JP2016006004A - リチウム含有複合酸化物膜の製造方法 - Google Patents

リチウム含有複合酸化物膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたLLZ系複合酸化物膜を比較的低温で製造できる方法を提供する。
【解決手段】La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比、又は後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する成膜原料を用いて、成膜及び所望により仮焼を行って、少なくともLa、Zr及びOで構成される前駆体膜を形成する。次いで、前駆体膜を含む全体組成としてガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な量のLi化合物及び/又はLa化合物を前駆体膜に付着させ、600℃以下の温度で熱処理して、少なくともLi、La、Zr及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する複合酸化物の膜を合成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム含有複合酸化物膜の製造方法に関するものである。
リチウムイオン伝導性を有する固体電解質として、LiLaZr12(しばしばLLZと略称される)に代表される、少なくともLi、La、Zr及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する複合酸化物(以下、LLZ系複合酸化物という)が注目されている。このLLZ系複合酸化物は、負極リチウムと直接接触しても反応が起きないリチウムイオン伝導材料であり、その上イオン伝導度も高いため、全固体リチウム電池の固体電解質としての利用が期待されている。
このようなLLZ系複合酸化物は高温合成を経て製造されている。例えば、特許文献1(特開2007−528108号公報)には、所定組成のガーネット型の固体イオン伝導体が開示されており、原料粉末を含むペレットを700〜1200℃、特に好ましくは900℃で焼成することが提案されている。
特許文献2(特開2011−73962号公報)には、LLZの基本元素であるLi、La及びZrに加えてNb及び/又はTaを加えることで、リチウムイオン伝導率を更に向上できることが開示されている。この文献では、一次焼成粉末を1125℃以上1250℃以下の温度で熱処理することが好ましいとされる一方、リチウム源として水酸化リチウムを用いた場合には熱処理工程を900℃以上1125℃未満という低めの温度でも行えることが記載されている。
特許文献3(特開2013−232284号公報)には、密度が90%以上の緻密部と気孔率が50%以上の多孔部からなるシート状の固体電解質が開示されている。この文献には、固体電解質粉末を、固相法、共沈法、水熱法、ガラス結晶化法、ゾルゲル法等で合成することが記載されており、実施例では固相法によりLLZ粉末を合成した後スラリー化し、ドクターブレード法でシート状に成形して1150℃で焼成したことが記載されている。
特許文献4(特開2013−37992号公報)には、LLZ系複合酸化物と、母材としてのLiBOとを含む固体電解質が開示されており、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512なる組成のLLZ系複合酸化物を1150℃の成形焼成温度で合成し、このLLZ系複合酸化物とLiBOとの混合物ペーストを基板上に塗布して大気雰囲気中700℃で1時間加熱して焼き付けたことが記載されている。
特開2007−528108号公報 特開2011−73962号公報 特開2013−232284号公報 特開2013−37992号公報
上記特許文献の幾つかからも分かるように、結晶性の良いLLZ系複合酸化物の固相合成には通常700℃以上もの高温が必要であると考えられてきた。しかしながら、高温で熱処理するとリチウムの揮発が生じ易く、リチウム欠損組成となりやすい(これはLLZ系複合酸化物の表面近傍で特に生じやすい)。もっとも、仕込み組成におけるリチウムを過剰とすることで表面のリチウム欠損を防ぐことができるが、逆にLLZ系複合酸化物の内部がリチウム過剰の組成となりやすい。そして、不都合なことに、リチウム過剰であってもリチウム欠損であってもリチウムイオン伝導率は低くなる。このため、従来法よりも低温で結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたLLZ系複合酸化物膜を合成できる方法が望まれる。
本発明者らは、今般、LLZ系複合酸化物膜の製造プロセスにおいて、所定組成の前駆体膜の形成を経由することで、結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたLLZ系複合酸化物を比較的低温(すなわち600℃以下)で製造できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたLLZ系複合酸化物膜を比較的低温で製造できる方法を提供することにある。
本発明の一態様によれば、リチウム含有複合酸化物膜の製造方法であって、
La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比、又は後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する成膜原料を用意する工程と、
前記成膜原料を用いて、成膜、又は成膜及び仮焼を行い、それにより少なくともLa、Zr及びOで構成される前駆体膜を形成する工程と、
前記前駆体膜を含む全体組成としてガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な量のLi化合物及びLa化合物の混合物、又はLi化合物を、前記前駆体膜に付着させる工程と、
