JP2016089306A - 耐水紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】飲料、食料品などの包装材、その他産業資材として用いられる紙に関する。特に、熱水や温水にさらされる条件下において優れた耐水性を有する耐水紙を提供することを目的とする。【解決手段】カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋し、前記カルボキシ基が、触媒としてN−オキシル化合物を用い、pH4からpH7の水系反応溶液系にて行われた酸化反応にて導入されたことを特徴とする耐水紙である。【選択図】 なし

Description

本発明は、飲料、食料品などの包装材、その他産業資材として用いられる耐水紙に関する。特に、熱水や温水にさらされる条件下において優れた耐水性を有する耐水紙に関するものである。
紙には、インクの裏移りや滲み防止、オフセット印刷の湿し水、飲料・食品用ラベル、壁紙等、目的や用途に応じて耐水性が必要となる。
紙に耐水性を付与する方法としては、従来より様々な加工が知られている。例えば、紙の抄紙工程において紙料に薬剤を添加(内添)する方法がある。この方法において使用される薬剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸無水物、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスなどのワックスエマルジョン系が挙げられる。これらの内添薬剤を抄紙工程中において使用して行う耐水化加工は、薬剤の紙中への歩留まりが低いため薬剤のロスが多く、また耐水化の効果も限定的である。
紙に耐水性を付与する他の加工方法として、抄紙後の紙に薬剤を塗布・含浸(外添)させる方法がある。この方法においては、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グリオキサールなどの耐水化剤を塗工し、架橋反応により耐水化する方法があるが、使用する薬剤によってはホルムアルデヒドが発生し作業環境面、安全面で問題がある。
さらに別の加工方法として、紙表面にポリエチレンなどのプラスチックフィルムをラミネートする方法がある。この方法によれば、紙表面からの浸水は完全に抑えることができるが、紙の端部(断面)からの浸水は抑制することができないため、紙自体の耐水性が不十分だと、端部から浸水により印刷部に滲みが発生したり、ラミネートしたプラスチックフィルムが剥離したりするといった問題があった。
一方、近年、環境問題への関心の高まりから、天然由来の環境配慮型バイオマス材料として紙が注目され、特に、飲料や食品容器の分野において、石油由来のプラスチックフィルムからの置き換えが進んでいる。従来プラスチックフィルムを用いていた用途での紙材料への置き換えにおいては、様々な課題もある。例えば、食品を殺菌し賞味期限を延ばすために行われる加圧加熱処理(レトルト処理)があるが、温水、熱水にさらされることから高い耐水性が求められる。レトルト処理に対応する紙容器として、例えば、特許文献1には、原紙に樹脂を含浸させる方法が提案されている。これによれば、原紙にイソホロンジイソシアネートのアダクト体を主成分とするイソシアネート系樹脂を添加する事で耐水性を付与することができるとしているが、石油由来の成分を多く含有しており、省資源や環境保護の面から見ると改善の余地がある。
特開2001−200494号公報
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、飲料、食料品などの包装材、その他産業資材として用いられる紙に関する。特に、熱水や温水にさらされる条件下において優れた耐水性を有する耐水紙を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、
前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋していることを特徴とする耐水紙である。
本発明のうち請求項2の発明は、前記カルボキシ基が、触媒としてN−オキシル化合物を用い、pH4からpH7の水系反応溶液系にて行われた酸化反応にて導入されたことを特徴とする請求項1に記載の耐水紙である。
また、請求項3の発明は、イオン架橋前の前記カルボキシ基が酸型であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐水紙である。
また、請求項4の発明は、前記多価金属化合物が2価の金属化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の耐水紙である。
また、請求項5の発明は、前記2価の金属化合物が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項4に記載の耐水紙である。
本発明の請求項1の発明によれば、カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋することによりセルロース繊維が絡み合い、セルロース繊維単体に比べて高い耐水性を得ることができる。
