JP2019104833A - 水系塗料組成物、フィルムおよびフィルムの製造方法 - Google Patents

水系塗料組成物、フィルムおよびフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高湿度下でも高い耐水性を有するフィルムを得ることができるセルロースナノファイバーを含有する水系塗料組成物を提供することを目的とする。【解決手段】変性セルロースナノファイバーと、多価アミンと、水系溶媒とを含む水系塗料組成物であって、前記変性セルロースナノファイバー中の水酸基の一部が、酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基が、式(1):−COO-N+R1R2R3H (1)(式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれHまたはモノアミンを構成する置換基である。)であらわされる構造を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースナノファイバーを含有する水系塗料組成物、この水系塗料組成物を用いてなるフィルム、およびこのフィルムの製造方法に関する。
ナノメートルの領域すなわち1〜100nmの範囲のナノスケールにおいて物質を自在に制御する技術であるナノテクノロジーから様々な便利な新素材やデバイスが生み出されることが期待される。特に、繊維を極限まで細くすると、従来の繊維にはなかった、まったく新しい物理学的な性質が生まれることから、ナノオーダーの繊維(ナノファイバー)が非常に注目されている。このナノファイバーは、極めて微細な異物も通過させない高性能フィルターの製造、樹脂あるいは塗膜の強度アップなどの効果が期待されている。
このナノファイバーの中でもセルロースに由来するセルロースナノファイバーについては、様々な開発や研究が行われており、例えば、特許文献1および特許文献2には、セルロースの水酸基の一部がカルボキシル化された平均繊維径が200nm以下の微細セルロース繊維(セルロースナノファイバー)が開示されている。このセルロースナノファイバーは、低せん断速度における粘度が高く、高せん断速度における粘度が低い特性を有している。このため、例えば、セルロースナノファイバーを含有する塗料には、塗工時には塗りやすく、塗工後には垂れない効果が期待されている。
特開2009−57552号公報 特開2015−183096号公報
しかしながら、特許文献1に記載のセルロースナノファイバーを含むガスバリア材料は、セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基の対イオンにNaイオンを用いるため、このガスバリア材料を用いたガスバリア性成形体は、高湿度条件に晒されると、吸湿膨潤して耐水性が低下するおそれがある。特許文献2に記載のセルロースナノファイバーを含むコーティング剤は、セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基の対イオンの70%以上をプロトン、もしくはアンモニウムイオンにすることで、耐水性の向上を図っているが、高湿度下での耐水性は十分とはいえなかった。
そこで、本発明は、高湿度下でも高い耐水性を有するフィルムを得ることができるセルロースナノファイバーを含有する水系塗料組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、耐溶剤性および高湿度下でのガスバリア性に優れるフィルムを得ることができるセルロースナノファイバーを含有する水系塗料組成物を提供することを目的とする。また、この水系塗料組成物から得られるフィルムおよびフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下を提供する。
(1)変性セルロースナノファイバーと、多価アミンと、水系溶媒とを含む水系塗料組成物であって、前記変性セルロースナノファイバー中の水酸基の一部が、酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基が、式(1):
−COO-+123H (1)
(式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれHまたはモノアミンを構成する置換基である。)であらわされる構造を含む、水系塗料組成物。
(2)前記水系塗料組成物において、前記変性セルロースナノファイバーの配合量が0.5〜30質量%であって、前記変性セルロースナノファイバーの前記変性により導入された置換基の置換基量に対し、前記多価アミンの配合割合が10〜70%mol等量である(1)に記載の水系塗料組成物。
(3)前記変性セルロースナノファイバーは酸化セルロースナノファイバーを含み、前記酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量が0.6〜2.2mmol/gである、(1)または(2)に記載の水系塗料組成物。
(4)前記変性セルロースナノファイバーはカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含み、前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位あたりのカルボキシメチル置換度が、0.01〜0.50である、(1)または(2)に記載の水系塗料組成物。
(5)さらにバインダー成分を含む、(1)〜(4)の何れかに記載の水系塗料組成物。
(6)さらに防腐剤を含む、(1)〜(5)の何れかに記載の水系塗料組成物。
(7)さらにレオロジーコントロール剤を含む、(1)〜(6)の何れかに記載の水系塗料組成物。
(8)(1)〜(7)の何れかに記載の水系塗料組成物を用いた1液型の水系塗料組成物。
(9)(1)〜(7)の何れかに記載の水系塗料組成物に含まれる成分の内、前記変性セルロースナノファイバーと、前記多価アミンとを別にした2液型の水系塗料組成物。
(10)(1)〜(9)の何れかに記載の水系塗料組成物を含有するフィルム。
(11)(1)〜(9)の何れかに記載の水系塗料組成物を得る混合工程と、前記混合工程にて得られた水系塗料組成物を支持体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程にて得られた前記水系塗料組成物が塗布された前記支持体を、加熱することにより乾燥して、前記支持体上に前記水系塗料組成物由来の塗膜を形成する塗膜形成工程と、を含むフィルムの製造方法であって、前記変性セルロースナノファイバー中の水酸基の一部が、酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基が、式(1):
−COO-+123H (1)
(式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれHまたはモノアミンを構成する置換基である。)であらわされる構造を含む、フィルムの製造方法。
