JP2015212046A - 親水性部材、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】親水持続性に優れ、生産性に優れた親水性部材を提供すること。
【解決手段】複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、
前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満である、親水性部材である。
【選択図】図1

Description

本発明は、親水性部材、及びその製造方法に関する。
表面が親水性である親水性部材は、水等の極性液体との親和性が向上するため、水等の極性液体と接する環境にて、当該親和性を活用した防曇性物品、防汚性物品、結露抑制性物品、極性液体の循環性を向上させた物品等として利用される。
親水性部材としては、従来、ガラス表面に界面活性剤を含む防曇剤を付着して、水に対する濡れ性を向上させ、微細な水滴を生じさせない方法が知られている(特許文献1)。
また、高い親水性を付与する技術として、ガラス基板表面に光触媒機能を有するTiOを積層し、光触媒活性を利用した方法も知られている(特許文献2)。
一方、表面に微細な凹凸を形成することで防曇性を付与する技術も知られている。
例えば、特許文献3には、透明基材の表面に透明材料からなる微細凹凸構造を備え、当該微細凹凸構造の凸部頂点間隔を可視光線の波長より短くする、所謂モスアイ(蛾の目)構造を利用することにより、反射防止を図ると共に、水との接触角が所望の値となる透明材料を選択することによって、微細凹凸面における濡れ性を制御することが開示されている。
更に、特許文献4には、親水性、防曇性、セルフクリーニング性を発現することを目的として、基材表面の溝の最大幅を400nm以下とし、隣接する溝間の最小幅を800nm以上とする成形構造体が開示されている。
特開2004−263008号公報 特開2002−201045号公報 特開2007−187868号公報 特開2009−193002号公報
前記界面活性剤を用いた親水性部材は、界面活性剤が剥離しやすく、親水持続性に劣っていた。また、光触媒を利用した部材は、バンドギャップを超える程度の光エネルギーを付与する必要があるため、使用場所が限られるという問題があった。
前記モスアイ(蛾の目)構造のように、多数の微小突起を密接して配置した微細凹凸構造は、その表面構造のため、耐汚れ性等の耐久性の点で問題があった。すなわち、その表面構造のため、皮脂等の汚れが付着し易く、また当該汚れは微小突起間の溝奥まで入り込むため、除去が困難であり、表面外観が悪化し易いという問題があった。更に、汚れを拭取る時の圧力で、容易に突起が潰れたり、突起の先端同士が付着する等の塑性変形が生じ、拭いた箇所に拭き痕が残ってしまう場合があるなど、使用中の耐久性に問題があった。このような使用中の汚染や変形は、親水性を劣化させてしまい、親水持続性に劣るものとなってしまう。
また、前記モスアイ(蛾の目)構造のように、多数の微小突起を密接して配置した微細凹凸構造は、製造時に使用される賦型金型を大面積で作製することが容易ではなく、また、複数の微細孔を形成するために陽極酸化やケミカルエッチング、ブラスト等の手法を用いて製造する場合には微細凹凸形状のばらつきを制御する事が難しく、また微細凹凸に賦型樹脂が詰まりやすいため賦型金型の寿命も短いなど、生産性の点からも問題があった。
一方、特許文献4に記載されている所定の幅の溝を、隣接する溝間の最小幅が所定となるように配置されてなる成形体は、反応性エッチング装置を用いてガラス基板へ溝を作製する技術であるため、大面積の成形体を作製することが困難であり、量産性に劣るものであった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、親水持続性に優れ、且つ生産性に優れる親水性部材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る親水性部材は、複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、
前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満であることを特徴とする。
本発明に係る親水性部材の製造方法は、複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満である、親水性部材の製造方法であって、
バイトによる切削により、円柱状母材の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成することにより、賦型用ロール金型を製造する工程と、
前記賦型用ロール金型を使用した賦型処理により、前記線状微細凹凸表面を形成する工程とを有する、親水性部材の製造方法である。
本発明によれば、親水持続性に優れ、且つ生産性に優れる親水性部材、及びその製造方法を提供することができる。
図1は、本発明に係る親水性部材の一例を模式的に示す斜視図である。 図2は、本発明に係る親水性部材の他の一例を模式的に示す斜視図である。 図3は、図1に示す親水性部材10の模式的断面図の一部拡大図である。 図4(A)〜図4(E)は、線状微細凹凸形状の延在方向Yに対する垂直断面の具体例の模式的断面図を示す。 図5(A)〜図5(D)は、線状微細凹凸形状の延在方向Yに対する垂直断面の他の具体例の模式的断面図を示す。 図6は、隣接する線状凸部間隔pの説明に供する図である。 図7は、賦型用ロール金型20の製造工程の説明に供する図である。 図8は、バイトの刃先の線状微細凹凸形状の延在方向に対する垂直断面を一部拡大した模式的断面図である。 図9は、本発明に係る親水性部材の製造方法の一例を示す概略図である。 図10は、実施例1で得られた親水性部材1の断面のSEM写真である。 図11は、線状凸部の延在方向の水の接触角、及び線状凸部の延在方向に対して垂直な方向の水の接触角の説明に供する図である。
以下、本発明に係る親水性部材、及びその製造方法について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルの各々を表す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
[親水性部材]
本発明に係る親水性部材は、複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、
前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満であることを特徴とする。