前記Li化合物が付着された前駆体膜を600℃以下の温度で熱処理して、少なくともLi、La、Zr及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する複合酸化物の膜を合成する工程と、
を含む、方法が提供される。
例1〜10、17及び19で用いたエアロゾルデポジション(AD)成膜装置の構成を示す概略模式図である。
リチウム含有複合酸化物膜の製造方法
本発明によるリチウム含有複合酸化物膜の製造方法は、少なくともLi、La、Zr及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する複合酸化物(以下、LLZ系複合酸化物という)の膜を製造するものである。LLZ系複合酸化物は、典型的にはLiLaZr12(LLZ)に代表されるガーネット系セラミックス材料であるが、構成元素の一部が他の元素(例えばNb及び/又はTa)で置換されていてもよいし、構成元素を置換することなく他の元素(例えばAl)が微量添加されていてもよい。ガーネット系セラミックス材料は、負極リチウムと直接接触しても反応が起きないリチウムイオン伝導材料であるが、とりわけ、Li、La、Zr及びOを含んで構成されるものは、イオン伝導度が高く、リチウムイオン伝導性固体電解質として特に適する。この種の組成のガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はLLZ結晶構造と呼ばれ、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)に類似のXRDパターンを有する。なお、No.422259と比較すると構成元素が異なり、またセラミックス中のLi濃度などが異なる可能性があるため、回折角度や回折強度比が異なる場合もある。LLZ系複合酸化物は、LLZ結晶構造が得られている限り、LiLaZr12における各元素のモル比であるLi:La:Zr=7:3:2とは必ずしも一致する必要はなく、それよりもずれていてもよい。特に、Liは熱処理時における揮発等により消失しやすいため、仕込み組成からずれる傾向がある。Laに対するLiのモル数の比Li/Laは2.0以上2.5以下であることが好ましく、Laに対するZrのモル比Zr/Laは0.5以上0.67以下であるのが好ましい。このガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はNb及び/又はTaをさらに含んで構成されるものであってもよい。すなわち、LLZのZrの一部がNb及びTaのいずれか一方又は双方で置換されることにより、置換前に比べて伝導率の向上させることができる。ZrのNb及び/又はTaによる置換量(モル比)は、(Nb+Ta)/Laのモル比が0.03以上0.20以下となる量にすることが好ましい。また、このLLZ系複合酸化物はAlをさらに含んでいるのが好ましく、これらの元素は結晶格子に存在してもよいし、結晶格子以外に存在していてもよい。Alの添加量はLLZ系複合酸化物の0.01〜1質量%とするのが好ましく、Laに対するAlのモル比Al/Laは、0.008〜0.12であるのが好ましい。
本発明の製造方法においては先ず成膜原料を用意する。この成膜原料は、La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有するものであってもよいし、あるいは、La及びZrを、後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有するものであってもよい。前者はパイロクロアをもたらす組成(典型的にはLaZr)がガーネット型LLZ組成(典型的にはLiLaZr12)と比較してLi及びLaが不足する点で不完全な組成(すなわちLa−Zr−O系組成)を有するといえる一方、後者もまたガーネット型LLZ組成(典型的にはLiLaZr12)と比較してLiが不足する点で不完全な組成(すなわちLa−Zr−O系組成)を有するといえる。
いずれにしても、本発明においては、このような不完全な組成(すなわちLa−Zr−O系組成)の成膜原料を用いて、成膜及び所望により仮焼を行い、それにより少なくともLa、Zr及びOで構成される前駆体膜(以下、La−Zr−O系前駆体膜という)を形成する。この成膜は、気相成膜法、液相成膜法、固相成膜法、及びテープ成形法等の公知の手法を用いて比較的低温で行うことができる。そして、こうして形成された前駆体膜に、不足分のLi化合物及び/又はLa化合物を、前駆体膜を含む全体組成としてガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な量で付着させる。こうして化合物が付着された前駆体膜を600℃以下の温度で熱処理して、LLZ系複合酸化物の膜を合成することができる。
すなわち、本発明の方法によれば、通常700℃以上もの高温で合成が行われる従来法と比較して、格段に低い温度でLLZ系複合酸化物膜を合成することができる。このように低温でLLZ系複合酸化物膜を合成できるということは極めて有利なことである。というのも、前述したとおり、高温で熱処理するとリチウムの揮発が生じ易く、リチウム欠損組成となりやすいためである(これはLLZ系複合酸化物の表面近傍で特に生じやすい)。もっとも、仕込み組成におけるリチウムを過剰とすることで表面のリチウム欠損を防ぐことができるが、逆にLLZ系複合酸化物の内部がリチウム過剰の組成となりやすい。そして、不都合なことに、リチウム過剰であってもリチウム欠損であってもリチウムイオン伝導率は低くなる。かかる不都合を、従来法よりも低温での合成を可能とする本発明の製造方法によれば解消ないし低減することができる。加えて、比較的低温で合成であるが故に、エネルギーコストの削減、装置構成の簡素化等も実現しやすいとの利点もある。このように、本発明の方法によれば、結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたLLZ系複合酸化物膜を比較的低温で製造することができる。また、その酸化物膜を他の部材の上(例えばリチウムイオン二次電池の正極上)に成膜する場合、その成膜を低温で行うことができるため、酸化物膜と部材の界面で望ましくない副反応を生じさせることなく製造を行うことができる。
