JP4761474B2 - 緩衝器のバルブ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、緩衝器のバルブ構造の改良に関する。
従来、この種緩衝器のバルブ構造にあっては、たとえば、車両用の緩衝器のピストン部等に具現化され、ピストン部に設けたポートの出口端に環状のリーフバルブを積層し、このリーフバルブでポートを開閉するものが知られている。
そして、具体的にはたとえば、上記緩衝器のバルブ構造は、図3に示すように、リーフバルブLの内周側を固定的に支持せずに、ピストンPをピストンロッドRに固定する筒状のピストンナットNの外周にリーフバルブLの内周を摺接させ、スプリングSでメインバルブMを介してリーフバルブLの背面を附勢した緩衝器のバルブ構造が提案されるに至っており、図示したところでは、緩衝器の伸側減衰バルブに具現化されている(たとえば、特許文献1参照)。
このバルブ構造を適用した緩衝器にあっては、図示するところではピストンPが上方へ移動する際のピストン速度が低速領域にあるときにはリーフバルブLの外周側がリーフバルブLに積層したメインバルブMの当接部位を支点として撓むので、図4に示すように、内周が固定的に支持されるバルブ構造と略同様の減衰特性を発揮し、ピストン速度が中高速領域に達すると、ポートPoを通過する作動油の圧力がリーフバルブLに作用し、スプリングSの附勢力に抗してリーフバルブLがメインバルブMとともにピストンPから軸方向にリフトして後退するので、内周が固定的に支持される緩衝器のバルブ構造に比較して流路面積が大きくなり、減衰力が過大となることを抑制して、車両における乗り心地を向上することができる。
特開平9−291961号公報(図1)
しかしながら、上述のような提案のバルブ構造にあっては、車両における乗り心地を向上できる点で有用な技術ではあるが、以下の不具合があると指摘される可能性がある。
というのは、たとえば、上記ピストンPが上方に移動するときのピストン速度が高速領域に達すると、従来の緩衝器のバルブ構造では、ピストン速度に応じてリーフバルブLがピストンPから軸方向に後退してリフトするのみで、減衰係数は大きくならない。
したがって、ピストン速度が高速領域に達する場合の減衰力が不足気味となり、振動抑制が充分に行われず、車両における乗り心地を悪化させてしまうことになる。
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても車両における乗り心地を向上することができる緩衝器のバルブ構造を提供することである。
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、緩衝器内に一方室と他方室とを隔成するとともに上記一方室と他方室とを連通するポートを備えたバルブディスクと、上記バルブディスクの他方室側面に積層されてポートを開閉するリーフバルブとを備えた緩衝器のバルブ構造において、一方室とポートの上流とを連通する流路と、流路の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体を備えた絞り弁と、一方室と他方室とを連通する連通路と、連通路の途中に直列配置して設けた一対のオリフィスと、を設け、弁体に流路面積を減じる方向の推力を与えるよう一方室の圧力を作用させるとともに、弁体に一方室の圧力による推力に対向する推力を与えるよう連通路の途中であって各オリフィス間の圧力を作用させることを特徴とすることを特徴とする。
また、本発明の他の課題解決手段は、緩衝器内に一方室と他方室とを隔成するとともに上記一方室と他方室とを連通する一方側のポートと他方側のポートを備えたバルブディスクと、上記バルブディスクの他方室側面に積層されて一方側のポートを開閉する一方側のリーフバルブと、上記バルブディスクの一方室側面に積層されて他方側のポートを開閉する他方側のリーフバルブとを備えた緩衝器のバルブ構造において、一方室と一方側のポートの上流とを連通する一方側の流路と、他方室と他方側のポートの上流とを連通する他方側の流路と、一方側の流路の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体を備えた一方側の絞り弁と、他方側の流路の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体を備えた他方側の絞り弁と、一方室と他方室とを連通する連通路と、連通路の途中に直列配置して設けた一対のオリフィスと、を設け、一方側の弁体に流路面積を減じる方向の推力を与えるよう一方室の圧力を作用させ、弁体に一方室の圧力による推力に対向する推力を与えるよう連通路の途中であって各オリフィス間の圧力を作用させるとともに、他方側の弁体に流路面積を減じる方向の推力を与えるよう他方室の圧力を作用させ、弁体に他方室の圧力による推力に対向する推力を与えるよう連通路の途中であって各オリフィス間の圧力を作用させることを特徴とする。
本発明の緩衝器のバルブ構造によれば、バルブ構造にあっては、ピストン速度が中速領域にある場合には、減衰力を低く抑えつつ、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰力を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
また、緩衝器が最伸長するような振幅が大きく、かつ、ピストン速度が高速領域に達するような状況下にあっては、緩衝器の発生減衰力を大きくすることができるので、ピストン速度を速やかに低減することができ、最伸長時の衝撃を緩和することができる。
さらに、圧力室へは、連通路内であって各オリフィス間の圧力である二次圧力を導くようにしているので、単一の連通路を設置するのみで、絞り弁の両方を作動させることができるので、加工も簡単となり、製造コストも悪化することが無い。
また、スプリングでリーフバルブの背面を附勢する構成を採用していないので、スプリングの附勢力のバラツキによって製品毎の減衰特性にバラツキが生じてしまうような心配が無く、緩衝器のバルブ構造の信頼性および安定性が向上する。
以下、本発明のバルブ構造を図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態におけるバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の一部における縦断面図である。図2は、一実施の形態の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。
