JP4050646B2 - エッチング装置およびエッチング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、いわゆるプラズマエッチ方式のエッチング装置およびエッチング方法に関し、特に例えばシリコン(Si)を含有するDLC(Diamond Like Carbon)膜を除去するのに適した、エッチング装置およびエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、DLC膜は、高硬度で耐摩耗性に優れ、しかも潤滑性が高いという特徴を有している。かかるDLC膜についても、他の被膜と同様、その成膜過程において多少の不良品が発生する。このような不良品は、再度成膜処理を施されることによって良品として再生されるが、その前処理として、不良なDLC膜を除去するべくエッチング処理が行われる。従来、このエッチング処理を行うことのできる装置として、非特許文献1に示すような酸素(O)プラズマを用いるものが知られている。この従来技術によれば、プラズマによってイオン化された酸素(O)が、DLC膜を構成する炭素(C)成分および水素(H)成分のそれぞれと反応する。これによって、DLC膜は、炭素系ガス(COまたはCO)および水(HO)となって除去される。
【0003】
【非特許文献1】
株式会社神戸製鋼所製R&D機“LMH−300”カタログ[平成15年3月20日検索]、インターネット<URL:http://www.kobelco.co.jp/p109/cvd/lmh.htm>
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、シリコンが含有されたいわゆるシリコン含有DLC膜が、注目されている。このシリコン含有DLC膜は、シリコンが含有されていないDLC膜に比べて摩擦係数が小さい、例えば1/3程度であるという特徴を有する。しかし、このシリコン含有DLC膜を除去する必要に迫られたときに上述の従来技術が使用されると、次のような問題が生じる。
【0005】
すなわち、イオン化された酸素は、シリコン含有DLC膜を構成する炭素成分および水素成分のそれぞれと反応する。これによって、これら炭素成分および水素成分は、上述と同様に炭素系ガスおよび水となって除去される。ところが、これと同時に、イオン化された酸素は、シリコン含有DLC膜のシリコン成分とも反応し、これによって被処理物上、厳密には未だ除去されずに残っているシリコン含有DLC膜上に、シリコン系酸化物(SiOまたはSiO)が生成される。このシリコン系酸化物は、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去する上でバリアとなる。従って、かかるシリコン系酸化物が生成されると、その下にあるシリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去することができなくなる。また、このシリコン系酸化物は、新たに生成(堆積)されるだけで、除去されない。つまり、従来技術では、シリコン含有DLC膜を効果的に除去することができない、という問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、シリコン含有DLC膜を効果的に除去することのできるエッチング装置およびエッチング方法を提供することを、目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、シリコンを含有するDLC膜が表面に形成された被処理物が収容される真空槽と、真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、酸素ガスを含む第1ガスを真空槽内に供給する第1供給手段と、酸素ガスの供給によって被処理物上に生成される化合物を除去するための第2ガスを真空槽内に供給する第2供給手段と、第1供給手段を間欠的に有効化する有効化手段と、を具備するエッチング装置である。
【0008】
この第1の発明では、真空槽内に被処理物が収容される。この被処理物の表面には、シリコン含有DLC膜が形成されている。そして、真空槽内には、プラズマ発生手段によってプラズマが発生される。ここで、有効化手段によって第1供給手段が有効化されると、酸素ガスを含む第1ガスが真空槽内に供給される。この第1ガスに含まれる酸素ガスは、プラズマによってイオン化され、イオン化された酸素は、シリコン含有DLC膜を構成する炭素成分および水素成分のそれぞれと反応する。これによって、当該炭素成分および水素成分は、炭素系ガスおよび水となって除去される。これと同時に、イオン化された酸素は、シリコンDLC膜のシリコン成分とも反応する。これによって、被処理物上、厳密には未だ除去されずに残っているシリコン含有DLC膜上に、化合物、具体的にはシリコン系酸化物が生成される。このシリコン系酸化物は、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去する上でバリアとなるが、第1供給手段が非有効化とされたときに除去される。すなわち、第1供給手段が非有効化とされることによって、真空槽内への第1ガスの供給は停止されるが、第2供給手段は有効化されているので、真空槽内への第2ガスの供給は継続される。この第2ガスは、シリコン系酸化物に対して除去作用を有する。従って、シリコン酸化物は、当該第2ガスによる除去作用によって除去される。なお、第1供給手段は、有効化手段によって間欠的に有効化される。つまり、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための処理と、この処理によって被処理物上に形成されるシリコン系酸化物を除去するための処理とが、交互に行われる。