このように、本発明によるリチウム含有複合酸化物膜の製造は、(1)La及びZrを上記所定のモル比(すなわちLa−Zr−O系組成)で含有する成膜原料を用意し、(2)この成膜原料を用いて、成膜及び所望により仮焼を行い、それによりLa−Zr−O系前駆体膜を形成し、(3)前駆体膜を含む全体組成としてガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な量のLi化合物及びLa化合物の混合物、又はLi化合物を、前駆体膜に付着させ、(4)Li化合物が付着された前駆体膜を600℃以下の温度で熱処理して、LLZ系複合酸化物の膜を合成することにより行われる。
(1)成膜原料の用意
La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比、又は後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する成膜原料を用意する。成膜原料の形態は、後続の工程で採用する成膜方法に適した形態であれば特に限定されず、任意の形態でありうる。好ましい成膜原料の形態は、粉末、スラリー、溶液、及び焼結体ターゲットからなる群から選択されるいずれか1種の形態である。粉末形態の成膜原料は、La化合物及びZr化合物を含有する粉末混合物であってもよいし、La化合物及びZr化合物を用いて焼成等により合成されたLa−Zr−O系組成の合成粉末であってもよい。スラリー又は溶液形態の成膜原料は、La化合物及びZr化合物又はそれらの合成物を水等の溶媒に分散又は溶解させたものであることができる。焼結体ターゲットは、原料粉末又は合成粉末を用いて作製された板状の焼結体であることができる。いずれの形態にすべきかは、後続の工程で採用する成膜方法に応じて適宜決定すればよい。
成膜原料は、La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有してなるのが好ましい。パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比とは、パイロクロアの化学量論組成に照らして、La:Zr比が1:1あるいはそれに近似した比となるようなモル比ということになるが、前述のとおり、他の元素で一部置換する場合には、その置換量をも加味して上記モル比となるように各成分を配合すればよい。例えば、Zrの一部がNb及び/又はTaで置換される場合、La:(Zr+Nb+Ta)=1:1のモル比となるように成膜原料を調製すればよい。なお、成膜原料は、La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有しさえしていれば、後続の前駆体膜の形成工程において必ずしもパイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与える必要はなく、例えばLaが固溶したZrO構造を与えるものであってもよい。
あるいは、成膜原料は、La及びZrを、後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有するものであってもよい。後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比とは、LLZの化学量論組成に照らして、La:Zrの比が3:2あるいはそれに近似した比となるようなモル比ということになるが、前述のとおり、他の元素で一部置換する場合には、その置換量をも加味して上記モル比となるように各成分を配合すればよい。例えば、Zrの一部がNb及び/又はTaで置換される場合、La:(Zr+Nb+Ta)=3:2のモル比となるように成膜原料を調製すればよい。
成膜原料は、La、Zr並びに必要に応じてNb及び/又はTaを、採用する成膜方法に適した任意の形態で含んでいればよく、その形態は特に限定されないが、典型的には、酸化物、酢酸塩、塩化物、酢酸水酸化物、水酸化物、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくともいずれかの1種の形態の混合物及び/又は合成物として含んでなる。
成膜原料はAlをさらに含んでいてもよい。この場合、成膜原料はAlを、採用する成膜方法に適した形態で含んでいればよく特に限定されないが、酸化物、酢酸塩、塩化物、酢酸水酸化物、水酸化物、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくともいずれかの1種の形態で含むのが好ましい。
(2)前駆体膜の形成
成膜原料を用いて、成膜及び所望により仮焼を行い、それによりLa−Zr−O系前駆体膜を形成する。その結果、前駆体膜は成膜原料の組成に由来してLa−Zr−O系組成を有することになる。すなわち、成膜原料は、La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有してなる場合には、前駆体膜はパイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を有しうることになる。一方、成膜原料は、La及びZrを、後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する場合には、前駆体膜はLa及びZrを含む2種以上の結晶の混晶が形成されうる。成膜原料がLa及びZrをパイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する場合、前駆体膜はそのような結晶構造の単相(例えばLaZr単相)から実質的になるのが、最終的に得られるLLZ系複合酸化物の結晶性を向上できる点で特に好ましい。また、前述のとおり、前駆体膜はLaが固溶したZrO構造(典型的にはZrサイトにLaが固溶されてなる)を有するものであるのも好ましい。このように前駆体膜は典型的には結晶形態を有するが、後に行われる熱処理工程において所望の結晶形態を付与できるかぎり、それ以外の形態(例えばアモルファス形態)であってもよい。
