JP2016000794A - 調色方法、粉体塗料組成物及び粉体塗料セット - Google Patents

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Abstract

【課題】まだら感が軽減され調色性の良好な調色方法の提供。
【解決手段】互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を乾式混合して色合わせを行う調色方法であって、前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である調色方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、調色方法、粉体塗料組成物及び粉体塗料セットに関する。
近年、粉体塗料を利用した粉体塗装の技術は、塗装工程における揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)排出量が少なく、しかも塗装後、被塗装物に付着しなかった粉体塗料を回収し、再利用できることから、地球環境の面で注目されている。このため、粉体塗料については、種々のものが研究されている。
ここで、調色が簡易である粉体調色方法を提供するため、それぞれ異なる色相および/または色調を有する2種類以上の粉体塗料を乾式混合することにより、色合わせを行う粉体調色方法であって、1)前記2種類以上の粉体塗料の90%粒子径が、いずれも20μm以下であり、2)前記2種類以上の粉体塗料を各々単独で用いて形成した塗膜のうち、任意に選ばれた2種類の塗膜のΔL値がいずれも30以下であり、かつ、ΔE値がいずれも43以下であることを特徴とする粉体調色方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、優れた色再現性及び色均一性を有する塗膜が得られる粉体塗料の調色方法を提供するため、無彩色の原色粉体塗料群及び有彩色の原色粉体塗料群からなる群より選ばれた原色粉体塗料を組み合わせて目標色に調色する粉体塗料の調色方法であって、前記無彩色の原色粉体塗料群は、少なくとも2種の明度の異なる原色粉体塗料からなり、前記有彩色の原色粉体塗料群は、1又は2以上のサブグループからなり、ここで1つのサブグループは含有率が異なるも同じ有彩色の着色剤をそれぞれ含有させてなる明度の異なる一連の複数の原色粉体塗料からなり、2以上のサブグループにおける各グループの原色粉体塗料にはそれぞれ色相の異なる有彩色の着色剤が配合されてなり、(1)無彩色の原色粉体塗料群において明度が最も高い原色粉体塗料及び明度が最も低い原色粉体塗料並びに各サブグループにおいて有彩色の着色剤の含有率が最も高い原色粉体塗料からなる基準原色粉体塗料群より、目標色に調色するのに適した2種以上の基準原色粉体塗料を選択する第1工程、(2)有彩色の原色粉体塗料として、第1工程で選択された有彩色の基準原色粉体塗料が属するサブグループごとに、各サブグループ内の原色粉体塗料から、明度の値が目標色の明度を挟む2種の原色粉体塗料を選択して色相を合わせ(但し、明度の値が目標色の明度を挟む2種の原色粉体塗料が存在しない場合は、目標色の明度との差が最も小さい1種を選択する)、有彩色の原色粉体塗料として前記原色粉体塗料のみを用いて目標色の彩度と明度を再現できない場合は、さらに無彩色の原色粉体塗料として目標色の彩度と明度を再現するのに適した無彩色の原色粉体塗料を前記無彩色の原色粉体塗料群から選択する第2工程、並びに(3)第2工程で選択された原色粉体塗料を組み合わせて調色する第3工程を有する粉体塗料の調色方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−019905号公報 特開2002−155223号公報
本発明は、まだら感が軽減され調色性の良好な調色方法、まだら感が軽減され調色性の良好な粉体塗料組成物及びまだら感が軽減され調色性の良好な粉体塗料セットを提供することを目的とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
即ち、請求項1に係る発明は、
互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を乾式混合して色合わせを行う調色方法であって、
前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、
前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である調色方法。
請求項2に係る発明は、
前記粉体粒子が、平均円形度が0.96以上である請求項1に記載の調色方法。
請求項3に係る発明は、
前記粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上である請求項1又は請求項2に記載の調色方法。
請求項4に係る発明は、
前記粉体粒子が、前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化剤とを含有する芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の調色方法。
請求項5に係る発明は、
前記粉体塗料が、体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の調色方法。
請求項6に係る発明は、
互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体粒子を含有し、
前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である粉体塗料組成物。
請求項7に係る発明は、
前記粉体粒子が、平均円形度が0.96以上である請求項6に記載の粉体塗料組成物。
請求項8に係る発明は、
前記粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上である請求項6又は請求項7に記載の粉体塗料組成物。
請求項9に係る発明は、
前記粉体粒子が、前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化剤とを含有する芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
請求項10に係る発明は、
体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有する請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
請求項11に係る発明は、
互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を有し、
前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、
前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である粉体塗料セット。
請求項12に係る発明は、
前記粉体粒子が、平均円形度が0.96以上である請求項11に記載の粉体塗料セット。
請求項13に係る発明は、
前記粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上である請求項11又は請求項12に記載の粉体塗料セット。
請求項14に係る発明は、
前記粉体粒子が、前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化剤とを含有する芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の粉体塗料セット。
請求項15に係る発明は、
前記粉体塗料が、体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有する請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載の粉体塗料セット。
請求項1に係る発明によれば、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下の範囲外又は、GSDvが1.3以下の範囲外の粉体粒子を含有する粉体塗料を用いる場合に比較して、まだら感が軽減され調色性の良好な調色方法が提供される。
請求項2に係る発明によれば、平均円形度が0.96以上の範囲外の粉体粒子を含有する粉体塗料を用いる場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な調色方法が提供される。
請求項3に係る発明によれば、比(B/A)が0.3以上の範囲外である場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な調色方法が提供される。
請求項4に係る発明によれば、粉体粒子が芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有さない場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な調色方法が提供される。
