JP2016050224A - 粘接着剤組成物、粘接着シート、被着体の接着方法及び複合材 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)まず、アンカーボルトにより鋼板をコンクリート構造物における補強をすべき部分(表面)に仮固定する。この仮固定では、鋼板とコンクリート構造物との間にスペーサを部分的に介在させることにより、所定の間隙が設けられる。この間隙は、本固定に使用される液状エポキシ樹脂接着剤を注入するために設けられている。また、鋼板の中央部には、液状エポキシ樹脂接着剤を間隙に注入するための注入穴が設けられている。
(2)次に、鋼板とコンクリート構造物との間隙からの液状エポキシ樹脂接着剤の漏れを無くすために、間隙の全周をシール用エポキシ樹脂で閉塞する。
(3)その後、注入穴から、予め主剤と硬化剤を十分混練した本固定用の液状エポキシ樹脂接着剤を注入した後、接着剤が硬化することで鋼板とコンクリート構造物とを本固定する。
(i)シール用エポキシ樹脂での閉塞に時間かかる
(ii)液状エポキシ樹脂接着剤の硬化には数日間から1週間の期間を要し、その間、鋼板を仮支持する工程が必要となる
等、作業工程が複雑であるいう問題があった。
上記問題を解決する技術として、例えば、特開2014−65889号公報(特許文献1)では、粘接着シートが提案されている。この粘接着シートは、粘接着剤層を備え、この層は、一対の被着体を粘着により仮止めし、次いで硬化させることにより強固に接着するための、粘着性と接着性とを併せ持った組成物からなっている。具体的には、この組成物は、15℃以下のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂と、液状エポキシ樹脂と、固形エポキシ樹脂と、硬化剤とを含んでいる。
・常温環境下では固形で十分な初期粘着性を有することによる鋼板仮固定により、作業者の負担を軽減すること
・加熱することにより容易に短時間で硬化させることで工程を短縮すること
・金属同士、金属とコンクリート、コンクリート同士等の一対の被着体を容易に接着すること
・加熱硬化時に樹脂ダレを抑制しつつ適度な溶融状態とすることで凹凸や反りがある被着面への接着強度を高めること
を目指し、粘接着剤組成物の構成成分を見直すことで、本発明に至った。
前記エポキシ系樹脂が、固形エポキシ系樹脂と液状エポキシ系樹脂とを40/60〜80/20の質量比で含む混合物であり、
前記硬化剤が、潜在型硬化剤であり、
前記粘着剤が、エポキシ化ポリブタジエンであり、前記エポキシ系樹脂100質量部に対して1〜20質量部含まれ、
前記樹脂ダレ防止剤が、前記エポキシ系樹脂100質量部に対して1〜10質量部含まれる
ことを特徴とする粘接着剤組成物が提供される。
更に、本発明によれば、一対の被着体間に上記粘接着シートを配置する工程と、前記粘接着シートの配置前又は配置後に前記粘接着シートを加熱する工程とを含むことを特徴とする被着体の接着方法が提供される。
また、本発明によれば、一対の被着体と、前記被着体間に位置する接着剤層を備えた複合材であり、前記接着剤層が上記粘接着シートに由来することを特徴とする複合材が提供される。
固形エポキシ系樹脂が、U以下のガードナーホルツ法による粘度(40質量%のブチルカルビトール溶液)を有し、液状エポキシ系樹脂が、常温で、1000〜80000mPa・sの粘度を有する場合、より作業性良好な粘接着剤組成物を提供できる。
樹脂ダレ防止剤が、シリカ粒子、有機ベントナイト、金属石鹸、ホワイトカーボン及び脂肪酸アミドから選択される場合、より作業性良好な粘接着剤組成物を提供できる。
粘接着シートの芯材が、0.5〜5mmの目開き有する場合、より作業性良好な粘接着シートを提供できる。
5℃/分で昇温した際の貯蔵弾性率の最小値が101Pa〜103Paの範囲内である粘接着シートは、より強固に被着体同士を固定できる。
一対の被着体が鋼板とコンクリート構造物である場合、より作業性を向上できる。
(1)粘接着剤組成物
粘接着剤組成物は、エポキシ系樹脂、その硬化剤、エポキシ系樹脂と反応性を有する粘着剤及び樹脂ダレ防止剤を少なくとも含む。また、エポキシ系樹脂は、液状エポキシ系樹脂と固形エポキシ系樹脂とを含む。
(液状エポキシ系樹脂)
液状エポキシ系樹脂は、高い粘着力と接着力を付与し、作業性が向上するように作用する。液状エポキシ系樹脂は、常温で液状のエポキシ系樹脂であれば特に限定されず、各種のエポキシ系樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、機械的強度、硬化性、耐熱性、接着性等を向上でき、好ましく用いることができる。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。このビスフェノールA型エポキシ樹脂において、主鎖のビスフェノール骨格を1以上、3以下含むものは常温で液状であるので好ましく用いられる。なお、本明細書において、常温とは23℃±2℃を意味する。