上記本発明に係る親水性部材について図を参照して説明する。図1及び図2はそれぞれ、本発明に係る親水性部材の一例を模式的に示す斜視図である。図1に示す親水性部材10は、複数の互いに平行な線状凸部2が共通の一方向Yに延在する線状微細凹凸形状3を表面に有し、且つ所定の樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層1を備える。
本発明に係る親水性部材は、図1のように線状微細凹凸層1の1層からなるものであっても良いし、図2のように、基材4の一面側に線状微細凹凸層1を備えた構造であっても良い。
また、本発明に係る親水性部材は、図示しないが、基材4の両面側に線状微細凹凸層1を備えた構造であっても良い。その場合の表裏それぞれの線状微細凹凸形状の延在方向がなす角度については特に制限はない。
図3は、図1に示す親水性部材10の模式的断面図の一部拡大図である。図3においては、線状微細凹凸形状の延在方向Yに対する垂直断面における模式的断面図を示している。線状微細凹凸層1の線状微細凹凸形状3において、線状凸部2は互いに平行であり、隣接する線状凸部2の間隔p、すなわち、線状凸部2の前記垂直断面における端部5から隣接する線状凸部の端部5’までの間隔pの平均値pAVGが500nm以下である。
これら線状凸部同士の間隔(ピッチ)は同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、あるいは所定の繰り返し周期を持っていてもよいが、平均値pAVGが500nm以下である必要がある。
本発明の親水性部材は、複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pが特定の値を有し、前記特定の水の接触角を有する樹脂組成物を用いて線状微細凹凸形状を形成することから、線状微細凹凸形状表面の接触角は、平坦な硬化膜表面に比べて小さくなり、親水性になる又は親水性が強調される。線状微細凹凸形状にもよるが、線状凸部の延在方向及びその垂直方向において、好ましくは60度以下、より好ましくは40度以下の接触角を示すようになる。本発明の親水性部材は、このように、所謂モスアイ構造のような表面積を大きくすることにより親水性が強調される効果が得られながら、耐久性に優れる。本発明の親水性部材は、所謂モスアイ構造といわれる微小突起が密接して配置されてなる微細凹凸形状に比べて、凸部自体の構造上の耐久性が優れることから、樹脂組成物の硬化物からなるものであっても、凸部が潰れたり、凸部の先端同士の付着が生じ難い。更に、本発明の親水性部材は、所謂モスアイ構造といわれる微小突起が密接して配置されてなる微細凹凸形状に比べて、皮脂等の汚れが付着しても、線状凸部に沿って除去が容易であり、表面外観が悪化し難い。このように使用中の汚染や変形が抑制されることから、親水性が劣化し難く、親水持続性に優れたものになる。
また、本発明の親水性部材は、上記特定の線状微細凹凸表面を有することにより、異方性を有する親水性が得られることが見出された。具体的には、線状凸部の延在方向は、線状凸部の延在方向に対して垂直方向に比べて、濡れ広がりやすくなる。
また、本発明の親水性部材は、複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備えることから、後述するような、生産性の高い製造方法によって製造することが可能である。当該製造方法によれば、大面積の親水性部材を長尺状で製造することが可能なため、特許文献4のように小面積の成形構造体を継ぎ合わせる必要がない。そのため、大面積の親水性部材であっても、生産性高く、製造することができる。
以下、本発明に係る親水性部材の必須成分である線状微細凹凸層、及び含まれていても良い基材、その他構成について、順に説明する。
<線状微細凹凸層>
線状微細凹凸層1は、複数の互いに平行な線状凸部2が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有する。線状凸部2は、典型的には直線状凸部であるが、略一方向に延在する限り、2つの端点を有する開曲線状凸部であっても良い。複数の線状凸部は互いに平行であるが、本発明において、「平行」とは、隣接する線状凸部同士の間隔が一定であることをいい、例えば線状凸部の線が曲線を含む場合には、その曲線上の各点より法線方向へ一定の距離にあることをいう。
また、本発明において、図1のようにXY平面を仮定して「一方向」をY軸に平行な方向とした場合に、「略一方向」とは、端点の(x、y)座標と比べて、x値は増減しても良いが、y値は漸次増加する方向をいう。すなわち、線状凸部は、Y軸方向において元に戻る方向、すなわちy値が減少する方向を有していない限り、蛇行曲線等の曲線であっても良い。
線状凸部2の延在方向Yに対する垂直断面形状の具体例として、図4(A)〜図4(E)に線状微細凹凸形状の延在方向Yに対する垂直断面の具体例の模式的断面図を示す。線状凸部2の延在方向Yに対する垂直断面形状としては、例えば、図4(A)のような矩形状、図4(B)及び図4(C)のような三角形状、図4(D)のような放物線状、図示しないが釣鐘状、半円状、半楕円状、四角形等の垂直断面形状を有するものが挙げられる。また、図4(E)のような、Z軸方向に向かって線幅が細くなっていく階段状断面をであってもよい。
なお、これらの線状微細凹凸形状の延在方向Yに対する垂直断面における模式的断面図においては、線状凸部が延在するY方向は、紙面奥行方向である。
また、垂直断面形状は、頂点を通るZ軸に対して対称な構造に限られず、非対称な構造であっても良い。線状凸部2の延在方向Yに対する垂直断面形状の他の具体例として、図5(A)〜図5(D)に線状微細凹凸形状の延在方向Yに対する垂直断面の他の具体例の模式的断面図を示す。例えば、図5(A)のような三角形状であっても良いし、図5(B)のような頂点を通るZ軸方向に対して片側は、三角形であるが、片側は四角形であっても良いし、図5(C)のような頂点を通るZ軸方向に対して片側は、三角形であるが、片側は半楕円状であっても良い。また、図示しないが、Z軸方向に向かって線幅が細くなっていく階段状断面を有する場合に、階段状断面の2段目以降の中心軸は、1段目の中心軸からずれていてもよい。
更に、線状凸部2の高さは、それぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。例えば、図5(D)のように、隣接する線状凸部のn個に1個など、周期的に高さが相対的に高い線状凸部を含んでいても良い。更に、図示しないが、線状凸部の延在する方向において、高さが異なっていても良い。互いに平行な方向において周期的に、高さが相対的に高い線状凸部を含む場合には、生産性高く、耐汚染性及び耐擦傷性が向上した親水性部材が得られる。
また、複数ある線状凸部は同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。