また、請求項2の発明によれば、触媒としてN−オキシル化合物を用い、pH4からpH7の水系反応溶液系中で酸化反応により、他の酸化反応に比べて選択的に6位の水酸基を酸化してカルボキシ基を導入することができる。これにより他の酸化反応に比べてセルロースの結晶性を損なうことがなく機械的強度や耐食性にも優れる紙を提供することができる。
また、請求項3の発明によれば、イオン架橋前の前記カルボキシ基が酸型であるにより、多価金属化合物とのイオン架橋を容易に形成することができる。なお、カルボキシ基が酸型とはセルロース繊維がミクロフィブリル単位にまで分散した分散体のことであり、多価金属化合物がセルロース繊維の内部まで浸透し易く、それによりイオン架橋が形成しやすくなる。
また、請求項4の発明によれば、前記多価金属化合物が2価の金属化合物であることにより、効率的に安定してイオン架橋を形成することができる。
また、請求項5の発明によれば、前記2価の金属化合物が酸化亜鉛であることにより、より効率的に安定してイオン架橋を形成することができる。
上記で説明したように、本発明によれば耐水性に優れ、水中や高湿度下でも強度劣化が少ない耐水紙を提供することができる。
以下、本発明の詳細について実施形態に基づいて説明する。
本発明の耐水紙は、カルボキシ基を有する改質セルロース体と多価金属化合物を含むものであり、前記改質セルロース体が前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンによりイオン架橋していることを特徴とする。
本発明に用いるカルボキシ基を有する改質セルロース体は以下のような調製方法により得ることができる。カルボキシ基を有する改質セルロース体は、酸化処理により、セルロース分子中のグルコピラノース環の少なくとも一部にカルボキシ基が導入されたものである。
セルロース原料としては、セルロースを含むものであれば特に限定されず、セルロースIの結晶構造を有する天然由来のセルロースを用いることができる。たとえば各種木材パルプ、非木材パルプ、バクテリアセルロース、古紙パルプを使用できる。
セルロースの酸化処理としては、一般的に知られている水酸基からアルデヒド基を経てカルボキシ基へと酸化する方法から適宜選択することができるが、触媒として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)等のN−オキシル化合物を用いた酸化処理(TEMPO酸化処理)が好適である。TEMPO酸化処理を行うと、結晶表面のセルロース分子の水酸基をもつ3つの炭素のうち、C6位のアルコール性一級炭素のみ選択的に酸化することができ、アルデヒド基を経てカルボキシ基まで変換することができる。TEMPO酸化処理によれば、カルボキシ基を、酸化処理の程度に応じて均一かつ効率よく導入できる。また、TEMPO酸化処理は、他の酸化処理に比べて、セルロースの結晶性を損ないにくい。そのため、TEMPO酸化処理により得られる酸化セルロースのミクロフィブリルは、天然のセルロースが有する高い結晶構造(I型結晶構造)を保持しており、機械的強度、耐食性に優れる。
セルロースに導入するカルボキシ基量(改質セルロース体1g中に含まれるカルボキシ基のモル量)は、0.1〜3.5mmol/gが好ましく、0.5〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0〜2.0mmol/gがさらに好ましい。カルボキシ基量が上記範囲の下限値以上であると、イオン架橋の後の架橋密度が高く、耐水性に優れる。また、カルボキシ基量が上記範囲の上限値以下であると、改質セルロース体を用いて形成される紙の結晶構造が維持され、機械的強度や耐食性に優れる。カルボキシ基量は酸化の際の反応条件(温度、時間、試薬量)により制御できる。
カルボキシ基の測定方法としては、改質処理したセルロースの乾燥質量換算0.2gをビーカーにとり、イオン交換水80mlを添加する。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加え、攪拌させながら0.1M塩酸を加えて全体がpH2.0となるように調整する。ここに自動滴定装置(東亜ディーケーケー株式会社、AUT−701)を用いて0.1M水酸化ナトリウム水溶液を0.05ml/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続ける。得られる電導度曲線から水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基含有量を算出する。
TEMPO酸化処理による改質セルロース体の製造は、たとえば、パルプ等のセルロース原料を、水中にて、N−オキシル化合物の存在下で酸化処理することにより実施できる。このとき、N−オキシル化合物とともに、次亜ハロゲン酸塩や亜ハロゲン酸塩などを酸化剤として用いる手法が好ましい。酸化剤を用いる場合、反応系内においては、順次、N−オキシル化合物が酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩を生成し、該オキソアンモニウム塩により、セルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。
また、N−オキシル化合物および酸化剤とともに、さらに、N−オキシル化合物以外の他の触媒として、臭化物およびヨウ化物から選ばれる少なくとも1種を併用してもよい。
