(実施形態)
まず、本発明の実施形態に係るジャイロ素子について、図1、図2および図3を参照して説明する。図1は、ジャイロ素子の一実施形態を示し、図1(a)は模式的に示す斜視図、図1(b)は模式的に示す平面図である。図2は、ジャイロ素子の構成の詳細を説明するための図であり、図2(a)は、振動腕の付け根部分(振動腕と基部との接続部)の部分拡大図(平面図)であり、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。図3は、ジャイロ素子の電極構成を説明する図であり、図3(a)は図1(b)のC−C断面図、図3(b)は図1(b)のD−D断面図である。
図1(a)に示すように、実施形態に係るジャイロ素子300は、基材(主要部分を構成する材料)を加工することにより一体に形成された基部1と、振動腕としての駆動振動腕2a,2bおよび振動腕としての検出振動腕3a,3bと、調整用振動腕4a,4bとを有している。更に、基部1から延出する第1連結部5a、および第1連結部5aに連結する第1支持部5bと、基部1から第1連結部5aと反対方向に延出する第2連結部6a、および第2連結部6aに連結する第2支持部6bと、が設けられている。さらに、第1支持部5bおよび第2支持部6bは、駆動振動腕2a,2bの側で一体的に繋って、固定枠部7を構成している。そして、ジャイロ素子300は、固定枠部7の所定の位置で、図示しないパッケージ等の基板に固定される。
本実施形態のジャイロ素子300では、基材として圧電体材料である水晶を用いた例について説明する。水晶は、電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸及び光学軸と呼ばれるZ軸を有している。本実施形態では、水晶結晶軸において直交するX軸及びY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚さを有した所謂水晶Z板を基材として用いた例を説明する。なお、ここでいう所定の厚さは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。また、ジャイロ素子300を形成する平板は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸及びZ軸の各々につき多少の範囲で許容できる。例えば、X軸を中心に0度から2度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。Y軸及びZ軸についても同様である。
ジャイロ素子300は、中心部分に位置する略矩形状の基部1と、基部1のY軸方向の端部1a,1bのうち一方の端部(図中(−)Y方向の端部)1bから、並行するようにY軸に沿って延伸された一対の駆動振動腕2a,2bと、基部1の他方の端部(図中(+)Y方向の端部)1aからY軸に沿って並行するように延伸された一対の検出振動腕3a,3bと、を有している。このように、基部1の両端部1a,1bから、一対の駆動振動腕2a,2bと、一対の検出振動腕3a,3bとが、それぞれ同軸方向に延伸されている。このような形状から、本実施形態に係るジャイロ素子300は、H型ジャイロ素子と呼ばれることがある。H型のジャイロ素子300は、駆動振動腕2a,2bと検出振動腕3a,3bとが、基部1の同一軸方向の両端部1a,1bからそれぞれ延伸されているので、駆動系と検出系が分離される。ジャイロ素子300は、このように駆動系と検出系が分離されることにより、駆動系と検出系の電極間あるいは配線間の静電結合が低減され、検出感度が安定するという特徴を有する。なお、本実施形態ではH型振動片を例に駆動振動腕および検出振動腕を各々2本ずつ設けているが、振動腕の本数は1本であっても3本以上であっても良い。また、1本の振動腕に後述する駆動電極と検出電極を形成しても良い。
H型のジャイロ素子300は、一対の駆動振動腕2a,2bを面内方向(+X軸方向と−X軸方向)に振動させた状態で、Y軸回りに角速度ωが加わると、駆動振動腕2a,2bにコリオリ力が発生し、駆動振動腕2a,2bが面内方向と交差する面外方向(+Z軸方向と−Z軸方向)に、互いに逆方向に屈曲振動する。そして、検出振動腕3a,3bは、駆動振動腕2a,2bの面外方向の屈曲振動に共振して、同じく面外方向に屈曲振動する。この時、圧電効果により検出振動腕3a,3bに設けられている検出電極に電荷が発生する。ジャイロ素子300は、この電荷を検出することによりジャイロ素子300に加わる角速度ωを検出することができる。
