(第1実施形態)
<ジャイロ素子−1>
まず、本発明の第1実施形態に係る振動素子としてのジャイロ素子について、図1および図2を参照して説明する。図1は、ジャイロ素子の一実施形態を示し、図1(a)は模式的に示す斜視図、図1(b)は模式的に示す平面図である。図2は、ジャイロ素子の電極構成を説明する図であり、図2(a)は図1(b)のC−C断面図、図2(b)は図1(b)のD−D断面図である。
図1(a)に示すように、第1実施形態に係るジャイロ素子300は、基材(主要部分を構成する材料)を加工することにより一体に形成された基部1と、駆動振動部としての駆動振動腕2a,2bおよび検出振動部としての検出振動腕3a,3bと、調整用振動腕4a,4bとを有している。更に、基部1から延出する第1連結部5a、および第1連結部5aに連結する第1支持部5bと、基部1から第1連結部5aと反対方向に延出する第2連結部6a、および第2連結部6aに連結する第2支持部6bと、が設けられている。さらに、第1支持部5bおよび第2支持部6bは、駆動振動腕2a,2bの側で一体的に繋って、固定枠部7を構成している。そして、ジャイロ素子300は、固定枠部7の所定の位置で、図示しないパッケージ等の基板に固定される。
本実施形態のジャイロ素子300では、基材として圧電体材料である水晶を用いた例について説明する。水晶は、電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸及び光学軸と呼ばれるZ軸を有している。本実施形態では、水晶結晶軸において直交するX軸及びY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚さtを有した所謂水晶Z板を基材として用いた例を説明する。なお、ここでいう所定の厚さtは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。また、ジャイロ素子300を形成する平板は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸及びZ軸の各々につき多少の範囲で許容できる。例えば、X軸を中心に0度から2度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。Y軸及びZ軸についても同様である。
ジャイロ素子300は、中心部分に位置する略矩形状の基部1と、基部1のY軸方向の端部1a,1bのうち一方の端部(図中−Y軸方向の端部)1bから、並行するようにY軸に沿って延伸された一対の駆動振動腕2a,2b(駆動振動部)と、基部1の他方の端部(図中+Y軸方向の端部)1aからY軸に沿って並行するように延伸された一対の検出振動腕3a,3b(検出振動部)と、を有している。このように、基部1の両端部1a,1bから、一対の駆動振動腕2a,2bと、一対の検出振動腕3a,3bとが、それぞれ同軸方向に延伸されている。このような形状から、本実施形態に係るジャイロ素子300は、H型ジャイロ素子と呼ばれることがある。H型のジャイロ素子300は、駆動振動腕2a,2bと検出振動腕3a,3bとが、基部1の同一軸方向の両端部1a,1bからそれぞれ延伸されているので、駆動系と検出系が分離される。ジャイロ素子300は、このように駆動系と検出系が分離されることにより、駆動系と検出系の電極間あるいは配線間の静電結合が低減され、検出感度が安定するという特徴を有する。なお、本実施形態ではH型振動片を例に駆動振動腕および検出振動腕を各々2本ずつ設けているが、振動腕の本数は1本であっても3本以上であっても良い。また、1本の振動腕に後述する駆動電極と検出電極を形成しても良い。
H型のジャイロ素子300は、駆動振動部としての一対の駆動振動腕2a,2bを所定の共振周波数で面内方向(+X軸方向と−X軸方向)に振動させた状態で、Y軸回りに角速度ωが加わると、駆動振動腕2a,2bにコリオリ力が発生し、駆動振動腕2a,2bが面内方向と交差する面外方向(+Z軸方向と−Z軸方向)に、互いに逆方向に屈曲振動する。そして、検出振動部としての検出振動腕3a,3bは、駆動振動腕2a,2bの面外方向の屈曲振動に共振して、同じく面外方向に屈曲振動する。この時、圧電効果により検出振動腕3a,3bに設けられている検出電極に電荷が発生する。ジャイロ素子300は、この電荷を検出することによりジャイロ素子300に加わる角速度ωを検出することができる。
基部1から延伸された振動腕としての一対の駆動振動腕2a,2bは、図2に示すように、表面2c,2gと、表面2c,2gと反対側に設けられた裏面2d,2hと、表面2c,2gと裏面2d,2hとを接続する側面2e,2f,2k,2jと、を備えている。また、駆動振動腕2a,2bの基部1側の一端とは反対側に位置する他端側の先端部には、駆動振動腕2a,2bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部52a,52bが設けられている(図1参照)。このように、駆動振動腕2a,2bに、錘部52a,52bが設けられていることにより、駆動振動腕2a,2bの長さ(Y軸方向の寸法)の増大を抑えながら所定の駆動振動を得ることができるため、ジャイロ素子を小型化することが可能となる。なお、駆動振動腕2a,2bには、駆動振動腕2a,2bを駆動させるための電極が設けられているが、電極の構成については後述する。
基部1から延伸された一対の振動腕としての検出振動腕3a,3bには、表面3c,3gと、表面3c,3gと反対側に設けられた裏面3d,3fと、表面3c,3gと裏面3d,3fとを接続する側面3h,3i,3j,3kと、を備えている。さらに、検出振動腕3a,3bには、基部1側の一端とは反対側の他端側に位置する先端部に検出振動腕3a,3bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部53a,53bが設けられている(図1参照)。このように、検出振動腕3a,3bにおいても、錘部53a,53bが設けられていることにより、検出振動腕3a,3bの長さ(Y軸方向の寸法)の増大を抑えながら所定の検出振動を得ることができるため、ジャイロ素子を小型化することが可能となる。また、一対の検出振動腕3a,3bには、凹部58a,58bが設けられている。本実施形態における凹部58a,58bは、図2に示すように表面3c,3gおよび裏面3d,3fの両面側から掘り込まれている構成であるが、表面3c,3gあるいは裏面3d,3fの一方の面から掘り込まれた構成でもよい。
さらに、ジャイロ素子300には、図1に示すように、水晶の結晶X軸(電気軸)と交差する方向に検出振動腕3a,3bと並行させてかつ検出振動腕3a,3bを内側に挟むように、基部1から延伸された一対の調整用振動腕4a,4bが設けられている。即ち、調整用振動腕4a,4bは、Y軸に沿って+Y軸方向に延伸され、検出振動腕3a,3bと所定の間隔を空けて内側に挟むように位置し、かつ並行するように設けられている。なお、調整用振動腕4a,4bは、チューニングアームと呼ばれることもある。このような調整用振動腕4a,4bが設けられていることにより、漏れ出力を調整することが可能となる。換言すれば、駆動振動が漏れる(伝播する)、所謂振動漏れによって生じる電荷を、調整用振動腕4a,4bの電荷を調整することによってキャンセルすることができるため、振動漏れの出力を抑制することが可能となり、ジャイロ素子300の振動特性を安定させることが可能となる。
