JP4675617B2 - 表面処理装置 - Google Patents

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Description

この発明は、表面処理装置に関し、特に例えばプラズマを利用して被処理物の表面を処理する表面処理装置に関する。
この種の表面処理装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、接地電位(GND)に接続された真空槽の上部略中央に、当該真空槽と電気的に絶縁されたプラズマ発生手段としてのプラズマガンが設けられている。このプラズマガンの内部空間は、その底部略中央に設けられたプラズマ出力口を介して真空槽内と連通しており、当該内部空間には、熱陰極,陽極および電子注入電極という3つの電極が、設けられている。
このうち、熱陰極は、例えばタングステン製フィラメントであり、プラズマガン内の上部の略中央に設けられている。そして、この熱陰極には、プラズマガン(真空槽)の外部にある直流電源装置から直流電力が供給される。一方、陽極は、モリブデン製の扁平な環状体であり、その中空部をプラズマ出力口に対向させた状態で、熱陰極の下方に設けられている。そして、この陽極には、プラズマガンの外部にある別の直流電源装置によって、熱陰極の電位を基準とする正極(プラス)の直流電圧が印加される。また、電子注入電極も、陽極と同様のモリブデン製の扁平な環状体であり、その中空部をプラズマ出力口に対向させた状態、つまり陽極と中心軸を一致させた状態で、当該陽極の下方に設けられている。そして、この電子注入電極は、プラズマガンの外部において接地電位に接続されると共に、当該プラズマガンの外部にあるさらに別の直流電源装置を介して熱陰極用の直流電源装置および陽極用の直流電源装置に接続される。さらに、プラズマガンの側壁には、当該プラズマガン内にアルゴンガス等の放電用ガスを導入するためのガス供給口が、設けられている。
かかるプラズマガンを備えた従来技術によって表面処理が行われる際は、まず、当該プラズマガン内を含む真空槽内が、真空ポンプによって排気される。そして、ガス供給口を介してプラズマガン内に放電用ガスが導入され、この状態で、熱陰極,陽極および注入電極のそれぞれが通電される。すると、熱陰極が加熱され、当該熱陰極から熱電子が放出される。この熱電子は、陽極に向かって加速される。そして、加速された熱電子は、放電用ガスの粒子(分子または原子)に衝突し、その衝撃によって、放電用ガスの粒子が電離して、プラズマが発生する。発生したプラズマは、プラズマ出力口を介して真空槽内に供給され、このプラズマを利用して、例えば放電洗浄(イオンボンバード)処理やイオン窒化処理、成膜処理等の各種表面処理が行われる。
なお、電子注入電極は、プラズマガン内の空間電位を安定化させるために設けられている。即ち、電子注入電極は、上述の如く接地電位に接続されると共に、直流電源装置を介して熱陰極および陽極に接続されている。これによって、熱陰極と陽極との間に発生するプラズマの電位、つまりプラズマガン内の空間電位が、接地電位を基準として安定化される。そして、このようにプラズマガン内の空間電位が安定化されることで、当該プラズマガン内、ひいては真空槽内での異常放電が抑制される。
さらに、電子注入電極は、プラズマ内の電子(一次電子および熱化したプラズマ電子)が真空槽の内壁に流れ込むのを防止する、換言すれば真空槽の内壁が一種の電極として作用するのを防止する機能をも、有する。即ち、表面処理において、特に成膜処理においては、真空槽の内壁が被膜材料によって汚染される。ここで、当該被膜材料が例えばDLC(Diamond Like Carbon)等の絶縁性物質である場合は、成膜処理が進むに連れて真空槽の内壁の導電率が変化する。従って、かかる真空槽の内壁が電極として作用すると、プラズマ諸量(プラズマ電位,プラズマ密度,電子温度等)が徐々に変化し、安定した(再現性の良い)プラズマが得られなくなる。そこで、従来技術では、真空槽の内壁が電極として作用しないように、換言すればプラズマ内の電子が真空槽の内壁ではなく電子注入電極に流れるように、当該電子注入電極用の直流電源装置が制御される。具体的には、電子注入電極と接地電位との間に流れる電流が零となるように、当該電子注入電極に印加される直流電圧が調整される。これによって、プラズマ諸量が一定となり、安定したプラズマが得られるようになる。
特開2004−292934号公報
しかし、上述の従来技術では、熱陰極および陽極の他に、電子注入電極という言わば第3の電極が、プラズマガン内に設けられている。従って、その分、プラズマガン内の構造が複雑になる。また、このように構造が複雑になることによって、当該プラズマガンのメンテナンス作業がし難くなる。特に電子注入電極を交換する際には、その中心を陽極の中心と一致させなければならず、そのような調整(言わば光軸調整)を行いながら当該電子注入電極を取り付けるのは非常に面倒であり、しかも容易ではない。さらに、電子注入電極用にも直流電源装置を設けなければならないので、装置全体のコストが高騰する。
そこで、この発明は、従来よりも構造が簡単でかつ低コストな表面処理装置を提供することを、目的とする。
かかる目的を達成するために、この発明の表面処理装置は、接地電位に接続され内部が排気される真空槽と、真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、このプラズマ発生手段から発生されるプラズマと真空槽の内壁との間に設けられ当該プラズマ内の電子が真空槽の内壁に流れ込むのを阻止する阻止手段と、を具備するものである。