一実施の形態における緩衝器のバルブ構造は、図1に示すように、緩衝器のピストン部の伸側および圧側の両方の減衰バルブに具現化されており、緩衝器内に一方室41と他方室42とを隔成するとともに上記一方室41と他方室42とを連通する一方側のポート2aおよび他方側のポート2bとを備えたバルブディスクたるピストン1と、ピストン1の他方室側面に積層されて一方側のポート2aを開閉する一方側のリーフバルブ10aと、ピストン1の一方室側面に積層されて他方側のポート2bを開閉する他方側のリーフバルブ10bと、一方室41と一方側のポート2aの上流とを連通する一方側の流路7と、他方室42と他方側のポート2bの上流とを連通する他方側の流路8と、一方側の流路7の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体12を備えた一方側の絞り弁11と、他方側の流路8の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体14を備えた他方側の絞り弁13と、一方室と他方室とを連通する連通路15と、連通路15の途中に直列配置して設けた一対のオリフィス16a,17aと、連通路15の途中であって各オリフィス16a,17a間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に一方側の絞り弁11における弁体12を附勢する一方側の圧力室18と、同じく連通路15の途中であって各オリフィス16a,17a間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に他方側の絞り弁13における弁体14を附勢する他方側の圧力室19と、を備えて構成されている。
なお、本書においては、各部の説明を容易とするため、一方側のポート2aが開放されるときに機能する部材については一方側の部材とし、他方側のポート2bが開放されるときに機能する部材については他方側の部材として、同一名称の部材を区別してある。
他方、バルブ構造が具現化される緩衝器は、周知であるので詳細には図示して説明しないが、具体的にたとえば、シリンダ40と、シリンダ40の上端を封止するヘッド部材(図示せず)と、ヘッド部材(図示せず)を摺動自在に貫通するピストンロッド5と、軸部材を形成するピストンロッド5の先端5aが挿通されて上記先端5aに固定されるピストン1と、シリンダ40内にピストン1で隔成される図1中上方側の一方室41と下方側の他方室42と、シリンダ40の下端を封止する封止部材(図示せず)と、シリンダ40から出没するピストンロッド5の体積分のシリンダ内容積変化を補償する図示しないリザーバあるいはエア室とを備えて構成され、シリンダ40内には流体、具体的には作動油が充填されている。
そして、上記バルブ構造にあっては、シリンダ40に対してピストン1が図1中上下方に移動して、一方室41と他方室42とをポート2a,2bを介して作動油が行き交うときに、その作動油の流れに対しそれぞれ対応するリーフバルブ10a,10bで抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、緩衝器に所定の減衰力を発生させる減衰力発生要素として機能する。
以下、このバルブ構造について詳しく説明すると、バルブディスクたるピストン1は、環状に形成されて、作動油が一方室41から他方室42へ通過することを許容する一方側のポート2aと、逆に作動油が他方室42から一方室42へ通過することを許容する他方側のポート2bと、各ポート2a,2bの出口端にそれぞれ連なる窓3a,3bと、各ポート2a,2bの出口端となる窓3a,3bの外周側に形成される環状の弁座1a,1bとを備えている。
さらに、この実施の形態の場合、各ポート2a,2bの開口端は、それぞれピストン1に積層される各リーフバルブ10a,10bによって閉塞されないように上記窓3a,3bより外周側に配置されている。なお、一方側のポート2aは、他方側のリーフバルブ10bに閉塞されず、他方側のポート2bは、一方側のリーフバルブ10aに閉塞されなければ、その配置や形状について図示したものに限定されることはなく、たとえば、各ポート2a,2bを同一円周上に配置して弁座1a,1bをいわゆる花弁型とする構成を採用してもよい。
そして、上述のように、ピストン1の内周側には緩衝器のピストンロッド5の先端5aが挿通され、ピストンロッド5の先端5aはピストン1の図1中下方側に突出させてある。また、ピストンロッド5の先端5aの外径は、先端5aより図1中上方側の外径より小径に設定され、上方側と先端5aとの外径が異なる部分に段部5bが形成されている。
さらに、このピストンロッド5は、その先端5aの下端から開口する縦孔15aと、ピストンロッド5の段部5bより上方側の側部から開口して縦孔15aに通じる横孔15bとを備えており、これら縦孔15aと横孔15bとで一方室41と他方室42とを連通する連通路15を形成している。
また、この縦孔15aの図1中下方側には、オリフィス17aを備えたプラグ17,17が螺着され、また、横孔15bには、オリフィス16aを備えたプラグ16,16が螺着されており、緩衝器の伸長行程時には作動油は上記の一方側のポート2aのみならず連通路15を通過して一方室41から他方室42へ移動するとともに、緩衝器の圧縮行程時には作動油は上記の他方側のポート2bのみならず連通路15を通過して他方室42から一方室41へ移動することになり、連通路15には上記オリフィス16a,17aが直列配置されているので、緩衝器の伸縮時には連通路15内であってオリフィス16a,17a間の圧力は一方室41の圧力と他方室42の圧力の間の値を採ることになる。なお、図示したところでは、オリフィス16aおよびオリフィス17aは、二つずつ設けられているが、その数はオリフィス16aおよびオリフィス17aでともに任意であり、連通路15内であってオリフィス16a,17a間の圧力を各オリフィス16a,17aの設置数によって任意に変更することが可能となる。このように、本実施の形態では、オリフィス16a,17aを備えたプラグ16,17を連通路15の途中に設けるようにしているので、オリフィスの数の変更が非常に簡単となるため、連通路15内であってオリフィス16a,17a間の圧力を設定が容易となるが、オリフィス16a,17aの口径を変更することで、上記設定を行うようにしてもよい。すなわち、プラグによってオリフィス径が異なるようにしてもよい。また、オリフィス16a,17aは、連通路15の口径を部分的に小径にして連通路15に直接的に設けることが可能であれば、そのようにしてもよい。
