以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。また、図1〜図3、図6、および図7では、説明の便宜上、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示しており、その図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」としている。また、以下の説明では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
<ジャイロ素子>
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態に係るジャイロ素子の概略構成について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るジャイロ素子の一例としてのH型ジャイロ素子の構造を示す概略平面図である。図2は、第1実施形態に係るジャイロ素子の電極構成を説明する図であり、図2(a)は図1中のB−B線の概略断面図、図2(b)は図1中のA−A線の概略断面図である。なお、図1においては、説明の便宜上、駆動電極や検出電極などの電極を省略している。
ジャイロ素子100は、図1に示すように、基部1と、駆動振動腕2a,2bと、検出振動腕3a,3bと、を有している。なお、ジャイロ素子100は、基部1の所定の位置で、図示しないパッケージ等の基板に固定される。駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bは、基部1の一端から、Y軸方向に互いに略平行に延びる一対の角柱状の振動体である。ジャイロ素子100を構成する基部1、駆動振動腕2a,2b、および検出振動腕3a,3bは、水晶が基材として用いられ、フォトリソグラフィー法およびフッ素系溶液などによるウェットエッチング法やフッ素系ガスなどによるドライエッチング法により一体で形成されている。
本実施形態のジャイロ素子100では、基材として圧電体材料である水晶を用いた例について説明する。水晶は、電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸および光学軸と呼ばれるZ軸を有している。本実施形態では、水晶結晶軸において直交するX軸およびY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚さtを有した所謂水晶Z板を基材として用いた例を説明する。なお、ここでいう所定の厚さtは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。また、ジャイロ素子100を形成する平板は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸およびZ軸の各々につき多少の範囲で許容できる。例えば、X軸を中心に0度から2度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。Y軸およびZ軸についても同様である。
ジャイロ素子100は、中心部分に位置する略矩形状の基部1と、基部1のY軸方向の端部1a,1bのうち一方の端部(図中−Y軸方向の端部)1bから、並行するようにY軸に沿って延伸された一対の駆動振動腕2a,2bと、基部1の他方の端部(図中+Y軸方向の端部)1aからY軸に沿って並行するように延伸された一対の検出振動腕3a,3bと、を有している。このように、基部1の両端部1a,1bから、一対の駆動振動腕2a,2bと、一対の検出振動腕3a,3bとが、それぞれ同軸方向に延伸されている。
このような形状から、本実施形態に係るジャイロ素子100は、H型ジャイロ素子と呼ばれることがある。H型のジャイロ素子100は、駆動振動腕2a,2bと検出振動腕3a,3bとが、基部1の同一軸方向の両端部1a,1bからそれぞれ延伸されているので、駆動系と検出系が分離される。ジャイロ素子100は、このように駆動系と検出系が分離されることにより、駆動系と検出系の電極間あるいは配線間の静電結合が低減され、検出感度が安定するという特徴を有する。なお、第1実施形態ではH型のジャイロ素子100を例に駆動振動腕および検出振動腕を各々2本ずつ設けているが、振動腕の本数は1本であっても3本以上であっても良い。また、1本の振動腕に後述する駆動電極と検出電極を形成しても良い。
H型のジャイロ素子100は、一対の駆動振動腕2a,2bを面内方向(+X軸方向と−X軸方向)に振動させた状態で、Y軸回りに角速度ωが加わると、駆動振動腕2a,2bにコリオリ力が発生し、駆動振動腕2a,2bが面内方向と交差する面外方向(+Z軸方向と−Z軸方向)に、互いに逆方向に屈曲振動する。そして、検出振動腕3a,3bは、駆動振動腕2a,2bの面外方向の屈曲振動に共振して、同じく面外方向に屈曲振動する。この時、圧電効果により検出振動腕3a,3bに設けられている検出電極に電荷が発生する。ジャイロ素子100は、この電荷を検出することによりジャイロ素子100に加わる角速度ωを検出することができる。
基部1から延伸された一対の駆動振動腕2a,2bは、図2(b)に示すように、表面2c,2gと、表面2c,2gと反対側に設けられた裏面2d,2hと、表面2c,2gと裏面2d,2hとを接続する側面2e,2f,2k,2jと、を備えている。
また、駆動振動腕2a,2bの基部1と接続する一端と反対側の他端側の先端部には、駆動振動腕2a,2bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部4a,4bが設けられている(図1参照)。このように、駆動振動腕2a,2bに、錘部4a,4bが設けられていることにより、駆動振動腕2a,2bの長さ(Y軸方向の寸法)の増大を抑えながら所定の駆動振動を得ることができるため、ジャイロ素子100を小型化することが可能となる。なお、駆動振動腕2a,2bには、駆動振動腕2a,2bを駆動させるための電極が設けられているが、電極の構成については後述する。
