JP2017043647A - セルロースエステル水性分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 分散性および塗装性に優れるとともに、乾燥塗膜のタック性を抑制できるセルロースエステル水分散体を提供する。【解決手段】 セルロースエステル(A)およびアニオン性樹脂(B)を含有するセルロースエステル水性分散体である。前記セルロースエステル(A)は、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステル水性分散体に関するものである。
セルロースエステルは、乾燥性を向上できることから、塗料やフィルムなどの用途に広く使用されている。例えば、特許文献1では、アクリル樹脂を含む被覆用樹脂組成物が開示されており、セルロースアセテートブチレートを用いることにより塗膜の乾燥性が向上することが開示されている。
特開2008−156415号公報
近年、環境保護やVOC削減などの観点から、塗料やフィルム材料を水系化することが検討されている。しかし、セルロースエステルは疎水性であるため、単独で水に分散することは困難である。また、分散性を高めるために一般的に用いられる界面活性剤は、セルロースエステルを水に分散することが困難であることがわかった。さらに、界面活性剤はブリードアウトしやすく、乾燥塗膜にタックが生じやすいため、用途によっては使用できない場合がある。そこで、本発明は、分散性および塗装性に優れるとともに、乾燥塗膜のタック性を抑制できるセルロースエステル水分散体を提供するものである。
本発明に係るセルロースエステル水性分散体は、セルロースエステル(A)およびアニオン性樹脂(B)を含有するものである。
前記セルロースエステル(A)は、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記アニオン性樹脂(B)は、アニオン性ポリエステル樹脂およびアニオン性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係るセルロースエステル水性分散体は、さらにアニオン変性セルロースナノファイバー(C)を含有することが好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)は、酸化セルロース(C1)であることが好ましい。
本発明に係るコーティング組成物は、上記セルロースエステル水性分散体を含有するものである。
本発明によれば、分散性および塗装性に優れるとともに、乾燥塗膜のタック性を抑制できるセルロースエステル水性分散体を得ることができる。
本実施形態に係るセルロースエステル水性分散体は、セルロースエステル(A)を含有する。
本発明のセルロースエステル(A)は、セルロースに含まれる水酸基のうち少なくとも一部が有機エステル基に置換されたものである。
前記有機エステル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などの脂肪族アシル基、ベンゾイル基、トルイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。これらのうち、脂肪族アシル基であることが好ましい。また、ブチリル基を含有することが好ましく、アセチル基とブチリル基を含有することが好ましい。
前記セルロースエステル(A)は、ブチリル基を20〜80質量%含有することが好ましい。上記範囲内とすることにより、塗料などの乾燥性をより向上できるとともに、顔料の配向性をより向上することができる。ブチリル基の含有量は、25〜70質量%であることがより好ましく、30〜65質量%であることがさらに好ましい。
前記セルロースエステル(A)の具体的な化合物としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースプロピオネートブチレート、セルロースブチレートなどが挙げられる。これらのうち、塗料などの乾燥性をより向上できること、また、顔料の配向性をより向上できることから、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレートが好ましく、セルロースアセテートブチレートがより好ましい。
前記セルロースエステル(A)における有機エステル基の平均数は、グルコース単位当たりの構成グルコース4単位あたり8〜12個であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、塗料などの乾燥性をより向上することができる。上記割合は、グルコース単位あたり9〜12個であることがより好ましく、10〜12個であることがさらに好ましい。
前記セルロースエステル(A)は、水酸基含有量が0.5〜8質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、塗料などの乾燥性をより向上することができる。上記水酸基含有量は、0.8〜5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることがさらに好ましい。
前記セルロースエステル(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により得ることができる。また、市販品を用いることもできる。
前記セルロースエステル(A)のセルロースエステル水性分散体における濃度は、1〜60質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記濃度は、5〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態に係るセルロースエステル水性分散体は、アニオン性樹脂(B)を含有する。
前記アニオン性樹脂(B)は、カルボキシル基やスルホ基などのアニオン性基を含有する樹脂であれば特に限定されない。このような樹脂としては、アニオン性ポリエステル樹脂、アニオン性ポリウレタン樹脂、アニオン性アクリル樹脂などが挙げられる。これらのうち、乾燥塗膜にタックをより低減でき、製造工程もより簡便となることから、ポリエステル樹脂(B1)およびポリウレタン樹脂(B2)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
アニオン性ポリエステル樹脂(B1)としては、例えば、水酸基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とのエステル化物が挙げられる。
水酸基含有化合物としては、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリシロキサンポリオール、フッ素ポリオールなどが挙げられる。
カルボキシル基含有化合物としては、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリカルボン酸ハロゲン化物およびポリカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などが挙げられる。ポリカルボン酸無水物としては、例えば、上記ポリカルボン酸の無水物が挙げられる。ポリカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、上記ポリカルボン酸の塩化物、上記ポリカルボン酸の臭化物などが挙げられる。ポリカルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、上記ポリカルボン酸のメチルエステル、上記ポリカルボン酸のエチルエステルなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂(B1)に含まれるアニオン性基は、例えば、水酸基に対してカルボキシル基が過剰となる条件で反応させることにより、末端カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を得ることができる。
