入されない大径部31bと、小径部31aと大径部31bとの間に設けた環状の凹部31cと、大径部31bの反弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部31dと、電磁弁弁体31の先端から後端へ貫通する連絡路31e、連絡路31eの途中に設けたオリフィス31fとを備えて構成されている。
また、電磁弁弁体31にあっては、前述のように、凹部31cを境にして反弁座部材側の外径を小径部31aより大径として大径部31bが形成されており、この大径部31bの図2中下端に制御弁弁座30dに対向する着座部31gを備え、電磁弁弁体31が弁座部材30に対して軸方向へ移動することで着座部31gが制御弁弁座30dに離着座するようになっている。つまり、電磁弁弁体31と弁座部材30とを備えて電磁圧力制御弁6が構成されており、着座部31gが制御弁弁座30dに着座すると電磁圧力制御弁6が閉弁するようになっている。
さらに、弁座部材30のフランジ30bとばね受部31dとの間には、電磁弁弁体31を弁座部材30から離間する方向へ附勢するコイルばね34が介装されており、このコイルばね34の附勢力に対して対抗する推力を発揮するソレノイドSolが設けられている。したがって、電磁弁弁体31は、コイルばね34によって常に弁座部材30から離間する方向へ附勢されており、ソレノイドSolからのコイルばね34に対抗する推力が作用しないと、弁座部材30から最も離間する位置に位置決められる。なお、この場合、コイルばね34を利用して、電磁弁弁体31を弁座部材30から離間させる方向へ附勢するようにしているが、コイルばね34以外にも附勢力を発揮することができる弾性体を使用することができる。
そして、電磁弁弁体31は、弁座部材30に対して最も離間すると、透孔30cに小径部31aを対向させて透孔30cを閉塞し、ソレノイドSolに通電して弁座部材30に対して最も離間する位置から弁座部材側へ所定量移動させると、常に、凹部31cを透孔30cに対向させて透孔30cを開放するようになっている。
電磁弁弁体31が透孔30cを開放し、着座部31gが制御弁弁座30dから離座すると透孔30cが電磁弁弁体31の凹部31c及び弁固定部材35に設けた切欠溝35aを通じて伸側排出通路Ee及び圧側排出通路Epに連通されるようになっており、ソレノイドSolの推力を調節することで、電磁弁弁体31を弁座部材30側へ附勢する力をコントロールすることができ、電磁圧力制御弁6の上流の圧力の作用とコイルばね34による電磁弁弁体31を図2中において押し上げる力がソレノイドSolによる電磁弁弁体31を押し下げる力を上回ると電磁圧力制御弁6は開弁して、電磁弁圧力制御弁6の上流側の圧力をソレノイドSolの推力に応じて制御することができる。そして、電磁圧力制御弁6の上流は、調整通路Pcを介して伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpに通じているので、この電磁圧力制御弁6によって伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpの圧力を制御することができる。また、電磁圧力制御弁6の下流は、伸側排出通路Ee及び圧側排出通路Epに通じており、電磁圧力制御弁6を通過した液体は、液圧緩衝器Dの伸長作動時には低圧側の圧側室R2へ、液圧緩衝器Dの収縮作動時には低圧側の伸側室R1へ排出されることになる。よって、調整通路Pcは、前記した環状溝8e、ポート8f、横孔8g、ポート32b、切欠溝32c、収容部Lの一部、溝32dによって形成される。
また、電磁圧力制御弁6は、ソレノイドSolへ通電できないフェール時には、弁座部材30における透孔30cを電磁弁弁体31における小径部31aで閉塞する遮断ポジションを備えて、圧力制御弁としてだけではなく、開閉弁としても機能する。フェール弁FVは、ポート32bに通じる環状窓32aを開閉するようになっていて、その開弁圧が電磁圧力制御弁6の制御可能な上限圧を超える圧力に設定されており、電磁圧力制御弁6を迂回してポート32bを伸側排出通路Ee及び圧側排出通路Epに連通することができるようになっているので、電磁圧力制御弁6の上流側の圧力が制御上限圧を超えるような場合、フェール弁FVが開弁して伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpの圧力をフェール弁FVの開弁圧に制御できるようになっている。したがって、たとえば、フェール時において電磁圧力制御弁6が遮断ポジションをとっている場合には、伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Cpの圧力はフェール弁FVにより制御されることになる。