即ち、この発明では、真空槽の内部が排気される。そして、この真空槽内に、プラズマ発生手段によって、プラズマが発生される。ここで、真空槽は、接地電位に接続されている。従って、プラズマ内の電子は、当該真空槽の内壁に流れ込もうとする。しかし、真空槽の内壁とプラズマとの間には、阻止手段が設けられているので、プラズマ内の電子が真空槽の内壁に流れ込むことはない。つまり、真空槽の内壁が電極として作用することはない。
なお、プラズマ発生手段は、電子を放出する電子放出手段と、この電子放出手段の電位を基準として正電圧が印加されると共に接地電位に接続された陽極手段と、これら電子放出手段および陽極手段が設けられた空間に放電用のガスを供給する放電用ガス供給手段と、を備えるものであってもよい。かかる構成によれば、電子放出手段から放出された電子は、陽極手段に向かって加速される。そして、加速された電子は、放電用ガスの粒子に衝突し、その衝撃によって、当該放電用ガスの粒子が電離して、プラズマが発生する。また、陽極手段は、接地電位に接続されており、当該陽極手段には、電子放出手段の電位を基準とする正電圧が印加されている。従って、これら電子放出手段および陽極手段間に発生するプラズマの空間電位は、接地電位を基準として安定化される。
また、プラズマ発生手段は、真空槽と電気的に絶縁され、かつ内部が真空槽内と連通する中空体を、さらに備えるものであってもよい。そして、この中空体内に、電子放出手段および陽極手段が設けられると共に、当該中空体内に、放電用ガスが供給されるようにしてもよい。この場合、プラズマは、中空体内で発生し、当該中空体内から真空槽内に供給される。
さらに、阻止手段は、板状体によって形成されたものであってもよい。具体的には、例えば、真空槽の内壁のうち、プラズマ内の電子が流れ込みそうな部分を、当該板状体によって覆えばよい。かかる板状体を用いることで、阻止手段を簡単かつ安価に形成することができる。
なお、板状体としては、例えば金属板を用いることができる。この場合、当該金属板は、真空槽と電気的に絶縁されることが必要とされる。また、絶縁性部材によって当該板状体を形成してもよい。
そして、この発明は、DLC膜等の絶縁性被膜を形成する表面処理装置に、特に有効である。即ち、絶縁性被膜を形成する際には、真空槽の内壁にも当該絶縁性被膜が付着する。従って、例えば、かかる真空槽の内壁が電極として作用すると、当該真空槽内に発生するプラズマが不安定になる。この発明では、上述の如く真空槽の内壁が電極として作用しないので、絶縁性被膜を形成する場合でも、安定したプラズマを得ることができる。
この発明によれば、真空槽の内壁とプラズマとの間に阻止手段が設けられているので、当該プラズマ内の電子が真空槽の内壁に流れ込むことはない。つまり、従来技術における電子注入電極のような第3の電極およびそれ専用の直流電源装置を設けることなく、安定したプラズマを得ることができる。従って、従来よりも構造が簡単でかつ低コストな表面処理装置を提供することができる。
この発明の一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る表面処理装置10は、概略円筒形の真空槽12を備えている。この真空槽12は、当該円筒形の両端面に当たる面を、上下に位置させた状態、つまり上面および下面とした状態で、配置されている。なお、真空槽12の内径は、例えば約1100[mm]であり、当該真空槽12内の高さ寸法は、例えば約800[mm]である。また、真空槽12は、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばSUS304等のステンレス製とされており、その壁部は、接地電位に接続されている。
さて、真空槽12の底部(図1において下側の壁部)の適宜位置(中心から外れた位置)には、排気口14が設けられており、この排気口14には、図示しない排気管を介して、真空槽12の外部にある排気手段としての真空ポンプ16が結合されている。さらに、真空槽12の上部(図1において上側の壁部)の略中央には、プラズマ発生手段としてのプラズマガン18が、絶縁性フランジ20を介して、つまり真空槽12と絶縁された状態、換言すれば電気的に絶縁電位(フローティング電位)とされた状態で、結合されている。
このプラズマガン18は、中空体としての概略円筒形のステンレス製筺体22を有している。そして、この筺体22の底面(図1において下側の壁部)の中央には、当該筺体22の内部と真空槽12内とを連通させる円筒形のアパーチャ24が、当該筺体22の底面から下方に突出した状態で設けられている。なお、筺体22の内径は、真空槽12の内径よりも小さく、例えば約200[mm]とされている。また、当該筺体22内の高さ寸法もまた、真空槽12の高さ寸法よりも小さく、例えば約200[mm]とされている。そして、アパーチャ24の内径は、筺体22の内径よりも小さく、例えば約80[mm]とされており、当該アパーチャ24の突出量は、約50[mm]とされている。また、アパーチャ24は、任意に着脱可能とされている。