また、カルボキシル基、スルホ基およびその塩を有する化合物を用いることにより、アニオン性基を有するポリエステル樹脂を得ることができる。例えば、水酸基含有化合物としてジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ポリオールを用い、上記カルボキシル基がエステル化しない条件で反応させることにより、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を得ることができる。また、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、2−スルホテレフタル酸ナトリウムなどのスルホ基またはその塩を有するポリカルボン酸を用いることにより、スルホ基を有するポリエステル樹脂を得ることができる。
上記アニオン性基は、公知の中和剤により中和することができる。このような中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどの第3級アミン、アンモニアなどの塩基が挙げられる。
アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)としては、例えば、構成成分として、活性水素含有化合物とイソシアネート基含有化合物とを含有するものが挙げられる。なお、本明細書において、アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)の構成成分とは、アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)を得るための原料を意味する。
活性水素基含有化合物としては、例えば、モノオール、ポリオール、モノアミン、ポリアミンなどが挙げられる。
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのモノアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのオキシアルキレン基含有モノオール等が挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリシロキサンポリオール、フッ素ポリオール等が挙げられる。また、アニオン性基含有ポリオールも挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリール、ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ジブロムビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシエチルテレフタレート、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前記多価アルコールのオキシアルキレン誘導体、ポリテトラメチレングリコール、ポリチオエーテルポリオールなどが挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンビスフェノールA、ポリオキシプロピレンビスフェノールA、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンビスフェノールA、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールおよびポリエーテルポリオールなどの水酸基含有化合物と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸エステルなどのカルボン酸誘導体とのエステル化物が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンオール、ネオペンチルグリコ−ルおよび1,4−シクロへキサンジメタノールから選択される少なくとも1種のジオールと、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸およびテレフタル酸から選択される少なくとも1種のジカルボン酸とのエステル化物、などが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては市販品も使用することができ、例えば、テスラック2450、テスラック2455、テスラック2459、テスラック2460、テスラック2461、テスラック2462、テスラック2464、テスラック2469、テスラック2471、テスラック2477、テスラック2490、テスラック2503−63、テスラック2505−63、テスラック2506−63、テスラック2508−70、テスラック5001−40T、テスラックTA22−325B(いずれも日立化成株式会社の商品名)、ニッポラン136、ニッポラン141、ニッポラン152、ニッポラン163、ニッポラン164、ニッポラン1004、ニッポラン3027、ニッポラン4002、ニッポラン4009、ニッポラン4010、ニッポラン4040、ニッポラン4042、ニッポラン4073、ニッポラン5018、ニッポラン5035(いずれも東ソー株式会社の商品名)などが挙げられる。また、ポリエステルポリオールとしては、ヒマシ油ポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなども用いることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジメチルカーボネートなどのカーボネート誘導体と前記多価アルコールからなるものが挙げられる。具体的には、ジメチルカーボネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオールから選択される少なくとも1種とを構成成分とするポリカーボネートポリオールが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては市販品も使用することができ、例えば、BeNeBiOL NLDBシリーズ、BeNeBiOL Bシリーズ、BeNeBiOL NLBシリーズ、BeNeBiOL HSBシリーズ、BeNeBiOL HSシリーズ(いずれも三菱化学株式会社の商品名)、クラレポリオールCシリーズ(株式会社クラレの商品名)、ETERNACOLL UHシリーズ、ETERNACOLL UHCシリーズ、ETERNACOLL UCシリーズ、ETERNACOLL UMシリーズ(いずれも宇部興産株式会社の商品名)などが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールやこれらの水素添加物などがあげられる。
これらのうち、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。また、これらのポリオールの数平均分子量は、500〜5,000であることが好ましい。なお、これらは一種または二種以上を使用することができる。