【0009】
なお、第1供給手段の1回当たりの有効化時間、つまりシリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための1回当たりの処理時間は、5秒〜300秒の範囲内であるのが、望ましい。なぜなら、これら炭素成分および水素成分を除去するとき同時にシリコン系酸化物が生成されるという環境下において、当該炭素成分および水素成分を効果的に除去する、換言すれば適切なエッチングレートを得るのに、この時間が適当であるからである。
【0010】
そして、第1供給手段の1回当たりの非有効化時間、つまりシリコン系酸化物を除去するための1回当たりの処理時間もまた、5秒〜300秒の範囲内であるのが、望ましい。
【0011】
また、第2ガスは水素ガスを含むものであるのが、望ましい。すなわち、真空槽内に水素ガスが供給されたときにシリコン系酸化物が除去されることが、実験によって確認された。これは、真空槽内に供給された水素ガスがプラズマによってイオン化され、イオン化された水素がシリコン系酸化物を構成するシリコンおよび酸素のそれぞれと反応し、この結果、シリコン系酸化物はシラン系(SiHなど)ガスおよび水となって除去されるものと考えられる。併せて、第2ガスはアルゴンガスをも含むものとする。
【0012】
さらに、被処理物にバイアス電圧を印加するバイアス印加手段を、設けてもよい。なお、バイアス電圧は周波数が50[kHz]〜250[kHz]のパルス電圧であるのが、望ましい。
【0013】
また、この場合、バイアス電圧の印加によって被処理物に流れる電流を検出する検出手段を、さらに設けてもよい。すなわち、被処理物の表面からシリコン含有DLC膜が除去されていく過程において当該被処理物に流れるバイアス電流の大きさが変化する、具体的には増大することが、実験によって確認された。特に、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されると、当該バイアス電流が安定することが、確認された。つまり、バイアス電流からシリコン含有DLC膜の除去の程度を認識することができる。従って、当該バイアス電流を検出する検出手段を設ければ、その検出結果から、シリコン含有DLC膜の除去の程度、特にシリコン含有DLC膜が略完全に除去されたか否かを判断することができる。
【0014】
第2の発明は、シリコンを含有するDLC膜が表面に形成された被処理物が収容された真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生過程と、酸素ガスを含む第1ガスを真空槽内に供給する第1供給過程と、酸素ガスの供給によって被処理物上に生成される化合物を除去するためのアルゴンガスおよび水素ガスから成る第2ガスを真空槽内に供給する第2供給過程と、を具備し、第1供給過程を間欠的に行う、エッチング方法である。
【0015】
すなわち、この第2の発明は、第1の発明に対応する方法発明である。従って、第1の発明と同様の作用を奏する。
【0016】
なお、この第2の発明においても、被処理物にバイアス電圧を印加するバイアス印加過程を、設けてもよい。
【0017】
また、バイアス電圧の印加によって被処理物に流れる電流を検出する検出過程と、この検出過程における検出結果に基づいてDLC膜の除去の程度を判断する判断過程とを、さらに設けてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。図1に示すように、この実施形態のエッチング装置10は、真空槽12を備えている。この真空槽12は、例えば直径が約1[m]、高さ寸法が約0.8[m]の概略円筒形のものであり、その壁部は、基準電位としての接地電位に接続されている。
【0019】
真空槽12の側壁(図1において左側の壁部)には、排気口14が設けられており、この排気口14は、真空槽12の外部に設置された図示しない排気手段、例えば真空ポンプに結合されている。さらに、真空槽12の上壁の略中央には、開口部16が設けられており、この開口部16を覆うようにプラズマガン18が設けられている。
【0020】
プラズマガン18は、真空槽12内に後述するプラズマ20を発生させるためのものであり、反射電極22,1対の電磁コイル24および26と共に、熱陰極PIG(Penning Ionization Gauge)方式のプラズマ発生源を構成する。具体的には、プラズマガン18は、概略円筒形の形状をしており、その壁部は、真空槽12の壁部と電気的に絶縁されている。そして、このプラズマガン18の底壁の略中央には、円形のプラズマ出力口28が設けられている。一方、上壁は、閉鎖されている。そして、プラズマガン18の内部空間には、熱陰極30,陽極32および電子注入電極34が設けられている。
【0021】
このうち、熱陰極30は、プラズマガン18の上壁の近傍に設けられている。この熱陰極30は、直径が0.8[mm]〜1.0[mm]程度のタングステンフィラメントで構成されており、その両端は、プラズマガン18の外部に設けられた直流電源装置36に接続されている。熱陰極30は、この直流電源装置36からの直流電力の供給によって千数百[℃]〜二千数百[℃]に加熱され、熱電子を放出する。なお、直流電源装置36は、後述するメインコントローラ38によって制御される。
【0022】
一方、陽極32は、モリブデン製の環状体であり、その中空部をプラズマ出力口28に対向させた状態で、熱陰極30の下方に設けられている。この陽極32は、熱陰極30から放出された熱電子を加速させるためのものであり、プラズマガン18の外部に設けられた別の直流電源装置40によって、熱陰極30に対して+40[V]〜+70[V]の電位に維持される。この陽極32の電位(陽極電圧)および当該陽極32に流れる電流(放電電流:厳密には電子注入電極34に流れる電流を含む)Iaの大きさ、および上述の熱陰極30に供給される直流電力の大きさ(熱陰極30の温度)によって、プラズマ20のパワー、つまりプラズマガン出力が決定される。この実施形態では、最大で3[kW]のプラズマガン出力が得られる。なお、直流電源装置40もまた、メインコントローラ38によって制御される。