さらに、電磁弁弁体31は、弁座部材30の弁収容筒30a内に挿入されると、弁収容筒30a内であって透孔30cより先端側に空間Kを形成する。この空間Kは、電磁弁弁体31に設けた連絡路31e及びオリフィス31fを介して電磁弁弁体外に連通されている。これにより、電磁弁弁体31が弁座部材30に対して図2中上下方向である軸方向に移動する際、前記空間Kがダッシュポットとして機能して、電磁弁弁体31の急峻な変位を抑制するとともに、電磁弁弁体31の振動的な動きを抑制することができる。
つづいて、緩衝器Dの作動について説明する。まず、緩衝器Dの減衰力の減衰力特性をソフトにする、つまり、附勢手段による伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpを附勢する附勢力を小さくし、減衰係数を低くする場合について説明する。減衰力特性をソフトとするには、ソレノイドSolへ通電し電磁圧力制御弁6が通過液体に与える抵抗を小さくし、伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpがそれぞれ対応する伸側弁座2d及び圧側弁座2cへ着座しないように附勢手段が与える附勢力を制御する。
この状態では、伸側リーフバルブVeが附勢手段による附勢力で撓んでも伸側リーフバルブVeが伸側弁座2dに着座せずに両者間には隙間が形成される状態であり、圧側リーフバルブVpについてもしかりで、圧側リーフバルブVpが附勢手段による附勢力で撓んでも圧側リーフバルブVpが圧側弁座2cに着座せずに両者間には隙間が形成される状態となる。
この状態で、緩衝器Dが伸長してピストン2が図1中上方へ移動すると、圧縮される伸側室R1から拡大される圧側室R2へ液体が伸側リーフバルブVeを押して撓ませて伸側通路3を通過して移動する。伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間には隙間が形成されており、伸側リーフバルブVeが伸側弁座2dに着座して切欠71aのみで伸側通路3と圧側室R2とを連通する状態に比較して、流路面積が大きく確保される。
また、緩衝器Dの伸長に対して上昇する伸側室R1内の圧力によって伸側リーフバルブVeは、カラー65の外周を摺動することができるため、伸側環状プレート66および補助バルブ71とともにピストン2から後退して伸側弁座2dとの間の隙間を大きくする。この伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間の隙間量は、伸側通路3側から受ける伸側室R1の圧力によって伸側リーフバルブVeをピストン2から後退させようとする力と、前記附勢手段による伸側荷重とのバランスによって決まることになる。
ここで、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減させるためには、伸側リーフバルブVeの剛性をなるべく低くする必要があるが、伸側リーフバルブVeには、附勢手段による大きな伸側荷重にも耐えなくてはならず剛性を低くするにも限界がある。これに対して、本発明の緩衝器Dでは、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間に隙間が形成されており、かつ、伸側リーフバルブVeの全体がピストン2から後退することができるため、伸側リーフバルブVeに要求される剛性を確保しつつも、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間に大きな流路面積を確保することができる。このように、伸側リーフバルブVeの耐久性の問題を解決することができるため、緩衝器Dは、図4に示すように、線Aで示す従来の緩衝器が発生する減衰力に対し線Bで示すように、減衰力特性をソフトにした際に極小さな減衰係数の傾きを実現することができ、減衰力を大きく低減させることができるのである。
つづいて、さらに緩衝器Dの伸長速度が上昇して伸側室R1内の圧力が高くなると、伸側リーフバルブVeのピストン2からの後退量が増加し、補助バルブ71が伸側ストッパ67に当接するようなるとそれ以上の後退が規制されるため、伸側ストッパ67で内周の移動が規制されて、ここを支点に伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート66および補助バルブ71の外周が撓むようになる。その撓み量は、伸側通路3側から受ける伸側室R1の圧力によって伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート66および補助バルブ71を撓ませようとする力と、当該撓み量に応じて伸側リーフバルブVe、伸側環状プレート66および補助バルブ71が自ら発するばね反力で伸側弁座2d側へ戻ろうとする力及び前記附勢手段による伸側荷重とがバランスするように撓んで伸側通路3を開放することになる。