基部1から延伸された一対の検出振動腕3a,3bには、図2(a)に示すように、表面3c,3gと、表面3c,3gと反対側に設けられた裏面3d,3fと、表面3c,3gと裏面3d,3fとを接続する側面3h,3i,3j,3kと、を備えている。
また、検出振動腕3a,3bには、検出振動腕3a,3bの延伸方向(Y軸方向)に沿って溝としての有底の凹部58a,58bが設けられている。検出振動腕3a,3bに溝としての凹部58a,58bを設けることにより、屈曲振動によって発生する熱が拡散(熱伝導)し難くなり、熱弾性損失を抑制することができるので、検出感度を向上させることができる。本実施形態における凹部58a,58bは、図2(a)に示すように、表面3c,3gおよび裏面3d,3fの両面側から掘り込まれている構成であるが、表面3c,3gあるいは裏面3d,3fの一方の面から掘込まれた構成でもよい。
更に、検出振動腕3a,3bの基部1と接続する一端と反対側の他端側の先端部には、検出振動腕3a,3bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部5a,5bが設けられている(図1参照)。このように、検出振動腕3a,3bにおいても、錘部5a,5bが設けられていることにより、検出振動腕3a,3bの長さ(Y軸方向の寸法)の増大を抑えながら所定の検出振動を得ることができるため、ジャイロ素子100を小型化することが可能となる。
基部1の中央は、ジャイロ素子100の重心とすることができる。そして、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交し、重心を通るものとする。ジャイロ素子100の外形は、重心を通るY軸方向の仮想の中心線に対して線対称とすることができる。これにより、ジャイロ素子100の外形はバランスのよいものとなり、ジャイロ素子100の特性が安定して、検出感度が向上するので好ましい。このようなジャイロ素子100の外形形状は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウェットエッチング又はドライエッチング)により形成することができる。なお、ジャイロ素子100は、1枚の水晶ウェハーから複数個取りすることが可能である。
次に、ジャイロ素子100の電極配置の一実施形態について、図2を参照して説明する。図2(a)は、検出振動腕3a,3bの図1に示すB−B線における概略断面である。図2(b)は、駆動振動腕2a,2bの図1に示すA−A線における概略断面である。
先ず、検出振動腕3a,3bに形成され、検出振動腕3a,3bが振動することによって基材である水晶に発生する歪みを検出する検出電極について説明する。図2(a)に示すように、検出振動腕3a,3bには、前述したように、凹部58a,58bが設けられている。本実施形態における凹部58a,58bは、表面3c,3gおよび裏面3d,3fの両面側に設けられている。
検出振動腕3aには、側面3hに、検出振動腕3aの厚み方向(Z軸方向)の略中央に有って検出振動腕3aの延伸方向(Y軸方向)に沿って設けられた電極分割部3mなどによって2分割された、表面3c側の第1検出電極21aと裏面3d側の第2検出電極22bとが設けられている。第1検出電極21aと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極22aが設けられ、第2検出電極22bと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極21bが設けられている。
また、側面3hとは反対側の側面3iに、検出振動腕3aの厚み方向の略中央に有って検出振動腕3aの延伸方向に沿って設けられた電極分割部3nなどによって2分割された、表面3c側の第2検出電極22aと裏面3d側の第1検出電極21bとが設けられている。第2検出電極22aと対向する凹部58aの内側面には、第1検出電極21aが設けられ、第1検出電極21bと対向する凹部58aの内側面には、第2検出電極22bが設けられている。
更に、第1検出電極21aと第2検出電極22aとは、検出振動腕3aの延伸方向(Y軸方向)に沿って凹部58aの内部で、且つ凹部58aの底面に設けられた電極分割部3pなどによって2分割され、第2検出電極22bと第1検出電極21bとは、検出振動腕3aの延伸方向(Y軸方向)に沿って凹部58aの内部で、且つ凹部58aの底面に設けられた電極分割部3qなどによって2分割されている。
そして、第1検出電極21aと第1検出電極21bとは、図示しないが、検出振動腕3aの先端部などを経由して電気的に接続されている。第2検出電極22aと第2検出電極22bとは、図示しないが、検出振動腕3aの先端部などを経由して電気的に接続されている。なお、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、検出振動腕3aの先端近傍まで延設されている。また、第1検出電極21a,21bおよび第2検出電極22a,22bは、図示しない配線を介して図示しない外部接続パッドに、それぞれが電気的に接続されている。
同様に、検出振動腕3bには、側面3jに、検出振動腕3bの厚み方向(Z軸方向)の略中央に有って検出振動腕3bの延伸方向(Y軸方向)に沿って設けられた電極分割部3rなどによって2分割された、表面3g側の第2検出電極31aと裏面3f側の第1検出電極32bとが設けられている。第2検出電極31aと対向する凹部58bの内側面には、第1検出電極32aが設けられ、第1検出電極32bと対向する凹部58bの内側面には、第2検出電極31bが設けられている。
また、側面3jとは反対側の側面3kに、検出振動腕3bの厚み方向の略中央に有って検出振動腕3bの延伸方向に沿って設けられた電極分割部3sなどによって2分割された、表面3g側の第1検出電極32aと裏面3f側の第2検出電極31bとが設けられている。第1検出電極32aと対向する凹部58bの内側面には、第2検出電極31aが設けられ、第2検出電極31bと対向する凹部58bの内側面には、第1検出電極32bが設けられている。