【0023】
電子注入電極34は、陽極32と同様のモリブデン製の環状体であり、その中空部をプラズマ出力口28に対向させた状態で、当該陽極32の下方に設けられている。この電子注入電極34は、プラズマガン18内の空間電位を安定させ、ひいては真空槽12内の異常放電を抑制するためのものであり、プラズマガン18の外部に設けられたさらに別の直流電源装置42によって、陽極32よりも10[V]ほど低い電位に維持される。なお、この直流電源装置42も、メインコントローラ38によって制御される。また、電子注入電極34は、接地電位に接続されている。
【0024】
さらに、プラズマガン18の側壁には、当該プラズマガン18内に不活性ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスおよび水素ガスを個別に導入するためのガス供給口44が設けられている。すなわち、このガス供給口44には、アルゴンガス導入用のガス供給管46と、水素ガス導入用のガス供給管48とが、並列に結合されている。そして、これらのガス供給管46および48には、それぞれを流れるガスの流量を調整するための流量調整手段、例えばマスフローコントローラ50および52が設けられている。なお、これらのマスフローコントローラ50および52もまた、メインコントローラ38によって制御される。
【0025】
そして、プラズマガン18のプラズマ出力口28と対向するように、真空槽12内の底壁の近傍に、円盤状の反射電極22が設けられている。この反射電極22は、プラズマガン18から流れてくる電子を反射させるためのものであり、電気的に絶縁電位とされている。
【0026】
そして、真空槽12の外部であって、当該真空槽12の上壁の上方に、2つの電磁コイル24および26のうちの一方24が、プラズマガン18の周囲を取り巻くように設けられている。この電磁コイル24は、プラズマガン18内におけるガスの放電を助長させるためのものである。すなわち、電磁コイル24は、これに真空槽12の外部に設けられた図示しない磁界発生用電源装置から直流電力が供給されると、プラズマガン18内に、陽極32の中空部および電子注入電極34の中空部を貫通する方向に沿う方向の磁界を発生させる。この磁界が発生することによって、プラズマガン18内に導入されたアルゴンガスおよび水素ガスは放電(電離)し易くなり、つまりプラズマ20が発生し易くなる。なお、この電磁コイル24から発生される磁界と、次に説明する他方の電磁コイル26から発生される磁界とによって、真空槽12内に後述するミラー磁場が形成される。
【0027】
他方の電磁コイル26は、真空槽12の外部であって、当該真空槽12の底壁の下方に、上述した一方の電磁コイル24と対向するように設けられている。この電磁コイル26は、プラズマ20を真空槽12の中央にビーム状に閉じ込めるためのものである。すなわち、この電磁コイル26に上述の磁界発生用電源装置から直流電力が供給されると、真空槽12内に、電磁コイル24による磁界と同じ方向、つまりプラズマガン18(プラズマ出力口28)から反射電極22に向かう方向に沿う方向の磁界が発生する。この磁界が発生することによって、上述のミラー磁場が形成され、プラズマ20がビーム状に閉じ込められる。なお、このミラー磁場の強さ、具体的には真空槽12の中央の磁束密度は、磁界発生用電源装置から各電磁コイル24および26に供給される直流電力の大きさによって20[G]〜100[G]の範囲で可変できる。この磁界発生用電源装置も、メインコントローラ38によって制御される。
【0028】
このような構成の熱陰極PIG方式のプラズマ発生源によれば、真空ポンプによって真空槽12内およびプラズマガン18内が減圧され、そして、ガス供給口44を介してプラズマガン18内にアルゴンガスまたは水素ガスが導入された状態で、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26のそれぞれに直流電力が供給されると、プラズマ20が発生する。具体的には、熱陰極30から熱電子が放出され、この熱電子は陽極32に向かって加速される。そして、加速された熱電子は、プラズマガン18内に導入されたアルゴンガスおよび水素ガスの各分子(原子)に衝突し、その衝撃によって当該ガス分子が放電(電離)して、アルゴンガス,アルゴンラジカル,水素イオンおよび水素ラジカルが発生し、つまりプラズマ20が発生する。
【0029】
さらに、プラズマ20内の電子は、上述の熱電子と共に、反射電極22に向かって流れる。しかし、反射電極22は絶縁電位とされているため、当該反射電極22に向かって流れる電子は、ここで反射されて、当該反射電極22とプラズマガン18との間で電界振動する。これによって、電子とガス分子とが衝突する確率および回数が増大し、プラズマ20の発生効率が向上する。また、このプラズマ20は、上述のミラー磁場によってビーム状に閉じ込められるので、その密度が向上する。この実施形態では、例えばプラズマガン18内を含む真空槽12内の圧力が0.1[Pa]であるときに、1011[cm−3]台という高密度のプラズマ20が得られる。なお、上述したように、プラズマガン18内の空間電位は電子注入電極34によって一定に保たれているので、当該プラズマガン18内、ひいては真空槽12内での異常放電が抑制される。従って、高密度でありながら、安定したプラズマ20が得られる。
【0030】