また、調整用振動腕4a,4bは、駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bよりも全長が短く形成されている。これにより、漏れ出力を調整するための調整用振動腕4a,4bの振動が、駆動振動腕2a,2bと検出振動腕3a,3bによるジャイロ素子300の主要な振動を阻害することがないので、ジャイロ素子300の振動特性が安定するとともに、ジャイロ素子300の小型化にも有利となる。
さらに、調整用振動腕4a,4bの基部1側の一端とは反対側に位置する他端側の先端部には、調整用振動腕4a,4bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部54a,54bが設けられている。このように、調整用振動腕4a,4bの先端部に錘部54a,54bを設けることにより、調整用振動腕4a,4bの長さを短縮することができる。
基部1の中央は、ジャイロ素子300の重心とすることができる。そして、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交し、重心を通るものとする。ジャイロ素子300の外形は、重心を通るY軸方向の仮想の中心線に対して線対称とすることができる。これにより、ジャイロ素子300の外形はバランスのよいものとなり、ジャイロ素子300の特性が安定して、検出感度が向上するので好ましい。このようなジャイロ素子300の外形形状は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)により形成することができる。なお、ジャイロ素子300は、1枚の水晶ウエハーから複数個取りすることが可能である。
次に、ジャイロ素子300の電極配置の一実施形態について、図2を参照して説明する。図2(a)は、検出振動腕3a,3bの図1(b)に示すC−C部における断面を示し、図2(b)は、駆動振動腕2a,2bの図1(b)に示すD−D部における断面を示している。
まず、検出振動腕3a,3bに形成され、検出振動腕3a,3bが振動することによって基材である水晶に発生する歪みを検出する検出電極について説明する。図2(a)に示すように、検出振動腕3a,3bには、前述したように、凹部58a,58bが設けられている。本実施形態における凹部58a,58bは、表面3c,3gおよび裏面3d,3fの両面側に設けられている。
検出振動腕3aには、側面3hに、検出振動腕3aの厚み方向(Z軸方向)の略中央に有って検出振動腕3aの延伸方向(Y軸方向)に沿って設けられた電極分割部3mによって分割された、表面3c側の第1検出電極21aと裏面3d側の第2検出電極22bとが設けられている。さらに、第1検出電極21aと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極22aが設けられ、第2検出電極22bと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極21bが設けられている。また、側面3hとは反対側の側面3iに、検出振動腕3aの厚み方向の略中央に有って検出振動腕3aの延伸方向に沿って設けられた電極分割部3nによって分割された、表面3c側の第2検出電極22aと裏面3d側の第1検出電極21bとが設けられている。さらに、第2検出電極22aと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極21aが設けられ、第1検出電極21bと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極22bが設けられている。
そして、第1検出電極21aと第1検出電極21bとは、図示しないが、検出振動腕3aの先端部などを経由して電気的に接続されている。第2検出電極22aと第2検出電極22bとは、図示しないが、検出振動腕3aの先端部などを経由して電気的に接続されている。なお、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、検出振動腕3aの先端近傍まで延設されている。また、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、図示しない配線を介して図示しない外部接続パッドに、それぞれが電気的に接続されている。また、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、調整用振動腕4a(図1参照)に形成された図示しない調整用電極にも電気的に接続されている。
同様に、検出振動腕3bには、側面3jに、検出振動腕3bの厚み方向(Z軸方向)の略中央に有って検出振動腕3bの延伸方向(Y軸方向)に沿って設けられた電極分割部3rによって分割された、表面3g側の第2検出電極31aと裏面3f側の第1検出電極32bとが設けられている。さらに、第2検出電極31aと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極32aが設けられ、第1検出電極32bと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極31bが設けられている。また、側面3jとは反対側の側面3kに、検出振動腕3bの厚み方向の略中央に有って検出振動腕3bの延伸方向に沿って設けられた電極分割部3sによって分割された、表面3g側の第1検出電極32aと裏面3f側の第2検出電極31bとが設けられている。さらに、第1検出電極32aと対向する凹部58bの内側面には、第2検出電極31aが設けられ、第2検出電極31bと対向する凹部58bの内側面には、第1検出電極32bが設けられている。
そして、第2検出電極31aと第2検出電極31bとは、図示しないが、検出振動腕3bの先端部などを経由して電気的に接続されている。第1検出電極32aと第1検出電極32bとは、図示しないが、検出振動腕3bの先端部などを経由して電気的に接続されている。なお、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、検出振動腕3bの先端近傍まで延設されている。また、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、図示しない配線を介して図示しない外部接続パッドに、それぞれが電気的に接続されている。また、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、調整用振動腕4b(図1参照)に形成された図示しない調整用電極にも電気的に接続されている。
検出振動腕3aにおいては、第1検出電極21aと第1検出電極21bとは同電位となるように接続され、第2検出電極22aと第2検出電極22bとは同電位となるように接続されている。これにより、検出振動腕3aの振動によって生じる歪みが、第1検出電極21a,21bと第2検出電極22a,22bの電極間の電位差を検出することにより検出される。同様に、検出振動腕3bにおいては、第1検出電極32aと第1検出電極32bとは同電位となるように接続され、第2検出電極31aと第2検出電極31bとは同電位となるように接続されている。これにより、検出振動腕3bの振動によって生じる歪みが、第1検出電極32a,32bと第2検出電極31a,31bの電極間の電位差を検出することにより検出される。
