JP2015224348A - ダイヤモンドライクカーボン膜の成膜方法 - Google Patents

ダイヤモンドライクカーボン膜の成膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的簡便な方法で製造可能であり、金属基材との密着性に優れたダイヤモンドライクカーボン膜を成膜する方法を提供する。【解決手段】金属基材を真空チャンバ10内に設置して、真空に減圧する工程と、減圧した後のアルゴンガス雰囲気下で、真空チャンバ内に設けられたタングステンフィラメント3に2〜20Aの電流を流し、自転サンプルステージ8上の金属基材に最大値で350V〜1600Vの交流電圧を印加することによって、金属基材表面をアルゴンイオンでボンバードする工程と、前記アルゴンイオンでボンバードされた金属基材表面上に、PVD法によって下地層を成膜する工程と、下地層上に、PVD法またはCVD法によってダイヤモンドライクカーボン膜を成膜する工程と、を有するダイヤモンドライクカーボン膜の成膜方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属基材上にダイヤモンドライクカーボン膜を成膜する方法に関する。
ダイヤモンドライクカーボン膜(以下「DLC膜」と記載することがある。)は耐久性に優れ、低い摩擦係数を示すことから、自動車、機械部品、医療用具を始めとした種々の分野で利用されている。一方で、DLC膜は、基材との密着性に劣り、特に、金属系の基材表面上に直接成膜することは難しい。そのため、実用化を考える際には、密着性を確保するために、DLC膜を形成する前に、予め基材上に下地層を形成することが必要である。
DLC膜と基材との密着性を向上させるためには、下地構造を最適化する方法(特許文献1等)や、窒素を導入しながら基材を改質する方法(特許文献2等)など多様な方法が提案されている。
特開2003−171758号公報 特開2002−88465号公報
しかしながら、特許文献1の方法は、DLC膜と基材との間の中間層として、4層構造を形成するものであり、製造工程が多くなるため、生産性にやや劣るものである。特許文献2の方法は、窒素ガスを導入して窒化層を形成するものであるため、窒化物を形成し得る金属に限られ、また、製造工程がやや複雑であり、生産管理上の難度を有するものである。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、比較的簡便な方法で製造可能であり、金属基材との密着性に優れたDLC膜を成膜する方法を提供することを課題としている。
本発明者らは、金属基材上に下地層を形成する前にイオンボンバードを行い、そのイオンボンバードの条件として、交流電源を併用する方法が有効であることを見出した。そして、従来の膜構成や製造工程を大きく変更することなく、金属基材と下地層の密着性を強化することができ、結果としてDLC膜と金属基材との密着性を大きく向上させることができることを見出した。
本発明の方法は、かかる知見を基になされたものであり、以下のような工程からなるものである。
本発明に係るDLC膜の成膜方法は、金属基材を真空チャンバ内に設置して、真空に減圧する工程と、減圧した後のアルゴンガス雰囲気下で、前記真空チャンバ内に設けられたタングステンフィラメント(以下、「Wフィラメント」と記載する。)に2〜20Aの電流を流し、前記金属基材に最大値で350V〜1600Vの交流電圧を印加することによって、前記金属基材表面をアルゴンイオンでボンバードする工程と、前記アルゴンイオンでボンバードされた金属基材表面上に、PVD法によって下地層を成膜する工程と、前記下地層上に、PVD(Physical Vapor Deposition)法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってダイヤモンドライクカーボン膜を成膜する工程とを有している。
係る構成によると、イオンボンバードによる金属基材表面のクリーニング効果が促進され、表面が活性化されて、金属基材との密着性に優れたDLC膜を成膜することができる。