例えば、垂直断面形状が、Z軸方向に向かって線幅が細くなっていく構造を有している場合には、凸部の深さ方向に屈折率が連続的に変化するため、反射防止性が付与される。また、線状凸部の比表面積が大きくなるような形状である方が、線状微細凹凸表面の親水性が向上する。例えば線状凸部が同じ高さの場合には、垂直断面形状は三角形よりも四角形の方が好ましい。例えば、前記Z軸方向に向かって線幅が細くなっていく階段状断面を有する場合には、比表面積の点から親水性が向上すると共に、反射防止性等の光学機能も向上する点から好ましい。
本発明において線状凸部間隔p及び線状凸部の高さHは以下の方法により測定される。先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状を検出する。
続いて線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状において、各線状凸部の付け根位置に相当する端部を検出する。各線状凸部の端部(5a,5b)のうち同じ側の一方の端部(5a)を選択する。線状凸部の端部のうち同じ側の一方の端部5aと、隣接する線状凸部の同じ側の一方の端部5’aの距離を隣接凸部間距離、すなわち隣接する線状凸部間隔pとする(図6参照)。
線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状の拡大写真から、例えば10〜100個程度の隣接する線状凸部間隔pの値を求め、隣接する線状凸部間隔pの度数分布を検出する。隣接する線状凸部間隔pがほぼ一定である場合には、求める隣接する線状凸部間隔pの数は少なくても良いが、周期的に隣接する線状凸部間隔pが変化する場合には少なくとも5周期分、周期なしで隣接する線状凸部間隔pが変化する場合にはより多くの隣接する線状凸部間隔pを求めることが好ましい。
このようにして求めた線状凸部間隔pの度数分布から平均値pAVG及び標準偏差σを求める。また、隣接凸部間隔pの最大値を、pmax=pAVG+2σとする。
また、同様の手法を適用して線状凸部の高さHを求める。線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状の拡大写真から、各線状凸部における極大点を検出する。各線状凸部の付け根位置7を基準(高さ0)として、当該基準位置から各極大点位置の相対的な高さの差Hを取得(図3参照)してヒストグラム化する。なお、線状凸部の垂直断面形状において頂点を複数有する場合には、麓部が同一の凸部に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を極大点として、当該凸部の高さを取得して、度数分布を求める。
なお、図6に示されるように、隣接する線状凸部間隔pにおいて、各線状凸部の幅w、すなわち各線状凸部の端部(5aと5b)間の距離は、隣接する線状凸部間隔pと同じであっても良いし、異なっていても良い。また、隣接する線状凸部間隔pにおいて各線状凸部の幅wの占める割合は特に限定されないが、耐久性の点から、w/pは0.3〜1であることが好ましい。
本発明の親水性部材において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGは500nm以下であるが、製造上の点から、当該pAVGは10nm以上であり、中でも50nm以上が好ましい。中でも、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGは、後述する各種性能の発現が向上する点から、好ましくは100nm以上であり、250nm以下である。pAVGが500nmを超えると可視光の散乱により白っぽくなるという不具合が発現してくる。また、線状微細凹凸表面に起因した、親水性の強調効果が低下するという不具合が発現してくる。
また、線状凸部の高さHの平均である、線状凸部平均高さHAVGは、好ましくは500nm以下であり、製造上の点から10nm以上であり、中でも50nm以上が好ましい。
中でも、後述する各種性能の発現が向上する点から、より好ましくは70nm以上であり、250nm以下である。
線状凸部のアスペクト比(線状凸部平均高さHAVG/隣接する線状凸部平均間隔pAVG)が0.4〜5.0であることが好ましく、更に、0.5〜2.5であることが好ましく、更に、0.5〜2.1であることがより好ましい。アスペクト比が小さすぎると親水性が発現し難く、大きすぎると機械強度や生産性が低下する。
線状微細凹凸層の厚みは、適宜調整すればよい。例えば基材の一面側に線状微細凹凸層を備えた態様の場合には、線状微細凹凸層の厚みは、基材表面に線状微細凹凸形状を形成可能な最低限の厚みにて各種性能を発現可能である。しかしながら後述の賦型プロセスでの生産性を考慮すると、厚みが薄い場合は異物による外観欠陥が発生しやすく、厚みが厚いと賦型速度が低下したりカールの懸念が高くなるため、3μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜10μmであることがより好ましい。この場合の線状微細凹凸層の厚みTは、線状微細凹凸層の基材との界面から、最も高い線状凸部の頂部までの厚みをいう。
また、基材の表面に線状微細凹凸形状が設けられた線状微細凹凸層の場合には、当該厚みは基材の厚みに依存し、特に限定されない。
本発明において線状微細凹凸層は、樹脂組成物の硬化物からなる。なお、本発明において硬化物とは、化学反応を経て又は経ないで固化したもののことをいう。
また、当該樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90°未満であるものを選択して用いる。親水性を向上する点からは、前記樹脂組成物の硬化物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が、60度以下であることが好ましく、更に45度以下であることが好ましい。
このような材料を用いて線状微細凹凸形状を形成すると、水の接触角は、平坦な硬化膜表面に比べて小さくなり、親水性になる又は親水性が強調される。線状微細凹凸形状にもよるが通常は、線状凸部の延在方向及びその垂直方向において、好ましくは60度以下、より好ましくは40度以下の水の接触角を示すようになる。
本発明において、樹脂組成物の平坦な硬化膜表面における接触角は、以下のように測定される。
まず、透明基材上に線状微細凹凸層用の樹脂組成物を塗布して硬化させて、微細凹凸形状を有しない平坦な硬化膜を形成する。当該硬化膜は、水の接触角の再現性が取れるように(例えば標準偏差が4度以内となるように)十分に溶媒を乾燥し、必要に応じて十分に反応させて硬化したものである。例えば、電離放射線硬化性樹脂が用いられる場合、透明基材上に厚さ5μmの線状微細凹凸層用の樹脂組成物からなる塗膜を形成し、紫外線を940mJ/cm以上の積算光量となるように照射することにより十分に反応させて硬化した硬化膜を形成する。
