JP2016049902A - 鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】走行風を利用して効率良くエンジン、ラジエータ等の冷却を行いながら、水や泥等がエンジン、ラジエータ等に付着するのを防止することが可能な鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造を提供する。
【解決手段】フロントフェンダー28は、後側フェンダー32の前端部81Jが側面視で前側フェンダー31の前端部71Jよりも上方に位置するようにフロントフォークに支持され、前側フェンダー31の後部に且つ後側フェンダー32の上方に、走行風を通す通風孔88が設けられている。
【選択図】図7

Description

本発明は、フロントフェンダーが前側フェンダーと後側フェンダーとに二分割された鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造に関する。
従来、フロントフェンダーを、上側のフェンダーと下側のフェンダーとに二分割した鞍乗り型車両のフェンダー構造が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このフロントフェンダーは、跳ね上げられた水、泥等がエンジン側へ飛散するのを抑制しつつ走行風をエンジン側へ導く構造が採用されている。
特許第4476720号公報 特開2013−216234号公報
上記特許文献1及び特許文献2では、上側のフェンダーと下側のフェンダーとが上下に大きく離れているために走行風がエンジンに直接当たる構造である。これにより、自車の前方を走行する車両から跳ね上げられた水、泥等が自車のエンジンに当たる。また、自車の前輪から跳ね上げられた水や泥等も、上側のフェンダーと下側のフェンダーとの間を流れる走行風によってエンジン側へ導かれ、エンジン及びその周囲が汚れることになる。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、走行風を利用して効率良くエンジン、ラジエータ等の冷却を行いながら、水や泥等がエンジン、ラジエータ等に付着するのを防止することが可能な鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するため、本発明は、車体フレーム(11)の前端部に操向可能にフロントフォーク(12)が支持され、フロントフォーク(12)の下端部に前輪(13)が支持され、前輪(13)の上方がフロントフェンダー(28)で覆われ、フロントフェンダー(28)の後方にエンジン(21)が配置され、前記フロントフェンダー(28)が、前側フェンダー(31)と、前側フェンダー(31)に平面視で重なる部分を有する後側フェンダー(32)とから構成される鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造において、前記フロントフェンダー(28)は、前記後側フェンダー(32)の前端部(81J)が側面視で前記前側フェンダー(31)の前端部(71J)よりも上方に位置するように前記フロントフォーク(12)に支持され、前記前側フェンダー(31)の後部で且つ前記後側フェンダー(32)の上方に、走行風を通す通風孔(88)が設けられていることを特徴とする。
上記構成において、前記通風孔(88)は、前記前側フェンダー(31)の後縁に下方に延びるように備えられる後壁(74)と、前記後側フェンダー(32)の上面とで形成され、前記後側フェンダー(32)の前端部(81J)は、前記後壁(74)よりも前方に配置されていても良い。
また、上記構成において、前記前側フェンダー(31)の前記後壁(74)は、前記後側フェンダー(32)が締結される締結部(74d)を備えるようにしても良い。
また、上記構成において、前記前側フェンダー(31)と前記後側フェンダー(32)との間に車両前後方向に延びる整流板(81a)が設けられていても良い。
また、上記構成において、前記整流板(81a)は、前記前側フェンダー(31)又は前記後側フェンダー(32)の一方から延びて他方に当接していても良い。