請求項5に係る発明によれば、粉体塗料が体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有しない場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な調色方法が提供される。
請求項6に係る発明によれば、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下の範囲外又は、GSDvが1.3以下の範囲外の粉体粒子を用いる場合に比較して、まだら感が軽減され調色性の良好な粉体塗料組成物が提供される。
請求項7に係る発明によれば、平均円形度が0.96以上の範囲外の粉体粒子を用いる場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料組成物が提供される。
請求項8に係る発明によれば、比(B/A)が0.3以上の範囲外である場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料組成物が提供される。
請求項9に係る発明によれば、粉体粒子が芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有さない場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料組成物が提供される。
請求項10に係る発明によれば、体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有しない場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料組成物が提供される。
請求項11に係る発明によれば、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下の範囲外又は、GSDvが1.3以下の範囲外の粉体粒子を含有する粉体塗料を用いる場合に比較して、まだら感が軽減され調色性の良好な粉体塗料セットが提供される。
請求項12に係る発明によれば、平均円形度が0.96以上の範囲外の粉体粒子を含有する粉体塗料を用いる場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料セットが提供される。
請求項13に係る発明によれば、比(B/A)が0.3以上の範囲外である場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料セットが提供される。
請求項14に係る発明によれば、粉体粒子が芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有さない場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料セットが提供される。
請求項15に係る発明によれば、粉体塗料が体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有しない場合に比較して、まだら感がより軽減され調色性のより良好な粉体塗料セットが提供される。
以下、本発明の調色方法、粉体塗料組成物及び粉体塗料セットの実施形態について詳細に説明する。
<調色方法>
本実施形態に係る調色方法は、互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を乾式混合して色合わせを行う調色方法であって、前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である方法である。
本実施形態に係る調色方法に用いられる粉体塗料は、粉体粒子に着色剤を含まない透明粉体塗料(クリア塗料)、及び粉体粒子に着色剤を含む着色粉体塗料のいずれであってもよい。
本実施形態に係る調色方法に用いられる粉体塗料の色は特に限定されるものではない。例えば、2色の粉体塗料を用いる場合、シアン色とマゼンタ色の組合せ、シアン色とイエロー色の組合せ、マゼンタ色とイエロー色の組合せ等が挙げられる。3色の粉体塗料を用いる場合、シアン色とマゼンタ色とイエロー色の組合せ等が挙げられる。これらの組合せに対して更に透明粉体塗料を組み合わせてもよい。更に、白色粉体塗料、黒色粉体塗料等を組み合わせてもよい。
通常、互いに色の異なる粉体塗料を混合し、静電塗装ガン等で被塗装物に塗布して当該粉体塗料を焼き付けると、目で見ても塗膜の色彩が不均一と感じることがある。従来、混合する2種以上の粉体塗料の色相および/または色調によっては、塗膜表面に色相斑が発生し、均一な色相および色調の塗膜を得ることが困難になることがあった。そのため、要求される色彩ごとに該色彩を呈する粉体塗料を用意せざるを得ず、その品揃えは膨大な数にのぼっている。そこで、限られた数の着色(原色)粉体塗料を組み合わせて、幅広い色彩に調色する方法の開発が望まれている。
本発明者等は鋭意検討の結果、粉体塗料を乾式混合して色合わせを行う場合に、粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下であることで、まだら感が軽減され調色性が良好になることを見出した。
その結果、従来よりも少ない粉体塗料の種類で幅広い色彩に調色することが可能となる。
なお、本実施形態に係る調色方法は、本実施形態に係る粉体塗料組成物の製造方法に適用されてもよい。
以下、本実施形態で用いられる粉体塗料の詳細について説明する。
本実施形態で用いられる粉体塗料は、粉体粒子を含有する。粉体塗料は、必要に応じて、流動性を高める点から、外部添加剤を含有していてもよい。
[粉体粒子]
本実施形態で用いられる粉体塗料が含有する粉体粒子の構造は特に限定されるものではない。粉体粒子に含有されてもよい後述する顔料が粉体粒子表面に露出するのを抑制する観点から、粉体粒子は、芯部と、芯部の表面を被覆する樹脂被覆部と、を有する構造であることが好ましい。つまり、粉体粒子は、コア/シェル構造を有する粒子であることが好ましい。
顔料を粉体粒子表面に露出させないことで、互いに色の異なる粒子間の帯電量差が小さくなり、塗布時の配合変化が小さくなることで調色性が良好になる。
(粉体粒子の特性)
粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは、1.3以下であり、粉体粒子の帯電安定性、塗装膜の平滑性及び回収粉体粒子の再利用の際の塗布安定性の点で、1.28以下が好ましく、より好ましくは1.25以下である。
粉体粒子の体積平均粒子径D50vは、3μm以上10μm以下であり、混合する2種以上の粉体塗料の塗膜表面の色相斑低減、少量で平滑性の高い塗装膜の形成、塗装装置内での搬送性の点から、4μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましく、5μm以上7μm以下が更に好ましい。
粉体粒子の平均円形度は、0.96以上であることが好ましく、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の流動性の点で、0.97以上がより好ましい。
ここで、粉体粒子の体積平均粒子径D50v、及び体積粒度分布指標GSDvは、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒子径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として算出される。
粉体粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000(シスメックス社製)」を用いることにより測定される。具体的には、予め不純固形物を除去した水100ml以上150ml以下の中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml以上0.5ml以下加え、更に測定試料を0.1g以上0.5g以下加える。測定試料を分散した懸濁液は超音波分散器で1分以上3分以下分散処理を行ない、分散液濃度を3000個/μl以上1万個/μl以下とする。この分散液に対して、フロー式粒子像分析装置を用いて、粉体粒子の平均円形度を測定する。
ここで、粉体粒子の平均円形度は、粉体粒子について測定されたn個の各粒子の円形度(Ci)を求め、次いで、下記式により算出される値である。但し、下記式中、Ciは、円形度(=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長)を示し、fiは、粉体粒子の頻度を示す。
(芯部)
本実施形態で用いられる粉体塗料が含有する粉体粒子は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する。粉体粒子が芯部とこの芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する構造である場合、該芯部が熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含んでいてもよい。芯部は、必要に応じて、着色剤等のその他添加剤を含んでいてもよい。