そして、筺体22の内部には、電子放出手段としての熱陰極26と、陽極手段としての陽極28とが、設けられている。このうち、熱陰極26は、直径が0.8[mm]〜1.0[mm]のタングステン製フィラメントで構成されており、筺体22の上面付近において、アパーチャ24と対向するように設けられている。そして、この熱陰極26の両端は、筺体22(真空槽12)の外部にある直流電源装置30に接続されている。熱陰極26は、この直流電源装置30から直流電力、言わばカソード電力Ecが供給されることによって2000[℃]以上に加熱される。そして、このように加熱されることで、当該熱陰極26から熱電子が放出される。
一方、陽極28は、モリブデン製の扁平な環状体であり、その中空部をアパーチャ24に対向させた状態で、熱陰極26の下方に設けられている。なお、当該熱陰極26から陽極28までの距離は、例えば50[mm]〜100[mm]程度とされている。そして、この陽極28は、筺体22の外部において接地電位に接続されると共に、上述とは別の直流電源装置32を介して、熱陰極26(直流電源装置30の陽極端子)に接続されている。これによって、陽極28には、熱陰極26の電位を基準とする正極の直流電圧、言わばアノード電圧Vaが印加される。
なお、上述の熱陰極26に供給されるカソード電力Ecの大きさ(熱陰極26の温度)、および陽極28に印加されるアノード電圧Vaの大きさによって、後述するプラズマ34のパワー、言わばプラズマガン出力Pgが、決定される。また、アノード電圧Vaが変わると、陽極28および熱陰極26間に流れる電流、言わば放電電流Iaも、変わる。この実施形態では、熱陰極26用の直流電源装置30は、最大で40[V]−60[A]の容量を有し、陽極28用の直流電源装置32は、最大で60[V]−100[A]の容量を有する。これによって、最大で6000[W]のプラズマガン出力Pgを得ることができる。なお、熱陰極26用の直流電源装置30に代えて、交流の電源装置を用いることもできる。
さらに、筺体22の側壁には、当該筺体22内に放電用ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスおよび水素(H)ガスを導入するための放電用ガス供給口36が設けられている。このため、図には示さないが、当該放電用ガス供給口36には、放電用ガス供給手段としての放電用ガス配管路が結合される。そして、この放電用ガス配管路および放電用ガス供給口36を介して、筺体22内に、アルゴンガスおよび水素ガスが個別に導入される。なお、放電用ガス配管路には、アルゴンガスおよび水素ガスのそれぞれの流量を調整するための放電用ガス流量調整手段、例えばマスフローコントローラが設けられている。また、放電用ガス供給口36は、熱陰極26と陽極28との間に放電用ガスが供給されるように設けられており、詳しくは熱陰極26に近い位置に設けられている。
そしてさらに、筺体22の側壁には、当該筺体22内に浄化用ガスを導入するための浄化用ガス供給口38も設けられている。ここで、浄化用ガスとは、筺体22(プラズマガン18)内を浄化するためのものであり、具体的には、後述するシリコン含有DLC膜の成膜過程において、筐体22の内壁や熱陰極26,陽極28に炭素(C)が付着するのを防止するためのものである。この実施形態では、当該浄化用ガスとして、例えば酸素(O)ガスが用いられる。このため、浄化用ガス供給口38には、浄化用ガス供給手段としての図示しない浄化用ガス配管路が結合され、この浄化用ガス配管路および浄化用ガス供給口38を介して、筐体22内に、当該酸素ガスが導入される。なお、浄化用ガス配管路にも、浄化用ガス流量調整手段としての図示しないマスフローコントローラが設けられている。また、浄化用ガス供給口38は、陽極28とアパーチャ24との間に浄化用ガスが供給されるように設けられており、詳しくは陽極28寄りの位置に設けられている。
かかるプラズマガン18と対向するように、真空槽12内の底部側の位置に、反射手段としての反射電極40が設けられている。この反射電極40は、プラズマガン18から真空槽12内に供給されるプラズマ34の粒子、特に電子(一次電子および熱化したプラズマ電子)を上方に向けて反射させるためのものであり、概略円皿状(厳密には上方端が開口された高さの低い円筒状)の収容器42と、この収容器42内に収容された金属製ウール44と、によって構成される。このうち、収容器42は、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばステンレスによって形成されており、電気的には絶縁電位とされている。そして、金属製ウール44は、直径が数[μm]〜数十[μm]の繊維状の金属が海綿状に形成されたものであり、例えば10[mm]〜20[mm]程度の厚さで、かつ上面が略平坦になるように、収容器42内に敷き詰められている。なお、金属製ウール44としても、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばスチール(鋼鉄)製またはステンレス製のものが使用される。
