以下、本発明のバルブ構造を図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態におけるバルブ構造が具現化された緩衝器のピストン部の縦断面図である。図2は、一実施の形態の緩衝器のバルブ構造が具現化した緩衝器における減衰特性を示す図である。図3は、一実施の形態の一変形例におけるバルブ構造が具現化した緩衝器のピストン部の縦断面図である。
一実施の形態における緩衝器のバルブ構造は、図1に示すように、緩衝器のピストン部の伸側および圧側の両方の減衰バルブに具現化されており、緩衝器内に一方室41と他方室42とを隔成するとともに上記一方室41と他方室42とを連通する一方側のポート2aおよび他方側のポート2bとを備えたバルブディスクたるピストン1と、ピストン1の他方室側面に積層されて一方側のポート2aを開閉する一方側のリーフバルブ10aと、ピストン1の一方室側面に積層されて他方側のポート2bを開閉する他方側のリーフバルブ10bと、一方室41と一方側のポート2aの上流とを連通する一方側の流路7と、他方室42と他方側のポート2bの上流とを連通する他方側の流路8と、一方側の流路7の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体12を備えた一方側の絞り弁11と、他方側の流路8の途中に設けられ流路面積を減じることが可能な弁体14を備えた他方側の絞り弁13と、一方室と他方室とを連通する連通路15と、連通路15の途中に直列配置して設けた一対のオリフィス16a,17aと、連通路15の途中であって各オリフィス16a,17a間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に一方側の絞り弁11における弁体12を附勢する一方側の圧力室18と、同じく連通路15の途中であって各オリフィス16a,17a間の圧力が導かれるとともに当該圧力で流路面積を減じない方向に他方側の絞り弁13における弁体14を附勢する他方側の圧力室19と、一方側の弁体12を一方室41の圧力による推力に対向する方向に附勢する一方側の板バネ25と、他方側の弁体14を他方室42の圧力による推力に対向する方向に附勢する他方側の板バネ29と、を備えて構成されている。
なお、本書においては、各部の説明を容易とするため、一方側のポート2aが開放されるときに機能する部材については一方側の部材とし、他方側のポート2bが開放されるときに機能する部材については他方側の部材として、同一名称の部材を区別してある。
他方、バルブ構造が具現化される緩衝器は、周知であるので詳細には図示して説明しないが、具体的にたとえば、シリンダ40と、シリンダ40の上端を封止するヘッド部材(図示せず)と、ヘッド部材(図示せず)を摺動自在に貫通するピストンロッド5と、軸部材を形成するピストンロッド5の先端5aが挿通されて上記先端5aに固定されるピストン1と、シリンダ40内にピストン1で隔成される図1中上方側の一方室41と下方側の他方室42と、シリンダ40の下端を封止する封止部材(図示せず)と、シリンダ40から出没するピストンロッド5の体積分のシリンダ内容積変化を補償する図示しないリザーバあるいはエア室とを備えて構成され、シリンダ40内には流体、具体的には作動油が充填されている。
そして、上記バルブ構造にあっては、シリンダ40に対してピストン1が図1中上下方に移動して、一方室41と他方室42とをポート2a,2bを介して作動油が行き交うときに、その作動油の流れに対しそれぞれ対応するリーフバルブ10a,10bで抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、緩衝器に所定の減衰力を発生させる減衰力発生要素として機能する。
以下、このバルブ構造について詳しく説明すると、バルブディスクたるピストン1は、環状に形成されて、作動油が一方室41から他方室42へ通過することを許容する一方側のポート2aと、逆に作動油が他方室42から一方室42へ通過することを許容する他方側のポート2bと、各ポート2a,2bの出口端にそれぞれ連なる窓3a,3bと、各ポート2a,2bの出口端となる窓3a,3bの外周側に形成される環状の弁座1a,1bとを備えている。
さらに、この実施の形態の場合、各ポート2a,2bの開口端は、それぞれピストン1に積層される各リーフバルブ10a,10bによって閉塞されないように上記窓3a,3bより外周側に配置されている。なお、一方側のポート2aは、他方側のリーフバルブ10bに閉塞されず、他方側のポート2bは、一方側のリーフバルブ10aに閉塞されなければ、その配置や形状について図示したものに限定されることはなく、たとえば、各ポート2a,2bを同一円周上に配置して弁座1a,1bをいわゆる花弁型とする構成を採用してもよい。
そして、上述のように、ピストン1の内周側には緩衝器のピストンロッド5の先端5aが挿通され、ピストンロッド5の先端5aはピストン1の図1中下方側に突出させてある。また、ピストンロッド5の先端5aの外径は、先端5aより図1中上方側の外径より小径に設定され、上方側と先端5aとの外径が異なる部分に段部5bが形成されている。
さらに、このピストンロッド5は、その先端5aの下端から開口する縦孔15aと、ピストンロッド5の段部5bより上方側の側部から開口して縦孔15aに通じる横孔15bとを備えており、これら縦孔15aと横孔15bとで一方室41と他方室42とを連通する連通路15を形成している。