また、液状エポキシ系樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、100以上、400未満であることが好ましい。この範囲内のエポキシ当量の液状エポキシ系樹脂は、加熱して硬化させた後の粘接着層に高い凝集力を付与でき、高い接着力を付与できる点で好ましく用いることができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
液状エポキシ系樹脂の粘度は温度25℃において、1,000〜80,000mPa・s、特に7,000〜50,000mPa・sの範囲にあることが好ましい。なお、液状エポキシ系樹脂の粘度はJIS K 7117−1(1999)に従い、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて、試験温度25℃で測定した値である。
固形エポキシ系樹脂は、加熱や紫外線照射等して硬化させた後の粘接着層に高い接着力を付与するように作用するとともに、粘接着層に高い凝集力を付与して保形性を高めることに作用する。固形エポキシ系樹脂は、常温で固形状のエポキシ系樹脂であれば特に限定されず、各種のエポキシ系樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂及びビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、機械的強度、硬化性、耐熱性、接着性等の観点からより好ましく用いることができ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は特に好ましく用いることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、通常、主鎖のビスフェノール骨格が4以上、20以下のものは、常温で固体である。
また、固形エポキシ系樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、400以上、5000以下であることが好ましい。この範囲内のエポキシ当量の固形エポキシ系樹脂は、加熱して硬化させた後の粘接着層に高い耐久性を付与でき、高い接着力を付与できる点で好ましく用いることができる。
固形エポキシ系樹脂の粘度は40質量%のブチルカルビトール溶液でガードナーホルツ法で測定時にU以下となるが好ましく、K以下であればより好ましい。なお、ガードナーホルツ法は、JIS K5400 4.5 粘度の項のガードナー型泡粘度計法に記載された方法を用いている。
エポキシ化ポリブタジエンは、ポリブタジエンの二重結合の一部をエポキシ化したものである。このようなエポキシ化ポリブタジエンはエポキシ系樹脂と相溶でき、エポキシ系樹脂に混合するとエポキシ系樹脂組成物に粘着性を付与するので、初期粘着性を向上できる。また、硬化時にエポキシ化ポリブタジエンとエポキシ系樹脂のエポキシ基が反応することで高い接着強度を得ることが出来る。
エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ当量は180〜250g/eqが好ましい。この範囲であればエポキシ系樹脂との良好な相溶性が得られる。
エポキシ化ポリブタジエンは、数平均分子量が500〜10000が好ましい。この範囲であればエポキシ系樹脂との良好な相溶性が得られる。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
エポキシ化ポリブタジエンの配合量は、液状エポキシ系樹脂と固形エポキシ系樹脂の混合物100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。エポキシ化ポリブタジエンの配合量が1質量部より少ない場合は、初期粘着性と接着強度が不十分になりやすく、また、20質量部より多い場合は、樹脂組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が悪くなる傾向がある。
樹脂ダレ防止剤にはシリカ粒子、有機ベントナイト、金属石鹸、ホワイトカーボン、脂肪酸アミド等が用いられる。特にシリカ粒子が好適に用いられる。溶解法により得られるシリカ粒子(フューズドシリカ)、ケイ素の気相反応により得られるシリカ粒子、ゾルゲル法により得られるシリカ粒子、燃焼加水分解法等により得られるシリカ粒子(フュームドシリカ)等を使用できる。また、液相反応により得られるシリカが液体分散媒に分散したコロイドであるシリカゾルを用いることもできる。かかるシリカゾルを用いる場合は、他成分とシリカゾルを混合した後、分散媒を熱や真空で除去する方法で調製する。