次に、駆動振動腕2a,2bに設けられた、駆動振動腕2a,2bを駆動させるための駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cについて説明する。図2(b)に示すように、駆動振動腕2aの表面(一方の主面)2cには駆動電極11aが、および裏面(他方の主面)2dには駆動電極11bが、錘部52a(図1参照)までの間に形成されている。また、駆動振動腕2aの一方の側面2e、および他方の側面2fには駆動電極12cが、駆動振動腕2aの錘部52a(図1参照)までの間に形成されている。同様に、駆動振動腕2bの表面(一方の主面)2gには駆動電極12aが、および裏面(他方の主面)2hには駆動電極12bが、錘部52b(図1参照)までの間に形成されている。また、駆動振動腕2bの一方の側面2j、および他方の側面2kには駆動電極11cが、駆動振動腕2bの錘部52b(図1参照)までの間に形成されている。
駆動振動腕2a,2bに形成された駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cは、駆動振動腕2a,2bを介して対向配置される駆動電極間において同電位となるように配置される。また、図示しないが、駆動電極11a,11b,11cが、接続される第1固定部に形成された接続パッド、および駆動電極12a,12b,12cが接続される第2固定部に形成された接続パッドを通して駆動電極11a,11b,11cと駆動電極12a,12b,12cとの間に電位差を交互に与えることにより駆動振動腕2a,2bは、いわゆる音叉振動が励振される。
次に、調整用振動腕4a,4bに設けられた電極について説明する。図示しないが、調整用振動腕4aには、表裏面に同電位の調整用電極が形成されている。また調整用振動腕4aの両側面のそれぞれには、同電位である他の調整用電極が形成されている。同様に、調整用振動腕4bには、表裏面に同電位の調整用電極が形成されている。また調整用振動腕4bの両側面には、同電位である他の調整用電極が形成されている。
なお、上述した駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12c、第1検出電極21a,21b,32a,32b、および第2検出電極22a,22b,31a,31b、および調整用電極の構成は、特に限定されず、導電性を有し、薄膜形成が可能であればよい。具体的な構成としては、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電材料により形成することができる。
次に、ジャイロ素子300における振動モードについて、図3、図4、および図5を用いて説明する、図3は、ジャイロ素子における振動モードとしての検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度(ジャイロ素子感度)との相関のスペクトルを示すグラフである。図4は、検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関のスペクトルを例示し、図4(a)はケース1を例示し、図4(b)はケース2を例示するグラフである。図5は、離調調整における離調度と素子感度(ジャイロ素子感度)との相関のスペクトルを例示し、図5(a)は検出2モードを基準としたときの離調度と素子感度との相関を示し、図5(b)は離調度と素子感度バラツキとの相関を示すグラフである。
上述したジャイロ素子300では、図3に示すように、駆動振動腕2a,2bを所定の共振周波数(振動周波数)で駆動(振動)する駆動振動モード(X軸方向の振動)と、駆動振動腕2a,2bの振動方向と直交し、検出振動腕3a,3bにて角速度(コリオリ力)を検出する検出振動モード(Z軸方向)との振動モードを有している。さらに、検出振動モードには、一対の検出振動腕3a,3bが互いに逆位相で振動する少なくとも二つの検出振動モードが存在している。
図3に示す検出振動モードは、第1共振周波数(振動周波数)f1をピーク感度とする検出1モード、および第2共振周波数(振動周波数)f2をピーク感度とする検出2モードの二つの検出振動モードが存在する例を示している。そして、従来例では、検出1モードと検出2モードとの間に共振周波数(振動周波数)f0の駆動振動モードが存在したが、本実施形態では、検出1モードおよび検出2モードよりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在する。なお、駆動振動モードの共振数周波数は、検出1モードおよび検出2モードよりも低い共振周波数である第4共振周波数(振動周波数)f4に駆動振動モードを存在させてもよい。
ジャイロ素子300では、角速度(コリオリ力)の検出振動モードの共振周波数に近い周波数で駆動振動腕2a,2bを振動させると、駆動振動(駆動振動モード)に対して駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bの双方が振れやすくなり、検出振動腕3a,3bにおいて、より大きな検出信号を得ることができる。すなわち、ジャイロ素子300の検出感度を向上させることができる。
そして、検出振動モードの共振周波数と駆動振動腕2a,2bの共振周波数とを近づけるため、駆動振動腕2a,2bに設けられた幅広部としての錘部52a,52bを、例えばレーザー光などによってトリミングすることによって質量調整をおこなう。なお、この質量調整によって共振周波数の調整を行う処理を離調調整という。このように、幅広部としての錘部52a,52bは、質量調整部の機能を備えており、錘部52a,52bを質量調整部として用いることにより、離調調整における調整範囲が広くとれるので、より小型で高感度な特性を有する振動素子を得ることが可能となる。また、幅広部としての錘部52a,52bを、トリミングすることにより質量調整を行うことができ、離調調整を効率よく行うことができる。
離調調整では、二つの検出振動モードの共振周波数の内の、いずれかの検出振動モードの共振周波数を一定にして、駆動振動モードの共振周波数を近づけるように調整する。換言すれば、二つの検出振動モードの共振周波数の内の、いずれかの検出振動モードの共振周波数と駆動振動モードの共振周波数とを近づけるように離調調整を行う。
ここで図4を参照して、検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関について説明する。まず、図4(a)に示すケース1は、例えば駆動振動腕2a,2bの厚みが厚くなる、および腕幅が細くなる、の少なくとも一つを生じ、駆動モードの共振周波数が検出振動モードの共振周波数より低くなった場合である。図4(a)に示すグラフは、この状態において、検出2モードの共振周波数f2に対して(共振周波数f2を一定として)離調調整を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関を示している。