(12)前記支持体がフィルム状の基材であり、前記塗膜形成工程において前記支持体上に前記塗膜を形成し塗工フィルムを製造する(11)に記載のフィルムの製造方法。
(13)前記支持体上に形成された前記塗膜を前記支持体から剥離する工程をさらに含み、前記支持体から剥離された前記塗膜からなる自立フィルムを製造する(11)に記載のフィルムの製造方法。
本発明によれば、高湿度下でも高い耐水性を有するフィルムを得ることができるセルロースナノファイバーを含有する水系塗料組成物を得ることができる。さらに、本発明の水系塗料組成物から得たフィルムは、耐溶剤性および高湿度下でのガスバリア性に優れる。また、本発明によれば、この水系塗料組成物を用いたフィルムおよびフィルムの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」は端値を含む。すなわち「X〜Y」はその両端の値XおよびYを含む。
本発明の水系塗料組成物は、変性セルロースナノファイバーと、多価アミンと、水系溶媒とを含む。また、変性セルロースナノファイバーは、水酸基の一部が、酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基が、式(1):
−COO-+123H (1)
(式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれHまたはモノアミンを構成する置換基である。)であらわされる構造を含む。
<変性セルロースナノファイバー>
本発明に用いる変性セルロースナノファイバーは、水酸基の一部が酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基に含まれるカルボキシル基がアンモニアなどのモノアミンと酸塩基反応を起こしてモノアミン塩を形成している。
また、本発明に用いる変性セルロースナノファイバーは、セルロース原料を変性して得られたカルボキシル基含有変性セルロースをモノアミンで処理し、解繊することにより得られる微細繊維(カルボキシル基含有変性セルロースナノファイバー)である。なお、本発明の水系塗料組成物において、変性セルロースナノファイバーは、バインダーとしての機能も有する。
<平均繊維径、平均繊維長>
本発明に用いる変性セルロースナノファイバーの平均繊維径は、2〜200nmであることが好ましく、4〜100nm程度であることがより好ましい。本発明に用いる変性セルロースナノファイバーの平均繊維長は、40〜2,000nm以下であることが好ましく、100〜1,000nm程度であることがより好ましい。セルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径および繊維長を平均することによって得ることができる。
<平均アスペクト比>
本発明に用いる変性セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、通常は10以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
ここで、カルボキシル基含有変性セルロースは、カルボキシル基を少なくとも1つ有する変性セルロースを意味する。セルロース骨格にカルボキシル基が結合していてもよいし、カルボキシル基を含む基(例:カルボキシメチル基などのカルボキシアルキル基)が結合していてもよい。
<カルボキシル基を含む置換基の導入>
カルボキシル基含有変性セルロースの製造方法は特に限定されないが、例えば、セルロース原料を変性するとともにカルボキシル基、又はカルボキシル基を含む置換基を導入することができる変性方法が挙げられる。斯かる変性方法は特に限定されないが、例えば、酸化、エーテル化、エステル化などが挙げられる。中でも酸化、カルボキシメチル化が好ましい。
<セルロース原料>
セルロース原料の由来は、特に限定されないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)広葉樹未漂白サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。本発明で用いるセルロース原料は、これらのいずれかであってもよいし2以上の組み合わせであってもよいが、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、より好ましくは植物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)である。
<酸化>
酸化の方法は特に限定されないが、1つの例としては、N−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基と、カルボキシル基及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N−オキシル化合物としては例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)が挙げられる。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下が更に好ましい。従って、N−オキシル化合物の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.02〜0.5mmolがさらに好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、臭化ナトリウム等の、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択すればよい。臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下が更に好ましい。従って、臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、それらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。中でも、安価で環境負荷の少ないことから、次亜ハロゲン酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸又はその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが更に好ましい。酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上が更に好ましい。上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下が更に好ましい。従って、酸化剤の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜25mmolが特に好ましい。N−オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましい。上限は、40molが好ましい。従って、酸化剤の使用量は、N−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、反応温度は4〜40℃が好ましく、15〜30℃程度、すなわち室温であってもよい。反応液のpHは、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは、好ましくは8〜12、より好ましくは10〜11程度である。通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHが低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上である。上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5〜6時間、例えば、0.5〜4時間程度である。