また、この縦孔15aの図1中下方側には、オリフィス17aを備えたプラグ17,17が螺着され、また、横孔15bには、オリフィス16aを備えたプラグ16,16が螺着されており、緩衝器の伸長行程時には作動油は上記の一方側のポート2aのみならず連通路15を通過して一方室41から他方室42へ移動するとともに、緩衝器の圧縮行程時には作動油は上記の他方側のポート2bのみならず連通路15を通過して他方室42から一方室41へ移動することになり、連通路15には上記オリフィス16a,17aが直列配置されているので、緩衝器の伸縮時には連通路15内であってオリフィス16a,17a間の圧力は一方室41の圧力と他方室42の圧力の間の値を採ることになる。なお、図示したところでは、オリフィス16aおよびオリフィス17aは、二つずつ設けられているが、その数はオリフィス16aおよびオリフィス17aでともに任意であり、連通路15内であってオリフィス16a,17a間の圧力を各オリフィス16a,17aの設置数によって任意に変更することが可能となる。このように、本実施の形態では、オリフィス16a,17aを備えたプラグ16,17を連通路15の途中に設けるようにしているので、オリフィスの数の変更が非常に簡単となるため、連通路15内であってオリフィス16a,17a間の圧力を設定が容易となるが、オリフィス16a,17aの口径を変更することで、上記設定を行うようにしてもよい。すなわち、プラグによってオリフィス径が異なるようにしてもよい。また、オリフィス16a,17aは、連通路15の口径を部分的に小径にして連通路15に直接的に設けることが可能であれば、そのようにしてもよい。
戻って、ピストン1の図1中上下に積層されるリーフバルブ10a,10bは、環状に形成された板を複数枚積層して積層リーフバルブとして構成されており、一方側のリーフバルブ10aは、ピストン1の他方室42側に形成の弁座1aに当接させて、一方側のポート2aの出口端を閉塞し、他方側のリーフバルブ10bは、ピストン1の一方室41側に形成の弁座1bに当接させて、他方側のポート2bの出口端を閉塞している。この実施の形態においては、リーフバルブ10a,10bは、積層リーフバルブとして構成されているが、上記環状の板の枚数は、本バルブ構造で実現する減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)によって任意とされてよく、緩衝器に発生させる減衰特性によって複数枚とされても一枚のみでも差し支えなく、また、緩衝器に発生させる減衰特性によって各リーフの外径を異なるように設定することができる。
さらに、詳しくは図示しないが、弁座1a,1bに着座するリーフバルブ10a,10bの外周には切欠が形成されるか、或いは、弁座1a,1bには打刻されて形成される周知のオリフィスが設けられている。
つづいて、他方側のリーフバルブ10bより図1中上方には、間座31、仕切部材21、大径保持部材22、間座32、環状の板バネ25、間座33、小径保持部材23およびストッパ24が積層されている。さらに、仕切部材21の図1中上方には一方側の絞り弁11における筒状の弁体12が、上記大径保持部材22および小径保持部材23の外周に摺動自在に装着され、当該弁体12は、板バネ25によって図1中上方へ附勢され、その上端がストッパ24に当接して弁体12のそれ以上の上方側への移動が規制されている。
他方、一方側のリーフバルブ10aより図1中下方には、間座34、仕切部材26、大径保持部材27、間座35、環状の板バネ29、間座36、小径保持部材28およびストッパ37が積層され、さらに、仕切部材26の図1中下方には他方側の絞り弁13における筒状の弁体14が、上記大径保持部材27および小径保持部材28の外周に摺動自在に装着され、当該弁体14は、板バネ29によって図1中下方へ附勢され、その下端がストッパ37に当接して弁体14のそれ以上の下方側への移動が規制されている。
そして、ストッパ24、小径保持部材23、間座33、環状の板バネ25、間座32、大径保持部材22、弁体12、仕切部材21、間座31、他方側のリーフバルブ10b、ピストン1、一方側のリーフバルブ10a、間座34、仕切部材26、大径保持部材27、間座35、環状の板バネ29、間座36、小径保持部材28、弁体14およびストッパ37のこれら各部材は、順にピストンロッド5の先端5aに組み付けられ、上記先端5aに設けた螺子溝5cに螺着されるピストンナット30とピストンロッド5の段部5bとで挟持されてピストンロッド5に固定される。
すなわち、このバルブ構造にあっては、ピストン1の上方側の一方室41内に配置される間座31、仕切部材21、大径保持部材22、間座32、環状の板バネ25、間座33、小径保持部材23、弁体12およびストッパ24の構成と、下方側の他方室42内に配置される間座34、仕切部材26、大径保持部材27、間座35、環状の板バネ29、間座36、小径保持部材28、弁体14およびストッパ37の構成とは、ピストン1を境にして天地逆とした線対称の関係にある。
ピストン1の図1中上方に配置される仕切部材21は、底部21aと筒部21bとを備えて有底筒状とされて、筒部21bをピストン1の外周に嵌合させるようにしてピストン1に積層され、ピストン1との間に部屋R1を一方室41から仕切っている。また、仕切部材21における底部21aには、ピストンロッド5の先端5aの挿入が可能な孔21cと、同一円周上に設けられて底部21aを貫通する複数の通孔21dと、同一円周上に設けられて底部21aを貫通するとともに通孔21dより内周側に配置される複数の通孔21eと、通孔21dと通孔21eとの間に設けた環状弁座21fとを備えており、通孔21dと通孔21eで一方側の流路7をメイン流路7aとサブ流路7bに分岐させ、一方側の流路7を成すこれらメイン流路7aとサブ流路7bで、部屋R1を介しつつ、一方室41を一方側のポート2aの上流に連通している。
他方、ピストン1の図1中下方に配置される仕切部材26も、同様に、底部26aと筒部26bとを備えて有底筒状とされて、筒部26bをピストン1の外周に嵌合させるようにしてピストン1に積層され、ピストン1との間に部屋R2を他方室42から仕切っている。また、仕切部材26における底部26aには、ピストンロッド5の先端5aの挿入が可能な孔26cと、同一円周上に設けられて底部26aを貫通する複数の通孔26dと、同一円周上に設けられて底部26aを貫通するとともに通孔26dより内周側に配置される複数の通孔26eと、通孔26dと通孔26eとの間に設けた環状弁座26fとを備えており、通孔26dと通孔26eで他方側の流路8をメイン流路8aとサブ流路8bに分岐させ、他方側の流路8を成すこれらメイン流路8aとサブ流路8bで、部屋R2を介しつつ、他方室42を他方側のポート2bの上流に連通している。
