JP7060663B2 - 構造物を補強または補修する方法 - Google Patents
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Description
(1)
本発明の構造物を補強または補修する方法は、貼付工程と熱硬化工程とを含む。貼付工程では、強化繊維と、強化繊維に含浸されたマトリックス樹脂とを含む補強材を、未硬化樹脂を含む接着剤樹脂組成物を介して構造物に貼り付ける。熱硬化工程では、貼り付けられた補強材および接着剤樹脂組成物を100℃以上200℃以下で5分以上60分以下加熱する。接着剤樹脂組成物は、以下の物性(i)のa)またはb)と(ii)とを満たす:
(i)25℃、1分、および30分における周波数1Hzでの、
a)貯蔵弾性率が6,000Pa未満の場合、損失正接tanδが1.1以上
b)貯蔵弾性率が6,000Pa以上25,000Pa以下の場合、損失正接tanδが0.8以上1.2未満
(ii)25℃以上150℃以下で最低貯蔵弾性率を示し、かつ前記最低貯蔵弾性率が800Pa以上。
そして、構造物と補強材との間に介在させられた接着剤樹脂組成物が未硬化の状態で硬化工程を行うため、作業効率が良好となる。したがって、作業時間が短縮される。
また、接着剤樹脂組成物が上記の(i)のa)またはb)の物性を満たすことにより、接着剤樹脂組成物が調製された後最低30分間は高粘度化が防止されるため、作業性が良好となる。したがって、接着剤樹脂組成物の塗布と補強材の貼り付けとを行うための可使時間を十分に確保することができる。このため、たとえば、接着剤樹脂組成物を構造物表面または補強材表面(特に構造物表面)に対して塗布する場合には塗布作業が容易となる。また、たとえば構造物に補強材をいったん貼り付けた後に貼付位置の微調整をしたい場合には可使時間の間に容易に当該微調整を行うことができる。
さらに、接着剤樹脂組成物が上記の(ii)の物性を満たすことにより、加熱条件にさらされても比較的高粘度を維持するため、硬化工程で接着剤樹脂組成物の低粘度化を防止することができる。したがって、接着剤樹脂組成物による接着性が弱化されることがなく、特に天面および壁面へ施工する場合は補強材の自重により補強材がずれる問題も回避される。
上記(1)の構造物を補強または補修する方法は、25℃、1分および30分における周波数1Hzでの貯蔵弾性率が6,000Pa未満の場合に損失正接tanδが1.3以下であってよい。
上記(1)または(2)の構造物を補強または補修する方法は、補強材が、マトリックス樹脂が半硬化状態のプリプレグであってよい。
上記(1)から(3)のいずれかの構造物を補強または補修する方法は、貼付工程において、接着剤樹脂組成物が構造物に塗布された後に、構造物に補強材が貼り付けられてよい。
上記(1)から(4)のいずれかの構造物を補強または補修する方法は、貼付工程において、接着剤樹脂組成物が補強材に塗布された後に、構造物に補強材が貼り付けられてよい。
なお、上記(5)の方法においては、貼付工程で接着剤樹脂組成物が構造物表面と補強材表面との両方に塗布された後に互いに貼り合わされる態様も含まれる。
上記(4)の構造物を補強または補修する方法は、構造物が不陸を有し、貼付工程で接着剤樹脂組成物が不陸を均すように塗布されてよい。
本発明では、補強材を用いて構造物を補強または補修する。補強とは、施工対象である構造物の劣化度合いに関わらず、当該構造物の健全状態(非劣化状態)よりも向上された機械的特性を付与するための処理をいい、補修とは、対象物の劣化による機械的特性の低下を健全状態(非劣化状態)同等に回復させるための処理をいう。図1および図2は、構造物を補強または補修する方法の一例を説明する模式的断面図である。本発明の構造物を補強または補修する方法は、貼付工程と熱硬化工程とを含む。以下、図1および図2を参照して説明する。
貼付工程では、図1に示すように、補強または補修の対象となる構造物900に、接着剤樹脂組成物110を介して補強材120を貼付する。接着剤樹脂組成物は未硬化樹脂である。構造物900と補強材120との間に接着剤樹脂組成物110の層を形成することで、補強材120を良好に接着する。
構造物900は、建築構造物、建材、配管などの構造物であってよい。構造物の材質は、金属であってもよいし、セメント硬化体であってもよい。金属としては、炭素鋼および鋳鋼などが挙げられる。セメント硬化体としては、モルタルおよびコンクリートなどが挙げられる。本実施形態では、構造物900の表面には不陸910が生じている。
