JP4128675B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁、柱、コンクリート床版等のコンクリート構造体を連続繊維シートにて補強するのに用いられる樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、コンクリート構造体の補強方法として、その表面に、樹脂を含浸させた状態の連続繊維シートを貼り付ける方法が用いられている。かかる補強方法において、連続繊維シート、とりわけカーボン繊維等の強化繊維を用いた連続繊維シートに含浸させる樹脂としては、硬化性樹脂が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、従来用いられている硬化性樹脂では、連続繊維シートへの含浸性が優れているものの、補強処理後にコンクリート構造体から繊維シートが剥離するのを防ぐ効果が不十分であって、貼付け作業を終えた後、樹脂が硬化するまでの間に前記シートが剥離して膨れたり、脱落するなどの問題があった。
これは、繊維シートに含浸させる樹脂には、施工時すなわち樹脂の塗布時のように、剪断速度の大きな力がかかると粘性の低い流体としての性質を示し、逆に、施工後のように、樹脂にかかる力が剪断速度の小さなものであるときには粘性の高いゲルとしての性質を示すという揺変性(チキソトロピー性)が要求されるにも関らず、従来用いられている樹脂は揺変性に対する考慮が不十分であったからと推測される。
【0004】
さらに、連続繊維シートの厚みが増えて重量が大きくなると、樹脂自体の粘性に基づいて十分な粘着力を示すことができなくなり、貼付け作業時においても前記シートが脱落するという問題が生じる。また、かかる問題を解決するために薄い繊維シートを繰返し貼り付けると、補強作業の効率が低下するという別の問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、表面に連続繊維シートを貼り付けるコンクリート構造体の補強方法において、補強作業時および補強作業後のいずれにおいても、コンクリート構造体の表面に前記シートを十分に保持することができ、かつ重量の大きな連続繊維シートに対しても十分な粘着性を発揮することのできる樹脂組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂組成物の揺変性を、連続繊維シートの目付け量に応じた所定の値よりも大きく設定すれば、補強作業時すなわち前記シートの貼付け作業時、および補強作業後のいずれにおいても、コンクリート構造体の表面に前記シートを十分に保持することができ、かつ厚みの大きな連続繊維シートに対しても十分な粘着性を発揮することのできる樹脂組成物が得られるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、コンクリート構造体を補強するため、その表面に連続繊維シートを貼り付ける際に、当該連続繊維シートに含浸させて用いられるものであって、当該樹脂組成物の調整時におけるチキソトロピー・インデックス(TI値)が、前記連続繊維シートの目付け量a(g/m2 )に対して、式(1) :
【0008】
【数4】
で表される関係を満たし、かつ、
前記樹脂組成物の調製時から30分経過後におけるチキソトロピー・インデックス(TI値 30 )が、前記連続繊維シートの目付け量a(g/m 2 )に対して、式(2):
【数5】
で表される関係を満たすことを特徴とする。
【0009】
樹脂組成物のチキソトロピー・インデックス(TI値)はその揺変性(チキソトロピー)の指標となるものである。本発明におけるTI値は、E型粘度計(JISZ8803、円すい平板型回転粘度計),3度コーンで、20℃の条件下での粘度を測定し、樹脂組成物の回転数が1rpmであるときの粘度を10rpmであるときの粘度で除した値である。このTI値が大きい場合は、剪断速度の大きな力がかかるときと小さな力しかかかっていないときとでの樹脂組成物の粘性の差が大きいことを示しており、すなわち樹脂組成物の揺変性が高いといえる。
【0010】
また、本発明において、樹脂組成物の「調整時」とは、当該樹脂組成物を硬化させる目的で、基材樹脂に揺変性付与剤等の他の成分を混合したときあるいは樹脂組成物の主剤と硬化剤とを混合したときのことをいう。なお、以下の説明において、チキソトロピー・インデックス「TI値」とは樹脂組成物の調整時(調整直後)における値を指し、後述する「調整時から30分後」の値については「TI値30」として区別する。
【0011】