N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して、0.1〜10質量%の範囲内であり、0.5〜5質量%が好ましい。
酸化剤としては、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。酸化剤の使用量は、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して、1〜100質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
臭化物としては、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属塩が挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化アルカリ金属塩が挙げられる。臭化物およびヨウ化物から選ばれる触媒の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択することができ、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して、0〜100質量%の範囲内であり、5〜50質量%が好ましい。
TEMPO酸化の反応条件(温度、時間、pH等)は、特に限定されず、得ようとする改質セルロース体の所望のカルボキシ基量、結晶化度等を考慮して適宜設定できる。
反応温度は、1級水酸基への酸化の選択性の向上、副反応の抑制等の点から、50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。反応温度の下限は、特に限定されないが、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましい。
反応時間は、処理温度によっても異なるが、通常、0.5〜6時間の範囲内である。反応中、反応系内のpHを、4〜11の範囲内に保つことが好ましい。特に酸化剤に次亜塩素酸塩を使用する場合、該pHは、8〜11がより好ましく、9〜11がさらに好ましく、9.5〜10.5が特に好ましい。該pHが11超であるとセルロースが分解してしまい低分子化する恐れがあり、酸性領域であると次亜塩素酸が分解し、塩素が発生する恐れがある。ここで、本明細書において、pHは、20℃におけるpHである。pHは、必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、有機アルカリ等のアルカリを添加することにより調節できる。
反応は、反応液内にエタノール等のアルコールを添加することにより停止させることができる。酸化処理後、反応液に酸を添加して中和処理を行う。上記酸化処理後の反応液中に含まれる改質セルロース体のカルボキシ基は塩型となっているが、中和処理を行うことにより酸型とすることができる。中和に用いる酸としては、改質セルロース体中の塩型のカルボキシ基を酸型とし得るものであればよく、たとえば塩酸、硫酸等が挙げられるが安全性や入手のしやすさから塩酸が好ましい。
反応後の改質セルロース体は、ろ過等により反応液より回収できる。改質セルロース体は反応液中の触媒、不純物を除去するために洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理は、たとえば、ろ過により酸化セルロースを回収した後、水等の洗浄液で洗浄し、ろ別を繰り返すことにより実施できる。洗浄液としては、水系のものが好ましく用いられ、たとえば水、塩酸等が挙げられる。洗浄の際に何回かpH2程度の塩酸水溶液で洗浄した後に純水で洗浄すると酸型の改質セルロース体を効率よく回収することができる。この工程を経て得られた改質セルロース体を用いて紙を製造する。
本発明の紙の製紙工程は従来の方法で可能である。即ち、抄紙・抄造、プレス工程、乾
燥工程を経て作製できる。紙の坪量は、特に制限はないが、30〜200g/m位の紙から、600g/m位の厚紙でも可能であると考えられる。また、本発明の機能紙で紙容器を作製する場合には、従来公知の方法が可能であり、例えば、プランジャー型製缶機で打ち抜き4隅を貼り合せる組み立て成形法や、専用のトレー成形機で熱圧押付成形できるプレス式成形法、また、一体成形が可能なパルプモールド法などが適用できる。
上記にて得られた紙を、多価金属化合物を含む水溶液あるいは分散液に浸漬する。多価金属化合物を液体媒体に混合したものを使用できる。
多価金属化合物とは、金属イオンの価数が2以上の多価金属の化合物である。多価金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属;アルミニウム等が挙げられる。
多価金属化合物としては、例えば多価金属の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩)もしくは無機酸塩、多価金属酸化物のアンモニウム錯体もしくは2〜4級アミン錯体、またはそれらの炭酸塩もしくは有機酸塩が挙げられる。これらの多価金属化合物は単独で、または少なくとも2種類の多価金属化合物を混合して用いることができる。多価金属化合物としては、架橋のしやすさ、製造性の観点から、亜鉛化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物等の2価の金属化合物が好ましく、扱いやすさやコストの点から、酸化亜鉛が特に好ましい。