−熱硬化性樹脂−
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子で使用する様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。本実施形態において(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
・熱硬化性(メタ)アクリル樹脂
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
ここで、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の熱硬化反応性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水基、(ブロック)イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル樹脂の熱硬化反応性基としては、(メタ)アクリル樹脂の製造容易な点から、エポキシ基、カルボキシル基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。特に、粉体塗料の貯蔵安定性および塗装膜外観に優れる点から、熱硬化反応性基の少なくとも一種はエポキシ基であることがより好ましい。
熱硬化反応性基としてエポキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の鎖式エポキシ基含有単量体(例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等)、各種の(2−オキソ−1,3−オキソラン)基含有ビニル単量体(例えば(2−オキソ−1,3−オキソラン)メチル(メタ)アクリレート等)、各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体(例えば3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等)などが挙げられる。
熱硬化反応性基としてカルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、各種のカルボキシル基含有単量体(例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等)、各種のα,β−不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのモノエステル類(例えばフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノtert−ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノtert−ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル等)、イタコン酸モノアルキルエステル(例えばイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、イタコン酸モノ2−エチルヘキシル等)などが挙げられる。
熱硬化反応性基として水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、上記各種の水酸基含有(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有ビニルエーテル(例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等)、上記各種の水酸基含有ビニルエーテルとε−カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有アリルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル等)、上記各種の水酸基含有アリルエーテルとε−カプロラクトンとの付加反応生成物などが挙げられる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル単量体以外にも、熱硬化反応性基を有さない他のビニル単量体が共重合されていてもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
なお、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂において、熱硬化反応性基を有するビニル単量体として、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体を使用する場合、熱硬化反応性基を有さない(メタ)アクリル単量体を使用する。
熱硬化反応性基を有さない(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、数平均分子量が1,000以上20,000以下(好ましくは1,500以上15,000以下)の(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
・熱硬化性ポリエステル樹脂
熱硬化性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを少なくとも重縮合した重縮合体である。熱硬化性ポリエステル樹脂の熱硬化反応性基の導入は、多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、熱硬化反応性基として、カルボキシル基、及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これら酸の無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、これら酸の無水物;マレイン酸、イタコン酸、これら酸の無水物;フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、これら酸の無水物;シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビス−ヒドロキシエチルテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、ジエチルプロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート等が挙げられる。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、多塩基酸及び多価アルコール以外の他の単量体が重縮合されていてもよい。
他の単量体としては、例えば、一分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の一塩基酸(例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えば、ひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸等)等が挙げられる。
熱硬化性ポリエステル樹脂の構造は、分岐構造のものでも、線状構造のものでもよい。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、酸価と水酸基価との合計が10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、且つ数平均分子量が1000以上100,000以下のポリエステル樹脂が好ましい。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
なお、熱硬化性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の測定は、JIS K−0070−1992に準ずる。また、熱硬化性ポリエステル樹脂の数平均分子量の測定は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量の測定と同様である。
熱硬化性樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性樹脂の含有量は、粉体粒子全体に対して、20質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上95質量%以下がより好ましい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
−熱硬化剤−
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基の種類に応じて選択する。
具体的には、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がエポキシ基の場合、熱硬化剤としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の酸;これら酸の無水物;これらの酸のウレタン変性物などが挙げられる。これらの中でも、熱硬化剤としては、塗装膜物性、及び貯蔵安定性の点から、脂肪族二塩基酸が好ましく、塗装膜物性の点から、ドデカン二酸が特に好ましい。
