JP2016056088A - バナジウムでドープしたSiC塊状単結晶の製造方法及びバナジウムでドープしたSiC基板 - Google Patents

バナジウムでドープしたSiC塊状単結晶の製造方法及びバナジウムでドープしたSiC基板 Download PDF

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Abstract

【課題】バナジウムドーピング濃度が高く、10Ωcm以上の電気比抵抗を有するSiC塊状単結晶製造方法の提供。
【解決手段】成長坩堝3に充填したバナジウム含有混合物20を含む供給源材料6からの昇華によるSiC塊状単結晶2の製造装置1において、追加の移送影響手段として多孔性材料からなる気体透過性膜18をSiC供給領域4と結晶成長領域5との間に配置して、成長境界面16における成長温度の設定と、成長境界面16への材料移送の設定とを分離し、これにより、SiC供給領域4から成長境界面16への材料移送とはほぼ無関係に成長境界面16の成長温度を従来より高い2,250℃以上に設定することを可能とし、5×1017cm−3を超えるバナジウムドーピング剤濃度でSiC塊状単結晶2が成長するようにしたSiC塊状単結晶2の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、SiC塊状単結晶の製造方法及びSiC基板に関する。
半導体材料である炭化ケイ素(SiC)は、物理的、化学的及び電気的特性が優れているので、しばしば、高周波部品のための基板材料として用いられる。ここで、重要なことは、損失を避けるために、実際の部品と基板材料との間の相互作用が、できる限り小さいことを保証することである。これは、例えば、単結晶SiC基板が可能な限り高い電気抵抗を有し、また、高い結晶品質を有することにより、達成される。高抵抗のSiC塊状単結晶又はそれから高抵抗のSiC基板を製造するためには、不純物又は固有の欠陥の結果として結晶内に存在する浅い欠陥(flat imperfection)を補償することが必要である。このようにして製造された高抵抗のSiC塊状単結晶は、また、半絶縁性であるといわれる。
特に窒素不純物により生じ、好ましくはドナー効果を有する、前記浅い欠陥を補償するための方法が特許文献1に記載されている。この方法では、最大1×1016cm−3のバナジウム濃度でのバナジウムドーピングに加えて、特に結晶成長中に内因性欠陥を生じさせる。これにより、約10Ωcmから最大で約1010Ωcmの電気比抵抗値を達成可能であるが、非常に繊細な加工が要求されるため、約10Ωcmの値しか達成されない。適切な内因性欠陥の形成は、結晶成長中の加工パラメータに大きく依存するので、非常に僅かな加工条件の変動でさえ、欠陥及びこれによる抵抗の不均一分布を招く。更に、そのような特別に導入される内因性欠陥は、それ自体、熱負荷の間に回復する可能性があり、これは、抵抗の不均一分布を、更には高抵抗特性の全損をも、生じ得る。
特許文献2は、浅い欠陥を補償するための別の方法を開示している。この方法では、外因性の深い欠陥(deep imperfection)が、SiC塊状単結晶中に特別につくられる。窒素のバックグラウンドドーピング(=窒素不純物)を補償する目的で、バナジウムが、特別に導入するドーピング剤として300〜1,000重量ppmのバナジウム含有量で使用される。この方法により、1011Ωcmの電気比抵抗値を達成可能である。
特許文献3は、1011Ωcm以下の電気比抵抗をもつ半絶縁性SiCを成長させる方法を開示する。バナジウムが、ドーピング剤として、5×1017cm−3以下のドーピング剤濃度で、SiC結晶構造中に均一に導入される。バナジウムドーピング剤は、構造的に比較的複雑な外部気体供給配管により供給される。構造的に類似した成長装置が特許文献4に開示されている。そこに開示されている方法では、バナジウムドーピングに加えて、アクセプタのように機能し且つドナー様の不純物を過補償するドーピング剤、例えばアルミニウム又はホウ素、により、追加のドーピングが実施される。このようにして成長させた半絶縁性SiC塊状単結晶の抵抗値は、1012Ωcm以下となる。
特許文献5は、バナジウムドーピングが実行される、半絶縁性SiCの別の成長方法を開示する。バナジウムドーピング剤の濃度は、最大で5×1017cm−3である。しかしながら、SiC種結晶に近い位置において、成長したSiC塊状単結晶から円板状SiC基板(=ウェハ)を切り出してみると、このウェハは、少なくとも1点で、8.78×1017cm−3の、より高い局所バナジウム濃度を有していた。この濃度は、固溶限界を超えていて、バナジウムの沈殿物がそこに形成されていた。従って、バナジウムは、この領域においては、有効なドーピング剤としてSiC結晶構造中に導入されていなかった。
単結晶4H−SiC又は6H−SiCに導入されるドーピング剤としてのバナジウムの固溶限界は、非特許文献1に3×1017cm−3と記載されている。
特許文献6には、10Ωcmから2×1011Ωcm(場合によっては、これよりも更に大きい)の範囲の電気比抵抗を有する半絶縁性SiCを成長させる別の方法が開示されている。ドーピング剤として、バナジウムが、2×1014cm−3から1.4×1017cm−3の範囲のドーピング剤濃度で、成長したSiC塊状単結晶に導入される。また、バナジウムドーピング剤濃度が固溶限界を下回ることも明記されている。バナジウムドーピング剤は、これも、構造的に比較的複雑なドーピング剤容器によって、供給されるが、この容器は、専用に挿入され専用に目盛をつけてあるキャピラリ開口から離して厳密に封止してある。
国際公開第02/097173号明細書 米国特許第5611955号明細書 独国特許第102008063124号明細書 独国特許第102008063129号明細書 欧州特許第1807557号明細書 欧州特許第1874985号明細書
"Deep level transient spectroscopic and Hall effect investigation of the position of vanadium acceptor level in 4H and 6H SiC", by J.R. Jenny et al, from Applied Physics Letters, 68 (14), 01.04.1996, pages 1963 to 1965