本発明に係るDLC膜の成膜方法は、前記下地層を成膜する工程で、前記金属基材に、−40V〜−1000Vの直流電圧または最大値で40V〜1000Vの交流電圧を印加することが好ましい。
係る構成によると、金属基材と下地層との密着性をより一層優れたものとすることができる。
本発明に係るDLC膜の成膜方法によると、比較的簡便な方法で製造可能であり、金属基材との密着性に優れたDLC膜を成膜することができる。
本発明のDLC膜の成膜方法に係る第1成膜装置の模式図である。 本発明のDLC膜の成膜方法に係る第2成膜装置の模式図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体例としての実施形態や図面に限定されるわけではない。
本発明において、金属基材とは、金属または合金である。金属としては、鉄系と非鉄系とに分けることができる。鉄系金属、鉄系合金の具体例としては、鋼鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、軸受鋼、高速度工具鋼等がある。非鉄系金属、非鉄系合金の具体例としては、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金、W、WC、Al、Al合金、Ni、Ni合金、Co、Co合金、V、V合金等がある。
本発明は、DLC膜を金属基材上に密着性良く成膜する方法であり、下記の(1)〜(4)の4つの工程を有している。
(1)金属基材を真空チャンバ内に設置して、真空に減圧する工程
(2)金属基材表面をアルゴンイオンでボンバードする工程
(3)前記金属基材表面上に下地層を成膜する工程
(4)前記下地層上にDLC膜を成膜する工程
以下、これらの工程と本発明の成膜方法に用いる成膜装置について説明する。
尚、下記に記載した条件以外の条件については、公知の技術を適宜用いることができる。
(1)金属基材を真空チャンバ内に設置して、真空に減圧する工程
図1は、本発明のDLC膜の成膜方法に係る第1成膜装置の模式図である。本成膜装置は、真空チャンバ10、真空チャンバ10内を真空に排気するための真空排気系1、真空チャンバ10内の温度を制御するためのヒータ4、熱電子を発生させるためのWフィラメント3、Wフィラメント3に電流を流すためのWフィラメント用電源2、スパッタリング用またはアークイオンプレーティング用蒸発源(ターゲット)5、混合ガス導入口6、公転サンプルステージ7、自転サンプルステージ8、交流電源9を備えている。
金属基材(被処理物)は、自転サンプルステージ8上にあるホルダに設置される。本成膜装置では金属基材は、公転サンプルステージ7と自転サンプルステージ8によって自公転を行うことができる。自転サンプルステージ8とその上のホルダと金属基材はいずれも金属製であるため、金属基材の電位とその金属基材が保持されている自転サンプルステージ8の電位は同等である。また、個々の自転サンプルステージ8と公転サンプルステージ7との間は電気的に絶縁されている。そして、個々の自転サンプルステージ8と公転サンプルステージ7は、いずれも真空チャンバ10と電気的に絶縁されている。真空チャンバ10はアースされている。
本工程では、金属基材が成膜装置の真空チャンバ10内に設置され、真空チャンバ10内は真空に減圧される。処理される金属基材は、本工程の前に、表面が洗浄されていることが好ましい、洗浄方法としては、溶剤や界面活性剤等による脱脂、アセトンやエタノール等による超音波洗浄、などがある。洗浄後、溶剤や洗浄液は乾燥等によって除去される。真空に減圧するときの真空度は、不純物成分の混入を防ぐ観点から、10−2Pa台以下にすることが好ましい。しかし、金属基材によっては不純物の影響を考慮しなくてもよいものもあり、必ずしも係る真空度に限定されるわけではない。
(2)金属基材表面をアルゴンイオンでボンバードする工程