同図において、曲線Cu1は、離調調整の行われる前の検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示し、曲線Cu2は、本ケースの離調調整(離調度)を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示している。なお、曲線Cu3は、さらに大きな離調調整(離調度)を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示している。
同図に示すように、離調調整を行うことにより、検出1モードの共振周波数f1が、大きく変化し(同図では描画範囲外)、それに伴って、検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関が、曲線Cu1から曲線Cu2(曲線Cu3)のように移動する。具体的に曲線Cu2(曲線Cu3)は、検出2モードの共振周波数f2と検出1モードの共振周波数f1との間が広がり、それに伴って素子感度が低くなる帯域が広がった状態になり、共振周波数f2よりも共振周波数が大きくなる領域では、大きな変化は生じない。このため、従来例である検出1モードの共振周波数f1と検出2モードの共振周波数f2との間に共振周波数(振動周波数)f0の駆動振動モードが存在するパターンにおいては、駆動振動モードの共振周波数f0を共振周波数f01に変化させると、素子感度が大きく低下してしまうとともに、素子感度のばらつきも大きくなってしまう。これに対し、本実施形態のように、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在するパターンでは、駆動振動モードの共振周波数f3を共振周波数f31に変化させる離調調整を行っても、素子感度に若干の変化は生じるが、殆んど低下しない状態となる。また、素子感度のばらつきも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。
次に、図4(b)に示すケース2について説明する。ケース2は、例えば駆動振動腕2a,2bの厚みが薄くなる、および腕幅が太くなる、の少なくとも一つを生じ、駆動モードの共振周波数が検出振動モードの共振周波数より高くなった場合である。図4(b)に示すグラフは、この状態において、検出2モードの共振周波数f2に対して(共振周波数f2を一定として)離調調整を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関を示している。同図において、曲線Cu1は、離調調整の行われる前の検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示し、曲線Cu2は、本ケースの離調調整(離調度)を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示している。なお、曲線Cu3は、さらに大きな離調調整(離調度)を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示している。なお、それぞれの曲線Cu1,Cu2,Cu3は、図4(a)の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
図4(b)に示すケース2においても、ケース1と同様に離調調整を行うと、従来のパターンでは、素子感度が大きく低下してしまうとともに、素子感度のばらつきも大きくなる。それに対し、本実施形態のパターンでは、素子感度は殆んど低下しない。また、実施形態のパターンでは、素子感度のばらつきも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。
次に、図5を参照して、離調調整における離調度と素子感度との相関について説明する。図5(a)は、検出2モードの共振周波数f2を一定としたときの離調度を、横軸にとったときの検出1モード、検出2モード、および駆動モードにおける素子感度との相関を示している。また、図5(b)は、検出2モードの共振周波数f2を一定としたときの離調度を、横軸にとったときの検出1モード、検出2モード、および駆動モードにおける素子感度バラツキとの相関を示している。
図5(a)に示すように、離調度と検出1モード、検出2モード、および駆動モードにおける素子感度との相関は、前述した検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関と同様な挙動を示す。同図において、曲線Cu1は、離調調整の行われる前の検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示し、曲線Cu2は、本ケースの離調調整(離調度)を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示している。なお、曲線Cu3は、さらに大きな離調調整(離調度)を行った場合の、検出1モード、検出2モード、および駆動モードを示している。
同図に示すように、離調調整を行うことにより、検出1モードの離調度が、大きく変化し(同図では描画範囲外)、それに伴って、検出1モード、検出2モード、および駆動モードに係る離調度と素子感度との相関が、曲線Cu1から曲線Cu2(曲線Cu3)のように移動する。具体的に曲線Cu2(曲線Cu3)は、離調度が負(マイナス(−))の領域における検出2モードと検出1モードとの間隔が広がり、それに伴って素子感度が低くなる領域が広がった状態になる。それに対し、離調度が正(プラス(+))の領域では、素子感度に関して若干の変化はみられるものの大きな変化は生じない。このため、従来例である検出1モードと検出2モードとの間に駆動振動モードが存在するパターンにおいては、離調調整によって素子感度が大きく低下してしまうとともに、素子感度のばらつきも大きくなってしまう。これに対し、本実施形態のように、検出1モードおよび検出2モードよりも離調度の大きな位置に駆動モードが存在するパターンでは、離調調整を行っても、素子感度は殆んど低下せず、素子感度のばらつきも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。
また、離調度と、検出1モード、検出2モード、および駆動モードにおける素子感度バラツキとの間には、図5(b)に示す曲線Cu5および曲線Cu6のような相関が見られる。曲線Cu5は、基準となる検出2モード(離調度0%)より、離調度がプラス(+)側となっている場合の相関を示しており、離調度がプラス(+)側に移行するにつれて2次的に素子感度バラツキが大きくなることがわかる。また、曲線Cu6は、基準となる検出2モード(離調度0%)より、離調度がマイナス(−)側となっている場合の相関を示しており、離調度がプラス(+)側に移行するにつれて2次的に素子感度バラツキが大きくなることがわかる。すなわち、離調調整の離調度の絶対値が、0.5%〜8%の範囲内にあれば、素子感度バラツキは、小さく抑えることができる。