また、真空槽12内の上面近傍には、阻止手段としての円板状のプラズマ安定電極46が、当該真空槽12内の上面を覆うように設けられている。なお、このプラズマ安定電極46の直径は、真空槽12の内径よりも少し小さく、例えば1000[mm]とされている。そして、厚さ寸法は、数[mm]、例えば3[mm]〜5[mm]程度とされている。また、当該プラズマ安定電極46の中央には、アパーチャ24との干渉を回避するため、換言すれば当該アパーチャ24を挿通させるための、円形の貫通孔48が穿設されている。この貫通孔48の直径は、アパーチャ24の外径よりも少し大きめ、例えば約100[mm]とされている。かかるプラズマ安定電極46もまた、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばアルミニウム(詳しくは耐食処理が施されたアルミニウム)製とされており、電気的に絶縁電位とされている。また、このプラズマ安定電極46は、真空槽12の横方から任意に着脱可能とされており、このため、図には示さないが、真空槽12の内周壁には、当該プラズマ安定電極46を横方向に案内するための案内レールが、設けられている。
そして、真空槽12の外部には、当該真空槽12の上面および下面のそれぞれの周縁に沿うように、一対の電磁コイル50および52が設けられている。このうち上面側の電磁コイル50は、プラズマガン18(筺体22)の周囲を取り巻くように設けられており、真空槽12の外部にある図示しない第1磁界発生用電源装置から直流電流Icaが供給されることによって、当該プラズマガン18内の放電を助勢する磁場(磁界)を発生する。一方、真空槽12の下面側の電磁コイル52は、当該真空槽12を間に挟んで上面側の電磁コイル50と対向するように設けられており、真空槽12の外部にある図示しない第2磁界発生用電源装置から直流電流Icbが供給されることによって、上面側の電磁コイル50と共に真空槽12内にプラズマ34をビーム状に閉じ込めるための磁場(ミラー磁場)を発生する。なお、各電磁コイル50および52に供給される直流電流IcaおよびIcbの大きさは、任意に調整可能とされており、この実施形態では、当該直流電流IcaおよびIcbを制御することで、真空槽12内の中央付近において20[G]〜100[G]の磁場を得ることができる。
そして、ビーム状に整形されたプラズマ34を中心としてこれを取り囲むように、表面処理の対象である複数(例えば数個〜十数個)の被処理物54,54,…が、真空槽12内に配置される。即ち、真空槽12内には、プラズマ34から距離を置いてこれを取り囲むように、支持手段としての複数のホルダ56,56,…が、当該プラズマ34を中心とする円周方向に沿って等間隔に設けられている。そして、各被処理物54,54,…は、これらのホルダ56,56,…によって1つずつ支持される。なお、それぞれのホルダ56は、ギア機構58を介して、円盤状の公転台60の周縁部分に結合されている。そして、公転台60の底面(図1において下側の面)の中央には、回転軸62の一端が固定されており、当該回転軸62の他端は、真空槽12の外部にあるモータ64のシャフト66に結合されている。
即ち、モータ64のシャフト66が例えば図1に矢印68で示す方向に回転すると、公転台60が同方向に回転し、これに伴って、各被処理物54,54,…がプラズマ34の周りを回転し、言わば公転する。さらに、それぞれのギア機構58による回転伝達作用によって、それぞれのホルダ56は図1に矢印70で示す方向に回転する。そして、このホルダ56自体の回転に伴って、それぞれの被処理物54もまた同方向に回転し、言わば自転する。このように各被処理物54,54,…が自公転することで、当該各被処理物54,54,…に対するプラズマ34の影響力が均一化される。なお、公転速度(回転数)は、例えば0.5[rpm]〜1[rpm]であり、自転速度は、例えば30[rpm]〜60[rpm](公転速度の60倍)である。
さらに、それぞれの被処理物54には、ホルダ56,ギア機構58,公転台60および回転軸62を介して、真空槽12の外部にあるバイアス印加手段としてのパルス電源装置72から、バイアス電圧としての非対称パルス電圧が印加される。この非対称パルス電圧は、ハイレベル(Hレベル)の電圧値が+37[V]、ローレベル(Lレベル)の電圧値が−37[V]以下の、いわゆる負パルス電圧であり、その周波数は、10[kHz]〜250[kHz]の範囲で任意に調整可能とされている。また、当該非対称パルス電圧のデューティ比(1周期に対するハイレベル期間の比率)およびローレベルの電圧値も、任意に調整可能とされている。そして、これら周波数,デューティ比およびローレベル電圧値を調整することで、当該非対称パルス電圧の平均電圧値(直流換算値)Vdcを0[V]〜−1000[V]の範囲で任意に制御することができる。
そして、真空槽12内の側壁の近傍であって、公転台60の外周縁(被処理物54,54,…公転経路)よりも外側の或る位置に、温度制御手段としての電熱ヒータ74が設けられている。この電熱ヒータ74は、被処理物54,54,…を加熱するためのものであり、その加熱温度は、真空槽12の外部にある図示しないヒータ用電源装置によって制御される。
また、真空槽12内の側壁の近傍であって、電熱ヒータ74と対向する位置に、後述するマグネトロンスパッタリング法(以下、単にスパッタリング法と言う。)による成膜処理において使用されるマグネトロンスパッタカソード76が、配置されている。このマグネトロンスパッタカソード76は、真空槽12の中央に向けて配置された平板状のターゲット78と、このターゲット78の背面(真空槽12の外側に向いた面)に近接して設けられたマグネット80とによって、構成されている。このうち、ターゲット78は、例えば純度が99.9[%]以上(いわゆる3N)のチタン(Ti)によって形成されており、その高さ寸法は700[mm]、幅寸法は140[mm]、厚さ寸法は10[mm]とされている。そして、このターゲット78には、真空槽12の外部にある図示しないスパッタ用電源装置から最大で15[kW]の負極の直流電力が供給される。一方、マグネット80は、ターゲット78のスパッタ効率を向上させるためのものであり、図には詳しく示さないが、永久磁石とヨークとを適宜組み合わせたものである。なお、この実施形態では、マグネトロンスパッタカソード76を1つのみ設けているが、生産性を向上させるために複数設けてもよい。