戻って、ピストン1の図1中上下に積層されるリーフバルブ10a,10bは、環状に形成された板を複数枚積層して積層リーフバルブとして構成されており、一方側のリーフバルブ10aは、ピストン1の他方室42側に形成の弁座1aに当接させて、一方側のポート2aの出口端を閉塞し、他方側のリーフバルブ10bは、ピストン1の一方室41側に形成の弁座1bに当接させて、他方側のポート2bの出口端を閉塞している。この実施の形態においては、リーフバルブ10a,10bは、積層リーフバルブとして構成されているが、上記環状の板の枚数は、本バルブ構造で実現する減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)によって任意とされてよく、緩衝器に発生させる減衰特性によって複数枚とされても一枚のみでも差し支えなく、また、緩衝器に発生させ減衰特性によって各リーフの外径を異なるように設定することができる。
さらに、詳しくは図示しないが、弁座1a,1bに着座するリーフバルブ10a,10bの外周には切欠が形成されるか、或いは、弁座1a,1bには打刻されて形成される周知のオリフィスが設けられている。
つづいて、他方側のリーフバルブ10bより図1中上方には、間座21、仕切部材22、筒状の保持部材23およびストッパ24が積層されている。さらに、仕切部材22の図1中上方には一方側の絞り弁11における筒状の弁体12が、上記保持部材23の外周に摺動自在に装着され、当該弁体12は、弁体12と仕切部材22との間に介装したスプリング25によって図1中上方へ附勢され、その上端がストッパ24に当接して弁体12のそれ以上の上方側への移動が規制されている。
他方、一方側のリーフバルブ10aより図1中下方には、間座26、仕切部材27および保持部材28が積層され、さらに、仕切部材28の図1中下方には他方側の絞り弁13における筒状の弁体14が、上記保持部材28の外周に摺動自在に装着され、当該弁体14は、弁体14と仕切部材27との間に介装したスプリング29によって図1中下方へ附勢され、その上端がピストンロッド5の先端5aに形成の螺子溝5cに螺着されるピストンナット30に当接して弁体14のそれ以上の上方側への移動が規制されている。
そして、ストッパ24、保持部材23、弁体12、スプリング25、仕切部材22、間座21、他方側のリーフバルブ10b、ピストン1、一方側のリーフバルブ10a、間座26、仕切部材27、保持部材28、スプリング29、弁体14のこれら各部材は、順にピストンロッド5の先端5aに組み付けられ、上記先端5aに設けた螺子溝5cに螺着されるピストンナット30とピストンロッド5の段部5bとで挟持されてピストンロッド5に固定される。
すなわち、このバルブ構造にあっては、ピストン1の上方側の一方室41内に配置される間座21、仕切部材22、保持部材23、弁体12の構成と、下方側の他方室42内に配置される間座26、仕切部材27、保持部材28、弁体14の構成とは、ピストン1を境にして天地逆とした線対称の関係にある。
ピストン1の図1中上方に配置される仕切部材22は、底部22aと筒部22bとを備えて有底筒状とされて、筒部22bをピストン1の外周に嵌合させるようにしてピストン1に積層され、ピストン1との間に部屋R1を一方室41から仕切っている。また、仕切部材22における底部22aには、ピストンロッド5の先端5aの挿入が可能な孔22cと、同一円周上に設けられて底部22aを貫通する複数の通孔22dと、同一円周上に設けられて底部22aを貫通するとともに通孔22dより内周側に配置される複数の通孔22eと、通孔22dと通孔22eとの間に設けた環状弁座22fと、環状弁座22fより外周に設けた環状傾斜面22gとを備えており、通孔22dと通孔22eで一方側の流路7をメイン流路7aとサブ流路7bに分岐させ、一方側の流路7を成すこれらメイン流路7aとサブ流路7bで、部屋R1を介しつつ、一方室41を一方側のポート2aの上流に連通している。
他方、ピストン1の図1中下方に配置される仕切部材27も、同様に、底部27aと筒部27bとを備えて有底筒状とされて、筒部27bをピストン1の外周に嵌合させるようにしてピストン1に積層され、ピストン1との間に部屋R2を他方室42から仕切っている。また、仕切部材27における底部27aには、ピストンロッド5の先端5aの挿入が可能な孔27cと、同一円周上に設けられて底部27aを貫通する複数の通孔27dと、同一円周上に設けられて底部27aを貫通するとともに通孔27dより内周側に配置される複数の通孔27eと、通孔27dと通孔227eとの間に設けた環状弁座27fと、環状弁座27fより外周に設けた環状傾斜面27gとを備えており、通孔27dと通孔27eで他方側の流路8をメイン流路8aとサブ流路8bに分岐させ、他方側の流路8を成すこれらメイン流路8aとサブ流路8bで、部屋R2を介しつつ、他方室42を他方側のポート2bの上流に連通している。
つづいて、保持部材23は、図1に示すように、図1中上方側の小径部23aと図1中下方側の大径部23bとを備えて筒状に形成されるとともに、内周側には環状溝23cが設けられ、当該環状溝23cと小径部23aとを連通する通路23dを備えている。そして、この保持部材23は、仕切部材22に積層されてピストンロッド5の先端5aに固定されてピストン1に対して軸方向に移動不能とされた状態で、環状溝23cが連通孔15の各オリフィス16a,17a間から分岐される透孔15cに対向するようになっている。
また、弁体12は、内筒12aと、内筒12aの図1中上端内外周のそれぞれに設けたフランジ12b,12cと、フランジ12cの外周から垂下される弁筒12dと、図1中上端に設けた溝12eと、を備えて構成され、フランジ12bの内周を保持部材23の小径部23aの外周に、内筒12aの内周を保持部材23の大径部23bの外周にそれぞれ摺接させて保持部材23の外周に摺動自在に装着されている。また、弁体12は、保持部材23の小径部23aの外周と大径部23bの図1中上端と弁体12の内周およびフランジ12bで一方側の圧力室18を隔成し、圧力室18は保持部材23に設けた通路23d、環状溝23cおよびピストンロッド5に設けた透孔15cを介して連通孔15の各オリフィス16a,17a間に連通され、当該圧力室18内には、連通孔15の各オリフィス16a,17a間の圧力(以下、単に「二次圧力」という)が導かれるようになっている。
