以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
図1,4,5に示すように、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Dは、伸側室L1と圧側室L2(二つの部屋)を区画するピストン(バルブディスク)1と、前記ピストン1に形成されて前記伸側室L1と圧側室L2を連通する通路2A,2Bと、前記ピストン1に積層されて前記通路2A,2Bを開閉し、前記通路2A,2Bと連通する孔40a,50aが形成される第一リーフバルブ40,50と、前記第一リーフバルブ40,50の背面側に設けられ前記孔40a,50aと連通する空間SA,SBを囲う環状のリング43,53と、前記第一リーフバルブ40,50の背面側に積層されて前記リング43,53に着座する第二リーフバルブ41,51と、前記第二リーフバルブ41,51に形成されて前記リング43,53の内周側と外周側とを連通する切欠41a,51aと、前記孔40a,50a、前記空間SA,SB及び前記切欠41a,51aを通る分岐通路20,21の途中に設けられる絞りと、前記リング43,53の内周側に設けられて前記孔40a,50aを開閉するチェック弁9A,9Bとを備えている。
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る緩衝器Dは、自動車の車体と車輪との間に介装されて車体の制振に使用される。緩衝器Dは、図1に示すように、筒状のシリンダCと、このシリンダC内に摺動可能に挿入されるピストン1と、一端がこのピストン1に連結されて他端がシリンダC外に延びるロッド6と、シリンダCの反ロッド側の内周面に摺動可能に挿入されるフリーピストン7とを備えている。そして、シリンダC内には、ピストン1で区画されて作動油が満たされる二つの部屋(L1,L2)と、これらの部屋(L1,L2)のうち、ピストン1側の部屋(L2)とフリーピストン7で区画されて気体が封入される気室Gとが形成されている。以下、作動油が満たされる二つの部屋(L1,L2)のうち、図1中上側となるロッド6側の部屋を伸側室L1、図1中下側となるピストン1側の部屋を圧側室L2とする。
本実施の形態において、シリンダCが車輪側に連結されるとともに、このシリンダCから突出するロッド6の他端が車体側に連結されて緩衝器Dが正立型に設定されており、路面凹凸による衝撃が車輪に入力されると、シリンダCにロッド6が出入りして緩衝器Dが伸縮する。また、緩衝器Dが伸縮する際のロッド出没体積分のシリンダ内容積変化を、フリーピストン7の移動に伴う気室Gの膨縮で補償できるようになっており、緩衝器Dが単筒型に設定されている。
なお、緩衝器Dの構成は、前記の限りではなく、適宜変更することが可能である。例えば、シリンダCが車体側に連結されるとともにロッド6が車輪側に連結されて緩衝器Dが倒立型に設定されるとしてもよい。また、シリンダCの外周に外筒を設けて緩衝器Dを複筒型に設定し、シリンダCと外筒との間に形成されるリザーバに作動油と気体を封入して当該リザーバでロッド出没体積分のシリンダ内容積変化を補償できるようにしてもよい。このように、緩衝器Dを複筒型に設定する場合には、リザーバと圧側室L2とを本発明に係るバルブディスクで区画するようにしてもよい。さらに、本実施の形態において、減衰力発生用に作動油を利用しているが、作動油以外の液体や気体を利用するとしてもよい。
つづいて、本実施の形態において、シリンダC内に摺動可能に挿入されるピストン1が、本発明に係るバルブディスクであり、前記したように伸側室L1と圧側室L2の二つの部屋を区画している。ピストン1は、ロッド6の挿通を許容する中心孔10(図2,3)を備えて環状に形成されており、当該ピストン1の上下にそれぞれ積層される弁体4,5とともにロッド6の取付部60外周にナット61で保持されている。
図2,3に示すように、ピストン1には、当該ピストン1を軸方向に貫通する通路2A,2Bが形成されている。通路2A,2Bには、伸長行程で開く通路2Aと、圧縮行程で開く通路2Bの二種類があり、これらを区別するため、以下、前者を伸側通路2A、後者を圧側通路2Bと呼ぶ。さらに、前記弁体4,5のうち、伸側通路2Aを開閉する弁体4を伸側弁体4、圧側通路2Bを開閉する弁体5を圧側弁体5と呼ぶ。
伸側通路2Aと圧側通路2Bは、周方向に交互に並んで三つずつ形成されており、伸側通路2A内と圧側通路2B内には、それぞれ、島部11がピストン1の中心軸X側から外周側に向けて突出している。
ピストン1の下部には、図3に示すように、伸側通路2Aの出口12を囲うシート3Aと、このシート3Aの内側に設けられるボス部8Aが形成される一方、ピストン1の上部には、図2に示すように、圧側通路2Bの出口15を囲うシート3Bと、このシート3Bの内側に設けられるボス部8Bが形成されている。以下、前記各シート3A,3Bを区別するため、伸側通路2Aの出口を囲うシート3Aを伸側シート3A、圧側通路2Bの出口を囲うシート3Bを圧側シート3Bと呼ぶ。
ピストン1の上部に形成される圧側シート3B及びボス部8Bは上側に突出し、ピストン1の下部に形成される伸側シート3A及びボス部8Aは下側に突出し、島部11は上下に突出している。図5に示すように、上側に突出する圧側シート3B、ボス部8B及び島部11の頂部がピストン1の中心軸Xに直交する同一平面上に配置され、図4に示すように、下側に突出する伸側シート3A、ボス部8A及び島部11の頂部がピストン1の中心軸Xに直交する同一平面上に配置されるようになっている。つまり、本実施の形態において、ピストン1に積層される伸側弁体4及び圧側弁体5に初期撓みを与えない設定とされているが、伸側シート3Aと圧側シート3Bにおいて、ピストン1の外周側に配置される後述の外側シート部30がボス部8A,8Bよりも突出し、伸側弁体4と圧側弁体5の両方或いは片方に初期撓みを与えるようにしてもよい。