そして、当該硬化膜側を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に水平に貼り付ける。次いで、接触角を測定しようとする溶剤(水)1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測する。測定装置は、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定することができる。
また、本発明の親水性部材の線状微細凹凸表面における接触角は、同様に測定でき、線状微細凹凸表面に溶剤(水)1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測する。この際、本発明の線状微細凹凸表面における接触角は異方性を有することから、例えば、液滴を滴下した地点における線状凸部の延在方向と、線状凸部の延在方向に対して垂直方向の静的接触角を計測する。
ここで、線状凸部の延在方向Yの水の接触角は、図11(A)及び(B)に示すように、線状凸部に沿って広がる方向の接触角をいい、線状微細凹凸表面(XY平面に平行な平面)に垂直かつ線状凸部の延在方向Yに平行な面(YZ平面に平行な平面)を仮定し、当該面で水滴を切った断面における、線状微細凹凸表面(XY平面に平行な平面)と水のなす角度をいう。また、線状凸部の延在方向Yに対して垂直方向Xの水の接触角は、図11(C)及び(D)に示すように、線状凸部を垂直に横切って広がる方向の接触角をいい、線状微細凹凸表面(XY平面に平行な平面)に垂直かつ線状凸部の延在方向Yに対して垂直な方向Xに平行な面(XZ平面に平行な平面)を仮定し、当該面で水滴を切った断面における、線状微細凹凸表面(XY平面に平行な平面)と水のなす角度をいう。
樹脂組成物は、上記水の接触角が上記範囲である限り特に限定されず、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。樹脂組成物には、1種類の樹脂のみが含まれるものも包含される。
前記樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、(メタ)アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂等が挙げられる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
前記樹脂としては、中でも線状微細凹凸形状の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましく用いられる。なお、電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体を適宜混合したものであり、重合開始剤によって反応を経て硬化されるものである。なお、非反応性重合体を含有してもよい。
汚れ拭き取り性の点からは、中でも、当該樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)が300MPa以下であり、且つ、当該樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以下であることが、線状微細凹凸形状が拭取る程度の圧力で変形し、且つ、優れた弾性復元性を備える点から好ましい。E’を300MPa以下とすることにより、拭取り時の圧力によって線状微細凹凸形状が変形し、凹凸間の隙間に入り込んだ汚れを、乾拭きで除去することが可能となる。
また、損失正接を0.2以下とすることにより、拭取り時に変形した線状凸部が、弾性復元され、元の形状に戻りやすい。これにより、凸部の塑性変形や凸部先端同士の付着が抑制され、線状微細凹凸形状が有する機能を低下することなく、乾拭きで汚れを拭取ることが可能になる。中でも、tanδが0.18以下であることが好ましい。
一方で、耐久性の点からは、前記貯蔵弾性率(E’)が200MPa以上である樹脂組成物を用いて形成された線状微細凹凸層は、復元性が高く、乾拭き時において潰れや先端同士の付着がより抑制される点から好ましい。当該樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、線状凸部の柔軟性の点から、1200MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましい。
本発明において貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)は、JIS K7244に準拠して、以下の方法により測定される。
まず、微細凹凸層形成用の樹脂組成物を、2000mJ/cmのエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、基材及び微細凹凸形状を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜とする。
次いで、25℃下、上記樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、例えば、UBM製 Rheogel E400を用いることができる。
線状微細凹凸層用の樹脂組成物としては、親水性部材の用途に合わせて、適宜、好ましい親水性及びその他の物性が得られるように、選択される。
中でも、線状微細凹凸形状の成形性及び機械的強度に優れる点から好適に用いられる、電離放射線硬化性樹脂として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を例にとって、具体的に説明する。
(1)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。
中でも、硬化物が上記貯蔵弾性率(E’)とtanδを満たしやすく、線状凸部が柔軟性と弾性復元性を両立する点からは、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
一方、硬度を高くする点からは、多官能(メタ)アクリレートのみを用いることが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ビフェニロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物表面の防汚性が向上し、線状凸部が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、炭素数12以上であることがより好ましく、トリデシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