本実施形態では、構造物900の表面に接着剤樹脂組成物110を塗布する。この場合、不陸910の凹部に接着剤樹脂組成物110を塗りこんで、不陸を均すように塗布する。これによって、接着剤樹脂組成物110の層の不陸910と反対側の面111を平滑にすることができる。接着剤樹脂組成物110は、例えば、コテまたはヘラなどを用いて塗布することができる。
接着剤樹脂組成物110は、物性(i)として、25℃、1分および30分における周波数1Hzでの;
a)貯蔵弾性率が6,000Pa未満の場合、損失正接tanδが1.1以上、
b)貯蔵弾性率が6,000Pa以上25,000以下の場合、損失正接tanδが0.8以上1.2未満、を満たす。
つまり、接着剤樹脂組成物110が調製されてから30分間にわたり、周波数1Hzでの貯蔵弾性率25,000Pa以下を保つとともに、貯蔵弾性率が6,000Pa未満である場合と6,000Pa以上25,000Paである場合とのそれぞれにおいて、上記a)およびb)に示す所定の損失正接tanδを満たす。これによって、接着剤樹脂組成物110が調製された後最低30分間は高粘度化が防止され、塗布作業が可能となる。したがって、接着剤樹脂組成物110の塗布と補強材120の貼り付けとを行うための可使時間を十分に確保することができる。なお、貯蔵弾性率とは、動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(G’)をいう。損失正接tanδとは、動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(G’)に対する損失弾性率(G’’)の比(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)をいう。
接着剤樹脂組成物110は、上述の物性(i)および(ii)を満たす限り、一液性樹脂組成物であってもよいし、二液性樹脂組成物であってもよい。混合操作が不要であり作業時間の短縮の観点、および成分の均一性の観点からは、一液性樹脂組成物であることが好ましい。さらに、接着剤樹脂組成物110は、熱硬化型であってもよいし、常温硬化型であってもよい。
硬化性樹脂としては特に限定されないが、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂などがあげられる。これらの樹脂は、単独または複数種が組み合わされて使用されてよい。
さらに、エポキシプレポリマー化合物は、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、および脂環式のエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、などが挙げられる。
硬化剤としては特に限定されず、接着剤樹脂組成物110が上述の物性(i)および(ii)を満たす限り、接着剤樹脂組成物110の組成物タイプ(一液性樹脂組成物であるか二液性樹脂組成物であるか)および硬化タイプ(熱硬化性であるか常温硬化性であるか)に応じて当業者が適宜選択することができる。したがって、硬化剤としては、高温硬化剤、中温硬化剤、および常温硬化剤を問わず、さらに潜在性硬化剤であるか否かも問わない。
メルカプタン系化合物としては、ポリスルフィド樹脂などが挙げられる
粘度調整剤としては、増粘剤および充填材が挙げられる。
増粘剤は、温度上昇により増粘させる増粘剤であり、固形エポキシ樹脂は除外される。これによって、固形エポキシ樹脂のような硬化時の昇温による低粘度化に起因する樹脂流出を原因とした接着不良を防止することができる。具体的には、コアシェル型熱可塑性樹脂の粒子、および塩化ビニル系樹脂の粒子などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-デシルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物、1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物などが挙げられる。
これらと共重合可能な単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物、メタアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、などのメタクリルアミド系化合物およびグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルアクリレートなどが挙げられる。