そしてさらに、真空槽12の側壁には、後述するプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜処理において当該真空槽12内に材料ガスとしてのTMS(Tetramethyl
silane;Si(CH)ガスおよびアセチレン(C)ガスを導入するための材料ガス供給口82が設けられている。このため、図には示さないが、当該材料ガス供給口82には、材料ガス供給手段としての材料ガス配管路が結合される。そして、この材料ガス配管路および材料ガス供給口82を介して、真空槽12内に、TMSガスおよびアセチレンガスが個別に導入される。なお、材料ガス配管路にも、TMSガスおよびアセチレンガスのそれぞれの流量を調整するための材料ガス流量調整手段としてのマスフローコントローラが設けられている。そして、材料ガス供給口82は、真空槽12内の上面に近い位置であって、上述したプラズマ安定電極46よりも下方の位置に材料ガスが供給されるように設けられている。また、真空槽12内において材料ガスが効率よく散布されるように、図には示さないが、当該材料ガス供給口82には、真空槽12内に向けて水平に延伸するガスノズルが設けられており、このガスノズルには、その長さ方向に沿って複数のガス噴出孔が穿設されている。
このように構成された表面処理装置10によれば、例えば図2に示すように、それぞれの被処理物54の表面に中間層としてのチタン膜100を形成し、さらにこのチタン膜100の上にシリコンが含有されたDLC膜102を形成することができる。なお、チタン膜100は、スパッタリング法による成膜処理によって形成され、シリコン含有DLC膜102は、プラズマCVD法による成膜処理によって形成される。また、これらの成膜処理に先立って、被処理物54に含まれる不純物ガスを取り除くための脱ガス処理、および当該被処理物54の表面に付着した不純物を取り除くため放電洗浄処理が、この順番で行われる。そして、この実施形態の表面処理装置10によれば、これらの脱ガス処理,放電洗浄処理,スパッタリング法による成膜処理およびプラズマCVD法による成膜処理を、連続して(つまり真空を破らずに1バッチで)行うことができる。
即ち、まず、真空ポンプ16によって、プラズマガン18(筺体22)内を含む真空槽12内が排気される。そして、被処理物54,54,…を自公転させるべく、モータ64が駆動される。さらに、電熱ヒータ74が通電され、被処理物54,54,…が百[℃]〜数百[℃]に加熱される。これによって、被処理物54,54,…内の不純物ガスが排出され、つまり脱ガス処理が行われる。この脱ガス処理の終了後、電熱ヒータ74への通電が停止され、続いて放電洗浄処理が行われる。
放電洗浄処理においては、プラズマガン18内に、アルゴンガスおよび水素ガスが導入される。そして、熱陰極26,陽極28,電磁コイル50および52のそれぞれが通電される。さらに、被処理物54,54,…に対して、バイアス電圧(非対称パルス電圧)が印加される。すると、熱陰極26が加熱され、当該熱陰極26から熱電子が放出される。この熱電子は、陽極28に向かって加速される。そして、加速された熱電子は、アルゴンガスの粒子および水素ガスの粒子に衝突し、その衝撃によって、アルゴンガス粒子および水素ガス粒子が電離し、プラズマ34が発生する。また、このとき、プラズマガン18内には、上方側の電磁コイル50による磁場が作用しているので、熱電子は螺旋運動する。これによって、熱電子がアルゴンガス粒子および水素ガス粒子に衝突する回数および確率が増大し、放電効率が向上する。
そして、プラズマガン18内で発生したプラズマ34は、アパーチャ24を介して真空槽12内に供給され、反射電極40に向かって流れる。しかし、この反射電極40は、絶縁電位とされているので、プラズマ34内の電子は、ここで反射されて、上方、つまりプラズマガン18に向かって流れる。ところが、プラズマガン18(筺体22)もまた、絶縁電位とされているので、当該プラズマ34内の電子は、プラズマガン18と反射電極40との間で電界振動する。さらに、真空槽12内には、上述の如く電磁コイル50および52によって、当該プラズマ34をビーム状に閉じ込めるべく磁場が作用している。従って、プラズマ34内の電子の動きが活性化され、当該プラズマ34の密度が向上する。この実施形態では、例えば真空槽12内の圧力が0.1[Pa]という比較的に低い圧力であるにも拘らず、1011[cm−3]台という高密度なプラズマ34を得ることができる。つまり、この実施形態では、上述した熱陰極26および陽極28を含むプラズマガン18,反射電極40,1対の電磁コイル50および52によって、いわゆる熱陰極PIG(Penning Ionization Gauge)型プラズマ源が構成されており、かかる構成とすることで、高密度なプラズマ34を得ることができる。
なお、プラズマガン18内にある陽極28は、上述の如く接地電位に接続されており、当該陽極28には、熱陰極26の電位を基準とする正極のアノード電圧Vaが印加されている。従って、プラズマガン18内の空間電位は、接地電位を基準として安定化される。このようにプラズマガン18内の空間電位が安定化されることで、当該プラズマガン18内、ひいては真空槽12内での異常放電が抑制される。