本発明の目的は、SiC塊状単結晶の製造のための既存の解決手法に比べて改善された方法及び改善された単結晶SiC基板を提供することにある。
方法に関する上記課題を解決するための方法について、請求項1に記載した特徴に従って説明する。本発明に係る方法は、少なくとも10Ωcm、好ましくは最大で1012Ωcm、である電気比抵抗を有する少なくとも1つのSiC塊状単結晶を製造する方法であって、成長坩堝の少なくとも1つの結晶成長領域においてSiC成長気相が生成され、このSiC成長気相からの析出によってSiC塊状単結晶が成長する方法であり、前記SiC成長気相が、前記成長坩堝の中のSiC供給領域に位置するSiC供給源材料から供給される。この方法において、材料は、SiC供給領域から、特に結晶成長領域に位置する成長中のSiC塊状単結晶の成長境界面へ、移送される。また、バナジウムは、成長中のSiC塊状単結晶のドーピング剤として、好ましくは気体状態で、結晶成長領域へ供給される。更に、成長中のSiC塊状単結晶の成長境界面において、成長温度は、2,250℃以上、好ましくは最高で2,500℃、好適には2,350℃から2,450℃の間、に設定され、これにより、SiC塊状単結晶が、5×1017cm−3超、好ましくは最大で1×1019cm−3のバナジウムドーピング剤濃度で、ドープされて成長する。また、SiC供給領域から成長境界面への材料移送は、成長坩堝の中の温度条件に加えて、追加の移送影響手段によって制御され、これにより、成長境界面の成長温度と成長境界面への材料移送とは、少なくとも大部分、互いに無関係に、支配することができる。
バナジウムは、単結晶SiCにおけるバナジウムの固溶限界であると以前に見なされていた約3×1017cm−3〜5×1017cm−3の濃度を上回るドーピング剤濃度で、成長中のSiC塊状単結晶へ導入可能であることが分かっている。このため、成長中のSiC塊状単結晶の成長境界において、半絶縁性SiC塊状単結晶の従来の成長方法において通常用いられていたよりも高い成長温度が設定される。この成長温度は、2,250℃以上、好ましくは2,350℃以上であり、例えば、2,400℃を超える、或いは更に2,450℃を超える値であってよい。このようにして、バナジウムは、5×1017cm−3を超える、好ましくは少なくとも6×1017cm−3、好適には少なくとも7.5×1017cm−3、最も好適には少なくとも2×1018cm−3の非常に高いドーピング剤濃度で、成長中のSiC塊状単結晶に、有益に埋め込み又は導入することができる。殊に、5×1017cm−3を超えるバナジウムドーピング剤濃度でドープされたSiC塊状単結晶は、巨視的なバナジウム沈殿物なしに成長する。巨視的なバナジウム沈殿物は、具体的には、1mmを超える横方向の幅を有するものとして定義される。好適には、バナジウムでドープしたSiC塊状単結晶は、完全に沈殿物無しで成長する。成長境界面における成長温度が高いので、単結晶SiCにおけるバナジウムの固溶限界は、好ましくは1×1019cm−3まで増加し得る。いずれの場合にも、このバナジウムドーピング剤濃度以下において、重大なバナジウム沈殿物は形成されない。沈殿物が無いことは、ドープしたバナジウムの電気的効果を最大限にすることについて、また、成長中のSiC塊状単結晶において欠陥を可能な限り少なくすることについて、有利に働く。
SiC塊状単結晶に導入されたバナジウム原子は、少なくとも広範囲に又は全体的に、特に電気的に活性であり有効である。好ましくは、バナジウム原子が浅い欠陥を補うために利用される。高濃度のバナジウムドーピング剤が結晶格子中に導入される結果、従来知られている方法に比べて、より多くの浅い欠陥が補償され、これにより、浅い欠陥が多すぎて以前は廃棄されていたSiC塊状単結晶であっても、本発明に係る成長方法の場合、所望の半絶縁性挙動を維持する。従って、不良品発生率が低下する。本発明に係る方法により成長させたSiC塊状単結晶の電気比抵抗値は高く、好ましくは1010Ωcm以上、好適には、更に1011Ωcm以上である。ここに提示した抵抗値及び後述する抵抗値は、常に環境温度での値である。
成長境界面と場合によっては成長坩堝内の他の地点とにおける高い成長温度に伴う温度条件変化の好ましくない効果を避けるために、本発明に係る方法においては、成長境界面における成長温度の設定と、成長境界面への材料移送の設定と、場合によっては追加の成長条件の設定とが、ほとんど分離される。この有利な分離は、追加の移送影響手段によって達成される。この方法により、高い成長温度にも拘わらず、高品質のSiC塊状単結晶をほとんど欠陥なく成長させることができる。
SiC塊状単結晶の成長中の成長温度とは別に、好ましくは、以下の成長条件が成長坩堝内で設定される。供給領域内の供給源温度は、好適には2,400℃から2,700℃の間、より好適には2,450℃から2,550℃までである。前記供給源温度と前記成長境界面における成長温度との間の温度差は、好適には100℃から250℃までの間、より好適には100℃から150℃までの間である。成長坩堝内の成長圧力は、1hPa(=ミリバール)から50hPa(=ミリバール)の間、より好適には5hPa(=ミリバール)から10hPa(=ミリバール)の間である。
全体として、本発明に係る成長方法により、SiC塊状単結晶が製造可能であり、この単結晶から高品質の半絶縁性SiC基板を得ることができる。SiC結晶構造に高度の精密さを備えたSiC基板は、部品製造中に実施される後続の加工工程に、ほぼ完璧な状態を提供する。本発明に従って製造されたSiC塊状単結晶は、殊に、半導体及び/又は高周波部品を製造するために、非常に効率的に更に加工される。
本発明に係る方法によれば、単一のSiC塊状単結晶だけではなく、より多数の、例えば2個、3個、4個、5個、あるいは好ましくは10個までのSiC塊状単結晶も製造することができる。2個のSiC塊状単結晶を、好ましくは中心軸線の方向に、互いに上下に又は前後に配列して、SiC供給領域の両側で中心軸線の方向に成長するように、成長させる方法が有益である。
本発明に係る方法の有利な態様が、請求項1を引用する各請求項の特徴に表わしてある。