本発明によれば、例えば目付け量が400g/m2を超すような、径が太くかつ補強効果の高い連続繊維シートを用いる場合であっても、補強作業時および作業後のいずれにおいても剥離を生じることがなく、コンクリート構造体の表面に連続繊維シートを強固に接着させることが容易になる。
【0013】
本発明において、調製時から30分経過後におけるチキソトロピー・インデックス(TI値30)が前記TI値に比べて小さな値であるものの、前記式(2)で表される所定の値以上であることを要求されるのは、樹脂組成物の調整後、硬化反応が進むにつれて粘度が増大するので、30分経過後においては調整直後ほどの揺変性を必要としなくなるものの、繊維シートを十分に保持するという観点から一定の揺変性を保つ必要があるからである。
【0014】
さらに、本発明の樹脂組成物は、その調製時における、E型粘度計(3度コーン、20°、10rpm)で測定した粘度b(mPa・s)が、前記連続繊維シートの目付け量a(g/m2 )に対して、式(3) および(4) :
【0015】
【数6】
で表される関係を満たしているのが、上記と同じく、作業性および接着性の観点からより好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、補強を目的としてコンクリート構造体の表面に連続繊維シートを貼り付ける際に、当該シートに含浸させて用いられるものであって、そのチキソトロピー・インデックス(TI値)が、連続繊維シートの目付け量a(g/m2 )を用いて前記式(1) によって導き出される値よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
樹脂組成物のTI値を前記式(1) によって導き出される値よりも大きくすることにより、連続繊維シートの貼付け作業時のように剪断速度の大きな力がかかる場合と、貼付け作業後のように剪断速度の小さな力しかかからない場合とでの樹脂組成物の粘度の差を大きくすることができる。従って、貼付け作業時には連続繊維シートへの樹脂組成物の含浸を速やかに行うことができる一方、貼付け作業後には、連続繊維シートの剥離、脱落を効果的に防止することができる。
【0018】
樹脂組成物のTI値が前記式(1) によって導き出される値を下回ると(すなわち、前記式(1) を満足しないときは)、樹脂組成物の揺変性が不十分になって、コンクリート構造体と連続繊維シートとが剥離するといった問題が生じる。樹脂組成物のTI値は、前記式(1) によって導き出される最低値よりも、さらに0.5以上高いのがより好ましい。
【0019】
樹脂組成物のTI値の上限は特に限定されないが、通常、前記式(1)によって導き出される最低値より10以上も高くなると、貼付け作業時の粘性が低くなりすぎるなど、施工性が低下するおそれがある。
また、本発明の樹脂組成物は、連続繊維シートを貼付ける際の作業性を良好なものとし、かつ連続繊維シートとコンクリート構造体との接着性を完全なものとするという観点から、樹脂組成物の調製時から30分を経過した後のチキソトロピー・インデックス(TI値30)が前記式(2)で表される関係を満たすように設定される。
【0020】
本発明の樹脂組成物の調製時における、E型粘度計(3度コーン、20°、10rpm)で測定した粘度b(mPa・s)は、上記と同じく、連続繊維シートを貼付ける際の作業性を良好なものとし、かつ連続繊維シートとコンクリート構造体との接着性を完全なものとするという観点から、前記連続繊維シートの目付け量a(g/m2 )に対して、前記式(3) および(4) で表される関係を満たしているのが好ましい。
【0021】
粘度が上記範囲を超えると、連続繊維シートへの樹脂組成物の含浸性が低下するおそれがある。逆に、上記範囲を下回ると、樹脂組成物のTI値を所定の範囲に設定できなくなったり、貼付け作業の作業性が低下してしまったりするおそれがある。
なお、樹脂組成物の粘度は、TI値を所定の範囲に設定するという観点から、上記式(2) および(3) を満足する範囲であっても、さらに200〜30000mPa・sの範囲にあるのが好ましく、1000〜10000mPa・sの範囲にあるのがより好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、基材樹脂、揺変性付与剤およびたれ防止剤の各成分と、必要に応じて配合される充填剤、希釈剤等の他の成分とからなる。
〔基材樹脂〕