本工程は、上記(1)の工程後に、金属基材表面に吸着した水分や洗浄工程で残留した成分をクリーニングするために、アルゴン(以下、「Ar」と記載する。)イオンでボンバードを行う工程である。洗浄工程で残留した成分とは、具体的には、防錆油由来の不純物等である。(1)または(2)の工程の前に、真空チャンバ10内や金属基材表面の吸着水分を蒸発させるために、真空チャンバ10内を100〜1200℃の温度範囲で加熱する工程を設けてもよい。ボンバードのための不活性ガスとしては、安価で入手し易いことから、Arガスを用いる。Arガスの純度は99.9%以上が好ましいが、それ以下でも問題はない。
金属基材表面をArイオンでボンバードする方法を以下に詳しく説明する。
金属基材表面をArイオンでボンバードする工程は、図1の第1成膜装置を用いて行う。始めに、Arガスを真空チャンバ10内に導入し、ガス圧が0.2Pa〜4Paの所定の圧力になるまで待つ。ここで、ガス圧は任意に設定可能である。所定の圧力になった後、真空チャンバ10内に設置されたWフィラメント3に外部電源2から2〜20Aの電流を流す。このことによって、Wフィラメント3が赤熱され、熱電子が放出される。熱電子は、Arガスと衝突することによって、Arがイオン化(正電荷)される。
Wフィラメント3に流す電流値は、熱電子の発生量に関係する。2Aより小さい値ではボンバードの効果は小さくなる。一方、20Aより大きい値では、ボンバード効果が強過ぎて金属基材表面を劣化させてしまい、密着性不良の原因となる。以上の観点から、電流値のより好ましい下限は3Aであり、更に好ましくは4Aである。また、電流値のより好ましい上限は15Aであり、更に好ましくは10Aである。
第1成膜装置において、金属基材は、Aグループの自転サンプルステージ8上の金属基材とBグループの自転サンプルステージ8上の金属基材の2つのグループに分けられる。Aグループの自転サンプルステージ8が複数あるときは、それらの自転サンプルステージ8は互いに電気的に導通している。同様に、Bグループの自転サンプルステージ8が複数あるときは、それらの自転サンプルステージ8は互いに電気的に導通している。このとき、Aグループの自転サンプルステージ8とBグループの自転サンプルステージ8とは互いに電気的に絶縁されている。また、両グループの自転サンプルステージ8は、いずれも真空チャンバ10に対して電気的に絶縁されている。図1では、Aグループの自転サンプルステージ8が3個、Bグループの自転サンプルステージ8が3個の計6個の自転サンプルステージ8が配置された形式を記載した。自転サンプルステージ8の数については、偶数個のステージ数であれば、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20個などと組合せは自由に調整することができる。
Aグループの自転サンプルステージ8とBグループの自転サンプルステージ8との間には、交流電源9によって交流電圧が印加される。Wフィラメント3を加熱させると同時に金属基材間に交流電源9によって交流電圧を印加することで、Wフィラメント3によって生成したArイオンによる金属基材のボンバードの作用を高めることができる。金属基材と金属基材の間に交流電源9から交流電圧が印加されることによって、Wフィラメント3と金属基材の間のArイオンの移動に加えて、金属基材と金属基材の間でのArイオンと電子のやり取りが加速される。
すなわち、一方のグループの金属基材に負の電圧が印加されて、Arイオンによるボンバードの効果が高められている間に、もう一方のグループの金属基材には正の電圧が印加されている。金属基材に負の電圧が印加されているときには、イオン化したArは、金属基材の方へ移動し、加速される。そして、Arイオンが金属基材表面をアタックすることによって、金属基材表面がクリーニングされる。一方、金属基材に正の電圧が印加されているときには、電子の照射によって表面が改質される。すなわち、電子線の照射によって表面が活性化され、反応性が高くなることによって、更に金属基材表面のクリーニングおよび改質効果が高められる。