基部1から延伸された振動腕としての一対の駆動振動腕2a,2bは、表面2c,2gと、表面2c,2gと反対側に設けられた裏面2d,2hと、表面2c,2gと裏面2d,2hとを接続する側面2e,2f,2k,2jと、を備えている(図3参照)。また、駆動振動腕2a,2bの基部1側の一端とは反対側の他端側の先端部(端部側)には、駆動振動腕2a,2bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部52a,52bが設けられている。このように、駆動振動腕2a,2bに、錘部52a,52bが設けられていることにより、駆動振動腕2a,2bの長さ(Y軸方向の寸法)の増大を抑えながら所定の駆動振動を得ることができるため、ジャイロ素子を小型化することが可能となる。なお、駆動振動腕2a,2bには、駆動振動腕2a,2bを駆動させるための電極が設けられているが、電極の構成については後述する。
基部1から延伸された一対の振動腕としての検出振動腕3a,3bには、表面3c,3gと、表面3c,3gと反対側に設けられた裏面3d,3fと、表面3c,3gと裏面3d,3fとを接続する側面3h,3i,3j,3kと、を備えている(図3参照)。さらに、検出振動腕3a,3bには、基部1側の一端とは反対側の他端側の先端部に検出振動腕3a,3bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部53a,53bが設けられている。このように、検出振動腕3a,3bにおいても、錘部53a,53bが設けられていることにより、検出振動腕3a,3bの長さ(Y軸方向の寸法)の増大を抑えながら所定の検出振動を得ることができるため、ジャイロ素子を小型化することが可能となる。また、一対の検出振動腕3a,3bには、凹部58a,58bが設けられている(図3参照)。本実施形態における凹部58a,58bは、表面3c,3gおよび裏面3d,3fの両面側から掘り込まれている構成であるが、表面3c,3gあるいは裏面3d,3fの一方の面から掘り込まれた構成でもよい。
さらに、ジャイロ素子300には、水晶の結晶X軸(電気軸)と交差する方向に検出振動腕3a,3bと並行させてかつ検出振動腕3a,3bをZ軸方向から見た平面視で内側に挟むように、基部1から延伸された一対の調整用振動腕4a,4bが設けられている。即ち、調整用振動腕4a,4bは、Y軸に沿って(+)Y方向に延伸され、検出振動腕3a,3bと所定の間隔を空けて内側に挟むように位置し、かつ並行するように設けられている。なお、調整用振動腕4a,4bは、チューニングアームと呼ばれることもある。このような調整用振動腕4a,4bが設けられていることにより、漏れ出力を調整することが可能となる。
調整用振動腕4a,4bにおける漏れ出力の調整は、振動漏れによって生じる電荷を、調整用振動腕4a,4bの電荷を調整することによってキャンセルすることによって行う。具体的には、例えば調整用振動腕4a,4bの一部を除去したり質量を付加したりすることにより、調整用振動腕4a,4bの電荷量を調整することができる。その結果、振動漏れの出力を抑制することが可能となり、ジャイロ素子300の振動特性を安定させることが可能となる。
また、調整用振動腕4a,4bは、駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bよりも全長が短く形成されている。これにより、漏れ出力を調整するための調整用振動腕4a,4bの振動が、駆動振動腕2a,2bと検出振動腕3a,3bによるジャイロ素子300の主要な振動を阻害することがないので、ジャイロ素子300の振動特性が安定するとともに、ジャイロ素子300の小型化にも有利となる。
さらに、調整用振動腕4a,4bの基部1側の一端とは反対側の他端側の先端部(端部側)には、調整用振動腕4a,4bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部54a,54bが設けられている。このように、調整用振動腕4a,4bの先端部に錘部54a,54bを設けることにより、調整用振動腕4a,4bの長さを短縮することができる。
基部1の中央は、ジャイロ素子300の重心とすることができる。そして、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交し、重心を通るものとする。ジャイロ素子300の外形は、重心を通るY軸方向の仮想の中心線に対して線対称とすることができる。これにより、ジャイロ素子300の外形はバランスのよいものとなり、ジャイロ素子300の特性が安定して、検出感度が向上するので好ましい。このようなジャイロ素子300の外形形状は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)により形成することができる。なお、ジャイロ素子300は、1枚の水晶ウエハーから複数個取りすることが可能である。