また、上記構成において、前記前側フェンダー(31)及び前記後側フェンダー(32)は、前記フロントフォーク(12)の下部に締結される左右一対の締結腕(72,73,82,83)をそれぞれ備え、前記前側フェンダー(31)の締結腕(72,73)は、前記フロントフォーク(12)の下部の前側に締結され、前記後側フェンダー(32)の締結腕(82,83)は、前記フロントフォーク(12)の下部の後側に締結されるようにしても良い。
また、上記構成において、後側フェンダー(32)は、その両側面に、前記フロントフォーク(12)との干渉を避けるフロントフォーク逃げ部(81e)が設けられるようにしても良い。
また、上記構成において、前記フロントフォーク(12)の上端部が、フロントカウル(56)で覆われ、このフロントカウル(56)には、前記フロントフォーク(12)が最も縮んだ際に前記前側フェンダー(31)との干渉を避ける溝部(56a)が形成されていても良い。
また、上記構成において、前記フロントフェンダー(28)及び前記フロントフォーク(12)の後方にラジエータ(22)が配置され、このラジエータ(22)は、前面視で前記フロントフェンダー(28)と重なるようにしても良い。
本発明は、後側フェンダーの前端部が側面視で前側フェンダーの前端部よりも上方に位置し、前側フェンダーの後部に且つ後側フェンダーの上方に、走行風を通す通風孔が設けられているので、前側フェンダーと後側フェンダーとの間を通った走行風を、通風孔を介してエンジンに流すことができ、エンジン及びその周囲を効果的に冷却することができ、また、フロントフェンダーにおける走行風の空気抵抗を減らすことができる。
更に、後側フェンダーの前端部が側面視で前側フェンダーの前端部よりも上方に位置するので、路面から跳ね上げられた水、泥等がフロントフェンダーの前方から後方へ飛散する際に、通風孔へ飛散するのを抑制してエンジンに達しないようにすることができる。
このように、跳ね上げられた水、泥等をエンジンに飛散するのを抑制しながらエンジン及びその周囲を効果的に冷却することができる。
また、通風孔は、前側フェンダーの後縁に下方に延びるように備えられる後壁と、後側フェンダーの上面とで形成され、後側フェンダーの前端部は、後壁よりも前方に配置されているので、前側フェンダーの後縁に後壁を一体に備えることで、前側フェンダーの剛性を高めることができ、後壁に通風孔を形成しても前側フェンダーの変形を抑えることができる。また、後壁によって、前方から飛散して来た水、泥等を捕捉することができ、エンジン側への飛散をより一層抑制することができる。更に、後壁を設けることで、車両斜め後方から前側フェンダー内を見えにくくすることができ、外観性を向上させることができる。
また、前側フェンダーの後壁は、後側フェンダーが締結される締結部を備えるので、前側フェンダーに後側フェンダーを強固に締結することができる。これにより、前側フェンダー及び後側フェンダーの振動や相互の位置ずれを防止することができる。
また、前側フェンダーと後側フェンダーとの間に車両前後方向に延びる整流板が設けられているので、整流板によって走行風を整流して後方へ効率良く流すことができる。また、整流板を設けることで剛性を高めることができ、振動を防止することができる。
また、整流板は、前側フェンダー又は後側フェンダーの一方から延びて他方に当接しているので、前側フェンダー又は後側フェンダーの一方に設けた整流板を他方に当接することで、相互の振動を防止することができる。
また、前側フェンダー及び後側フェンダーは、フロントフォークの下部に締結される左右一対の締結腕をそれぞれ備え、前側フェンダーの締結腕は、フロントフォークの下部の前側に締結され、後側フェンダーの締結腕は、フロントフォークの下部の後側に締結されるので、前側フェンダー及び後側フェンダーのそれぞれの締結腕をフロントフォークの下部の前側及び後側に振り分けて締結することで、締結腕の車幅方向外側への張り出しを抑制することができる。
また、後側フェンダーは、その両側面に、フロントフォークとの干渉を避けるフロントフォーク逃げ部が設けられるので、フロントフォークの左右幅を狭めて走行風を通風孔からエンジンへ効率良く導くことができる。
また、フロントフォークの上端部が、フロントカウルで覆われ、このフロントカウルには、フロントフォークが最も縮んだ際に前側フェンダーとの干渉を避ける溝部が形成されているので、前側フェンダーの上部を上方に膨出させて前側フェンダーと後側フェンダーとの間の走行風通路断面を拡大することができ、走行風の風量を増やしてエンジンの冷却効果をより高めることができる。