そして、真空槽12内には、複数、例えば数個〜十数個の被処理物54,54,・・・を個別に支持するための複数のホルダ56,56,・・・も設けられている。これらのホルダ56,56,・・・は、各被処理物54,54,・・・がプラズマ20の外側(放電領域外)において当該プラズマ20の周囲を取り巻くような配置となるように、当該各被処理物54,54,・・・を支持する。そして、各ホルダ56,56,・・・は、ギア機構58,58,・・・を介して、円盤状の公転台60の周縁部分に結合されており、この公転台60の下面(図1において下側の面)の中央には、回転軸62の一端が固定されている。そして、この回転軸62の他端は、真空槽12の外部に設けられたモータ64のシャフト66に結合されている。
【0031】
つまり、モータ64のシャフト66が図1に矢印68で示す方向に回転すると、公転台60も同方向に回転する。これによって、被処理物54,54,・・・がプラズマ20の周囲を回転し、言わば公転する。さらに、ギア機構58,58,・・・による回転伝達作用によって、被処理物54,54,・・・自体が例えば図1に矢印70,70,・・・で示す方向に回転し、言わば自転する。このように各被処理物54,54,・・・が自公転することで、当該各被処理物54,54,・・・に対する後述のエッチング処理の均一化が図られる。なお、モータ64の駆動も、メインコントローラ38によって制御される。
【0032】
また、各被処理物54,54,・・・には、ホルダ56,56,・・・,ギア機構58,58,・・・,公転台60および回転軸62を介して、真空槽12の外部に設けられたパルス電源装置72から、図2に示すような非対称パルス電圧が、バイアス電圧として印加される。このバイアス印加手段としてのパルス電源装置72もまた、メインコントローラ38によって制御される。具体的には、非対称パルス電圧の周波数f(周期T),デューティ比(周期Tに対するパルス幅(L(ロー)レベル時の時間)Twの比率),Lレベル電圧VaおよびH(ハイ)レベル電圧Vbが、任意に設定される。なお、周波数fは、50[kHz]〜250[kHz]の範囲内で設定される。また、Lレベル電圧Vaは、負電圧(Va<0)とされ、Hレベル電圧Vbは、正電圧(Vb>0)とされる。このパルス電源装置72の最大出力は、10[kW]である。
【0033】
さらに、真空槽12内には、被処理物54,54,・・・を加熱するための温度制御手段、例えば電熱ヒータ74が設けられている。具体的には、電熱ヒータ74は、被処理物54,54,・・・(公転台60の外周縁)よりも外側であって、排気口14と対向する位置に設けられている。そして、この電熱ヒータ74は、真空槽12の外部に設けられている図示しないヒータ用電源装置からの交流電力の供給によって加熱され、その加熱温度(交流電力の大きさ)は、メインコントローラ38によって制御される。
【0034】
また、真空槽12の側壁には、当該真空槽12内に酸素ガスを導入するためのガス供給口76が設けられている。すなわち、このガス供給口76には、酸素ガス導入用のガス供給管78が結合されており、このガス供給管78には、当該酸素ガスの流量を調整するための流量調整手段、例えばマスフローコントローラ80が設けられている。このマスフローコントローラ80も、メインコントローラ38によって制御される。なお、このように上述のアルゴンガスおよび水素ガスとは別に酸素ガスを真空槽12内に導入することとしたのは、当該酸素ガスによってプラズマガン18内の熱陰極30が反応(酸化)するのを防止するためである。
【0035】
メインコントローラ38は、図には示さないが、操作パネルを備えており、この操作パネルには、操作キーおよびディスプレイが設けられている。そして、メインコントローラ38は、操作キーによってエッチング開始の旨の操作が成されると、次に示す要領でボンバード処理を含む一連のエッチング処理を開始させ、操作キーによってエッチング停止の旨の操作が成されると、当該エッチング処理を停止させる。また、操作キーの操作に応じて、上述した陽極電圧や各ガスの流量などの各種情報をディスプレイに表示する。
【0036】
すなわち、今、被処理物54,54,・・・として、それぞれの表面にシリコン含有DLC膜が形成された金属体が、ホルダ54,54,・・・に取り付けられているとする。そして、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26のいずれにも、直流電力が供給されていない状態にあるとする。また、全てのマスフローコントローラ50,52および80は閉じた状態にあり、つまりプラズマガン18内にアルゴンガスおよび水素ガスが供給されておらず、真空槽12内に酸素ガスが供給されていない状態にあるとする。さらに、モータ64が駆動されておらず、また、被処理物54,54,・・・に対してパルス電源装置72からバイアス電圧としての非対称パルス電圧が印加されていないものとする。そして、電熱ヒータ72も非通電状態にあるとする。
【0037】
このような状態において、上述した操作キーによりエッチング開始の旨の操作が成されると、メインコントローラ38は、真空ポンプを制御して、真空槽12内の圧力が所定値、例えば10−3[Pa]になるまで、真空槽12内を排気させる。そして、真空槽12内が当該所定値にまで減圧されると、メインコントローラ38は、モータ64を駆動させる。これによって、被処理物54,54,・・・は、毎分数回転(例えば1[rpm])で公転すると共に、毎分十数回転〜数十回転(例えば15[rpm])で自転する。さらに、メインコントローラ38は、上述したヒータ用電源装置を制御して、電熱ヒータ74に通電させ、各被処理物54,54,・・・を加熱させる。
【0038】