金属基材に印加される交流電圧は、最大値で350V〜1600Vの範囲である。350Vより小さい電圧では電圧値が小さすぎるため、上記の効果が発現しない。また、1600Vより大きい電圧では上記効果が強過ぎるため、金属基材のダメージが大きく、逆に密着性が低下する。以上の観点から、より好ましい電圧の最大値の下限は400Vであり、さらに好ましくは550Vである。また、より好ましい電圧の最大値の上限は1100Vであり、さらに好ましくは1000Vである。また、交流電圧の周波数は、40〜150kHzが好ましい。交流電圧の周波数がこの範囲内にあると、安定して電圧を印加することができる。
Arイオンでボンバードする時間については、金属基材に印加する電圧に応じて適宜変更することができる。1分から120分の範囲にあることが好ましい。Arイオンでボンバードする時間とは、Arイオンによって金属基材の表面をエッチングしている時間のことである。Arイオンでボンバードする時には、金属基材の温度上昇が起こることから、途中に冷却工程を含んでも良いが、その場合はArイオンでエッチングしている時間の合計時間をボンバードする時間とする。ボンバードする時間が1分より短い場合には、ボンバードの不足によって密着性の向上効果が得られなくなる可能性が高くなる。一方、ボンバードする時間が120分より長い場合には、途中に冷却時間を設けても金属基材の温度上昇が大きくなるため、金属基材の種類によっては劣化が起こり、密着性が劣化する原因となる。上記の観点から、ボンバードする時間のより好ましい下限は3分であり、更に好ましい下限は5分である。一方、ボンバードする時間のより好ましい上限は60分であり、更に好ましい上限は30分である。
(3)前記金属基材表面上に下地層を成膜する工程
本工程は、(2)の工程で金属基材表面をクリーニングした後に、密着性を確保するために、下地層を金属基材表面上に成膜する工程である。下地層を形成する材料としては、鉄系金属基材の場合にはCr、Ti、W、WCなどを用いるのが良く、非鉄系金属基材の場合には同種の金属を用いることが好ましい。このことによって密着性を向上させることができる。
下地層は、上記に挙げた金属または合金の単層膜でも良いが、高い密着性が要求される摺動部材向けには、金属または合金の上層に金属または合金とDLC膜の主成分であるカーボンとを混合させた皮膜を形成させた方がよい。さらに、金属または合金とカーボンとを混合させた皮膜は、DLC膜との界面に近づくに従って、カーボンの組成比が増加するような傾斜構造とした方が優れた密着性を発現する。
更に優れた密着性を得るためには、第1の金属または合金層と、第2の金属または合金層と、その上層には第2の金属または合金層とカーボンとの混合層、を形成してもよい。この場合、第1の金属または合金としては、金属基材と親和性の高い金属種または合金種を用い、第2の金属または合金としては、DLC膜と密着しやすいCr、Ti、W、WCとカーボンとの混合層を用いることが有効である。
下地層の成膜にはスパッタリング法、アークイオンプレーティング(AIP)法などのPVD法が適している。PVD法は、目的の金属または合金からなるターゲットを用いることで、容易に目的の金属膜または合金膜を得ることができる。また、カーボンとの混合層を形成する際には、炭化水素系のガスを導入したり、カーボンのターゲットを用いたり、炭化水素系ガスとカーボンターゲットとを併用することによって、容易に目的組成の混合層を得ることができる。
図2は、本発明に係る第2成膜装置の模式図である。第2成膜装置は、自転サンプルステージ8と電源11を除いて、前記の第1成膜装置と同様である。そのため、共通する構成物品についての説明は省略する。
第2成膜装置においては、金属基材は、2つのグループに分けることはしない。自転サンプルステージ8はすべて互いに電気的に導通している。また、いずれの自転サンプルステージ8も、真空チャンバ10に対しては電気的に絶縁されている。
第2成膜装置においては、自転サンプルステージ8と真空チャンバ10との間に電源11によって直流電圧が印加される。
金属基材表面上に下地層を成膜する工程は、第1成膜装置または第2成膜装置を用いて行う。金属基材に交流電圧を印加するときは、第1成膜装置を用いる。また、金属基材に直流電圧を印加するときは、第2成膜装置を用いる。