また、当該弁体12と仕切部材22との間に介装したスプリング25によって、図1中上方側へ附勢されて、何ら他に力が作用しない状態ではストッパ24で規制する図中最上方に配置される。すなわち、弁体12は、一方室41内に配置されて、その図1中上面を受圧面積として作用する一方室41の圧力によって下方へ附勢され、反対に、内筒12a、フランジ12cおよび弁筒12dの図1中下面を受圧面積として作用する一方室41の圧力と、圧力室18の断面積つまりフランジ12bの図1中下面の面積を受圧面積として作用する圧力室18の圧力と、スプリング25のバネ力によって上方へ附勢されている。
なお、弁体12に設けた溝12eは、弁体12がストッパ24に密着した状態となっても当該密着部分に溝12eを介して一方室41内の圧力を導いて弁体12の図1中上面全体に一方室41内の圧力を作用させることができるようになっている。
そして、この一方側の絞り弁11は、弁体12とスプリング25と仕切部材22に設けた環状弁座22fとを備えて構成されており、弁体12がスプリング25の附勢力に抗して、図1中下方へ移動すると、弁筒12dが仕切部材22に設けた環状弁座22fに接近してサブ流路7bにおける流路面積を減じるようになっており、最終的には、弁筒12dの図1中下端が環状弁座22fに着座すると、サブ流路7bによる一方室41と部屋R1との連通を遮断するようになって、一方側の流路7の流路面積を、メイン流路7aの流路面積にまで減少させるようになっている。
つまり、弁体12には、受圧面積差により流路面積を減じる方向となる図1中下向きの推力を与えるように一方室41の圧力が作用するとともに、当該一方室41の圧力による推力に対向する図1中上向きの推力を与えるよう二次圧力が作用することになって、結果的に弁体12には下向きの推力と上向きの推力の合力が流路面積を減じる方向となる図1中下方へ向けて作用し、一方室41の圧力と二次圧力との差が大きくなるとスプリング25のバネ力に抗して弁体12は図1中下方に移動して一方側の流路7の流路面積を減じるように動作する。そして、この実施の形態の場合、弁体12に上記の如く各推力を作用させるのに、圧力室18を設けてこれを実現している。
詳しくは、シリンダ40に対してピストン1が図1中上方に移動する緩衝器の伸長行程時において、一方側の絞り弁11における弁体12には、圧力室18の断面積を受圧面積として作用する高圧となる一方室41内の圧力による図1中下向きの推力と、圧力室18に導かれる連通路15内の低圧となる二次圧力による図1中上向きの推力の合力である図1中下向きの力と、スプリング25の図1中上向きの力が作用する。そして、上記合力がスプリング25による力を上回ると、一方側の絞り弁11における弁体12は、仕切部材22側となる図1中下方へ移動せしめられ、仕切部材22に接近することで通孔22eに通じるサブ流路7bの流路面積を狭めて一方側の流路7の流路面積を減じるようになる。
つまり、この一方側の絞り弁11は、一方室41の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると弁体12が図1中下方へ移動して一方側の流路7を絞って流路面積を減じ、この実施の形態の場合、最終的には、サブ流路7bを遮断してメイン流路7aのみで一方室41と一方側のポート2aの上流とを連通するのみとする。この実施の形態の場合、一方側の絞り弁11が一方側の流路7のうちサブ流路7bを閉じるようにしているので、一方側の流路7を最大限に絞ったときの最終的な流路面積をメイン流路7aにて設定可能である点で有利であるが、一方側の流路7を分岐させずに単一の流路を一方側の絞り弁11で絞るようにしてもよい。なお、単一の流路を絞る場合、完全に流路を遮断すると一方室41と他方室42との連通が断たれるので、完全に流路を遮断しないようにすればよい。
また、上記の弁体12が最上方にあってストッパ24に当接して一方側の流路7の流路面積を最大とする位置から環状弁座22fに当接して当該流路7の流路面積を最小とする位置まで変位するまで、仕切部材22と弁体12との間の環状隙間の面積、つまり、サブ流路7bの流路面積が弁体12の変位量に応じて漸減するようになっている。すなわち、弁体12は、一方室41の圧力が二次圧力を所定量上回ってその圧力差が大きくなればなるほど仕切部材22の環状傾斜面22gへ接近して一方側の流路7を大きく絞るように機能する。
そして、この実施の形態におけるバルブ構造にあっては、一方室41の圧力と二次圧力との圧力差の増大に対して流路面積を漸減させるため、仕切部材22の弁体12が着座する環状弁座22fの外周側にすり鉢状の環状傾斜面22gを形成してあり、仕切部材22と弁体12との間の面積が最小となるのは、仕切部材22の環状傾斜面22gと弁体12の弁筒12dの下端外周との間で形成される環状隙間である。
つまり、本実施の形態におけるバルブ構造では、環状傾斜面22gと弁体12の弁筒12dの下端外周との間で形成される環状隙間の面積が最小となって、環状傾斜面22gと弁筒12dの下端外周との間で形成される環状隙間の面積における弁体12の変位量に対する流路面積低下ゲイン(弁体12の変位量に対する流路面積低下の割合)は、環状傾斜面22gが無い場合において環状弁座22fと弁筒12dの下端面との間で形成される環状隙間の面積における流路面積低下ゲインに比較して小さくなるので、一方室41の圧力と二次圧力との圧力差の増大に対して流路面積を漸減させることができるのである。
なお、このように、一方室41の圧力と二次圧力との圧力差の増大に応じて一方側の流路7の流路面積を漸減させるには、図示はしないが、環状弁座22fの内周側に円錐台の側面状の環状傾斜面を設けるようにしても良いし、環状弁座22f自体を仕切部材22の内周側或いは外周側に傾斜する環状傾斜面としてもよい。