有利な一態様において、多孔性材料からなる気体透過性膜が少なくとも1つ、SiC供給領域と結晶成長領域との間に、追加の移送影響手段として配置される。好ましくは、SiC供給源材料が前記気体透過性膜により覆われる。前記多孔性材料は、好ましくは、好適には0.8g/cm〜1.6g/cmの間の、より好適には1.2g/cmの密度を備える多孔性黒鉛である。(SiC)気体種に対する前記膜の透過率は、密度及び場合によっては多孔性膜の厚さに応じて、非常に簡単に且つ広い限度内で調節可能である。前記膜の透過率により、成長境界面への材料移送を明確に調節することができる。気体透過性膜は、成長境界面への材料移送と成長境界面の成長温度設定との非常に効果的な分離をもたらす。前記膜を適用することにより、膜を有しない成長装置に比べて、成長境界面における成長温度を、同じ成長速度で、50℃〜250℃、特に約150℃、増加させることができる。これらのことにより、成長中のSiC塊状単結晶において、より高いバナジウムドーピング剤濃度を達成することが可能である。
別の有利な態様によれば、SiC供給領域からの材料移送及び成長境界面への材料移送に対する追加の移送影響手段として、少なくとも1段階の再昇華が実施される。好ましくは、SiC供給領域に位置するSiC供給源材料は、昇華によって気体状態へ変化し、そこから、まず、SiC供給領域と成長境界面との間の規定された地点で沈殿(再昇華、凝縮)する。この固体中間段階から、材料を再び昇華させて実際の結晶成長領域へ到達させる。必要に応じて、SiC気体種が結晶成長領域へ達する前に、再昇華を複数回実施しても、即ち、昇華及び沈殿(再昇華、凝縮)を複数回相互に繰り返しても、よい。必要に応じたこのような多重の再昇華は、成長境界面への材料移送と成長境界面における成長温度の設定との非常に有効な分離をもたらす。
別の有利な態様によれば、粉末化された、好ましくは、0.8g/cm〜3.2g/cmの範囲内の相対密度を有する顆粒状のSiC材料が、SiC供給領域へ導入されるSiC供給原材料に対する追加の移送影響手段として、使用される。SiC供給源材料の密度を変化させることにより、昇華温度を変えることができる。SiC供給源材料の密度が高いほど−従って、殊にSiC供給源材料の自由表面が小さいほど−昇華温度は高くなる。高密度のSiC供給源材料を使用することにより、好適には、SiC供給源材料が在る供給領域から種結晶及び(SiC塊状単結晶が成長する)成長境界面が在る結晶成長領域までを含む成長装置全体の温度を、成長速度を変えることなく上昇させることができる。
別の有利な態様によれば、成長中のSiC塊状単結晶にドーピング剤として導入されるバナジウムは、実際にSiC塊状単結晶を成長させる前に、SiC供給源材料に添加するか、又は、SiC供給源材料の中に載置される開放ドーピング剤容器に導入することができる。両方とも比較的簡単な手段であり、少しの工夫で適用できるにも拘わらず、成長中のSiC塊状単結晶に対する、特に、非常に高度のそして好適には均質な、バナジウムのドーピングを可能にする。
別の有利な態様によれば、成長中のSiC塊状単結晶の追加のドーピング剤として、窒素が結晶成長領域に添加される。窒素の特殊な外部供給が、変態(modification)を安定させ、成長中のSiC塊状単結晶の結晶品質を向上させるために、使用される。成長中のSiC塊状単結晶にある量の窒素があると、そうでなければ結晶成長中に起こるであろうポリタイプ(結晶多形)交換を抑制する。SiC塊状単結晶の窒素ドーピング濃度は、好適には少なくとも5×1016cm−3、最適には少なくとも1×1017cm−3、好適には最大で5×1018cm−3であり、最も好ましくは1×1018cm−3である。窒素ドーピング剤濃度は、バナジウムドーピング剤濃度を少なくとも25%下回るのが有利であり、これにより、特に、窒素ドーピングの高信頼性で完全な電気的補償及び、その結果としての、所望の半絶縁性挙動を得る。成長坩堝の外で特別に制御されたやり方、例えば気体状態、で、窒素を添加することにより、窒素とバナジウムとの比率を調節することができ、存在し得る窒素不純物に対処することができる。このようにして、変態安定性(modification stability)に重要な高窒素濃度を、同時に半絶縁特性(補償)を伴いながら、設定することが可能である。
別の有利な態様によれば、2個のSiC塊状単結晶が製造される。成長坩堝は、2つの分離された結晶成長領域を備え、これらの結晶成長領域の間にSiC供給領域が配置されていて、このSiC供給領域は、2つの結晶成長領域のそれぞれに関して多孔性材料からなる気体透過性膜で覆ってある。これは、この方法により、同時に2以上のSiC塊状単結晶を成長させることができるので、特に有効である。
前記SiC基板に関する課題を解決するために、SiC基板が、請求項8の特徴に従って提供される。本発明による単結晶SiC基板は、少なくとも10Ωcmから好ましくは最大1012Ωcmまでの電気比抵抗を有するものであり、このSiC基板は、ドーピング剤としてのバナジウムでドープされ、完成したSiC基板で測定されるバナジウムドーピング剤濃度の全体平均値は、5×1017cm−3を超え、好ましくは最大1×1019cm−3であり、SiC基板の如何なる1mm体積部分においてもそこで測定されたバナジウムドーピング剤濃度の局所最大値は、前記バナジウムドーピング剤濃度の全体平均値よりも50%を超えて上回らない。
本発明に係るSiC基板は半絶縁性であり、従って、好ましくは1010Ωcm以上、好適には更に上の1011Ωcm以上の高い電気抵抗を有する。高い電気抵抗は、特に、5×1017cm−3を超える非常に高い全体平均バナジウムドーピング剤濃度により測定される。有利なことに、高い全体平均バナジウムドーピング剤濃度にも拘わらず、このSiC基板には、巨視的なバナジウム沈殿物がない。巨視的な沈殿物は、最大いずれかの方向に1mmを超えて延びている沈殿として、定義される。本発明のSiC基板は、全体として、バナジウム沈殿物を(大部分)欠いている。本発明に係る方法と関連して上述したとおり、沈殿物の欠如は、ドープしたバナジウムの最大限の電気的有効性を達成することに関して、また、SiC基板において可能な限り欠陥を少なくすることに関して、有益である。本発明のSiC基板は、非常に良好な結晶品質も有する。