液体媒体としては水性媒体が好ましい。水性媒体としては水、または水と有機溶媒の混合物が挙げられる。有機溶媒としては水に溶解し、多価金属化合物の溶解性あるいは分散性を損なわないものであれば特に限定されず、アルコール類が好ましい。また、改質セルロース体と多価金属化合物との複合化は浸漬に限定されず、公知のコーティング、スプレーなどの手法で行うこともできる。また、紙に添加する多価金属化合物の添加量は、その水溶液あるいは分散液の濃度や浸漬時間によって調整できる。
浸漬した後の乾燥温度は特に限定されないが、30℃以上200℃未満が好ましい。温度が低いと乾きにくく、生産性が低下する。また温度が高すぎる場合は改質セルロース体が熱分解して黄変してしまう恐れがある。
上記のようにして改質セルロース体に多価金属化合物を含有させることができる。続いて前記酸型の改質セルロース体に多価金属化合物を反応させて架橋し、耐水性を付与する。
例えば、上記複合体を相対湿度20%以上の雰囲気下に置くことにより実施できる。
複合体を相対湿度20%以上の雰囲気下に置く方法としては、例えば、複合体に対し、レトルト処理、ボイル処理、調湿処理のうちの少なくとも1種の処理を施す方法が挙げられる。
レトルト処理は、一般に食品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する処理である。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式、加圧過熱水を利用する熱水式等がある。前記複合体のレトルト処理条件としては、105〜140℃、0.15〜0.3MPaで、10〜120分の条件が好ましい。
ボイル処理は、食品等を保存するため湿熱殺菌する処理である。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて行うが、一定温度の熱水槽の中に浸漬し、一定時間後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して殺菌する連続式がある。前駆複合体のボイル処理条
件としては、60〜100℃、大気圧下で、10〜120分の条件が好ましい。
調湿処理は、前記複合体を、10〜99℃、大気圧下、相対湿度20〜99%の雰囲気下に置くことである。調湿時間は、温度と湿度によってその最適な範囲が異なり、低温低湿度であるほど長時間の調湿を必要とし、高温高湿度であるほど短時間で処理を終えることができる。例えば、30℃で相対湿度70%の条件下では10時間以上、40℃で相対湿度90%の条件下では3時間以上、60℃で相対湿度90%の条件下では30分以上の調湿処理を行えば、充分にイオン架橋を進行させることができる。改質セルロース体が多価金属イオンによりイオン架橋しているかどうかは、赤外分光法により酸型カルボキシ基由来の1720cm−1付近の吸収ピークが多価金属型カルボキシ基由来の1600cm−1付近へとシフトすることにより、定性的に確認できる。
多価金属イオンによるイオン架橋をより効率的に促進する観点から、前記複合体を高温熱水処理する工程を含むことが好ましい。本発明において「高温熱水処理」とは、75℃以上(好ましくは80〜140℃)の水(水蒸気であってもよい。)に接触させる処理を意味する。
<作用・効果>
本発明の耐水紙は、繊維同士がイオン架橋を有することから、通常の繊維の場合に比べて、優れた耐水性を有する。耐水性は、低湿度条件下はもちろん、水中でも良好である。すなわち、耐水紙は、多数の改質セルロース体が複雑に絡み合った膜である。さらに、この改質セルロース体のカルボキル基同士を多価金属イオンにて架橋するため紙内部の空隙サイズが非常に小さく、水の浸入を防ぐ。また、耐水紙を形成する改質セルロース体同士が、多価金属イオンによりイオン架橋していることによって吸湿による膜の膨潤が抑制されている。そのため、高湿度条件下でも寸法安定性が良好である。また、改質セルロース体同士を架橋させることで、架橋させない紙と比べて、膜凝集力も良好である。膜凝集力が良好であることから、他のフィルムと積層した場合、層間密着性も良好であり、実用上有用である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
(実施例1)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.00mmol/gになったと時点で、過剰量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて塩酸水溶液、蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸型の改質セルロース体を得た。
前記TEMPO酸化で得た改質セルロース体を固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、酸化パルプ1g当たりのカルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
