JP2015183096A - コーティング剤、バリアフィルム、包装フィルム、及びコーティング剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コーティング剤は、セルロースを酸化して微細化した改質微細セルロースを含有する。この改質微細セルロースは表面にカルボキシル基を有する。このコーティング剤は、改質微細セルロース表面のカルボキシル基の対イオンとしてプロトン又はアンモニウムイオンを含む。対イオンの合計数のうち70%以上のイオンは、プロトン又はアンモニウムイオンである。
【選択図】図1
Description
環境配慮型の材料として、天然物由来の多糖類が注目されている。中でもセルロースは植物の細胞壁や微生物の体外分泌物、ホヤの外套膜等に含まれており、地球上で最も多く存在する多糖類で、生分解性を有し、結晶性が高く、安定性や安全性に優れているため、様々な分野への応用展開が期待されている。
この方法で調製された改質微細セルロース分散水溶液のコーティング剤は、塗工後に乾燥させることで、セルロースの高い結晶性と乾燥状態での酸素バリア性からガスバリア材料としての応用展開が期待されている。
特許文献1では、表面にカルボキシル基を有したセルロースナノファイバーを用いたガスバリア材料において、カルボキシル基の対イオンにNaイオンを用いている。この場合、乾燥して塩を形成した後に、高湿度条件に晒されると水分子が進入し、膨潤してしまうため、ガスバリア性が劣化してしまう。
また、本発明の一態様に係るコーティング剤の製造方法は、セルロースを酸化する工程と、酸化セルロースを分散媒に分散させ微細化する工程とを具備する。微細化する工程において、酸化セルロースを分散媒としての水に浸漬してからアルカリでpHの値を7以上12以下に調整する。また、微細化する工程において、pHの値の調整にアンモニア水溶液を用いる。
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本実施形態は、ガスバリア性を発現するコーティング剤に関するものである。本実施形態に係るコーティング剤は、改質微細セルロースを含有する。改質微細セルロースは、セルロースの酸化と微細化により得られるものであり、表面にカルボキシル基を有する。本実施形態では、図1に示すように、基材1の上に、このコーティング剤を塗布して繊維層2を形成したバリアフィルム100を作製する。また、図2に示すように、基材1の上に繊維層2を形成した後、繊維層2の上に接着剤を塗布して接着層3を形成し、その上にシーラント層4を接着した包装フィルム200を作製する。
酸化されるセルロースの原料としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、コットン、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、レーヨン等の再生セルロース等や微細セルロース、微結晶セルロース等を用いることができる。
まず、本実施形態において、セルロースを酸化する工程について説明する。
セルロースの酸化方法としては、できるだけ構造を保ちながら、一級水酸基の酸化に対する選択性が高い、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法が望ましい。上記のN−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下、TEMPO)等が好ましく用いられる。
また、上記の共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物等、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
N−オキシル化合物としてはTEMPOが好ましく、触媒として機能する量があれば十分である。また、臭化物としては臭化ナトリウム又は臭化リチウムを用いた系が好ましく、コストや安定性から臭化ナトリウムがより好ましい。共酸化剤、臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進することができる量があれば十分である。更に反応中は系内をアルカリ性に保つことが好ましく、pHの値を9以上11以下に調整することがより望ましい。
酸化反応を終了させるためには、系内のpHを保ちながら他のアルコールを添加し、共酸化剤を完全に反応し終える必要がある。添加するアルコールとしては反応をすばやく終了させるため、メタノール、エタノール、プロパノール等の低分子量のアルコールが望ましい。反応により生成される副産物の安全性等からエタノールがより好ましい。
次に、本実施形態において、酸化セルロースを微細化する工程について説明する。
酸洗した酸化セルロースを微細化する方法としては、まず、酸化セルロースを分散媒としての水に浸漬してからアルカリでpHの値を7以上12以下に調整する必要がある。このとき、アルカリとしてアンモニアを使用することが好ましい。pHの値が7より低い値の場合、電気的な反発が起き難く、溶液は不透明である。pHの値を7以上12以下に調整して微細化すると、カルボキシル基の静電気的な反発から酸化セルロースがナノオーダーまで解繊され、溶液の透明性が上昇する。