また、アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)の水分散性を高めるために、アニオン性基含有ポリオールを用いることが好ましい。アニオン性基含有ポリオールとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。
モノアミンとしては、例えば、タウリンなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ピペラジン、ジフェニルメタンジアミン、エチルトリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネートおよび1,4−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートおよびα,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートおよび3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートおよび1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。また、上記ポリイソシアネートの多量変性体(ビウレット体、カルボジイミド体、イソシアヌレート体など)も使用することができる。
アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)は、構成成分として、さらに、オキシム化合物などを含有することができる。
前記アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)は、公知の製法によって得ることができる。このような製法としては、例えば、モノオール、ポリオールなどの水酸基含有成分と、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのイソシアネート基含有成分とを反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとし、必要によりアンモニアや第3級アミン(トリエチルアミンなど)を用いてアニオン性基を中和し、これを水中に分散するとともに、水およびポリアミンと鎖伸長反応を行う方法、モノオール、多価アルコールなどの水酸基含有成分と、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのイソシアネート基含有成分とを反応させて水酸基末端ウレタンプレポリマーとし、必要によりアンモニアや第3級アミン(トリエチルアミンなど)を用いてアニオン性基を中和し、これを水中に分散する方法などが挙げられる。
前記アニオン性ポリウレタン樹脂(B2)は、カルボキシル基含量が0.1〜1.0mmol/gであることが好ましい。上記範囲内であることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性および塗装性がより優れたものとなる。なお、上記カルボキシル基含量は、アンモニアや第3級アミンにより中和されているカルボキシル基の含量も含むものである。
本発明のアニオン性ポリウレタン樹脂(B2)は、市販品を用いることもでき、例えば、スーパーフレックス126、スーパーフレックス130、スーパーフレックス150、スーパーフレックス150HS、スーパーフレックス170、スーパーフレックス210、スーパーフレックス300、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス470、スーパーフレックス740、スーパーフレックス800、スーパーフレックス820、スーパーフレックス830HS、スーパーフレックス860、スーパーフレックス870(いずれも第一工業製薬株式会社の商品名)などが挙げられる。
前記アニオン性樹脂(B)のセルロースエステル水性分散体における濃度は、0.1〜50質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性および塗装性がより優れたものとなる。上記濃度は、0.3〜40質量%であることがより好ましく、0.5〜30質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態に係るセルロースエステル水性分散体は、アニオン変性セルロースナノファイバー(C)を含有することが好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)は、最大繊維径が1000nm以下であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記最大繊維径は、500nm以下であることがより好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)は、数平均繊維径が1〜500nmであることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記数平均繊維径は、2〜150nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、3〜80nmであることが特に好ましい。
上記セルロース繊維の最大繊維径および数平均繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1重量%の微細セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)は、アスペクト比が50以上であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記アスペクト比が100以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。
上記セルロース繊維のアスペクト比は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、セルロース繊維を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、セルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を算出し、これらの値を用いて、下記の式(1)に従い、アスペクト比を算出することができる。
アスペクト比=数平均繊維長(nm)/数平均繊維径(nm) ・・・(1)
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)は、構成するセルロースがI型結晶構造を有することが好ましい。I型結晶構造を有することにより、分散性がより優れたものとなる。ここで、上記セルロース繊維(A)を構成するセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)は、セルロース上の水酸基がアニオン性基に置換されていることが好ましい。このようなアニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシメチル基などのカルボキシル基を含む置換基またはその塩が挙げられる。セルロース上の水酸基がアニオン性基に置換されていることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。