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾン処理により酸化する方法が挙げられる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾン処理は通常、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより行われる。
気体中のオゾン濃度は、50g/m3以上であることが好ましい。上限は、250g/m3以下であることが好ましく、220g/m3以下であることがより好ましい。従って、気体中のオゾン濃度は、50〜250g/m3であることが好ましく、50〜220g/m3であることがより好ましい。オゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。上限は、通常30質量部以下である。従って、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量部に対し、0.1〜30質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
オゾン処理温度は、通常0℃以上であり、好ましくは20℃以上である。上限は通常50℃以下である。従って、オゾン処理温度は、通常0〜50℃であり、20〜50℃であることが好ましい。オゾン処理時間は、通常は1分以上であり、好ましくは30分以上である。上限は通常360分以下である。従って、オゾン処理時間は、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。
オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理後に得られる結果物に対しさらに、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物;酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。追酸化処理の方法としては例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させる方法が挙げられる。
酸化によりセルロース原料を変性して得られるカルボキシル基含有変性セルロースナノファイバー(酸化セルロースナノファイバー)に含まれる、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対するカルボキシル基の量は、好ましくは0.6mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、更に好ましくは1.0mmol/g以上である。上限は、好ましくは2.2mmol/g以下、より好ましくは2.0mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。従って、0.6mmol/g〜2.2mmol/gが好ましく、0.8mmol/g〜2.0mmol/gがより好ましく、1.0mmol/g〜1.8mmol/gが更に好ましい。
酸化セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間をコントロールすることで調整することができる。
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース又は酸化セルロースナノファイバー〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース又は酸化セルロースナノファイバーの質量〔g〕
<カルボキシメチル化>
カルボキシメチル化の方法は、特に限定されないが、例えば、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60質量%以上又は95質量%以下であり、60〜95質量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3質量倍である。上限は特に限定されないが20質量倍であることが好ましい。従って、溶媒の量は3〜20質量倍であることが好ましい。
マーセル化は通常、発底原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、0.7倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい、従って、0.5〜20倍モルが好ましく、0.7〜10倍モルがより好ましく、0.8〜5倍モルがさらに好ましい。
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上である。上限は70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、反応時間は通常15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.7倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常10.0倍モル以下であり、5倍モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、好ましくは0.05〜10.0倍モル、より好ましくは0.5〜5倍モル、更に好ましくは0.7〜3倍モルである。反応温度は、通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。反応時間は、通常30分以上であり、好ましくは1時間以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カルボキシメチル化により得られるカルボキシル基含有変性セルロースナノファイバー(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.35が更に好ましい。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定方法としては例えば、次の方法が挙げられる:1)カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにする。3)水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する。