なお、基準となる検出2モード(離調度0%)より、離調度がマイナス(−)側となっている場合とは、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在するパターンである。また、基準となる検出2モード(離調度0%)より、離調度がプラス(+)側となっている場合とは、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも低い共振周波数である第4共振周波数(振動周波数)f4(図3参照)に駆動振動モードが存在するパターンである。
図5(b)に示されているように、駆動振動腕2a,2bの共振周波数f3(図4参照)と検出振動腕3a,3bの共振周波数f2(図4参照)とを近づける離調調整の離調度の絶対値を、0.5%〜8%の範囲内とすることにより、離調調整でのトリミング加工などによる検出感度の低下やばらつきを抑制することができる。これは、離調調整における曲線Cu1と曲線Cu2(Cu3)の(検出感度スペクトル)の変化が少ない領域に、駆動振動モードがあるため、離調度が変化することによる素子感度バラツキも小さくなることによる。
上述のように、ジャイロ素子300は、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在するパターンであるため、駆動振動モードの共振周波数f3を共振周波数f31に変化させる離調調整を行っても、素子感度に若干の変化は生じるが、殆んど低下しない状態となる。また、素子感度バラツキも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。また、同様に、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも低い共振周波数である第4共振周波数(振動周波数)f4に駆動振動モードが存在するパターンにおいても、離調調整によって素子感度に若干の変化は生じるが、殆んど低下しない状態となる。また、素子感度バラツキも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。
なお、上記第1実施形態に係るジャイロ素子300の説明では、基部1の一方端に、一対の検出振動腕3a,3bと、検出振動腕3a,3bを挟む一対の調整用振動腕4a,4bと、が設けられ、他方端に一対の駆動振動腕2a,2bが設けられている例を用いたが、この構成に限らない。例えば、駆動振動腕と調整用振動腕とが、基部の同じ端から同方向に延出されている形態でもよい。
(第2実施形態)
<ジャイロ素子−2>
次に、図6を参照して、ジャイロ素子600について説明する。図6は、第2実施形態に係る振動素子の一例としてのジャイロ素子600を模式的に示す平面図である。図7は、第2実施形態に係るジャイロ素子600を模式的に示す図であり、図7(a)は図6のE−E線での断面図、図7(b)は図6のF−F線での断面図である。
図6および図7に示すように、ジャイロ素子600は、基体610、振動体620、弾性支持体630、駆動部640、を含んでいる。ジャイロ素子600は、基体610に設けられた凹部614と間隙を介して振動体620が設けられている。振動体620は、基体610の第1面611に(基体610上に)設けられた固定部617に弾性支持体630を介して支持されている。なお、振動体620、弾性支持体630、および駆動部640の一部(駆動用可動電極部641)を含む部位が、駆動振動部に相当する。
ジャイロ素子600は、振動体620の検出部660においてY軸まわりの角速度を検出するジャイロ素子(静電容量型MEMSジャイロ素子)である。なお、便宜上、図6では、基体610を透視して図示している。また、基体610の振動体620が設けられる基面である第1面611(図7参照)の法線方向から見ること、即ち基体610に支持されている振動体620を上方から見ることを、以下、「平面視」という。
基体610は、図7に示すように、第1面611と、第1面611と反対側の第2面611bと、を有している。第1面611には、凹部614が設けられている。凹部614の上方には、間隙を介して、振動体620(検出部650、および支持部612)、弾性支持体630、および駆動部640(駆動用可動電極部641、および駆動用固定電極部642)が設けられている。凹部614によって、振動体620、弾性支持体630、および駆動部640の一部(駆動用可動電極部641)は、基体610に妨害されることなく、所望の方向に可動することができる。基体610の材質としては、例えば、ガラス、シリコンを用いることができる。本実施形態の凹部614の平面形状(Z軸方向から見たときの形状)は、長方形であるが、特に限定されない。凹部614は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成される。
基体610は、図7に示すように振動体620の形態に応じて、第1面611に適宜設けられる固定部617を有している。固定部617は、振動体620を支持する弾性支持体630の一端615が固定(接合)され、弾性支持体630を介して振動体620を支持する部分である。図6および図7に示すように、弾性支持体630の一端615(固定部617)は、X軸方向において振動体620を挟むように配置されていてもよい。また、弾性支持体630の一端615は、Y軸方向において振動体620を挟むように配置されていてもよい。即ち、弾性支持体630の一端615は、2か所、あるいは4か所設けられていてもよい。
固定部617の第1面611(基体610)と、弾性支持体630、駆動用固定電極部642などと、の固定(接合)方法は、特に限定されないが、例えば、基体610の材質がガラスであり、振動体620等の材質がシリコンである場合は、陽極接合を適用することができる。
振動体620は、基体610の第1面611に(基体610上に)弾性支持体630を介して支持されている。振動体620は、検出部650、および検出部650と接続された支持部612を有している。振動体620の材質は、例えば、リン、ボロン等の不純物がドープされることにより導電性が付与されたシリコンである。振動体620は、例えば、シリコン基板(図示せず)を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって加工することにより形成される。
振動体620は、弾性支持体630の一端615によって弾性支持体630を介して固定部617に支持されており、基体610と離間して配置されている。より具体的には、基体610に形成された凹部614の上方に間隙を介して、振動体620が設けられている。振動体620は、後述する検出部650を囲むフレーム状の形状(枠状)の支持部612を有している。振動体620は、図示しない中心線(X軸に沿った直線、あるいはY軸に沿った直線)に対して、対称となる形状であってもよい。
弾性支持体630は、X軸方向に振動体620を変位し得るように構成されている。より具体的には、弾性支持体630は、弾性支持体630の一端615から振動体620までX軸に沿う方向に延出し、Y軸方向に往復しながらX軸方向に延出する形状を有している。弾性支持体630の一端615は、固定部617(基体610の第1面611)に接合(固定)されている。また、弾性支持体630の他端は、振動体620の支持部612に接続されている。本実施形態では、弾性支持体630は、振動体620をX軸方向において挟むように、4つ設けられている。