ピストン1の上下に形成される圧側シート3Bと伸側シート3Aは、共に、図2,3に示すように、三本の円弧状の外側シート部30と、これら外側シート部30の周方向の両端からピストン1の中心軸X側にそれぞれ延びる計六本の直線状の中間シート部31と、これら中間シート部31の中心軸X側端から周方向の反外側シート部側に延びて隣り合う中間シート部31を結ぶ直線状の内側シート部32とを備えて構成されており、閉じられた輪のような形状となっている。
そして、図3に示すように、ピストン1の下部に形成される伸側シート3Aにおいて、この伸側シート3Aの内側であって外側シート部30で結ばれる中間シート部31の間に伸側通路2Aの出口12が設けられており、伸側シート3Aの外側であって内側シート部32で結ばれる中間シート部31の間に圧側通路2Bの入口13が設けられている。
そして、伸側通路2Aの出口12は、ボス部8Aと伸側通路2A内に突出する島部11の周囲に、伸側シート3Aの内周端まで形成される窓14に開口しており、伸側弁体4が伸側シート3Aに着座すると、当該伸側弁体4で窓14が塞がれ、これにより伸側通路2Aが閉じられる。このとき、前記窓14に対向する部分の面積が伸側弁体4の受圧面積となり、伸側弁体4は伸側室L1の圧力を受けて伸側通路2Aを開く。なお、圧側通路2Bの入口13は、伸側弁体4が伸側シート3Aに着座しても、当該伸側弁体4で塞がれないようになっており、圧側室L2と常に連通している。
他方、図2に示すように、ピストン1の上部に形成される圧側シート3Bにおいて、この圧側シート3Bの内側であって外側シート部30で結ばれる中間シート部31の間に圧側通路2Bの出口15が設けられており、圧側シート3Bの外側であって内側シート部32で結ばれる中間シート部31の間に伸側通路2Aの入口16が設けられている。
そして、圧側通路2Bの出口15は、ボス部8Bと圧側通路2B内に突出する島部11の周囲に、圧側シート3Bの内周端まで形成される窓17に開口しており、圧側弁体5が圧側シート3Bに着座すると、当該圧側弁体5で窓17が塞がれ、これにより圧側通路2Aが閉じられる。このとき、前記窓17に対向する部分の面積が圧側弁体5の受圧面積となり、圧側弁体5は圧側室L2の圧力を受けて圧側通路2Bを開く。なお、伸側通路2Aの入口16は、圧側弁体5が圧側シート3Bに着座しても、当該圧側弁体5で塞がれないようになっており、伸側室L1と常に連通している。
本実施の形態において、ピストン1の上下に伸側通路2Aの入口16と出口12が対向し、同様に、ピストン1の上下に圧側通路2Bの出口15と入口13が対向するようになっており、これにより、伸側通路2Aや圧側通路2Bをピストン1の中心軸Xに沿って真直ぐ形成することができるので、ピストン1を容易に形成することが可能になる。
また、本実施の形態において、伸側シート3Aの内側シート部32と圧側シート3Bの内側シート部32は、共に、直線状の形状を有しており、この内側シート部32の両側に配置される中間シート部31の中心軸X側端を結ぶ直線y上に、当該直線yに沿って設けられている。ところで、伸側通路2Aは圧側シート3Bの内側シート部32の外側端まで広げることができ、圧側通路2Bは伸側シート3Bの内側シート部32の外側端まで広げることができる。このため、前記したように、内側シート部32が直線yを超えてピストン1の外周側に突出しない構成とすることで、伸側通路2Aや圧側通路2Bの流路面積を大きくできる。
つづいて、伸側シート3Aの内側に設けられるボス部8Aと圧側シート3Bの内側に設けられるボス部8Bは、共に、ピストン1の中心孔10を囲うように環状に形成されており、ボス部8A,8Bの幅、即ち、内周端から外周端までの幅が部分的に狭く形成されたり、広く形成されたりしている。具体的には、ボス部8A,8Bの外周形状が角を丸めた三角状とされていて、丸みをおびた頂点部分が外側シート部30に対向するとともに、直線状の辺部分が内側シート部32に対向するようになっている。そして、ピストン1の中心孔10は、ロッド6の取付部60の外周形状に合わせて真円形となっているので、ボス部8A,8Bにおける外側シート部30に対向する部分aの幅が内側シート部32に対向する部分bの幅よりも広くなる。
上記構成によれば、ボス部8Aにおいて伸側弁体4を支え、ピストン固定時の荷重を受ける部分の面積を確保するとともに、ボス部8Aと内側シート部32との間隔が狭くなって作動油が通り難くなることを防ぐことができる。同様に、ボス部8Bにおいて圧側弁体5を支え、ピストン固定時の荷重を受ける部分の面積を確保するとともに、ボス部8Bと内側シート部32との間隔が狭くなって作動油が通り難くなることを防ぐことができる。
また、本実施の形態のように、伸側通路2Aと、圧側通路2Bと、伸側シート3Aの外側シート部30及び内側シート部32と、圧側シート3Bの外側シート部30及び内側シート部32の数が同じであり、この数をnとした場合、ボス部8A,8Bの形状を、角を丸めたn角形とし、湾曲した頂点部分を外側シート部30に対向させ、直線状の辺部分を内側シート部32に対向させることで、前記と同様の効果を奏することができる。なお、前記nを大きくすると、伸側通路2Aや圧側通路2Bの流路面積が狭くなり、ピストン速度が中高速領域にあるときの減衰係数が大きくなるので、当該減衰係数を小さくするには、n=2〜4であることが好ましく、n=3が最も好ましいが、nの値は適宜変更することが可能である。
つづいて、伸側通路2A内と圧側通路2B内にそれぞれ突出する計六つの島部11は、同一円周上に配置されるとともに、中間シート部31と交互に配置されている。そして、前記各島部11の上部でピストン1の上側に積層される圧側弁体5を支え、この圧側弁体5が背圧で割れることを防ぐとともに、各島部11の下部でピストン1の下側に積層される伸側弁体4を支え、この伸側弁体4が背圧で割れることを防いでいる。