また、前記アニオン性基は、セルロースエステル(A)の分散性がさらに優れることから、無機アルカリ金属または有機アミンと塩を形成していることが好ましく、無機アルカリ金属との塩がより好ましく、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属との塩がさらに好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)としては、例えば、酸化セルロース(C1)、カルボキシメチル化セルロース(C2)、多価カルボキシメチルセルロース、長鎖カルボキシセルロースおよびこれらの無機塩などが挙げられる。これらのうち、分散性および塗装性がより優れることから、酸化セルロース(C1)、カルボキシメチル化セルロース(C2)およびこれらの無機塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、乾燥塗膜のタック性をより抑制することができることから、酸化セルロース(C1)およびその無機塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。乾燥塗膜のタック性をより抑制できる理由は定かではないが、乾燥した酸化セルロースが水に溶解しにくいことによるものと想定される。さらに、セルロースエステル水性分散体の分散性がさらに優れることから、酸化セルロース(C1)の無機塩であることが好ましい。なお、上記無機塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
前記酸化セルロース(C1)は、アニオン性基を0.1〜3.0mmol/g含有することが好ましい。アニオン性基の含有量が上記範囲内であることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記アニオン性基の含有量は、0.6〜2.5mmol/gであることがより好ましく、1.0〜2.2mmol/gであることがさらに好ましい。
前記酸化セルロース(C1)は、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含有量が0.3mmol/g以下であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記含有量は、0.1mmol以下であることが好ましい。
なお、セミカルバジド法によるアルデヒド基とケトン基との合計含量の測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、乾燥させた試料に、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうする。ついで、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(3)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めることができる。
カルボニル基量(mmol/g)=(D−B)×f×〔0.125/w〕 ・・・(3)
D:サンプルの滴定量(ml)
B:空試験の滴定量(ml)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
w:試料量(g)
また、前記酸化セルロース(C1)は、フェーリング試薬によってアルデヒド基が検出されないことが好ましい。アルデヒド基の含有量がフェーリング試薬によって検出されないほど少ないことにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。なお、フェーリング試薬によるアルデヒド基の検出方法は、例えば、乾燥させた試料に、フェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液と、硫酸銅五水和物水溶液)を加えた後、80℃で1時間加熱したとき、上澄みが青色、セルロース部分が紺色を呈するものは、アルデヒド基は検出されなかったと判断することができ、上澄みが黄色、セルロース部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基は検出されたと判断することができる。
前記酸化セルロース(C1)は、例えば、構成するグルコースユニット上の水酸基を酸化したものが挙げられ、特に、グルコースユニット上の6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることが好ましい。なお、酸化セルロース(C1)がグルコースユニット上の6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることは、例えば、13C−NMRチャートにより確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりにカルボキシル基等に由来するピーク(178ppmのピークはカルボキシル基に由来するピーク)が現れる。このようにして、グルコース単位のC6位水酸基が選択的にカルボキシル基等に酸化されていることを確認することができる。
前記酸化セルロース(C1)は、例えば、(1)酸化反応工程、(2)還元工程、(3)精製工程、(4)分散工程(微細化処理工程)等により製造することができ、具体的には以下の各工程により製造することが好ましい。
(1)酸化反応工程
天然セルロースとN−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
前記天然セルロースは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等をあげることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。前記天然セルロースは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、前記天然セルロースとして、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
前記反応における天然セルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロース濃度は、試薬(天然セルロース)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
また、前記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。前記N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミド−TEMPOが好ましい。前記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
前記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、前記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。前記臭化アルカリ金属の添加量は、前記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
前記反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長くとも240分以内に完了する。
(2)還元工程
前記酸化セルロースは、前記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の微細酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。本発明に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH、NaBHCN、NaBH等があげられる。なかでも、コストや利用可能性の点から、NaBHが好ましい。