また、フロントフェンダー及びフロントフォークの後方にラジエータが配置され、このラジエータは、前面視でフロントフェンダーと重なるので、前側から水、泥が跳ねるのを抑制しつつ通風孔からの走行風がラジエータに当たるようにして効率良く冷却することができる。
本発明の一実施形態のフロントフェンダー構造を備える自動二輪車の右側面図である。 フロントフェンダーを示す斜視図である。 後側フェンダーの整流板を説明する斜視図である。 フロントフェンダーを示す右側面図である。 フロントフェンダーの背面図である。 フロントフェンダーを示す平面図である。 図5のVII−VII線断面図である。 フロントフェンダーの作用を示す作用図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
図1は、本発明の一実施形態のフロントフェンダー構造を備える自動二輪車10の右側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11の前端部にフロントフォーク12を介して前輪13が支持され、車体フレーム11の下部にスイングアーム14を介して後輪16が支持され、車体フレーム11の後部にシート17が支持された鞍乗り型車両である。
車体フレーム11の前部下部にはV型のエンジン21が支持され、エンジン21の前方の車体フレーム11にラジエータ22が取付けられている。
フロントフォーク12は、車体フレーム11を構成するヘッドパイプ(不図示)に操舵可能に支持され、フロントフォーク12の上部にはバーハンドル24、下部には車軸26を介して前輪13が支持されている。また、フロントフォーク12を構成する左右一対のショックアブソーバからなるフォークパイプ27の下部には、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー28が取付けられている。
フロントフェンダー28は、フロントフォーク12の前方に配置された前側フェンダー31と、大部分が前側フェンダー31の後方に配置された後側フェンダー32とからなる。前側フェンダー31は、その左右の下部がフォークパイプ27の下部の前部に設けられた前支持部27aに複数のボルト33で取付けられている。後側フェンダー32は、フォークパイプ27の下部の後部に設けられた後支持部27bにボルト34で取付けられている。
スイングアーム14は、車体フレーム11にピボット軸36を介して上下揺動可能に支持され、スイングアーム14の後端部に車軸37を介して後輪16が支持されている。
シート17の前方には、車体フレーム11の前部で支持された燃料タンク38が配置されている。
エンジン21は、クランクケース41と、クランクケース41の前部及び後部からそれぞれ斜め上方に立ち上げられた前側気筒42及び後側気筒43とを備える。前側気筒42及び後側気筒43は、それぞれシリンダヘッド45及びヘッドカバー46を備える。
ラジエータ22は、エンジン21の冷却水通路にラジエータホース(不図示)を介して接続され、エンジン21とラジエータ22とに冷却水を循環させることで、エンジン21で温められた冷却水からラジエータ22により放熱が行われる。
フロントフォーク12、ラジエータ22及び燃料タンク38の両側方は、フロントカウル48で覆われている。
フロントカウル48は、ヘッドライト51、メータ52及びウインドスクリーン53が取付けられたフロントアッパカウル55と、フロントアッパカウル55の後部の左右側方に配置された一対のフロントロアカウル56とから構成されている。ラジエータ22は、その両側方からフロントロアカウル56で覆われている。
フロントロアカウル56の前部下部には、前側フェンダー31との干渉を避ける逃げ部56aが形成されている。即ち、フロントフォーク12の左右のフォークパイプ27が最も縮む又は最も縮んだ状態と近い状態までストロークしてフロントフェンダー28がフロントロアカウル56側へ移動した際に、逃げ部56aによって前側フェンダー31がフロントロアカウル56に干渉しないようにする。なお、図中の符号61はグラブレール、62はテールライト、63は後輪16を上方から覆うリアフェンダー、64は前後のシリンダヘッド45に接続された排気管、65は排気管64に接続されたマフラである。