前駆体の成膜は、所望の組成の前駆体膜を形成できるものであればあらゆる公知の手法を採用して行うことができ、気相成膜法、液相成膜法、固相成膜法、及びテープ成形法からなる群から選択される少なくともいずれか1種により好ましく行うことができる。気相成膜法の例としては、スパッタリング法、PLD法等が挙げられ、中でもスパッタリング法が好ましい。液相成膜法の例としてはゾルゲル法等が挙げられる。固相成膜法の例としては、エアロゾルデポジション法(AD法)、が挙げられ、中でもエアロゾルデポジション法(AD法)が好ましい。テープ成形法の例としてはドクターブレード法、スクリーン印刷法等が挙げられ、中でもドクターブレード法が好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、成膜原料が焼結体ターゲットの形態であり、焼結体ターゲットを用いたスパッタリングにより成膜を行うことができる。焼結体ターゲットの形成は、La化合物とZr化合物を含む混合粉末を焼成してLa−Zr−O系組成(例えばLaZr単相)の合成粉末を作製し、この合成粉末を成形及び焼成して板状焼結体を得ることにより行うのが好ましい。合成粉末の作製は、La化合物とZr化合物を前述したモル比となるように秤量及び混合し、得られた混合粉末を大気雰囲気等の酸化性雰囲気中で10〜600℃/h(好ましくは20〜300℃/h)で300〜1300℃(好ましくは400〜1200℃)に昇温し、この温度で1〜60時間(好ましくは3〜30時間)保持することにより行うのが好ましい。La化合物の好ましい例としては、水酸化ランタン、酸化ランタンが挙げられる。Zr化合物の好ましい例としては、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムが挙げられる。Nb及び/又はTaを添加する場合、Nb化合物の好ましい例としては酸化ニオブが挙げられる一方、Ta化合物の好ましい例としては酸化タンタルが挙げられる。Alを添加する場合、Al化合物の好ましい例としては、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。焼結体ターゲットの作製は、例えば、合成粉末を0.05〜5μm(好ましくは0.1〜3μm)のD50粒径(体積基準)となるように粉砕し、得られた粉末を板状に成形し400〜1400℃(好ましくは600〜1300℃)で1〜30時間(好ましくは3〜20時間)保持することにより行うことができる。また、ターゲットは必ずしも焼結体である必要はなく、例えば、La−Zr酸化物を圧粉したものをターゲットとして用いることもできる。焼結体ターゲットを用いたスパッタリングは、スパッタリング装置内に焼結体ターゲットをセットして公知の条件に従って行えばよい。このときスパッタリング装置のチャンバ内に酸素ガスを導入するのが好ましい。こうして成膜原料として焼結体ターゲットを用いてスパッタリングを行うことでスパッタ膜を前駆体膜として好ましく得ることができる。
本発明の別の好ましい態様によれば、成膜原料が粉末の形態であり、この粉末を用いたエアロゾルデポジション法(AD法)により成膜を行うことができる。この粉末形態の成膜原料は、La化合物とZr化合物を含む混合粉末を焼成してLa−Zr−O系組成(例えばLaZr単相)の合成粉末を作製することにより得るのが好ましい。合成粉末の作製は、例えば、La化合物とZr化合物を前述したモル比となるように秤量及び混合し、得られた混合粉末を大気雰囲気等の酸化性雰囲気中で10〜600℃/h(好ましくは20〜300℃/h)で300〜1300℃(好ましくは400〜1200℃)に昇温し、この温度で1〜60時間(好ましくは3〜30時間)保持し、得られた合成粉末を例えば0.05〜5μm(好ましくは0.1〜3μm)のD50粒径(体積基準)となるように粉砕することにより好ましく行うことができる。La化合物の好ましい例としては、水酸化ランタン、酸化ランタンが挙げられる。Zr化合物の好ましい例としては、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムが挙げられる。Nb及び/又はTaを添加する場合、Nb化合物の好ましい例としては酸化ニオブが挙げられる一方、Ta化合物の好ましい例としては酸化タンタルが挙げられる。Alを添加する場合、Al化合物の好ましい例としては、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。こうして得られた粉末形態の成膜原料を用い、必要に応じて解砕して粒度調整を施してもよい。こうして得られた合成粉末を用いて公知の条件に従いエアロゾルデポジション(AD)法により基板上に成膜を行えばよい。このときキャリアガスとして酸素ガスを用いるのが好ましい。こうして粉末形態の成膜原料を用いてAD成膜を行うことでAD膜を前駆体膜として好ましく得ることができる。