つづいて、弁体12は、筒状とされて、仕切部材21側の内径を大径に設定して形成される大径部12aと反仕切部材側の内径を小径に設定して形成される小径部12bとを備えて構成され、この弁体12は、大径部12aをピストンロッド5に固定されてバルブディスクたるピストン2に対して軸方向に不動とされる大径保持部材22の外周に摺動自在に装着し、小径部12bをピストンロッド5に固定されてバルブディスクたるピストン2に対して軸方向に不動とされる小径保持部材23の外周に摺動自在に装着することで、これら大径保持部材22および小径保持部材23に対して軸方向となる図1中上下方向へ移動可能とされるとともに、当該弁体12と各保持部材22,23との間に一方側の圧力室18を画成している。
大径保持部材22は、この場合、環状とされてピストンロッド5に固定される内周部22aが厚肉に設定されるとともに、内周に形成される環状溝22bと、内周から開口して一方側の圧力室18へ臨む端部に通じる通路22cとを備えて構成されている。
そして、大径保持部材22は、仕切部材21に積層されるとともにピストンロッド5の先端5aに固定されてピストン1に対して軸方向に移動不能とされた状態で、その環状溝22bがピストンロッド5に設けた連通孔15の各オリフィス16a,17a間から分岐される透孔15cに対向するようになっており、これにより一方側の圧力室18が連通孔15に連通されるようになっている。
また、大径保持部材22の内周部22aの外形は、仕切部材21に積層されても通孔21eを塞がない径に設定されるとともに、当該内周部22aの肉厚によって大径保持部材22と仕切部材21との間に一方室41をサブ流路7bへ連通する隙間が形成されるようになっている。
他方、小径保持部材23は、環状とされて、内周側がピストンロッド5に固定され、この小径保持部材23と大径保持部材22とで間座32、板バネ25および間座33を挟持している。すなわち、板バネ25は、一方側の圧力室18内に収容されており、内周側が固定されて自由端となる外周が撓むバネとされている。そして、板バネ25は、複数枚に環状板を積層して構成されており、その外周を弁体12の大径部12aと小径部12bとの境に形成される段部12cに当接して撓んでおり、弁体12を仕切部材21から遠ざかる方向へ附勢している。
さらに、一方側の圧力室18は、大径保持部材22に設けた通路22c、環状溝22bおよびピストンロッド5に設けた透孔15cを介して連通孔15の各オリフィス16a,17a間に連通され、当該圧力室18内には、連通孔15の各オリフィス16a,17a間の圧力(以下、単に「二次圧力」という)が導かれるようになっている。
なお、板バネ25の環状板のうち弁体12に当接する図1中最上方に配置される環状板の外周には切欠25aが設けられており、板バネ25と弁体12と小径保持部材23で形成される空間が圧力室18と隔絶されることがないようになっており、板バネ25の上下面に作用する圧力が等しくなるようになっている。また、板バネ25の環状板の枚数は、任意であり、単数であってもよい。
さらに、間座31は、リーフバルブ10bより小径の環状板を複数枚積層して構成されているが、当該環状板の積層枚数はリーフバルブ10bの厚みに応じて任意とされ、また、一枚の肉厚の環状板のみで構成されてもよい。そして、間座32,33にあっても、板バネ25より小径の環状板を複数枚積層して構成されているが、当該環状板の積層枚数は板バネ25の厚みに応じて任意とされ、また、一枚の肉厚の環状板のみで構成されてもよい。
戻って、当該弁体12は、板バネ25によって、図1中上方側へ附勢されて、何ら他に力が作用しない状態ではストッパ24で規制する図中最上方に配置される。すなわち、弁体12は、一方室41内に配置されて、小径部12bの図1中上面を受圧面積として作用する一方室41の圧力によって下方へ附勢され、反対に、大径部12aの図1中下面を受圧面積として作用する一方室41の圧力と、段部12cの図1中下面の面積を受圧面積として作用する一方側の圧力室18の圧力と、板バネ25のバネ力によって上方へ附勢されている。したがって、一方室41の圧力は、大径部12aの内縁と小径部12bの内縁とで囲われる面積を受圧面積として弁体12を下方へ附勢し、反対に、一方側の圧力室18の圧力は、大径部12aの内縁と小径部12bの内縁とで囲われる面積を受圧面積として弁体12を上方へ附勢していることになる。
なお、弁体12の小径部12bの上面に設けた溝12dは、弁体12がストッパ24に密着した状態となっても当該密着部分に溝12dを介して一方室41内の圧力を導いて弁体12の図1中上面全体に一方室41内の圧力を作用させることができるようになっている。
そして、この一方側の絞り弁11は、弁体12と板バネ25と仕切部材21に設けた環状弁座21fとで構成されており、弁体12が板バネ25の附勢力に抗して、図1中下方へ移動すると、大径部12aが仕切部材21に設けた環状弁座21fに接近してサブ流路7bにおける流路面積を減じるようになっており、最終的には、弁体12における大径部12aの図1中下端が環状弁座21fに着座すると、サブ流路7bによる一方室41と部屋R1との連通を遮断するようになって、一方側の流路7の流路面積を、メイン流路7aの流路面積にまで減少させるようになっている。
つまり、弁体12には、受圧面積差により流路面積を減じる方向となる図1中下向きの推力を与えるように一方室41の圧力が作用するとともに、当該一方室41の圧力による推力に対向する図1中上向きの推力を与えるよう二次圧力が作用することになって、結果的に弁体12には下向きの推力と上向きの推力の合力が流路面積を減じる方向となる図1中下方へ向けて作用し、一方室41の圧力と二次圧力との差が大きくなると板バネ25のバネ力に抗して弁体12は図1中下方に移動して一方側の流路7の流路面積を減じるように動作する。そして、この実施の形態の場合、弁体12に上記の如く各推力を作用させるのに、一方側の圧力室18を設けてこれを実現している。
詳しくは、シリンダ40に対してピストン1が図1中上方に移動する緩衝器の伸長行程時において、一方側の絞り弁11における弁体12には、一方側の圧力室18の断面積を受圧面積として作用する高圧となる一方室41内の圧力による図1中下向きの推力および一方側の圧力室18に導かれる連通路15内の低圧となる二次圧力による図1中上向きの推力の合力である図1中下向きの力と、板バネ25の図1中上向きの力が作用する。そして、上記合力が板バネ25による力を上回ると、一方側の絞り弁11における弁体12は、仕切部材21側となる図1中下方へ移動せしめられ、仕切部材21に接近することで通孔21eに通じるサブ流路7bの流路面積を狭めて一方側の流路7の流路面積を減じるようになる。