還元剤の量は、微細酸化セルロースを基準として、0.1〜4質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜3質量%の範囲である。反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行う。
前記の反応終了後、各種の酸により反応混合物のpHを約2に調整し、精製水をふりかけながら遠心分離機で固液分離を行い、ケーキ状の微細酸化セルロースを得る。固液分離は濾液の電気伝導度が5mS/m以下となるまで行う。
(3)精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99質量%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。
前記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。このようにして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース)濃度としておよそ10質量%〜50質量%の範囲にある。この後の分散工程を考慮すると、50質量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。
(4)分散工程(微細化処理工程)
前記精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、分散媒体中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロースナノファイバーの分散体を得ることができる。その後、必要に応じて前記セルロースナノファイバーを乾燥してもよく、上記セルロースナノファイバーの分散体の乾燥法としては、例えば、分散媒体が水である場合は、スプレードライ、凍結乾燥法、真空乾燥法等が用いられ、分散媒体が水と有機溶媒の混合溶液である場合は、ドラムドライヤーによる乾燥法、スプレードライヤーによる噴霧乾燥法等が用いられる。なお、前記セルロースナノファイバーの分散体を乾燥することなく、分散体の状態で用いても差し支えない。
前記分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となり、経済的に有利に含水潤滑剤組成物を得ることができる点で好ましい。なお、前記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機等を用いても差し支えない。また、2種類以上の分散機を組み合わせて用いても差し支えない。
前記カルボキシメチル化セルロース(C2)としては、例えば、構成するグルコースユニット上の水酸基を、カルボキシメチル化したものが挙げられる。具体的には以下の各工程により製造することが好ましい。
前記カルボキシメチル化セルロース(C2)の製造方法としては、例えば、前記セルロース原料を用いて以下の方法によって製造することができる。すなわち、セルロースを原料とし、溶媒に質量で3〜20倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。マーセル化剤としては、セルロースのグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。セルロースと溶媒、マーセル化剤を混合してマーセル化処理を行う。このときの反応温度は0〜70℃、好ましくは10〜60℃であり、反応時間は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10倍モル添加してエーテル化反応を行う。このときの反応温度は30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化剤としては、モノクロロ酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記カルボキシメチル化セルロースを高圧ホモジナイザー等によって解繊処理することでセルロースナノファイバーを得ることができる。高圧ホモジナイザーとは、ポンプによって流体に加圧し、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させる装置である。粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化・分散・解繊・粉砕・超微細化を行うことができる。
本発明のホモジナイザーによる処理条件としては、特に限定されるものではないが、圧力条件としては、30MPa以上、好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、カルボキシメチル化セルロースに予備処理を施すことも可能である。
本発明において、カルボキシメチル化セルロース(C2)のグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02以上0.50以下であることが好ましい。セルロースにカルボキシメチル置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カルボキシメチル置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換基が0.02〜0.50であることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)のセルロースエステル水性分散体における濃度は、0.01〜2質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記濃度は、0.05〜1質量%であることがより好ましく、0.1〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
前記アニオン性樹脂(B)の含有量は、前記セルロースエステル(A)100質量部に対して、1〜5000質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性および塗装性がより優れたものとなる。上記含有量は、セルロースエステル(A)100質量部に対して5〜3000質量部であることがより好ましく、10〜1000質量部であることがさらに好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)の含有量は、前記セルロースエステル(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記含有量は、セルロースエステル(A)100質量部に対して0.5〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)の含有量は、前記アニオン性樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の塗装性がより優れたものとなる。上記含有量は、アニオン性樹脂(B)100質量部に対して0.5〜40質量部であることがより好ましく、1〜25質量部であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースエステル水性分散体は、溶媒として水を含有するものであるが、さらに有機溶媒を含有していてもよい。このような有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶媒、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチル、クロロホルムなどが挙げられる。セルロースエステル水性分散体における有機溶媒の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。なお、上記有機溶媒は、セルロースエステル水性分散体の製造時に使用した溶媒が残存したものであってもよく、セルロースエステル水性分散体の製造後、別途混合したものであってもよい。