また、一方室41の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると、弁体12がサブ流路7bを絞り始めるが、上記所定量の設定は、一方室41の圧力と二次圧力とが作用する受圧面積となる圧力室18の断面積、スプリング25のバネ定数、二次圧力を調節するオリフィス16a,17aの数とオリフィス径を調節することで任意に設定することができるが、この場合、緩衝器のピストン速度が中速と高速との境に設定されている。
転じて、保持部材28は、図1に示すように、上記した保持部材23と同様の構成とされ、図1中下方側の小径部28aと図1中上方側の大径部28bとを備えて筒状に形成されるとともに、内周側には環状溝28cが設けられ、当該環状溝28cと小径部28aとを連通する通路28dを備えている。そして、この保持部材28は、仕切部材27の下方に積層されてピストンロッド5の先端5aに固定されてピストン1に対して軸方向に移動不能とされた状態で、環状溝28cが連通孔15の各オリフィス16a,17a間から分岐される透孔15dに対向するようになっている。
また、弁体14は、内筒14aと、内筒14aの図1中上端内外周のそれぞれに設けたフランジ14b,14cと、フランジ14cの外周から立ち上がる弁筒14dと、図1中下端に設けた溝14eと、を備えて構成され、フランジ14bの内周を保持部材28の小径部28aの外周に、内筒14aの内周を保持部材28の大径部28bの外周にそれぞれ摺接させて保持部材28の外周に摺動自在に装着されている。また、弁体14は、保持部材28の小径部28aの外周と大径部28bの図1中下端と弁体14の内周およびフランジ14bで一方側の圧力室19を隔成し、圧力室19は保持部材28に設けた通路28d、環状溝28cおよびピストンロッド5に設けた透孔15dを介して連通孔15の各オリフィス16a,17a間に連通され、当該圧力室19内には、連通孔15の各オリフィス16a,17a間の圧力である二次圧力が導かれるようになっている。
また、当該弁体14と仕切部材27との間に介装したスプリング29によって、図1中下方側へ附勢されて、何ら他に力が作用しない状態ではピストンナット30で規制する図中最上方に配置される。すなわち、弁体14は、他方室42内に配置されて、その図1中下面を受圧面積として作用する他方室42の圧力によって上方へ附勢され、反対に、内筒14a、フランジ14cおよび弁筒14dの図1中上面を受圧面積として作用する他方室42の圧力と、圧力室19の断面積つまりフランジ14bの図1中上面の面積を受圧面積として作用する圧力室19の圧力と、スプリング29のバネ力によって下方へ附勢されている。
なお、弁体14に設けた溝14eは、弁体14がピストンナット30に密着した状態となっても当該密着部分に溝14eを介して他方室42内の圧力を導いて弁体14の図1中下面全体に他方室42内の圧力を作用させることができるようになっている。
そして、この他方側の絞り弁13は、弁体14とスプリング29と仕切部材27に設けた環状弁座27fとを備えて構成されており、弁体14がスプリング29の附勢力に抗して、図1中上方へ移動すると、弁筒14dが仕切部材27に設けた環状弁座27fに接近してサブ流路8bにおける流路面積を減じるようになっており、最終的には、弁筒14dの図1中上端が環状弁座27fに着座すると、サブ流路8bによる他方室42と部屋R2との連通を遮断するようになって、他方側の流路8の流路面積を、メイン流路8aの流路面積にまで減少させるようになっている。
すなわち、この他方側の絞り弁13にあっては、弁体14が他方室42内に配置されて当該弁体14に流路面積を減じる方向となる図1中上向きの推力を与えるように作用するのは他方室42の圧力であり、これに対して二次圧力は弁体14に他方室42の圧力による推力に対向する図1中下向きの推力を与えるよう作用するようになっている。
したがって、緩衝器の圧縮行程時において、他方室42内の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると、図1中上方へ移動してサブ流路8bを絞り、最終的にはサブ流路8bを遮断するようになっている。
つまり、弁体14には、受圧面積差により流路面積を減じる方向となる図1中上向きの推力を与えるように他方室42の圧力が作用するとともに、当該他方室42の圧力による推力に対向する図1中下向きの推力を与えるよう二次圧力が作用することになって、結果的に弁体14には上向きの推力と下向きの推力との合力が流路面積を減じる方向となる図1中上方へ向けて作用し、他方室42の圧力と二次圧力との差が大きくなるとスプリング29のバネ力に抗して弁体14は図1中上方に移動して他方側の流路8の流路面積を減じるように動作する。そして、この実施の形態の場合、弁体14に上記の如く各推力を作用させるのに、圧力室19を設けてこれを実現している。
また、この他方側の絞り弁13の場合も、仕切部材27に環状傾斜面27gを備えているので、弁体14の変位量に対する流路面積低下ゲインが小さくなって、他方側の流路8を他方室42の圧力と二次圧力との圧力差の増大に対して流路面積を漸減させることができる。
なお、この他方側の絞り弁13においても、上記した一方側の絞り弁11と同様、環状弁座27fの内周側に円錐台の側面状の環状傾斜面を設けるようにしても良いし、環状弁座27f自体を仕切部材27の内周側或いは外周側に傾斜する環状傾斜面としてもよい。さらに、他方側の流路8をメイン流路8aとサブ流路8bに分岐させずに、単一の流路を他方側の絞り弁で絞るようにしても良い。
また、他方室42の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると、弁体14がサブ流路8bを絞り始めるが、上記所定量の設定は、他方室42の圧力と二次圧力とが作用する受圧面積となる圧力室19の断面積、スプリング29のバネ定数、二次圧力を調節するオリフィス16a,17aの数とオリフィス径を調節することで任意に設定することができるが、この場合、緩衝器のピストン速度が中速と高速との境に設定されている。さらに、当然であるが、緩衝器の伸長行程時に一方側の絞り弁11が一方側の流路7を絞り始める基準となる一方室41の圧力が二次圧力を上回るべき所定量と、緩衝器の圧縮行程時に他方側の絞り弁13が他方側の流路8を絞り始める基準となる他方室42の圧力が二次圧力を上回るべき所定量とは、異なるものとされても良い。