つまり、この一方側の絞り弁11は、一方室41の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると弁体12が図1中下方へ移動して一方側の流路7を絞って流路面積を減じ、この実施の形態の場合、最終的には、サブ流路7bを遮断してメイン流路7aのみで一方室41と一方側のポート2aの上流とを連通するのみとする。この実施の形態の場合、一方側の絞り弁11が一方側の流路7のうちサブ流路7bを閉じるようにしているので、一方側の流路7を最大限に絞ったときの最終的な流路面積をメイン流路7aにて設定可能である点で有利であるが、一方側の流路7を分岐させずに単一の流路を一方側の絞り弁11で絞るようにしてもよい。なお、単一の流路を絞る場合、完全に流路を遮断すると一方室41と他方室42との連通が断たれるので、完全に流路を遮断しないようにすればよい。
そして、この発明では、弁体12に作用する一方室41内の圧力による図1中下向きの推力に対向する推力を生じせしめる源泉としてバネ定数を大きく設定できる板バネ25を用いているため、上記弁体12が最上方にあってストッパ24に当接して一方側の流路7の流路面積を最大とする位置から環状弁座21fに当接して当該流路7の流路面積を最小とする位置まで変位するまで、仕切部材21と弁体12との間の環状隙間の面積、つまり、サブ流路7bの流路面積を急激に変化させずに、一方室41内の圧力の高まりに応じて徐々に漸減させることができるようになっている。すなわち、弁体12は、一方室41の圧力が二次圧力を所定量上回ってその圧力差が大きくなればなるほど仕切部材21の環状弁座21fへ接近して一方側の流路7を大きく絞るように機能する。
また、一方室41の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると、弁体12がサブ流路7bを絞り始めるが、上記所定量の設定は、一方室41の圧力と二次圧力とが作用する受圧面積となる一方側の圧力室18の断面積、板バネ25のバネ定数、二次圧力を調節するオリフィス16a,17aの数とオリフィス径を調節することで任意に設定することができるが、この場合、緩衝器のピストン速度が中速と高速との境に設定されている。
さらに、板バネ25を用いることで、コイルスプリングに比較して軸方向となる図1中上下方向の長さを短く設定することができ、一方側の絞り弁11を含むピストン部における全長を短く設定することができ、緩衝器におけるストローク長の確保が容易となる。また、この実施の形態にあっては、板バネ25が一方側の圧力室18内に収容される構成を採用しているため、板バネ25を弁体12の内周に並列配置することができ、この点においても、一方側の絞り弁11を含むピストン部における全長を短く設定することができ、緩衝器におけるストローク長の確保がより一層容易となる。
転じて、一方側のリーフバルブ10aの図1中下方側に配置される弁体14も、上述の弁体12と同様の構成とされて、仕切部材26側の内径を大径に設定して形成される大径部14aと反仕切部材側の内径を小径に設定して形成される小径部14bとを備えて構成され、この弁体14は、大径部14aをピストンロッド5に固定されてバルブディスクたるピストン2に対して軸方向に不動とされる大径保持部材27の外周に摺動自在に装着し、小径部14bをピストンロッド5に固定されてバルブディスクたるピストン2に対して軸方向に不動とされる小径保持部材28の外周に摺動自在に装着することで、これら大径保持部材27および小径保持部材28に対して軸方向となる図1中上下方向へ移動可能とされるとともに、当該弁体14と各保持部材27,28との間に他方側の圧力室19を画成している。
大径保持部材27もまた上記した弁体14を保持する大径保持部材22と同様に、環状とされてピストンロッド5に固定される内周部27aが肉厚に設定されており、内周に形成される環状溝27bと、内周から開口して他方側の圧力室19へ臨む端部に通じる通路27cとを備えて構成されている。
そして、大径保持部材27は、仕切部材26に積層されるとともにピストンロッド5の先端5aに固定されてピストン1に対して軸方向に移動不能とされた状態で、その環状溝27bがピストンロッド5に設けた連通孔15の各オリフィス16a,17a間から分岐される透孔15dに対向するようになっており、これにより他方側の圧力室19が連通孔15に連通されるようになっている。
また、大径保持部材27の内周部27aの外形は、仕切部材26に積層されても通孔26eを塞がない径に設定されるとともに、当該内周部27aの肉厚によって大径保持部材27と仕切部材26との間に他方室42をサブ流路8bへ連通する隙間が形成されるようになっている。
他方、小径保持部材28も上記小径保持部23と同様に、環状とされて、内周側がピストンロッド5に固定され、この小径保持部材28と大径保持部材27とで間座35、板バネ29および間座36を挟持している。すなわち、板バネ29は、他方側の圧力室19内に収容されており、内周側が固定されて自由端となる外周が撓むバネとされている。そして、板バネ29は、複数枚に環状板を積層して構成されており、その外周を弁体14の大径部14aと小径部14bとの境に形成される段部14cに当接して撓んでおり、弁体14を仕切部材26から遠ざかる方向へ附勢している。
さらに、他方側の圧力室19は、大径保持部材27に設けた通路27c、環状溝27bおよびピストンロッド5に設けた透孔15dを介して連通孔15の各オリフィス16a,17a間に連通され、当該圧力室19内には、連通孔15の各オリフィス16a,17a間の圧力(以下、単に「二次圧力」という)が導かれるようになっている。
なお、板バネ29の環状板のうち弁体14に当接する図1中最下方に配置される環状板の外周には切欠29aが設けられており、板バネ29と弁体14と小径保持部材28で形成される空間が圧力室19と隔絶されることがないようになっており、板バネ29の上下面に作用する圧力が等しくなるようになっている。また、板バネ29の環状板の枚数は、任意であり、単数であってもよい。