他の点では、本発明に係る上記SiC基板及びその好適な変形は、本質的に、本発明に係る製造方法及びその好適な変形に関連して記述したとおりの同じ利点をもつ。
本発明に係るSiC基板の有利な態様について、請求項8を引用する各請求項の特徴に表してある。
有利な態様において、バナジウムドーピング剤濃度の全体平均値が少なくとも6×1017cm−3、特に少なくとも7.5×1017cm−3、好適には、少なくとも2×1018cm−3である。このようなバナジウムドーピング剤濃度において、浅い欠陥の更に多くが電気的に補償される。
別の有利な態様によれば、SiC結晶構造は、単一のSiCポリタイプのみ、特にSiCポリタイプ4H、6H、3C及び15Rのうちの1つ、を備える。好適には、特にポリタイプ変化が広範囲に存在しないことによって特徴付けられる高い変態安定性が存在する。SiC基板が単一のSiCポリタイプのみを備えていれば、SiC基板には、欠陥がほとんど無いという利点もある。これにより、格段に高品質のSiC基板が得られる。
別の有利な態様によれば、SiC基板の主基板表面は、少なくとも7.62cm、特には最大で20cmの基板直径を有する。基板直径が大きくなればなるほど、その単結晶SiC基板を、例えば半導体及び/又は高周波部品の生産に、より効率的に使用することができる。従って、部品製造費が削減される。このような大きな直径を有するSiC基板は、例えば約1cmの底面積をもつ、比較的大規模の半導体及び/又は高周波部品の生産への使用にも有利である。
別の有利な態様によれば、SiC基板は、主基板表面と主基板表面全体に対して最大で10cm−2、特に最大で1cm−2の平均マイクロパイプ密度とを有する。これにより、半導体及び/又は高周波部品の生産に最適な、欠陥の非常に少ないSiC基板が提供される。
別の有利な態様によれば、追加のドーピング剤として窒素が添加され、特に、この窒素ドーピング剤のSiC基板全体における平均濃度は、少なくとも5×1016cm−3、好適には少なくとも1×1017cm−3、特に、最大で5×1018cm−3、好適には最大で1×1018cm−3である。この量での窒素ドーピングは、特に、変態安定性を向上させ、SiC基板が、本質的に、単一のポリタイプのみを備え、結果として欠陥がほとんど無いということを意味する。結晶品質は非常に高い。
本発明のその他の特徴、利点及び詳細は、図面を参照して説明する以下の実施形態により明らかにされる。
半絶縁性SiC塊状単結晶の昇華成長中における、バナジウム含有混合物を含有する被覆されたSiC供給源材料を備えた、成長装置の実施形態を示す。 半絶縁性SiC塊状単結晶の昇華成長中における、バナジウム充填供給容器を備えた、成長装置の実施形態を示す。 半絶縁性SiC塊状単結晶の昇華成長中における、1つの再昇華工程を備えた成長装置の実施形態を示す。 半絶縁性SiC塊状単結晶の昇華成長中における、2つの再昇華工程を備えた成長装置の実施形態を示す。 半絶縁性SiC塊状単結晶の昇華成長中における、高密度SiC供給源材料を備えた成長装置の実施形態を示す。 2つの半絶縁性SiC塊状単結晶の昇華成長中における、二側面が覆われバナジウム含有混合物を含有するSiC供給源材料を備えた成長装置の実施形態を示す。
図1〜図6において、対応する部分には同じ参照番号を付してある。以下に更に詳しく説明する実施形態の細部は、それ自体、本発明を表すか、又は、本発明の主題の一部をなす。
図1は、昇華成長によってSiC塊状単結晶2を製造するための成長装置1の実施形態を示す。成長装置1は、SiC供給領域4及び結晶成長領域5を備えた成長坩堝3を内包している。SiC供給領域4には、例えば粉末化されたSiC供給源材料6があり、このSiC供給源材料6は、成長プロセスの開始に先立って予め組み込んだ出発材料として、成長坩堝3のSiC供給領域4に添加される。
成長坩堝3においてSiC供給領域4とは反対側の端部壁7の領域には、SiC種結晶8が、結晶成長領域5内に軸方向へ延びていくように取り付けられる。SiC種結晶8は、具体的には単結晶である。坩堝端部壁7は、図示の例では、成長坩堝3の蓋として設計されている。但し、このことは必須事項ではない。SiC種結晶8の上に、結晶成長領域5内に生成されるSiC成長気相9からの析出によってSiC塊状単結晶2が成長する。成長中のSiC塊状単結晶2とSiC種結晶8とは、おおよそ同じ直径をもつ。最大で10%の差があり得るが、仮にこの差があるとすれば、SiC種結晶8の種直径の方がSiC塊状単結晶2の単結晶直径よりも小さい。図1には示されていないが、坩堝側壁13の内側と、成長中のSiC塊状単結晶2及びSiC種結晶8と、の間にはギャップが存在し得る。
坩堝蓋7を含めた成長坩堝3は、図1の実施形態の場合、例えば1.75g/cm以上の密度を有する、電導性であり熱伝導性である黒鉛坩堝材料から形成される。黒鉛坩堝材料の周囲には、断熱層10がある。断熱層は、例えば泡状黒鉛絶縁材料からなり、この泡状黒鉛絶縁材料の空隙率は、特に、黒鉛坩堝材料の空隙率よりもはるかに高い。
断熱された成長坩堝3は、筒状コンテナ11の中に載置される。このコンテナ11は、本実施形態の場合、石英ガラスの筒として形成され、圧力容器ないし反応容器を構成する。成長坩堝3を加熱するために、誘導加熱装置が、コンテナ11の周りに加熱コイル12の形態で配置される。成長坩堝3は、加熱コイル12によって、成長に必要な温度まで加熱される。本実施形態では、この成長温度は、2,250℃以上である。加熱コイル12は、成長坩堝3の導電性坩堝側壁13に電流を誘導結合する。この電流が、基本的に、円形中空の筒形坩堝側壁13の内部を、円周方向に回路電流として流れることにより、成長坩堝3が加熱される。必要に応じて、加熱コイル12と成長坩堝3との相対的位置を軸方向、即ち、成長中のSiC塊状単結晶2の中心軸線14の方向、で変えることができ、これによって、成長坩堝3内の温度又は温度曲線を調節し、場合によってはそれを変更することができる。成長プロセスにおいて、加熱コイル12の位置を軸方向に変更可能であることが、図1中に双方向矢印15で示されている。好ましくは、加熱コイル12は、成長中のSiC塊状単結晶2の成長ステージに応じて移動させ、調節される。この移動は、好ましくは下方へ、即ち、SiC供給源材料6の方向へ、そして好ましくは、SiC塊状単結晶2の成長と同じ距離、例えば合計で約20mmである。このために、成長装置1は、適切に設計された制御、規制及び調節手段(詳細は図示していない)を備える。