水分子の進入による膨潤を抑えるためには、改質微細セルロース表面のカルボキシル基の対イオンの親水性を抑制することが必要となる。対イオンがNaの場合、水分子の進入により膨潤しやすい。そのため、極力Naの量は少ないほうが好ましく、その分の対イオンは親水性の低いもので水を吸着しにくいものが好ましい。
Naイオン量の調整は、減少させる際には、酸化セルロースの酸洗するときのpHを下げる、又は洗浄の回数を調整することにより可能となり、増加させる際には、水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより可能となる。
微細化の際に温度が上昇し過ぎるとアンモニアが揮発してしまうため、カルボキシル基の対イオンがプロトンに置き換わり、カルボキル基同士の反発が得られなくなり、微細化の処理が進行し難くなる。微細化の処理は30℃以下で行うことが好ましい。また、この工程での温度上昇は着色の原因にもなるため、好ましくない。
改質微細セルロースの分散液は、乾燥処理の際にアンモニアが揮発する。このため、アンモニウムイオンは系内から放出され、改質微細セルロースの対イオンは部分的にプロトンに置き換えられている。
ここで、上記水溶性高分子はコーティング層のうち1%以上90%以下が好ましい。水溶性高分子の添加量が少な過ぎるとフィルム基材とコーティング層の界面の密着が悪く剥離しやすくなる。また、添加量が多過ぎる場合、湿度の影響を受けやすい膜となり高湿度下でバリア性が悪化する。
また、本実施形態に係るコーティング剤中には、更に添加剤等を含有させ、耐水・耐湿性等の機能を付与することも可能である。
[パルプのTEMPO酸化]
針葉樹晒クラフトパルプ30gを蒸留水1800gに懸濁し、蒸留水200gにTEMPOを0.3g、臭化ナトリウムを3g溶解させた溶液を加え、15℃まで冷却した。
ここで、2mol/l、密度1.15g/mlの次亜塩素酸ナトリウム水溶液172gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。
系内の温度は、常に15℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpHの値を10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが2.85mmol/gになったところで十分量のエタノールを添加し反応を停止させた。
その後、pHの値が3になるまで塩酸を添加した後、蒸留水で十分洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
[水溶性高分子水溶液]
市販品のPVA(「PVA−124」、クラレ社製)5gをビーカーに量りとり、純水495gを加えた。これを100℃に加熱し、溶解させ1%溶液を作製した。
<実施例1>
[微細セルロース分散液の調整]
TEMPO酸化パルプを固形分で2gとなるよう計り取り、蒸留水に加え合計200gとし、アンモニア水溶液を用いてpHの値を9に調整した。調整した分散液をミキサーで60分間微細化処理し、改質微細セルロース分散液を調製した。
微細セルロースの1%分散液をビーカーに100g量り取る。これに上記のポリビニルアルコールの1%溶液を50g添加してセルロース/ポリビニルアルコール=100/50となるように混合し、コーティング剤を得た。
厚さ25μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ポリエステルフィルム「E5102」、東洋紡社製)基材上に、上記のコーティング剤をバーコート法により乾燥膜厚1.0μmになるように塗布した後、乾燥させてガスバリア層を形成し、バリアフィルムを作製した。
実施例1と同様にpH調整した酸化パルプの混合液を超音波ホモジナイザーで30分間微細化処理し、改質微細セルロース分散液を調製した。また、同様の手法でポリビニルアルコールと混合してコーティング剤とした後にポリエチレンテレフタラートフィルム基材上に塗布し、バリアフィルムを得た。
<実施例3、4>
実施例1、2に記載のコーティング剤をポリ乳酸フィルム(「テラマックTF」、ユニチカ社製)基材上に塗布し、バリアフィルムを得た。
包装材料として用いるために、ガスバリア層側に、ラミネート用接着剤層を介してヒートシール層をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生して、包装フィルムを作製した。ヒートシール層としては、厚さが70μmのCPP(「RXC22」、三井化学東セロ社製)を使用し、ラミネート用接着剤層を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(「A525/A52」、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるようにガスバリア層上に塗布した。
<比較例1>