A=[(100×F×0.1−(0.1NのH2SO4)(mL)×F’)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
上記の方法で得られた酸化セルロース及びカルボキシメチル化セルロースなどのカルボキシル基含有変性セルロースの洗浄方法としては、アルカリと塩を形成したまま洗浄する方法、酸を添加してカルボン酸にして洗浄する方法、有機溶剤を添加して不溶化して洗浄する方法等がある。ハンドリング性や収率等の点から、酸を添加してカルボン酸にして洗浄する方法が好ましい。なお、洗浄溶媒としては水が好ましい。pHの値を3に調整した洗浄溶液で酸洗して回収を行うと、カルボキシル基の対イオンがプロトンに置き換わり、金属イオンを除去することができる。
カルボキシル基含有変性セルロースに含まれる金属イオン含有量は様々な分析方法で調べることができるが、電子線マイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)を用いたEPMA法、蛍光X線分析法の元素分析によって簡易的に調べることができる。
水分子の進入による膨潤を抑えるためには、カルボキシル基含有変性セルロース表面のカルボキシル基の対イオンの親水性を抑制することが必要となる。対イオンがNaの場合、水分子の進入により膨潤しやすい。そのため、極力Naの量は少ないほうが好ましい。
<解繊>
次に、カルボキシル基含有変性セルロースを微細化する工程について説明する。
酸洗したカルボキシル基含有変性セルロースを微細化する方法としては、まず、カルボキシル基含有変性セルロースを分散媒としての水に浸漬してからアルカリでpHの値を7以上12以下に調整する必要がある。このとき、アルカリとしてアンモニアなどのモノアミンを使用することで、カルボキシル基含有変性セルロース繊維に含まれる少なくとも一部のカルボキシル基が、モノアミンとイオン結合する。pHの値が7より低い値の場合、電気的な反発が起き難く、溶液は不透明である。pHの値を7以上12以下に調整して微細化すると、カルボキシル基の静電気的な反発からカルボキシル基含有セルロースがナノオーダーまで解繊され、溶液の透明性が上昇する。
<モノアミン>
カルボキシル基含有変性セルロースをモノアミンで処理する場合におけるモノアミンの種類は特に限定されるわけではないが、水系塗料組成物を加熱して水とモノアミンを系外に揮発させる工程を考慮すると、沸点が110℃以下のモノアミンが好ましい。モノアミンとしては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N−エチルメチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−アミルアミン、N−メチルペントリルアミン、イソアミルアミン、ネオペンチルアミン等があげられ、炭素数5以下のモノアルキルアミン、炭素数3以下のジアルキルアミン、炭素数2以下のトリアルキルアミンを用いることがより好ましい。
カルボキシル基含有変性セルロースは、分散媒としての水に分散させた水分散液の状態で用いる。分散体中のカルボキシル基含有変性セルロースの固形分濃度は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
解繊に用いる装置は特に限定されないが例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に上記圧力を印加でき、かつ強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
解繊処理と分散処理の順序は特に限定されず、どちらを先に行ってもよいし同時に行ってもよいが、分散処理後に解繊処理を行うことが好ましい。各処理の組み合わせを少なくとも1回行えばよく、2回以上繰り返してもよい。
解繊処理又は分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
<多価アミン>
本発明に用いる多価アミンの種類は特に限定されるわけではないが、2価〜6価のアミンが好ましい。2価アミンとしては、1,2−エチレンジアミン(以下、「1,2−エタンジアミン」ということがある)、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン(以下、「テトラメチレンジアミン」ということがある)、1,5−ペンタンジアミン(以下、「ペンタメチレンジアミン」ということがある)、1,6−ヘキサンジアミン(以下、「ヘキサメチレンジアミン」ということがある)、1,7−ヘプタンジアミン(以下、「ヘプタメチレンジアミン」ということがある)、1,8−オクタンジアミン(以下、「オクタメチレンジアミン」ということがある)、1,9−ノナンジアミン(以下、「ノナメチレンジアミン」ということがある)、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン、α,ω-ポリエーテルジアミン等があげられ、3価アミンとしては、トリス(2−アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン(「2,2’−ジアミノジエチルアミン」ということがある)、4価アミンとしては、トリエチレンテトラミン(「N,N’−ジ(2-アミノエチル)エチレンジアミン」ということがある。)、5価アミンとしては、テトラエチレンペンタミン(「1,4,7,10−ペンタアザトリデカン」ということがある)、6価アミンとしては、ペンタエチレンヘキサミン(「1,4,7,10,13,16−ヘキサアザヘキサデカン」ということがある)等があげられる。分子鎖の長さの観点から、1,4-ブタンジアミンのような両末端アミノ基間のC,O,Nからなる分子鎖長4以上のアミンが好ましく、1,6−ヘキサンジアミンのような6以上のアミンがより好ましく用いられる。
本発明の水系塗料組成物に用いられる多価アミンの配合割合は、塗膜の強度を維持できる観点から、変性セルロースナノファイバーの置換基量に対して、10〜70%mol等量であることが好ましく、25〜50%mol等量であることがより好ましい。
<水系溶媒>
水系溶媒の種類は特に限定されるわけではないが、水、水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒であることが好ましい。変性セルロースの分散性を考慮すると、水系溶媒としては水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水系溶媒が水である場合は、前述のとおりに調製した変性セルロースナノファイバーの水分散液をそのまま用いることができる。あるいは当該水分散液にろ過処理等を行い濃縮された水分散液としてもよい。
水系溶媒を混合溶媒とする場合は、前述のとおりに調製した変性セルロースの水分散液に水溶性有機溶媒を添加する、あるいは水分散液の一部を水溶性有機溶媒に置換すればよい。置換は、前記変性セルロースの水分散液から水を乾燥またはろ過等により除去し、濃縮された水分散液または化学変性セルロースのウェットケーキを得て、これに水溶性有機溶媒を添加するなどして行うことができる。