本発明の更に別の好ましい態様によれば、成膜原料がスラリーの形態であり、このスラリーを用いたドクターブレード法により成膜を行うことができる。このスラリー形態の成膜原料の形成は、La化合物とZr化合物を前述したモル比となるように秤量して混合粉末を用意し、この混合粉末にバインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等の添加物を適宜加えてスラリー化することにより行うのが好ましい。La化合物の好ましい例としては、水酸化ランタン、酸化ランタンが挙げられる。Zr化合物の好ましい例としては、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムが挙げられる。Nb及び/又はTaを添加する場合、Nb化合物の好ましい例としては酸化ニオブが挙げられる一方、Ta化合物の好ましい例としては酸化タンタルが挙げられる。Alを添加する場合、Al化合物の好ましい例としては、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。スラリーには脱泡処理を施すのが好ましく、この脱泡処理は例えば減圧下で撹拌することにより行うことができる。また、スラリーは100〜100000cPの粘度を有するように調整されるのが好ましく、より好ましくは300〜30000cPである。スラリーを用いたドクターブレード法による成膜は、例えば、スラリーをスリット状の細い吐出口を通過させることにより、スラリーを基板上に所望の厚さ(例えば1〜30μm)のシート状に吐出及び成形し、所望により乾燥させることにより行うことができる。さらに、得られたシート状成形体を熱処理してLa−Zr−O系組成の合成膜とするのが好ましく、この熱処理は、例えば、シート状成形体を10〜600℃/h(好ましくは20〜300℃/h)で300〜1300℃(好ましくは400〜1200℃)に昇温し、この温度で1〜60時間(好ましくは3〜30時間)保持することにより行うことができる。こうしてスラリー形態の成膜原料を用いてドクターブレード法を用いた成膜を行うことでシート状成形体を前駆体膜として好ましく得ることができる。
上述したいずれの成膜方法においても、必要に応じて、前駆体膜には仮焼を行ってもよい。仮焼は、所望の仮焼温度、好ましくは600℃以下、より好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは400〜600℃で、所望の時間、好ましくは1時間以上、より好ましくは1〜60時間、さらに好ましくは1〜20時間行えばよい。仮焼は大気雰囲気等の酸化性雰囲気で好ましく行うことができる。
(3)Li化合物等の付着
前駆体膜を含む全体組成としてガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な量のLi化合物及びLa化合物の混合物、又はLi化合物を、前駆体膜に付着させる。すなわち、前駆体膜の組成に応じて、不足分のLi及び/又はLaを補充するように前駆体膜に化合物を付着させる。Li化合物及びLa化合物は、好ましくは、酸化物、酢酸塩、塩化物、酢酸水酸化物、水酸化物、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくともいずれかの1種でありうる。とりわけ、前駆体膜に付着されるLi化合物は水酸化リチウム及び/又は過酸化リチウムであるのが好ましく、前駆体膜に付着されるLa化合物が水酸化ランタンであるのが好ましい。特に好ましいLi化合物は水酸化リチウムである。これらの化合物であると後続の合成工程で、不足分のLi及び/又はLaを前駆体膜中に拡散させやすく、それによりLLZ系複合酸化物膜の結晶性を向上することができる。
(4)LLZ系複合酸化物膜の合成
Li化合物が付着された前駆体膜を600℃以下の温度で熱処理して、LLZ系複合酸化物膜を合成する。熱処理の温度は600℃以下、好ましくは200〜600℃、より好ましくは200〜575℃、さらに好ましくは300〜550℃、特に好ましくは400〜500℃であり、このような温度で所定時間、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜75時間、さらに好ましくは3〜50時間保持される。なお、上記熱処理温度への昇温は、10〜600℃/hの昇温速度で行われるのが好ましく、より好ましくは50〜300℃/hである。熱処理は、大気雰囲気等の酸化性雰囲気で行われるのが好ましい。このように、本発明においては、通常700℃以上もの高温で合成が行われる従来法と比較して、格段に低い温度でLLZ系複合酸化物膜を合成することができる。そうでありながら、結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたLLZ系複合酸化物膜を得ることができる。
こうして得られるLLZ系複合酸化物膜は結晶性及びリチウムイオン伝導性に優れたものであり、好ましくは実質的に単相の、より好ましくは単相のLLZ系複合酸化物からなる。LLZ系複合酸化物膜の厚さは特に限定されないが、典型的には0.5〜50μmであり、より典型的には1〜20μmであり、さらに典型的には1〜10μmである。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。なお、以下の例において作製した試料の評価方法は以下のとおりとした。
<結晶相及び半値幅>
XRD装置(株式会社リガク製、RINT2500)を用いて、2θ:10°〜70°、スキャン速度:2°/min、ステップ幅:0.02°の条件で、膜試料に対し、X線回折を行った。得られたXRDプロファイルをCSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)と比較することで、結晶相の同定を行った。また、得られたXRDプロファイルに基づき(422)回折線の半値幅を算出した。半値幅が狭いほど結晶性が高いことを意味する。
<Liイオン導電性評価>