結晶成長領域5のSiC成長気相9は、SiC供給源材料6により供給される。SiC成長気相9は、少なくとも、Si、SiC、SiC(=SiC気体種)の形態の気体成分を含有する。SiC供給源材料6から成長中のSiC塊状単結晶2の成長境界面16への材料移送は、一方では、軸方向温度勾配に従って、実行される。成長境界面16は、2,250℃以上、特に、更に上の少2,350℃以上又は2,400℃の比較的高い成長温度にある。また、特に、中心軸線14の方向に測定される軸方向温度勾配は、成長境界面16で、5K/cm以上、好ましくは15K/cm以上に設定される。成長坩堝3の中の温度は、成長中のSiC塊状単結晶2へ向かって低下する。最も高い温度は、SiC供給領域4の区域における約2,450℃〜2,550℃である。SiC供給領域4から成長境界面16までの間で、特に100℃〜150℃の温度差を有するこの温度曲線は、各種の手段によって達成可能である。例えば、図示していないやり方で加熱コイル12を2又はそれ以上の軸方向区分に分割することにより、軸方向の加熱を変化させることができる。また、成長坩堝3の下方部分において、例えば加熱コイル12を軸方向に適切に配置することによって、成長坩堝3の上方部分におけるよりも強い加熱作用を達成することができる。更には、軸方向における2つの坩堝端面について、異なる断熱設計を適用することができる。図1に概略的に示してあるとおり、坩堝下部端部壁の断熱層10は、坩堝上部端部壁と比べてかなり厚い。坩堝上部端部壁7に隣接した断熱層10は、中心軸線14に沿って配置した、それを通して熱を除去する、中央冷却孔17を有していてもよい。この中央冷却孔17は、図1中に破線で示してある。
材料移送は、追加の移送影響手段による軸方向温度勾配によっても、影響を受ける。図1に示す実施形態の場合、追加の移送影響手段は、SiC供給源材料6を被覆する、多孔性材料からなる気体透過性膜18である。図1に係る実施形態の場合、気体透過性膜18は、約1.2g/cmの密度を有する多孔性黒鉛の形態をしている。また、気体透過性膜18は、中心軸線14の方向に測定して4mmの軸方向厚さを有している。或いは、気体透過性膜18は、約1.4g/cmの相対密度及び2mmの軸方向厚さをもつものでもよい。
この場合、図1に示す実施形態の気体透過性膜18は、SiC供給領域4に位置したSiC供給源材料6の上に直接置かれている。図示はしないが、別の実施形態として、気体透過性膜18は、SiC供給領域4と結晶成長領域5との間の中心軸線14の方向に沿って見た任意の(他の)位置に配置してもよい。
実際の結晶成長中の成長坩堝3の中では、特に、5hPa(=ミリバール)から10hPa(=ミリバール)の成長圧力が存在する。
SiC塊状単結晶2は、図1に示す実施形態において頂部から底部へ、即ち、坩堝蓋7からSiC供給領域4へ、向かう成長方向19に成長する。成長方向19は、中心軸線14と平行に延びる。本実施形態において成長中のSiC塊状単結晶2は成長装置1内に同軸配置されるので、中心軸線14は、成長装置1の全体に割り当てられる。
SiC成長気相9は、少なくとも1つの特別に添加された第1ドーピング剤、本例ではバナジウム(V)、を含有する。SiC成長気相9で利用可能なバナジウムは、図1の実施形態では、SiC供給源材料6に含まれているバナジウム含有混合物20から生じる。このバナジウム含有混合物20は、実際の成長に先立って、例えば元素バナジウム又はバナジウム化合物の形態で、SiC供給源材料6に添加又は混合されたものである。これに使用される粉末化されたSiC供給源材料6は、従って、前処理される。
バナジウムは、SiCバンドギャップに深い欠陥を生成し、従って、ドープされた(即ち、SiC結晶格子に埋め込まれ又は導入されて適切に活性化された)バナジウムは、不純物や内因性欠陥により生じる浅い欠陥を補償する。また、不純物として実質的に避けられない窒素は、SiCにおいて浅い欠陥として作用し、特に、伝導範囲へドープされたバナジウムによる補償が無ければ、原則として、成長中のSiC塊状単結晶2の電気抵抗を減少させることとなる。
成長境界面16における高い成長温度のお陰で、大量のバナジウムが成長中のSiC塊状単結晶2へ導入される。成長中のSiC塊状単結晶2は、バナジウムで高ドープされ、5×1017cm−3を超える、本実施形態では2×1018cm−3のバナジウム濃度を有する。成長したSiC塊状単結晶2の他の例では、バナジウム濃度は、特に、6×1017cm−3〜4×1018cm−3の範囲である。導入されたバナジウムは、SiC塊状単結晶2の結晶格子中において実質的に無沈殿の状態で利用可能であり、多量の導入量で電気的に有効である。
従って、窒素等によって生成される浅い欠陥が良好に補償され、成長中のSiC塊状単結晶2は、10Ωcm以上の比較的高い電気比抵抗を有し、半絶縁挙動を示す。本実施形態において、この抵抗は、1×1011Ωcmである。成長したSiC塊状単結晶2の他の例でも、特に、5×1010Ωcm〜3×1011Ωcmの範囲の電気比抵抗を示す。なお、SiCは、6H−ポリタイプである。基本的には、例えば、4H−SiC、3C−SiC、15R−SiCなどの他のポリタイプ(異なる結晶変態)も可能である。有利には、塊状単結晶2は、単一のSiCポリタイプを有し、本実施形態では6H−SiCである。SiC塊状単結晶2は、高い変態安定性をもって成長し、本質的に単一のポリタイプを有する。
この有利な変態安定性は、特定の窒素ドーピングによって達成される。前記不純物に起因して、SiC塊状単結晶2には、特定量の窒素が既に含まれている。必要に応じて、SiC成長気相9における窒素の必要量を補うために、そして、特に、成長坩堝3の外から制御可能とするべく、追加の気体窒素を、図1には示していない供給配管を通し、第2のドーピング剤として結晶成長領域5へ供給してもよい。成長中のSiC塊状単結晶2の窒素ドーピング剤濃度は、約5×1016cm−3又は約5×1017cm−3であり、この値は比較的高く、SiC塊状単結晶2の半絶縁挙動に対抗する。非沈殿導入バナジウムの濃度も相当高いので、この高窒素濃度であっても補償される。前述した高い電気比抵抗及び結晶構造の両方が、実質的に単一の変態によって示される。これは、ほとんど欠陥の無い高結晶品質に関する利点である。