更に、第2検出電極31aと第1検出電極32aとは、検出振動腕3bの延伸方向(Y軸方向)に沿って凹部58bの内部で、且つ凹部58bの底面に設けられた電極分割部3xなどによって2分割され、第1検出電極32bと第2検出電極31bとは、検出振動腕3bの延伸方向(Y軸方向)に沿って凹部58bの内部で、且つ凹部58bの底面に設けられた電極分割部3yなどによって2分割されている。
そして、第2検出電極31aと第2検出電極31bとは、図示しないが、検出振動腕3bの先端部などを経由して電気的に接続されている。第1検出電極32aと第1検出電極32bとは、図示しないが、検出振動腕3bの先端部などを経由して電気的に接続されている。なお、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、検出振動腕3bの先端近傍まで延設されている。また、第2検出電極31a,31bおよび第1検出電極32a,32bは、図示しない配線を介して図示しない外部接続パッドに、それぞれが電気的に接続されている。
検出振動腕3aにおいては、第1検出電極21aと第1検出電極21bとは同電位となるように接続され、第2検出電極22aと第2検出電極22bとは同電位となるように接続されている。これにより、検出振動腕3aの振動によって生じる歪みが、第1検出電極21a,21bと第2検出電極22a,22bとの電極間の電位差を検出することにより検出される。同様に、検出振動腕3bにおいては、第1検出電極32aと第1検出電極32bとは同電位となるように接続され、第2検出電極31aと第2検出電極31bとは同電位となるように接続されている。これにより、検出振動腕3bの振動によって生じる歪みが、第1検出電極32a,32bと第2検出電極31a,31bとの電極間の電位差を検出することにより検出される。
次に、駆動振動腕2a,2bに設けられた、駆動振動腕2a,2bを駆動させるための駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cについて説明する。図2(b)に示すように、駆動振動腕2aの表面(一方の主面)2cには駆動電極11aが、および裏面(他方の主面)2dには駆動電極11bが、錘部4a(図1参照)までの間に形成されている。また、駆動振動腕2aの一方の側面2e、および他方の側面2fには駆動電極12cが、駆動振動腕2aの錘部4a(図1参照)までの間に形成されている。同様に、駆動振動腕2bの表面(一方の主面)2gには駆動電極12aが、および裏面(他方の主面)2hには駆動電極12bが、錘部4b(図1参照)までの間に形成されている。また、駆動振動腕2bの一方の側面2j、および他方の側面2kには駆動電極11cが、駆動振動腕2bの錘部4b(図1参照)までの間に形成されている。
駆動振動腕2a,2bに形成された駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cは、駆動振動腕2a,2bを介して対向配置される駆動電極間において同電位となるように配置される。また、図示しないが、駆動電極11a,11b,11cが、接続される第1固定部に形成された接続パッド、および駆動電極12a,12b,12cが接続される第2固定部に形成された接続パッドを通して、駆動電極11a,11b,11cと駆動電極12a,12b,12cとの間に電位差を交互に与えることにより駆動振動腕2a,2bは、駆動振動腕2aと駆動振動腕2bとがX軸方向に沿って互いに逆方向へ変位する屈曲運動を繰り返し、所定の周波数で屈曲振動する。
上述した駆動電極11a,11b,11c,12a,12b,12cおよび検出電極21a,21b,22a,22b,31a,31b,32a,32bを構成する材料は、特に限定されず、導電性を有し、薄膜形成が可能であればよい。具体的な構成としては、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電材料により形成することができる。
次に、第1実施形態に係るジャイロ素子100の検出振動腕3a,3bに設けられた溝としての凹部58a,58bの寸法比とCI値(等価直列抵抗)との相関について、図3〜図5を参照して説明する。
図3は、第1実施形態に係るジャイロ素子の検出振動腕の断面構造を説明する概略断面図である。図4は、第1実施形態に係るジャイロ素子の検出振動腕の寸法比(w1/w)とCI値との相関を示すグラフである。図5は、第1実施形態に係るジャイロ素子の検出振動腕の寸法比(t1/t)とCI値との相関を示すグラフである。図4において、横軸は検出振動腕の寸法比(w1/w)を、縦軸は大気圧雰囲気における検出振動腕のCI値を示し、寸法比(w1/w)における溝の幅(X軸方向の長さ)w1とは、図3に示す溝としての凹部58a,58bを構成する壁60a,60bの幅(X軸方向の長さ)w1のことをいう。また、図5において、横軸は検出振動腕の寸法比(t1/t)を、縦軸は大気圧雰囲気における検出振動腕のCI値を示す。
検出振動腕3a,3bの寸法比(w1/w)と検出振動腕3a,3bのCI値との相関は、図4に示すように、寸法比(w1/w)が大きくなるのに伴い、CI値は増加する傾向を示し、寸法比(w1/w)が5%ではCI値が0.5MΩ、寸法比(w1/w)が40%ではCI値が1.8MΩである。この結果より、大気圧雰囲気において、励振可能なCI値である2MΩ以下を満足するのは、10%の安全率を考慮すると寸法比(w1/w)が40%以下であるのが好ましい。
また、寸法比(w1/w)が5%未満の場合には、例えば検出振動腕3a,3bの幅(X軸方向の長さ)wを100μmとすると、溝としての凹部58a,58bを構成する壁60a,60bの幅(X軸方向の長さ)w1が5μm未満となり、製造が極めて難しくなりジャイロ素子100を形成できない虞がある。