水溶性有機溶媒とは、水に溶解する有機溶媒である。その例として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、酢酸およびこれらの組合せ等が挙げられる。中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール等の炭素数が1〜4の低級アルコールが好ましく、安全性および入手容易性の観点から、メタノール、エタノール、2−プロパノールがより好ましく、塗料安定性の観点から沸点が高めのエタノール、2−プロパノールがさらに好ましい。
前記混合溶媒中の水溶性有機溶媒の量は、10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。当該量の上限は限定されないが95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。また、発明の効果を損なわない程度で、当該水系溶媒は非水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
<バインダー成分>
本発明の水系塗料組成物に含まれる変性セルロースナノファイバーは、バインダーとしての機能を有するが、本発明の水系塗料組成物には、変性セルロースナノファイバー以外のバインダー成分を含んでいても良い。本発明において、必要に応じて用いられるバインダー成分の種類は特に限定されるわけではないが、例えば、水溶性の樹脂、ディスパージョン、エマルション、ミクロゲル等の形態を有する樹脂が使用できる。さらに具体的に上記水溶性の樹脂を例示すると、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。水溶性の樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂を用いることが好ましい。
変性セルロースナノファイバー以外のバインダー成分を用いる場合における、水系塗料組成物中のバインダー成分の配合割合は、変性セルロースナノファイバーに対して、0〜100質量%が好ましく、0〜55質量%がより好ましい。
<防腐剤>
なお、本発明の水系塗料組成物には、上記変性セルロースナノファイバー、多価アミン、水系溶媒、および必要に応じて用いられるバインダー成分とともに、防腐剤を用いてもよい。
上記防腐剤としては特に限定されるわけではないが、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、有機窒素硫黄系化合物、ハロアリルスルホン化合物、ヨードプロパルギル化合物、イソチアゾリン系化合物、フェノール系化合物、トリアジン系化合物、プロパンー1,2−ジオール等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
防腐剤を用いる場合における、水系塗料組成物中の防腐剤の配合割合は、変性セルロースナノファイバーとバインダー成分の合計質量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましい。
<レオロジーコントロール剤>
本発明の水系塗料組成物は、レオロジーコントロール剤を含有してもよい。レオロジーコントロール剤は、粘性を上昇させたり下降させたりするときに用いられたり、表面エネルギーを下げて、基材への濡れ性付与、接着性付与、表面に平滑性を付与する役割がある。
レオロジーコントロール剤としては、例えば、アルカリ可溶型ポリ(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアルカリ可溶型レオロジーコントロール剤;ポリエーテルウレタン会合基変性体などのウレタン会合型レオロジーコントロール剤;カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体系レオロジーコントロール剤;水溶性ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナなどの無機系レオロジーコントロール剤;カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウムなどのタンパク質系レオロジーコントロール剤;アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸系レオロジーコントロール剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニル−ベンジルエーテル共重合体などのポリビニル系レオロジーコントロール剤;ポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ可溶型ポリ(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのポリアクリル酸系レオロジーコントロール剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン会合基変性体、ポリエーテルエポキシ変性体などのポリエーテル系レオロジーコントロール剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルと無水マレイン酸との反応物の半エステルなどの無水マレイン酸共重合体系レオロジーコントロール剤;ポリシロキサン系レオロジーコントロール剤;フッ素系レオロジーコントロール剤、アセチレングリコール、キサンタンガム、ザンタンガム、デンプンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
レオロジーコントロール剤を用いる場合における、水系塗料組成物中のレオロジーコントロール剤の配合割合は、変性セルロースナノファイバーとバインダー成分の合計質量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。
<水系塗料組成物>
本発明の水系塗料組成物における各成分の配合割合は特に限定はされないが、変性セルロースナノファイバー配合量を100質量%としたときに、バインダー成分の配合割合は、バリア性の観点から、好ましくは0〜100質量%、より好ましくは0〜55質量%であり、また、水系塗料組成物の全体を100質量%としたときに、変性セルロースナノファイバーの配合量は、変性セルロースナノファイバーの分散安定性の観点から、0.5〜30質量%が好ましい。
本発明の水系塗料組成物中においては、変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基がモノアミンとイオン結合している状態では、変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基は、系内の多価アミンと反応しない。そのため、得られる水系塗料組成物のポットライフおよびシェルライフを長い期間とすることができる。なお、変性セルロースナノファイバーがモノアミンと結合していない場合は、多価アミンを加えることにより、変性セルロースナノファイバーと多価アミンが反応し、架橋してしまうため、塗料組成物として基材に塗布することが困難となる。