伸側弁体4は、図4,6に示すように、ピストン1の伸側シート3Aに離着座し孔40aを有する第一リーフバルブ40と、この第一リーフバルブ40の背面側(反ピストン1側)に積層されて切欠41aを有する第二リーフバルブ41と、この第二リーフバルブ41の背面側に順に積層される通常の複数枚のリーフバルブ42a,42b,42cとを含む積層リーフバルブV1を備えている。そして、第一リーフバルブ40の外周部と第二リーフバルブ41の外周部の間に環状のリング43が設けられ、このリング43の内周側であって第一リーフバルブ40の内周部と第二リーフバルブ41の内周部の間に環状のスペーサ44が設けられ、リング43の内周側であってスペーサ44の外周側にチェック弁9Aが設けられている。
また、伸側弁体4の図4中下側には、環状の間座45が積層されており、伸側弁体4は、内周側が間座45とボス部8Aとの間に挟まれて固定されている。そして、伸側弁体4は、緩衝器Dの伸長行程で、間座45よりも外周側を図4中下側に撓ませることで伸側通路2Aを開き、当該伸側通路2Aを通過する作動油の流れに抵抗を与える。反対に、緩衝器Dの圧縮行程では、伸側弁体4は伸側通路2Aを閉じ、第一リーフバルブ40が伸側シート3Aに着座した状態に維持される。
図6に示すように、第一リーフバルブ40には、その肉厚を貫通する四つの円弧状の孔40aが形成されている。これらの孔40aは、同一円周上に四つ並べて配置されている。そして、第一リーフバルブ40をピストン1に重ねたときに、孔40aの全てが伸側シート3Aの内側に対向するようになっている。ここで、孔40aの数を減らした場合、各孔40aを大きくできるものの、第一リーフバルブ40が撓んだときに孔40aと孔40aの間に応力が集中しやすく、第一リーフバルブ40の耐久性を低下させる傾向がある。反対に、孔40aの数を増やした場合、各孔40aが小さくなるが、第一リーフバルブ40が撓んだときに前記応力を分散させることができるので、第一リーフバルブ40の耐久性を高めることができる。このため、本実施の形態のように孔40aを絞りとして利用しない場合には、孔40aを四つ形成して、孔40aの開口量を大きくしつつ、第一リーフバルブ40の耐久性を確保することが好ましい。しかし、孔40aの数、形状、大きさは、前記の限りではなく、任意に変更できる。
また、前記したように、ボス部8Aの形状が角を丸めた三角状とされているので、ボス部8Aと孔40aが重なる面積が小さくなり、孔40aの開口面積をなるべく大きくできる。
第一リーフバルブ40の外周部と第二リーフバルブ41の外周部との間に設けられるリング43は、第一リーフバルブ40の背面側外周部に固定されている。これらリング43と第一リーフバルブ40の固定方法は任意であり、接着、溶接、一体形成等、リング43が第一リーフバルブ40の所定の位置から動かないようになっていればよい。
また、第一リーフバルブ40の内周部と第二リーフバルブ41の内周部の間に設けられるスペーサ44は、間座45とボス部8Aの間に挟まれて固定されている。そして、スペーサ44の外径は、リング43の内径よりも小さく形成されており、リング43とスペーサ44とで第一リーフバルブ40と第二リーフバルブ41とを離間させ、リング43の内周側にチェック弁9Aを収容する空間SAを形成している。リング43の内径は、第一リーフバルブ40の孔40aの外周端を結ぶ円の直径よりも大きく形成されており、孔40aと空間SAが連通するようになっている。
また、本実施の形態において、リング43の厚みとスペーサ44の厚みが等しく、第二リーフバルブ41以降のリーフバルブ42a,42b,42cに初期撓みを与えないように設定されている。しかし、リング43がスペーサ44よりも厚く設定されて、第二リーフバルブ41以降のリーフバルブ42a,42b,42cに初期撓みを与えるようにしてもよい。
つづいて、第一リーフバルブ40の背面側に積層される第二リーフバルブ41は、その内周部がスペーサ44に積層されるとともに外周部がリング43に着座するようになっている。そして、第二リーフバルブ41には、その外周端から中心に向かう四つの切欠41aが形成されている。図4に示すように、切欠41aは、リング43を径方向に横切る長さに設定されており、リング43の内周側に形成される空間SAとリング43の外周側に形成される圧側室L2とを連通する。前記したように、空間SAは、孔40a及び窓14を介して伸側通路2Aと連通可能であり、伸側通路2Aの作動油が、孔40a、空間SA及び切欠41aを通る分岐通路20を通って圧側室L2に移動できる。
本実施の形態において、第二リーフバルブ41の背面側に積層されるリーフバルブ42aは、第二リーフバルブ41の外径と略同じ外径を有しており、切欠41aの下側を塞ぐように設定されている。そして、本実施の形態において、切欠41aが幅狭に形成されて絞りとなっており、当該切欠41aによって周知のオリフィスを形成している。なお、リング43の内周側と外周側を連通する切欠41aは、リング43に設けられるとしてもよく、切欠41aを設ける位置や切欠41aの形状は、空間SAと圧側室L2とを連通可能な限りにおいて、任意に変更できる。また、本実施の形態においては、切欠41aが絞りとなっているが、分岐通路20の途中であれば、絞りを設ける位置は任意に変更できる。
つづいて、リング43の内周側に設けられるチェック弁9Aは、リング43及びスペーサ44よりも厚さが薄く、スペーサ44の外周面に摺接し図4中上下に移動可能な環状の弁部90と、この弁部90を第一リーフバルブ40に押し付ける方向に附勢する複数の附勢部91を含む。弁部90は、附勢部91の附勢力に従って第一リーフバルブ40に押し付けられたとき、全ての孔40aを塞ぐように設定される。附勢部91は、弁部90の外周から放射状に延びており、弁部90の外周から第二リーフバルブ41に向けて斜めに起立するとともに、末端が第一リーフバルブ40側に向けて折り曲げられている。チェック弁9Aは弾性を有しており、附勢部91の傾斜角度を変えたり戻したりすることで、弁部90の上下動を許容し、孔40aを開閉できる。