弾性支持体630の材質は、例えば、リン、ボロン等の不純物がドープされることにより導電性が付与されたシリコンである。弾性支持体630は、例えば、シリコン基板(図示せず)を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって振動体620と共に一体的に加工することにより形成される。
検出部650は、平面視で、振動体620の支持部612の内側(振動体620の中心側)に設けられている。換言すれば、検出部650は、支持部612に対して、後述する駆動部640の配置側と反対側に設けられている。検出部650は、可動電極としての第1フラップ板651および第2フラップ板653と、第1フラップ板651と接続された第1梁部652と、第2フラップ板653と接続された第2梁部654と、検出用固定電極655と、を有している。第1フラップ板651および第2フラップ板653は、前述のように、シリコンに、例えば、リン、ボロン等の不純物がドープされることにより導電性が付与されている。ここで、第1フラップ板651および第1フラップ板651と接続された第1梁部652と、第2フラップ板653および第2フラップ板653と接続された第2梁部654とを含む部位が、検出振動部に相当する。
第1フラップ板651は、第1梁部652のX軸方向の中央部分に位置する接続部で第1梁部652と接続されている。第1梁部652は、支持部612の内のX軸に沿った一方の延在部分に沿って設けられ、支持部612の内の、Y軸に沿って延在し、互いに対向する二つの延在部分に両端が接続されている。第1フラップ板651の第1梁部652と接続されている端と反対側の端は、自由端となっている。第1フラップ板651は、第1梁部652を回転軸としてZ軸方向に搖動することができる。
また、第2フラップ板653は、第2梁部654のX軸方向の中央部分に位置する接続部で第2梁部654と接続されている。第2梁部654は、第1梁部652側(+Y軸方向)に位置する一方の支持部612の延在部分と、検出部650を挟んだ反対側(−Y軸方向)に位置する他方の支持部612の延在部分に沿って設けられている。
第2梁部654は、支持部612のY軸方向に沿って対向する二つの延在部分の内側に、両端が接続されている。第2フラップ板653の第2梁部654と接続されている端と反対側の端は、自由端となっている。第2フラップ板653は、第2梁部654を回転軸としてZ軸方向に搖動することができる。第1フラップ板651および第2フラップ板653のそれぞれの自由端は、Y軸方向の内側を向くように配置され、間隙を有して対向するように設けられている。
検出用固定電極655は、第1フラップ板651および第2フラップ板653と間隙を有して対向し、平面視で第1フラップ板651および第2フラップ板653の配置された領域に略重なるように設けられている。検出用固定電極655は、基体610の第1面611に設けられた凹部614の底面613に設けられている。
基体610の凹部614の底面613に設けられている検出用固定電極655は、例えばITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)などの透明電極材料をスパッタリング法などによって成膜し、フォトリソグラフィー法、エッチング法などでパターニングされることによって形成される。なお、検出用固定電極655は、透明電極材料に限らず、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料を用いることができる。また、基体610がシリコンのような半導体材料においては、駆動用固定電極部642との間に、絶縁層を有していることが好ましい。絶縁層としては、例えばSiO2(酸化ケイ素)、AlN(窒化アルミ)、SiN(窒化ケイ素)などを用いることができる。
駆動部640は、振動体620を励振することができる機構を有する。なお、駆動部640の構成および数は、振動体620を励振することができる限り、特に限定されない。例えば、駆動部640は、振動体620に直接設けられていてもよい。駆動部640は、図6に示すように、振動体620(支持部612)のY軸方向の外側に接続された駆動用可動電極部641と、基体610に駆動用可動電極部641と所定の距離を介して対向配置された駆動用固定電極部642から構成されている。なお、駆動部640は、振動体620に直接接続せずに静電力等によって振動体620を励振する機構を有し、振動体620の外側に配置されていてもよい。
駆動用可動電極部641は、振動体620に接続されて複数設けられていてもよい。図示の例では、駆動用可動電極部641は、振動体620から+Y軸方向(または−Y軸方向)に延出している幹部と、該幹部から+X軸方向および−X軸方向に延出している複数の枝部と、を有する櫛歯状電極に設けられている。
駆動用固定電極部642は、駆動用可動電極部641の外側に配置されている。駆動用固定電極部642は、基体610の第1面611に接合(固定)されている。図示の例では、駆動用固定電極部642は複数設けられ、駆動用可動電極部641を介して対向配置されている。駆動用可動電極部641が櫛歯状の形状を有する場合、駆動用固定電極部642の形状は、駆動用可動電極部641に対応した櫛歯状電極であってもよい。
駆動部640の材質は、例えば、リン、ボロン等の不純物がドープされることにより導電性が付与されたシリコンである。駆動部640は、例えば、シリコン基板(図示せず)を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって振動体620と共に一体的に加工することにより形成される。
このような構成のジャイロ素子600は、次のようにしてY軸まわりの角速度ωを検出する。ジャイロ素子600の駆動振動は、角速度ωが加わらない状態において、支持部612に接続された駆動部640における駆動用固定電極部642と駆動用可動電極部641との間に生じる静電力により、振動体620がX軸に沿って往復振動(運動)を行う。より具体的には、駆動用固定電極部642と駆動用可動電極部641との間に交番電圧を印加する。これにより、第1フラップ板651および第2フラップ板653などを含む振動体620を、所定の周波数で、X軸に沿って振動させることができる。
ジャイロ素子600が駆動振動している状態で、Y軸回りの角速度ωを受けるとZ軸方向のコリオリ力が生じ、振動体620(第1フラップ板651および第2フラップ板653)はZ軸方向に振動する。このZ軸方向の振動により生じる容量変化を検出することで、角速度を算出することができる。具体的には、第1フラップ板651および第2フラップ板653にDC電圧を印加した状態で、第1フラップ板651および第2フラップ板653がZ軸方向に振動(搖動)すると、第1フラップ板651および第2フラップ板653と検出用固定電極655との間の距離が変化し、第1フラップ板651および第2フラップ板653と検出用固定電極655との間の静電容量が変化する。その容量変化を検出用固定電極655の電流変化として検出することによって角速度ωを求めることができる。