ここで、駆動振動腕2a,2bと調整用振動腕4a,4bとの位置関係について図2を用いて説明する。図2に示すように、駆動振動腕2a,2bが基部1から延伸する付け根部分である第1接続部Q1と、調整用振動腕4a,4bが基部1から延伸する付け根部分である第2接続部Q2が、基部1を介して距離Lの間隔を有して配置されている。このとき、第1接続部Q1と第2接続部Q2とによって挟まれている領域Wにおける基部1は、厚さtで形成されている。なお、基部1は、少なくとも領域Wにおける厚みが厚さtで形成されればよく、基部1全体が厚さtであってもよい。
さらに詳細に説明する。
駆動振動腕2a,2bと基部1との接続部である第1接続部Q1について説明する。駆動振動腕2a,2bと基部1とが接続される接続部において、本形態における駆動振動腕2a,2bの幅方向(X軸方向)の辺である第1辺12e,12kおよび第2辺12f,12jと基部1の一方の端部1bとの接続は、略円弧(アール形状)Re,Rf,Rk,Rjでなされている。第1接続部Q1は、駆動振動腕2a,2bの幅方向(X軸方向)の辺である第1辺12e,12kを延長した仮想線である延長線S1および第2辺12f,12jを延長した仮想線である延長線S2と、基部1の一方の端部1bと、が交差する二つの交点P1,P2を結ぶ仮想線S11が、駆動振動腕2a,2bの中心線B1と交差する点(交点)である。なお、第1辺12e,12kおよび第2辺12f,12jは、駆動振動腕2a,2bの延出方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の、駆動振動腕2a,2bの両端に位置する辺である。また、駆動振動腕2a,2bの中心線B1とは、駆動振動腕2a,2bの延出方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の腕幅を等分して駆動振動腕2a,2bの延出方向(Y軸方向)に延びる仮想線である。
調整用振動腕4a,4bと基部1との接続部である第2接続部Q2について説明する。調整用振動腕4a,4bと基部1とが接続される接続部において、本形態における調整用振動腕4a,4bの幅方向(X軸方向)の辺である第1辺14e,14kおよび第2辺14f,14jと基部1の他方の端部1aとの接続は、前述と同様に略円弧(アール形状)Re,Rf,Rk,Rjでなされている。第2接続部Q2は、調整用振動腕4a,4bの幅方向(X軸方向)の辺である第1辺14e,14kを延長した仮想線である延長線S3および第2辺14f,14jを延長した仮想線である延長線S4と、基部1の他方の端部1aと、が交差する二つの交点P3,P4を結ぶ仮想線S12が、調整用振動腕4a,4bの中心線B2と交差する点(交点)である。なお、第1辺14e,14kおよび第2辺14f,14jは、調整用振動腕4a,4bの延出方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の、調整用振動腕4a,4bの両端に位置する辺である。また、調整用振動腕4a,4bの中心線B2とは、調整用振動腕4a,4bの延出方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の腕幅を等分して調整用振動腕4a,4bの延出方向(Y軸方向)に延びる仮想線である。
前述した調整用振動腕4a,4bの説明でも触れたが、調整用振動腕4a,4bにおける漏れ出力の調整は、振動漏れによって生じる電荷を、調整用振動腕4a,4bの電荷を調整することによってキャンセルすることによって行う。具体的には、例えば調整用振動腕4a,4bの一部を除去したり質量を付加したりすることにより、調整用振動腕4a,4bの電荷量を調整することができる。この漏れ出力の調整では、十分なチューニングを行うために必要なチューニング量(チューニング電荷量)を大きくする(確保する)ことが望まれ、調整用振動腕4a,4bの振動周波数と駆動振動腕2a,2bの振動周波数とを近づけるほど、チューニング量(チューニング電荷量)を増やすことができる。しかしながら、調整用振動腕4a,4bの振動周波数と駆動振動腕2a,2bの振動周波数とを近づけることによってチューニング電荷量を大きくしようとする(確保する)と、駆動振動腕2a,2bの振動のし易さを表す特性であるCI(クリスタル インピーダンス)値が大きくなってしまうことが知られている。したがって、この漏れ出力の調整においては、CI値の上昇を抑えつつ、チューニングに必要なチューニング電荷量を確保することが必要となる。
上述のような課題に対応するため、駆動振動腕2a,2bおよび調整用振動腕4a,4bは、駆動振動腕2a,2bの振動周波数と調整用振動腕4a,4bの振動周波数との差である離調度と、駆動振動腕2a,2bの第1接続部Q1と調整用振動腕4a,4bの第2接続部Q2との間の距離L、および、この間(図2に示す領域W)に位置する基部1の厚さtと、の関係を下記式(1)とするように構成される。