単官能(メタ)アクリレートを用いる場合の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、多官能アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、線状凸部が柔軟性及び復元性に優れ、且つ線状微細凹凸表面の親水性が向上する点から、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、10〜99.2質量%であることが好ましく、15〜99.1質量%であることがより好ましい。
親水性を高くするために、本発明において好ましく用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートが含まれる組成物である。中でも、当該アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、70〜99質量%であることが好ましく、80〜99質量%であることがより好ましい。また、当該アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートの含有量は、使用される全(メタ)アクリレート化合物中に80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。
また、硬化物の線状凸部が柔軟性と弾性復元性を両立しやすく、優れた乾拭き取り性と防汚性を得る点からは、本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートとを含有することが好ましい。中でも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有割合が、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、5〜20質量部であることが好ましく、10〜15質量部であることがより好ましい。
(2)光重合開始剤
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の含有量は、通常、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0.8〜20質量%であり、0.9〜10質量%であることが好ましい。
(3)帯電防止剤
本発明においては、前記樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、線状微細凹凸層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のもの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
帯電防止剤を用いる場合、当該帯電防止剤の含有量は、通常、電離放射線硬化性樹脂組成物の全固形分に対して1〜20質量%であり、2〜10質量%であることが好ましい。
(4)溶剤
本発明において樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体的としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
樹脂組成物全量に対する、固形分の割合は20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお本発明において固形分とは、樹脂組成物中の溶剤以外のすべての成分を表す。
(5)その他の成分
本発明において用いられる線状微細凹凸層用の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、濡れ性調整のための界面活性剤、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調整剤、離型剤等が挙げられる。
<基材>
本発明に必要に応じて用いられる基材は、本発明の親水性部材の用途に合わせて適宜選択して用いられれば良い。基材は、透明基材に限定されるものではなく、用途に合わせて不透明基材であっても良い。
本発明に用いられる透明基材は、親水性部材に用いられる公知の透明基材の中から用途に応じて適宜選択して用いることができる。透明基材に用いられる材料の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の透明樹脂や、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。
前記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)により測定することができる。
また、不透明基材に用いられる材料の具体例としては、例えば、各種の金属、不透明のガラス、樹脂材料に無機顔料、発泡剤を混合した不透明樹脂等が挙げられ、その他、樹脂基材に無機スパッタ膜、特に金属スパッタ膜を形成した基材等が挙げられる。
基材の形状は、通常フィルム状、シート状、板状、ロッド状、所定形状に成形された成形体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、大面積の親水性部材とする場合には、製造上、長尺状乃至ロール状の基材を用いることが好ましい。
前記基材の厚みは、本発明の親水性部材の用途や形状に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmである。前記基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
本発明に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
また、基材と後述する線状微細凹凸層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および線状微細凹凸層との双方に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。また基材と線状微細凹凸層の屈折率差により干渉ムラが出る場合にはプライマー層の屈折率を基材と線状微細凹凸層の中間の値に調整することでムラ軽減が可能である。
<その他の構成>
本発明の親水性部材は、本発明の効果を損なわない範囲において、更にその他の層を有していてもよい。
例えば、その他の層としては、低反射層、紫外線吸収層(UVA層)、放熱層(熱伝導層)などが挙げられる。
例えば、本発明の親水性部材は、線状微細凹凸層の表面に、剥離可能な保護フィルムを仮接着した状態で保管、搬送、売買、後加工又は施工を行い、適時、該保護フィルムを剥離除去する形態とすることもできる。これにより、保管、搬送等の間における親水性部材の表面の損傷、汚染を防止することができる。