また、伸側室R1内の液体は、伸側逆止弁Teを押し開いて伸側圧力導入通路Ieを通過し、調整通路Pcへ流れる。調整通路Pcを通過した液体は、逆止弁25を押し開いて伸側排出通路Eeを介して低圧側の圧側室R2へ排出される。なお、伸側パイロットオリフィスPeは、液体の通過の際に抵抗を与えて圧力損失をもたらし、液体が流れている状態において調整通路Pcの下流では伸側室R1よりも低圧となるため、圧側排出通路Epに設けた逆止弁22は開かず閉塞されたままとなる。
伸側圧力導入通路Ieは、圧側背圧室Cpに通じるだけでなく、連通路24を介して伸側背圧室Ceに通じているが、圧側圧力導入通路Ipが圧側逆止弁Tpによって閉塞されるため、緩衝器Dの伸長作動時において伸側圧力室Ce内の圧力を圧側室R2よりも高くすることができる。なお、圧側背圧室Cpの圧力は、低圧側の圧側室R2よりも高くなるが、液体の流れが生じない圧側通路4を閉塞する圧側リーフバルブVpを附勢するだけであるから不都合はない。
調整通路Pcには、前記したように電磁圧力制御弁6が設けてあり、電磁圧力制御弁6のソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、伸側背圧室Ce内の圧力を調整して伸側荷重を所望の荷重に制御することができる。以上により、電磁圧力制御弁6によって伸側リーフバルブVeの開度を制御することができ、これによって、緩衝器Dの伸長作動を行う際の伸側減衰力を制御することができる。
逆に、緩衝器Dが収縮してピストン2が図1中下方へ移動すると、圧縮される圧側室R2から拡大される伸側室R1へ液体が圧側リーフバルブVpを押して撓ませて圧側通路4を通過して移動する。圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間には隙間が形成されており、圧側リーフバルブVpが圧側弁座2cに着座して切欠81aのみで圧側通路4と伸側室R1とを連通する状態に比較して、流路面積が大きく確保される。
また、緩衝器Dの収縮に対して上昇する圧側室R2内の圧力によって圧側リーフバルブVpは、カラー61の外周を摺動することができるため、圧側環状プレート62および補助バルブ81とともにピストン2から後退して圧側弁座2cとの間の隙間を大きくする。この圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間の隙間量は、圧側通路4側から受ける圧側室R2の圧力によって圧側リーフバルブVpをピストン2から後退させようとする力と、前記附勢手段による圧側荷重とのバランスによって決まることになる。
ここで、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減させるためには、圧側リーフバルブVpの剛性をなるべく低くする必要があるが、伸側リーフバルブVe同様に圧側リーフバルブVpには、附勢手段による大きな圧側荷重にも耐えなくてはならず剛性を低くするにも限界がある。これに対して、本発明の緩衝器Dでは、圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間に隙間が形成されており、かつ、圧側リーフバルブVpの全体がピストン2から後退することができるため、圧側リーフバルブVpに要求される剛性を確保しつつも、圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間に大きな流路面積を確保することができる。このように、圧側リーフバルブVpの耐久性の問題を解決することができるため、緩衝器Dは、図4に示すように、線Cで示す従来の緩衝器が発生する減衰力に対し線Dで示すように、減衰力特性をソフトにした際に極小さな減衰係数の傾きを実現することができ、減衰力を大きく低減させることができるのである。
つづいて、さらに緩衝器Dの収縮速度が上昇して圧側室R2内の圧力が高くなると、圧側リーフバルブVpのピストン2からの後退量が増加し、補助バルブ81が圧側ストッパ63に当接するようなるとそれ以上の後退が規制されるため、圧側ストッパ63で内周の移動が規制されて、ここを支点に圧側リーフバルブVp、圧側環状プレート62および補助バルブ81の外周が撓むようになる。その撓み量は、圧側通路4側から受ける圧側室R2の圧力によって圧側リーフバルブVp、圧側環状プレート62および補助バルブ81を撓ませようとする力と、当該撓み量に応じて圧側リーフバルブVp、圧側環状プレート62および補助バルブ81が自ら発するばね反力で圧側弁座2c側へ戻ろうとする力及び前記附勢手段による圧側荷重とがバランスするように撓んで圧側通路4を開放することになる。