かかるシリカ粒子がエポキシ系樹脂(主剤)に配合されることで、硬化剤と混合して得られる硬化性エポキシ系樹脂組成物が降伏値をもつ流体(すなわち塑性流体)となり、かつ揺変性を有するようになる。降伏値とは、流動が起こる最小の剪断応力を意味する。したがって十分な降伏値をもつ塑性流体は、加熱によりエポキシ系樹脂が溶融・軟化しても自重により垂れ落ちることがなくなる。揺変性とは、等温状態において剪断変形を与えることによって、見かけ粘度が一時的に低下し、静置して時間がたつと元の見かけ粘度が回復する性質である。これらの性質を付与することにより、硬化性エポキシ系樹脂組成物は、厚く塗布しても垂れ落ちにくく、しかも塗布における作業性が良好なものとなる。一方、主剤自体の降伏値や揺変性は、大きいと容器から取り出すことが困難になるので、小さいことが好ましい。シリカ粒子は、エポキシ系樹脂に分散した状態、すなわち主剤単独の状態では、降伏値や揺変性は小さく、硬化剤を配合すると降伏値や揺変性が大きくなるという、上記の要請を満たす性質を有する。
かかるシリカ粒子の市販品としては、フュームドシリカの“アエロジル”(日本アエロジル社)、ケイ素の気相反応により得られるシリカ粒子である“アドマファイン”(アドマテックス社)、フューズドシリカの“デンカ溶解シリカ”(電気化学工業)等を、好ましく使用できる。シリカゾルとしては“スノーテックス”(日産化学)等を使用できる。
シリカ粒子の配合量は、液状エポキシ系樹脂と固形エポキシ系樹脂の混合物100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、4〜8質量部が特に好ましい。シリカ粒子の配合量が1質量部より少ない場合は、硬化剤と混合したとき降伏値や揺変性が不十分になり、また、10質量部より多い場合は、主剤の粘度が高くなりすぎて、取り扱い性が悪くなる傾向がある。
潜在型硬化剤とは、ある一定の温度まではエポキシ基と反応しないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基と反応する粘接着剤組成物を硬化させる硬化剤のことである。潜在型硬化剤を用いることにより、粘接着剤組成物のポットライフを向上できるので、加熱する前の未硬化の粘接着剤組成物の保存安定性を向上できる。潜在型硬化剤としては、例えば、エポキシ系樹脂と反応してエポキシ系樹脂を硬化できる酸性又は塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、及びマイクロカプセル封入物等の硬化剤を挙げることができる。潜在型硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。より具体的には、ジシアンジアミド、ヒドラジド系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等を挙げることができる。
潜在型硬化剤の含有量は、その種類に応じて適宜設定できる。例えば、イミダゾール系硬化剤等の触媒反応系の硬化剤を用いた場合の含有量は、液状エポキシ系樹脂と固形エポキシ系樹脂の合計量に対して、1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。また、フェノール系硬化剤や酸無水物系硬化剤等のエポキシ系樹脂と当量反応系の硬化剤を用いた場合の含有量は、液状エポキシ系樹脂と固形エポキシ系樹脂のエポキシ当量に対して、0.8当量以上、1.2当量以下であることが好ましい。
粘接着剤組成物には、必要に応じて(例えば、屋外用途での使用に際して等)、安定剤、フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、耐候安定剤等の当該分野で公知の添加剤を含んでいてもよい。
(粘接着剤組成物の製造方法)
粘接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば構成成分を公知の混錬機を用いて混合することにより粘接着剤組成物を得ることができる。
粘接着シートは、上記粘接着剤組成物を含む厚さ0.5〜5mmの粘接着剤層と、粘接着剤層中又は表面上に位置する芯材とを含んでいる。
粘接着層の厚さが0.5mmより小さい場合、コンクリート等の被着体の接着面に対する凹凸追従性が低下し、接着強度が低下することがある。厚みが5mmより大きい場合、せん断方向の接着強度が低下することがある。好ましい厚さは、1〜4mmである。