N-置換アクリルアミドとしては、例えば、N-アクリロイルピロリジン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ヘキシルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートヘキサンジオールジアクリレート、オリゴエチレンジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体、トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
遊離カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などのジカルボン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸のモノエステルなどが挙げられる。
この場合、充填材の量は上記の硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上30重量部以下、好ましくは2重量部以上20重量部以下であってよい。充填材の量が上記下限値以上であることは、貼付工程における作業性および熱硬化工程における接着剤樹脂組成物の低粘度化抑制効果に優れる点で好ましく、上記上限値以下であることは、塗布工程における作業性に優れる点で好ましい。
特に、増粘剤の量が上記の硬化性樹脂100重量部に対して30重量部未満の場合は、熱硬化工程における接着剤樹脂組成物の低粘度化抑制効果をより良好に得る点で、充填材の量は10重量部超、好ましくは12重量部以上、さらに好ましくは13重量部以上であってよい。
補強材120は、強化繊維と、強化繊維に含浸されたマトリックス樹脂とを含んで構成される。本実施形態のように、強化繊維シートにマトリックス樹脂が含浸された補強シートの態様で用いられることが好ましい。
一方で、マトリックス樹脂は、上述の接着剤樹脂組成物110として挙げたものから選択されたものが全硬化されたものであってもよい。
当該積層体の具体的な態様としては、接着剤樹脂組成物110が常温硬化型であり補強材120が繊維強化樹脂(マトリックス樹脂が全硬化されたもの)である態様、接着剤樹脂組成物110が熱硬化型であり補強材120が繊維強化樹脂(マトリックス樹脂が全硬化されたもの)である態様、接着剤樹脂組成物110が常温硬化型であり補強材120が繊維含有樹脂(マトリックス樹脂が未硬化樹脂を含むもの)である態様、接着剤樹脂組成物110が熱硬化型であり補強材120が繊維含有樹脂である態様が挙げられる。
熱硬化工程は、積層体の接着剤樹脂組成物110が実質的に硬化されていないタイミングで行う。これによって、作業時間の短縮化が図れる。接着剤樹脂組成物110が実質的に硬化されていないとは、接着剤樹脂組成物110が熱硬化性である場合の硬化反応が始まっていない状態と、接着剤樹脂組成物110が常温硬化性である場合の、接着剤樹脂組成物110調製から貼付工程および熱硬化工程の準備に費やした時間内で一部のみ硬化が進行した状態とを含む。つまり、本発明では、接着剤樹脂組成物110が常温硬化性であってもその完全硬化を待たずに熱硬化工程を行う。
図1および図2においては、構造物900の表面に接着剤樹脂組成物110を塗布する態様を示したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。
たとえば、構造物900ではなく補強材120の表面に接着剤樹脂組成物110を塗布し、その後、構造物900に貼り付けられてもよい。あらかじめ補強材120の表面に対して接着剤樹脂組成物110がまんべんなく塗布されるため、たとえば、補強材120の表面に繊維の凹凸を有するもの、たとえば補強材120強化繊維の割合が多く補強力の大きいものを用いる場合において好ましい。
下記実験例1から実験例3および比較用実験例1から比較例実験例3のようにして、接着剤樹脂組成物を用意した。
エポキシ樹脂jER828(三菱化学(株)製)100重量部と、ジシアンジアミドDICY-7(三菱化学(株)製)7重量部と、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール2PHZ-PW(四国化成(株)製)3重量部と、ポリメタクリル酸エステル系有機微粒子Zefiac F351(アイカ工業(株)製)30重量部を遊星式ミキサー中で20℃、2000rpmで10分間撹拌および脱泡させたのち、オーブンにて110℃1時間静置させ、接着剤樹脂組成物を得た。