また、圧側室R2内の液体は、圧側逆止弁Tpを押し開いて圧側圧力導入通路Ipを通過し、調整通路Pcへ流れる。調整通路Pcを通過した液体は、逆止弁22を押し開いて圧側排出通路Epを介して低圧側の伸側室R1へ排出される。なお、圧側パイロットオリフィスPpは、液体の通過の際に抵抗を与えて圧力損失をもたらすので、液体が流れている状態において調整通路Pcの下流では、圧側室R2よりも低圧となるため、伸側排出通路Eeに設けた逆止弁25は開かず閉塞されたままとなる。
圧側圧力導入通路Ipは、伸側背圧室Ceに通じるだけでなく、連通路24を介して圧側背圧室Cpに通じているが、伸側圧力導入通路Ieが伸側逆止弁Teによって閉塞されるため、緩衝器Dの収縮作動時において圧側圧力室Cp内の圧力を伸側室R1よりも高くすることができる。なお、伸側背圧室Ceの圧力は、低圧側の伸側室R1よりも高くなるが、液体の流れが生じない伸側通路3を閉塞する伸側リーフバルブVeを附勢するだけであるから不都合はない。
調整通路Pcには、前記したように電磁圧力制御弁6が設けてあり、電磁圧力制御弁6のソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、圧側背圧室Cp内の圧力を調整して圧側荷重を所望の荷重に制御することができる。以上により、電磁圧力制御弁6によって圧側リーフバルブVpの開度を制御することができ、これによって、緩衝器Dの収縮作動を行う際の圧側減衰力を制御することができる。
続いて、緩衝器Dの減衰力の減衰力特性をハードにする、つまり、附勢手段による伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpを附勢する附勢力を大きくし、減衰係数を高くする場合について説明する。減衰力特性をハードとするには、ソレノイドSolへ通電し電磁圧力制御弁6が通過液体に与える抵抗を大きくし、伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpがそれぞれ対応する伸側弁座2d及び圧側弁座2cに着座するように附勢手段が与える附勢力を制御する。
この状態では、伸側リーフバルブVeが附勢手段によって撓んで伸側弁座2dに着座して、両者間には隙間が形成されない状態であり、圧側リーフバルブVpについてもしかりで、圧側リーフバルブVpが附勢手段によって撓んで圧側リーフバルブVpが圧側弁座2cに着座して、両者間には隙間が形成されない状態となる。
そして、緩衝器Dが伸長してピストン2が図1中上方へ移動し、かつ、ピストン速度が低い場合では、伸側リーフバルブVeが伸側通路3から伸側室R1の圧力を受けても伸側弁座2dから離座せず、調整通路Pcを除くほか切欠Oeのみで伸側室R1を圧側室R2に連通する状態となる。すると、緩衝器Dは、伸側通路3を通過する液体の流れに対して主としてオリフィスとして機能する切欠Oeで抵抗を与えることになり、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間に隙間を形成する状態で発生する減衰力に比較して大きな減衰力を発揮することができる。
他方、ピストン速度が高くなり、伸側リーフバルブVeに伸側通路3を介して作用する伸側室R1の圧力が上昇し、この伸側室R1の圧力による伸側リーフバルブVeを伸側弁座2dから離座させる方向の力が附勢手段の附勢力を上回ると、伸側リーフバルブVeは、ピストン2から全体が後退して伸側環状プレート66、補助バルブ71及び伸側スプールSeを図3中下方へ押し下げて伸側弁座2dから離座することになる。しかしながら、附勢手段による附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、伸側リーフバルブVeのピストン2から後退量が小さくなる。さらに、ピストン速度が高くなって補助バルブ71が伸側ストッパ67に当接するようになると、伸側リーフバルブVeは、伸側環状プレート66および補助バルブ71とともに撓んで伸側スプールSeを図3中下方へ押し下げて、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dの間の流路面積を拡大させる。しかしながら、附勢手段による附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dの間の流路面積は、減衰力特性をソフトにした場合に比較して小さくなる。よって、緩衝器Dは、図4中線Eに示すように、ピストン速度が同じであっても、ハード時にはソフト時に比較して高い減衰力を発揮することになる。