図2は、フロントフェンダー28を示す斜視図、図3は、後側フェンダー32の整流板81aを説明する斜視図である。
図2に示すように、前側フェンダー31は、前輪13(図1参照)を上方から覆うフェンダー本体71と、フェンダー本体71の後部から下方斜め前方に延びる左右一対の締結腕72,73とが一体に成形されている。
フェンダー本体71及び締結腕72,73の後縁部には一体に後壁74を備える。
締結腕72,73は、フロントフォーク12(図1参照)の下部に取付けられる部分であり、取付けに使用するボルト33(図1参照)を通す複数のボルト挿通穴72a,73aを側面に備える。後壁74は、フェンダー本体71及び締結腕72,73の剛性を高めるリブの役目をする部分であり、上部に設けられた後壁上部74aと、後壁上部74aの左右端部から締結腕72,73に沿って下方に延びる後壁側部74b,74cとからなる。後壁上部74aには、その中央から下方に延びる下方延出片74dと、下方延出片74dの両側に形成された切欠き部74e,74fとを備える。
下方延出片74dは、後側フェンダー32との締結のためにビスを通すビス挿通穴74gが開けられている。
後側フェンダー32は、前輪13を上方斜め後方から覆うフェンダー本体81と、フェンダー本体81の前後の中間部から下方斜め前方に延びる左右一対の締結腕82,83とが一体に成形されている。
フェンダー本体81は、前部の上面81fから上方に突出するとともに前後方向に延びる整流板81aと、左右縁部から上方に突出する上方突出片81b,81cとが一体に形成されている。上方突出片81b,81cにはそれぞれビス挿通穴81kが開けられ、ビス挿通穴81kに通されたビスにより上方突出片81b,81cが前側フェンダー31の締結腕72,73の内側に締結される。
図3に示すように、整流板81aは、前側フェンダー31と後側フェンダー32とが上下に重なる部分の間を通過する走行風を整流してスムーズに流れるようにする。整流板81aは、その後端面81dで、前側フェンダー31の下方延出片74dにビスで締結される。整流板81aの上縁となる稜線81hは、その後部が前側フェンダー31の下面71b(図7参照)に当っている。このように、整流板81aの稜線81hを前側フェンダー31に当てることで、前側フェンダー31と後側フェンダー32との互いの剛性を高めることができ、振動を防止することができる。
例えば、上記したような整流板を、前側フェンダー31のフェンダー本体71から下方に一体に突出させ、その下縁である稜線を後側フェンダー32のフェンダー本体81の上面81f(図7参照)に当てるように形成しても良い。
フェンダー本体81の左右の側部には、フロントフォーク12の左右のフォークパイプ27(図1参照)との干渉を避ける左右一対の逃げ部81eが形成されている。
図2に示すように、締結腕82,83は、ボルト34(図1参照)を通す複数のボルト挿通穴82a,83aを側面に備え、ボルト34によってフロントフォーク12の下部に取付けられる。また、締結腕82,83の後縁には、車幅方向内側に突出する後壁82b,83bが一体に形成されている。
図4は、フロントフェンダー28を示す右側面図である。なお、図中には、左右の構成の符号が異なるものについては両方の符号を示している。
フロントフェンダー28は、前側フェンダー31の後部に後側フェンダー32が取付けられ、前側フェンダー31の後部の内側に後側フェンダー32の前部が入り込んでいる。
この結果、フロントフェンダー28は、前側フェンダー31のフェンダー本体71で前輪13(図1参照)を上方から覆い、後側フェンダー32のフェンダー本体81で前輪13を上方斜め後方から覆う。
前側フェンダー31は、側面視で横向きの略V字形状に形成され、フェンダー本体71は、その上面71a及び下面71bが前後に円弧状に延びている。
前側フェンダー31の後壁74は、フェンダー本体71の後端部が下方へ屈曲形成された部分であり、後壁74に形成された下方延出片74dと整流板81aとがビス85で締結されている。
後側フェンダー32は、側面視で略T字形状に形成され、フェンダー本体81は、その上面81f及び下面81gが前後に円弧状に延びている。
整流板81aの稜線81hは、後壁74側から前側フェンダー31のフェンダー本体71の下面71bに当接しつつフェンダー本体81の前端部81J側へ延び、前端部81J及びその近傍では下面71bから離れている。