ポリメタクリル酸エステル系有機微粒子Zefiac F351(アイカ工業(株)製)の量を27重量部に変更し、炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 カルファイン200M)14重量部を加えたことを除いて、実験例1と同様にして接着剤樹脂組成物を得た。
エスダインジョイナーWG(積水フーラー(株)製)の主剤と硬化剤とを混合して接着剤樹脂組成物を得た。なお、主剤にはエポキシ樹脂を含み、硬化剤にはポリアミドアミンおよび脂環式ポリアミンを含む。
炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 カルファイン200M)5重量部を加えたことを除いて、実験例1と同様にして接着剤樹脂組成物を得た。
ポリメタクリル酸エステル系有機微粒子Zefiac F351(アイカ工業(株)製)の量を20重量部に変更し、炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 カルファイン200M)10重量部を用いたことを除いて、実験例1と同様にして接着剤樹脂組成物を得た。
エポキシ系接着材である外壁コーナー用接着材#3420(積水フーラー(株)製)のエポキシ樹脂を含む主剤と硬化剤とを混合したもの100重量部に対し炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 カルファイン200M)5重量部を加えて接着剤樹脂組成物を得た。
ボンドE2500W(コニシ株式会社製)の主剤と硬化剤とを混合して接着剤樹脂組成物を得た。なお、主剤にはエポキシ樹脂を含み、硬化剤には変性脂肪族ポリアミンおよび脂環式ポリアミンを含む。
実験例1から実験例3および比較用実験例1から比較用実験例4で調製した接着剤樹脂組成物を測定用試料とし、粘弾性測定を行った。
測定には粘弾性測定装置(MCR102 Anton Paar社製)を使用し、平行平板の半径を25mm、平行間距離1mm、周波数1Hzの条件にて評価した。温度条件は25℃から150℃まで5℃/minで昇温させ、その温度範囲内での最低貯蔵弾性率を求めた。加えて、25℃の一定温度条件での貯蔵弾性率G’の経時変化および損失弾性率G’’を測定し、損失正接tanδ(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)を算出した。
実験例1から実験例3および比較用実験例1から比較用実験例4で調製した接着剤樹脂組成物の塗布性を以下のように評価した。
鋼平板の表面へ、20mm×20mm×深さ2mmの凹みを作成し、その凹みを埋めるように接着剤樹脂組成物を金属ベラを使用し塗布した。使用した接着剤樹脂組成物は、施工現場での作業時間を考慮し、調製後から10分経過したものを用いた。接着剤樹脂組成物の塗り込み易さ、および塗布層の平滑性を評価した。塗布実験は22℃の恒温室にて行った。塗布性評価は3段階で行った。具体的には、凹みへ容易に塗り込むことができ、かつ糸引きなど生じず接着剤樹脂組成物層の平滑面を形成でき、構造物、補強材のどちらへの塗布も容易にできるものを「◎」、接着剤樹脂組成物が糸引きを生じること無く塗布できるが、高粘度のため塗布に力を掛ける必要があるため、構造物側への塗布に適しているものを「○」、接着剤樹脂組成物がゴムの様に弾性が高く凝集しやすいため凹みの隅へ隙間が生じるなどにより塗布面の平滑性が得にくいもの、もしくは一部で硬化が開始することにより塗布面の平滑性が得られないものを「×」とした。
実験例1から実験例3および比較用実験例1から比較用実験例4で調製した接着剤樹脂組成物の、加熱硬化過程での垂れ性を以下のように評価した。
上述の塗布性評価で作成された、接着剤樹脂組成物が塗布された鋼平板を、200℃に設定した強制送風循環式オーブン内に立て掛けて設置し、接着剤樹脂組成物の液垂れ性を目視観察により3段階で評価した。加熱前の状態から変化が見られなかったものを「◎」、凹みからの接着材の流出は無いものの凹み内部において接着材面の厚みが不均一となるため、加熱温度条件としては本評価の評価温度から大きく逸脱しないことが望まれるものを「○」、凹みからの接着剤樹脂組成物の流出(液垂れ)が観察されたものを「×」とした。
接着剤樹脂組成物として実験例1で調製された接着剤樹脂組成物を用意し、補強材として炭素繊維プリプレグ(三菱レイヨン社製 UDプリプレグタフキュア)を用意し、構造物の試験体として鋼板(凹み形成無し)を用意した。