伸側室R1内の液体は、減衰力特性とソフトにする場合と同様に、伸側逆止弁Teを押し開いて伸側圧力導入通路Ieを通過し、調整通路Pcにも流れることになる。調整通路Pcに設けた電磁圧力制御弁6で調整通路Pcの上流側の圧力を制御することで、ソフト時と同様に、伸側背圧室Ce内の圧力を調整して伸側荷重を所望の荷重に制御することができ、伸側リーフバルブVeの開度を制御することができ、これによって、ハード時においても緩衝器Dの伸長作動を行う際の伸側減衰力を制御することができる。
次に、緩衝器Dが収縮してピストン2が図1中下方へ移動し、かつ、ピストン速度が低い場合では、圧側リーフバルブVpが圧側通路4から圧側室R2の圧力を受けても圧側弁座2cから離座せず、調整通路Pcを除くほか切欠Opのみで圧側室R2を伸側室R1に連通する状態となる。すると、緩衝器Dは、圧側通路4を通過する液体の流れに対して主としてオリフィスとして機能する切欠Opで抵抗を与えることになり、圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間に隙間を形成する状態で発生する減衰力に比較して大きな減衰力を発揮することができる。
他方、ピストン速度が高くなり、圧側リーフバルブVpに圧側通路4を介して作用する圧側室R2の圧力が上昇し、この圧側室R2の圧力による圧側リーフバルブVpを圧側弁座2cから離座させる方向の力が附勢手段の附勢力を上回ると、圧側リーフバルブVpは、ピストン2から全体が後退して圧側環状プレート62、補助バルブ81及び圧側スプールSpを図3中上方へ押し上げて圧側弁座2cから離座することになる。しかしながら、附勢手段による附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、圧側リーフバルブVpのピストン2から後退量が小さくなる。さらに、ピストン速度が高くなって補助バルブ81が圧側ストッパ63に当接するようになると、圧側リーフバルブVpは、圧側環状プレート62および補助バルブ81とともに撓んで圧側スプールSpを図3中上方へ押し上げて、圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cの間の流路面積を拡大させる。しかしながら、附勢手段による附勢力が減衰力特性をソフトにしている状況に比して大きいため、圧側リーフバルブVeと圧側弁座2cの間の流路面積は、減衰力特性をソフトにした場合に比較して小さくなる。よって、緩衝器Dは、図4中線Fに示すように、ピストン速度が同じであっても、ハード時にはソフト時に比較して高い減衰力を発揮することになる。
圧側室R1内の液体は、減衰力特性をソフトにする場合と同様に、圧側逆止弁Tpを押し開いて圧側圧力導入通路Ipを通過し、調整通路Pcにも流れることになる。調整通路Pcに設けた電磁圧力制御弁6で調整通路Pcの上流側の圧力を制御することで、ソフト時と同様に、圧側背圧室Cp内の圧力を調整して圧側荷重を所望の荷重に制御することができ、圧側リーフバルブVpの開度を制御することができ、これによって、ハード時においても緩衝器Dの収縮作動を行う際の圧側減衰力を制御することができる。
このように、本発明の減衰バルブ及び緩衝器Dにあっては、リーフバルブVe,Vpと各弁座2c,2dとの間に隙間を設け、かつ、リーフバルブVe,Vpの全体がピストン2から軸方向に後退することができるので、リーフバルブVe,Vpの剛性を確保しつつも、固定オリフィスを用いた従来の減衰バルブ及び緩衝器に比較して流路面積を大きくとることができる。したがって、本発明の減衰バルブ及び緩衝器Dによれば、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減することができる。また、ハード時にはリーフバルブVe,Vpを各弁座2c,2dに着座させることができるので、減衰バルブ及び緩衝器Dでは、減衰力可変幅も確保することができる。
よって、本発明の減衰バルブ及び緩衝器によれば、減衰力特性をソフトにした際の減衰力を低減することができるとともに、減衰力調整幅を拡大することが可能となる。