従って、大気圧雰囲気において、ジャイロ素子100の検出振動腕3a,3bのCI値(等価直列抵抗)を2MΩ未満とし、且つ製造可能とするためには、寸法比(w1/w)を5%〜40%とすることが好ましい。また、ジャイロ素子100の検出振動腕3a,3bのCI値(等価直列抵抗)を1MΩ未満とし、且つ製造可能とするためには、寸法比(w1/w)を5%〜15%とすることがより好ましい。
次に、検出振動腕3a,3bの寸法比(t1/t)と検出振動腕3a,3bのCI値との相関は、図5に示すように、寸法比(t1/t)が大きくなるのに伴い、CI値は減少する傾向を示し、寸法比(t1/t)が23%ではCI値が1.8MΩ、寸法比(t1/t)が49%ではCI値が0.3MΩである。この結果より、大気圧雰囲気において、励振可能なCI値である2MΩ以下を満足するのは、10%の安全率を考慮すると寸法比(t1/t)が23%以上であるのが好ましい。ここで、寸法比(t1/t)における溝の深さ(Z軸方向の長さ)t1は、図3に示す溝としての凹部58a,58bを構成する最も深い位置の長さを表している。製造上、t1の長さが一定でないことがあるが、一番深いところをt1とする。
また、寸法比(t1/t)が49%より大きい場合には、例えば検出振動腕3a,3bの厚み(X軸方向の長さ)tを100μmとすると、凹部58a,58bの深さt1がそれぞれ1μm以下となり製造が極めて難しくなり凹部58a,58bを形成できなくなる虞がある。
従って、大気圧雰囲気において、ジャイロ素子100の検出振動腕3a,3bのCI値(等価直列抵抗)を2MΩ未満とし、且つ製造可能とするためには、寸法比(t1/t)を23%〜49%とすることが好ましい。また、検出振動腕3a,3bのCI値(等価直列抵抗)を1MΩ未満とし、且つ製造可能とするためには、寸法比(t1/t)を30%〜49%とすることがより好ましい。
以上の結果、検出振動腕3a,3bに設けられている溝としての凹部58a,58bにおいて、寸法比(w1/w)は5%〜40%とし、寸法比(t1/t)は23%〜49%とすることで、検出振動腕3a,3bにおける振動効率を向上させ、ジャイロ素子100における検出振動腕3a,3bのCI値(等価直列抵抗)を大気圧雰囲気において、2MΩ未満とする(t1/t)と(w1/w)の組み合わせの条件を得ることができる。そのため、ジャイロ素子100が複数形成された大型ウェハー状態でも、駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bの共振周波数を大気圧雰囲気でモニタリングすることができ、調整することが可能となり、検出感度のばらつきの小さいジャイロ素子100を得ることができる。
更に、寸法比(w1/w)は5%〜15%とし、寸法比(t1/t)は30%〜49%とすることで、ジャイロ素子100における検出振動腕3a,3bのCI値(等価直列抵抗)を大気圧雰囲気において、1MΩ未満とすることができる。そのため、大気圧雰囲気において、発振回路やネットワークアナライザーなどにより駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bの共振周波数をモニタリングすることができ、調整することが可能となり、検出感度のばらつきのより小さいジャイロ素子100を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るジャイロ素子300について、図6を参照して説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るジャイロ素子の一例としての調整用振動腕を有するH型ジャイロ素子の構造を示す概略平面図である。なお、図6においては、説明の便宜上、駆動電極や検出電極などの電極を省略している。
第2実施形態に係るジャイロ素子300は、図6に示すように、基材(主要部分を構成する材料)を加工することにより一体に形成された基部301と、基部301のY軸方向の端部301a,301bのうち一方の端部301bから、並行するようにY軸に沿って延伸された一対の駆動振動腕302a,302bと、基部301の他方の端部301aからY軸に沿って並行するように延伸された一対の検出振動腕303a,303bと、基部301の他方の端部301aからY軸に沿って並行するように延伸された一対の調整用振動腕304a,304bと、を有している。また、基部301から延出する第1連結部305a、および第1連結部305aに連結する第1支持部305bと、基部301から第1連結部305aと反対方向に延出する第2連結部306a、および第2連結部306aに連結する第2支持部306bと、が設けられている。更に、第1支持部305bおよび第2支持部306bは、駆動振動腕302a,302bの側で一体的に繋って、固定枠部307を構成している。そして、ジャイロ素子300は、固定枠部307の所定の位置で、図示しないパッケージ等の基板に固定される。なお、駆動振動腕302a,302bの先端部には錘部352a,352bが設けられており、検出振動腕303a,303bの先端部には錘部353a,353bが設けられている。
本実施形態のジャイロ素子300では、基材として圧電体材料である水晶を用いた例について説明する。ジャイロ素子300をなす基材は、水晶結晶軸において直交するX軸およびY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚みを有している。Z軸は、X軸を中心に0度から2度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。所定の厚みは、振動周波数、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。
更に、ジャイロ素子300には、図6に示すように、水晶の結晶X軸(電気軸)と交差する方向に検出振動腕303a,303bと並行させて且つ検出振動腕303a,303bを内側に挟むように、基部301の他方の端部301aから延伸された一対の調整用振動腕304a,304bが設けられている。即ち、調整用振動腕304a,304bは、Y軸に沿って+Y軸方向に延伸され、検出振動腕303a,303bと所定の間隔を空けて内側に挟むように位置し、且つ並行するように設けられている。