芯材は、例えば、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属繊維や、PAN系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系等の炭素繊維や、黒鉛繊維や、ガラスのような絶縁性繊維や、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレン等の有機繊維や、シリコンカーバイト、シリコンナイトライド等の無機繊維が挙げられる。芯材の形態は、メッシュ状、不織布状等が挙げられる。
粘接着シートは、5℃/分で昇温した際の貯蔵弾性率の最小値が101Pa〜103Paの範囲内であることが好ましい。この範囲であれば、加熱硬化時の樹脂ダレを防止することができる。
粘接着シートは、例えば、次のようにして製造できる。まず、カレンダーロールのような圧延手段により粘接着剤組成物を層状に成型する。成型された粘接着剤組成物の一方面を剥離紙上に載せることで、粘接着剤層を得る。粘接着剤層が露出した他方面に芯材を載せることで表面上に芯材が位置する粘接着シートを得ることができる。また、芯材を載せた粘接着剤層を一対形成し、粘接着剤層の芯材形成面同士を貼り合わせることで粘接着剤層中に芯材が位置する粘接着シートを形成してもよい。更に、圧延手段による接着剤層の形成に代えて、剥離紙上に粘接着剤組成物を塗布することにより接着剤層を形成してもよい。
被着体の接着方法は、例えば、
(a)一対の被着体間に上記粘接着シートを配置する工程
(b)粘接着シートの配置前又は配置後に粘接着シートを加熱する工程
を含む。
一対の被着体は、粘着力による仮固定と、接着力による本固定を望む分野であれば、特に限定されない。被着体が、重量物である場合や広面積物である場合、本固定の前に仮固定可能であることが有用である。例えば、コンクリート構造物の補強に使用するためには、一対の被着体は、鋼板とコンクリート構造物になる。コンクリート構造物の補強用途以外にも、自動車、車両、航空機、宇宙船等の構造部材間の粘接着シートとして用いることができる。
次に、工程(b)において、粘接着シートは加熱されて、被着体同士を本固定できる。ここで加熱は、粘接着シートの被着体間への配置前に施してもよい。これは、加熱後、粘接着シートの接着力がピークを迎えるまでには一定の時間が必要であり、この一定の時間を利用するものである。配置前の加熱は、配置後に加熱し難い場合に有用である。加熱は粘接着シートの被着体間への配置後に施してもよい。この加熱は、一方の被着体側に設置したヒーターを用いて行うことができる。
(工法1)
工法1の概略説明図を図1に示す。
まず、コンクリート床板1がクラックを有する場合、エポキシ系樹脂を注入して硬化させ一体化しておく。更に、コンクリート床板1が、中性化部分、コンクリートレイタンス部分、汚れ部分を有している場合は、それら部分を除去する。
鋼板3には、所定寸法に切断され、アンカーボルト位置へボルト孔が開けられ、コンクリート床板1へ接着する面にサンドブラストが実施されたものを使用する。
粘接着シート2には、鋼板3と同じ寸法に切断され、アンカーボルト位置へボルト孔が開けられたものを使用する。
粘接着シート2を80℃のオーブン中で加熱し、常温まで冷却した後、鋼板3のサンドブラスト実施面に貼り付ける。粘接着シート2を貼り付けた面を上にして鋼板3をコンクリート床板1へ押し当てる。次いで、アンカーボルト4をボルト孔に通し、ナットを装着した後、締付ける。粘接着シート2が硬化した後、鋼板下面を錆止め塗装してもよい。本工法により、重量が大きい大面積の鋼板をコンクリート床板に強固に固着でき、コンクリート床板の耐荷力を向上できる。
工法2の概略説明図を図2に示す。
工法1と同様、コンクリート床板1のクラック、中性化部分、コンクリートレイタンス部分、汚れ部分を処理する。工法1と同様、粘接着シート2及び鋼板3を用意する。
粘接着シート2を鋼板3のサンドブラスト実施面に貼り付ける。粘接着シート2を貼り付けた面を上にして鋼板3をコンクリート床板へ押し当て、アンカーボルト4をボルト孔に通し、ナットを装着した後、締付ける。鋼板3下面にシート型ヒーター5を貼り付け、鋼板3側から加熱して粘接着シート2を硬化させる。その後、鋼板3が冷却するのを待って、鋼板下面を錆止め塗装してもよい。本工法により、重量が大きい大面積の鋼板をコンクリート床板に強固に固着でき、コンクリート床板の耐荷力を向上できる。
(引張せん断接着強度の測定)
粘接着シートを25mm×12.5mmのサイズに切断し、粘接着シートの粘接着層に設けられた二つの剥離フィルムのうち、一方の剥離フィルムを剥した。アルコール洗浄後にJIS R 6252に記載の240番研磨紙にて研磨したSPCC鋼板に露出した粘接着層を圧着する。次いで、他方の剥離フィルムを剥がし、露出した粘接着層を、もう一つの同様に前処理したSPCC鋼板に圧着する。送風式オーブンにて実施例3、比較例1・2は120℃で2時間保持して加熱硬化させ、それ以外は80℃で1時間保持して加熱硬化させる。その後常温で放冷し、引張せん断接着強度測定用試験片とする。