そして、チェック弁9Aは、緩衝器Dの伸長行程で弁部90を図4中下側に移動させて孔40aを開き、孔40aから空間SAへ向かう作動油の流れを許容する。このため、緩衝器Dの伸長行程では、伸側弁体4の開弁圧に達するまでの間、第一リーフバルブ40が伸側シート3Aに着座していても、チェック弁9Aが孔40aを開くと、伸側通路2Aの作動油が分岐通路20を孔40a、空間SA、切欠41aの順に通過して圧側室L2に移動する。反対に、緩衝器Dの圧縮行程では、チェック弁9Aが孔40aを閉じるので、分岐通路20の連通が遮断される。前記構成によれば、分岐通路20の途中に切欠41aによって形成される絞りを、緩衝器Dの伸長行程においてのみ効く片効きの絞りとすることができ、伸側弁体4が開弁するまでの間、緩衝器Dは絞り(切欠41a)の抵抗に起因する減衰力を発生できる。
また、本実施の形態において、チェック弁9Aの変形量は第二リーフバルブ41で規制され、弁部90が第二リーフバルブ41に当接したときチェック弁9Aの開口量が最大となる。このようにチェック弁9Aの変形量を第二リーフバルブ41で規制することで、チェック弁9Aの変形量が過大となることを防ぎ、チェック弁9Aの耐久性を向上できる。加えて、前記構成によれば、伸側シート3Aのシート形状によりチェック弁9Aの大きさが規制されることがなく、チェック弁9Aを大きくできることからも、チェック弁9Aの変形量が過大となることを防いでチェック弁9Aの耐久性を向上できる。
また、前記構成によれば、チェック弁9Aと第一リーフバルブ40が周方向に相対回転したとしても、チェック弁9Aと第二リーフバルブ41が周方向に相対回転したとしても問題がなく、絞り(切欠41a)を片効きに設定したとしても、チェック弁9Aの回転方向の位置決めを不要にして組付性を良好にできる。
つづいて、圧側弁体5は、図5,7に示すように、ピストン1の圧側シート3Bに離着座し孔50aを有する第一リーフバルブ50と、この第一リーフバルブ50の背面側(反ピストン1側)に積層されて切欠51aを有する第二リーフバルブ51と、この第二リーフバルブ51の背面側に順に積層される通常の複数枚のリーフバルブ52a,52b,52cとを含む積層リーフバルブV2を備えている。そして、第一リーフバルブ50の外周部と第二リーフバルブ51の外周部の間に環状のリング53が設けられ、このリング53の内周側にチェック弁9Bが設けられている。
また、圧側弁体5の図5中上側には、環状の間座54が積層されており、圧側弁体5は、内周側が間座54とボス部8Bとの間に挟まれて固定されている。そして、圧側弁体5は、緩衝器Dの圧縮行程で、間座54よりも外周側を図5中上側に撓ませることで圧側通路2Bを開き、当該圧側通路2Bを通過する作動油の流れに抵抗を与える。反対に、緩衝器Dの伸長行程では、圧側弁体5は圧側通路2Bを閉じ、第一リーフバルブ50が圧側シート3Bに着座した状態に維持される。
図7に示すように、第一リーフバルブ50には、前記第一リーフバルブ40と同様に、その肉厚を貫通する四つの円弧状の孔50aが形成されている。これらの孔50aは、同一円周上に四つ並べて配置されている。そして、第一リーフバルブ50をピストン1に重ねたときに、孔50aの全てが圧側シート3Bの内側に対向するようになっている。ここで、孔50aの数を減らした場合、各孔50aを大きくできるものの、第一リーフバルブ50が撓んだときに孔50aと孔50aの間に応力が集中しやすく、第一リーフバルブ50の耐久性を低下させる傾向がある。反対に、孔50aの数を増やした場合、各孔50aが小さくなるが、第一リーフバルブ50が撓んだときに前記応力を分散させることができるので、第一リーフバルブ50の耐久性を高めることができる。このため、本実施の形態のように、孔50aを絞りとして利用しない場合には、孔50aを四つ形成して孔50aの開口量を大きくしつつ、第一リーフバルブ50の耐久性を確保することが好ましい。しかし、孔50aの数、形状、大きさは、前記の限りではなく、任意に変更できる。
また、前記したように、ボス部8Bの形状が角を丸めた三角状とされているので、ボス部8Bと孔50aが重なる面積が小さくなり、孔50aの開口面積をなるべく大きくできる。
第一リーフバルブ50の外周部と第二リーフバルブ51の外周部との間に設けられるリング53は、第一リーフバルブ50の背面側外周部に固定されている。これらリング53と第一リーフバルブの固定方法は任意であり、接着、当接、一体形成等、リング53が第一リーフバルブ50の所定の位置から動かないようになっていればよい。
そして、前記リング53で第一リーフバルブ50と第二リーフバルブ51を離間させ、リング53の内周側にチェック弁9Bを収容する空間SBを形成している。リング53の内径は、第一リーフバルブ50の孔50aの外周端を結ぶ円の直径よりも大きく形成されており、孔50aと空間SBが連通するようになっている。
つづいて、第一リーフバルブ50の背面側に積層される第二リーフバルブ51は、外周部がリング53に着座するようになっている。そして、第二リーフバルブ51には、その外周端から中心に向かう四つの切欠51aが形成されている。図5に示すように、切欠51aは、リング53を径方向に横切る長さに設定されており、リング53の内周側に形成される空間SBとリング53の外周側に形成される伸側室L1とを連通する。前記したように、空間SBは、孔50a及び窓17を介して圧側通路2Bと連通可能であり、圧側通路2Bの作動油が、孔50a、空間SB及び切欠51aを通る分岐通路21を通って伸側室L1に移動できる。
本実施の形態において、第二リーフバルブ51の背面側に積層されるリーフバルブ52aは、第二リーフバルブ51の外径と略同じ外径を有しており、切欠51aの上側を塞ぐように設定されている。そして、本実施の形態において、切欠51aが幅狭に形成されて絞りとなっており、当該切欠51aによって周知のオリフィスを形成している。なお、リング53の内周側と外周側を連通する切欠51aは、リング53に設けられるとしてもよく、切欠51aを設ける位置や切欠51aの形状は、空間SBと伸側室L1とを連通可能な限りにおいて、任意に変更できる。また、本実施の形態においては、切欠51aが絞りとなっているが、分岐通路21の途中であれば、絞りを設ける位置は任意に変更できる。