膜試料の表面に、Ar雰囲気グローブボックス中でカーボンペースト(日本電子株式会社製、ドータイトペーストXC−12)を塗布して、イオン伝導度評価用カーボン電極を形成した。このカーボン電極を用いて、Ar雰囲気グローブボックス中で、4端子法を用いた交流インピーダンス法により100℃、150℃及び200℃の温度でLiイオン伝導度を評価した。具体的には、膜試料にAuスパッタを施し、更に110℃以上で5時間以上真空乾燥させ、そのままAr雰囲気のグローブボックス内に導入し、CR2032コインセルに組み込んだ。このコインセルを大気中に取り出し、電気化学測定システム(ソーラトロン社製、ポテンショ/ガルバノスタッド−周波数応答アナライザ)を用い、周波数:1MHz〜0.1Hz、電圧:10mVにて交流インピーダンス測定を行った。
例1〜10、17及び19:AD法による成膜を用いた例
水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)と酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)を用意した。これらをLa:Zr=1:1(例1、3〜10、17及び19)又は3:2(例2)のモル比となるように原料を秤量し及び配合し、ライカイ機にて混合して焼成用原料を得た。この焼成用原料をアルミナ坩堝に入れて大気雰囲気中200℃/hの速度で表1に示される合成温度に昇温し、この温度で6時間保持して合成粉末を得た。この合成粉末をポットミルにて、0.5μmのD50粒径(体積基準)となるように粉砕を行った。得られた粉末をXRDにて結晶相を確認したところLaZr単相であることが確認された。
こうして得られた合成粉末をAr雰囲気のグローブボックス中で、開口径75μmのナイロンメッシュを用いて解砕した後、キャリアガスとして酸素ガスを用いてエアロゾルデポジション(AD)法により成膜を行った。このAD成膜は、図1に示されるような成膜装置20を用いて行った。図1に示される成膜装置20は、大気圧より低い気圧の雰囲気下で原料粉末を基板上に噴射するAD法に用いられる装置として構成されている。この成膜装置20は、原料成分を含む原料粉末のエアロゾルを生成するエアロゾル生成部22と、原料粉末を基板21に噴射して原料成分を含む膜を形成する成膜部30とを備えている。エアロゾル生成部22は、原料粉末を収容し図示しないガスボンベからのキャリアガスの供給を受けてエアロゾルを生成するエアロゾル生成室23と、生成したエアロゾルを成膜部30へ供給する原料供給管24と、エアロゾル生成室23及びその中のエアロゾルに10〜100Hzの振動数で振動が付与する加振器25とを備えている。成膜部30は、基板21にエアロゾルを噴射する成膜チャンバ32と、成膜チャンバ32の内部に配設され基板21を固定する基板ホルダ34と、基板ホルダ34をX軸−Y軸方向に移動するX−Yステージ33とを備えている。また、成膜部30は、先端にスリット37が形成されエアロゾルを基板21へ噴射する噴射ノズル36と、成膜チャンバ32を減圧する真空ポンプ38とを備えている。この成膜装置20は、成膜チャンバ32内に加熱装置や耐熱部材等を設けて原料粉末を加熱できるように構成されてもよい。成膜装置20による固体電解質膜の作製条件は以下のとおりとした。基板としては、20mm平方で厚さ1mmのステンレス(SUS)板を用いた。また、キャリアガスとして流量2L/minの酸素ガスを使用し、成膜チャンバ内の圧力が0.1〜0.2kPa、エアロゾル化室の圧力を50〜70kPaになるように調整して、成膜を行った。その際、ノズルの開口サイズは10mm×1.8mmとし、ノズルの短辺方向に走査距離10mm、走査速度5mm/secで4往復分、成膜と同時に走査させて厚さ5μmに成膜して前駆体膜とした。例6においては、前駆体膜を酸素雰囲気にて500℃で5時間仮焼した。
こうして得られた前駆体膜上に、表1に示されるLi原料(具体的には水酸化リチウム(関東化学株式会社)、過酸化リチウム(キシダ化学株式会社)若しくは炭酸リチウム(本荘ケミカル))及び水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)(例1、3〜10、17及び19)、又は水酸化リチウム(関東化学株式会社)(例2)を、前駆体膜を含む全体組成としてLi:La:Zr=7:3:2のモル比となるように秤量して付着させた。この前駆体膜を200℃/hの速度で表1に示される焼成温度に昇温し、この温度で6時間保持した。こうして得られた膜試料に対して各種評価を行ったところ表1に示される結果が得られた。
例11〜14:テープ成形による成膜を用いた例
水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)と酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)を用意した。これらをLa:Zr=1:1(例11、13及び14)又は3:2(例12)のモル比となるように原料を秤量して原料粉末を得た。この原料粉末に、さらに分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1(重量比))100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール、品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、500〜700cPの粘度に調整して、成形用スラリーを得た。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。得られた成形用スラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さ5μmのシートを形成した。乾燥したシートを打ち抜き加工して、成形体シートとした。得られた成形体をアルミナセッターに置き、200℃/hの速度で500℃に昇温し、この温度で3時間保持した。こうして得られた前駆体膜上に水酸化リチウム(関東化学株式会社)及び水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)を、前駆体膜を含む全体組成としてLi:La:Zr=7:3:2のモル比となるように秤量して付着させた。この前駆体膜を200℃/hの速度で500℃(例11及び12)又は400℃(例13及び14)に昇温し、この温度で6時間保持した。こうして得られた膜をSUS基板上に貼り付け、焼結膜試料とした。この膜試料に対して各種評価を行ったところ表1に示される結果が得られた。