本発明の樹脂組成物に用いられる基材樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられるが、常温で硬化する樹脂であれば従来公知の種々の樹脂を使用できる。中でも、湿潤時の接着性を高めるにはエポキシ樹脂等の過酸化物硬化樹脂を用いるのが好ましく、剥離の危険をより一層除去するために樹脂に即硬化性を付与するには(メタ)アクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0023】
基材樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、その重量平均分子量Mwは200〜2000であるのが好ましく、250〜1000であるのがより好ましい。
また、基材樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する主剤と、上記エポキシ樹脂の末端エポキシ基を開環させて架橋、硬化させるための硬化剤とからなる2液硬化型のエポキシ樹脂が用いられるほか、ケチミン等を配合した1液型のエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0024】
2液硬化型エポキシ樹脂における主剤に含有されるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂等の、従来公知の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。一方、硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の脂環族ポリアミン;ピロメリト酸無水物等の酸無水物;ポリサルファイド、ポリアミドアミン等の、単体および/またはその変性物など、従来公知の種々の硬化剤が挙げられる。
【0025】
2液硬化型エポキシ樹脂を用いる場合において、主剤中のエポキシ樹脂と、硬化剤との配合割合は特に限定されず、従来と同様に、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対して最適当量の硬化剤が配合されるように適宜設定することができる。
〔揺変性付与剤〕
本発明の樹脂組成物は、上記基材樹脂のほかに、揺変性付与剤およびたれ防止剤を含有し、さらに必要に応じて、充填剤、希釈剤等の、従来公知の種々の添加剤が配合することができる。
【0026】
揺変性(チキソトロピー)付与剤としては、例えば微粉シリカ(コロイダルシリカ、超微粉子状無水シリカ等)、シリカ系増粘剤、アスベスト粉末、有機ベントナイト、繊維状粘土鉱物等が挙げられる。
揺変性付与剤の含有割合は、樹脂組成物に要求される揺変性および粘度、あるいは後述するたれ防止剤の配合量等に応じて設定されるものであって、通常、樹脂組成物中の含有割合が0.5〜20重量%の範囲となるように設定される。揺変性付与剤の含有割合が上記範囲を下回ると、樹脂組成物に十分な揺変性を付与することができなくなるおそれがある。逆に上記範囲を超えると、施工時の樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて施工性が低下し、実用に適さなくなるおそれがある。揺変性付与剤の含有割合は、上記範囲の中でも特に1〜10重量%であるのが好ましく、3〜8重量%であるのがより好ましい。
【0027】
〔たれ防止剤〕
たれ防止剤としては、塗料分野において、顔料等の親水性固体成分と疎水性のバインダーとの湿潤剤、上記含量等の固体成分のバインダー中への分散性を助ける分散剤、固体成分の沈降を防止する沈降防止剤、および液だれを防止するたれ防止剤等として使用されている、ポリカルボン酸塩を主成分とするものが使用されることが多い。
【0028】
上記ポリカルボン酸塩を主成分とするたれ防止剤の具体的としては、例えばビックケミー(BYK Chmie )社製の商品名「Anti-Terra-203(アンチテラ-203)」、「Anti-Terra-204」等が挙げられる。これらは、高分子量ポリカルボン酸塩を、高沸点芳香族化合物やメトキシプロパノール等の有機溶媒中に溶解させた液状で供給される。
【0029】
たれ防止剤の含有割合は、樹脂組成物に要求される揺変性および粘度等に応じて設定されるものであって、通常、樹脂組成物中の含有割合が0.5〜5重量%の範囲となるように設定される。たれ防止剤の含有割合が上記範囲を下回ると、たれ防止剤の添加効果が十分に得られない。逆に上記範囲を超えて配合しても、コストに見合う効果が得られない。たれ防止剤の含有割合は、上記範囲の中でも特に1〜4重量%であるのが好ましく、2〜3重量%であるのがより好ましい。
【0030】
〔他の成分〕