また、本実施の形態の緩衝器Dの減衰力特性をソフトからハードへ切り替える場合、伸長作動時には伸側背圧室Ce内の圧力上昇によって伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間の隙間が徐々に小さくなって伸側リーフバルブVeが伸側弁座2dに着座するようになり、収縮作動時には圧側背圧室Cp内の圧力上昇によって圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間の隙間が徐々に小さくなって圧側リーフバルブVpが圧側弁座2cに着座するようになる。反対に、本実施の形態の緩衝器Dの減衰力特性をハードからソフトへ切り替える場合、伸長作動時には伸側圧力室Ce内の圧力減少によって伸側リーフバルブVeと伸側弁座2dとの間の隙間が徐々に大きくなるようになり、収縮作動時には圧側背圧室Cp内の圧力減少によって圧側リーフバルブVpと圧側弁座2cとの間の隙間が徐々に大きくなる。そのため、緩衝器Dの減衰力特性をソフトからハードへ、或いは、ハードからソフトへ切り替える際に、緩衝器Dの減衰力特性の急変が緩和される。この緩衝器Dを車両へ適用すると、減衰力特性の急変が緩和されるので、搭乗者へ減衰力特性の切換り時にショックを知覚させることがなく、車両における乗り心地を向上させることができる。
伸側リーフバルブVeの背面にカラー65の外周に摺動自在に装着される伸側環状プレート66を積層し、圧側リーフバルブVpの背面にカラー61の外周に摺動自在に装着される圧側環状プレート62を積層しているので、伸側リーフバルブVeよりも伸側環状プレート66の剛性を高くし、圧側リーフバルブVpよりも圧側環状プレート62の剛性を高くしておくことで、附勢手段による附勢力を伸側環状プレート66及び圧側環状プレート62で受けることで伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpの変形を抑制することができ、伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpの劣化を抑制することができる。
また、伸側リーフバルブVeの背面に積層されるカラー65の外周に摺動自在に装着される伸側環状プレート66及び圧側リーフバルブVpの背面に積層されるカラー61の外周に摺動自在に装着される圧側環状プレート62を設けており、伸側環状プレート66の内径をピストン2の内周シート部2hの外径よりも小さくし外径を伸側弁座2dの内径よりも大きくしたので、圧側環状プレート62の内径をピストン2の内周シート部2fの外径よりも小さくし外径を圧側弁座2cの内径よりも大きくしたので、伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpの背面側の圧力を伸側環状プレート66及び圧側環状プレート62で受け止めることができる。よって、伸側環状プレート66及び圧側環状プレート62を設けることで、伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpにピストン2側への過大な曲力が作用することを防止できる。
さらに、カラー(軸部材)61,65に積層されて伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVpと伸側環状プレート66および圧側環状プレート62のピストン(バルブディスク)2から後退量を規制する伸側ストッパ67および圧側ストッパ63とを備える場合には、附勢手段を構成する伸側チャンバ12および圧側チャンバ11の位置を調節することが可能となる。
ピストン(バルブディスク)2に設けた内周シート部2f,2hと伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVpとの間に伸側環状スペーサ64および圧側環状スペーサ60を備える場合には、伸側リーフバルブVeおよび圧側リーフバルブVpとピストン(バルブディスク)2との間に形成される隙間の高さを調節することができ、緩衝器Dのソフト時の減衰力特性をチューニングすることができる。
また、附勢手段が緩衝器D内の伸側室R1と圧側室R2の一方または両方の圧力を利用してリーフバルブVe,Vpを附勢するので、附勢力の発生源を用いなくともリーフバルブVe,Vpを附勢でき、圧力の制御で附勢力を変化させることができる。
また、車両用の緩衝器にあっては、伸長作動時の伸側減衰力を収縮作動時の圧側減衰力に比して大きくする必要があり、片ロッド型に設定される緩衝器Dでは伸側室R1の圧力を受ける受圧面積がピストン2の断面積からロッド部材10の断面積を除いた面積となることもあって、伸長作動時における伸側室R1の圧力は、収縮作動時における圧側室R2の圧力に比して非常に大きくする必要がある。