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がカルボキシル基の場合、熱硬化剤としては、例えば、種々のエポキシ樹脂(例えばビスフェノールAのポリグリシジルエーテル等)、エポキシ基含有アクリル樹脂(例えばグリシジル基含有アクリル樹脂等)、種々の多価アルコールのポリグリシジルエーテル(例えば1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等)、種々の多価カルボン酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)のポリグリシジルエステル、種々の脂環式エポキシ基含有化合物(例えばビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート等)、ヒドロキシアミド(例えばトリグリシジルイソシアヌレート、β−ヒドロキシアルキルアミド等)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基が水酸基の場合、熱硬化剤としては、例えば、ポリブロックイソシアネート、アミノプラスト等が挙げられる。ポリブロックポリイソシアネートとしては、例えば、各種の脂肪族ジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、各種の環状脂肪族ジイソシアネート(例えばキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等)、各種の芳香族ジイソシアネート(例えばトリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等)などの有機ジイソシアネート;これら有機ジイソシアネートと、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂(例えばポリエステルポリオール)又は水等との付加物;これら有機ジイソシアネート同志の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をも含む重合体);イソシアネート・ビウレット体等の各種ポリイソシアネート化合物を公知慣用のブロック化剤でブロック化したもの;ウレトジオン結合を構造単位として有するセルフ・ブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
熱硬化剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
−着色剤−
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
着色剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
着色剤の含有量は、顔料の種類及び塗装膜に求められる色彩、明度、及び深度等に応じて選択する。例えば、着色剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全樹脂に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、2質量%以上60質量%以下がより好ましい。
−その他添加剤−
その他添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。具体的には、その他添加剤としては、例えば、表面調整剤(シリコーンオイル、アクリルオリゴマー等)、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤等が挙げられる。
(樹脂被覆部)
樹脂被覆部は、樹脂を含む。樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の添加剤(芯部で説明した熱硬化剤、その他添加剤等)を含んでいてもよい。但し、粉体粒子のブリードをより低減する点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることがよい。なお、樹脂被覆部が他の添加剤を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)を占めることがよい。
樹脂被覆部の樹脂は、非硬化性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。但し、樹脂被覆部の樹脂は、塗装膜の硬化密度(架橋密度)向上の点から、熱硬化性樹脂であることがよい。樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、この熱硬化性樹脂としては、芯部の熱硬化性樹脂と同様なものが挙げられる。特に、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合も、熱硬化性樹脂は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。但し、樹脂被覆部の熱硬化性樹脂は、芯部の熱硬化性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種が好適に挙げられる。
樹脂被覆部の被覆率は、ブリード抑制の点から、30%以上100%以下が好ましく、50%以上100%以下がより好ましい。
樹脂被覆部の被覆率は、次の方法により測定された値である。
粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率はXPS(X線光電子分光)測定により求めた。
XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施したが、この装置、条件に限定されるものではない。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の素材に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離することで行う。
具体的には、分離のベースとなる成分スペクトルとして、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、熱硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂等を単独に測定して得られたスペクトルを用い、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
樹脂被覆部の厚さは、ブリード抑制の点から、0.2μm以上4μm以下が好ましく、0.3μm以上3μm以下がより好ましい。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。
粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイアモンドナイフなどで切削することで薄切片を作成する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察し、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定を容易にすることもできる。
(粉体粒子の他の成分)
粉体粒子には、2価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含むことがよい。この金属イオンは、粉体粒子が芯部とこの芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する構造である場合には、芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。粉体粒子に2価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、芯部の熱硬化性樹脂及び樹脂被覆部の樹脂として、ポリエステル樹脂を適用した場合、ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子のブリードが抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
金属イオンとしては、例えば、2価以上4価以下の金属イオンが挙げられる。具体的には、金属イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、及びカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンが挙げられる。
金属イオンの供給源(粉体粒子に添加剤として含ませる化合物)としては、例えば、金属塩、無機金属塩重合体、金属錯体等が挙げられる。この金属塩、及び無機金属塩重合体は、例えば、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集剤として粉体粒子に添加する。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