なお、調整用振動腕304a,304bは、チューニングアームと呼ばれることもある。このような調整用振動腕304a,304bが設けられていることにより、漏れ出力を調整することが可能となる。換言すれば、駆動振動が漏れる(伝播する)、所謂振動漏れ出力で発生する検出振動腕の電荷量をこの調整用振動腕に発生する電荷量でキャンセルすることができる。
また、調整用振動腕304a,304bは、駆動振動腕302a,302bおよび検出振動腕303a,303bよりも全長が短く形成されている。これにより、漏れ出力を調整するための調整用振動腕304a,304bの振動が、駆動振動腕302a,302bと検出振動腕303a,303bによるジャイロ素子300の主要な振動を阻害することがないので、ジャイロ素子300の振動特性が安定するとともに、ジャイロ素子300の小型化にも有利となる。
更に、調整用振動腕304a,304bの基部301と接続する一端と反対側の他端側の先端部には、調整用振動腕304a,304bより幅が広い(X軸方向の寸法が大きい)略矩形状の幅広部としての錘部354a,354bが設けられている。このように、調整用振動腕304a,304bの先端部に錘部354a,354bを設けることにより、調整用振動腕304a,304bにおける質量変化を顕著にさせることができ、ジャイロ素子300の高感度化に寄与する効果を更に向上させることができる。
基部301の中央は、ジャイロ素子300の重心とすることができる。そして、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交し、重心を通るものとする。ジャイロ素子300の外形は、重心を通るY軸方向の仮想の中心線に対して線対称とすることができる。これにより、ジャイロ素子300の外形はバランスのよいものとなり、ジャイロ素子300の特性が安定して、検出感度が向上するので好ましい。このようなジャイロ素子300の外形形状は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウェットエッチング又はドライエッチング)により形成することができる。なお、ジャイロ素子300は、1枚の水晶ウェハーから複数個取りすることが可能である。
次に、調整用振動腕304a,304bに設けられた電極について説明する。図示しないが、調整用振動腕304aには、表裏面に同電位の調整用電極が形成されている。また、調整用振動腕304aの両側面のそれぞれには、同電位である他の調整用電極が形成されている。同様に、調整用振動腕304bには、表裏面に同電位の調整用電極が形成されている。また、調整用振動腕304bの両側面には、同電位である他の調整用電極が形成されている。
なお、駆動振動腕302a,302bおよび検出振動腕303a,303bに形成されている電極の構成は、第1実施形態で説明した電極構成と同様であるので、本実施形態での説明は省略する。
上述したジャイロ素子300では、前述の第1実施形態のジャイロ素子100と同様に、検出振動腕303a,303bに設けられている溝としての有底の凹部358a,358bにおいて、寸法比(w1/w)は5%〜40%とすることが好ましく、寸法比(t1/t)は23%〜49%とすることが好ましい。このようにすることにより、例えばジャイロ素子300における検出振動腕303a,303bのCI値(等価直列抵抗)を2MΩ未満とすることができる。そのため、ジャイロ素子300が複数形成された大型ウェハー状態でも、駆動振動腕302a,302bおよび検出振動腕303a,303bの共振周波数を大気圧雰囲気でモニタリングすることができ、調整することが可能となり、検出感度のばらつきの小さいジャイロ素子300を得ることができる。
なお、上記第3実施形態に係るジャイロ素子300の説明では、基部1の一方端に、一対の検出振動腕3a,3bと、検出振動腕303a,303bを挟む一対の調整用振動腕304a,304bと、が設けられ、他方端に一対の駆動振動腕302a,302bが設けられている例を用いたが、この構成に限らない。例えば、駆動振動腕302a,302bと調整用振動腕304a,304bとが、基部の同じ端から同方向に延出されている形態でもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るジャイロ素子400について、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係るジャイロ素子の一例としてのダブルT型ジャイロ素子の構造を示す概略平面図である。なお、ジャイロ素子400には、検出信号電極、検出信号配線、検出信号端子、検出接地電極、検出接地配線、検出接地端子、駆動信号電極、駆動信号配線、駆動信号端子、駆動接地電極、駆動接地配線および駆動接地端子などが設けられているが、図7においては省略している。
第3実施形態に係るジャイロ素子400は、Z軸回りの角速度を検出する「面外検出型」のセンサー素子であって、図示しないが、基材と、基材の表面に設けられている複数の電極、配線および端子とで構成されている。ジャイロ素子400は、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料で構成することができるが、これらの中でも、水晶で構成するのが好ましい。これにより、優れた振動特性(周波数特性)を発揮することのできるジャイロ素子400が得られる。
このようなジャイロ素子400は、所謂ダブルT型をなす振動体4と、振動体4を支持する支持部としての第1支持部51および第2支持部52と、振動体4と第1支持部51および第2支持部52とを連結する第1梁61、第2梁62、第3梁63および第4梁64とを有している。