そして、メインコントローラ38は、マスコントローラ50および52を開いて、プラズマガン18内にアルゴンガスおよび水素ガスを供給させると共に、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26のそれぞれに直流電力が供給されるよう、直流電源装置36,40および42を含む各電源装置を制御する。これによって、真空槽12内にプラズマ20が発生する。なお、このとき、メインコントローラ38は、真空槽12内の圧力が数[Pa]、例えば0.1[Pa]に保たれるよう真空ポンプを制御する。さらに、メインコントローラ38は、パルス電源装置72を制御して、各被処理物54,54,・・・に非対称パルス電圧を印加させる。
【0039】
このような条件によって、各被処理物54,54,・・・はボンバード処理される。すなわち、真空槽12内に設置された直後の各被処理物54,54,・・・の表面には、有機汚染物質が化学吸着している。また、当該表面は酸化しており、つまりシリコン系酸化物が形成されている。このことは、X線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)法による検査によって確認された。ボンバード処理によれば、これらの有機汚染物質やシリコン系酸化物が除去される。
【0040】
具体的には、アルゴンイオンおよび水素イオンが、被処理物54,54,・・・の表面に衝突する。これによって、当該表面に吸着している有機汚染物質が除去される。つまり、スパッタされる。さらに、水素イオンが、シリコン系酸化物を構成するシリコンおよび酸素のそれぞれと反応する。この結果、シリコン系酸化物は、シラン系ガスおよび水となって除去される。
【0041】
メインコントローラ38は、かかるボンバード処理を所定時間Ta継続させる。この時間Taは、数分間〜十数分間程度が適当である。そして、この時間Taの経過後、メインコントローラ38は、マスフローコントローラ80を開いて、真空槽12内に酸素ガスを供給させる。なお、これ以外の条件は、上述のボンバード処理と同じである。
【0042】
真空槽12内に供給された酸素ガスは、プラズマ20によって電離され、これによって酸素イオンおよび酸素ラジカルが発生する。このうち、酸素イオンが、被処理物54,54,・・・の表面に衝突して、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分のそれぞれと反応する。この結果、当該炭素成分および水素成分は、炭素系ガスおよび水となって除去される。ただし、これと同時に、酸素イオンがシリコン含有DLC膜のシリコン成分と反応して、被処理物54,54,・・・上、厳密には当該シリコン含有DLC膜上に、シリコン系酸化物が新たに生成される。このシリコン系酸化物は、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去する上でバリアとなる。従って、酸素イオンによる当該炭素成分および水素成分の除去作用、換言すればエッチングレートは、時間の経過と共に低下し、ひいては当該炭素成分および水素成分を除去できなくなる。
【0043】
そこで、メインコントローラ38は、この炭素成分および水素成分を除去するための処理を所定時間Tbだけ実行させた後、マスフローコントローラ80を閉じて、真空槽12内を上述のボンバード処理時と同じ環境に戻す。これによって、被処理物54,54,・・・上に新たに生成されたシリコン系酸化物は、ボンバード処理時と同様に水素ガスと反応することで除去される。そして、このシリコン系酸化物を除去するのに必要かつ十分な時間Tcが経過した時点で、メインコントローラ38は、再度、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するべく、マスフローコントローラ80を開く。
【0044】
これ以降、メインコントローラ38は、上述の如く時間Tbだけマスフローコントローラ80を開くという動作と、時間Tcだけマスフローコントローラ80を閉じるという動作とを、交互に繰り返す。つまり、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための処理と、この処理によって被処理物54,54,・・・上に新たに生成されたシリコン系酸化物を除去するための処理とが、交互に繰り返される。この結果、シリコン含有DLC膜は除去される。
【0045】
図3に、ボンバード処理を含む一連のエッチング処理における各マスフローコントローラ50,52および80の開閉タイミングを示す。同図に示すように、アルゴンガス調整用のマスフローコントローラ50および水素ガス調整用のマスフローコントローラ52が開かれることによって、ボンバード処理が行われる。そして、これらのマスフローコントローラ50および52が開かれてから時間Taが経過した時点で、換言すれば時間Taにわたってボンバード処理が行われた後、酸素ガス調整用のマスフローコントローラ80が開かれる。これによって、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための処理が行われる。そして、この処理が時間Tbにわたって行われた後、マスフローコントローラ80が閉じられ、当該処理によって生成されたシリコン系酸化物を除去するための処理が時間Tcにわたって行われる。これ以降、時間Tbにわたる処理と、時間Tcにわたる処理とが、交互に行われる。なお、時間Tbは、5秒〜300秒の範囲内、好ましくは30秒〜180秒の範囲内に設定される。時間Tcもまた、5秒〜300秒の範囲内、好ましくは30秒〜180秒の範囲内に設定される。
【0046】