これに対して本発明の緩衝器Dにあっては、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpとが等圧である場合に、伸側リーフバルブVeを附勢する伸側荷重が圧側リーフバルブVpを附勢する圧側荷重よりも大きくしてある。また、本発明では、伸側スプールSeを用いることで、伸側スプールSeを用いずに伸側リーフバルブVeの背面側に伸側背圧室Ceの圧力を作用させるだけの構造に比較して、伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積を伸側リーフバルブVeの背面面積よりも大きく稼ぐことができ、伸側リーフバルブVeに対して大きな伸側荷重を作用させることができる。さらに、伸側スプールSeと圧側スプールSpを用いることで、伸側荷重と圧側荷重の設計自由度も向上する。
よって、本発明の緩衝器Dにあっては、伸長作動時において伸側減衰力を調整するために伸側荷重を非常に大きくする必要がある場合に、伸側背圧室Ceの圧力が小さくとも大きな伸側荷重を出力させるように設定することができ、大型なソレノイドSolを使用せずとも伸側減衰力の制御幅を確保することができる。
また、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpの圧力制御をそれぞれ独立した弁体を駆動して行うのではなく、圧側荷重に比して伸側荷重を大きくすることで伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpの圧力を連通して制御しても伸側減衰力の制御幅を確保することができるので、電磁圧力制御弁6には一つの電磁弁弁体31を設ければ足り、その構造は非常に簡単となり、コストも低減される。
以上より、電磁圧力制御弁6におけるソレノイドSolを小型化することができることに加え、電磁圧力制御弁6の構造も簡単となり、緩衝器Dのピストン部へ適用しても緩衝器Dが大型化されない。よって、本発明の緩衝器Dによれば、緩衝器Dの構造が簡単となって小型化でき、車両への搭載性の悪化を招くこともなく、ソレノイドSolが伸側減衰力を大きくするうえで大きな推力を発揮しなくて済むために、減衰力を大きくする場合の消費電力を小さくして省電力化することができる。
伸側スプールSeの伸側背圧室Ceの圧力を受ける受圧面積を圧側スプールSpの圧側背圧室Cpの圧力を受ける受圧面積よりも大きくしたので、容易に伸側荷重を圧側荷重に比して大きくすることができる。
また、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpをそれぞれ伸側抵抗要素及び圧側抵抗要素を介して連通路24で連通するようにしてあり、圧側圧力導入通路Ipはほとんど抵抗なく伸側圧力室Ceに圧側室R2から液体を導入するので、緩衝器Dが伸長作動から収縮作動へ切り換わる際に、伸側背圧室Ce内へ圧側室R2内の圧力が速やかに導入され、伸側スプールSeが伸側背圧室Ce内の圧力とばね部材16の附勢によって伸側リーフバルブVeを押圧して当該伸側リーフバルブVeを伸側弁座2dへ速やかに着座させて伸側通路3を閉鎖することができる。伸側圧力導入通路Ieもほとんど抵抗なく圧側圧力室Cpに伸側室R1から液体を導入するので、反対に、緩衝器Dが収縮作動から伸長作動へ切り換わる際に、圧側背圧室Cp内へ伸側室R1内の圧力が速やかに導入され、圧側スプールSpが圧側背圧室Cp内の圧力とばね部材20の附勢によって圧側リーフバルブVpを押圧して当該圧側リーフバルブVpを圧側弁座2cへ速やかに着座させて圧側通路4を閉鎖することができる。したがって、この緩衝器Dにあっては、伸縮速度が速く、伸縮作動の切換が瞬時に行われるような場面であっても、伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpの閉じ遅れが生じることが無く、伸縮方向の切り換わり初期から狙い通りの減衰力を発揮することができる。
また、伸側逆止弁Teにおける逆止弁弁体である環状板19及び圧側逆止弁Tpにおける逆止弁弁体である環状板15が経年劣化で、対応する圧側チャンバ11及び伸側チャンバ12との間に隙間が生じたとしても、伸側圧力導入通路Ie及び圧側圧力導入通路Ipに伸側抵抗要素及び圧側抵抗要素を設けていないので、伸側圧力導入通路Ie及び圧側圧力導入通路Ipを通過する流量に変化がないから、減衰力制御及び伸縮切り換わり時の閉弁動作に影響を与えることもない。
ピストンロッド7の外周側に、伸側通路3と圧側通路4とを備えたピストン2と、ピストン2に積層された伸側リーフバルブVe及び圧側リーフバルブVpと、筒状であって内周に伸側スプールSeが摺動自在に挿入されるとともに伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ12と、筒状であって内周に圧側スプールSpが摺動自在に挿入されるとともに圧側背圧室Cpを形成する圧側チャンバ11とを装着するとともに、前記伸側チャンバ12に圧側圧力導入通路Ipを設け、圧側チャンバ11に伸側圧力導入通路Ieを設けるようにしたので、緩衝器Dのピストン部に減衰力調整に要する各部材を集中配置することができる。