振動体4は、XY平面に拡がりを有し、Z軸方向に厚みを有している。このような振動体4は、中央に位置する基部41と、基部41からY軸方向に沿って両側に延出している振動腕としての第1検出振動腕421、第2検出振動腕422と、基部41からX軸方向に沿って両側に延出している基部41の第1連結腕431と、基部41の第2連結腕432と、基部41の第1連結腕431の先端部からY軸方向に沿って両側に延出している振動腕としての第1駆動振動腕441、および第2駆動振動腕442と、基部41の第2連結腕432の先端部からY軸方向に沿って両側に延出している振動腕としての第3駆動振動腕443、および第4駆動振動腕444と、を有している。なお、基部41の第1連結腕431および基部41の第2連結腕432は基部の一部として扱う。
第1、第2検出振動腕421,422および第1、第2、第3、第4駆動振動腕441,442,443,444の基部41、第1連結腕431、および第2連結腕432と接続する一端と反対側の他端側の先端部には、それぞれ、基端側よりも幅の大きい幅広部としての略四角形の錘部425,426,445,446,447,448が設けられている。このような錘部425,426,445,446,447,448を設けることでジャイロ素子400の角速度の検出感度が向上する。
第1検出振動腕421には、溝としての有底の凹部458が設けられ、第2検出振動腕422には、溝としての有底の凹部459が設けられている。凹部458,459は、表面および裏面の両面側から堀込まれている。なお、凹部は、表面あるいは裏面のいずれか一方の面から掘込まれた構成でもよい。
また、第1、第2支持部51,52は、それぞれ、X軸方向に沿って延在しており、これら第1、第2支持部51,52の間に振動体4が位置している。言い換えれば、第1、第2支持部51,52は、振動体4を介してY軸方向に沿って対向するように配置されている。第1支持部51は、第1梁61、および第2梁62を介して基部41と連結されており、第2支持部52は、第3梁63、および第4梁64を介して基部41と連結されている。
第1梁61は、第1検出振動腕421と第1駆動振動腕441との間を通って第1支持部51と基部41を連結し、第2梁62は、第1検出振動腕421と第3駆動振動腕443との間を通って第1支持部51と基部41を連結し、第3梁63は、第2検出振動腕422と第2駆動振動腕442との間を通って第2支持部52と基部41を連結し、第4梁64は、第2検出振動腕422と第4駆動振動腕444との間を通って第2支持部52と基部41を連結している。
第1梁61〜第4梁64は、それぞれ、X軸方向に沿って往復しながらY軸方向に沿って延びる蛇行部を有する細長い形状で形成されているので、あらゆる方向に弾性を有している。そのため、外部から衝撃が加えられても、各梁61,62,63,64で衝撃を吸収する作用を有するので、これに起因する検出ノイズを低減又は抑制することができる。
このような構成のジャイロ素子400は、次のようにしてZ軸回りの角速度ωを検出する。ジャイロ素子400は、角速度ωが加わらない状態において、駆動信号電極(図示せず)および駆動接地電極(図示せず)の間に電界が生じると、各駆動振動腕441,442,443,444がX軸方向に屈曲振動を行う。このとき、第1、第2駆動振動腕441,442と、第3、第4駆動振動腕443,444とは、中心点(重心)を通るYZ平面に関して面対称の振動を行っているため、基部41と、基部41の第1、第2連結腕431,432と、第1、第2検出振動腕421,422とは、ほとんど振動しない。
この駆動振動を行っている状態にて、ジャイロ素子400にZ軸回りに角速度ωが加わると、駆動振動腕441,442,443,444および基部41の連結腕431,432にY軸方向のコリオリの力が働き、このY軸方向の振動に呼応して、X軸方向の検出振動が励起される。そして、この振動により発生した検出振動腕421,422の歪みを検出信号として検出することによって角速度ωが求められる。
上述したジャイロ素子400では、前述の第1実施形態のジャイロ素子100と同様に、検出振動腕421,422に設けられている溝としての有底の凹部458,459において、寸法比(w1/w)は5%〜40%とすることが好ましく、寸法比(t1/t)は23%〜49%とすることが好ましい。このようにすることにより、例えばジャイロ素子400における検出振動腕421,422のCI値(等価直列抵抗)を2MΩ未満とすることができる。そのため、ジャイロ素子400が複数形成された大型ウェハー状態でも、駆動振動腕441,442,443,444および検出振動腕421,422の共振周波数を大気圧雰囲気でモニタリングすることができ、調整することが可能となり、検出感度のばらつきの小さいジャイロ素子400を得ることができる。
<ジャイロ素子の製造方法>
次に、ジャイロ素子100,300,400の製造方法について、図8を参照して、外形形成工程と電極形成工程を中心に概略を説明する。
図8は、実施形態に係るジャイロ素子の製造工程の概略を示す工程フローチャートである。本説明では、第1実施形態に係るH型のジャイロ素子100を例に説明する。従って、説明中に登場する構成部位あるいは符号などについては、図1と同じものを用いている。
ジャイロ素子100の製造方法においては、水晶Z板基板を形成する基板準備工程S102と、ジャイロ素子100の外形形状を形成する外形形成工程S104と、基板の露出面に電極膜を形成する電極膜形成工程S106と、電極膜を所定の形状に分割するためのレジストを露光する露光工程S108と、電極を形成する電極分割工程S110と、を含んでいる。
まず、基板準備工程S102では、水晶結晶軸において直交するX軸およびY軸で規定される平面に沿って切り出された所謂水晶Z板の基板に、例えば研磨加工などの加工を行い、Z板の水晶基板を用意する。
次に、外形形成工程S104では、基板準備工程S102にて用意された水晶基板に、金属膜などにより所定のマスキングを行った後、フッ素系水溶液などによるウェットエッチング法やフッ素系ガスなどによるドライエッチング法を用いて、ジャイロ素子100の検出振動腕3a,3bに設けられた溝(58a,58b)を、溝(58a,58b)の幅w1を検出振動腕3a,3bの幅wに対し5%〜40%とし、溝(58a,58b)の深さt1を検出振動腕3a,3bの厚みtに対し23%〜49%とする外形形状を形成する。