また、各絞り弁11,13の構成において、弁体12,14は筒状とされ、筒状の保持部材23,28にそれぞれ装着されるので、弁体12,14は保持部材23,28にガイドされて良好な作動が保証されるとともに圧力室18,19の形成が簡単となるばかりでなく、バルブの組立が容易となるが、弁体12,14の形状、構成は、それぞれ、一方側の流路7および他方側の流路8に適するように設計変更することができることは当然である。
つづいて、上述のように構成されたバルブ構造の作用について説明する。まず、緩衝器が伸長行程にあり、ピストン1がシリンダ40に対して図1中上方側に移動すると、一方室41内の圧力が高まり、一方室41内の作動油は一方側のポート2aおよび連通路15を通過して他方室42内に移動しようとする。
そして、緩衝器の伸縮速度となるピストン速度が低速領域にある場合、作動油は、上述の弁座1aに着座するリーフバルブ10aの外周に設けた切欠あるいは弁座1aに打刻によって形成されるオリフィスとオリフィス16a,17aを備えた連通路15を通過し、その後のピストン速度が上昇して中速領域に達すると、作動油は、リーフバルブ10aの外周を撓ませて、リーフバルブ10aと弁座1aと間の隙間をも通過するようになる。なお、連通路15内の各オリフィス16a,17a間における二次圧力は、作動油の各オリフィス16a,17a通過時に生じる圧力損失により一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との間の値を採る。
このピストン速度が低中速領域にある場合、一方室41内の圧力が連通路15内の上記した二次圧力を所定量上回ることがないように、その所定量が設定されており、ピストン速度が中速領域にある場合では、弁体12はスプリング25の附勢力に抗して図1中下方へ移動することができず、一方側の絞り弁11が一方側の流路7を絞って流路面積を減じない。
そのため、ピストン速度が低中速領域にある場合には、一方側のリーフバルブ10aおよび連通路15のオリフィス16a,17aによる減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)を呈することとなる。そして、リーフバルブ10aのバネ剛性を低く設定しておくことにより、図2に示すが如く、ピストン速度が中速領域における減衰特性の傾きを小さくし、発生減衰力が低くなるよう設定することができる。なお、他方側の絞り弁13は、圧力室19内に他方室42内の圧力より高い二次圧力が作用しているので、他方側の流路8を絞ることが無いので、緩衝器の伸長行程時に他方側の絞り弁13が動作することが無く、緩衝器の伸側の減衰力に影響を与えることが無い。
他方、ピストン1の速度が高速領域に達して、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくなり、一方室41内の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回るようになると、弁体12を図1中下方へ押圧する上記合力がスプリング25の力を上回って、弁体12は、図1中下方へ押し下げられて、サブ流路7bを絞って一方側の流路7の流路面積を減じるようになる。
ピストン速度が高速領域に達してから、一方室41内の圧力と連通路15内の二次圧力との差がさらに増大していくと、弁体12は、流路面積を圧力差に応じて漸減させていき、最終的には、仕切部材22の環状弁座22fに当接して通孔22eによる一方室41と他方室42との連通を断ってサブ流路7bを閉塞し、メイン流路7aのみで一方室41と他方室42とを連通させて一方側の流路7の流路面積を最小とする。
したがって、ピストン1の速度が高速領域にある場合、一方室41の圧力と連通路15内の二次圧力の圧力差の増大に伴って一方側の流路7の流路面積が漸減されるので、ピストン1の速度の増加に伴って圧力損失も徐々に増加し、することになる。
つまり、ピストン速度が高速領域に達して一方側の流路7を一方側の絞り弁11が絞り初めて絞り終わる間における減衰特性は、図2に示すように、流路面積が徐々に制限されるので、中速領域にあるときよりも傾きが大きくなり、ピストン1の速度の増加に伴って減衰力も増加し、一方側の絞り弁11が一方側の流路7の流路面積を最小とした後のピストン速度の増加に対して、減衰特性の傾きは再度小さくなるが流路面積が小さくなる分、減衰力は高くなる。
逆に、緩衝器が圧縮行程にあってピストン1がシリンダ40に対して図1中下方側に移動する場合には、ピストン1の上方側に配置されるバルブ構造の構成がピストン1の下方側に配置される構成とが互いに天地逆となった構成とされているので、上記した処と同様の作動を呈することになる。
詳しくは、緩衝器が圧縮行程にあり、ピストン1がシリンダ40に対して図1中下方側に移動すると、他方室42内の圧力が高まり、他方室42内の作動油は他方側のポート2bおよび連通路15を通過して一方室41内に移動しようとする。
そして、緩衝器の伸縮速度となるピストン速度が低速領域にある場合、作動油は、上述の弁座1bに着座するリーフバルブ10bの外周に設けた切欠あるいは弁座1bに打刻によって形成されるオリフィスとオリフィス16a,17aを備えた連通路15を通過し、その後のピストン速度が上昇して中速領域に達すると、作動油は、リーフバルブ10bの外周を撓ませて、リーフバルブ10bと弁座1bと間の隙間をも通過するようになる。なお、連通路15内の各オリフィス16a,17a間における二次圧力は、作動油の各オリフィス16a,17a通過時に生じる圧力損失により他方室42内の圧力と一方室41内の圧力との間の値を採る。
このピストン速度が低中速領域にある場合、他方室42内の圧力が連通路15内の上記した二次圧力を所定量上回ることがないように、その所定量が設定されており、ピストン速度が中速領域にある場合では、弁体14はスプリング29の附勢力に抗して図1中上方へ移動することができず、他方側の絞り弁13が他方側の流路8を絞って流路面積を減じない。
そのため、ピストン速度が低中速領域にある場合には、他方側のリーフバルブ10bおよび連通路15のオリフィス16a,17aによる減衰特性を呈することとなる。そして、リーフバルブ10bのバネ剛性を低く設定しておくことにより、図2に示すが如く、ピストン速度が中速領域における減衰特性の傾きを小さくし、発生減衰力が低くなるよう設定することができる。なお、一方側の絞り弁11は、圧力室18内に一方室41内の圧力より高い二次圧力が作用しているので、一方側の流路7を絞ることが無いので、緩衝器の圧縮行程時に一方側の絞り弁11が動作することが無く、緩衝器の圧側の減衰力に影響を与えることが無い。