下地層を成膜するためには、金属基材に、直流電圧または交流電圧を印加することによって、ターゲットの成分を有効に金属基材に付着させる。直流電圧を印加するときは、通常、真空チャンバ10に対して金属基材が負の電位となるように印加される。尚、直流電圧は、通常の直流電圧であってもよいし、パルス直流電圧であってもよい。
金属基材に印加する電圧は、直流電圧としては−40V〜−1000Vの負電圧であり、交流電圧としては最大値で40V〜1000Vであることが好ましい。いずれの場合も下限(−40Vまたは40V)から外れると、バイアス電圧印加の効果が見られず、密着力が弱くなる。一方で、上限(−1000Vまたは1000V)から外れると、バイアス電圧印加の効果が強過ぎて、成膜された金属または合金成分がエッチングされてしまうため、極端に成膜速度が落ちてしまう。その結果として密着性が低下する。
更に電圧を制御することによって、膜の緻密さを制御することができる。緻密な膜では、高い変形抵抗を有することから、外力が加わった際に破断する可能性が低くなる。その結果として密着性も向上する。
(4)前記下地層上にDLC膜を成膜する工程
本工程で、下地層上にDLC膜を成膜する。DLC膜の成膜方法は、PVD法、CVD法のいずれの方法でも良い。
PVD法としては、アークイオンプレーティング(AIP)法やスパッタリング法などを用いることができる。固体のカーボンターゲットを主原料として、DLC膜を形成することによって、水素を含まないDLC膜を形成することができる。また、成膜時に炭化水素ガスを導入することによって、水素を含有させたDLC膜を形成することもできる。更には、摩擦係数や耐摩耗性を制御するために、炭素と水素以外の元素を添加したDLC膜であってもよい。
CVD法では、炭化水素ガスを主成分とし、金属基材に電圧または電力を印加することによって、炭化水素ガスを分解して、DLC膜を成膜することができる。金属基材に印加する電圧または電力の方式としては、DC、パルスDC、ACいずれの方式で成膜されたDLC膜であってもよい。更には、炭化水素ガス以外にも、ケイ素や各種金属成分、またはそれらの酸化物を含むガスを用いて成膜した添加物含有DLC膜であってもよい。
下地層上にDLC膜を成膜する工程は、第1成膜装置または第2成膜装置を用いて行う。金属基材に交流電圧を印加するときは、第1成膜装置を用いる。また、金属基材に直流電圧を印加するときは、第2成膜装置を用いる。尚、直流電圧は、通常の直流電圧であってもよいし、パルス直流電圧であってもよい。
DLC膜を成膜するためには、金属基材に、直流電圧または交流電圧を印加することによって、ターゲットの成分を有効に金属基材に付着させる。
以上述べてきたように本発明では、金属基材表面をArイオンでボンバードする工程において、交流電源を用いて金属基材に交流電圧を印加することによって、金属基材表面のクリーニングおよび改質効果が加速されて、ボンバードの効果が更に高められている。その結果、下地層の金属基材に対する密着性が向上し、DLC膜と金属基材との密着性向上につながっている。
本発明のDLC膜の成膜方法は、真空チャンバを有する気相成膜装置を使用し、電源装置を具備して、金属基材に交流電圧を印加するという比較的簡便な方法によって、DLC膜を成膜することが可能である。金属基材との密着性に優れたDLC膜を成膜することができるため、例えば、摺動部材、金型、切削工具類、耐摩耗性機械部品、研磨材、磁気・光学部品等の各種部品の保護膜として、また耐摩耗性を向上させる上で有用な方法である。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の構成要件を満たさない比較例と比較して具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(試験No.1〜24)