次に、電極膜形成工程S106では、ジャイロ素子100の外形形状が形成された水晶基板の露出面の全面に、スパッタリング法などによって金属膜を形成する。この金属膜が、後にそれぞれの電極となる。
次に、露光工程S108では、金属膜の表面にフォトレジスト層を形成する。その後、電極を形成しない部分に相当する部分のフォトレジスト層に光を照射する露光処理および現像処理を行い、露光された部分のフォトレジスト層を除去する。この露光工程S108において、検出振動腕3a,3bの側面3h,3i,3j,3kに電極分割部3m,3n,3r,3sを設ける。また、検出振動腕3a,3bの凹部58a,58bに電極分割部3p,3q,3x,3yを設ける。
次に、電極分割工程S110では、残ったフォトレジスト層をマスクとして、フォトレジスト層が除去された部分に対応する金属膜をウェットエッチング法などによって除去することによって金属膜を分割する。この分割によって、それぞれの電極(電極パターン)を形成する。そして、残ったフォトレジスト層を剥離させれば、ジャイロ素子100の電極を形成することができる。以上の工程で、ジャイロ素子100を形成することができる。
上述したジャイロ素子100の製造工程により、検出振動腕3a,3bに設けられた溝(58a,58b)を、溝(58a,58b)の幅w1を検出振動腕3a,3bの幅wに対し5%〜40%とし、溝(58a,58b)の深さt1を検出振動腕3a,3bの厚みtに対し23%〜49%とする外形形状に加工することで、検出振動腕3a,3bにおける振動効率を向上させることができる。そのため、大気圧雰囲気においても発振回路やネットワークアナライザーなどにより共振周波数をモニタリング可能な2MΩ未満のCI値(等価直列抵抗)を有するジャイロ素子100を製造することができる。
更に、ジャイロ素子100が複数形成された大型ウェハー状態で、駆動振動腕2a,2bおよび検出振動腕3a,3bの共振周波数を大気圧雰囲気でモニタリングすることができ、調整することが可能となり、検出感度のばらつきの小さいジャイロ素子100を得ることができる。
<ジャイロセンサー>
次に、第2実施形態に係るジャイロ素子300を備えたジャイロセンサー500について、図9を参照して説明する。
図9は、実施形態に係るジャイロ素子を備えるジャイロセンサーの概略構成を示す正断面図である。
ジャイロセンサー500は、図9に示すように、パッケージ510の凹部に、ジャイロ素子300と、電子部品としての半導体装置520と、を収容し、パッケージ510の開口部を蓋体530により密閉し、内部を気密に保持されている。パッケージ510は、図9に示すように、平板状の第1基板511と、第1基板511上に、枠状の第2基板512、第3基板513、第4基板514、を順に積層、固着して形成され、半導体装置520とジャイロ素子300とが収容される凹部が形成される。基板511,512,513,514は、例えばセラミックスなどにより形成される。
第1基板511は、凹部側の半導体装置520が搭載される電子部品搭載面511aには、半導体装置520が載置され固定されるダイパッド515が設けられている。半導体装置520はダイパッド515上に、例えば、ろう材(ダイアタッチ材)540によって接着され、固定されている。
半導体装置520は、ジャイロ素子300を駆動振動させるための励振手段としての駆動回路と、角速度が加わったときにジャイロ素子300に生じる検出振動を検出する検出手段としての検出回路と、を有する。具体的には、半導体装置520が有する駆動回路は、ジャイロ素子300の一対の駆動振動腕302a,302b(図6参照)にそれぞれ形成された駆動電極(図示せず)に駆動信号を供給する。また、半導体装置520が有する検出回路は、ジャイロ素子300の一対の検出振動腕303a,303b(図6参照)にそれぞれ形成された検出電極(図示せず)に生じる検出信号を増幅させて増幅信号を生成し、該増幅信号に基づいてジャイロセンサー500に加わった回転角速度を検出する。
第2基板512は、ダイパッド515上に搭載される半導体装置520が収容可能な大きさの開口を有する枠状の形状に形成されている。第3基板513は、第2基板512の開口より広い開口を有する枠状の形状に形成され、第2基板512上に積層され、固着される。そして第2基板512に第3基板513が積層されて第3基板513の開口の内側に現れる第2基板面512aには、半導体装置520の図示しない電極パッドと電気的に接続するボンディングワイヤーBWが接続される複数のIC接続端子512bが形成されている。
そして、半導体装置520の図示しない電極パッドとパッケージ510に設けられたIC接続端子512bとが、ワイヤーボンディング法を用いて電気的に接続されている。すなわち、半導体装置520に設けられた複数の電極パッドと、パッケージ510の対応するIC接続端子512bとが、ボンディングワイヤーBWにより接続されている。また、IC接続端子512bのいずれかは、パッケージ510の図示しない内部配線により、第1基板511の外部底面511bに設けられた複数の外部接続端子511cに電気的に接続されている。
第3基板513上には、第3基板513の開口より広い開口を有する第4基板514が積層され、固着されている。そして、第3基板513に第4基板514が積層されて第4基板514の開口の内側に現れる第3基板面513aには、ジャイロ素子300に形成された接続パッド(図示せず)と接続される複数のジャイロ素子接続端子513bが形成されている。
ジャイロ素子接続端子513bは、パッケージ510の図示しない内部配線によってIC接続端子512bのいずれかと電気的に接続されている。ジャイロ素子300は、第3基板面513aにジャイロ素子300の第1支持部305b、第2支持部306b(図6参照)を、接続パッドとジャイロ素子接続端子513bとに位置を合わせて載置され、導電性接着剤550によって接着固定される。