さて、真空槽12内においては、被処理物54,54,…にバイアス電圧が印加されているので、当該被処理物54,54,…の表面に、プラズマ34内のアルゴンイオンおよび水素イオンが衝突する。これによって、被処理物54,54,…の表面が洗浄される。そして、かかる放電洗浄処理の終了後、水素ガスの導入が停止され、続いてスパッタリング法による成膜処理が行われる。
スパッタリング法による成膜処理においては、上述したスパッタ用電源装置によってターゲット78が通電される。すると、このターゲット78の表面にアルゴンイオンが衝突し、その衝撃によって当該ターゲット78からチタン粒子が叩き出される(スパッタされる)。そして、このチタン粒子は、被処理物54,54,…の表面に衝突し、堆積する。これによって、被処理物54,54,…の表面にチタン膜100が形成される。そして、このスパッタリング法による成膜処理の終了後、ターゲット78への通電が停止され、続いてプラズマCVD法による成膜処理が行われる。
プラズマCVD法による成膜処理においては、真空槽12内に、TMSガスおよびアセチレンガスが導入される。また、これと同時に、プラズマガン18内に、酸素ガスが導入される。すると、真空槽12内においては、プラズマ34の作用によって、TMSガスおよびアセチレンガスが電離される。そして、当該TMSガスに含まれるシリコン(Si)およびアセチレンガスに含まれる炭素が互いに反応し、その化合物であるシリコン含有DLCが被処理物54,54,…の表面(チタン膜100の上)に堆積する。これによって、シリコン含有DLC膜102が形成される。
また、このとき、アセチレンガスに含まれる炭素が、真空槽12内からアパーチャ24を介してプラズマガン18(筐体22)内に侵入する。これによって、アパーチャ24の内壁、プラズマガン18の内壁,熱陰極26および陽極28が、当該炭素で汚染される。しかし、プラズマガン18内には、上述の如く酸素ガスが導入されているので、当該プラズマガン18内に侵入した炭素は、この酸素ガスと反応して、二酸化炭素(CO)となる。そして、この二酸化炭素は、真空ポンプ16によって、外部に排出される。つまり、プラズマガン18内に酸素ガスが導入されることで、当該プラズマガン18内が炭素で汚染されるのが防止され、つまり浄化される。このことは、プラズマガン18内のメンテナンスを行う上で、特に消耗品である熱陰極26および陽極28の寿命を延ばす上で、極めて有効である。
かかるプラズマCVD法による成膜処理の終了後、全ての通電、およびガスの導入が停止される。そして、暫くの冷却期間が置かれた後、真空槽12内が大気に開放され、当該真空槽12内から被処理物54,54,…が取り出される。これで、この表面処理装置10による一連の処理が完了する。
ところで、上述の放電洗浄処理等の表面処理においては、真空槽内12内に供給されたプラズマ34内の電子が、接地電位に接続された当該真空槽12の内壁に流れ込もうとする。より具体的には、真空槽12の内壁のうち、上面部分、つまり反射電極40が存在せず、また電磁コイル50および52による磁場によって拘束されない部分に、プラズマ34内の電子が流れ込もうとする。しかし、上述したように真空槽12の上面部分はプラズマ安定電極46によって覆われており、このプラズマ安定電極46は電気的に絶縁電位とされている。従って、例えば図1に矢印90,90,…で示すように、プラズマ34内の電子が真空槽12の上面部分に流れ込もうとしても、その進行はプラズマ安定電極46によって阻止される。よって、当該上面部分を含む真空槽12内壁にプラズマ34内の電子が流れ込むことはなく、換言すれば真空槽12の内壁が電極として作用することはない。
このことは、プラズマ34を安定化させる上で、極めて重要である。即ち、表面処理、特にシリコン含有DLC膜102を形成するための成膜処理においては、真空槽12の内壁に、シリコンを含有する軟質な炭素(Polymer Like Carbon)が付着する。この軟質な炭素は、絶縁性物質であるため、成膜処理が進むに連れて(または繰り返される度に)、真空槽12の内壁の導電率が変化する。従って、かかる真空槽12の内壁が電極として作用すると、プラズマ34の諸量が変化し、当該プラズマ34が不安定になる。しかしながら、この実施形態では、上述の如くプラズマ安定電極46によって真空槽12の内壁が電極として作用するのが防止されるので、再現性の良い安定したプラズマ34を得ることができる。
また、シリコン含有DLC膜102の成膜処理においては、反射電極40、特に当該反射電極40の主体である金属製ウール44の表面に、炭素が付着する。そして、この金属製ウール44に付着した炭素が剥離して、被処理物54,54,…の表面に再付着し、当該被処理物54,54,…の表面が汚染されることが、懸念される。しかし、この実施形態によれば、金属製ウール44に堆積した炭素が剥離しない(または剥離し難い)ことが、確認された。これは、金属製ウール44の表面積が大きいこと、およびその柔軟性に起因すると、推察される。即ち、金属製ウール44の表面積は、例えば平板等の平面的なものに比べて、極めて大きい。よって、その分、金属製ウール44に対する炭素の密着力が増大し、当該金属製ウール44に付着した炭素が剥離し難くなるものと、推察される。また、金属製ウール44に付着した炭素は、当該金属製ウール44に応力が働くことによって剥離する。ところが、金属製ウール44は、上述したように細長い繊維状の金属によって形成されているので、これに応力が働いても、その応力に追随して金属製ウール44(繊維状の金属)自体も柔軟に変形し(撓り)、これによっても炭素の剥離が抑制されるものと、推察される。従って、金属製ウール44の表面に付着した炭素によって、被処理物54,54,…の表面が汚染されることはない。