例15及び16:スパッタリングによる成膜を用いた例
水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)と酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)を用意した。これらの原料をLa:Zr=1:1のモル比となるように秤量し、ライカイ機にて混合して焼成用原料を得た。この焼成用原料をアルミナ坩堝に入れて大気雰囲気中200℃/hの速度で700℃に昇温し、この温度で6時間保持した。得られた粉末をポットミルにて、0.5μmのD50粒径(体積基準)となるように粉砕を行った。得られた粉末の結晶相をXRDにより分析したところLaZr単相であることが確認された。得られた粉末を直径4インチ(約10cm)に成形し、1100℃(例15)又は900℃(例16)で3時間保持することで、焼結体スパッタリングターゲットを得た。このターゲットをスパッタリング装置(キャノンアネルバ製、SPF−430H)内にセットして、RFマグネトロン方式にて、ガス種/ガス圧:O/0.2Pa、出力:0.2kWの条件でスパッタリングを行い、スパッタ膜を前駆体膜として得た。こうして得られた前駆体膜上に水酸化リチウム(関東化学株式会社)及び水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)を、前駆体膜を含む全体組成としてLi:La:Zr=7:3:2のモル比となるように秤量して付着させた。この前駆体膜を200℃/hの速度で500℃に昇温し、この温度で6時間保持した。こうして得られた膜試料に対して各種評価を行ったところ表1に示される結果が得られた。
例18:テープ成形による成膜を用いた比較例
炭酸リチウム(本荘ケミカル株式会社)、水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)、酸化ジルコニウムをLi:La:Zr=7:3:2のモル比となるように秤量し、ライカイ機にて混合して原料粉末を得た。この原料粉末に、さらに分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1(重量比))100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール、品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、500〜700cPの粘度に調整して、成形用スラリーを得た。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。得られた成形用スラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さ5μmのシートを形成した。乾燥したシートを打ち抜き加工して、成形体シートとした。得られた成形体シートをアルミナセッターに置き、200℃/hの速度で500℃に昇温し、この温度で6時間保持した。得られた焼結体シートをカーボンペーストでMgO基板上に貼り付け、焼結膜試料とした。この膜試料に対して各種評価を行ったところ表1に示される結果が得られた。
例20:AD法による成膜を用いた例
水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)と酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)を用意した。これらをLa:Zr=1:1のモル比となるように原料を秤量し、合成粉末を得た。この混合粉末をポットミルにて、0.5μmのD50粒径(体積基準)となるように粉砕を行った。得られた粉末をXRDにて結晶相を確認したところ水酸化ランタンと酸化ジルコニウムであることが確認された。この混合粉末をAr雰囲気のグローブボックス中で、開口径75μmのナイロンメッシュを用いて解砕した後、キャリアガスとして酸素ガスを用いて例1と同様にしてエアロゾルデポジション(AD)法により成膜を行った。こうして厚さ5μmの前駆体膜を得た。XRDにて結晶相を確認したところLaが固溶したZrO構造を示した。こうして得られた前駆体膜上に水酸化リチウム(関東化学株式会社)及び水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)を、前駆体膜を含む全体組成としてLi:La:Zr=7:3:2のモル比となるように秤量して付着させた。この前駆体膜を200℃/hの速度で表1に示される焼成温度に昇温し、この温度で6時間保持した。こうして得られた膜試料に対して各種評価を行ったところ表1に示される結果が得られた。
例21:スパッタリングによる成膜を用いた例
水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)と酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)を用