さらに、伸側スプールSeの伸側リーフバルブVeへの附勢と圧側圧力導入通路Ipを開閉する圧側逆止弁Tpにおける逆止弁弁体としての環状板15の附勢とを一つのばね部材16で行い、圧側スプールSpの圧側リーフバルブVpへの附勢と伸側圧力導入通路Ieを開閉する伸側逆止弁Teにおける逆止弁弁体としての環状板19の附勢とを一つのばね部材20で行うようにしたので、一つのばね部材16,20にて逆止弁Te,TpとスプールSe,Spの戻り側への復元を行うことができ、部品点数を削減することができる。
また、緩衝器Dは、ピストンロッド7に、先端に設けられてピストン2、伸側リーフバルブVe、圧側リーフバルブVp、伸側チャンバ12及び圧側チャンバ11が外周に装着される保持軸8aと、保持軸8aの先端から開口する縦孔8dと、保持軸8aに設けられて縦孔8d内に設けた連通路24に通じる伸側抵抗要素としての伸側パイロットオリフィスPe及び圧側抵抗要素の圧側パイロットオリフィスPpと、内部に設けられて縦孔8dに通じて電磁圧力制御弁6を収容する収容部Lと、連通路24を収容部Lに連通する調整通路Pcと、収容部Lを伸側室R1に連通する圧側排出通路Epとを設け、縦孔8d内に挿入されて外周に設けた環状溝23aで縦孔8d内に伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpとを連通する連通路24を形成するとともに内周に伸側排出通路Eeを形成するセパレータ23を備えるので、無理なく、ピストンロッド7に電磁圧力制御弁6を収容するとともに、電磁圧力制御弁6とは軸方向にずらしてピストンロッド7の外周に伸側背圧室Ceと圧側背圧室Cpとを設けることができる。
さらに、電磁圧力制御弁6が非通電時に調節通路Pcを閉じるとともに通電時に圧力制御を行うよう設定され、調整通路Pcの途中に設けられて電磁圧力制御弁を迂回するフェール弁FVを備え、フェール弁FVの開弁圧を電磁圧力制御弁6による最大制御圧力より大きくしたので、フェール時には、伸側荷重と圧側荷重が最大となり、緩衝器Dは、もっとも大きな減衰力を発揮して、フェール時にあっても車体姿勢を安定させることができる。
なお、電磁圧力制御弁6が遮断ポジションをとる際に、電磁弁弁体31の小径部31aを透孔30cに対向させて透孔30cを閉塞して閉弁するようになっているが、完全に、透孔30cを閉塞せずに遮断ポジションにて凹部31cを少しし透孔30cに対向させるなどして絞り弁として機能させることも可能である。このようにすることで、フェール時の緩衝器Dの減衰特性において、ピストン速度が低い領域にて電磁圧力制御弁6における遮断ポジションに絞り弁の特性を付加することができ、フェール時にあっても車両における乗り心地を向上させることができる。
さらに、電磁圧力制御弁6は、筒状であって内外を連通する透孔30cを有して調整通路Pcの一部を形成する弁収容筒30aと弁収容筒30aの端部に設けられた環状の制御弁弁座30dとを備えた弁座部材30と、弁収容筒30a内に摺動自在に挿入される小径部31aと、大径部31bと、当該小径部31aと当該大径部31bとの間に設けられて透孔30cに対向可能な凹部31cと、大径部31bの端部を制御弁弁座30dに離着座させる電磁弁弁体31とを備え、透孔30cに小径部31aを対向させることで調整通路Pcを遮断する。よって、電磁弁弁体31を弁座部材30から抜け出る方向へ圧力が作用する受圧面積は、制御弁弁座30dの内径を直径とする円の面積から小径部31aの外径を直径とする円の面積を引いた面積となって、非常に受圧面積を小さくすることができ、開弁時の流路面積を大きくすることができるので、電磁弁弁体31の動きが安定する。また、小径部31aの外周を透孔30cに対向させて透孔30cを閉塞するから遮断ポジションにあっては、上流側から圧力を受けても閉弁したままとなり、フェール弁FVのみを有効とすることができる。
なお、前記附勢手段の構成は一例であって、附勢手段の構成は本実施の形態に限定されるものではない。また、前記したところでは、伸側の減衰バルブと圧側の減衰バルブの双方に本発明を具現化した例を用いて本発明を説明したが、本発明は、緩衝器の伸側の減衰バルブと圧側の減衰バルブのいずれか一方のみに適用することもでき、図示はしないが、緩衝器のピストン部に設けた減衰バルブではなくベースバルブに設けた減衰バルブに適用することも可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。