充填剤としては、例えば炭酸カルシウム(とりわけ、軽質炭酸カルシウム)、酸化チタン、鉱質繊維等の、従来公知の種々の充填剤が挙げられる。充填剤の配合量は、基材樹脂100重量部に対して100重量部以下であるのが好ましく、50重量部以下であるのがより好ましい。
【0031】
希釈剤としては、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール等の、高沸点で非反応性の希釈剤、あるいはフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル(反応性)等が挙げられる。希釈剤は、作業性等の観点から必要に応じて使用されるものであって、その配合量は、通常、基材樹脂100重量部に対して5〜30重量部の範囲で設定される。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、上記の成分のほかに、着色剤、シランカップリング剤等の、接着剤または塗料の分野において常用されている成分を、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて適宜添加することができる。
本発明の樹脂組成物は、施工直前まで硬化することがないように、必要に応じて主剤と硬化剤、あるいは基材樹脂と他の配合剤を別々にして保管しておくのが好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1
基材樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔油化シェルエポキシ(株)製の商品名「エピコート828」(重量平均分子量Mw=380)〕と、反応性希釈剤〔大日本インキ化学(株)の商品名「エピクロン520」〕20%とを混合したものを用いた(エポキシ樹脂主剤)。
【0034】
連続繊維シートに含浸させる樹脂組成物としては、上記エポキシ樹脂主剤に、超微粒子状無水シリカ〔日本アエロジル(株)製のシリカ系増粘剤「アエロジル」〕1.5phrと、増粘助剤〔前出の「Anti−Terra−204」〕3phrを配合したものを用いた。硬化剤としては、住友ゴム工業(株)製の変性脂肪族ポリアミン(商品名「グリップボンドGB102」)を用いた。
【0035】
上記エポキシ樹脂主剤と硬化剤との使用割合は3:1(重量比)とした。
また、連続繊維シートとしては、目付け量が200g/m2 のカーボン繊維のシート〔東レ(株)製の「UT70−20」、一方向織り(一方向に配列したカーボン繊維を有機補助繊維で結束したもの)〕を用いた。かかる連続繊維シートを用いる場合の、樹脂組成物に要求されるTI値の下限は、表1に示すように1.8である。
【0036】
連続繊維シート貼付け作業の前処理として、厚さ15cmのコンクリート構造体(2m×2m)の下面からレイタンス等の接着阻害物質を除去し、次いでエポキシ樹脂プライマー〔住友ゴム工業(株)製の「グリップコートGB15」、主成分:前出の「エピコート828」〕を1m2 当たり250gの割合で塗布した。さらに、プライマー硬化後、コンクリート面の凹凸が大きい箇所にエポキシ樹脂パテ(同社製の「グリップボンドGB25」)を用いて修復し、前記構造体の下面を平滑化した。
【0037】
前記パテを硬化させて前処理を終了し、次いで前記構造体の下面に、上記樹脂組成物を1m2 当たり500gの割合で塗布し、直ちに連続繊維シートを貼付けた。
次いで、さらに上記樹脂組成物を、1m2 当たり連続繊維目付け量と同重量で塗布し、連続繊維シートに完全に含浸させた。
【0038】
実施例2
樹脂組成物中の「アエロジル」および「Anti−Terra−204」の含有割合を変えるとともに、連続繊維シートとして目付け量が300g/m2 のカーボン繊維のシート〔東レ(株)製の「UT70−30」、一方向織り〕を用いたほかは、実施例1と同様にして連続繊維シートの貼付け作業を行った。
【0039】
比較例1
「アエロジル」および「Anti−Terra−204」の含有割合を変えたほかは、実施例1と同様にして連続繊維シートの貼付け作業を行った。
表1に、実施例1,2および比較例1についての、連続繊維シート貼付け作業の施工性の評価結果を示す。
【0040】
【表1】
実施例3,4および比較例2
「アエロジル」および「Anti−Terra−204」の含有割合を変えるとともに、連続繊維シート(UT70−20)を貼り付けたほかは、実施例1と同様にして、連続繊維シートの貼付け作業を行った。
【0041】