つづいて、リング53の内周側に設けられるチェック弁9Bは、外径がリング53の内径よりも小さく、厚みがリング53よりも薄い小径のリーフバルブからなる。このチェック弁9Bの図5中上側には中間間座55が積層されており、チェック弁9Bは、中間間座55よりも外周側の撓みが許容された状態で、内周側を中間間座55とボス部8Bとの間に挟まれて固定されている。チェック弁9Bは、第一リーフバルブ50の背面側に着座したとき、全ての孔50aを塞ぐように設定される。なお、本実施の形態において、チェック弁9Bと中間間座55の合計の厚みがリング53の厚みと等しく、第二リーフバルブ51以降のリーフバルブ52a,52b,52cに初期撓みを与えないように設定されている。しかし、リング53の厚みが、チェック弁9Bと中間間座55の合計の厚みよりも厚く設定されて、第二リーフバルブ51以降のリーフバルブ52a,52b,52cに初期撓みを与えるようにしてもよい。
そして、チェック弁9Bは、緩衝器Dの圧縮行程で中間間座55よりも外周側を図5中上側に撓ませて孔50aを開き、孔50aから空間SBへ向かう作動油の流れを許容する。このため、緩衝器Dの圧縮行程では、圧側弁体5の開弁圧に達するまでの間、第一リーフバルブ50が圧側シート3Bに着座していても、チェック弁9Bが孔50aを開くと、圧側通路2Bの作動油が分岐通路21を孔50a、空間SB、切欠51aの順に通過して伸側室L1に移動する。反対に、緩衝器Dの伸長行程では、チェック弁9Bが孔50aを閉じるので、分岐通路21の連通が遮断される。前記構成によれば、分岐通路21の途中に切欠51aによって形成される絞りを、緩衝器Dの圧縮行程においてのみ効く片効きの絞りとすることができ、圧側弁体5が開弁するまでの間、緩衝器Dは絞り(切欠51a)の抵抗に起因する減衰力を発生できる。
また、本実施の形態において、チェック弁9Bの変形量(撓み量)は第二リーフバルブ51で規制され、チェック弁9Bの外周側が第二リーフバルブ51に当接したときチェック弁9Bの開口量が最大となる。このように、チェック弁9Bの変形量を第二リーフバルブ51で規制することで、チェック弁9Bの変形量が過大となることを防ぎ、チェック弁9Bの耐久性を向上できる。加えて、前記構成によれば、圧側シート3Bのシート形状によりチェック弁9Bの大きさが規制されることがなく、チェック弁9Bを大きくできることからも、チェック弁9Bの変形量が過大となることを防いでチェック弁9Bの耐久性を向上できる。
また、前記構成によれば、チェック弁9Bと第一リーフバルブ50が周方向に相対回転したとしても、チェック弁9Bと第二リーフバルブ51が周方向に相対回転したとしても問題がなく、絞り(切欠51a)を片効きに設定したとしても、チェック弁9Bの回転方向の位置決めを不要にして組付性を良好にできる。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。なお、以下の説明において、緩衝器Dのピストン速度を低速領域と、中高速領域とに分けているが、各領域の閾値はそれぞれ任意に設定できる。
ピストン1が図1中上側に移動してロッド6がシリンダCから退出する緩衝器Dの伸長行程では、縮小される伸側室L1の作動油が拡大する圧側室L2に移動する。この緩衝器Dの伸長行程では、ピストン速度が低速領域にある場合、伸側室L1の作動油がチェック弁9Aの弁部90を下側に押し下げて孔40aを開き、分岐通路20を通って圧側室L2に移動する。このため、緩衝器Dは、伸長行程でピストン速度が低速領域にある場合、絞りとなる切欠41aの抵抗に起因するオリフィス特性の減衰力を発生する。
また、緩衝器Dの伸長行程において、ピストン速度が高くなって中高速領域になり、伸側室L1の圧力が圧側室L2の圧力よりも所定以上大きくなると、伸側弁体4の外周部分が下側に撓み、当該伸側弁体4の第一リーフバルブ40と伸側シート3Aとの間に隙間が生じ、当該隙間を作動油が通って伸側室L1から圧側室L2に移動するようになる。このため、緩衝器Dは、伸長行程でピストン速度が中高速領域にある場合、伸側弁体4の抵抗に起因するバルブ特性の減衰力を発生する。
反対に、ピストン1が図1中下側に移動してロッド6がシリンダCに進入する緩衝器Dの圧縮行程では、縮小される圧側室L2の作動油が拡大する伸側室L1に移動する。この緩衝器Dの圧縮行程では、ピストン速度が低速領域にある場合、圧側室L2の作動油がチェック弁9Bの外周部分を上側に撓ませて孔50aを開き、分岐通路21を通って伸側室L1に移動する。このため、緩衝器Dは、圧縮行程でピストン速度が低速領域にある場合、絞りとなる切欠51aの抵抗に起因するオリフィス特性の減衰力を発生する。
また、緩衝器Dの圧縮行程において、ピストン速度が高くなって中高速領域になり、圧側室L2の圧力が伸側室L1の圧力よりも所定以上大きくなると、圧側弁体5の外周部分が上側に撓み、当該圧側弁体5の第一リーフバルブ50と圧側シート3Bとの間に隙間が生じ、当該隙間を作動油が通って圧側室L2から伸側室L1に移動するようになる。このため、緩衝器Dは、圧縮行程でピストン速度が中高速領域にある場合、圧側弁体5の抵抗に起因するバルブ特性の減衰力を発生する。
このように、本実施の形態においては、絞りとなる切欠41aを低速領域における伸長行程での減衰力発生用に利用でき、同じく絞りとなる切欠51aを低速領域における圧縮行程での減衰力用に利用できる。したがって、切欠41a,51aの幅を変えて、絞りの流路面積をそれぞれ任意に設定することで、低速領域の減衰特性を伸長行程と圧縮行程で別個独立して設定することができる。なお、本実施の形態において、切欠41a,51aを絞りとして機能させるようにしているが、分岐通路20,21の途中であれば、どこに絞りを設けてもよく、例えば、孔40a,50aを絞りとして利用するとしてもよい。また、本実施の形態において、前記絞りはオリフィスからなるが、チョーク通路からなるとしてもよい。