本発明のセルロースエステル水性分散体は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤を含有してもよい、このような添加剤としては、例えば、防腐剤、酸化防止剤などが挙げられる。
本発明のセルロースエステル水性分散体の製造方法としては、例えば、セルロースエステル(A)とアニオン性樹脂(B)、必要によりアニオン変性セルロースナノファイバー(C)を、水を含む溶媒中で乳化し、必要により有機溶媒を留去する方法が挙げられる。具体的には、例えば、セルロースエステル(A)を含む有機溶媒溶液とアニオン性樹脂(B)を含む有機溶媒溶液、必要によりアニオン変性セルロースナノファイバー(C)を含む溶液とを混合した後、水を加えて乳化し、さらに有機溶媒の少なくとも一部を減圧下で留去する方法、セルロースエステル(A)を含む有機溶媒溶液とアニオン性樹脂(B)の水分散体、必要によりアニオン変性セルロースナノファイバー(B)を含む溶液とを混合することにより乳化し、有機溶媒の少なくとも一部を減圧下で留去する方法、などが挙げられる。なお、上記混合工程や乳化工程は、公知の方法により行うことができる。
上記製法によりセルロースエステル水性分散体を製造する場合、前記アニオン性樹脂(B)の含有量は、前記セルロースエステル(A)100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の安定性がより優れたものとなる、前記アニオン性樹脂(B)の含有量は、前記セルロースエステル(A)100質量部に対して2〜40質量部であることがより好ましく、3〜30質量部であることがさらに好ましい。
また、アニオン性樹脂(B)としてアニオン性ポリウレタン樹脂(B2)を用いた場合のセルロースエステル水性分散体の製造方法としては、セルロースエステル(A)とポリウレタン樹脂(B2)の前駆体であるウレタンプレポリマーとを水を含む溶媒中で乳化し、続いて上記ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応を行うことによりポリウレタン樹脂(B2)とし、少なくとも一部の有機溶媒を留去する方法が挙げられる。具体的には、例えば、セルロースエステル(A)を含む有機溶媒溶液とイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む有機溶媒溶液とを混合した後、水を加えて乳化し、必要により前記ポリアミンを用いて鎖伸長反応を行い、有機溶媒の少なくとも一部を減圧下で留去する方法などが挙げられる。なお、上記混合工程や乳化工程は、公知の方法により行うことができる。また、さらにアニオン変性セルロースナノファイバー(C)を用いる場合は、上記工程のいずれかの段階で混合すればよく、製造工程がより簡便になることから、有機溶媒を留去する前に混合することが好ましい。
上記製法によりセルロースエステル水性分散体を製造する場合、前記アニオン性樹脂(B)の含有量は、前記セルロースエステル(A)100質量部に対して200〜5000質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の安定性がより優れたものとなる、前記アニオン性樹脂(B)の含有量は、前記セルロースエステル(A)100質量部に対して250〜4000質量部であることがより好ましく、300〜3000質量部であることがさらに好ましい。
本発明のコーティング組成物は、上記セルロースエステル水性分散体を含有するものである。セルロースエステル水性分散体は、コーティング組成物中におけるセルロースエステル(A)の含有量が0.1〜10質量%となるように用いることが好ましい。上記含有量は、0.5〜7質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましい。
本発明のコーティング組成物は、さらに、アニオン性樹脂(B)以外の樹脂、顔料、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、顔料分散剤などを含有することができる。
アニオン性樹脂(B)以外の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリルウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、アルミニウム、マイカ、クレー、バリタ、炭酸カルシウム、シリカ、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
次に、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した化合物は下記のとおりである。
<セルロースエステル(A)>
(a−1)セルロースアセテートブチレート(商品名:CAB−551−0.2、イーストマンケミカル社製、有機エステル基の平均数:グルコース4単位あたり11個、水酸基含量1.8質量%、ブチリル基含有率:52質量%)
(a−2)セルロースアセテートブチレート(商品名:CAB−381−0.5、イーストマンケミカル社製、有機エステル基の平均数:グルコース4単位あたり11個、水酸基含量1.3質量%、ブチリル基含有率:37質量%)
(a−3)セルロースアセテートブチレート(商品名:CAB−553−0.4 、イーストマンケミカル社製、有機エステル基の平均数:グルコース4単位あたり9個、水酸基含量4.8質量%、ブチリル基含有率:46質量%)
<アニオン性樹脂(B)>
(アニオン性ポリエステル樹脂(B1))
アニオン性ポリエステル樹脂の水分散体(b1−1):プラスコートZ−561(商品名、互応化学社製、アニオン性基:スルホン酸ナトリウム、固形分25重量%)
アニオン性ポリエステル樹脂の水分散体(b1−2):プラスコートZ−687(商品名、互応化学社製、固形分25重量%)
(アニオン性ポリウレタン樹脂(B2))
下記製造例1〜5で得られたアニオン性ポリウレタン樹脂を使用した。なお、製造例1〜5におけるポリオール(1)〜(3)は下記のとおりである。
ポリオール(1):ニッポラン4010(商品名、ポリエステルポリオール、数平均分子量:2000、日本ポリウレタン工業社製)
ポリオール(2):テスラック2477(商品名、ポリエステルポリオール、数平均分子量:1700、日立化成ポリマー社製)
ポリオール(3):ETERNACOLL UH−200(商品名、ポリカーボネートポリオール、数平均分子量:2000、宇部興産社製)
(製造例1)
ポリオール(1)720g、メチルエチルケトン800gを加えて撹拌し、均一溶液とした。ここに、トリレンジイソシアネート180gを加え75℃で1時間反応させた。その後、ジメチロールプロピオン酸60g、トリエチルアミン45gを加え、75℃で反応させてNCO含量が1.8重量%の末端イソシアネート基を有するプレポリマー溶液を得た。次いでこのプレポリマーを40℃まで冷却して、水1857gを加え、ホモミキサーで高速撹拌し、乳化した。これを加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、固形分30重量%のアニオン性ポリウレタン樹脂の水分散体(b2−1)を得た。(カルボキシル基含量:0.45mmol/g)