また、本発明の親水性部材は、線状微細凹凸形状を有しない面に接着剤層を形成し、更に当該接着剤層の表面に離型フィルムを剥離可能に積層してなる接着加工品とすることもできる。接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等の公知の接着形態のものが各種使用できる。基材、接着剤層、及びその他任意の層はそれぞれ1層に限定されることなく、使用用途、条件により、適宜2層以上を選定可能である。
<親水性部材の物性>
本発明の親水性部材は、特定の材料からなる特定の線状微細凹凸表面を有することにより、高い親水性が得られる。中でも、線状微細凹凸表面において、線状凸部の延在方向及びその垂直方向における水の接触角が30度以下、より好ましくは20度以下、更により好ましくは10度以下であるものが好ましい。本発明の親水性部材は、一般の、親水性材料を用いた防曇フィルム等に比べると、材料自体の接触角が劣化等により増加した場合でも、線状微細凹凸形状での接触角増加は低く抑えられるという特徴がある。
更に、本発明の親水性部材は、特定の線状微細凹凸表面を有することにより、異方性を有する親水性が得られる。具体的には、線状凸部が延在する方向は、線状凸部が延在する方向に対して垂直方向に比べて濡れ広がりやすくなる。
本発明の親水性部材を後述する異方性の親水性を利用する用途に用いる場合には、本発明の親水性部材は、線状微細凹凸表面において、水を滴下した地点における(線状凸部の延在方向の水の接触角)と(線状凸部の延在方向に対して垂直方向の水の接触角)との差が5度以上であることが好ましく、更に8度以上であることが好ましい。一方、通常当該接触角の差は20度以下の範囲となる。
本発明の親水性部材は、用途により、透明性の高い部材とすることが好ましい。すなわち、下地の意匠性を損傷しない点から、親水性部材の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、更に90%以上であることが好ましく、より更に92%以上であることが好ましい。なおここで、親水性部材の全光線透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)により測定することができる。
本発明の親水性部材は、用途により、透明性の高い部材とすることが好ましい。すなわち、下地の意匠性を損傷しない点から、親水性部材のヘイズ値は、3%以下であることが好ましく、更に1%以下であることが好ましい。なおここで、親水性部材のヘイズ値は、JIS K−7136により測定することができる。
また、本発明の親水性部材は、用途により、反射Y値が4%以下である部材とすることが好ましい。ここで、反射Y値とは、分光光度計(島津製作所製 MPC3100)にて、5°正反射率を380〜780nmまでの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト(MPC3100内蔵)で算出される、視感反射率を示す。
具体的に、本発明の親水性部材は、反射Y値が、2.5%以下となることが好ましい。
<親水性部材の用途>
本発明に係る親水性部材は、親水性の劣化が少ないことから、親水持続性が高い親水性部材として、各種物品に用いることができる。
当該親水性部材は例えば結露による曇り抑制部材として機能し得る。また親水性が劣化しにくいため、長期使用での汚れ付着も抑制できる(セルフクリーニング効果)。また、本発明は、線状微細凹凸表面を備えるため、親水性が異方性を有し、線状凹凸構造に沿って、水滴等の液滴の流路になり得る。
本発明の親水性部材には、防曇性及び視認性向上が期待でき、例えば、店舗のショーウィンドウ、美術館の展示物の展示窓;時計等、各種計測機器の表示窓表面;道路標識や、ポスター等の各種印刷物;自動車、航空機等の乗り物や、各種建築物の窓等の前面又は両面に配置して、視認性を向上することができる。また、眼鏡、カメラ、望遠鏡、顕微鏡等の各種光学機器や、各種照明機器の窓材として用いることもできる。
また、結露抑制部材としては、例えば、結露によって視界を悪化させやすい鏡、窓、窓のサッシ、車のサイドミラー、野菜の包装フィルム等に用いることができる。
また、異方性を有する親水性を備えた本発明の親水性部材は、例えば、冷蔵冷凍ショーケースにも好適に用いられる。冷蔵ショーケースは、内外の温度差により部材の表面に結露が生じ易く、結露により天井に生じた水滴が、冷蔵ショーケース内に置かれた商品に落下するおそれがある。特に、オープンタイプのエアーカーテン吹出し部は、表面温度が露点温度以下となり結露する。そのため、従来は、エアーカーテン吹出し部の他、吸い込み部、扉及び側板ガラス等の十分な断熱効果が得られない箇所にも防露ヒーターを配置して結露を防止し、水滴の落下を防いでいる。よって、電力の消費等の問題があった。
これに対し、冷蔵ショーケース内部の天井を構成する部材として、本発明の親水性部材を用いることにより、商品への水滴の落下を防ぐことができる。具体的には、例えば本発明の親水性部材を、線状微細凹凸層側が表面になり、且つ線状凸部の延在方向が水平方向に対して傾斜を有するように、冷蔵ショーケース内部の天井部分に設置する。これにより、結露により当該天井に付着した水滴は、水がより濡れ広がりやすい線状微細凹凸層の線状凸部の延在方向が流路となって、集められた水滴が重力に従って流路を移動して排出される。これにより、冷蔵ショーケースの天井に付着した水滴が商品に落下することを防止でき、ヒーターの使用を必要としないため、省電力にもなる。同様に、冷蔵ショーケース内部の扉、側板ガラス、棚などに設置することにより、ヒーターを用いずに、結露を商品に付着することなく、適宜排水することができる。
本発明に係る親水性部材は、冷蔵ショーケースの他にも、同様の原理を利用して、例えば浴室の天井、農業用ビニールハウスの天井等に用いることができる。
また、異方性を有する親水性を備えた本発明の親水性部材は、異方性のある親水性を利用して、印刷版、カラーフィルター等の印刷用部材、表示用部材、輸送用部材、建築装飾用部材等の用途にも幅広く用いることができる。また、本発明に係る親水性部材は、医療用などの試験シート等に使用する場合は、試薬や検体の流れをスムーズにする効果が期待できる。更に、本発明に係る親水性部材は、例えば、DNAアレイによる抗原抗体反応の高感度化や、流体セル等の低圧損化にも応用し得る。
また、本発明に係る親水性部材には、紛体付着抑制効果も期待できる。適宜、無機系粉体、各種ポリマー等の有機系粉体の付着を抑制することができる。中でも、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物を含む粉体の付着を好適に抑制することができる。金属酸化物を含む粉体の具体例としては、パウダーファンデーション、フェイスパウダー、頬紅、アイシャドウ等の化粧品や、パウダーブラスト剤、チョークなどが挙げられる。
[親水性部材の製造方法]