次に前記改質セルロース体を標準型手漉き角型抄紙機で坪量80グラム/mとなるように抄紙し、脱水プレス(3.43×10Pa)を5分間行い、ヤンキードライヤー(
表面温度120度)で乾燥させて紙を作製した。
蒸留水67.0gに、酸化亜鉛超微粒子(堺化学工業株式会社製、FINEX50、平均一次粒子径20nm)を30.0g、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製、アロンT−50:固形分濃度40%)を3.0g加えて、高速攪拌機(プライミクス株式会社製、T.K.フィルミックス)を用いて充分に分散させて、100.0gの酸化亜鉛超微粒子水分散液を得た。
この酸化亜鉛超微粒子水分散液25.0gに、蒸留水55.1gと、ポリエステル樹脂水性分散体(ユニチカ株式会社製、エリーテル KT−8803:固形分濃度30%、ポリエステル樹脂の数平均分子量は13,000、Tgは65℃、酸価は7mgKOH/g)4.1gと、水分散性イソシアネート化合物(Henkel製、Liofol HardenerUR5889−21:固形分濃度100%)0.45gとを加えて攪拌した後、IPA(イソプロピルアルコール)を10.3g加えて攪拌し、多価金属化合物の分散液を得た。上述の紙をこの分散液に10秒浸漬させた後に120℃で10分乾燥させ、改質セルロース体と多価金属化合物の複合体を得た。
熱水貯湯式レトルト殺菌装置(日阪製作所製)を用いて、120℃、処理槽圧力2kgで30分間レトルト処理した。これにより、多価金属イオンで改質セルロース体同士のイオン架橋を形成させた。この処理により耐水紙を得た。
(実施例2、3)
実施例1の改質セルロース体のカルボキシ基量を1.0mmol/g、0.5mmol/gとし、その他は全く同じ加工を施した耐水紙を得た。
(実施例4、5)
改質セルロース体を抄紙した後に多価金属化合物の分散液をバーコーター#50、#100でコーティングし、120℃で10分乾燥させ、多価金属との複合化以外は実施例1と全く同じ加工を施した耐水紙を得た。
(比較例1)
非改質のNBKP分散液をそのまま実施例1と同じ手順により抄紙した。
(比較例2)
非改質のNBKP分散液に、市販の湿潤紙力剤であるポリエピクロルヒドリン樹脂の固形分1wt%溶液を対パルプ固形分比で1wt%混合し、5分間攪拌したのちに実施例1と同様の手順により抄紙した。
<評価>
実施例1〜5、及び比較例1〜2で得られた耐水紙について、以下の方法で耐水性及び含水率を測定、評価した。なお、各測定を行う前に、JIS−8111に基づいて、20℃−65%RH環境下で24時間以上の調湿を行った。結果を以下の表1及び表2に記す。
・耐水性
JIS−8113に基づいて、オートグラフ(島津製作所製、島津オートグラフAG−500A)を使用して、乾燥状態(20℃−65%RH)と湿潤状態(試験片を蒸留水中へ1時間浸水)における各々の乾燥裂断長と湿潤裂断長を測定して、湿潤裂断長/乾燥裂断腸(wet/dry)を算出し、耐水性を評価した。
・吸水率
50mm×50mmの形状に裁断し、蒸留水へ1時間浸水させ、浸水前の重量と浸水後の重量差により、下記式(1)により吸水率(含水重量率)を算出した。
吸水率(%)=(浸水前と後の重量差(g)/浸水前の重量(g))×100 式(1)
Figure 2016089306
Figure 2016089306
<比較評価>
実施例1〜5で得られた本発明品は、いずれも耐水紙の目安となる耐水性及び吸水率において優れた特性を示した。一方、比較例1〜2で得られた比較例品はいずれも耐水紙としの特性に欠ける結果を示した。
以上のように、カルボニル基に多価金属化合物を作用させイオン架橋させた本発明の耐水紙は、優れた湿潤強度、耐水性を示す事が分かった。
本発明の耐水紙は、耐水性や紙力が要求される各種紙用途に好適であり、各種包装用紙、建装用紙、また保型性が必要な冷凍食品用やテイクアウト用食品紙トレイ、紙カップ、段ボールライナー及び中芯原紙、インスタント食品用紙容器、壁紙、化粧紙、育苗ポット紙等に使用が可能である。

Claims (5)

  1. カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、
    前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋していることを特徴とする耐水紙。
  2. 前記カルボキシ基が、触媒としてN−オキシル化合物を用い、pH4からpH7の水系反応溶液系にて行われた酸化反応にて導入されたことを特徴とする請求項1に記載の耐水紙。
  3. イオン架橋前の前記カルボキシ基が酸型であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐水紙。
  4. 前記多価金属化合物が2価の金属化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の耐水紙。
  5. 前記2価の金属化合物が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項4に記載の耐水紙。
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