鋼板表面を予めケレンし、接着剤樹脂組成物を約1kg/m2となるように塗布し10分間静置した後、炭素繊維プリプレグを貼り付け、鋼板とプリプレグとの積層体を得た。積層体のプリプレグ側を接着力評価用の鋼材治具(40mm×40mm×10mmの平板)に貼り付け、予め250℃に設定したオーブンに積層体を入れて15分間加熱硬化させ、鋼板の補強体を得た。得られた補強体はオーブンから取り出し常温まで徐冷した。
接着剤樹脂組成物として実験例2で調製された接着剤樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして鋼板の補強体を得た。
接着剤樹脂組成物として実験例3で調製された接着剤樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして鋼板の補強体を得た。
接着剤樹脂組成物として比較用実験例1で調製された接着剤樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして鋼板の補強体を得た。
接着剤樹脂組成物として比較用実験例2で調製された接着剤樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして鋼板の補強体を得た。
接着剤樹脂組成物として比較用実験例3で用意した接着剤樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして鋼板の補強体を得た。なお、比較用実験例3の接着剤樹脂組成物は硬化速度が速いため、プリプレグを貼り付けたタイミングでは接着剤樹脂組成物層は指触硬化が認められた。
接着剤樹脂組成物として比較用実験例4で調製された接着剤樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして鋼板の補強体を得た。
実施例1から実施例3および比較例1から比較例4で作成した鋼板の補強体それぞれについて、引張試験機(サンコーテクノ(株)製、テクノスターR100000ND)にて垂直方向の接着力を測定した。接着力が1.5MPa以上のものを「○」、1.5MPa未満のものを「×」とした。
実施例1から実施例3および比較例1から比較例4の概要、ならびに粘弾性評価および接着強度評価を、下記表1に示す。
120 補強材
900 構造物
910 不陸
Claims (4)
- 強化繊維と前記強化繊維に含浸されたマトリックス樹脂とを含む補強材を、未硬化のエポキシ樹脂を主成分として含む接着剤樹脂組成物を介して構造物に貼り付ける貼付工程と、
貼り付けられた前記補強材および前記接着剤樹脂組成物を100℃以上200℃以下で5分以上60分以下加熱する熱硬化工程と、
を含み、
前記貼付工程が、前記接着剤樹脂組成物を前記補強材の表面に塗布する工程を含み、
前記補強材が、前記マトリックス樹脂が未硬化のエポキシ樹脂を含むプリプレグであり、
前記接着剤樹脂組成物が、エポキシ樹脂およびアミン化合物を含む、以下の物性:
(i)25℃、1分、および30分における周波数1Hzでの、
a)貯蔵弾性率が6,000Pa未満の場合、損失正接tanδが1.1以上、または
b)貯蔵弾性率が6,000Pa以上25,000Pa以下の場合、損失正接tanδが0.8以上1.2未満、
を満たし、且つ
(ii)25℃以上150℃以下で最低貯蔵弾性率を示し、かつ前記最低貯蔵弾性率が800Pa以上
を満たす、構造物を補強または補修する方法。 - 前記アミン化合物は、ポリアミドアミンおよび脂環式ポリアミンである、請求項1に記載の構造物を補強または補修する方法。
- 前記接着剤樹脂組成物が、以下の物性:
(i)25℃、1分、および30分における周波数1Hzでの、貯蔵弾性率が6,000Pa未満の場合、損失正接tanδが1.1以上1.3以下、を満たし、且つ
(ii)25℃以上150℃以下で最低貯蔵弾性率を示し、前記最低貯蔵弾性率が800Pa以上1370Pa以下
を満たす、請求項1または2に記載の構造物を補強または補修する方法。 - 前記構造物が不陸を有し、前記貼付工程で前記接着剤樹脂組成物が前記不陸を均すように塗布される、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造物を補強または補修する方法。
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