意した。これらの原料をLa:Zr=1:1のモル比となるように秤量し、この混合粉末をポットミルにて、0.5μmのD50粒径(体積基準)となるように粉砕を行った。得られた粉末の結晶相をXRDにより分析したところ水酸化ランタンと酸化ジルコニウムであることが確認された。得られた粉末を直径4インチ(約10cm)に成形し、混合圧粉スパッタリングターゲットを得た。このターゲットをスパッタリング装置(キャノンアネルバ製、SPF−430H)内にセットして、RFマグネトロン方式にて、ガス種/ガス圧:O/0.2Pa、出力:0.2kWの条件でスパッタリングを行い、スパッタ膜を前駆体膜として得た。得られた前駆体膜の結晶相をXRDにて確認したところ、Laが固溶したZrO構造であることが確認された。こうして得られた前駆体膜上に水酸化リチウム(関東化学株式会社)及び水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)を、前駆体膜を含む全体組成としてLi:La:Zr=7:3:2のモル比となるように秤量して付着させた。この前駆体膜を200℃/hの速度で500℃に昇温し、この温度で6時間保持した。こうして得られた膜試料に対して各種評価を行ったところ表1に示される結果が得られた。
Figure 2016006004

Claims (15)

  1. リチウム含有複合酸化物膜の製造方法であって、
    La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比、又は後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する成膜原料を用意する工程と、
    前記成膜原料を用いて、成膜、又は成膜及び仮焼を行い、それにより少なくともLa、Zr及びOで構成される前駆体膜を形成する工程と、
    前記前駆体膜を含む全体組成としてガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能な量のLi化合物及びLa化合物の混合物、又はLi化合物を、前記前駆体膜に付着させる工程と、
    前記Li化合物が付着された前駆体膜を600℃以下の温度で熱処理して、少なくともLi、La、Zr及びOで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する複合酸化物の膜を合成する工程と、
    を含む、方法。
  2. 前記成膜原料が、La及びZrを、パイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有してなる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記前駆体膜がパイロクロア型又はパイロクロア型類似の結晶構造を有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記成膜原料が、La及びZrを、後にLiが添加された場合にガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を与えることが可能なモル比で含有する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記成膜原料が、粉末、スラリー、溶液、及び焼結体ターゲットからなる群から選択されるいずれか1種の形態である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記成膜が、気相成膜法、液相成膜法、固相成膜法、及びテープ成形法からなる群から選択される少なくともいずれか1種により行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記成膜原料が前記焼結体ターゲットの形態であり、前記成膜がスパッタリングにより行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記成膜原料が粉末の形態であり、前記成膜がエアロゾルデポジション法(AD法)により行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記成膜原料がスラリーの形態であり、前記成膜がドクターブレード法により行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記複合酸化物の膜を合成する工程における前記熱処理の温度が200〜600℃である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記成膜原料が、La及びZrを、酸化物、酢酸塩、塩化物、酢酸水酸化物、水酸化物、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくともいずれかの1種の形態の混合物及び/又は合成物として含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記前駆体膜に付着されるLi化合物が水酸化リチウム及び/又は過酸化リチウムであり、前記前駆体膜に付着されるLa化合物が水酸化ランタンである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記成膜原料がAlをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記成膜原料がAlを、酸化物、酢酸塩、塩化物、酢酸水酸化物、水酸化物、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくともいずれかの1種の形態で含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記仮焼が600℃以下で行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

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