また、本実施の形態においては、第一リーフバルブ40の背面側にリング43で形成される空間SAを利用してチェック弁9Aが設けられている。このようにすることで、チェック弁9Aを環状に形成することができ、チェック弁9Aの回転方向の位置決めをしなくても孔40aを開閉できる。したがって、低速領域の減衰力を発生するための絞り(切欠41a)をチェック弁9Aで片効きにしても、チェック弁9Aの回転方向の位置決めが不要になるので、組付性が良好になる。
また、チェック弁9Aは、ピストン1から離れる方向、即ち、第二リーフバルブ41側に開くので、チェック弁9Aの開口量を第二リーフバルブ41で規制できる。このため、チェック弁9Aの変形量が過大となることを第二リーフバルブ41で防ぎ、チェック弁9Aの耐久性を向上できる。さらに、前記構成によれば、チェック弁9Aの大きさがシート3Aによって規制されることがなく、チェック弁9Aを大きくできる。したがって、チェック弁9Aが第二リーフバルブ41から少し離れただけでも、多くの流量を流すことができ、これによっても、チェック弁9Aの変形量が大きくなることを抑制できる。
同様に、第一リーフバルブ50の背面側にリング53で形成される空間SBを利用してチェック弁9Bが設けられている。このようにすることで、チェック弁9Bを環状に形成することができ、チェック弁9Bの回転方向の位置決めをしなくても孔50aを開閉できる。したがって、低速領域の減衰力を発生するための絞り(切欠51a)をチェック弁9Bで片効きにしても、チェック弁9Bの回転方向の位置決めが不要になるので、組付性が良好になる。
また、チェック弁9Bは、ピストン1から離れる方向、即ち、第二リーフバルブ51側に開くので、チェック弁9Bの開口量を第二リーフバルブ51で規制できる。このため、チェック弁9Bの変形量が過大となることを第二リーフバルブ51で防ぎ、チェック弁9Bの耐久性を向上できる。さらに、前記構成によれば、チェック弁9Bの大きさがシート3Bによって規制されることがなく、チェック弁9Bを大きくできる。したがって、チェック弁9Bが第二リーフバルブ51から少し離れただけでも、多くの流量を流すことができ、これによっても、チェック弁9Bの変形量が大きくなることを抑制できる。
また、本実施の形態において、伸側弁体4が離着座する伸側シート3Aは、外側シート部30と、中間シート部31と、内側シート部32とを備えて構成されており、輪のような閉じられた形状をしている。このため、当該伸側シート3Aの内側に形成される窓14を大きくし、伸側室L1の圧力を受ける伸側弁体4の受圧面積を大きくできるので、伸側室L1の圧力が低くても伸側弁体4を開弁させることができる。同様に、圧側弁体5が離着座する圧側シート3Bも、外側シート部30と、中間シート部31と、内側シート部32とを備えて構成されており、輪のような閉じられた形状をしている。このため、当該圧側シート3Bの内側に形成される窓17を大きくし、圧側室L2の圧力を受ける圧側弁体5の受圧面積を大きくできるので、圧側室L2の圧力が低くても圧側弁体5を開弁させることができる。
また、伸側シート3Aにおいて、外側シート部30で結ばれる中間シート部31の間に伸側通路2Aの出口12を設けるとともに、内側シート部32で結ばれる中間シート部31の間に圧側通路2Bの入口13を設けているので、シリンダ径を大きくすることなく伸側シート3Aをピストン1の外周側まで延ばして伸側弁体4の径を大きくし、伸側弁体4を撓ませ易くできる。同様に、圧側シート3Bにおいて、外側シート部30で結ばれる中間シート部31の間に圧側通路2Bの出口15を設けるとともに、内側シート部32で結ばれる中間シート部31の間に伸側通路2Aの入口16を設けているので、シリンダ径を大きくすることなく圧側シート3Aをピストン1の外周側まで延ばして圧側弁体5の径を大きくし、圧側弁体5を撓み易くできる。
さらに、本実施の形態において、伸側シート3Aにおける内側シート部32が、中間シート部31の中心軸X側端を結ぶ直線y上に設けられているので、内側シート部32がピストン1の外周側に突出することがなく、圧側通路2Bの流路面積をピストン1の内周側に広げることができる。同様に、圧側シート3Bにおける内側シート部32が、中間シート部31の中心軸X側端を結ぶ直線y上に設けられているので、内側シート部32がピストン1の外周側に突出することがなく、伸側通路2Aの流路面積をピストン1の内周側に広げることができる。
前記構成によれば、ピストン速度が中高速領域にあるときの、ピストン速度に対する減衰力の特性を示す曲線の傾きを寝かせて、減衰係数を充分に小さくすることができる。このため、本実施の形態のように、緩衝器Dが自動車の車体の制振に使用される場合、乗り心地を良好にできる。
また、本実施の形態においては、伸側通路2Aを開閉する伸側弁体4の受圧面積を大きくしているが、この伸側弁体4を島部11で支えられるようになっているので、前記伸側弁体4の背圧となる圧側室L2の圧力が大きくなったとしても、この圧力で伸側弁体4がピストン1側に撓み、割れることを阻止できる。同様に、圧側通路2Bを開閉する圧側弁体5の受圧面積を大きくしているが、この圧側弁体5を島部11で支えられるようになっているので、前記圧側弁体5の背圧となる伸側室L1の圧力が大きくなったとしても、この圧力で圧側弁体5がピストン1側に撓み、割れることを阻止できる。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
本実施の形態において、ピストン1には、伸側シート3Aの内側にボス部8Aが形成されており、圧側シート3Bの内側にボス部8Bが形成されている。前記各ボス部8A,8Bにおいて、外側シート部30に対向する部分aの幅が内側シート部32に対向する部分bの幅よりも広く形成されている。