後側フェンダー32の上方突出片81b,81cは、その後縁が後壁74の後壁側部74b,74cに接する、又は近接し、内側からビスで前側フェンダー31に締結される。このビスの先端は、外観性を考慮して前側フェンダー31の表側の面に貫通していない。
図5は、フロントフェンダー28の背面図である。
前側フェンダー31の左側の切欠き部74eの左縁74hと、切欠き部74fの右縁74jとの車幅方向の距離をW1、後側フェンダー32のフェンダー本体81の前部(逃げ部81eより前側の部分)の幅をW21、フェンダー本体81の後部(逃げ部81eより後側の部分)の幅をW22とする。距離W1に対して幅W21は、わずかに小さく、左右の切欠き部74e,74fの内側にフェンダー本体81の前部が嵌合している。また、幅W21に対して幅W22は大きい。
前側フェンダー31の左右の切欠き部74e,74fと、後側フェンダー32のフェンダー本体81の上面81fとは、通風孔88,88を形成している。通風孔88,88は、正面視でラジエータ22に重なっている。
前側フェンダー31の左右の締結腕72,73は、後側フェンダー32の締結腕82,83のほとんどを前方から覆うように左右に比較的幅広く形成されている。このように、前側フェンダー31の左右の締結腕72,73を、車幅方向外側への張り出しを抑えながら比較的幅広く形成することで、締結腕72,73でフロントフォーク12の左右のフォークパイプ27,27の前方を覆うことができる。これにより、締結腕72,73でフォークパイプ27,27の前方の走行風を整流して、フォークパイプ27,27の側方の走行風をスムーズに流すことができる。また、締結腕72,73によって、前方からの飛び石等からフロントフォーク12の下部を保護することができる。
図6は、フロントフェンダー28を示す平面図である。
後側フェンダー32の整流板81aは、フェンダー本体81の車幅方向中央に前後方向に延びるように形成されている。このように、整流板81aを設けることで、フェンダー本体71,81同士が重なる部分(図中に破線のハッチングを描いた部分)を流れる走行風を整流することができ、走行風をスムーズに流すことができる。
前側フェンダー31の左右の締結腕72,73の車幅方向の外寸法をW3、後側フェンダー32の左右の締結腕82,83の車幅方向の外寸法をW4とする。本実施形態では、フロントフェンダー28を前側フェンダー31と後側フェンダー32とに分割して別体に形成することで、例えば、前側フェンダーと後側フェンダーとを一つの型で一体に形成するのに比べて、外寸法W3,W4の差を大きくすることができる。
フロントフェンダーを上記したように一体成形し、前側の締結腕と後側の締結腕とを形成する場合、前側の締結腕と後側の締結腕とのそれぞれの左右の外寸法の差が大きくなるように型成形することは、型の制約を受けるため難しい。本実施形態では、外寸法W3と外寸法W4との差を大きく形成することができるので、フロントフォーク12(図1参照)の下部の前方の大部分を前側フェンダー31の左右の締結腕72,73で覆うことができる。
図7は、図5のVII−VII線断面図である。
前側フェンダー31のフェンダー本体71の前端部71Jに対して、後側フェンダー32のフェンダー本体81の前端部81Jは、高さ方向でHだけ上方に位置する。
また、前側フェンダー31の前端部71Jと、後側フェンダー32の前端部81Jとを通る直線91よりも下方に、前側フェンダー31の切欠き部74f(,74e)の上縁74kを設けている。
このように、後側フェンダー32の前端部81Jを前側フェンダー31の前端部71Jよりも上方に配置し、前端部71J,81Jを通る直線91よりも下方に切欠き部74e,74fの上縁74kを設けることで、前側フェンダー31と後側フェンダー32との間に、上下に屈曲した空気通路92を形成することが可能になる。
空気通路92は、前側フェンダー31のフェンダー本体71における前端部71Jの下方から、後側フェンダー32のフェンダー本体81における前端部81Jの上方を経由して通風孔88を通る通路である。フェンダー本体71の前端部71Jの下方から、フェンダー本体81の前端部81Jの上方までは、後上りの通路となる。
また、前側フェンダー31の上面71aは、従来のような側面視で前後に円弧形状の上面が、前端部から後方へ向かうにつれて一旦高くなった後に次第に低くなるフロントフェンダーに比較して、前端部71Jから後方に向かうにつれて次第に高くなり、後端部付近ではほぼ水平になるように形成されている。