神戸製鋼社製アンバランストマグネトロンスパッタリング(UBM202)装置を用いて成膜を行った。金属基材は、密着性評価用として表面を鏡面研磨した超硬合金(UTi20t、三菱マテリアル社製)および高速度工具鋼SKH51(HRC65)を用いた。成膜装置としては、図1に示した第1成膜装置に相当する2つのグループの自転サンプルステージを有する成膜装置を用い、金属基材をこれら自転サンプルステージにセットした。
始めに、金属基材を装置内に導入後、1×10−3Pa以下に減圧・排気した。その後、Arガスをチャンバ内に導入して、チャンバ内のガス圧が0.6Paとなるように調整した。まず、金属基材の表面のArイオンによるボンバードを行った。表1に記載したように、Wフィラメント電流を1〜22Aの範囲で設定値を定めて印加すると同時に、2つのグループの金属基材間に交流電圧を最大値として200〜1700Vの範囲で設定値を定めて印加した。このとき、交流電圧の周波数は、75kHzとした。Arイオンボンバード時間は、5分間で一定とした。比較例として、DC電源またはパルスDC電源にて金属基材に負電圧として500V〜1500Vの範囲で設定値を定めて印加したものを作製した。
次に下地層の成膜工程を実施した。成膜装置としては、第1成膜装置を用いた。成膜に用いるターゲットとしてCrターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜を実施した。最初に、純Cr層を成膜するために、Arガスのみをチャンバ内に導入し、ガス圧を0.6Paとし、成膜時のCrターゲットへの印加電力は2.0kWとし、金属基材にAC電源を用い、最大値として200Vでバイアス電圧を印加して、2分間成膜を行った。
連続して、Cr−C傾斜組成膜を成膜した。傾斜組成構造を作製するために以下のような操作を行った。Crターゲットへの印加電力を当初の2.0kWから1.0kWまで連続的に低下させると同時に、Ar比率が100%であったチャンバ内の当初のガス組成を連続的にアセチレン80%、Ar20%まで変化させた。この間のガス圧は、0.6Paで一定とした。このように操作することによって、Cr−C傾斜組成膜が形成された。下地層成膜時に、金属基材に印加するバイアス電圧としては、AC電源を用い、最大値が200Vで一定として、5分間成膜した。
最後のDLC膜の成膜工程では、アセチレンガスのみをチャンバ内に導入し、ガス圧を2PaとしてCVD法による成膜を実施した。成膜装置としては、金属基材に交流電圧を印加するときは、第1成膜装置を用い、金属基材に直流電圧を印加するときは、第2成膜装置を用いた。金属基材に印加するバイアス電圧は、−900VのパルスDC電源の電力制御とするか、または0.5kWのAC電源の電力制御とした。DLC皮膜の厚さは、あらかじめDLC膜のみを修正液を塗布したSiウエハ上に成膜して、成膜後に、修正液を除去して、金属基材と皮膜との段差を表面粗さ計によって測定して、成膜速度を算出した上で、2μmとなるように制御した。
試験No.18〜23は、Arイオンボンバード工程において、金属基材に負の直流電圧を印加した本発明の比較例である。試験No.18〜20では、金属基材に対する印加電源にDC電源を使用し、試験No.21〜23では、金属基材に対する印加電源にパルスDC電源を使用した。そのため、試験No.18〜23の比較例では、金属基材に直流電圧を印加するために、第2成膜装置を用いた。これらの比較例は、Arイオンボンバード工程において交流電源を用いない従来の製造方法に相当する。
上述のように本実施例では、金属基材のボンバード条件およびDLC膜の成膜方法を変更し、皮膜構成、各層の膜厚は変化させずに、ボンバード条件の違いが密着性に及ぼす影響について実験を行った。
密着性の評価は、ロックウェル試験による剥離部の観察を実施した。試験片はSKH51金属基材上に成膜させたそれぞれの皮膜を評価した。密着性の評価にはロックウェル試験機にてCスケール(150kgf)(ISO 6508−1)でダイヤモンド圧子押し込み後に、200倍と500倍の光学顕微鏡観察によって圧痕周辺の剥離状況を観察した。クラックのみで剥離なしのときをHF1とし、圧痕周辺部が完全に剥離したときをHF6とする、6段階に分けて評価を行った。