さらに、間座34は、リーフバルブ10aより小径の環状板を複数枚積層して構成されているが、当該環状板の積層枚数はリーフバルブ10aの厚みに応じて任意とされ、また、一枚の肉厚の環状板のみで構成されてもよい。そして、間座35,36にあっても、板バネ29より小径の環状板を複数枚積層して構成されているが、当該環状板の積層枚数は板バネ29の厚みに応じて任意とされ、また、一枚の肉厚の環状板のみで構成されてもよい。
戻って、当該弁体14は、板バネ29によって、図1中下方側へ附勢されて、何ら他に力が作用しない状態ではストッパ37で規制する図中最下方に配置される。すなわち、弁体14は、他方室42内に配置されて、小径部14bの図1中下面を受圧面積として作用する他方室42の圧力によって上方へ附勢され、反対に、大径部14aの図1中上面を受圧面積として作用する他方室42の圧力と、段部14cの図1中上面の面積を受圧面積として作用する他方側の圧力室19の圧力と、板バネ29のバネ力によって下方へ附勢されている。したがって、他方室42の圧力は、大径部14aの内縁と小径部14bの内縁とで囲われる面積を受圧面積として弁体14を上方へ附勢し、反対に、他方側の圧力室19の圧力は、大径部14aの内縁と小径部14bの内縁とで囲われる面積を受圧面積として弁体14を下方へ附勢していることになる。
なお、弁体14の小径部14bの下面に設けた溝14dは、弁体14がストッパ37に密着した状態となっても当該密着部分に溝14dを介して他方室42内の圧力を導いて弁体14の図1中下面全体に他方室42内の圧力を作用させることができるようになっている。また、本実施の形態においては、ストッパ37を用いて弁体14の移動下限を決するようにしているが、ピストンナット30の図1中上端の径を図より大きく設定して当該ピストンナット30にストッパとしての機能を果させるようにしてもよい。
そして、この他方側の絞り弁13は、弁体14と板バネ29と仕切部材26に設けた環状弁座26fとで構成されており、弁体14が板バネ29の附勢力に抗して、図1中上方へ移動すると、大径部14aが仕切部材26に設けた環状弁座26fに接近してサブ流路8bにおける流路面積を減じるようになっており、最終的には、弁体14における大径部14aの図1中上端が環状弁座26fに着座すると、サブ流路8bによる他方室42と部屋R2との連通を遮断するようになって、他方側の流路8の流路面積を、メイン流路8aの流路面積にまで減少させるようになっている。
つまり、弁体14には、受圧面積差により流路面積を減じる方向となる図1中上向きの推力を与えるように他方室42の圧力が作用するとともに、当該他方室42の圧力による推力に対向する図1中下向きの推力を与えるよう二次圧力が作用することになって、結果的に弁体14には下向きの推力と上向きの推力の合力が流路面積を減じる方向となる図1中上方へ向けて作用し、他方室42の圧力と二次圧力との差が大きくなると板バネ29のバネ力に抗して弁体14は図1中上方に移動して他方側の流路8の流路面積を減じるように動作する。そして、この実施の形態の場合、弁体14に上記の如く各推力を作用させるのに、他方側の圧力室19を設けてこれを実現している。
詳しくは、シリンダ40に対してピストン1が図1中下方に移動する緩衝器の圧縮行程時において、他方側の絞り弁13における弁体14には、他方側の圧力室19の断面積を受圧面積として作用する高圧となる他方室42内の圧力による図1中上向きの推力と、他方側の圧力室19に導かれる連通路15内の低圧となる二次圧力による図1中下向きの推力の合力である図1中上向きの力と、板バネ29の図1中下向きの力が作用する。そして、上記合力が板バネ29による力を上回ると、他方側の絞り弁13における弁体14は、仕切部材26側となる図1中上方へ移動せしめられ、仕切部材26に接近することで通孔26eに通じるサブ流路8bの流路面積を狭めて他方側の流路8の流路面積を減じるようになる。
つまり、この他方側の絞り弁13は、他方室42の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると弁体14が図1中上方へ移動して他方側の流路8を絞って流路面積を減じ、この実施の形態の場合、最終的には、サブ流路8bを遮断してメイン流路8aのみで他方室42と他方側のポート2bの上流とを連通するのみとする。この実施の形態の場合、他方側の絞り弁13が他方側の流路8のうちサブ流路8bを閉じるようにしているので、他方側の流路8を最大限に絞ったときの最終的な流路面積をメイン流路8aにて設定可能である点で有利であるが、他方側の流路8を分岐させずに単一の流路を他方側の絞り弁13で絞るようにしてもよい。なお、単一の流路を絞る場合、完全に流路を遮断すると一方室41と他方室42との連通が断たれるので、完全に流路を遮断しないようにすればよい。
このように、この発明では、他方室42側に配置される絞り弁13にあっても、弁体14に作用する他方室42内の圧力による図1中上向きの推力に対向する推力を生じせしめる源泉としてバネ定数を大きく設定できる板バネ29を用いている。そのため、上記弁体14が最上方にあってストッパ37に当接して他方側の流路8の流路面積を最大とする位置から環状弁座26fに当接して当該流路8の流路面積を最小とする位置まで変位するまで、仕切部材26と弁体14との間の環状隙間の面積、つまり、サブ流路8bの流路面積を急激に変化させずに、他方室42内の圧力の高まりに応じて徐々に漸減させることができるようになっている。すなわち、弁体14は、他方室42の圧力が二次圧力を所定量上回ってその圧力差が大きくなればなるほど仕切部材26の環状弁座26fへ接近して他方側の流路8を大きく絞るように機能する。
また、他方室42の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回ると、弁体14がサブ流路8bを絞り始めるが、上記所定量の設定は、他方室42の圧力と二次圧力とが作用する受圧面積となる圧力室19の断面積、板バネ29のバネ定数、二次圧力を調節するオリフィス16a,17aの数とオリフィス径を調節することで任意に設定することができるが、この場合、緩衝器のピストン速度が中速と高速との境に設定されている。