次に、ジャイロ素子600における振動モードについて説明する。なお、以下の説明では、振動体620、弾性支持体630、および駆動部640の一部(駆動用可動電極部641)を含む部位を駆動振動部とし、第1フラップ板651および第1フラップ板651と接続された第1梁部652と、第2フラップ板653および第2フラップ板653と接続された第2梁部654とを含む部位を検出振動部として説明する。
ジャイロ素子600においても、前述した第1実施形態のジャイロ素子300と同様に、図3に示すような、駆動振動部を所定の共振周波数(振動周波数)で駆動(振動)する駆動振動モード(X軸方向の振動)と、駆動振動部の振動方向と直交し、検出振動部にて角速度(コリオリ力)を検出する検出振動モード(Z軸方向)との振動モードを有している。さらに、検出振動モードには、第1フラップ板651および第2フラップ板653が互いに逆位相で振動する少なくとも二つの検出振動モードが存在している。なお、この検出モードについては、前述した第1実施形態における説明と同様であるので、詳細な説明は省略するが、本実施形態においても、検出振動モードは、第1共振周波数(振動周波数)f1をピーク感度とする検出1モード、および第2共振周波数(振動周波数)f2をピーク感度とする検出2モードの二つの検出振動モードが存在する。そして、検出1モードおよび検出2モードよりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在する。なお、駆動振動モードの共振数周波数は、検出1モードおよび検出2モードよりも低い共振周波数である第4共振周波数(振動周波数)f4に駆動振動モードを存在させてもよい。
ジャイロ素子600では、角速度(コリオリ力)の検出振動モードの共振周波数に近い周波数で駆動振動部を振動させると、駆動振動(駆動振動モード)に対して駆動振動部および検出振動部の双方が振れやすくなり、検出振動部において、より大きな検出信号を得ることができる。すなわち、ジャイロ素子600の検出感度を向上させることができる。
そして、検出振動モードの共振周波数と駆動振動部の共振周波数とを近づけるため、駆動振動部の質量調整、すなわち離調調整を行う。離調調整では、前述の第1実施形態と同様に、二つの検出振動モードの共振周波数の内の、いずれかの検出振動モードの共振周波数を一定にして、駆動振動モードの共振周波数を近づけるように調整する。換言すれば、二つの検出振動モードの共振周波数の内の、いずれかの検出振動モードの共振周波数と駆動振動モードの共振周波数とを近づけるように離調調整を行う。
なお、離調調整における検出1モード、検出2モード、および駆動モードの共振周波数と素子感度との相関については、図4および図5を用いた前述の第1実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略するが、本実施形態のジャイロ素子600においても前述の第1実施形態のジャイロ素子300と同様の効果を有している。詳細には、ジャイロ素子600においても、図4および図5に示す検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在するパターンであるため、駆動振動モードの共振周波数f3を共振周波数f31に変化させる離調調整を行っても、素子感度に若干の変化は生じるが、殆んど低下しない状態となる。また、素子感度のばらつきも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。
また、離調度と、検出1モード、検出2モード、および駆動モードにおける素子感度バラツキとの相関においても、前述の第1実施形態と同様であるため説明を省略するが、離調調整の離調度の絶対値が、0.5%〜8%の範囲内にあれば、素子感度バラツキを小さく抑えることができる。
上述のように、ジャイロ素子600によれば、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも高い共振周波数である第3共振周波数(振動周波数)f3に駆動振動モードが存在するため、駆動振動モードの共振周波数f3を共振周波数f31に変化させる離調調整を行っても、素子感度に若干の変化は生じるが、殆んど低下しない状態となる。また、素子感度バラツキも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。また、同様に、検出1モードの共振周波数f1および検出2モードの共振周波数f2よりも低い共振周波数である第4共振周波数(振動周波数)f4に駆動振動モードが存在するパターンにおいても、離調調整によって素子感度に若干の変化は生じるが、殆んど低下しない状態となる。また、素子感度バラツキも小さく抑えることができることから、安定した素子感度を維持することができる。
(電子デバイスとしてのジャイロセンサー)
次に、第1実施形態に係るジャイロ素子300を備えた電子デバイスとしてのジャイロセンサーについて、図8を参照して説明する。図8は、電子デバイスの一例としてのジャイロセンサーの概略を示す正断面図である。
図8に示すように、ジャイロセンサー500は、パッケージ510の凹部に、ジャイロ素子300と、回路部としての半導体装置520と、を収容し、パッケージ510の開口部を蓋体530により密閉し、内部を気密に保持されている。パッケージ510は、平板上の第1基板511と、第1基板511上に、枠状の第2基板512、第3基板513、第4基板514、を順に積層、固着して形成され、半導体装置520とジャイロ素子300とが収容される凹部が形成される。基板511,512,513,514は、例えばセラミックスなどにより形成される。
第1基板511は、凹部側の半導体装置520が搭載される電子部品搭載面511aには、半導体装置520が載置され固定されるダイパッド515が設けられている。半導体装置520はダイパッド515上に、例えば、ろう材(ダイアタッチ材)540によって接着され、固定されている。
回路部としての半導体装置520は、ジャイロ素子300を駆動振動させるための励振手段としての駆動回路と、角速度が加わったときにジャイロ素子300に生じる検出振動を検出する検出手段としての検出回路と、を有する。具体的には、半導体装置520が有する駆動回路は、ジャイロ素子300の一対の駆動振動腕2a,2b(図1参照)にそれぞれ形成された駆動電極11a,11b,12cおよび駆動電極11c,12a,12b(図2参照)に駆動信号を供給する。また、半導体装置520が有する検出回路は、ジャイロ素子300の一対の検出振動腕3a,3bにそれぞれ形成された検出電極21a,21b,22a,22bおよび検出電極31a,31b,32a,32b(図2参照)に生じる検出信号を増幅させて増幅信号を生成し、該増幅信号に基づいてジャイロセンサー500に加わった回転角速度を検出する。