更に、第4基板514の開口の上面に蓋体530が配置され、パッケージ510の開口を封止し、パッケージ510の内部が気密封止され、ジャイロセンサー500が得られる。蓋体530は、例えば、42アロイ(鉄にニッケルが42%含有された合金)やコバール(鉄、ニッケルおよびコバルトの合金)等の金属、セラミックス、あるいはガラスなどを用いて形成することができる。例えば、金属により蓋体530を形成した場合には、コバール合金などを矩形環状に型抜きして形成されたシールリング560を介してシーム溶接することによりパッケージ510と接合される。パッケージ510および蓋体530によって形成される凹部空間は、ジャイロ素子300が動作するための空間となるため、減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に密閉・封止することが好ましい。
ジャイロセンサー500によれば、大気圧雰囲気で検出振動腕のCI値(等価直列抵抗)が2MΩ未満であるジャイロ素子300を備えているため、ジャイロ素子300が複数形成された大型ウェハー状態で、駆動振動腕302a,302bや検出振動腕303a,303bの共振周波数を大気圧雰囲気でモニタリングし調整した後に、良品のジャイロ素子300のみをパッケージ510に実装できるため、歩留まりが向上しジャイロセンサー500の低コスト化を図ることができる。また、上記構成のようなパッケージタイプのジャイロセンサー500は、小型化・薄型化に有利であるとともに耐衝撃性を高くすることができる。
<電子機器>
次に、図10を参照して、前述の実施形態に係るジャイロ素子100を備えた電子機器について説明する。なお、以下の説明では、ジャイロ素子100を用いた例について説明する。図10(a)〜図10(c)は、実施形態に係るジャイロ素子100を備える電子機器の一例を示す斜視図である。
図10(a)は、電子機器としてのデジタルビデオカメラ1000にジャイロ素子100を適用した例を示す。デジタルビデオカメラ1000は、受像部1100、操作部1200、音声入力部1300、および表示ユニット1400を備えている。このようなデジタルビデオカメラ1000に、上述の実施形態のジャイロ素子100を搭載する手ぶれ補正機能を具備させることができる。
図10(b)は、電子機器としての携帯電話機2000にジャイロ素子100を適用した例を示す。図10(b)に示す携帯電話機2000は、複数の操作ボタン2100およびスクロールボタン2200、並びに表示ユニット2300を備える。スクロールボタン2200を操作することによって、表示ユニット2300に表示される画面がスクロールされる。
図10(c)は、電子機器としての情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)3000にジャイロ素子100を適用した例を示す。図10(c)に示すPDA3000は、複数の操作ボタン3100および電源スイッチ3200、並びに表示ユニット3300を備える。電源スイッチ3200を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示ユニット3300に表示される。
このような携帯電話機2000やPDA3000に、上述の実施形態のジャイロ素子100を搭載することにより、様々な機能を付与することができる。例えば、図10(b)の携帯電話機2000に、図示しないカメラ機能を付与した場合に、上記のデジタルビデオカメラ1000と同様に、手振れ補正を行うことができる。また、図10(b)の携帯電話機2000や、図10(c)のPDA3000に、GPS(Global Positioning System)として広く知られる汎地球測位システムを具備した場合に、上述の実施形態のジャイロ素子100を搭載することにより、GPSによって、携帯電話機2000やPDA3000の位置や姿勢を認識させることができる。
なお、本発明の実施形態に係るジャイロ素子100は、図10(a)のデジタルビデオカメラ1000、図10(b)の携帯電話機2000、および図10(c)の情報携帯端末3000の他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等の電子機器に適用することができる。
<移動体>
次に、前述の実施形態に係るジャイロ素子100を備えた移動体について説明する。
図11は、実施形態に係るジャイロ素子を備える移動体の一例としての自動車を概略的に示す斜視図である。
自動車4000には実施形態に係るジャイロ素子100が搭載されている。例えば、同図に示すように、移動体としての自動車4000には、ジャイロ素子100を内蔵してタイヤなどを制御する電子制御ユニット4010が車体に搭載されている。また、ジャイロ素子100は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に広く適用できる。
以上、実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、ジャイロ素子100,300,400の形成材料として水晶を用いた例を説明したが、水晶以外の圧電体材料を用いることができる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウムや五酸化タンタル(Ta2O5)などの圧電体材料を積層させて構成された積層圧電基板、あるいは圧電セラミックスなどを用いることができる。
また、圧電体材料以外の材料を用いてジャイロ素子100,300,400を形成することができる。例えば、シリコン半導体材料などを用いてジャイロ素子100,300,400を形成することもできる。また、ジャイロ素子100,300,400の振動(駆動)方式は圧電駆動に限らない。圧電基板を用いた圧電駆動型のもの以外に、静電気力を用いた静電駆動型や、磁力を利用したローレンツ駆動型などのジャイロ素子100,300,400においても、本発明の構成およびその効果を発揮させることができる。