さらに、板バネ29を用いることで、コイルスプリングに比較して軸方向となる図1中上下方向の長さを短く設定することができ、他方側の絞り弁13を含むピストン部における全長を短く設定することができ、緩衝器におけるストローク長の確保が容易となる。また、この実施の形態にあっては、板バネ29が他方側の圧力室19内に収容される構成を採用しているため、板バネ29を弁体14の内周に並列配置することができ、この点においても、他方側の絞り弁13を含むピストン部における全長を短く設定することができ、緩衝器におけるストローク長の確保がより一層容易となる。
なお、当然であるが、緩衝器の伸長行程時に一方側の絞り弁11が一方側の流路7を絞り始める基準となる一方室41の圧力が二次圧力を上回るべき所定量と、緩衝器の圧縮行程時に他方側の絞り弁13が他方側の流路8を絞り始める基準となる他方室42の圧力が二次圧力を上回るべき所定量とは、異なるものとされても良い。
また、各絞り弁11,13の構成において、弁体12,14は筒状とされ、各保持部材22,23,27,28にそれぞれ装着されるので、弁体12,14は保持部材22,23,27,28にガイドされて良好な作動が保証されるとともに圧力室18,19の形成が簡単となるばかりでなく、バルブの組立が容易となるが、弁体12,14の形状、構成は、それぞれ、一方側の流路7および他方側の流路8に適するように設計変更することができることは当然である。
つづいて、上述のように構成されたバルブ構造の作用について説明する。まず、緩衝器が伸長行程にあり、ピストン1がシリンダ40に対して図1中上方側に移動すると、一方室41内の圧力が高まり、一方室41内の作動油は一方側のポート2aおよび連通路15を通過して他方室42内に移動しようとする。
そして、緩衝器の伸縮速度となるピストン速度が低速領域にある場合、作動油は、上述の弁座1aに着座するリーフバルブ10aの外周に設けた切欠あるいは弁座1aに打刻によって形成されるオリフィスとオリフィス16a,17aを備えた連通路15を通過し、その後のピストン速度が上昇して中速領域に達すると、作動油は、リーフバルブ10aの外周を撓ませて、リーフバルブ10aと弁座1aと間の隙間をも通過するようになる。なお、連通路15内の各オリフィス16a,17a間における二次圧力は、作動油の各オリフィス16a,17a通過時に生じる圧力損失により一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との間の値を採る。
このピストン速度が低中速領域にある場合、一方室41内の圧力が連通路15内の上記した二次圧力を所定量上回ることがないように、その所定量が設定されており、ピストン速度が中速領域にある場合では、弁体12は板バネ25の附勢力に抗して図1中下方へ移動することができず、一方側の絞り弁11が一方側の流路7を絞って流路面積を減じない。
そのため、ピストン速度が低中速領域にある場合には、一方側のリーフバルブ10aおよび連通路15のオリフィス16a,17aによる減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)を呈することとなる。そして、リーフバルブ10aの剛性を低く設定しておくことにより、図2に示すが如く、ピストン速度が中速領域における減衰特性の傾きを小さくし、発生減衰力が低くなるよう設定することができる。なお、他方側の絞り弁13は、圧力室19内に他方室42内の圧力より高い二次圧力が作用しており、他方側の流路8を絞ることが無いので、緩衝器の伸長行程時に他方側の絞り弁13が動作することが無く、緩衝器の伸側の減衰力に影響を与えることが無い。
他方、ピストン1の速度が高速領域に達して、一方室41内の圧力と他方室42内の圧力との差が大きくなり、一方室41内の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回るようになると、弁体12を図1中下方へ押圧する上記合力が板バネ25の力を上回って、弁体12は、図1中下方へ押し下げられて、サブ流路7bを絞って一方側の流路7の流路面積を減じるようになる。
ピストン速度が高速領域に達してから、一方室41内の圧力と連通路15内の二次圧力との差がさらに増大していくと、弁体12は、流路面積を圧力差に応じて徐々に漸減させていき、最終的には、仕切部材21の環状弁座21fに当接して通孔21eによる一方室41と他方室42との連通を断ってサブ流路7bを閉塞し、メイン流路7aのみで一方室41と他方室42とを連通させて一方側の流路7の流路面積を最小とする。
したがって、ピストン1の速度が高速領域にある場合、一方室41の圧力と連通路15内の二次圧力の圧力差の増大に伴って一方側の流路7の流路面積が漸減されるので、ピストン1の速度の増加に伴って圧力損失も徐々に増加することになる。
つまり、ピストン速度が高速領域に達して一方側の流路7を一方側の絞り弁11が絞り初めて絞り終わる間における減衰特性は、図2に示すように、流路面積が徐々に制限されるので、中速領域にあるときよりも傾きが大きくなり、ピストン1の速度の増加に伴って減衰力も増加する。なお、一方側の絞り弁11が一方側の流路7の流路面積を最小とした後のピストン速度の増加に対しては、減衰特性の傾きが再度小さくなるが流路面積が小さくなる分、減衰力は高くなる。
逆に、緩衝器が圧縮行程にあってピストン1がシリンダ40に対して図1中下方側に移動する場合には、ピストン1の上方側に配置されるバルブ構造の構成がピストン1の下方側に配置される構成とが互いに天地逆となった構成とされているので、上記した処と同様の作動を呈することになる。
詳しくは、緩衝器が圧縮行程にあり、ピストン1がシリンダ40に対して図1中下方側に移動すると、他方室42内の圧力が高まり、他方室42内の作動油は他方側のポート2bおよび連通路15を通過して一方室41内に移動しようとする。
そして、緩衝器の伸縮速度となるピストン速度が低速領域にある場合、作動油は、上述の弁座1bに着座するリーフバルブ10bの外周に設けた切欠あるいは弁座1bに打刻によって形成されるオリフィスとオリフィス16a,17aを備えた連通路15を通過し、その後のピストン速度が上昇して中速領域に達すると、作動油は、リーフバルブ10bの外周を撓ませて、リーフバルブ10bと弁座1bと間の隙間をも通過するようになる。なお、連通路15内の各オリフィス16a,17a間における二次圧力は、作動油の各オリフィス16a,17a通過時に生じる圧力損失により他方室42内の圧力と一方室41内の圧力との間の値を採る。