本発明の水系塗料組成物は、加熱して水とアンモニアなどのモノアミンが系外に揮発すると、変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基が多価アミンと反応して、塩となり、架橋される。さらに加熱されることで、アミド結合が生成し強固に架橋される。この反応により、本発明の水系塗料組成物を用いて得られる乾燥後のフィルムは、耐溶剤性および高湿度下でのガスバリア性が向上するとともに、高湿度下での耐水性が飛躍的に向上する。
本発明の水系塗料組成物は、上記したバインダー成分、変性セルロースナノファイバー、多価アミン、および水系溶媒を含む成分をひとつに混合した1液型の水系塗料組成物としてもよいし、上記した成分の内、変性セルロースナノファイバー成分と多価アミン成分とを別に分けて、使用時に混合するタイプの2液型の水系塗料組成物としてもよい。
本発明の水系塗料組成物は、用いる変性セルロースナノファイバーが、モノアミンとイオン結合しているため、系内の多価アミンと反応しない。したがって、1液型の水系塗料組成物とした場合であっても、シェルライフを長いものとすることができる。
なお、本発明の水系塗料組成物には、本発明の課題を解決できる種類及び量の範囲内において、公知の充填剤、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤(シランカップリング剤等)、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、架橋剤(エポキシ基、イソシアネート基等の反応性官能基を有する添加剤)、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン等を配合することができる。
<水系塗料組成物の用途>
本発明の水系塗料組成物は、結合剤組成物(水系結合剤組成物)である。
水系結合剤組成物は、基材表面に用いるコート剤、表面補強剤、傷つき防止剤、防錆顔料・汚損防止剤・表面保護剤、防汚処理剤、防曇剤、帯電防止剤としての用途や、その添加剤、及び各種塗料の結合剤や添加剤として使用することができる。基材となる成形体は、所望形状及び大きさのフィルム、シート、織布、不織布等の薄状物、各種形状及び大きさの箱やボトル等の立体容器等を用いることができる。これらの成形体は、紙、板紙、プラスチック、金属(多数の穴の開いたものや金網状のもので、主として補強材として使用されるもの)又これらの複合体等からなるものを用いることができ、それらの中でも、紙、板紙等の植物由来材料、生分解性プラスチック等の生分解性材料又はバイオマス由来材料にすることが好ましい。基材となる成形体は、同一又は異なる材料(例えば接着性やぬれ性向上剤)の組み合わせからなる多層構造にすることもできる。
基材としてプラスチックを用いる場合、用途に応じてその種類を適宜選択することができるが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンおよび環状ポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/10、ナイロン6/12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル、セルロース等のセロハン、三酢酸セルロース(TAC)等から選ばれる1又は2以上を用いることができる。
基材となる成形体の厚みは特に制限されるものではなく、用途に応じた強度が得られるように適宜選択すればよく、例えば、1〜1000μmの範囲にすることができる。この基材としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤を含有したものを使用することができる。また、表面に、コロナ処理、エキシマ光処理、アンカーコート処理等の表面改質を行い、その表面に形成される複合被膜との密着性を向上させたものも使用することができる。
本発明の水系塗料組成物を用いた塗工フィルムの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター、スロットダイ・コーター、スプレーコーティングなどの公知の塗工方法を用いて、基材としてのフィルムに水系塗料組成物を塗布し、水系塗料組成物が塗布されたフィルムを加熱することにより乾燥して、基材のフィルム上に水系塗料組成物由来の塗膜が形成された塗工フィルムを製造することができる。塗膜の乾燥手段としては、例えば、電気乾燥炉(自然対流式又は強制対流式)、熱風循環式の乾燥炉、遠赤外線による加熱と熱風循環を併用した乾燥炉、加熱しながら減圧できる減圧乾燥炉を用いた方法等を採用することができる。ここで、本発明において、乾燥後の塗膜の厚みは特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、0.02〜100μmの範囲にすることができる。
加熱を行う場合における加熱温度は、フィルムに塗布された水系塗料組成物から水系溶媒およびモノアミンを十分に揮発させることができる観点から、110〜200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。また、加熱時間は、基材保護の観点から、1〜60分が好ましく、2〜30分がより好ましい。
本発明の水系塗料組成物は、さらに自立フィルムの製造においても、好適に使用される。自立フィルムの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター、スロットダイ・コーター、スプレーコーティング、などの公知の塗工方法を用いて、支持体としてのフィルム、乾燥ドラム、乾燥ベルト等に塗布し、フィルムに塗布した場合は、乾燥ゾーンにて加熱して乾燥した後、塗膜を剥離して連続フィルムとしての自立フィルムを得ることができる。また、乾燥ドラム、乾燥ベルトに塗布した場合は、加熱して乾燥した後に塗膜を剥離して連続フィルムとしての自立フィルムを得ることができる。
自立フィルムの製造における加熱温度および加熱時間は、塗工フィルムの製造における温度と時間と同様にすればよい。
ここで、本発明において、自立フィルムの厚みは特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、2〜200μmの範囲にすることができる。
本発明の水系塗料組成物は、フィルムより厚みの大きい板状物の製造に用いてもよい。板状物は、基材となる成形体と一体となっていてもよく、加熱して乾燥した後に基材を剥離したものであってもよい。板状物を形成する場合の乾燥後の板の厚みは特に制限されるものではなく、例えば、500〜3,000μmの範囲にすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例における各数値の測定/算出方法が特に記載されていない場合には、明細書中に記載されている方法により測定/算出されたものである。
〔製造例1〕