(製造例2)
ポリオール(1)に代えてポリオール(2)を730gとし、トリレンジイソシアネートの使用量を190gに変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、固形分30重量%のアニオン性ポリウレタン樹脂の水分散体(b2−2)を得た。(カルボキシル基含量:0.44mmol/g)
(製造例3)
ポリオール(1)に代えてポリオール(3)を720gとした以外は、製造例1と同様の操作を行い、固形分30重量%のアニオン性ポリウレタン樹脂の水分散体(b2−3)を得た。(カルボキシル基含量:0.44mmol/g)
(製造例4)
ポリオール(1)を670g、ヘキサメチレンジイソシアネートを230g、ジメチロールプロピオン酸を100g、トリエチルアミンを75gに変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、固形分30重量%のアニオン性ポリウレタン樹脂の水分散体(b2−4)を得た。(カルボキシル基含量:0.69mmol/g)
(製造例5)
ポリオール(1)を800g、ヘキサメチレンジイソシアネートを150g、ジメチロールプロピオン酸を30g、トリエチルアミン23gに変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、固形分30重量%のアニオン性ポリウレタン樹脂の水分散体(b2−5)を得た。(カルボキシル基含量:0.22mmol/g)
<アニオン変性セルロースナノファイバー(C)>
(製造例6)
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4重量%に調整した。得られた酸化セルロースに含まれるカルボキシル基量と等量の水酸化ナトリウムを加え、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理した。これを、アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度が2重量%となるように純水で希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)により8000rpmで10分間撹拌することにより、酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(c1−1)を得た。
(製造例7)
13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、針葉樹パルプ1.0gに対して6.5mmol/gとした以外は、製造例6と同様の操作を行い、酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(c1−2)を得た。
(製造例8)
13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、針葉樹パルプ1.0gに対して12.0mmol/gとした以外は、製造例6と同様の操作を行い、酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(c1−3)を得た。
(製造例9)
撹拌機に、パルプ(LBKP、日本製紙社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で106g加え、パルプ固形分濃度が15重量%になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを140g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄した。その後、カルボキシメチル化したセルロースに水を添加して固形分濃度5重量%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で5回処理することにより、カルボキシメチル化セルロースの5重量%水溶液(c2−1)を得た。
(製造例10)
水酸化ナトリウムの使用量を176gとし、モノクロロ酢酸ナトリウムの使用量を234g(有効成分換算)とした以外は、製造例9と同様の操作を行い、カルボキシメチル化セルロースの5重量%水溶液(c2−2)を得た。
(製造例11)
水酸化ナトリウムの使用量を308gとし、モノクロロ酢酸ナトリウムの使用量を410g(有効成分換算)とした以外は、製造例9と同様の操作を行い、カルボキシメチル化セルロースの5重量%水溶液(c2−3)を得た。
上記のようにして得られたアニオン変性セルロースナノファイバーについて、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<結晶構造>
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、アニオン変性セルロースナノファイバーの回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
<数平均繊維径、アスペクト比の測定>
アニオン変性セルロースナノファイバーに純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイザー(H11、三和エンジニアリング社製)を用いて圧力100MPaで1回処理した。そのときのアニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径、および繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各アニオン変性セルロースナノファイバーを親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出した。さらに、これらの値を用いてアスペクト比を前述の式(1)に従い算出した。
<酸化セルロースのカルボキシル基量の測定>
酸化セルロース0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(4)に従いカルボキシル基量を求めた。
カルボキシル基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕・・・(4)
<カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定>
カルボキシメチル化セルロースの0.6質量%スラリーに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.4とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量からカルボキシル基量を測定し、下記の式(5)に従い算出した。
カルボキシメチル置換度=(162×C)/(1−58×C)・・・(5)
(式中、Cはカルボキシル基量(mmol/g)を示す。)
<酸化セルロースのカルボニル基量の測定(セミカルバジド法)>
酸化セルロースを約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、前述の式(3)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