このピストン速度が低中速領域にある場合、他方室42内の圧力が連通路15内の上記した二次圧力を所定量上回ることがないように、その所定量が設定されており、ピストン速度が中速領域にある場合では、弁体14は板バネ29の附勢力に抗して図1中上方へ移動することができず、他方側の絞り弁13が他方側の流路8を絞って流路面積を減じない。
そのため、ピストン速度が低中速領域にある場合には、他方側のリーフバルブ10bおよび連通路15のオリフィス16a,17aによる減衰特性を呈することとなる。そして、リーフバルブ10bの剛性を低く設定しておくことにより、図2に示すが如く、ピストン速度が中速領域における減衰特性の傾きを小さくし、発生減衰力が低くなるよう設定することができる。なお、一方側の絞り弁11は、圧力室18内に一方室41内の圧力より高い二次圧力が作用しており、一方側の流路7を絞ることが無いので、緩衝器の圧縮行程時に一方側の絞り弁11が動作することが無く、緩衝器の圧側の減衰力に影響を与えることが無い。
他方、ピストン1の速度が高速領域に達して、他方室42内の圧力と一方室41内の圧力との差が大きくなり、他方室42内の圧力が連通路15内の二次圧力を所定量上回るようになると、弁体14を図1中上方へ押圧する上記合力が板バネ29の力を上回って、弁体14は図1中上方へ押し上げられて、サブ流路8bを絞って他方側の流路8の流路面積を減じるようになる。
ピストン速度が高速領域に達してから、他方室42内の圧力と連通路15内の二次圧力との差がさらに増大していくと、弁体14は、流路面積を圧力差に応じて漸減させていき、最終的には、仕切部材26の環状弁座26fに当接して通孔26eによる他方室42と一方室41との連通を断ってサブ流路8bを閉塞し、メイン流路8aのみで他方室42と一方室41とを連通させて他方側の流路8の流路面積を最小とする。
したがって、ピストン1の速度が高速領域にある場合、他方室42の圧力と連通路15内の二次圧力の圧力差の増大に伴って他方側の流路8の流路面積が漸減されるので、ピストン1の速度の増加に伴って圧力損失も徐々に増加し、することになる。
つまり、ピストン速度が高速領域に達して他方側の流路8を他方側の絞り弁13が絞り初めて絞り終わる間における減衰特性は、図2に示すように、流路面積が徐々に制限されるので、中速領域にあるときよりも傾きが大きくなり、ピストン1の速度の増加に伴って減衰力も増加する。なお、他方側の絞り弁13が他方側の流路8の流路面積を最小とした後のピストン速度の増加に対しては、減衰特性の傾きは再度小さくなるが流路面積が小さくなる分、減衰力は高くなる。
このように、本実施の形態の緩衝器のバルブ構造にあっては、ピストン速度が中速領域にある場合には、減衰力を低く抑えつつ、ピストン速度が高速領域に達すると、ピストン速度が中速領域にある場合よりも減衰力を大きくすることができ、ピストン速度が高速領域に達する場合にあっても減衰力が不足することがなく、振動抑制が充分に行われ、車両における乗り心地を向上することができる。
また、緩衝器が最伸長するような振幅が大きく、かつ、ピストン速度が高速領域に達するような状況下にあっては、緩衝器の発生減衰力を大きくすることができるので、ピストン速度を速やかに低減することができ、最伸長時の衝撃を緩和することができる。
さらに、圧力室18,19へは、連通路15内であってオリフィス16a,17a間の二次圧力を導くようにしているので、単一の連通路15を設置するのみで、絞り弁11,13の両方を作動させることができるので、加工も簡単となり、製造コストも悪化することが無い。
また、コイルスプリング等でリーフバルブ10a,10bの背面を附勢する構成を採用していないので、リーフバルブ10a,10bの背面を附勢する附勢力のバラツキによって製品毎の減衰特性にバラツキが生じてしまうような心配が無く、緩衝器のバルブ構造の信頼性および安定性が向上する。
そして、このバルブ構造では、弁体12,14を附勢するバネにバネ定数を大きく設定できる板バネ25,29を用いているため、流路7,8の流路面積をピストン速度に応じて徐々に漸減させることができるため、図2に示したように、ピストン速度が高速領域にあるときのピストン速度の増加に対する減衰力の増加の割合を小さくすることができ、急激に減衰力が変化することがなく、車両搭乗者に急激な減衰力変化による違和感を抱かせたり、ショックを感じさせたりすることが無く、後述のように異音の発生を抑制できるので、より一層乗り心地を向上することができる。
さらに、バネ定数を大きく設定できる板バネ25(29)を用いることにより、弁体12(14)を附勢する附勢力を大きくすることができるので、当該板バネ25(29)によって絞り弁11(13)で流路7(8)を絞った状態から一方室41(他方室42)の圧力減少見合いで弁体12(14)を確実に環状弁座21f(26f)から後退せしめることができ、緩衝器のピストン速度の変化に対して絞り弁11(13)の開度にヒステリシスを生じさせず、緩衝器のピストン速度の変化に対する発生減衰力にヒステリシスが生じてしまうことを阻止できる。
そして、さらに、バネ定数を大きく設定できる板バネ25(29)を用いることにより、弁体12(14)が急激に変位することが無いので、環状弁座21f(26f)に激しく衝突することを阻止でき、弁体12(14)と環状弁座21f(26f)の衝突による打音を小さくして緩衝器の異音発生を抑制することができる。
また、一方側の流路7および他方側の流路8がメイン流路7a,8aとサブ流路7b,8bとを備えて、一方側および他方側の絞り弁11,13がサブ流路7b,8bを閉じる事によって流路面積を減じるようになっているので、流路面積が最小の状態となるときにはメイン流路7a,8aのみが連通される状態となり、ピストン速度が高速領域にある場合の減衰力を流路7,8の絞り度合で設定する必要が無く、この点においても、ピストン速度が高速以上となる場合における減衰特性が安定するとともに、製品毎に減衰特性がばらついてしまうこともない。また、上記したように、流路7,8の絞り度合で減衰力を設定する必要が無いので、板バネ25,29におけるバネ定数に多少のバラツキがあっても、大きく減衰特性が変わってしまう心配もない。