0.58×(L/t)-2.2≧離調度≧0.12×(L/t)-2.2・・・(1)
詳細は後述するが、このように、離調度と、第1接続部Q1と第2接続部Q2との間の距離Lと、その間の基部1の厚さtと、の関係でジャイロ素子300を構成することにより、CI値の上昇を抑え、且つチューニングに必要なチューニング電荷量を確保することが可能となる。
また、離調度と、駆動振動腕2a,2bの第1接続部Q1と調整用振動腕4a,4bの第2接続部Q2との間の距離L、および、この間(図2に示す領域W)に位置する基部1の厚さtと、の関係を下記式(2)とするように構成することが、さらに好ましい。
0.29×(L/t)-2.2≧離調度≧0.12×(L/t)-2.2・・・(2)
このように、離調度と、第1接続部Q1と第2接続部Q2との間の距離Lと、その間の基部1の厚さtとを、式(2)の関係とすることにより、さらに好適なCI値およびチューニング電荷量を得たジャイロ素子300とすることができる。すなわち、CI値の上昇を抑えるとともに、チューニング電荷量をより大きくすることができる。
ここで、前述した、離調度と、駆動振動腕2a,2bの第1接続部Q1と調整用振動腕4a,4bの第2接続部Q2との間の距離L、および基部1の厚さtと、の関係について、図4および図5のグラフを参照して説明する。図4は、離調度とCI値との相関を示すグラフであり、図5は、距離L/厚さtと離調度との相関を示すグラフである。
図4では、縦軸をCI値の上昇率、横軸を離調度(チューニング離調(調整振動周波数−駆動振動周波数)/駆動振動周波数)としており、距離L/厚さtをそれぞれの値に設定した場合の相関を示している。具体的にそれぞれの曲線は、L/t=2,L/t=2.7,L/t=4,L/t=5の4つの設定に係る相関を示している。いずれの曲線においても、離調度の変化によるCI値の上昇率が比較的緩やかな領域と、急峻な領域を持っており、CI値の上昇率が20%を超えるとCI値の変化が急峻になり、例えば、離調度の僅かな変動によってCI値の大きな変化が起こってしまう虞がある。したがって、CI値の上昇率20%を閾値として、それ以下に管理すれば、僅かな離調度の変化によるCI値上昇率の急激な増加を抑制することが可能となる。
次に、図5に沿って説明する。図5では、縦軸を離調度(チューニング離調(調整振動周波数−駆動振動周波数)/駆動振動周波数)、横軸をL/t、としており、2例のチューニング電荷量における相関曲線と、前述したCI値の上昇率が急峻になるCI値上昇率が20%のときの相関曲線を示している。具体的には、曲線Cu1は、駆動振動腕の振幅に対し調整用振動腕の振幅を2%としたときの離調度とL/tとの相関を示し、離調度(Δf/f)=0.58×(L/t)-2.2に沿った曲線である。また、曲線Cu2は、駆動振動腕の振幅に対し調整用振動腕の振幅を4%としたときの離調度とL/tとの相関を示し、離調度(Δf/f)=0.29×(L/t)-2.2に沿った曲線である。また、曲線Cu3は、チューニング電荷量が増加してCI値の上昇率が急峻になるCI値上昇率が20%のときの相関を示し、離調度(Δf/f)=0.12×(L/t)-2.2に沿った曲線である。
なお、上述の駆動振動腕および調整用振動腕(チューニング用振動腕)の振幅の一例としては、第1接続部および第2接続部から等しい所定の距離における駆動振動腕および調整用振動腕(チューニング用振動腕)の振幅とすることができる。
曲線Cu1、および曲線Cu2に示されているように、チューニング電荷量を増やすことにより、CI値上昇率が20%の曲線Cu3に近づく。前述のように、CI値の上昇率が20%を超えるとCI値の変化が急峻になり、僅かな離調度の変化によるCI値上昇率の急激な増加を生じてしまう虞がある。したがって、図中で、この曲線Cu3より、左側(L/tの減少側)の領域では、CI値の上昇が急峻になり、好ましくない領域となる。また、駆動振動腕の振幅に対し調整用振動腕の振幅は、2%より少なくなると、漏れ出力の調整における十分なチューニングを行うことができなくなる虞を生じることが判っている。したがって、図中で、この曲線Cu1より、右側(L/tの増加側)の領域では、十分なチューニング電荷量を得ることのできない領域となる。