ポリタイプ交換があると結晶品質は劣化する。各種のSiCポリタイプは、それぞれの結晶構造において異なっている。異なるポリタイプ間の交換は、結晶成長中に容易に起こり、結晶品質を劣化させるマイクロパイプ、置換、異質変態の埋め込みなどの、様々な結晶欠陥の原因になる。十分に多量の窒素をSiC成長気相9に添加することにより、結晶成長中の単一ポリタイプの生成が安定化し、それにより、ポリタイプ交換による欠陥の形成を最少化できる。このようにして、SiC塊状単結晶2は、高品質且つ高歩留りで製造される。
半絶縁挙動を示し高結晶品質を有するSiC塊状単結晶2を得るために重要な点は、非常に高い濃度のバナジウムドーピング剤を、可能な限り沈殿無しで、結晶格子へ埋め込むことである。成長境界面16において5×1017cm−3を超えるバナジウムドーピング剤濃度を沈殿無しで得るために、前述の高成長温度は、2,250℃以上に設定される。成長中のSiC結晶中のバナジウム固溶限界は、高い成長温度によって、5×1017cm−3を超える濃度に上昇することが分かっており、従って、この値を超える濃度のバナジウムを本質的に沈殿無しで、成長中のSiC結晶格子中へ埋め込むことができる。
SiC結晶成長に用いられる昇華法(=PVT法)の場合、材料移送を含めた成長条件は、成長坩堝3の中の温度によって調節され、制御される。即ち、成長境界面16の成長温度変化は、その他の成長条件、特にSiC供給領域4から成長境界面16への材料移送に影響する。
適切な追加手段を使わずに、成長温度の増加だけでも、その他の成長条件の変化を促すことはできる。特に、高い成長速度及びこれによる欠陥形成の増加は、成長中のSiC塊状単結晶2において調節可能である。成長境界面16の高成長温度の有するこのような負の効果を避けるには、第1の気体透過性膜18を備えた成長装置1が適切な解決手段になる。第1の気体透過性膜18により、SiC供給領域4から結晶成長領域5に位置する成長境界面16への材料移送が調節される。特に、材料移送は、成長境界面16の高い成長温度にも拘わらず、その結果生じる成長速度が高くなりすぎないように、第1の気体透過性膜18により制御される。成長中のSiC塊状単結晶2への材料移送は、特に、第1の気体透過性膜18の透過率によって調節される。
概して、この移送影響手段により、成長境界面16の成長温度を、成長境界面16への材料移送から分離することが可能となる。成長境界面16の成長温度と成長境界面16への材料移送とは、少なくとも大部分、互いに無関係に、支配することができる。
以上のとおり、成長装置1は、高品質の半絶縁性SiC塊状単結晶2を製造するための要件を全て満足する。
図2は、別の成長装置21の実施形態を示す。この成長装置21は、第1ドーピング剤バナジウムのSiC供給領域4への導入に関してのみ、図1の成長装置1と違っている。成長装置1の場合にSiC供給源材料6へ提供されるバナジウム含有混合物20に代えて、成長装置21の場合は、開放ドーピング剤容器22がSiC供給源材料6の中に立ててある。特に、開放ドーピング剤容器22は、成長坩堝3の底に載置され、SiC供給原材料6によって囲まれている。開放ドーピング剤容器22には、バナジウム含有材料23が、例えば元素バナジウム又はバナジウム化合物の形態で、入っている。
バナジウム含有混合物20であっても、バナジウム含有材料23が充填された開放ドーピング剤容器22であっても、成長中のSiC塊状単結晶2へのバナジウム均一導入が達成される。バナジウムの導入は、成長境界面16における成長温度によっても、成長境界面16への材料移送の間の気相の均質化によっても、制御される。バナジウム含有混合物20のSiC供給源材料6への添加及びバナジウムが充填された開放ドーピング剤容器22のSiC供給源材料6内配置のいずれも、ドーピング剤の流れ乃至導入を制御するための比較的簡単な手段ないし方法である。言い換えると、成長境界面16への材料移送を成長境界面16の成長温度から分離するという前述の利点のお陰で、そうでなければ必要な、ドーピング剤の流れを制御する非常に複雑な方法、例えば、バナジウム供給及びドーピングに伴うカプセル化容器の使用や外部気体供給配管の使用、を避けることができる。
図3に示す別の実施形態の成長装置24においては、図1の成長装置1と比較すると、SiC供給領域4を被覆する第1の気体透過性膜18から離して、第1の気体透過性膜18と結晶成長領域5との間に配置された第2の気体透過性膜25が設けられている。この第2の気体透過性膜25は、多孔性黒鉛から形成されるが、第1の気体透過性膜18に比べて空隙率が低い。第2の気体透過性膜25の密度は、約1.4g/cmであり、厚さは4mmである。
2つの気体透過性膜18及び25を備えた成長装置24の特異な構造により、SiC供給源材料6の再昇華が実行される。相対的に高速でSiC供給源材料6から放出された(昇華した)気体材料は、第1の気体透過性膜18に浸透し、第1の気体透過性膜18に面している第2の気体透過性膜25の下面で、第1多結晶SiC材料ブロック26として、結晶化する。そして、第1多結晶SiC材料ブロック26から放出される(昇華する)気体材料は、第2の気体透過性膜25に浸透した後にSiC成長気相9の原材料となり、この気相から、結晶成長領域5においてSiC塊状単結晶2が成長する。第1多結晶SiC材料ブロック26を形成するこの再昇華により、成長中のSiC塊状単結晶2の成長境界面16への材料移送が、非常にうまく、主に成長境界面の成長温度とは無関係に、制御される。
再昇華を、図3に示す成長装置24におけるように単一の工程として実行するよりも、多段階工程として実行する方が、成長境界面16への材料移送を、より細かく制御することができる。このような多段階再昇華の一例として、図4に成長装置27の実施形態が示されている。ここでは2段階の再昇華が実行される。このために、第3の気体透過性膜28が、第2の気体透過性膜25と結晶成長領域5との間に載置される。第3の気体透過性膜28の空隙率及び厚さは、第1の及び第2の気体透過性膜18又は25の対応するパラメータとは異なる。特に、多孔性黒鉛から形成される第3の気体透過性膜28は、第2の気体透過性膜25よりも更に低い空隙率を有する。その密度は約1.6g/cmであり、厚さは4mmである。或いは、第3の気体透過性膜28は、約1.4g/cmの相対密度と6mmの軸方向厚さを有していてもよい。