なお、これら金属イオンの供給源は、凝集剤用途ではなく、単なる添加剤として添加してもよい。
金属イオンの価数は、高い程、網目状のイオン架橋を形成しやすくなり、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で好適である。このため、金属イオンとしては、Alイオンが好ましい。つまり、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。更に、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、金属イオンの供給源のうち、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、無機金属塩重合体が好ましい。このため、金属イオンの供給源としては、特に、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。
金属イオンの含有量は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、前記粉体粒子全体に対して0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まるやすくなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
ここで、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集剤として添加される金属イオンの供給源(金属塩、金属塩重合体)は、粉体粒子の粒度分布及び形状の制御に寄与する。
具体的には、金属イオンの価数は高い程、狭い粒度分布を得る点で好適である。また、狭い粒度分布を得る点で、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、金属塩重合体が好適である。このため、これら点からも、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましく、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が特に好ましい。
また、金属イオンの含有量が0.002質量%以上になるように、凝集剤を添加すると、水性媒体中における樹脂粒子の凝集が進行し、狭い粒度分布の実現に寄与する。また、芯部となる凝集粒子に対して、樹脂被覆部となる樹脂粒子の凝集が進行し、芯部表面全体に対する樹脂被覆部の形成の実現に寄与する。一方、金属イオンの含有量が0.2質量%以下になるように、凝集剤を添加すると、凝集粒子中のイオン架橋の過剰な生成を抑え、融合合一するときに、生成される粉体粒子の形状が球状に近づきやすくなる。このため、これら点からも、金属イオンの含有量は、0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
金属イオンの含有量は、粉体粒子の蛍光X線強度を定量分析することにより測定される。具体的には、例えば、まず、樹脂と金属イオンの供給源とを混合し、金属イオンの濃度が既知の樹脂混合物を得る。この樹脂混合物200mgから、直径13mmの錠剤成形器を用いて、ペレットサンプルを得る。このペレットサンプルの質量を精秤し、ペレットサンプルの蛍光X線強度測定を行って、ピーク強度を求める。同様に、金属イオンの供給源の添加量を変更したペレットサンプルについても測定を行い、これらの結果から検量線を作成する。そして、この検量線を用いて、測定対象となる粉体粒子中の金属イオンの含有量を定量分析する。
金属イオンの含有量の調整方法としては、例えば、1)金属イオンの供給源の添加量を調整する方法、2)粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集工程において、金属イオンの供給源として凝集剤(例えば金属塩、又は金属塩重合体)を添加した後、凝集工程の最後にキレート剤(例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)等)を添加し、キレート剤により金属イオンと錯体を形成させ、その後の洗浄工程等で形成された錯塩を除去して、金属イオンの含有量を調整する方法等が挙げられる。
(外部添加剤)
外部添加剤は、粉体粒子間の凝集の発生を抑制する。これにより、少量の粉体塗料で平滑性の高い塗装膜を形成することができる。外部添加剤の具体例としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等の粒子が挙げられる。
外部添加剤の体積平均粒子径は、10nm以上40nm以下が好ましく、10nm以上30nm以下がより好ましい。体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を用いることで、スプレーガン等で粉体塗料を塗布する際に、空気流で粉体粒子がほぐれて1次粒子として飛翔しやすくなり、粉体粒子が1次粒子の状態で被塗装物に付着し粒径単位の配色(調色)ができるため調色性が良好になる。
外部添加剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
外部添加剤の外添量としては、例えば、粉体粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
[粉体塗料の製造方法]
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、必要に応じて、粉体粒子に対して、外部添加剤を外添することで得られる。
粉体粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。粉体粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、体積粒度分布指標GSDv及び体積平均粒子径を上記範囲に容易に制御できる点から、凝集合一法により、粉体粒子を得ることがよい。
具体的には、
熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
−各分散液準備工程−
まず、凝集合一法で使用する各分散液を準備する。具体的には、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部の樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、第1樹脂粒子分散液及び熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液に代えて、芯部の熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、各分散液準備工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、複合粒子を「樹脂粒子」と称し説明する。
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水性媒体が挙げられる。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
樹脂粒子分散液の製造方法として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂粒子分散液の場合、原料単量体を水性媒体中に乳化し、水溶性開始剤、必要に応じて、分子量制御のために連鎖移動剤を加え加熱し、乳化重合することによって、(メタ)アクリル樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を得る。
また、ポリエステル樹脂粒子分散液の場合、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合を行った後、得られた重縮合体を溶剤(例えば酢酸エチル等)を加え溶解し、さらに、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって、ポリエステル樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を得る。
なお、複合粒子分散液を得る場合、樹脂と熱硬化剤とを混合して、分散媒に分散(例えば転相乳化等の乳化)することで、当該複合粒子分散液を得る
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒子径としては、例えば、1μm以下がよく、0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μmがさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒子径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒子径も同様に測定される。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、熱硬化剤分散液、着色剤分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における樹脂粒子の体積平均粒子径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤分散液中に分散する着色剤の粒子、熱硬化剤分散液中に分散する熱硬化剤の粒子についても同様である。