引張せん断接着強さ(MPa)は次式により算出する。
S=P/A
S: 引張せん断接着強さ(MPa)
P: 破断力(N)
A: せん断面積(mm2)
粘接着シートを3×3cmに切断し、両面テープ(スリオンテック社製No.5486)で固定したSUS板に、測定するための粘接着シートの片面を上にして、もう一方の面を用いて粘接着シートを貼り付ける。直径20mmのアルミニウム製プローブの粘着面に20mm×20mmの耐食性めっき鋼板(スーパーダイマ、新日鐵住金社製)を両面テープ(スリオンテック社製No.486)で固定し、耐食性めっき鋼板を粘着面とする。プローブタック試験はテクスチャーアナライザーTX−AT(英弘精機株式会社製)を用いて測定する。1000gの荷重で10秒間、負荷をプローブの粘着面にかけた後、10mm/secの速度でプローブを引き剥がす時の最大荷重(N)を測定する。最大荷重(N)を粘着面の面積400mm2で除して粘着力(N/mm2)を算出する。
本発明における動的粘弾性測定は粘弾性測定装置PHYSICA MCR301(Anton Paar社製)、温度制御システムCTD450にて測定する。直径25mm(±1mm)、厚さ1mm(±0.1mm)の円盤状粘接着剤試験片を測定開始温度にした粘弾性測定装置のプレートに挟みノーマルフォース0.1Nとなる測定位置に合わせる。更に測定開始温度±1℃を5分間保持した後、歪み5%、周波数10Hz、昇温速度5℃/分、窒素雰囲気、測定間隔30秒、ノーマルフォース0N一定の条件にて23℃から120℃の範囲で動的粘弾性測定を行い貯蔵弾性率G'を測定する。なお、プレートはディスポーザブルのφ25mmパラレルディスクとディスポーザブルディッシュを使用する。
実施例と同様の方法で、両面に剥離フィルムを設けた1mm厚の粘接着層を有する粘接着シートを得る。得られたシートを100×100mmの大きさにカットし、24時間放置する。24時間放置後に1mm厚を保持しているかどうかを測定する。評価は下記の基準によって○又は×で示す。
○・・・厚さ1mmを保持している
×・・・厚さ1mm以下に潰れている
評価は下記の基準によって目視にて○又は×で示す。
○・・・保護フィルム剥離時に粘接着層が凝集破壊しない
×・・・保護フィルム剥離時に粘接着層が凝集破壊する
ダレ性試験方法
JIS R5201の10.4 に従って作製した70mm×70mm×20mmのコンクリート試験片と、40×40×2mmの耐食性めっき鋼板(スーパーダイマ、新日鐵住金社製)とを、実施例と同様の方法で作製した40mm×40mm×1mmの粘接着層を用いて貼り付け、熱風循環式恒温器にて120℃で2時間加熱する。加熱後の状態を下記の基準によって目視にて○又は×で評価する。
○・・・ダレが抑制されおり、粘接着層の厚さが1mmを保持している
×・・・ダレが生じており、粘接着層の厚さが1mm以下となっている
(粘接着剤組成物)
下記の成分を混錬機により混合し、粘接着剤組成物を調整した。なお、「部」は「質量部」を意味する。
固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1001、三菱化学社製:エポキシ当量480g/eq、粘度E) 70部
エポキシ化ポリブタジエン(PB3600、ダイセル化学社製:エポキシ当量200g/eq、ガラス転移点8℃) 5部
親水性フュームドシリカ(アエロジル300、エボニック社製:一次粒子径7nm、比表面積300m2/g) 6部
イミダゾール系硬化触媒(PN-23J、味の素ファインテクノ社製) 20部
その後、上記粘接着剤組成物をカレンダーロール上に投入し、カレンダーロールで圧延してシーティングした。得られたシートの両面に、シリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ100μmのポリエステルフィルム(東レフィルム加工社製東レセラピールMD(a)、剥離フィルム)をラミネートすることで厚み1mmの粘接着層を2つ得た。次に、一方の粘接着層に設けられた一対の剥離フィルムの内、片方の剥離フィルムを剥がした。露出した粘接着層を60℃に加熱しながら、補強用の芯材として目開き2μmのポリエステルメッシュ(SEFAR社製PET2000:芯材A)を積層した。他方の粘接着層も一方の粘接着剤層と同様に一対の剥離フィルムのうち、片方の剥離フィルムを剥がし、露出した粘接着層を60℃に加熱しながら、ポリエステルメッシュ上に積層した。このようにして、補強用芯材を含む厚み2mmの粘接着シートを得た。