前記構成によれば、第一リーフバルブ40,50の孔40a,50aと、ボス部8A,8Bとの重なりを小さくするとともに、ボス部8A,8Bから内側シート部32までの距離を大きくできる。したがって、孔40a,50aや窓14,17を作動油が移動する際の抵抗をなるべく小さくできる。また、ボス部8A,8Bに幅広の部分aを形成することで、伸側弁体4を支え、ピストン固定時の荷重を受ける部分の面積と、圧側弁体5を支え、ピストン固定時の荷重を受ける部分の面積を大きくできる。なお、ボス部8A,8Bの形状は、前記の限りではなく、適宜変更することが可能であり、ボス部8A,8Bの一方又は両方が真円状とされていてもよい。
また、本実施の形態において、中間シート部31は、周方向に等間隔で配置されている。
前記構成によれば、伸側通路2Aと圧側通路2Bの流路面積を等しくし易い。なお、中間シート部31の配置は、適宜変更することが可能である。内側シート部32で結ばれる中間シート部31の間隔と、外側シート部30で結ばれる中間シート部31の間隔が異なっていてもよく、この場合、伸側通路2Aの流路面積と圧側通路2Bの流路面積に差をつけることができる。そして、例えば、圧側通路2Bの流路面積が伸側通路2Aの流路面積よりも大きく形成されている場合、ピストン速度が中高速領域にあるときの、緩衝器Dが伸長時に発揮する減衰力を大きくするとともに、緩衝器Dが圧縮時に発揮する減衰力を小さくすることができる。
また、同一円周上に複数設けられた外側シート部30の周方向長さがそれぞれ異なっていてもよい。この場合、複数の伸側通路2Aの中で流路面積に差をつけたり、複数の圧側通路2Bの中で流路面積に差をつけたりできるので、大きい流路面積を有する伸側通路2Aに対向する部分から伸側弁体4を徐々に開弁させたり、大きい流路面積を有する圧側通路2Bに対向する部分から圧側弁体5を徐々に開弁させたりできる。このため、ピストン速度が低速領域にあるときのオリフィス特性の減衰力から中高速領域にあるときのバルブ特性の減衰力に切り替わる際の変化を緩やかにすることができ、車両の乗り心地を一層向上させることができる。
また、本実施の形態において、伸側シート3Aの内側シート部32及び圧側シート3Bの内側シート部32は、中間シート部31の中心軸X側端を結ぶ直線y上に設けられている。
前記構成によれば、内側シート部32が中間シート部31の中心軸X側端を結ぶ直線y上に設けられているので、伸側通路2Aと圧側通路2Bの流路面積をピストン1の中心側に広げることができ、ピストン速度が中高速領域にあるときの減衰係数を充分に小さくすることが可能となる。
なお、本実施の形態において、内側シート部32は、前記直線yに沿うように直線状となっているが、内側シート部32が直線yよりも中心軸X側に設けられていて、直線yから外れてピストン1の外周側に突出しないようになっていれば、内側シート部32を直線上yに設ける場合と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態において、伸側シート3Aと圧側シート3Bは、共に、円弧状の外側シート部30と、この外側シート部30の周方向の両端から前記ピストン1の中心軸X側に延びる二本で一対の中間シート部31と、これら中間シート部31の前記中心軸X側端から周方向の反外側シート部側に延びて隣り合う前記中間シート部31を結ぶ内側シート部32とを備えて構成されている。
そして、伸側通路2Aの出口12は、前記伸側シート3Aの内側であってこの伸側シート3Aの前記外側シート部30で結ばれる中間シート部31,31の間に配置されるとともに、圧側通路2Bの入口13は、前記伸側シート3Aの外側であってこの伸側シート3Aの前記内側シート部32で結ばれる中間シート部31,31の間に配置されている。また、圧側通路2Bの出口15は、前記圧側シート3Bの内側であってこの圧側シート3Bの前記外側シート部30で結ばれる前記中間シート部31,31の間に配置されるとともに、伸側通路2Aの入口16は、前記圧側シート3Bの外側であってこの圧側シート3Bの前記内側シート部32で結ばれる前記中間シート部31,31の間に配置されている。
前記構成によれば、伸側シート3Aと圧側シート3Bが輪のような閉じられた形状を有しているので、内周シート部32の内周端を結ぶ円の直径よりも、第一リーフバルブ40,50の孔40a,50aの外周端を結ぶ円の直径が小さくなるように設定しておけば、ピストン1と第一リーフバルブ40の周方向の位置合わせと、ピストン1と第一リーフバルブ50の周方向の位置合わせが不要になる。したがって、前記伸側シート3Aと前記圧側シート3Bによれば、更に組付性を良好にできる。
なお、伸側シート3Aと圧側シート3Bの形状は、前記の限りではなく、任意に変更できる。例えば、伸側シート3Aと圧側シート3Bの一方又は両方が、伸側通路2A又は圧側通路2Bの出口をまとめて囲う円環状のシートであってもよい。この場合には、前記伸側シート3A及び前記圧側シート3Bと同様の効果を得られる。また、ピストン1と第一リーフバルブ40の周方向の位置合わせをする場合には、伸側シート3Aで伸側通路2Aの出口を個別に囲う独立式ポート構造を採用してもよい。同様に、ピストン1と第一リーフバルブ50の周方向の位置合わせをする場合には、圧側シート3Bで圧側通路2Bの出口を個別に囲う独立式ポート構造を採用してもよい。
また、本実施の形態において、チェック弁9Aは、環状に形成されて孔40aを開閉する弁部90と、弁部90を第一リーフバルブ40に押し付ける方向に附勢する複数の附勢部91とを備えており、附勢部91は、弁部90の外周から放射状に延びるとともに、弁部90の外周から第二リーフバルブ41に向けて斜めに起立する。
前記構成によれば、チェック弁9Aの回転方向の位置決めを不要にするとともに、チェック弁9Aを容易に形成することができる。また、前記構成によれば、チェック弁9Aの軸方向長さを短くできる。本発明のように、第一リーフバルブ40の背面側にリング43で空間SAを形成する場合、当該空間SAの縦幅が狭くなるので、前記チェック弁9Aは、このような縦に狭い空間SAに収容するのに適している。
なお、チェック弁9Aの構成は、任意に変更することが可能である。また、本実施の形態において、チェック弁9Aは、伸側弁体4に設けられているが、圧側弁体5に設けられるとしてもよい。