上述したような図5に示す相関関係により、離調度と、駆動振動腕2a,2bの第1接続部Q1と調整用振動腕4a,4bの第2接続部Q2との間の距離L、および、この間に位置する基部1の厚さtと、の関係を上記式(1)とするように構成することにより、CI値の上昇を抑え、且つ駆動振動腕の変位に対し調整用振動腕の振幅を2%と十分に確保することが可能なジャイロ素子300を得ることができる。また、上記式(2)とするように構成することにより、さらに好適なCI値および十分な駆動振動腕の振幅に対し調整用振動腕の振幅を4%を確保することが可能なジャイロ素子300とすることができる。すなわち、CI値の上昇を抑えるとともに、チューニング電荷量をより大きくすることができる。
次に、図3に戻り、ジャイロ素子300の電極配置の一実施形態について説明する。図3(a)は、検出振動腕3a,3bの図1(b)に示すC−C部における断面を示し、図3(b)は、駆動振動腕2a,2bの図1(b)に示すD−D部における断面を示している。
まず、検出振動腕3a,3bに形成され、検出振動腕3a,3bが振動することによって基材である水晶に発生する歪みを検出する検出電極について説明する。図3(a)に示すように、検出振動腕3a,3bには、前述したように、凹部58a,58bが設けられている。本実施形態における凹部58a,58bは、表面3c,3gおよび裏面3d,3fの両面側に設けられている。
検出振動腕3aには、側面3hに、検出振動腕3aの厚み方向(Z軸方向)の略中央に有って検出振動腕3aの延伸方向(Y軸方向)に沿って設けられた電極分割部3mによって分割された、表面3c側の第1検出電極21aと裏面3d側の第2検出電極22bとが設けられている。さらに、第1検出電極21aと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極22aが設けられ、第2検出電極22bと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極21bが設けられている。また、側面3hとは反対側の側面3iに、検出振動腕3aの厚み方向の略中央に有って検出振動腕3aの延伸方向に沿って設けられた電極分割部3nによって分割された、表面3c側の第2検出電極22aと裏面3d側の第1検出電極21bとが設けられている。さらに、第2検出電極22aと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極21aが設けられ、第1検出電極21bと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極22bが設けられている。
そして、第1検出電極21aと第1検出電極21bとは、図示しないが、検出振動腕3aの先端部などを経由して電気的に接続されている。第2検出電極22aと第2検出電極22bとは、図示しないが、検出振動腕3aの先端部などを経由して電気的に接続されている。なお、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、検出振動腕3aの先端近傍まで延設されている。また、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、図示しない配線を介して図示しない外部接続パッドに、それぞれが電気的に接続されている。また、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、調整用振動腕4a(図1参照)に形成された図示しない調整用電極にも電気的に接続されている。
同様に、検出振動腕3bには、側面3jに、検出振動腕3bの厚み方向(Z軸方向)の略中央に有って検出振動腕3bの延伸方向(Y軸方向)に沿って設けられた電極分割部3rによって分割された、表面3g側の第2検出電極31aと裏面3f側の第1検出電極32bとが設けられている。さらに、第2検出電極31aと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極32aが設けられ、第1検出電極32bと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極31bが設けられている。また、側面3jとは反対側の側面3kに、検出振動腕3bの厚み方向の略中央に有って検出振動腕3bの延伸方向に沿って設けられた電極分割部3sによって分割された、表面3g側の第1検出電極32aと裏面3f側の第2検出電極31bとが設けられている。さらに、第1検出電極32aと対向する凹部58bの内側面には、第2検出電極31aが設けられ、第2検出電極31bと対向する凹部58bの内側面には、第1検出電極32bが設けられている。