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を40部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を60部に、粘接着剤層の厚みを1.5mmに変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着剤層を得た。次に、芯材を目付量600g/m2のガラス繊維チョップドストランドマット(日東紡社製MC600A:芯材B)に、厚みを3mmに変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(実施例3)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を40部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を60部に、イミダゾール系硬化触媒を5.5部の三菱化学社製DICY7に変更し、更に硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製アミキュアMY−H)を3.5部添加して接着剤層を作製すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(実施例4)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を50部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を50部に、イミダゾール系硬化触媒をT&K TOKA社製フジキュアー7001に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(実施例5)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を15部のJER828と15部のJER604(三菱化学社製:エポキシ当量120g/eq、粘度21000mPa・s)の混合物に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂をJER604に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(実施例7)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂をJER630(三菱化学社製:エポキシ当量100g/eq、粘度2100mPa・s)に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(実施例8)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂をDEN−431(ダウケミカル社製:エポキシ当量180g/eq、粘度1400mPa・s)に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を40部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を60部に、親水性フュームドシリカを0.5部に、イミダゾール系硬化触媒を5.5部の三菱化学社製DICY7に変更し、更に硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製アミキュアMY−H)を3.5部添加して接着剤層を作製すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(比較例2)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を40部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を60部に、親水性フュームドシリカを15部に、イミダゾール系硬化触媒を5.5部の三菱化学社製DICY7に変更し、更に硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製アミキュアMY−H)を3.5部添加して接着剤層を作製すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(比較例3)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を70部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を30部に