−第1凝集粒子形成工程−
次に、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
なお、第1凝集粒子形成工程においては、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む複合粒子分散液と、着色剤分散液と、を混合し、混合分散液中で、複合粒子と着色剤とをヘテロ凝集させて、第1凝集粒子を形成してもよい。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、金属塩、金属塩重合体、金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
ここで、凝集剤としての金属塩、金属塩重合体、金属錯体は、金属イオンの供給源として用いる。これらの例示について、既述の通りである。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤が挙げられる。キレート剤として、具体的には、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
−第2凝集粒子形成工程−
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
そして、第1凝集粒子、及び第2樹脂粒子が分散された混合分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子を付着するように凝集して、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着した第2凝集粒子を形成する。
具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、第2樹脂粒子分散液を混合し、この混合分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
これにより、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
−融合合一工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
以上の工程を経て、粉体粒子が得られる。
ここで、融合合一工程終了後は、分散液中に形成された粉体粒子に対して、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を実施して乾燥した状態の粉体粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
そして、本実施形態に係る粉体塗料は、必要に応じて、例えば、得られた乾燥状態の粉体粒子に、外部添加剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
本実施形態に係る調色方法では、互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料が乾式混合されるところ、粉体塗料の有する粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。比(B/A)を0.3以上とすることで、まだら感がより軽減され、調色性がより良好となる。
本実施形態において、粉体塗料の乾式混合を実施するための装置としては、例えば、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等が挙げられる。
<粉体塗料組成物>
本実施形態に係る粉体塗料組成物は、互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体粒子を含有し、前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下であるものである。
本実施形態に係る粉体塗料組成物は、本実施形態に係る調色方法により製造されたものであってもよい。
本実施形態に係る粉体塗料組成物は互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体粒子を含有すればよく、必要に応じて外部添加剤等を含有してもよい。
本実施形態に係る粉体塗料組成物に用いられる粉体粒子としては、本実施形態に係る調色方法で用いられる粉体粒子が適用される。
本実施形態に係る粉体塗料組成物において、外部添加剤の外添量としては、例えば、本実施形態に係る粉体塗料組成物に含まれる全粉体粒子の合計に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。本実施形態に係る粉体塗料組成物で用いられる外部添加剤としては、上述の本実施形態に係る調色方法の欄に記載した外部添加剤が適用される。外部添加剤の外添方法としては、上述の本実施形態に係る調色方法の欄に記載した外添方法が適用される。
本実施形態に係る粉体塗料組成物に含有される粉体粒子の色は特に限定されるものではない。例えば、2色の粉体粒子を用いる場合、シアン色とマゼンタ色の組合せ、シアン色とイエロー色の組合せ、マゼンタ色とイエロー色の組合せ等が挙げられる。3色の粉体粒子を用いる場合、シアン色とマゼンタ色とイエロー色の組合せ等が挙げられる。これらの組合せに対して更に透明粉体粒子を組み合わせてもよい。更に、白色粉体塗料、黒色粉体塗料等を組み合わせてもよい。
<粉体塗料セット>
本実施形態に係る粉体塗料セットは、互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を有し、前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下であるものである。
本実施形態に係る粉体塗料セットに用いられる粉体塗料としては、本実施形態に係る調色方法で用いられる粉体塗料が適用される。
本実施形態に係る粉体塗料セットに用いられる粉体塗料の色は特に限定されるものではない。例えば、2色の粉体塗料を用いる場合、シアン色とマゼンタ色の組合せ、シアン色とイエロー色の組合せ、マゼンタ色とイエロー色の組合せ等が挙げられる。3色の粉体塗料を用いる場合、シアン色とマゼンタ色とイエロー色の組合せ等が挙げられる。これらの組合せに対して更に透明粉体塗料を組み合わせてもよい。更に、白色粉体塗料、黒色粉体塗料等を組み合わせてもよい。
<塗装品/塗装品の製造方法>
本実施形態に係る塗装品は、本実施形態に係る調色方法により調色された粉体塗料により塗装された塗装品であってもよいし、本実施形態に係る粉体塗料組成物を粉体塗料として用いて塗装された塗装品であってもよいし、本実施形態に係る粉体塗料セットに含まれる各粉体塗料を用いて調色された混合後の粉体塗料により塗装された塗装品であってもよい。
そして、本実施形態に係る塗装品の製造方法は、本実施形態に係る調色方法により調色された粉体塗料、本実施形態に係る粉体塗料組成物又は本実施形態に係る粉体塗料セットに含まれる各粉体塗料を用いて調色された混合後の粉体塗料により塗装する塗装品の製造方法である。
具体的には、塗装品は、被塗装面に粉体塗料又は粉体塗料組成物を塗装した後、加熱(焼き付け)して粉体塗料又は粉体塗料組成物を硬化させた塗装膜を形成することにより得られる。粉体塗料又は粉体塗料組成物の塗装、及び加熱(焼き付け)は、一括して行ってもよい。
粉体塗料又は粉体塗料組成物の塗装は、静電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装、流動浸漬等の周知の塗装方法を利用する。粉体塗料又は粉体塗料組成物の塗装膜の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下がよい。
加熱温度(焼付温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)により調節する。
粉体塗料又は粉体塗料組成物を塗装する対象物品は、特に、制限はなく、各種の金属部品、セラミック部品、樹脂部品等が挙げられる。これら対象物品は、板状品、線状品等の各物品への成形前の未成形品であってもよいし、電子部品用、道路車両用、建築内外装資材用等に成形された成形品であってもよい。また、対象物品は、被塗装面に、予め、プライマー処理、めっき処理、電着塗装等の表面処理が施された物品であってもよい。
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
(熱硬化性ポリエステル樹脂1の調製)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入口、精留塔を備えた反応容器に下記組成の原料を仕込み窒素雰囲気下で撹拌をおこないながら240℃に昇温し、重縮合反応をおこなった。