図5に示す実施形態に係る成長装置30は、成長境界面16への材料移送を制御する別の手段を備える。成長装置30においては、被覆されていないSiC供給領域4には、別の粉末化されたSiC供給源材料31が存在し、このSiC供給源材料31は、既述した成長装置1,21,24及び27のSiC供給源材料6に比べて、更に高い粉末粒子嵩密度(=粒子サイズ)を有し、従って、全体として、SiC供給源材料31の空領域が小さい。図5の実施形態において、粉末化されたSiC供給源材料31の密度は,1.3g/cmである。SiC供給源材料31の密度を変えることによって、昇華温度が変更される。密度を高くするほど、SiC供給源材料31の空領域が小さくなり、昇華温度が高くなる。密度を上げることによってより高い昇華温度を設定できる。このようにして、成長装置30の構造全体の温度、即ち、SiC供給源材料31の温度及び結晶成長領域5の温度、特に成長境界面16の成長温度、を、成長境界面16へのSiC供給源材料31の移送、及び、成長速度を始めとする他の成長条件を変えることなく、高めることができる。
高密度のSiC供給源材料31の使用は、例えば、より高速の材料移送及びこれに伴う成長SiC塊状単結晶2の欠陥多発といった負の影響を考慮することなく、所望の高成長温度を成長境界面16に設定することを可能にする、移送影響手段に該当する。
成長装置24,27及び30において、SiC供給源材料6又は31への第1ドーピング剤バナジウムによるドーピングが、それぞれ、バナジウム含有混合物20によって実施される。図示はしないが、成長装置24,27及び30を代替する他の実施形態も可能であり、これらの実施形態においては、バナジウムをバナジウム含有混合物20から供給するのではなく、代わりに、図2に示すバナジウム含有材料23が充填された開放ドーピング剤容器22を用いてもよい。
図6は、別の実施形態に係る成長装置32を示し、この装置は、図1と同様の方式で設計されている。成長装置32によれば、SiC塊状単結晶2に並行して、第2のSiC塊状単結晶33が製造される。このために、成長装置1で成長坩堝3の内部に提供されている構造が、成長坩堝3の底から反転させることにより、実質的に二重になっている。従って、成長装置32は、成長坩堝34を含有し、成長坩堝34においては、SiC供給領域35は、底部に配置されるのではなくて、中心軸線14の方向に見て中央に配置されている。SiC供給領域35の上方に第1結晶成長領域5が配置され、下方には第2結晶成長領域36が配置される。2つのSiC塊状単結晶2及び33のうちの1つが、2つの結晶成長領域5及び36のそれぞれで成長する。成長坩堝34の底部に第2のSiC種結晶37が配置され、この種結晶の上に、第2のSiC塊状単結晶33が、SiC供給源材料6により供給され結晶成長領域36を形成するSiC成長気相38から成長する。この際、第2のSiC塊状単結晶33の成長境界面39は、中心軸線14と平行に向いた成長方向40の方向に向き、第1のSiC塊状単結晶の成長方向19とは逆になる。SiC供給領域34は、頂部で第1の気体透過性膜18により被覆され、底部で第4気体透過性膜41により被覆される。従って、SiC供給源材料6は、2つの気体透過性膜18及び41に挟まれて位置する。
全体として、結果的に、成長坩堝34の内部構造は、SiC供給領域35において中心軸線14の方向の中央に位置して中心軸線14を横切る中央軸線の方向の横断面(図6には図示せず)に対して、鏡像であるか又は対称である。
それぞれバナジウムでドープされる2つの半絶縁性SiC塊状単結晶の成長は、成長装置1に関して既述したとおりに実行される。特に、第2のSiC塊状単結晶33の成長境界面39においても、高バナジウムドーピング剤濃度の無沈殿導入を可能にするために、高い成長温度が設定される。SiC塊状単結晶2及び33の両方に対する2つの気体透過性膜18及び41によって、SiC供給領域35から各成長境界面16又は39への材料移送の制御分離が実現される。
図6の成長装置32においては、図1〜図5の実施形態における、成長中のSiC塊状単結晶2の成長進行に従う加熱コイル12の選択的軸方向移動についてのみ、省略してある。これは、中心軸線14の方向においてSiC供給領域35に対し鏡像であるか又は対称である2つの上部及び下部結晶成長領域5及び36をもつ構造のためである。
成長装置1,21,24,27,30及び32により、ほとんど欠陥の無い、高品質の半絶縁性SiC塊状単結晶2,33が製造される。この高品質半絶縁性SiC塊状単結晶2,33から、高品質の半絶縁性SiC基板も、また、製造される。この円板形SiC基板は、成長方向19又は40又は中心軸線14と直交する軸の方向に、円板として連続的に切り出すことにより、適切なSiC塊状単結晶2又は33から得られる。この種のSiC基板は、大きくて薄い。一例として、その主基板表面は、7.62cm以上、例えば15cm、の基板直径をもち、基板厚さは約500μmである。そして、製造されたSiC基板は、半絶縁性であり、例えば1×1011Ωcmの電気比抵抗を有する。しかしながら、5×1010Ωcm〜3×1011Ωcmの範囲における他の抵抗値も得ることができる。バナジウムドーピング剤濃度は、5×1017cm−3を超え、具体的には1×1018cm−3か2×1018cm−3であり、これは、SiC全域で測定したバナジウムドーピング剤濃度の全体平均値である。SiC基板のバナジウム濃度は、6×1017cm−3〜4×1018cm−3の範囲からの値である。この高いバナジウムドーピング剤濃度が、半絶縁性SiC基板の結晶構造において、実質的に、無沈殿である。このことは、異様に高い局所的バナジウムドーピング剤濃度をもって広がった部分領域が無いことを意味する。SiC基板の如何なる1mm体積部分においても、バナジウムドーピング剤濃度の局所最大値は、バナジウムドーピング剤濃度の上記全体平均値を50%を超えて上回ることはない。SiC基板は、従って、巨視的バナジウム沈殿をもたない。ここで、巨視的沈殿は、ランダムな向きの最大幅が1μmを超えるものとして定義される。この半絶縁性SiC基板は、実質的に、例えば4H−SiC、6H−SiC、3C−SiC又は15R−SiCの、単一SiCポリタイプのみからなる。更に、SiC基板は、SiC塊状単結晶2に関して前述したとおり、第2ドーピング剤窒素でドープされる。