被処理物54として、直径が31[mm]で、厚さ寸法が3[mm]の円板状のSCM415浸炭鋼(表面粗さ;Rmax≦0.1[μm])を用い、かかる被処理物54の一方主面にのみ、図2に示したようなチタン膜100およびシリコン含有DLC膜102を形成する実験を行った。なお、シリコン含有DLC膜102については、シリコンの含有量が比較的に多い層と少ない層とがこの順番で積層された2層構造とした。
即ち、まず、真空ポンプ16によって、真空槽12内を2×10−3[Pa]まで排気する。そして、モータ64を駆動させて、被処理物54,54,…を自公転させる。さらに、電熱ヒータ74に通電して、被処理物54,54,…を150[℃]に加熱して、脱ガス処理を行う。そして、この脱ガス処理を40分間にわたって行った後、電熱ヒータ74への通電を停止し、続いて放電洗浄処理を行う。
放電洗浄処理においては、プラズマガン18内に、40[SCCM]の流量でアルゴンガスを導入すると共に、150[SCCM]の流量で水素ガスを導入する。このとき、真空槽12内の圧力を0.15[Pa]に維持する。この圧力は、図示しないコンダクタンスバルブによって調整される。さらに、熱陰極26,陽極28,電磁コイル50および52に通電して、プラズマ34を発生させる。なお、プラズマガン出力Pgは、500[W]とする。そして、各電磁コイル50および52に供給する電流IcaおよびIcbを、それぞれ8[A]とする。さらに、各被処理物54,54,…に対し平均電圧値Vdcが−600[V]のバイアス電圧を印加する。そして、この条件による放電洗浄処理を20分間にわたって行う。
かかる放電洗浄処理の後、続いて、チタン膜100を形成するための成膜処理を行う。即ち、水素ガスの導入を停止する。そして、アルゴンガスの流量を80[SCCM]とすると共に、真空槽12内の圧力を0.5[Pa]に調整する。さらに、ターゲット78に8[kW](−400V/20A)の直流電力を供給する。これ以外の条件は、放電洗浄処理のときと同様である。そして、かかる条件下で、3分間にわたってプレスパッタ処理(ターゲット78の前面側に設けられた図示しないシャッタを閉じた状態で当該ターゲット78のみをスパッタする処理)を行った後、本編の成膜処理を10分間にわたって行う。これによって、膜厚が約0.2[μm]のチタン膜100が形成された。
そして、チタン膜100の成膜後、シリコン含有DLC膜102を形成するための成膜処理を行う。即ち、ターゲット78への通電を停止する。そして、アルゴンガスの流量を40[SCCM]とする。さらに、真空槽12内に、60[SCCM]の流量でTMSガスを導入すると共に、150[SCCM]の流量でアセチレンガスを導入する。そして、真空槽12内の圧力を0.3[Pa]とし、被処理物54,54,…に印加するバイアス電圧の電圧値Vdcを−550[V]とする。これ以外の条件は、チタン膜100の成膜時と同様である。これによって、シリコン含有DLC膜102のうちシリコンの含有量が比較的に多い層が形成される。この層の成膜時間を5分間とすることで、膜厚は約0.2[μm]となる。
続いて、TMSガスの流量を10[SCCM]に低減すると共に、アセチレンガスの流量を200[SCCM]に増加させる。そして、プラズマガン18内に、酸素ガスを10[SCCM]の流量で導入する。さらに、プラズマガン出力Pgを、2000[W]に増大させる。これ以外の条件は、上述と同様である。これによって、シリコンの含有量が少ない層が形成され、かかる成膜処理を60分間にわたって行うことで、膜厚は約3[μm]となる。
なお、上述の如くプラズマガン18内に酸素ガスを導入することで、当該プラズマガン18内に流入する炭素を排除することができる。また、既にプラズマガン18内(筺体22の内壁,アパーチャ24の内壁,熱陰極26および陽極28)に付着した炭素も、当該酸素ガスと反応して、取り除かれる。
このとき、酸素ガスは、プラズマ34によって電離されるが、この電離によって生じた酸素イオンは、真空槽12内にも流れ込み、シリコン含有DLC膜102(シリコンの含有量が少ない層)内に入り込む。ここで、当該酸素には、シリコン含有DLC膜102の潤滑性を向上させる作用がある。また、このシリコン含有DLC膜102に含まれるシリコンにも、潤滑性を向上させる作用がある。しかし、シリコンの含有量が多いと、シリコン含有DLC膜102の耐摩耗性(硬度)が低下する。このため、この実施例では、当該シリコン含有DLC膜102の上層においてシリコンの含有量を減らしている。その反面、このようにシリコンの含有量が減ることでシリコン含有DLC膜102の潤滑性が低下するが、その低下分は、酸素によって補償される。つまり、酸素ガスは、プラズマガン18内を浄化するという作用の他に、シリコン含有DLC膜102の潤滑性を向上させるという作用をも奏する。
このシリコン含有DLC膜の成膜後、全ての通電、およびガスの導入を停止する。そして、20分間の冷却期間を置いた後、真空槽12を開けて、被処理物54,54,…を取り出し、一連の処理を終了する。