・テレフタル酸: 742質量部(100モル%)
・ネオペンチルグリコール: 312質量部(62モル%)
・エチレングリコール: 59.4質量部(20モル%)
・グリセリン: 90質量部(18モル%)
・ジ−n−ブチル錫オキサイド: 0.5質量部
得られた熱硬化性ポリエステル樹脂1は、ガラス転移温度55℃、酸価(Av)8mgKOH/g、水酸基価(OHv)70mgKOH/g、重量平均分子量26000、数平均分子量8000となった。
(複合粒子分散液1の調製)
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械株式会社製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル180質量部とイソプロピルアルコール80質量部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・熱硬化性ポリエステル樹脂1: 240質量部
・ブロックイソシアネート硬化剤VESTAGONB1530(EVONIK社製): 60質量部
・ベンゾイン: 3質量部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F BASF社): 3質量部
次に、投入後、スリーワンモーターを用い150rpmで撹拌を施し、上記組成物を溶解させて油相を得た。この撹拌されている油相に、10質量%アンモニア水溶液の1質量部と5質量%水酸化ナトリウム水溶液の47質量部との混合液を5分間で滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900質量部を毎分5質量部の速度で滴下して転相させ、乳化液を得た。
得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械株式会社製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における熱硬化性ポリエステル樹脂及び熱硬化剤を含有した複合粒子の体積平均粒子径は150nmであった。
その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル製、Dowfax2A1、有効成分量45質量%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2質量%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整した。これを熱硬化性ポリエステル樹脂及び熱硬化剤を含有した複合粒子分散液1とした。
(熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液2の調製)
熱硬化性ポリエステル樹脂1を300質量部とし、ブロックイソシアネート硬化剤、ベンゾイン、アクリルオリゴマーを加えなかった以外は、複合粒子分散液1を調製する条件と同様にして、熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液2を得た。
(着色剤分散液(C1)の調製)
・シアン顔料(大日精化(株)製、C.I.Pigment Blue 15:3、(銅フタロシアニン)): 100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK): 15質量部
・イオン交換水: 450質量部
上記成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散してシアン顔料を分散させてなる着色剤分散液を調製した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、着色剤分散液におけるシアン顔料の体積平均粒子径は、0.13μm、着色剤分散液の固形分比率は25質量%であった。
(着色剤分散液(M1)の調製)
・シアン顔料をマゼンタ顔料(キナクリドン系顔料:大日精化社製:クロモファインマゼンタ6887)に変更した以外は着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(M1)を調整した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、着色剤分散液におけるマゼンタ顔料の体積平均粒子径は、0.14μm、着色剤分散液の固形分比率は25質量%であった。
(着色剤分散液(Y1)の調製)
・シアン顔料をイエロー顔料(BASF社製:Paliotol Yellow d1155 )に変更した以外は着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(Y1)を調整した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、着色剤分散液におけるイエロー顔料の体積平均粒子径は、0.13μm、着色剤分散液の固形分比率は25質量%であった。
(着色剤分散液(K1)の調製)
・シアン顔料を黒顔料(キャボット社製:Reagal330 )に変更した以外は着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(K1)を調整した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、着色剤分散液における黒顔料の体積平均粒子径は、0.11μm、着色剤分散液の固形分比率は25質量%であった。
(着色剤分散液(W1)の調製)
・酸化チタン(石原産業製 A−220): 100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK): 15質量部
・イオン交換水: 400質量部
上記成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて3時間分散して酸化チタンを分散させてなる着色剤分散液を調製した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ着色剤分散液における酸化チタンの体積平均粒子径は0.25μm、着色剤分散液の固形分比率は25質量%であった。
(シアン粒子1の調製)
−凝集工程−
・複合粒子分散液1: 325質量部(固形分65質量部)
・着色剤分散液(C1): 3質量部(固形分0.75質量部)
・着色剤分散液(W1): 150質量部(固形分37.5質量部)
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。次いで、1.0質量%硝酸水溶液を用い、pHを2.5に調整した。これに10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.50質量部を加え、分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌機の回転数を調整しながら、50℃まで昇温し、50℃で15分保持した後、凝集粒子の体積平均粒子径が5.5μmとなったところで、熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液2を100質量部ゆっくりと投入した。その後10質量%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70:キレスト株式会社製)を40質量部加えた後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0とした。
−融合合一工程−
30分間保持した後、85℃まで昇温し、1.5時間保持した。光学顕微鏡でほぼ球形化が観察された。
−濾過・洗浄・乾燥工程−
反応終了後、フラスコ内の溶液を冷却し、濾過することにより固形分を得た。次に、この固形分を、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、再度固形分を得た。
次に、この固形分を40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離して得られた固形分を12時間真空乾燥させた後、固形分100質量部に対して0.5質量部の疎水性シリカ(一次粒子径16nm)を混合して、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(シアン粒子1)を得た。
(シアン粒子2の調製)
シアン粒子1の調製において、ニトリロ三酢酸金属塩水溶液を用いず、また10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液1.8質量部とした以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子2を得た。
(シアン粒子3の調製)