本発明の親水性部材の製造方法は、複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満である、親水性部材の製造方法であって、
バイトによる切削により、円柱状母材の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成することにより、賦型用ロール金型を製造する工程と、
前記賦型用ロール金型を使用した賦型処理により、前記線状微細凹凸表面を形成する工程とを有することを特徴とする。
<賦型用ロール金型を製造する工程>
バイトによる切削により、円柱状母材の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成することにより、賦型用ロール金型を製造する工程を有する。
図7は、賦型用ロール金型20の製造工程の説明に供する図である。この製造工程において、まず、円柱状母材30を準備する。円柱状母材30としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。
金属製の円柱状母材の材質としては、ニッケル、クロム、ステンレス、鉄、アルミ、銅もしくはそれらの合金を用いることが出来るが、再使用しやすいように前記金属製の円柱状母材の表面に前記材料による金属めっきを施した円柱状母材を用いても良い。円柱状母材としては、中空すなわち円筒状であっても良い。また、初めに、切削工程により円柱状母材30の外周面を平滑化する工程を有していても良い。この場合、円柱状母材30を回転させながら、平滑化用のバイトの刃先を外周面に押圧して、矢印Aにより示すように、回転軸方向に移動させることにより、円柱状母材の外周面を平滑化する。必要に応じてバフ研磨や電解研磨等の研磨工程を追加してもよい。また、転写する際に線状微細凹凸樹脂が円柱状母材から剥離しやすいように円柱状母材表面に剥離シリコーン、フッ素系樹脂もしくはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などのコーティング、蒸着、もしくはそれらを組み合わせた離型処理を行っても良い。
続いて、線状凹凸形状作製用のバイト31を用いて、円柱状母材30の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成する。ここで、線状凹凸形状作製用のバイト31の刃先の形状は、適宜、製造する線状微細凹凸形状に対応した形状とする。図8に、バイトの刃先の線状微細凹凸形状の延在方向に対する垂直断面を一部拡大した模式的断面図を示す。例えば図4(A)のような矩形の線状凸部を形成する場合には、バイト31の刃先を図8に示すような当該線状凸部の相補的な矩形の形状とする。また、線状凸部の形状や高さが、互いに平行な線状凸部間で周期的に変化する場合には、バイト31の刃先幅Sが、少なくとも繰返し周期の幅を含むことが好ましい。
円柱状母材30を回転させながら、線状凹凸形状作製用のバイト31の刃先を外周面に押圧して切削するが、矢印Aにより示すように回転軸方向に、バイト31の刃先幅Sのピッチにより間欠送りして移動させることにより、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成する。
前記バイト31の刃先幅Sとしては、例えば、20〜100μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
また、例えば、線状凸部の延在方向において周期的に高さが異なる場合など、一回の切削工程により、製造する線状微細凹凸形状に相補的な形状を作成できない場合には、更に別の線状凹凸形状作製用のバイトを用いて複数回の切削工程を有していても良い。以上のようにして、賦型用ロール金型20を製造することができる。
なお、線状凹凸形状作製用のバイト31の作製は、従来公知の方法を適宜選択して、製造する線状微細凹凸形状に対応した形状となるように行えばよい。
本発明においては、このような賦型用ロール金型20を用いることから、任意の線状微細凹凸形状を形成し易く、更に、生産性が向上する。
<線状微細凹凸表面を形成する工程>
本発明においては、当該工程において、前記賦型用ロール金型を使用した賦型処理により、前記線状微細凹凸表面を形成する。
例えば、まず基材上に、線状微細凹凸層形成用の樹脂組成物を塗布し、線状微細凹凸表面形成用層(受容層)を形成し、当該線状微細凹凸表面形成用層の表面と所望の線状微細凹凸形状を有する賦型用ロール金型とを接触させて配置し、圧力をかけることによって、当該線状微細凹凸表面形成用層の金型側表面に前記線状微細凹凸表面を形成した後、適宜該樹脂組成物を硬化させることにより線状微細凹凸層を形成し、前記賦型用ロール金型から剥離する方法等が挙げられる。前記樹脂組成物を硬化させる方法は、該樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
図9に、線状微細凹凸層形成用の樹脂組成物として電離放射線硬化性樹脂組成物を用い、賦型用ロール金型20を用いた場合に、透明基材上に線状微細凹凸層を形成する方法の一例を示す。
図9に示す方法では、樹脂供給工程において、ダイ11により帯状フィルム形態の透明基材6に、未硬化で液状の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、線状微細凹凸形状の受容層1’を形成する。なお電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布については、ダイ11による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ12により、微細凹凸層形成用原版である賦型用ロール金型20の周側面に透明基材6を加圧押圧し、これにより透明基材6に受容層1’を密着させると共に、賦型用ロール金型20の周側面に作製された線状微細凹凸形状の凹部に、受容層1’を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材6の表面に線状微細凹凸層1を作製する。続いて剥離ローラ13を介して賦型用ロール金型20から、硬化した線状微細凹凸層1と一体に透明基材6を剥離する。必要に応じてこの透明基材6に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して親水性部材10を作製する。これにより親水性部材10は、ロール材による長尺の透明基材6に、微細凹凸層形成用原版である賦型用ロール金型20の周側面に作製された線状微細凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