他方、ピストン1の速度が高速領域に達して、他方室42内の圧力と一方室41内の圧力との差が大きくなり、他方室42内の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回るようになると、弁体14を図1中上方へ押圧する上記合力がスプリング29の力を上回って、弁体14は図1中上方へ押し上げられて、サブ流路8bを絞って他方側の流路8の流路面積を減じるようになる。
ピストン速度が高速領域に達してから、他方室42内の圧力と連通路15内の二次圧力との差がさらに増大していくと、弁体14は、流路面積を圧力差に応じて漸減させていき、最終的には、仕切部材27の環状弁座27fに当接して通孔27eによる他方室42と一方室41との連通を断ってサブ流路8bを閉塞し、メイン流路8aのみで他方室42と一方室41とを連通させて他方側の流路8の流路面積を最小とする。
したがって、ピストン1の速度が高速領域にある場合、他方室42の圧力と連通路15内の二次圧力の圧力差の増大に伴って他方側の流路8の流路面積が漸減されるので、ピストン1の速度の増加に伴って圧力損失も徐々に増加し、することになる。
つまり、ピストン速度が高速領域に達して他方側の流路8を他方側の絞り弁13が絞り初めて絞り終わる間における減衰特性は、図2に示すように、流路面積が徐々に制限されるので、中速領域にあるときよりも傾きが大きくなり、ピストン1の速度の増加に伴って減衰力も増加し、他方側の絞り弁13が他方側の流路8の流路面積を最小とした後のピストン速度の増加に対して、減衰特性の傾きは再度小さくなるが流路面積が小さくなる分、減衰力は高くなる。
このように、本実施の形態の緩衝器のバルブ構造にあっては、ピストン速度が中速領域にある場合には、減衰力を低く抑えつつ、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰力を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
また、緩衝器が最伸長するような振幅が大きく、かつ、ピストン速度が高速領域に達するような状況下にあっては、緩衝器の発生減衰力を大きくすることができるので、ピストン速度を速やかに低減することができ、最伸長時の衝撃を緩和することができる。
さらに、圧力室18,19へは、連通路15内であってオリフィス16a,17a間の二次圧力を導くようにしているので、単一の連通路15を設置するのみで、絞り弁11,13の両方を作動させることができるので、加工も簡単となり、製造コストも悪化することが無い。
また、スプリングでリーフバルブ10a,10bの背面を附勢する構成を採用していないので、スプリングの附勢力のバラツキによって製品毎の減衰特性にバラツキが生じてしまうような心配が無く、緩衝器のバルブ構造の信頼性および安定性が向上する。
なお、上記した作用効果を奏する上では、環状傾斜面22g,27gを設けなくともよいが、本実施の形態におけるバルブ構造では、環状傾斜面22g,27gを設けて、弁体12,14の変位量に対する各流路7,8の流路面積低下ゲインが小さくなるようにしているので、絞り弁11,13が一方室41或いは他方室42の圧力と連通路15の二次圧力の圧力差の増大に対して流路面積を確実に漸減させることで、ピストン速度が高速領域にあるときのピストン速度の増加に対する減衰力の増加の割合を小さくすることができ、急激に減衰力が変化することがなく、車両搭乗者に急激な減衰力変化による違和感を抱かせたり、ショックを感じさせたりすることが無いので、より一層乗り心地を向上することができる。
なお、本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、ピストン速度に低速、中速および高速でなる区分を設けているが、これらの区分の境の速度はそれぞれ任意に設定することができる。
なお、絞り弁11,13における弁体12,14を附勢するスプリング25,29は、図示したところでは、コイルスプリングとされているが、これをたとえば、皿バネやリーフスプリングとしたり、ゴム等の弾性体としたりしてもよい。
また、一方側の流路7および他方側の流路8がメイン流路7a,8aとサブ流路7b,8bとを備えて、一方側および他方側の絞り弁11,13がサブ流路7b,8bを閉じる事によって流路面積を減じるようになっているので、流路面積が最小の状態となるときにはメイン流路7a,8aのみが連通される状態となり、ピストン速度が高速領域にある場合の減衰力を流路7,8の絞り度合で設定する必要が無く、この点においても、ピストン速度が高速以上となる場合における減衰特性が安定するとともに、製品毎に減衰特性がばらついてしまうこともない。また、上記したように、流路7,8の絞り度合で減衰力を設定する必要が無いので、スプリング25,30におけるバネ剛性に多少のバラツキがあっても、大きく減衰特性が変わってしまう心配もない。
さらに、仕切部材22,27をバルブディスクたるピストン1に積層するだけでポート2a,2bの上流にメイン流路7a,8aおよびサブ流路7b,8bを形成することができるので、メイン流路7a,8aおよびサブ流路7b,8bを備えた流路7,8の形成が容易で、バルブ構造の組立加工も容易となる利点がある。
また、上記したところでは、緩衝器のピストン部の伸圧両側の減衰バルブに具現化した例を用いて本発明のバルブ構造を説明しているが、伸側のみ、あるいは、圧側のみの減衰バルブに具現化することも可能で、さらには、ベースバルブ部に具現化することも可能であり、およそ減衰力を発生する減衰力発生要素として機能する緩衝器のバルブに適用することが可能なことは勿論である。すなわち、バルブ構造がベースバルブ部に具現化される場合には、一方室をピストン側室あるいはリザーバ室の一方とし、他方室をピストン側室あるいはリザーバ室の他方とすればよい。
以上で緩衝器のバルブ構造の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