シアン粒子1の調製において、ニトリロ三酢酸金属塩水溶液を用いず、また10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液2.2質量部とした以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子3を得た。
(シアン粒子4の調製)
シアン粒子1の調製において、融合合一工程にて85℃まで昇温し、1.2時間保持した以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子4を得た。
(シアン粒子5の調製)
シアン粒子1の調製において、50℃まで昇温し、50℃で15分保持を32℃まで昇温し、32℃で15分保持した以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子5を得た。
(シアン粒子6の調製)
シアン粒子5の調製において、ニトリロ三酢酸金属塩水溶液を用いず、また10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液1.8質量部とした以外はシアン粒子5と同様の方法でシアン粒子6を得た。
(シアン粒子7の調製)
シアン粒子5の調製において、ニトリロ三酢酸金属塩水溶液を用いず、また10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液2.2質量部とした以外はシアン粒子5と同様の方法でシアン粒子7を得た。
(シアン粒子8の調製)
シアン粒子5の調製において、融合合一工程にて85℃まで昇温し、1.2時間保持した以外はシアン粒子5と同様の方法でシアン粒子8を得た。
(シアン粒子9の調製)
シアン粒子1の調製において、50℃まで昇温し、50℃で15分保持を30℃まで昇温し、30℃で15分保持した以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子9を得た。
(シアン粒子10の調製)
シアン粒子1の調製において、50℃まで昇温し、50℃で15分保持を60℃まで昇温し、60℃で25分保持した以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子10を得た。
(シアン粒子11の調製)
シアン粒子10の調製において、ニトリロ三酢酸金属塩水溶液を用いず、また10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液1.8質量部とした以外はシアン粒子10と同様の方法でシアン粒子11を得た。
(シアン粒子12の調製)
シアン粒子10の調製において、ニトリロ三酢酸金属塩水溶液を用いず、また10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液2.2質量部とした以外はシアン粒子10と同様の方法でシアン粒子12を得た。
(シアン粒子13の調製)
シアン粒子10の調製において、融合合一工程にて85℃まで昇温し、1.2時間保持した以外はシアン粒子10と同様の方法でシアン粒子13を得た。
(シアン粒子14の調製)
シアン粒子1の調製において、50℃まで昇温し、50℃で15分保持を63℃まで昇温し、63℃で15分保持した以外はシアン粒子1と同様の方法でシアン粒子14を得た。
(マゼンタ粒子1の調製)
シアン粒子1の調製において、着色剤分散液(C1)の代わりに着色剤分散液(M1)を用いた以外はシアン粒子1と同様の方法でマゼンタ粒子1を得た。
(イエロー粒子1の調製)
シアン粒子1の調製において、着色剤分散液(C1)の代わりに着色剤分散液(Y1)を5質量部用いた以外はシアン粒子1と同様の方法でイエロー粒子1を得た。
(黒粒子1の調製)
シアン粒子1の調製において、着色剤分散液(C1)の代わりに着色剤分散液(K1)を用いた以外はシアン粒子1と同様の方法で黒粒子1を得た。
(白粒子1の調製)
シアン粒子1の調製において、着色剤分散液(C1)を添加しなかった以外はシアン粒子1と同様の方法で白粒子1を得た。
シアン粒子1〜14、マゼンタ粒子1、イエロー粒子1、黒粒子1、白粒子1の特性を表1に示す。
[評価]
−評価サンプル作製−
粉体塗料(組成物)を、粉体塗料用静電スプレー塗装機で、リン酸亜鉛処理を施した0.8mm厚の冷延鋼板上に塗装し、180℃で20分焼付を行なうことによって、硬化塗膜の形成された評価板を得た。
評価に用いた粉体塗料(組成物)を構成する粉体塗料の組合せは以下の通りである。各粉体塗料を、等量ずつ混合して評価用の粉体塗料(組成物)とした。
−色相まだらの評価 −
得られた各塗膜から所定の距離をおいて観察し、塗膜表面の色相まだらを目視にて評価した。
評価基準は以下のとおりとした。
G5:間近で観察しても均一に見える。
G4:0.25m離れて観察して均一に見える。
G3:0.5m離れて観察して均一に見える。
G2:1m離れて観察して均一に見える。
G1:1m離れて観察して色相まだらが見える。
この評価を複数名で実施し平均値を評価結果とした。
なおG3以上を問題ないものとした。
用いた粒子と評価結果を表2乃至表5に示す。
実施例に係る粉体塗料(組成物)は色相まだら評価が良好であった。これに対し比較例に係る粉体塗料(組成物)は色相まだら評価が不良であった。
比較例13の色相まだら評価結果が不良であったが、これは、粉体粒子同士が凝集して塗膜形成している部分が確認され、この凝集物が原因と思われる。

Claims (15)

  1. 互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を乾式混合して色合わせを行う調色方法であって、
    前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、
    前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である調色方法。
  2. 前記粉体粒子が、平均円形度が0.96以上である請求項1に記載の調色方法。
  3. 前記粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上である請求項1又は請求項2に記載の調色方法。
  4. 前記粉体粒子が、前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化剤とを含有する芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の調色方法。
  5. 前記粉体塗料が、体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の調色方法。
  6. 互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体粒子を含有し、
    前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である粉体塗料組成物。
  7. 前記粉体粒子が、平均円形度が0.96以上である請求項6に記載の粉体塗料組成物。
  8. 前記粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上である請求項6又は請求項7に記載の粉体塗料組成物。
  9. 前記粉体粒子が、前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化剤とを含有する芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  10. 体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有する請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  11. 互いに色の異なる少なくとも2種類の粉体塗料を有し、
    前記粉体塗料は粉体粒子を含有し、
    前記粉体粒子が、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有し、体積平均粒子径が3μm以上10μm以下であり、GSDvが1.3以下である粉体塗料セット。
  12. 前記粉体粒子が、平均円形度が0.96以上である請求項11に記載の粉体塗料セット。
  13. 前記粉体粒子のうち、最も体積平均粒子径の大きな粉体粒子についての体積平均粒子径Aと、最も体積平均粒子径の小さな粉体粒子についての体積平均粒子径Bとの比(B/A)が、0.3以上である請求項11又は請求項12に記載の粉体塗料セット。
  14. 前記粉体粒子が、前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化剤とを含有する芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の粉体塗料セット。
  15. 前記粉体塗料が、体積平均粒子径が10nm以上40nm以下の外部添加剤を含有する請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載の粉体塗料セット。
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