この一連のエッチング処理によって、被処理物54,54,・・・の表面からシリコン含有DLC膜が略完全に除去されたら、操作キーによって上述したエッチング停止の旨の操作を行えばよい。すると、メインコントローラ38は、当該一連のエッチング処理を終了させる。具体的には、まず、パルス電源装置72による各被処理物54,54,・・・への非対称パルス電圧の印加を停止させる。そして、プラズマ20の発生を停止させるべく、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26への直流電力の供給を停止させると共に、全てのマスフローコントローラ46,48および80を閉じて、全てのガスの供給を停止させる。さらに、電熱ヒータ74への通電、およびモータ64の駆動を停止させる。そして、真空ポンプによる排気量を徐々に低減させて、真空槽14内を常圧に戻す。これによって、一連のエッチング処理が終了する。
【0047】
なお、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されたか否かは、真空槽12に設けられた図示しないのぞき窓から被処理物54,54,・・・の表面を観察することで、確認できる。すなわち、シリコン含有DLC膜は黒色をしているので、被処理物54,54,・・・の表面全体が当該黒色に代えて金属色(銀白色)に変わったら、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されたものと見なすことができる。
【0048】
また、シリコン含有DLC膜が除去される過程で、パルス電源装置72の出力電流、つまり被処理物52,52,・・・に流れるバイアス電流Ibが変化することが、判った。特に、真空槽12内に酸素ガスが供給されているとき、つまりシリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための処理が行われているときに、このバイアス電流Ibの変化は顕著になる。図4に、このバイアス電流Ibの変化をグラフで示す。
【0049】
この図4に示すように、放電電流Ia(プラズマガン出力)は一定であるのにも係わらず、真空槽12内に酸素ガスが供給されているときのバイアス電流Ibに変化が見える。具体的には、バイアス電流Ibは、或る時点t1から徐々に上昇し始める。そして、時点t2以降、バイアス電流Ibは略一定となる。この時点t2と、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されたと見なされるタイミングとが、略一致することが、確認された。つまり、バイアス電流Ibを監視し、その値が上昇後、一定となる時点t2を捉えることで、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されたことを認識することができる。なお、バイアス電流Ibは、例えばパルス電源装置72の出力側(出力端子)に電流検出器82を設けることによって監視できる。
【0050】
さて、上述の一連のエッチング処理を実現するために、メインコントローラ38は、自身に内蔵された図示しないメモリに記憶されている制御プログラムに従って、図5に示すような手順で動作する。
【0051】
すなわち、操作キーによってエッチング開始操作が成されると、メインコントローラ38は、まず、前準備としての初期処理(ステップS1)を行う。具体的には、真空ポンプによって真空槽12内を排気させた後、モータ64を駆動させ、さらに電熱ヒータ74を加熱させる。
【0052】
そして、マスフローコントローラ46および48を開いてプラズマガン18内にアルゴンガスおよび水素ガスを供給させた後(ステップS3)、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26のそれぞれに直流電力を供給させることによってプラズマ20を発生させる(ステップS5)。そして、パルス電源装置72を制御して、被処理物54,54,・・・に対しバイアス電圧としての非対称パルス電圧を印加させる(ステップS7)。これによって、上述したボンバード処理が行われる。
【0053】
このボンバード処理の開始後、メインコントローラ38は、時間Taが経過したか否かを判断し(ステップS9)、経過していない場合(“NO”の場合)、操作キーによってエッチング停止操作が成されたか否かを判断する(ステップS11)。そして、エッチング停止操作が成されていない場合(“NO”の場合)には、ステップS9に戻る。
【0054】
一方、ステップS9において時間Taが経過すると、メインコントローラ38は、マスフローコントローラ80を開いて、真空槽12内への酸素ガスの供給を開始させる(ステップS13)。そして、この酸素ガスの供給後、時間Tbが経過したか否かを判断する(ステップS15)。ここで、時間Tbが経過していない場合(“NO”の場合)、メインコントローラ38は、操作キーによってエッチング停止操作が成されたか否かを判断する(ステップS17)。そして、エッチング停止操作が成されていない場合(“NO”の場合)には、ステップS15に戻る。
【0055】
ステップS15において時間Tbが経過したと判断すると、メインコントローラ38は、マスフローコントローラ80を閉じて、真空槽12内への酸素ガスの供給を停止させる(ステップS19)。そして、時間Tcが経過したか否かを判断する(ステップS21)。ここで、時間Tcが経過していない場合(“NO”の場合)、メインコントローラ38は、操作キーによってエッチング停止操作が成されたか否かを判断する(ステップS23)。そして、エッチング停止操作が成されていない場合(“NO”の場合)には、ステップS21に戻る。一方、ステップS21において時間Tcが経過すると、メインコントローラ38は、再度真空槽12内へ酸素ガスを供給させるべく、ステップS13に戻る。
【0056】