ここで、この一連の処理が施された被処理物54,54,…について、一般に知られているボールオンディク試験により、被膜全体の密着強度(剥離荷重)を測定したところ、4000[N]という極めて高い値が得られた。この値は、例えばエンジン部品用や金型部品用として十分に適用可能な値である。つまり、この実施例によれば、エンジン部品や金型部品等のように高い密着性が要求される用途に十分に対応可能な被膜を得られることが、証明された。
以上のように、この実施形態の表面処理装置10によれば、真空槽12内の上面近傍に円板状のプラズマ安定電極46を設けるだけで、プラズマ34内の電子が真空槽12の内壁に流れ込むのを防止でき、ひいては当該プラズマ34を安定化させることができる。従って、例えば安定したプラズマを得るためにプラズマガン内に電子注入電極という第3の電極を設けると共にそれ専用の直流電源装置を必要とする上述の従来技術に比べて、プラズマガン18を含む表面処理装置10全体の構成を簡素化し、かつ低コスト化することができる。しかも、プラズマ安定電極46は任意に着脱可能とされているので、そのメンテナンスも容易である。
なお、この実施形態においては、表面処理として、放電洗浄処理,スパッタリング法による成膜処理およびプラズマCVD法による成膜処理を行う場合について説明したが、これに限らない。例えば、窒化処理を行う場合や、イオンプレーティング法等の他の方式による成膜処理を行う場合にも、この発明を適用することができる。勿論、被膜の種類も、チタン膜100やシリコン含有DLC膜102に限らない。
また、熱陰極26に供給するカソード電力Ecとして直流電力を用いたが、交流電力を用いてもよい。そして、熱陰極26に代えて、冷陰極等の他の手段を用いてもよい。さらに、陽極28についても、モリブデン製の扁平な環状体としたが、これに限定されるものではない。
さらに、プラズマ安定電極46をアルミニウム製としたが、例えばステンレス等のアルミニウム以外の金属製としてもよい。また、金属に限らず、例えば絶縁性物質によって当該プラズマ安定電極46を形成してもよい。そしてさらに、真空槽12の内壁のうち上面部分のみを当該プラズマ安定電極46によって覆うようにしたが、これ以外の部分を覆ってもよい。ただし、厳密には、プラズマ34内の電子が流れ込みそうな部分のみを覆えば足りる。そして、必要に応じて当該プラズマ安定電極46の形状を成形すればよい。
また、この実施形態において説明した各構成要素の形状や寸法,材質,或いは放電用ガスや材料ガス等の種類,流量等は、飽くまで一例であり、これに限定されるものではない。
この発明の一実施形態の概略構成を示す図解図である。 同実施形態において形成される被膜の断面を示す図解図である。
符号の説明
10 表面処理装置
12 真空槽
16 真空ポンプ
18 プラズマガン
34 プラズマ
46 プラズマ安定電極

Claims (4)

  1. プラズマを利用して被処理物の表面に絶縁性の被膜を形成する表面処理装置において、
    接地電位に接続され内部に上記被処理物が配置される真空槽と、
    上記真空槽と電気的に絶縁された状態で該真空槽と結合され内部が該真空槽内と連通する中空体を備え、該中空体内および該真空槽内が排気された後に、該中空体内で上記プラズマを発生させて該プラズマを該真空槽内に供給するプラズマ発生手段と、
    上記真空槽と電気的に絶縁された状態で該真空槽の内壁のうち上記プラズマ内の電子が流れ込もうとする部分を覆うことで該電子が該真空槽の内壁に流れ込むのを阻止する阻止手段と、
    を具備し、
    上記プラズマ発生手段は、上記中空体内に設けられ電子を放出する電子放出手段と、該中空体内に設けられ該電子放出手段の電位を基準とする正電圧が印加されると共に上記接地電位に接続された陽極手段と、該中空体内に放電用のガスを供給する放電用ガス供給手段と、を備えること、
    を特徴とする、表面処理装置。
  2. 上記真空槽内において該真空槽内と上記中空体内との連通部分であるアパーチャと対向するように設けられ該アパーチャを介して該真空槽内に供給された上記プラズマを該アパーチャに向けて反射させる反射手段と、
    上記アパーチャと上記反射手段との間を延伸するように上記プラズマをビーム状に閉じ込めるための磁界を上記真空槽内に発生させる電磁コイルと、
    をさらに具備し、
    上記阻止手段は上記アパーチャの周縁近傍から上記ビーム状の上記プラズマを中心とする円の半径方向に向かって広がるように設けられた板状体である、
    請求項1に記載の表面処理装置。
  3. 上記真空槽は概略円筒形であり該概略円筒形の両端面に当たる面を上面および下面とした状態で設置され、
    上記真空槽の上記上面の略中央に上記アパーチャが設けられ、
    上記真空槽内における上記アパーチャの真下に該アパーチャと対向するように上記反射手段が設けられ、
    上記板状体は円板状であり上記真空槽の上記上面を覆うように設けられ、
    上記円板状の板状体の略中央に上記アパーチャとの干渉を回避するための貫通孔が穿設された、
    請求項2に記載の表面処理装置。
  4. 上記板状体は金属板である、
    請求項2または3に記載の表面処理装置。
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