さらに、仕切部材21,26をバルブディスクたるピストン1に積層するだけでポート2a,2bの上流にメイン流路7a,8aおよびサブ流路7b,8bを形成することができるので、メイン流路7a,8aおよびサブ流路7b,8bを備えた流路7,8の形成が容易で、バルブ構造の組立加工も容易となる利点がある。
引き続き、図3に示した一実施の形態の一変形例におけるバルブ構造について説明する。
この一変形例におけるバルブ構造は、一方側の絞り弁11および他方側の絞り弁13における弁体の形状が異なっており、その他の構成は一実施の形態のバルブ構造と同様であり、以下では異なる点について説明し、同じ部材については同様の符号を付して説明を省略する。
他の実施の形態におけるバルブ構造が一実施の形態のバルブ構造と異なるのは、具体的には、図3に示したように、一方側の絞り弁11および他方側の絞り弁13における弁体51,52が、筒状とされて、仕切部材21,26側の内径を大径に設定して形成される大径部51a,52aと反仕切部材側の内径を小径に設定して形成される小径部51b,52bと、大径部51a,52aと小径部51b,52bとの間の中間部分の内径を小径部51b,52bよりも小径に設定して形成されるバネ支持部51c,52cとを備えて構成されており、これら弁体51,52は、おのおの大径部51a,52aをピストンロッド5に固定されてバルブディスクたるピストン2に対して軸方向に不動とされる大径保持部材22,27の外周に摺動自在に装着し、小径部51b,52bをピストンロッド5に固定されてバルブディスクたるピストン2に対して軸方向に不動とされる小径保持部材23,28の外周に摺動自在に装着することで、これら大径保持部材22,27および小径保持部材23,28に対して軸方向となる図3中上下方向へ移動可能とされるとともに、弁体51は各保持部材22,23との間に一方側の圧力室18を画成し、弁体52は各保持部材27,28との間に他方側の圧力室19を画成している。
そして、板バネ25は、その外周を弁体51のバネ支持部51cの図3中下端に当接して撓んでおり、弁体51は当該板バネ25によって仕切部材21から遠ざかる方向へ附勢され、他方の板バネ29は、その外周を弁体52のバネ支持部52cの図3中上端に当接して撓んでおり、弁体52は当該板バネ29によって仕切部材26から遠ざかる方向へ附勢されている。
この弁体51にあっては、大径部51aと小径部51bとの間のバネ支持部51cにおける内径が最小径に設定されているため、当該バネ支持部51cの図3中上端が小径保持部材23の図3中下端に当接することで、弁体51のそれ以上の上方側への移動が規制されるため、この一変形例におけるバルブ構造にあってはストッパ24を廃している。なお、バネ支持部51cの図3中上端には、溝51dが形成されており、バネ支持部51cの図3中上端が小径保持部材23へ密着しても、当該密着部分に溝51dを介して一方側の圧力室18内の圧力を導いてバネ支持部51cの図3中上面全体に圧力室18の圧力を作用させることができるようになっている。
同様に、弁体52においても、バネ支持部52cの図3中下端が小径保持部材28の図3中上端に当接することで、弁体52のそれ以上の下方側への移動が規制されるため、この一変形例におけるバルブ構造にあってはストッパ37を廃している。なお、バネ支持部52cの図3中下端には、溝52dが形成されており、バネ支持部52cの図3中下端が小径保持部材28へ密着しても、当該密着部分に溝52dを介して他方側の圧力室19内の圧力を導いてバネ支持部52cの図3中下面全体に圧力室19の圧力を作用させることができるようになっている。
このように構成された一変形例におけるバルブ構造にあっても、一実施の形態の弁体12(14)と同様に、一方室41(他方室42)の圧力とこれに対向する圧力室18(19)の圧力が大径部51a,52aの内縁と小径部52a,52aの内縁とで囲われる受圧面積に作用することになり、ピストン速度が高速領域となると、板バネ25(29)に抗して弁体51(52)が環状弁座21f(26f)へ接近して流路7(8)を絞るため、緩衝器は図2に示すが如くの減衰力を発生することになるので、一実施の形態のバルブ構造と同様に、上記した種々の作用効果を奏することができる。
また、弁体51(52)が板バネ25(29)が当接するバネ支持部51c(52c)を設けているので、板バネ25(29)の径に依存せずに、一方室41(他方室42)の圧力とこれに対向する圧力室18(19)の圧力が作用する大径部51a,52aの内縁と小径部52a,52aの内縁とで囲われる面積、すなわち、受圧面積を設定することができる。したがって、受圧面積を一実施の形態のバルブ構造よりも小さく設定することが可能となり、これによって、板バネ25(29)のバネ定数を小さく設定しても、一実施の形態のバルブ構造における上記した作用効果を享受することができ、板バネ25(29)の厚みを薄くすることでピストン部の軸方向の全長をより短くして、緩衝器のストローク長の確保が一実施の形態のバルブ構造に比較してより一層容易となる。
なお、本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、ピストン速度に低速、中速および高速でなる区分を設けているが、これらの区分の境の速度はそれぞれ任意に設定することができる。
また、上記したところでは、緩衝器のピストン部の伸圧両側の減衰バルブに具現化した例を用いて本発明のバルブ構造を説明しているが、伸側のみ、あるいは、圧側のみの減衰バルブに具現化することも可能で、さらには、ベースバルブ部に具現化することも可能であり、およそ減衰力を発生する減衰力発生要素として機能する緩衝器のバルブに適用することが可能なことは勿論である。すなわち、バルブ構造がベースバルブ部に具現化される場合には、一方室をピストン側室あるいはリザーバ室の一方とし、他方室をピストン側室あるいはリザーバ室の他方とすればよい。
以上で緩衝器のバルブ構造の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。