なお、ステップS11,ステップS17およびステップS23のいずれかにおいてエッチング停止操作が成された場合(“YES”の場合)、メインコントローラ38は、一連のエッチング処理を停止させるための処理を行う(ステップS25)。すなわち、まず、被処理物54,54,・・・へのバイアス電圧の印加を停止させる。そして、プラズマ20の発生を停止させるべく、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26への直流電力の供給を停止させると共に、全てのマスフローコントローラ46,48および80を閉じて、全てのガスの供給を停止させる。さらに、電熱ヒータ74への通電、およびモータ64の駆動を停止させる。そして、真空ポンプによる排気量を徐々に低減させて、真空槽14内を常圧に戻す。これによって、一連のエッチング処理が終了する。
【0057】
以上の説明から明らかなように、この実施形態によれば、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための処理と、この処理に伴って被処理物54,54,・・・上に新たに生成されるシリコン系酸化物を除去するための処理とが、交互に行われる。従って、上述した従来技術では除去することができなかったシリコン含有DLC膜を、効果的に除去することができる。
【0058】
この実施形態では、プラズマ発生手段として、熱陰極PIG方式のプラズマ発生源を採用したが、これに限らない。高周波方式などの他の方式のプラズマ発生源を用いてもよい。
【0059】
また、アルゴンガスは、いわゆる放電用ガスとして機能するが、このアルゴンガスに代えて、ヘリウム(He)やキセノン(Xe)などの他の不活性ガスを用いてもよい。また、この放電用ガスを用いなくてもよい。つまり、水素ガスまたは酸素ガスのみの供給によって、プラズマ20を発生させてもよい。ただし、当該放電用ガスを用いることによって、プラズマ20の密度が向上する。
【0060】
そして、第1供給手段としてのガス供給管48および第2供給手段としてのガス供給管78を、それぞれ別個の供給口44および76に結合させる構成としたが、同じ供給口44または76に結合させてもよい。
【0061】
さらに、有効化手段としてのメインコントローラ38によって酸素ガス調整用のマスフローコントローラ80が開かれているとき、水素ガス調整用のマスフローコントローラ52は開いたままの状態としたが、これに限らない。例えば、これらマスフローコントローラ52および80を交互に開閉させるようにしてもよい。
【0062】
また、電流検出器82による検出結果をメインコントローラ38に入力することによって、当該メインコントローラ38に、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されたか否かを自動的に判断させるようにしてもよい。さらに、この判断結果に基づいて一連のエッチング処理を自動的に終了させるように、メインコントローラ38を構成(プログラム)してもよい。
【0063】
そして、電熱ヒータ74は、不要であれば、図1の構成から取り除いてもよい。すなわち、電熱ヒータ74に通電しなくても、被処理物54,54,・・・は、プラズマ20の影響によって200[℃]〜300[℃]程度まで加熱される。従って、この程度の温度でのみエッチング処理を行う場合には、電熱ヒータ74を取り外してもよい。
【0064】
【実施例】
この発明の実施例として、次のような実験を行った。
【0065】
すなわち、被処理物54,54,・・・として、表面粗さRaが0.015[μm]の丸棒状のSUS304ステンレス鋼に、厚さ3[μm]のシリコン含有DLC膜が形成されたものを採用する。なお、シリコン含有DLC膜は、SUS304ステンレス鋼に対して直接付着し難いので、当該SUS304ステンレス鋼とシリコン含有DLC膜との間には、中間層として、厚さが150[nm]のクロム(Cr)膜、および厚さが150[nm]の炭化シリコン(SiC)膜が、この順番で形成されている。
【0066】
このような被処理物54,54,・・・が真空槽12内に設置された状態で、当該真空槽12内を10−3[Pa]まで減圧させる。その後、アルゴンガスおよび水素ガスを、それぞれ40[mL/min]および20[mL/min]の流量でプラズマガン18内に供給させる。そして、熱陰極30,陽極32,電子注入電極34,電磁コイル24および26のそれぞれに直流電力を供給して、プラズマ20を発生させる。このとき、真空槽12内の略中央において、磁束密度が20[G]になるようにする。また、プラズマガン出力を1.8[kW]に設定する。
【0067】
さらに、被処理物54,54,・・・に対し、バイアス電圧として次のような非対称パルス電圧を印加させる。すなわち、図2において、周期Tを10[μs](周波数f=100[kHz]),デューティ比(Tw/T)を0.7,Lレベル電圧Vaを−730[V],およびHレベル電圧Vbを+37[V]とする。これによって、平均電圧Vcが約−500[V]の非対称パルス電圧を、被処理物54,54,・・・に印加する。そして、モータ64を駆動させて、被処理物54,54,・・・を1[rpm]で公転させると共に、15[rpm]で自転させる。なお、電熱ヒータ72は、非通電状態とする。
【0068】
この条件下でのボンバード処理を、10分間行う。つまり、図3における時間Taを10分とする。そして、この時間Taの経過後、酸素ガスを160[mL/min]の流量で真空槽12内に供給させる。この状態を90秒間継続させる。つまり、図3における時間Tbを90秒とする。さらに、この時間Tbの経過後、酸素ガスの供給を停止させる。そして、この状態を60秒間継続させる。つまり、図3における時間Tcを60秒とする。これ以降は、時間Tbにわたる処理と、時間Tcにわたる処理とを、交互に実行させる。