一実施の形態におけるバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の一部における縦断面図である。 一実施の形態の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。 従来の緩衝器のバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の縦断面図である。 従来の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。
符号の説明
1 バルブディスクたるピストン
1a,1b 弁座
2a 一方側のポート
2b 他方側のポート
3a,3b 窓
5 ピストンロッド
5a ピストンロッドの先端
5b ピストンロッドの段部
5c ピストンロッドの螺子溝
7 一方側の流路
7a,8a メイン流路
7b,8b サブ流路
8 他方側の流路
10a 一方側のリーフバルブ
10b 他方側のリーフバルブ
11 一方側の絞り弁
12,14 弁体
12a,14a 弁体における内筒
12b,12c,14b,14c 弁体におけるフランジ
12d,14d 弁体における弁筒
12e,14e 弁体における溝
13 他方側の絞り弁
15 連通路
15a 縦孔
15b 横孔
15c,15d 透孔
16,17 プラグ
16a,17a オリフィス
18,19 圧力室
21,26 間座
22,27 仕切部材
22a,27a 仕切部材における底部
22b,27b 仕切部材における筒部
22c,27c 仕切部材における孔
22d,22e,27d,27e 仕切部材における通孔
22f,27f 仕切部材における環状弁座
22g,27g 仕切部材における環状傾斜面
23,28 保持部材
23a,28a 保持部材における小径部
23b,28b 保持部材における大径部
23c,28c 保持部材における環状溝
23d,28d 保持部材における通路
24 ストッパ
25,29 スプリング
30 ピストンナット
40 シリンダ
41 一方室
42 他方室
R1,R2 部屋

Claims (8)

  1. 緩衝器内に一方室と他方室とを隔成するとともに上記一方室と他方室とを連通するポートを備えたバルブディスクと、上記バルブディスクの他方室側面に積層されてポートを開閉するリーフバルブとを備えた緩衝器のバルブ構造において、一方室とポートの上流とを連通する流路と、流路の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体を備えた絞り弁と、一方室と他方室とを連通する連通路と、連通路の途中に直列配置して設けた一対のオリフィスと、を設け、弁体に流路面積を減じる方向の推力を与えるよう一方室の圧力を作用させるとともに、弁体に一方室の圧力による推力に対向する推力を与えるよう連通路の途中であって各オリフィス間の圧力を作用させることを特徴とする緩衝器のバルブ構造。
  2. 緩衝器内に一方室と他方室とを隔成するとともに上記一方室と他方室とを連通する一方側のポートと他方側のポートを備えたバルブディスクと、上記バルブディスクの他方室側面に積層されて一方側のポートを開閉する一方側のリーフバルブと、上記バルブディスクの一方室側面に積層されて他方側のポートを開閉する他方側のリーフバルブとを備えた緩衝器のバルブ構造において、一方室と一方側のポートの上流とを連通する一方側の流路と、他方室と他方側のポートの上流とを連通する他方側の流路と、一方側の流路の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体を備えた一方側の絞り弁と、他方側の流路の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体を備えた他方側の絞り弁と、一方室と他方室とを連通する連通路と、連通路の途中に直列配置して設けた一対のオリフィスと、を設け、一方側の弁体に流路面積を減じる方向の推力を与えるよう一方室の圧力を作用させ、弁体に一方室の圧力による推力に対向する推力を与えるよう連通路の途中であって各オリフィス間の圧力を作用させるとともに、他方側の弁体に流路面積を減じる方向の推力を与えるよう他方室の圧力を作用させ、弁体に他方室の圧力による推力に対向する推力を与えるよう連通路の途中であって各オリフィス間の圧力を作用させることを特徴とする緩衝器のバルブ構造。
  3. 連通路の途中であって各オリフィス間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に絞り弁における弁体を附勢する圧力室を設けたことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器のバルブ構造。
  4. 連通路の途中であって各オリフィス間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に一方側の絞り弁における弁体を附勢する一方側の圧力室と、同じく連通路の途中であって各オリフィス間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に他方側の絞り弁における弁体を附勢する他方側の圧力室とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器のバルブ構造。
  5. 流路はメイン流路とサブ流路とを備え、絞り弁はサブ流路を閉じることによって流路面積を減じることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の緩衝器のバルブ構造。
  6. バルブディスクに積層されてポートの上流にメイン流路およびサブ流路に連通される部屋を形成する仕切部材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の緩衝器のバルブ構造。
  7. 弁体は筒状に形成されるとともに、バルブディスクに対して軸方向に不動とされる保持部材を設け、弁体を保持部材の外周に摺動自在に装着して当該弁体と当該保持部材との間に圧力室を画成したことを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の緩衝器のバルブ構造。
  8. 仕切部材に弁体が接近することでサブ流路の流路面積が減じられることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の緩衝器のバルブ構造。
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