以上に述べたフロントフェンダー28の作用を次に説明する。
図8は、フロントフェンダー28の作用を示す作用図である。
自動二輪車10が走行中は、車両前方から走行風が、矢印A1,A2,A3で示すように、自動二輪車10に向かって流れる。
本実施形態のフロントフェンダー28は、フロントフェンダー28の前方から後方に至る空気通路92を上下に屈曲した通路とすることで、走行風は、矢印B1,B2,B3で示すように、フロントフェンダー28の前方から空気通路92を介してラジエータ22及びエンジン21に至り、冷却する。
自車の前方を走行する車両又は自車の前輪13によって跳ね上げられた水や泥等は、白抜き矢印Cで示すように、自車に向かって飛散したり、前輪13側から前方に跳ね上げられた後に後方にUターンしたりしても、前側フェンダー31の前端部71Jの下方を後方へ移動したものは、後側フェンダー32によって阻止され、エンジン21及びラジエータ22側への移動が抑制される。
例えば、水、泥等が、白抜き矢印Dで示したように、前側フェンダー31のフェンダー本体71と後側フェンダー32のフェンダー本体81との間に飛散したときでも、水、泥等は後壁74の後壁上部74aに当たって捕捉され、通風孔88からラジエータ22及びエンジン21に至るのを抑制することができる。
このように、フロントフェンダー28に空気通路92を設けることで、エンジン21及びラジエータ22に走行風を送れるようにして冷却を行いながら、水や泥等がエンジン21、ラジエータ22等に飛散するのを防止することができる。また、フロントフェンダー28内を走行風がスムーズに通過するので、フロントフェンダー28の空気抵抗を低減することができる。
更に、前側フェンダー31の上面71aは、前端部71Jから後方へ次第に高くなり、後端部付近ではほぼ水平になっているので、前側フェンダー31の上面71a付近を後方へ流れる走行風は整流され、従来のフロントフェンダーに比べて前側フェンダー71の後方での乱流の発生が抑制され、走行風をスムーズにラジエータ22及びエンジン21側へ流すことができる。また、前側フェンダー31の後方に配置されたフロントロアカウル56(図1参照)にも前側フェンダー71で整流された走行風が当るため、フロントロアカウル56でもスムーズに整流することができ、車体の空気抵抗をより一層低減することができる。
以上の図1、図2及び図7に示したように、車体フレーム11の前端部に操向可能にフロントフォーク12が支持され、フロントフォーク12の下端部に前輪13が支持され、前輪13の上方がフロントフェンダー28で覆われ、フロントフェンダー28の後方にエンジン21が配置され、フロントフェンダー28が、前側フェンダー31と、前側フェンダー31に平面視で重なる部分を有する後側フェンダー32とから構成される鞍乗り型車両としての自動二輪車10のフロントフェンダー構造において、フロントフェンダー28は、後側フェンダー32の前端部81Jが側面視で前側フェンダー31の前端部71Jよりも上方に位置するようにフロントフォーク12に支持され、前側フェンダー31の後部に且つ後側フェンダー32の上方に、走行風を通す通風孔88が設けられている。
この構成によれば、前側フェンダー31と後側フェンダー32との間を通った走行風を、通風孔88を介してエンジン21に流すことができ、エンジン21及びその周囲(ラジエータ22、オイルクーラ等)を効果的に冷却することができる。また、フロントフェンダー28内を走行風が通過するようにすることで、フロントフェンダー28の空気抵抗を減らすことができる。
更に、側面視で、後側フェンダー32の前端部81Jが前側フェンダー31の前端部71Jよりも上方に位置するので、路面から跳ね上げられた水、泥等がフロントフェンダー28の前方から後方へ飛散する際に、通風孔88へ飛散するのを抑制してエンジン21に達しないようにすることができる。
このように、跳ね上げられた水、泥等をエンジン21に飛散するのを抑制しながらエンジン21及びその周囲を効果的に冷却することができる。