1,21,24,27,30,32:成長装置
2,33:SiC塊状単結晶
3,34:成長坩堝
4,35:SiC供給領域
5,36:結晶成長領域
6,31:SiC供給源材料
7:坩堝蓋(端部壁)
8,37:種結晶
9,38:SiC成長気相
10:断熱層
11:筒状コンテナ
12:加熱コイル
13:坩堝側壁
14:中心軸線
16,39:成長境界面
17:冷却孔
18,25,28,41:気体透過性膜
19,40:成長方向
20:バナジウム含有混合物
22:開放ドーピング剤容器
23:バナジウム含有材料
26,29:多結晶SiC材料ブロック

Claims (13)

  1. 10Ωcm以上の電気比抵抗を有する少なくとも1つのSiC塊状単結晶(2;33)の製造方法であって、
    a)成長坩堝(3;34)の少なくとも1つの結晶成長領域において、SiC成長気相が生成され、SiC塊状単結晶(2;33)がこのSiC成長気相(9;38)からの析出によって成長し、
    b)前記SiC成長気相が、前記成長坩堝(3;34)内のSiC供給領域(4;35)内に位置するSiC供給源材料(6;31)から供給され、ここで、前記材料は、SiC供給領域(4;35)から前記成長中のSiC塊状単結晶(2;33)の成長境界面(16;39)へ移送され、
    c)バナジウムが、成長中のSiC塊状単結晶(2;33)のドーピング剤として結晶成長領域(5;36)へ供給され、
    d)成長中のSiC塊状単結晶(2;33)の成長境界面(16;39)において、2,250℃以上の成長温度が設定され、これにより、5×1017cm−3を超えるドーピング剤濃度でドープされたSiC塊状単結晶(2;33)が成長し、
    e)前記SiC供給領域(4;35)から前記成長境界面(16;39)への前記材料の移送が、成長坩堝(3;34)内の温度条件に加えて、追加の移送影響手段(18;25;28;31;41)により調整され、これにより、前記成長境界面(16;39)における成長温度及び成長境界面(16;39)への前記材料の移送が、少なくともほとんど、互いに無関係に、支配することができる、
    製造方法。
  2. 前記追加の移送影響手段として、多孔性材料から作られた少なくとも1つの気体透過性膜(18;25;28;41)が、前記SiC供給領域(4;35)と前記結晶成長領域(5;36)との間に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記SiC供給領域(4)からの及び前記成長境界面(16)への前記材料の輸送の間に、前記追加の輸送影響手段として、少なくとも1つの再昇華工程が実施されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1つに記載の方法。
  4. 前記SiC供給領域(4)に装填された前記SiC供給源材料(31)のための前記追加の輸送影響手段として、0.8g/cm〜3.2g/cmの範囲の相対密度を有する粉末化されたSiC材料が用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 前記成長中のSiC塊状単結晶(2;31)にドーピング剤として導入されるべきバナジウムが、前記SiC塊状単結晶(2;33)の実際の成長に先立って、前記SiC供給源材料(6;31)及び前記SiC供給源材料(6)の内部に載置された開放されたドーピング剤容器(22)のいずれか1つに、添加されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
  6. 窒素が、成長中のSiC塊状単結晶(2;33)の追加のドーピング剤として、結晶成長領域(5;36)に供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 前記成長坩堝(34)に2つの分離された結晶成長領域(5;36)が備えられ、これらの間に前記SiC供給領域(35)が位置し、このSiC供給領域(35)が、前記2つの結晶成長領域(5;36)のそれぞれに関して、それぞれ、多孔性材料製の気体透過性膜(18;41)で被覆され、2つのSiC塊状単結晶(2;33)が製造されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
  8. 少なくとも10Ωcmの電気比抵抗を有する単結晶SiC基板であって、
    a)前記SiC基板がドーピング剤としてのバナジウムでドープされ、全SiC基板として、5×1017cm−3を超えるバナジウムドーピング剤濃度の全体平均値を有しており、
    b)前記SiC基板の如何なる1mm体積部分においても、そこで測定されたバナジウムドーピング剤の局所濃度が前記バナジウムドーピング剤濃度の全体平均値よりも50%を超えて上回らない、単結晶SiC基板。
  9. 前記バナジウムドーピング剤濃度の全体平均値が少なくとも6×1017cm−3であることを特徴とする請求項8に記載のSiC基板。
  10. SiC結晶構造が単一のSiCポリタイプのみ、特にSiCポリタイプ4H、6H、3C及び15Rのうちの1つ、を与えられていることを特徴とする請求項9に記載のSiC基板。
  11. 前記SiC基板が7.62cm以上の基板直径を有する主基板表面を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のSiC基板。
  12. 前記SiC基板が主基板表面とこの種基板表面に関して10cm−2以下の平均マイクロパイプ密度を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のSiC基板。
  13. 窒素が追加のドーピング剤として用いられ、窒素ドーピング剤濃度が5×1016cm−3以上であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載のSiC基板。
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