そして、第2検出電極31aと第2検出電極31bとは、図示しないが、検出振動腕3bの先端部などを経由して電気的に接続されている。第1検出電極32aと第1検出電極32bとは、図示しないが、検出振動腕3bの先端部などを経由して電気的に接続されている。なお、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、検出振動腕3bの先端近傍まで延設されている。また、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、図示しない配線を介して図示しない外部接続パッドに、それぞれが電気的に接続されている。また、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、調整用振動腕4b(図1参照)に形成された図示しない調整用電極にも電気的に接続されている。
検出振動腕3aにおいては、第1検出電極21aと第1検出電極21bとは同電位となるように接続され、第2検出電極22aと第2検出電極22bとは同電位となるように接続されている。これにより、検出振動腕3aの振動によって生じる歪みが、第1検出電極21a,21bと第2検出電極22a,22bの電極間の電位差を検出することにより検出される。同様に、検出振動腕3bにおいては、第1検出電極32aと第1検出電極32bとは同電位となるように接続され、第2検出電極31aと第2検出電極31bとは同電位となるように接続されている。これにより、検出振動腕3bの振動によって生じる歪みが、第1検出電極32a,32bと第2検出電極31a,31bの電極間の電位差を検出することにより検出される。
次に、駆動振動腕2a,2bに設けられた、駆動振動腕2a,2bを駆動させるための駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cについて説明する。図3(b)に示すように、駆動振動腕2aの表面(一方の主面)2cには駆動電極11aが、および裏面(他方の主面)2dには駆動電極11bが、錘部52a(図1参照)までの間に形成されている。また、駆動振動腕2aの一方の側面2e、および他方の側面2fには駆動電極12cが、駆動振動腕2aの錘部52a(図1参照)までの間に形成されている。同様に、駆動振動腕2bの表面(一方の主面)2gには駆動電極12aが、および裏面(他方の主面)2hには駆動電極12bが、錘部52b(図1参照)までの間に形成されている。また、駆動振動腕2bの一方の側面2j、および他方の側面2kには駆動電極11cが、駆動振動腕2bの錘部52b(図1参照)までの間に形成されている。
駆動振動腕2a,2bに形成された駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cは、駆動振動腕2a,2bを介して対向配置される駆動電極間において同電位となるように配置される。また、図示しないが、駆動電極11a,11b,11cが、接続される第1固定部に形成された接続パッド、および駆動電極12a,12b,12cが接続される第2固定部に形成された接続パッドを通して駆動電極11a,11b,11cと駆動電極12a,12b,12cとの間に電位差を交互に与えることにより駆動振動腕2a,2bは、いわゆる音叉振動が励振される。
次に、調整用振動腕4a,4bに設けられた電極について説明する。図示しないが、調整用振動腕4aには、表裏面に同電位の調整用電極が形成されている。また調整用振動腕4aの両側面のそれぞれには、同電位である他の調整用電極が形成されている。同様に、調整用振動腕4bには、表裏面に同電位の調整用電極が形成されている。また調整用振動腕4bの両側面には、同電位である他の調整用電極が形成されている。
なお、上述した駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12c、第1検出電極21a,21b,32a,32b、および第2検出電極22a,22b,31a,31b、および調整用電極の構成は、特に限定されず、導電性を有し、薄膜形成が可能であればよい。具体的な構成としては、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電材料により形成することができる。
上述したようなジャイロ素子300によれば、離調度(Δf/f)と、駆動振動腕2a,2bの第1接続部Q1と調整用振動腕4a,4bの第2接続部Q2との間の距離L、および、この間に位置する基部1の厚さtと、を上記式(1)の関係とすることにより、CI値の上昇を抑え、且つチューニングに必要なチューニング電荷量を十分に確保することが可能となる。すなわち、CI値の上昇率を20%以下とすることができるとともに、駆動振動腕の振幅に対し調整用振動腕の振幅を2%以上確保することが可能となる。これにより、駆動振動腕2a,2bを振動させるための電力量の増加や駆動振動腕2a,2bの振動特性、特にはCI値の上昇などの悪化を抑制することが可能となる。