【0069】
この手順によれば、ボンバード処理を開始してから180分間で、シリコン含有DLC膜が略完全に除去されることが、確認された。なお、このシリコン含有DLC膜と共に、中間層としての炭化シリコン膜も除去される。ただし、クロム膜は除去されない。
【0070】
そして、シリコン含有DLC膜(炭化シリコン膜を含む)が除去された後の被処理物54,54,・・・(クロム膜)の表面の粗さRaを測定したところ、0.016[μm]であった。つまり、一連のエッチング処理による表面荒れは、殆ど確認されなかった。
【0071】
さらに、このエッチング処理後の被処理物54,54,・・・に対して、再度、中間層としての炭化シリコン、およびシリコン含有DLC膜を、この順番でプラズマCVD法により形成した。この結果、シリコン含有DLC膜の機械的性能として、密着力が30[N],ビッカース硬度が1780[HV]および摩擦係数が0.05という、良品と同様の性能が得られた。すなわち、この実施形態によるエッチング処理を行った後、再度成膜処理を施すことによって、不良品を良品に再生できることが、この実験によって確認された。
【0072】
なお、この実施形態のエッチング装置10は、成膜装置としても活用することができる。つまり、同じ真空槽12を用いて、エッチング処理を行った後に、成膜処理を行うことができる。この場合、エッチング処理の終了後、酸素ガスに代えて、成膜しようとする膜に応じた原料ガスを、ガス供給口76から真空槽12内に供給すればよい。例えば、上述した炭化シリコン膜を成膜する場合は、TMS(Tetra Methyl Silane)ガスを供給すればよい。また、シリコン含有DLC膜を成膜する場合には、このTMSガスに加えて、アセチレン(C)ガスを供給すればよい。
【0073】
さらに、この実施形態のエッチング装置10は、いわゆるイオン窒化装置としても活用することができる。この場合、アルゴンガスに代えて、窒素ガスを、ガス供給口44からプラズマガン18内に供給すればよい。
【0074】
【発明の効果】
この発明によれば、シリコン含有DLC膜の炭素成分および水素成分を除去するための処理と、この処理に伴って被処理物上に生成される化合物を除去するための処理とが、交互に行われる。従って、上述した従来技術では除去することができなかったシリコン含有DLC膜を、効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】同実施形態において被処理物に印加されるバイアス電圧の形態を示す図解図である。
【図3】同実施形態において真空槽内に供給されるガスの供給タイミングを示す図解図である。
【図4】同実施形態におけるプラズマガンの放電電流と被処理物に流れるバイアス電流との関係を示すグラフである。
【図5】同実施形態におけるメインコントローラの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 エッチング装置
12 真空槽
18 プラズマガン
20 プラズマ
22 反射電極
24,26 電磁コイル
38 メインコントローラ
44,76 ガス供給口
46,48,78 ガス供給管
50,52,80 マスフローコントローラ

Claims (9)

  1. シリコンを含有するDLC膜が表面に形成された被処理物が収容される真空槽と、
    上記真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
    酸素ガスを含む第1ガスを上記真空槽内に供給する第1供給手段と、
    上記酸素ガスの供給によって上記被処理物上に生成される化合物を除去するためのアルゴンガスおよび水素ガスから成る第2ガスを上記真空槽内に供給する第2供給手段と、
    上記第1供給手段を間欠的に有効化する有効化手段とを具備する、エッチング装置。
  2. 上記第1供給手段の1回当たりの有効化時間は5秒乃至300秒である、請求項1記載のエッチング装置。
  3. 上記第1供給手段の1回当たりの非有効化時間は5秒乃至300秒である、請求項1または2記載のエッチング装置。
  4. 上記被処理物にバイアス電圧を印加するバイアス印加手段をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のエッチング装置。
  5. 上記バイアス電圧は周波数が50kHz乃至250kHzのパルス電圧である、請求項4記載のエッチング装置。
  6. 上記バイアス電圧の印加によって上記被処理物に流れる電流を検出する検出手段をさらに備える、請求項4または5記載のエッチング装置。
  7. シリコンを含有するDLC膜が表面に形成された被処理物が収容された真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生過程と、
    酸素ガスを含む第1ガスを上記真空槽内に供給する第1供給過程と、
    上記酸素ガスの供給によって上記被処理物上に生成される化合物を除去するためのアルゴンガスおよび水素ガスから成る第2ガスを上記真空槽内に供給する第2供給過程と、を具備し、
    上記第1供給過程を間欠的に行う、エッチング方法。
  8. 上記被処理物にバイアス電圧を印加するバイアス印加過程をさらに備える、請求項7記載のエッチング方法。
  9. 上記バイアス電圧の印加によって上記被処理物に流れる電流を検出する検出過程と、
    上記検出過程における検出結果に基づいて上記DLC膜の除去の程度を判断する判断過程とをさらに備える、請求項8記載のエッチング方法。
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