本評価では、HF1からHF3までの膜は、密着性に優れる膜とした。HF1とHF2の膜は、クラックのみで剥離が無い膜であり、特に優れる膜とした。HF4からHF6の膜は、実用上剥離が問題となるレベルであり、密着不良とした。
各試験片の成膜条件と評価結果を表1に示した。
Figure 2015224348
No.1からNo.8は、Arイオンボンバード工程、DLC膜成膜工程共に、AC電源を使用し、Arイオンボンバード工程における交流電圧の最大値を1000Vで一定とし、Wフィラメントへ流す電流値を変化させたときの結果を示す。1Aでは密着性が悪いが、2Aから19AではHF3以上の密着性が得られた。更に22Aでは密着性は悪くなっている。
No.9からNo.17は、Arイオンボンバード工程、DLC膜成膜工程共に、AC電源を使用し、Arイオンボンバード工程におけるWフィラメントへ流す電流値を8Aで一定とし、AC電源での交流電圧の最大値を変化させたときの結果を示す。200Vではボンバードの効果が得られず、密着性は悪い。350〜1500Vでは良好な密着性を示す。1700Vでは密着性は悪化する。
No.18からNo.20は、Arイオンボンバード工程における印加電源をDC電源とし、No.21からNo.23は、パルスDC電源として、金属基材への印加電圧を変化させたときの結果である。Wフィラメントへ流す電流値は8Aとし、DLC膜成膜時の各種パラメータは一致させた。全ての結果において密着性は悪く、AC電源でボンバードを行ったときより悪い結果となっている。
No.24は、No.5と同様の条件とし、DLC膜成膜工程における使用電源のみをパルスDC電源に変更して成膜したものである。結果はNo.5と同様に、良好な密着性が得られている。
(試験No.25〜40)
上記のNo.4の条件にてArイオンボンバード工程およびDLC膜成膜工程を実施し、中間の下地層成膜工程の印加電源、電圧を変化させたときの結果を表2に示した。成膜装置としては、金属基材に交流電圧を印加するときは、第1成膜装置を用い、金属基材に直流電圧を印加するときは、第2成膜装置を用いた。
Figure 2015224348
No.25からNo.32は、印加電源として、AC電源を使用し、そのときの最大値を35〜1100Vまで変化させたときの結果を示す。交流電源では、最大値で35Vでは密着性不足であるが、45V以上では良好な密着性を示した。また、1000Vまでは良好な密着性を示すが、1100Vまで上げると密着性は悪化した。
No.33からNo.40は、印加電源として、DC電源を使用し、そのときの電圧を−35〜−1100Vまで変化させたときの結果を示す。直流電源であっても、負のバイアス電圧を変化させた結果、交流電源の場合とほぼ同様の結果が得られた。
1 真空排気系
2 Wフィラメント用電源
3 Wフィラメント
4 ヒータ
5 スパッタリング用またはアークイオンプレーティング用蒸発源
6 混合ガス導入口
7 公転サンプルステージ
8 自転サンプルステージ
9 交流電源
10 真空チャンバ
11 電源

Claims (2)

  1. 金属基材を真空チャンバ内に設置して、真空に減圧する工程と、
    減圧した後のアルゴンガス雰囲気下で、前記真空チャンバ内に設けられたタングステンフィラメントに2〜20Aの電流を流し、前記金属基材に最大値で350V〜1600Vの交流電圧を印加することによって、前記金属基材表面をアルゴンイオンでボンバードする工程と、
    前記アルゴンイオンでボンバードされた金属基材表面上に、PVD法によって下地層を成膜する工程と、
    前記下地層上に、PVD法またはCVD法によってダイヤモンドライクカーボン膜を成膜する工程とを有するダイヤモンドライクカーボン膜の成膜方法。
  2. 前記下地層を成膜する工程で、前記金属基材に、−40V〜−1000Vの直流電圧または最大値で40V〜1000Vの交流電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドライクカーボン膜の成膜方法。
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