また、上記式(2)とするように構成することにより、CI値の上昇率を20%以下とすることができるとともに、駆動振動腕の振幅に対し調整用振動腕の振幅を4%にでき以上確保することが可能となる。すなわち、さらに好適なCI値および十分なチューニング電荷量を確保することが可能なジャイロ素子300とすることができる。
(ジャイロセンサー)
次に、実施形態に係るジャイロ素子300を備えたセンサーの一例としてのジャイロセンサーについて、図6を参照して説明する。図6は、本発明に係るセンサーの一例としてのジャイロセンサーの概略を示す正断面図である。
図6に示すように、ジャイロセンサー500は、パッケージ510の凹部に、ジャイロ素子300と、電子部品としての半導体装置520と、を収容し、パッケージ510の開口部を蓋体530により密閉し、内部を気密に保持されている。パッケージ510は、平板上の第1基板511と、第1基板511上に、枠状の第2基板512、第3基板513、第4基板514、を順に積層、固着して形成され、半導体装置520とジャイロ素子300とが収容される凹部が形成される。基板511,512,513,514は、例えばセラミックスなどにより形成される。
第1基板511は、凹部側の半導体装置520が搭載される電子部品搭載面511aには、半導体装置520が載置され固定されるダイパッド515が設けられている。半導体装置520はダイパッド515上に、例えば、ろう材(ダイアタッチ材)540によって接着され、固定されている。
回路部としての半導体装置520は、ジャイロ素子300を駆動振動させるための励振手段としての駆動回路と、角速度が加わったときにジャイロ素子300に生じる検出振動を検出する検出手段としての検出回路と、を有する。具体的には、半導体装置520が有する駆動回路は、ジャイロ素子300の一対の駆動振動腕2a,2b(図1参照)にそれぞれ形成された駆動電極11a,11b,12cおよび駆動電極11c,12a,12b(図3参照)に駆動信号を供給する。また、半導体装置520が有する検出回路は、ジャイロ素子300の一対の検出振動腕3a,3bにそれぞれ形成された検出電極21a,21b,22a,22bおよび検出電極31a,31b,32a,32b(図3参照)に生じる検出信号を増幅させて増幅信号を生成し、該増幅信号に基づいてジャイロセンサー500に加わった回転角速度を検出する。
第2基板512は、ダイパッド515上に搭載される半導体装置520が収容可能な大きさの開口を有する枠状の形状に形成されている。第3基板513は、第2基板512の開口より広い開口を有する枠状の形状に形成され、第2基板512上に積層され、固着される。そして第2基板512に第3基板513が積層されて第3基板513の開口の内側に現れる第2基板面512aには、半導体装置520の図示しない電極パッドと電気的に接続するボンディングワイヤーBWが接続される複数のIC接続端子512bが形成されている。そして、半導体装置520の図示しない電極パッドとパッケージ510に設けられたIC接続端子512bとが、ワイヤーボンディング法を用いて電気的に接続されている。すなわち、半導体装置520に設けられた複数の電極パッドと、パッケージ510の対応するIC接続端子512bとが、ボンディングワイヤーBWにより接続されている。また、IC接続端子512bのいずれかは、パッケージ510の図示しない内部配線により、第1基板511の外部底面511bに設けられた複数の外部接続端子511cに電気的に接続されている。
第3基板513上には、第3基板513の開口より広い開口を有する第4基板514が積層され、固着されている。そして、第3基板513に第4基板514が積層されて第4基板514の開口の内側に現れる第3基板面513aには、ジャイロ素子300に形成された接続パッド(図示せず)と接続される複数のジャイロ素子接続端子513bが形成されている。ジャイロ素子接続端子513bは、パッケージ510の図示しない内部配線によってIC接続端子512bのいずれかと電気的に接続されている。ジャイロ素子300は、第3基板面513aにジャイロ素子300の第1支持部5b、第2支持部6b(図1参照)を、接続パッドとジャイロ素子接続端子513bとに位置を合わせて載置され、導電性接着剤550によって接着固定される。
更に、第4基板514の開口の上面に蓋体530が配置され、パッケージ510の開口を封止し、パッケージ510の内部が気密封止され、ジャイロセンサー500が得られる。蓋体530は、例えば、42アロイ(鉄にニッケルが42%含有された合金)やコバール(鉄、ニッケルおよびコバルトの合金)等の金属、セラミックス、あるいはガラスなどを用いて形成することができる。例えば、金属により蓋体530を形成した場合には、コバール合金などを矩形環状に型抜きして形成されたシールリング560を介してシーム溶接することによりパッケージ510と接合される。パッケージ510および蓋体530によって形成される凹部空間は、ジャイロ素子300が動作するための空間となるため、減圧空間または不活性ガス雰囲気に密閉・封止することが好ましい。