なお、上記実施例3,4および比較例2では、2枚の連続繊維シート(UT70−20)を、それぞれの繊維方向が直交するように重ねて結束した後、貼り付けた。連続繊維シートの目付け量は400g/m2 であって、樹脂組成物に要求されるTI値の下限は、表2に示すように2.2である。
表2に、実施例3,4および比較例2についての、連続繊維シート貼付け作業の施工性の評価結果を示す。
【0042】
【表2】
実施例5〜7および比較例3,4
樹脂組成物中の「アエロジル」および「Anti−Terra−204」の含有割合を変えるとともに、連続繊維シートとして、実施例5,6および比較例3,4においてはアラミド繊維を二方向織りしたもの〔東レ・デュポン(株)製の商品名「K−870−140」、目付け量870g/m2 、二方向織り〕を、実施例7においては東レ・デュポン(株)製のバスケット織りアラミド繊維シート(2840デニール、商品名「ケブラー」、目付け量1000g/m2 、二方向織り)をそれぞれ用いたほかは、実施例1と同様にして連続繊維シートの貼付け作業を行った。
【0043】
表3に、実施例5〜7および比較例3,4についての、連続繊維シート貼付け作業の施工性の評価結果を示す。
【0044】
【表3】
実施例8
基材樹脂としては、メタクリル樹脂〔住友ゴム工業(株)製の商品名「グリップコートC175」〕を用いた。この「グリップコートC175」は、三菱瓦斯化学のメチルメタクリレートモノマー(MMA)を重合し、メチルメタクリレートモノマー(MMA)を希釈剤として粘度を200mPa・sに調整したものである。
【0045】
連続繊維シートに含浸させる樹脂組成物としては、上記メタクリル樹脂に、超微粒子状無水シリカ〔日本アエロジル(株)製のシリカ系増粘剤「アエロジル」〕と、増粘助剤〔前出の「Anti−Terra−204」〕とをそれぞれ表4に示す割合で配合したものを用いた。硬化剤としては、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)製の商品名「ナイパーFFK」)を用いた。硬化剤の使用割合は、上記メタクリル樹脂に対して2phrとした。また、硬化促進剤としてジメチルアニリンを少量用いた。
【0046】
また、連続繊維シートとしては、アラミド繊維を二方向織りしたもの〔「K−870−140」(前出)、目付け量870g/m2 〕を用いた。
樹脂組成物の組成および連続繊維シートの種類が異なるほかは、実施例1と同様にして連続繊維シートの貼付け作業を行った。
表4に、実施例8についての、連続繊維シート貼付け作業の施工性の評価結果を示す。
【0047】
【表4】
表1〜4より明らかなように、樹脂組成物のTI値が前記式(1) を満足する実施例1〜8では、連続繊維シートに樹脂組成物を含浸させて、コンクリート構造体に貼り付けた時(施工時)と、樹脂組成物が硬化した後とのいずれにおいても、連続繊維シートとコンクリート構造体との接着性は良好であった。
【0048】
なお、連続繊維シートを翌日まで養生して樹脂組成物を硬化させた後、コインタップ試験や超音波伝達速度法によって空隙の発生を確認したところ、実施例1〜8においては空隙が確認されず、連続繊維シートが完全に密着し、コンクリート構造体と一体化していることがわかった。
一方、樹脂組成物のTI値が前記式(1) を満足しない比較例1,2および3では、樹脂硬化後に連続繊維シートが完全に剥離したり、あるいは連続繊維シートとコンクリート構造体との間に浮きが生じるなどの問題が生じた。また、施工時においても連続繊維シートが剥離する傾向が見られた。
【0049】
樹脂組成物のTI値が前記式(1) を満足するものの、TI値30が前記式(2) を満足しない比較例4においても、連続繊維シートが剥離する傾向が見られたり、コンクリート構造体との間に浮きが生じるなどの問題が生じた。
従って、比較例1〜4はいずれも接着性が不十分で、実際の使用に耐えられなかった。
【0050】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物によれば、種々の連続繊維シートに対して充分な施工を行うことができる。また、従来施工が不可能であった厚みの大きな連続繊維シートに対しても、十分な含浸・貼付け作業が可能となる。
このため、橋梁、床版等のコンクリート構造物の補強において、その補強に必要な厚みの連続繊維シートを、剥離の問題を生じさせることなく貼り付けることができる。従って、施工回数の低減、施工費用の削減をも可能となる。
【0051】
従って、本発明の樹脂組成物は、コンクリート構造物等のインフラ補修において極めて有用である。
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