また、本実施の形態において、チェック弁9Bは、外径がリング53の内径よりも小さく形成されるリーフバルブであり、外周側を第二リーフバルブ51側に撓ませることで、孔50aを開く。
前記構成によれば、チェック弁9Bの回転方向の位置決めを不要にするとともに、チェック弁9Bを容易に形成することができる。また、前記構成によれば、チェック弁9Bの軸方向長さを短くできる。本発明のように、第一リーフバルブ50の背面側にリング53で空間SBを形成する場合、当該空間SBの縦幅が狭くなるので、前記チェック弁9Bは、このような縦に狭い空間SBに収容するのに適している。
なお、チェック弁9Bの構成は、任意に変更することが可能である。また、本実施の形態において、チェック弁9Bは、圧側弁体5に設けられているが、伸側弁体4に設けられるとしてもよい。
また、本実施の形態において、切欠41a,51aは、第二リーフバルブ41,51に形成されている。
前記構成によれば、切欠41a,51aを形成し易い。なお、切欠41a,51aをリング43,53に設けてもよいが、第一リーフバルブ40,50に形成される孔40a,50aの大きさと、切欠41a,51aの大きさを個別に設定する場合、第一リーフバルブ40,50と分離された第二リーフバルブ41,51に形成する方が設定しやすい。
また、本実施の形態において、切欠41a,51aを幅狭にして絞りを形成している。
絞り41a,51aは、分岐通路20,21の途中に設ければよいので、例えば、第一リーフバルブ40,50の孔40a,50aを絞りとして機能させてもよい。しかし、この場合、チェック弁9A,9Bの受圧面積を大きくすることができない。これに対して、前記構成によれば、孔40a,50aの開口面積を大きくできるので、チェック弁9A,9Bの受圧面積を大きくして、チェック弁9A,9Bの開弁圧を低減することができる。
なお、前記したように、切欠41a,51a以外を絞りとして機能させるようにしてもよい。また、本実施の形態においては、伸側弁体4に設けた切欠41aと、圧側弁体5に設けた切欠51aの両方を絞りとして機能させるようにしているが、前記切欠41a,51aの一方を絞りとして機能させるようにしてもよい。
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、伸側室L1と圧側室L2(二つの部屋)を区画するピストン(バルブディスク)1と、前記ピストン1に形成されて伸側室L1と圧側室L2を連通する伸側通路(通路)2A及び圧側通路(通路)2Bと、前記ピストン1に積層されて前記伸側通路2Aを開閉し、前記伸側通路2Aと連通する孔40aが形成される第一リーフバルブ40と、前記第一リーフバルブ40の背面側に設けられ前記孔40aと連通する空間SAを囲う環状のリング43と、前記第一リーフバルブ40の背面側に積層されて前記リング43に着座する第二リーフバルブ41と、前記第二リーフバルブ41に形成されて前記リング43の内周側と外周側とを連通する切欠41aと、前記孔40a、前記空間SA及び前記切欠41aを通る分岐通路20の途中に設けられる絞りと、前記リング43の内周側に設けられて前記孔40aを開閉するチェック弁9Aとを備えている。
さらに、緩衝器Dは、前記ピストン1に積層されて前記圧側通路2Bを開閉し、前記圧側通路2Bと連通する孔50aが形成される第一リーフバルブ50と、前記第一リーフバルブ50の背面側に設けられ前記孔50aと連通する空間SBを囲う環状のリング53と、前記第一リーフバルブ50の背面側に積層されて前記リング53に着座する第二リーフバルブ51と、前記第二リーフバルブ51に形成されて前記リング53の内周側と外周側とを連通する切欠51aと、前記孔50a、前記空間SB及び前記切欠51aを通る分岐通路21の途中に設けられる絞りと、前記リング53の内周側に設けられて前記孔50aを開閉するチェック弁9Bとを備えている。
前記構成によれば、低速領域の減衰力を発生するための絞りをチェック弁9A,9Bで片効きにしたとしても、チェック弁9A,9Bを環状に形成できるので、第一リーフバルブ40、第二リーフバルブ41及びチェック弁9Aの周方向の位置合わせを不要にするとともに、第一リーフバルブ50、第二リーフバルブ51及びチェック弁9Bの周方向の位置合わせを不要にし、組付性を良好にできる。
さらに、前記構成によれば、チェック弁9Aの大きさが伸側シート3Aで規制されることがなく、チェック弁9Bの大きさが圧側シート3Bで規制されることがないので、チェック弁9A,9Bを大きく形成できる。加えて、チェック弁9Aの変形量を第二リーフバルブ41で規制でき、チェック弁9Bの変形量を第二リーフバルブ51で規制できるので、チェック弁9A,9Bの耐久性を向上できる。
なお、本実施の形態において、ピストン1の伸側室L1側と圧側室L2側の両方に本発明に係る構成が具現化されており、伸長行程でのみ効く片効きの絞り(切欠41a)と、圧縮行程でのみ効く片効きの絞り(切欠51a)の両方を備え、低速領域の減衰特性を伸長行程と圧縮行程で別個独立して設定できるようにしている。しかしながら、本発明が伸側室L1側と圧側室L2側の一方にのみ具現化され、伸長行程でのみ効く片効きの絞りと、圧縮行程でのみ効く片効きの絞りの一方のみを備えるとしてもよい。
また、本実施の形態において、切欠41a,51aが第二リーフバルブ41,51に形成されているが、リング43,53に形成されるとしてもよい。
また、本実施の形態において、第一リーフバルブ40,50は、環板状のリーフバルブ本体に孔40a,50aを開穿することで形成されているが、図8に示すように、第一リーフバルブ40,50の一方又は両方が、リング43,53が取り付けられる環状の外周部材401と、この外周部材401の内周側に挿入される内周部材402とに分割され、外周部材401と内周部材402の間に孔40a,50aを形成するようにしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。