ジャイロセンサー500によれば、CI値の上昇が抑えられることによる振動特性の安定と消費電力量を低減させたジャイロ素子300を備えているため、低消費電力化で安定したセンシング特性を発揮することができる。また、上記構成のようなパッケージタイプのジャイロセンサー500は、小型化・薄型化に有利であるとともに耐衝撃性を高くすることができる。
(電子機器)
次に、図7を参照して、前述の実施形態に係るジャイロ素子300を備えた電子機器について説明する。なお、図7(a)〜図7(c)は、ジャイロ素子300を備える電子機器の一例を示す斜視図である。
図7(a)は、電子機器としてのデジタルビデオカメラ1000にジャイロ素子300を適用した例を示す。デジタルビデオカメラ1000は、受像部1100、操作部1200、音声入力部1300、及び表示ユニット1400を備えている。このようなデジタルビデオカメラ1000に、上述の実施形態のジャイロ素子300を搭載する手ぶれ補正機能を具備させることができる。
図7(b)は、電子機器としての携帯電話機2000にジャイロ素子300を適用した例を示す。図7(b)に示す携帯電話機2000は、複数の操作ボタン2100及びスクロールボタン2200、並びに表示ユニット2300を備える。スクロールボタン2200を操作することによって、表示ユニット2300に表示される画面がスクロールされる。
図7(c)は、電子機器としての情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)3000にジャイロ素子300を適用した例を示す。図7(c)に示すPDA3000は、複数の操作ボタン3100及び電源スイッチ3200、並びに表示ユニット3300を備える。電源スイッチ3200を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示ユニット3300に表示される。
このような携帯電話機2000やPDA3000に、上述の実施形態のジャイロ素子300を搭載することにより、様々な機能を付与することができる。例えば、図7(b)の携帯電話機2000に、図示しないカメラ機能を付与した場合に、上記のデジタルビデオカメラ1000と同様に、手振れ補正を行うことができる。また、図8(b)の携帯電話機2000や、図7(c)のPDA3000に、GPS(Global Positioning System)として広く知られる汎地球測位システムを具備した場合に、上述の実施形態のジャイロ素子300を搭載することにより、GPSによって、携帯電話機2000やPDA3000の位置や姿勢を認識させることができる。
なお、本発明の実施形態に係るジャイロ素子300は、図7(a)のデジタルビデオカメラ1000、図7(b)の携帯電話機、および図7(c)の情報携帯端末の他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等の電子機器に適用することができる。
(移動体)
次に、前述の実施形態に係るジャイロ素子300を備えた移動体について説明する。図8は移動体の一例としての自動車を概略的に示す斜視図である。自動車1500には、ジャイロ素子300が搭載されている。例えば、同図に示すように、移動体としての自動車1500には、ジャイロ素子300を内蔵してタイヤなどを制御する電子制御ユニット1510が車体に搭載されている。また、ジャイロ素子300は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に広く適用できる。
以上、実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態および変形例では、ジャイロ素子の形成材料として水晶を用いた例を説明したが、水晶以外の圧電体材料を用いることができる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウムや五酸化タンタル(Ta2O5)などの圧電体材料を積層させて構成された積層圧電基板、あるいは圧電セラミックスなどを用いることができる。また、圧電体材料以外の材料を用いてジャイロ素子を形成することができる。例えば、シリコン半導体材料などを用いてジャイロ素子を形成することもできる。また、ジャイロ素子の振動(駆動)方式は圧電駆動に限らない。圧電基板を用いた圧電駆動型のもの以外に、静電気力を用いた静電駆動型などのジャイロ素子においても、本発明の構成およびその効果を発揮させることができる。