<酸化セルロースのアルデヒド基の検出>
酸化セルロースを0.4g精秤し、日本薬局方に従って調製したフェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液5mlと、硫酸銅五水和物水溶液5ml)を加えた後、80℃で1時間加熱した。そして、上澄みが青色、アニオン変性セルロースナノファイバー部分が紺色を呈するものはアルデヒド基が検出されなかったと判断し、「なし」と評価した。また、上澄みが黄色、アニオン変性セルロースナノファイバー部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基が検出されたと判断し、「あり」と評価した。
(実施例1)
セルロースエステル(a−1)30gとアニオン性ポリエステル樹脂の水分散体(b1−1)10gとをメチルエチルケトン80gに溶解した。この溶液をT.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら、水60gを徐々に滴下することにより乳化した。続いて、エバポレーターで溶媒(メチルエチルケトン)を留去することにより、固形分36重量%のセルロースエステル水性分散体を得た。
(実施例2)
セルロースエステル(a−1)30gとアニオン性ポリエステル樹脂の水分散体(b1−1)10gとをメチルエチルケトン80gに溶解した。この溶液をT.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら、製造例6で得られた酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(c1−1)10gと水50gとの混合物を徐々に滴下することにより乳化した。続いて、エバポレーターで溶媒(メチルエチルケトン)を留去することにより、固形分33重量%のセルロースエステル水性分散体を得た。
(実施例3〜31)
表2および表3に記載の化合物および割合とした以外は実施例2と同様の操作を行い、セルロースエステル水性分散体を得た。
(実施例32)
ポリオール(1)720g、メチルエチルケトン800gを加えて撹拌し、均一溶液とした。ここに、トリレンジイソシアネート180gを加え75℃で1時間反応させた。その後、ジメチロールプロピオン酸60g、トリエチルアミン45gを加え、75℃で反応させてNCO含量が1.8重量%の末端イソシアネート基を有するプレポリマー溶液を得た。次いでこのプレポリマー溶液とセルロースエステル(a−1)45gとを混合し、40℃まで冷却して水1857gを加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて5000rpmで撹拌し、乳化した。続いて、エバポレーターで溶媒(メチルエチルケトン)を留去することにより、固形分32重量%のセルロースエステル水性分散体を得た。(アニオン性ポリウレタン樹脂のカルボキシル基含量:0.45mmol/g)
(実施例33)
エバポレーターで溶媒(メチルエチルケトン)を留去する前に、酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(c1−1)200gを混合した以外は実施例32と同様の操作を行い、固形分29重量%のセルロースエステル水性分散体を得た。(アニオン性ポリウレタン樹脂のカルボキシル基含量:0.45mmol/g)
(比較例1)
アニオン性ポリエステル樹脂の水分散体(b1−1)に代えて、水10gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、セルロースエステル分散体を得ることができなかった。
(比較例2)
アニオン性ポリエステル樹脂の水分散体(b1−1)に代えて、アニオン性界面活性剤(商品名:ハイテノール NF−13、第一工業製薬社製)の30重量%水溶液10gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、セルロースエステル分散体を得ることができなかった。
実施例1〜33で得られたセルロースエステル水性分散体を用いて、分散性を下記の方法で評価した。結果を表4および表5に示す。
(平均粒子径)
JIS Z8825に準じて50%体積平均粒子径(μm)を測定した。
(分散性)
得られたセルロースエステル水性分散体を、20℃、40℃に静置した。1日(24時間)ごとに沈殿物または分離の有無を確認し、沈殿物または分離のいずれかが見られるまでの日数を評価結果とした。
実施例1〜33で得られたセルロースエステル水性分散体3gと、市販の水性塗料(商品名:水性塗料ビッグ10多用途用、アサヒペイント社製)100gとを混合し、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、分散性、塗装性およびタックを下記の方法で評価した。結果を表4および表5に示す。
(分散性)
コーティング組成物を20℃で静置し、1日(24時間)ごとに沈殿物または分離の有無を確認し、沈殿物または分離のいずれかが見られるまでの日数を評価結果とした。
(塗装性)
コーティング組成物をコーターで乾燥膜厚20μmとなるように塗布した。これを、50℃で3時間乾燥し、塗膜状態を下記の基準で評価した。
○:塗りムラおよびピンホールがない。
×:塗りムラまたはピンホールがある。
(タック)
上記塗装性の評価で作製した塗膜表面に水を塗布した。水を拭き取った後の塗膜表面のタック間の有無を、指触にて下記の基準で評価した。
○:タック感がない。
×:タック感がある。
本発明に係るセルロースエステル水性分散体は、セルロースエステル(A)およびアニオン性樹脂(B)を含有するものであって、前記セルロースエステル(A)が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記アニオン性樹脂(B)が、アニオン性ポリエステル樹脂およびアニオン性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であり、有機溶媒の含有量が1質量%以下である。
本発明に係るセルロースエステル水性分散体は、さらに、前記セルロースエステル(A)100質量部に対してアニオン変性セルロースナノファイバー(C)を0.1〜5質量部含有することが好ましい。

Claims (6)

  1. セルロースエステル(A)およびアニオン性樹脂(B)を含有するセルロースエステル水性分散体。
  2. 前記セルロースエステル(A)が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のセルロースエステル水性分散体。
  3. 前記アニオン性樹脂(B)が、アニオン性ポリエステル樹脂およびアニオン性ポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載のセルロースエステル水性分散体。
  4. さらにアニオン変性セルロースナノファイバー(C)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステル水性分散体。
  5. 前記アニオン変性セルロースナノファイバー(C)が、酸化セルロース(C1)である請求項4に記載のセルロースエステル水性分散体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステル水性分散体を含有するコーティング組成物。

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