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)1.95g(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム51.4g(絶乾1gのセルロースに対し1mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物に塩酸を添加し、pHを2.4にした後、ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(酸化(カルボキシル化)セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた変性パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、アンモニアでpHを8に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、カルボキシルイオンがアンモニウムイオンとイオン結合した置換基を含有するセルロースナノファイバー1(CNF1)の水分散液を得た。
〔製造例2〕
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で253g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で56.3g(パルプのグルコース残基当たり0.9倍モル)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを127g(パルプのグルコース残基当たり0.7倍モル)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。
上記の工程で得られた変性パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、アンモニアでpHを8に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、カルボキシルイオンがアンモニウムイオンとイオン結合した置換基を含有するセルロースナノファイバー2(CNF2)の水分散液を得た。
〔製造例3〜22〕
pH調整に使用する薬品をアンモニアから表1に示すモノアミンに変更した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー3〜22(CNF3〜22)の水分散液を得た。
〔製造例23〕
pH調整に使用する薬品をアンモニアから水酸化ナトリウムに変更した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー23(CNF23)の水分散液を得た。
Figure 2019104833
<水系塗料組成物の作製>
〔実施例1〕
製造例1で作製したセルロースナノファイバー1を固形分換算値で1質量部、ヘキサメチレンジアミンを固形分換算値で0.1部添加し、最終組成物における溶媒の成分比が2−プロパノール/水=30/70になるように2−プロパノールと水を加え、全体を100質量部とした。次に、ホモミキサーを用いて、12000rpmで15分間混合して、水系塗料組成物を得た。
〔実施例2〜18〕
セルロースナノファイバー1をセルロースナノファイバー2〜18に変更した以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔実施例19〜31〕
ヘキサメチレンジアミンを表2に示す多価アミンとそれぞれの添加量に変更した以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例1〕
ヘキサメチレンジアミンを加えなかった以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例2〕
セルロースナノファイバー1を、セルロースナノファイバー23に変更した以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例3〜6〕
セルロースナノファイバー1を、セルロースナノファイバー19〜22に変更した以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例7〕
ヘキサメチレンジアミン0.1部添加を、1,2−エタンジアミン0.05部添加に変更した以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例8〕
ヘキサメチレンジアミン0.1部添加を、ピペリジン0.07部添加に変更した以外は、実施例1と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔実施例32〕
セルロースナノファイバー1を固形分換算値で1質量部、ヘキサメチレンジアミンを固形分換算値で0.1質量部、防腐剤:メチルパラベンを0.005質量部、ウレタン会合型レオロジーコントロール剤アデカノールUH-420((株)ADEKA製、有効成分量:30%)を有効成分換算値で0.1部、さらに水系ウレタン樹脂エマルション(有効成分量40%)を固形分換算値で0.43質量部を計量し、最終組成物における溶媒の成分比が2−プロパノール/水=30/70になるように2−プロパノールと水を加え、全体を100質量部とした。次に、ホモミキサーを用いて、12000rpmで15分間混合して、水系塗料組成物を得た。
〔実施例33〕
水系ウレタン樹脂エマルションを1.0部にした以外は、実施例32と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔実施例34〕
着色剤である酸化チタン15質量部並びに炭酸カルシウム7質量部、及び水(顔料分散用)20質量部を計量し、ビーズミルで分散処理をして、52.4%質量濃度の顔料分散液を調製した。得られた顔料分散液0.15質量部に、セルロースナノファイバー1を固形分換算値で1質量部、ヘキサメチレンジアミンを固形分換算値で0.1質量部、防腐剤:メチルパラベンを0.005質量部、ウレタン会合型レオロジーコントロール剤アデカノールUH−420((株)ADEKA製、有効成分量:30%)を有効成分換算値で0.1部、最終組成物における溶媒の成分比が2−プロパノール/水=30/70になるように2−プロパノールと水を加え、全体を100質量部とした。次に、ホモミキサーを用いて、12000rpmで15分間混合して、水系塗料組成物を得た。
〔実施例35〕
実施例34で得られた顔料分散液を0.18部加えた以外は実施例32と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例9〕
水系ウレタン樹脂エマルションを固形分換算値で1.5質量部、防腐剤メチルパラベンを0.0005部、ウレタン会合型レオロジーコントロール剤アデカノールUH−420((株)ADEKA製、有効成分量:30%)を有効成分換算値で0.1部にした以外は、実施例32と同様にして水系塗料組成物を得た。
〔比較例10〕
水系ウレタン樹脂エマルションを固形分換算値で10質量部、ウレタン会合型レオロジーコントロール剤アデカノールUH−420((株)ADEKA製、有効成分量:30%)を有効成分換算値で0.37部にした以外は、比較例9と同様にして水系塗料組成物を得た。