また、通風孔88は、前側フェンダー31の後縁に下方に延びるように備えられる後壁47(詳しくは、後壁47に形成された切欠き部47e,47f)と、後側フェンダー32のフェンダー本体81の上面81fとで形成され、後側フェンダー32の前端部71Jは、後壁74よりも前方に配置されているので、前側フェンダー31の後縁に後壁74を一体に備えることで、前側フェンダー31の剛性を高めることができ、後壁74に通風孔88を形成しても前側フェンダー31の変形を抑えることができる。また、後壁74によって、前方から飛散して来た水、泥等を捕捉することができ、エンジン21側への飛散をより一層抑制することができる。更に、後壁74を設けることで、車両斜め後方から前側フェンダー31内を見えにくくすることができ、外観性を向上させることができる。
また、前側フェンダー31の後壁74は、後側フェンダー32が締結される締結部としての下方延出片74dを備えるので、前側フェンダー31の後壁74に後側フェンダー32を締結する下方延出片74dを設けることで、前側フェンダー31に後側フェンダー32を強固に締結することができる。これにより、前側フェンダー31及び後側フェンダー32の振動や相互の位置ずれを防止することができる。
また、前側フェンダー31及び後側フェンダー32は、フロントフォーク12の下部に締結される左右一対の締結腕72,73,82,83をそれぞれ備え、前側フェンダー31の締結腕72,73は、フロントフォーク12の下部の前側に締結され、後側フェンダー32の締結腕82,83は、フロントフォーク12の下部の後側に締結されるので、前側フェンダー31及び後側フェンダー32のそれぞれの締結腕72,73,82,83をフロントフォークの下部の前側及び後側に振り分けて締結することで、締結腕72,73,82,83の車幅方向外側への張り出しを抑制することができる。
前側フェンダー31と後側フェンダー32との間に車両前後方向に延びる整流板81aが設けられているので、整流板81aによって走行風を整流して後方へ効率良く流すことができる。また、整流板81aを設けることで剛性を高めることができ、振動を防止することができる。
また、整流板81aは、前側フェンダー31又は後側フェンダー32の一方から延びて他方に当接しているので、前側フェンダー31又は後側フェンダー32の一方に設けた整流板81aを他方に当接させることで、相互の振動を防止することができる。
また、図1、図2及び図3に示したように、後側フェンダー32は、その両側面に、フロントフォーク12との干渉を避ける逃げ部81eが設けられるので、フロントフォーク12の左右幅を狭めて走行風を通風孔88からエンジン21へ効率良く導くことができる。
また、図1に示したように、フロントフォーク12の上端部が、フロントカウルとしてのフロントロアカウル56で覆われ、このフロントロアカウル56には、フロントフォーク12が最も縮んだ際に前側フェンダー31との干渉を避ける溝部としての逃げ部56aが形成されているので、前側フェンダー31の上部を上方に膨出させて前側フェンダー31と後側フェンダー32との間の走行風通路(空気通路92)の断面を拡大することができ、走行風の風量を増やしてエンジン21の冷却効果をより高めることができる。
また、図1及び図5に示したように、フロントフェンダー28及びフロントフォーク12の後方にラジエータ22が配置され、このラジエータ22は、前面視でフロントフェンダー28と重なるので、ラジエータ22の前側から水、泥等が跳ねるのを抑制しつつ通風孔88からの走行風がラジエータ22に当たるようにして効率良く冷却することができる。
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、図5に示したように、通風孔88を、前側フェンダー31の後壁74に形成された切欠き部74e,74fと、後側フェンダー32の上面81fとで形成したが、これに限らず、前側フェンダー31の後壁74に、切欠き部74e,74fの代わりに通風孔を開けても良い。
本発明は、自動二輪車10に適用する場合に限らず、自動二輪車以外も含む鞍乗り型車両にも適用可能である。なお、鞍乗り型車両とは、車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。
10 自動二輪車(鞍乗り型車両)
11 車体フレーム
12 フロントフォーク
13 前輪
21 エンジン
22 ラジエータ
28 フロントフェンダー
31 前側フェンダー
32 後側フェンダー
56 フロントロアカウル(フロントカウル)