酸化パルプの洗浄を行う際に、酸を添加してカルボン酸とする処理を行わず、アルカリと塩を形成したまま洗浄した酸化パルプを使用した。この酸化パルプを固形分で2gとなるよう計り取り、蒸留水に加え合計200gとし、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHの値を9に調整した。調整した分散液をミキサーで60分間微細化処理し、改質微細セルロース分散液を調製した。
微細セルロースの1%分散液をビーカーに100g量り取る。これにポリビニルアルコールの1%溶液を50g添加してセルロース/ポリビニルアルコール=100/50となるように混合し、コーティング剤を得た。
厚さ25μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ポリエステルフィルム「E5102」、東洋紡社製)基材上に、上記のコーティング剤をバーコート法により乾燥膜厚1.0μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層を形成し、バリアフィルムを作製した。
<比較例2>
比較例1で得られたコーティング剤をポリ乳酸フィルム(「テラマックTF」、ユニチカ社製)基材上に塗布し、バリアフィルムを得た。
実施例1〜4と同様にラミネート用接着剤層を介してヒートシール層をドライラミネーション法により貼り合わせて包装フィルムを得た。得られたバリアフィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
酸素透過度測定装置MOCON(OX−TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて、30℃、40%RH及び70%RHの雰囲気下で、ガスバリア性フィルムの酸素透過度を測定した。測定結果を表1に示す。
包装フィルムのヒートシール層の面を対向させ、次に、その三方の外周周辺の端部をヒートシールして三方シ−ル型の包装用袋を製造し、その包装用袋の開口部から匂い成分としてp−ジクロロベンゼンの粉末を充填後、その開口部をヒートシールして包装製品を製造した。
次に、該包装製品を室温のデシケーターに入れ、乾燥空気を流しながら保存した。同様のサンプルを作成し、40℃90%RHの恒温恒湿糟でも保存した。それぞれの保存条件で5日間放置し、保存前後の内容物の重量変化より匂い成分の透過度(匂い透過度)を計算した。計算結果を表2に示す。
Claims (6)
- セルロースを酸化して微細化した改質微細セルロースを含有し、
前記改質微細セルロースは、表面にカルボキシル基を有し、
前記カルボキシル基の対イオンの合計数のうち70%以上のイオンは、プロトン又はアンモニウムイオンであることを特徴とするコーティング剤。 - 前記改質微細セルロースは、平均繊維径が200nm以下で、平均アスペクト比が10以上1000以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤。
- 請求項1又は2に記載のコーティング剤から形成されることを特徴とするバリアフィルム。
- 請求項1又は2に記載のコーティング剤をコーティング層として備えることを特徴とする包装フィルム。
- セルロースを酸化する工程と、酸化セルロースを分散媒に分散させ微細化する工程とを具備し、
前記酸化する工程において、前記酸化セルロースを洗浄する際に、酸を添加してカルボン酸にして洗浄し、
前記微細化する工程において、前記酸化セルロースを分散媒としての水に浸漬してからアルカリでpHの値を7以上12以下に調整することを特徴とするコーティング剤の製造方法。 - 前記微細化する工程において、pHの値の調整にアンモニア水溶液を用いることを特徴とする請求項5に記載のコーティング剤の製造方法。
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C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22 Effective date: 20200511 |
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C13 | Notice of reasons for refusal |
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C23 | Notice of termination of proceedings |
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C03 | Trial/appeal decision taken |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C03 Effective date: 20210105 |
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C30A | Notification sent |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C3012 Effective date: 20210105 |