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を10部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を90部に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(比較例5)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を40部に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂を60部に、エポキシ化ポリブタジエンをエポキシ基を含まない15℃以下のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂であるLA−1114(クラレ社製:ガラス転移点−37℃)に、親水性フュームドシリカを4部に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
(比較例6)
エポキシ化ポリブタジエンをエポキシ基を含まない15℃以下のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂であるであるNanostrength M−22N(アルケマ社製:ガラス転移点−42℃)に変更すること以外は実施例1と同様にして粘接着シートを得た。
得られた粘接着シートの物性を表1及び2に示す。
実施例1〜8と比較例1及び2とから、樹脂ダレ防止剤が1〜10部の範囲であることで、樹脂ダレのない粘接着剤組成物及び粘接着シートを得ることが分かる。樹脂ダレ防止剤が少ない場合、樹脂ダレを防止できず、多い場合、使用時まで粘接着シートを保護する保護シートを剥離することが困難となることが分かる。
実施例1〜8と比較例3及び4とから、固形エポキシ系樹脂と液状エポキシ系樹脂とが40/60〜80/20の質量比であることで、樹脂ダレ及び粘着力の良好な粘接着剤組成物及び粘接着シートを得ることが分かる。液状エポキシ系樹脂量が多い場合、樹脂ダレを防止できず、少ない場合、粘着力が不十分となることが分かる。
実施例1〜8と比較例5及び6とから、粘着剤としてエポキシ化ポリブタジエンを使用することで、接着強度を向上できることが分かる。非エポキシ化ポリブタジエンを使用すると、接着強度を十分向上できないことが分かる。
Claims (10)
- エポキシ系樹脂、その硬化剤、前記エポキシ系樹脂と反応性を有する粘着剤及び樹脂ダレ防止剤を少なくとも含み、
前記エポキシ系樹脂が、固形エポキシ系樹脂と液状エポキシ系樹脂とを40/60〜80/20の質量比で含む混合物であり、
前記硬化剤が、潜在型硬化剤であり、
前記粘着剤が、エポキシ化ポリブタジエンであり、前記エポキシ系樹脂100質量部に対して1〜20質量部含まれ、
前記樹脂ダレ防止剤が、前記エポキシ系樹脂100質量部に対して1〜10質量部含まれる
ことを特徴とする粘接着剤組成物。 - 前記固形エポキシ系樹脂が、U以下のガードナーホルツ法による粘度(40質量%のブチルカルビトール溶液)を有し、前記液状エポキシ系樹脂が、常温で、1000〜80000mPa・sの粘度を有する請求項1に記載の粘接着剤組成物。
- 前記エポキシ化ポリブタジエンが、180〜250g/eqのエポキシ当量と−50〜15℃のガラス転移点を有する請求項1又は2に記載の粘接着剤組成物。
- 前記樹脂ダレ防止剤が、シリカ粒子、有機ベントナイト、金属石鹸、ホワイトカーボン及び脂肪酸アミドから選択される請求項1〜3のいずれか1つに記載の粘接着剤組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘接着剤組成物を含む厚さ0.5〜5mmの粘接着剤層と、前記粘接着剤層中又は表面上に位置する芯材とを含むことを特徴とする粘接着シート。
- 前記芯材が、0.5〜5mmの目開きを有する請求項5に記載の粘接着シート。
- 5℃/分で昇温した際の貯蔵弾性率の最小値が101Pa〜103Paの範囲内である請求項5又は6に記載の粘接着シート。
- 一対の被着体間に請求項5〜7のいずれか1つに記載の粘接着シートを配置する工程と、前記粘接着シートの配置前又は配置後に前記粘接着シートを加熱する工程とを含むことを特徴とする被着体の接着方法。
- 前記一対の被着体が鋼板とコンクリート構造物である請求項8に記載の被着体の接着方法。
- 一対の被着体と、前記被着体間に位置する接着剤層を備えた複合材であり、前記接着剤層が請求項5〜7のいずれか1つに記載の粘接着シートに由来することを特徴とする複合材。
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