56a 逃げ部(溝部)
71J 前側フェンダーの前端部
72,73,82,83 締結腕
74 後壁
74d 下方延出片(締結部)
74g,81k ビス挿通穴
81a 整流板
81e 逃げ部(フロントフォーク逃げ部)
81J 後側フェンダーの前端部
88 通風孔

Claims (9)

  1. 車体フレーム(11)の前端部に操向可能にフロントフォーク(12)が支持され、フロントフォーク(12)の下端部に前輪(13)が支持され、前輪(13)の上方がフロントフェンダー(28)で覆われ、フロントフェンダー(28)の後方にエンジン(21)が配置され、前記フロントフェンダー(28)が、前側フェンダー(31)と、前側フェンダー(31)に平面視で重なる部分を有する後側フェンダー(32)とから構成される鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造において、
    前記フロントフェンダー(28)は、前記後側フェンダー(32)の前端部(81J)が側面視で前記前側フェンダー(31)の前端部(71J)よりも上方に位置するように前記フロントフォーク(12)に支持され、前記前側フェンダー(31)の後部で且つ前記後側フェンダー(32)の上方に、走行風を通す通風孔(88)が設けられていることを特徴とする鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  2. 前記通風孔(88)は、前記前側フェンダー(31)の後縁に下方に延びるように備えられる後壁(74)と、前記後側フェンダー(32)の上面とで形成され、前記後側フェンダー(32)の前端部(81J)は、前記後壁(74)よりも前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  3. 前記前側フェンダー(31)の前記後壁(74)は、前記後側フェンダー(32)が締結される締結部(74d)を備えることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  4. 前記前側フェンダー(31)と前記後側フェンダー(32)との間に車両前後方向に延びる整流板(81a)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  5. 前記整流板(81a)は、前記前側フェンダー(31)又は前記後側フェンダー(32)の一方から延びて他方に当接していることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  6. 前記前側フェンダー(31)及び前記後側フェンダー(32)は、前記フロントフォーク(12)の下部に締結される左右一対の締結腕(72,73,82,83)をそれぞれ備え、前記前側フェンダー(31)の締結腕(72,73)は、前記フロントフォーク(12)の下部の前側に締結され、前記後側フェンダー(32)の締結腕(82,83)は、前記フロントフォーク(12)の下部の後側に締結されることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  7. 後側フェンダー(32)は、その両側面に、前記フロントフォーク(12)との干渉を避けるフロントフォーク逃げ部(81e)が設けられることを特徴とする請求項6に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  8. 前記フロントフォーク(12)の上端部が、フロントカウル(56)で覆われ、このフロントカウル(56)には、前記フロントフォーク(12)が最も縮んだ際に前記前側フェンダー(31)との干渉を避ける溝部(56a)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
  9. 前記フロントフェンダー(28)及び前記フロントフォーク(12)の後方にラジエータ(22)が配置され、このラジエータ(22)は、前面視で前記フロントフェンダー(28)と重なることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のフロントフェンダー構造。
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