このようにして得られた各水系塗料組成物を用い、下記の通り塗工フィルムおよび自立フィルムを作製し、下記の基準に従って、耐水性、耐溶剤性およびガスバリア性の評価を行った。
[塗工フィルムの作製]
実施例1〜35および比較例1〜10で作製した水系塗料組成物を、コロナ放電処理した25μm厚PETフィルムに、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにバーコーターを用いて塗布した後、120℃で30分間乾燥して塗工フィルムの試験片を得た。表2および表3に塗工フィルムの評価結果を示す。
[自立フィルムの作製]
実施例1〜2および比較例2で作製した水系塗料組成物を、バーコーターを用いてPETフィルムに塗工した後、120℃で30分間乾燥し、基材PETフィルムからはがして自立フィルムを得た。表4に自立フィルムの評価結果を示す。
[耐水性]
各実施例および各比較例にて得られた塗工フィルムおよび自立フィルムを25℃の水中に10日間浸漬した後、塗膜の状態を下記の判定基準に従い目視で判定した。
○:塗膜の剥がれや膨れがみとめられない。
△:一部に塗膜の剥がれや膨れがみとめられる。
×:全体に塗膜の剥がれや膨れがみとめられる。
[耐溶剤性]
各実施例および各比較例にて得られた塗工フィルムおよび自立フィルムの塗膜上にろ紙を2枚並べて置き、各ろ紙上にスポイトで78%エタノールとトルエンをそれぞれ滴下してろ紙を湿らせた。このスポイトによる滴下を1時間間隔で5回行い、その後2時間経過後にろ紙を除いた表面を目視により、下記の基準で評価した。
○:膨れや剥がれなどの異常が殆どなく問題にならないレベル
△:目視で軽度な膨れや剥がれなどの異常が見つかる
×: 塗膜が溶けてしまう
[ガスバリア性]
各実施例および各比較例にて得られた塗工フィルムおよび自立フィルムについて、高湿度条件での酸素透過度を測定した。酸素透過度は、MOCON社製OX−TRAN2/21を使用し、23℃−85%RH条件にて測定した。
Figure 2019104833
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表2、3に示す通り、実施例1〜35の水系塗料組成物を用いて得られた塗工フィルムは各評価項目において優れる。これに対し、比較例1〜10の水系塗料組成物を用いて得られた塗工フィルムは各評価項目において、実施例1〜35に劣る。また、表4に示す通り、実施例1、2の水系塗料組成物を用いて得られた自立フィルムは各評価項目において、比較例2の自立フィルムよりも優れる。
以上より、特定の変性セルロースナノファイバーと、多価アミンと、水系溶媒とを含む水系塗料組成物を用いて得られた塗工フィルムおよび自立フィルムは、高湿度下での耐水性、耐溶剤性、および高湿度下でのガスバリア性に優れる。

Claims (13)

  1. 変性セルロースナノファイバーと、多価アミンと、水系溶媒とを含む水系塗料組成物であって、前記変性セルロースナノファイバー中の水酸基の一部が、酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基が、式(1):
    −COO-+123H (1)
    (式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれHまたはモノアミンを構成する置換基である。)であらわされる構造を含む、水系塗料組成物。
  2. 前記水系塗料組成物において、前記変性セルロースナノファイバーの配合量が0.5〜30質量%であって、前記変性セルロースナノファイバーの前記変性により導入された置換基の置換基量に対し、前記多価アミンの配合割合が10〜70%mol等量である請求項1に記載の水系塗料組成物。
  3. 前記変性セルロースナノファイバーは酸化セルロースナノファイバーを含み、前記酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量が0.6〜2.2mmol/gである、請求項1または2に記載の水系塗料組成物。
  4. 前記変性セルロースナノファイバーはカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含み、前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位あたりのカルボキシメチル置換度が、0.01〜0.50である、請求項1または2に記載の水系塗料組成物。
  5. さらにバインダー成分を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の水系塗料組成物。
  6. さらに防腐剤を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の水系塗料組成物。
  7. さらにレオロジーコントロール剤を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の水系塗料組成物。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の水系塗料組成物を用いた1液型の水系塗料組成物。
  9. 請求項1〜7の何れか一項に記載の水系塗料組成物に含まれる成分の内、前記変性セルロースナノファイバーと、前記多価アミンとを別にした2液型の水系塗料組成物。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載の水系塗料組成物を含有するフィルム。
  11. 前記(1)〜(9)の何れか一項に記載の水系塗料組成物を得る混合工程と、
    前記混合工程にて得られた水系塗料組成物を支持体に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程にて得られた前記水系塗料組成物が塗布された前記支持体を、加熱することにより乾燥して、前記支持体上に前記水系塗料組成物由来の塗膜を形成する塗膜形成工程と、を含むフィルムの製造方法であって、
    前記変性セルロースナノファイバー中の水酸基の一部が、酸化または置換反応により変性されており、変性により導入された置換基が、式(1):
    −COO-+123H (1)
    (式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれHまたはモノアミンを構成する置換基である。)であらわされる構造を含む、フィルムの製造方法。
  12. 前記支持体がフィルム状の基材であり、前記塗膜形成工程において前記支持体上に前記塗膜を形成し塗工フィルムを製造する請求項11に記載のフィルムの製造方法。
  13. 前記支持体上に形成された前記塗膜を前記支持体から剥離する工程をさらに含み、前記支持体から剥離された前記塗膜からなる自立フィルムを製造する請求項11に記載のフィルムの製造方法。
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