第2基板512は、ダイパッド515上に搭載される半導体装置520が収容可能な大きさの開口を有する枠状の形状に形成されている。第3基板513は、第2基板512の開口より広い開口を有する枠状の形状に形成され、第2基板512上に積層され、固着される。そして第2基板512に第3基板513が積層されて第3基板513の開口の内側に現れる第2基板面512aには、半導体装置520の図示しない電極パッドと電気的に接続するボンディングワイヤーBWが接続される複数のIC接続端子512bが形成されている。そして、半導体装置520の図示しない電極パッドとパッケージ510に設けられたIC接続端子512bとが、ワイヤーボンディング法を用いて電気的に接続されている。すなわち、半導体装置520に設けられた複数の電極パッドと、パッケージ510の対応するIC接続端子512bとが、ボンディングワイヤーBWにより接続されている。また、IC接続端子512bのいずれかは、パッケージ510の図示しない内部配線により、第1基板511の外部底面511bに設けられた複数の外部接続端子511cに電気的に接続されている。
第3基板513上には、第3基板513の開口より広い開口を有する第4基板514が積層され、固着されている。そして、第3基板513に第4基板514が積層されて第4基板514の開口の内側に現れる第3基板面513aには、ジャイロ素子300に形成された接続パッド(図示せず)と接続される複数のジャイロ素子接続端子513bが形成されている。ジャイロ素子接続端子513bは、パッケージ510の図示しない内部配線によってIC接続端子512bのいずれかと電気的に接続されている。ジャイロ素子300は、第3基板面513aにジャイロ素子300の第1支持部5b、第2支持部6b(図1参照)を、接続パッドとジャイロ素子接続端子513bとに位置を合わせて載置され、導電性接着剤550によって接着固定される。
更に、第4基板514の開口の上面に蓋体530が配置され、パッケージ510の開口を封止し、パッケージ510の内部が気密封止され、ジャイロセンサー500が得られる。蓋体530は、例えば、42アロイ(鉄にニッケルが42%含有された合金)やコバール(鉄、ニッケルおよびコバルトの合金)等の金属、セラミックス、あるいはガラスなどを用いて形成することができる。例えば、金属により蓋体530を形成した場合には、コバール合金などを矩形環状に型抜きして形成されたシールリング560を介してシーム溶接することによりパッケージ510と接合される。パッケージ510および蓋体530によって形成される凹部空間は、ジャイロ素子300が動作するための空間となるため、減圧空間または不活性ガス雰囲気に密閉・封止することが好ましい。
電子デバイスとしてのジャイロセンサー500によれば、素子感度のばらつきも小さく抑え、安定した素子感度を維持することができるジャイロ素子300を備えているため、安定したセンシング特性を発揮することができる。また、上記構成のようなパッケージタイプのジャイロセンサー500は、小型化・薄型化に有利であるとともに耐衝撃性を高くすることができる。
なお、本発明に係る振動素子を適用可能な電子デバイスとしては、ジャイロセンサー500の他にも、例えば、センシングデバイスやタイミングデバイスなどを挙げることができる。
(電子機器)
次に、図9を参照して、前述の実施形態に係る振動素子を備えた電子機器について説明する。なお、以下の説明では、振動素子の一例としてジャイロ素子300を用いた例について説明する。図9(a)〜図9(c)は、ジャイロ素子300を備える電子機器の一例を示す斜視図である。
図9(a)は、電子機器としてのデジタルビデオカメラ1000にジャイロ素子300を適用した例を示す。デジタルビデオカメラ1000は、受像部1100、操作部1200、音声入力部1300、及び表示ユニット1400を備えている。このようなデジタルビデオカメラ1000に、上述の実施形態のジャイロ素子300を搭載する手ぶれ補正機能を具備させることができる。
図9(b)は、電子機器としての携帯電話機2000にジャイロ素子300を適用した例を示す。図9(b)に示す携帯電話機2000は、複数の操作ボタン2100及びスクロールボタン2200、並びに表示ユニット2300を備える。スクロールボタン2200を操作することによって、表示ユニット2300に表示される画面がスクロールされる。
図9(c)は、電子機器としての情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)3000にジャイロ素子300を適用した例を示す。図8(c)に示すPDA3000は、複数の操作ボタン3100及び電源スイッチ3200、並びに表示ユニット3300を備える。電源スイッチ3200を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示ユニット3300に表示される。
このような携帯電話機2000やPDA3000に、上述の実施形態のジャイロ素子300を搭載することにより、様々な機能を付与することができる。例えば、図9(b)の携帯電話機2000に、図示しないカメラ機能を付与した場合に、上記のデジタルビデオカメラ1000と同様に、手振れ補正を行うことができる。また、図9(b)の携帯電話機2000や、図9(c)のPDA3000に、GPS(Global Positioning System)として広く知られる汎地球測位システムを具備した場合に、上述の実施形態のジャイロ素子300を搭載することにより、GPSによって、携帯電話機2000やPDA3000の位置や姿勢を認識させることができる。
なお、本発明の実施形態に係るジャイロ素子300を一例とする振動素子は、図9(a)のデジタルビデオカメラ1000、図9(b)の携帯電話機、および図9(c)の情報携帯端末の他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等の電子機器に適用することができる。
(移動体)
次に、前述の実施形態に係る振動素子を備えた移動体について説明する。なお、以下の説明では、振動素子の一例としてジャイロ素子300を用いた例について説明する。図10は移動体の一例としての自動車を概略的に示す斜視図である。自動車1500には、ジャイロ素子300が搭載されている。例えば、同図に示すように、移動体としての自動車1500には、ジャイロ素子300を内蔵してタイヤなどを制御する電子制御ユニット1510が車体に搭載されている。また、ジャイロ素子300は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に広く適用できる。
以上、実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態および変形例では、振動素子あるいは振動素子としてのジャイロ素子の形成材料として水晶を用いた例を説明したが、水晶以外の圧電体材料を用いることができる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウムや五酸化タンタル(Ta2O5)などの圧電体材料を積層させて構成された積層圧電基板、あるいは圧電セラミックスなどを用いることができる。また、圧電体材料以外の材料を用いて振動素子を形成することができる。例えば、シリコン半導体材料などを用いて振動素子を形成することもできる。また、振動素子の振動(駆動)方式は圧電駆動に限らない。圧電基板を用いた圧電駆動型のもの以外に、静電気力を用いた静電駆動型や、磁力を利用したローレンツ駆動型などの振動素子においても、本発明の構成およびその効果を発揮させることができる。