また上述の本発明に係る親水性部材の製造方法においては、賦型用ロール金型20を使用した賦型処理により親水性部材を生産する場合について述べたが、本発明の親水性部材は当該方法に限られず製造されても良い。例えば、親水性部材の形状に係る基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により親水性部材を作成する場合等、賦型処理に係る工程、親水性部材形成用原版は、親水性部材の形状に係る基材の形状に応じて適宜変更することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
(製造例1 賦型用ロール金型1の作製)
幅1300mm、直径298mmで表面に銅めっきを施した鉄製の円柱状母材を準備した。一方で、刃先幅30μmの表面に、線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状が図8のような矩形状の線状凹凸部(隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが150nm、線状凸部幅の平均幅75nm、線状凹部の平均幅75nm、線状凸部の高さHAVGが70nm)を有する切削用バイトを準備した。
円柱状母材を回転させながら、前記切削用バイトの刃先を外周面に押圧して切削し、バイト31の刃先幅30μmのピッチで間欠送りして回転軸方向に移動させることにより、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成し、賦型用ロール金型1を作製した。
(製造例2 賦型用ロール金型2の作製)
切削用バイトとして、刃先幅30μmの表面に、線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状が図8のような矩形状の線状凹凸部(隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが200nm、線状凸部幅の平均幅100nm、線状凹部の平均幅100nm、線状凸部の高さHAVGが100nm)を有する切削用バイトを準備した以外は、製造例1と同様にして、賦型用ロール金型2を作製した。
(製造例3 線状微細凹凸層形成用樹脂組成物Aの調製)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の線状微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを調製した。
<樹脂組成物Aの組成>
・エチレンオキサイド変性(EO変性)ビスフェノールAジアクリレート 65質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(実施例1)
図9に示す方法により、親水性部材1を製造した。
賦型用ロール金型20として、製造例1の賦型用ロール金型1を用い、透明基材6として、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)(東洋紡社製)を用いた。また、ダイ11により帯状フィルム形態の透明基材6に、硬化後の線状微細凹凸層の厚さが20μmとなるように、製造例3で得られた線状微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを塗布した。透明基材側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して線状微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを硬化させた。その後、賦型用ロール金型より剥離し、実施例1の親水性部材1を得た。線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状が矩形状の線状微細凹凸表面(隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが150nm、線状凸部幅の平均幅75nm、線状凹部の平均幅75nm、線状凸部の高さHAVGが70nm)が得られた。
実施例1で得られた親水性部材1の断面のSEM写真を図10に示す。
(実施例2)
実施例1において、賦型用ロール金型20として、製造例1の賦型用ロール金型1の代わりに、製造例2で得られた賦型用ロール金型2を用いた以外は、実施例1と同様にして親水性部材2を得た。線状凸部の延在方向Yに対する垂直断面形状が矩形状の線状微細凹凸表面(隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが200nm、線状凸部幅の平均幅100nm、線状凹部の平均幅100nm、線状凸部の高さHAVGが100nm)が得られた。
(比較例1)
実施例1において、賦型用ロール金型1の代わりに、表面に凹凸を有しない円柱状母材を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面に微細凹凸形状を有しない平坦な比較部材1を得た。
[評価]
<樹脂組成物の平坦な硬化膜表面における接触角の測定>
ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状微細凹凸層形成用樹脂組成物Aを乾燥後の膜厚が厚さ5μmとなるように塗膜を形成し、紫外線を940mJ/cmの積算光量となるように照射して硬化させて、微細凹凸形状を有しない硬化膜を形成した。当該硬化膜側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものの上に、水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の水の接触角を計測した。
上記樹脂組成物Aの平坦な硬化膜表面における水の接触角は54.9度であった。
<親水性部材1及び2、並びに比較部材1における水の接触角の測定>
実施例1、2で得られた親水性部材1及び2の線状微細凹凸層側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものの上に、水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の水の接触角を測定した。その結果、親水性部材1の線状凸部の延在方向における水の接触角は16.6度であり、線状凸部の延在方向に垂直な方向における水の接触角は33.2度であった。また、親水性部材2における線状凸部の延在方向における水の接触角は13.8度であり、線状凸部の延在方向に垂直な方向における水の接触角は23.9度であった。いずれも、平坦な硬化膜表面における接触角よりも更に親水性が強調されていることが確認できた。親水性部材2が、親水性部材1より小さな接触角になったのは、線状凸部の高さがより高い(線状凹部の深さがより深い)ことに起因すると推定された。
一方、比較部材1の樹脂組成物Aの硬化膜表面の水の接触角は54.9度であった。
<光学特性>
実施例1、2で得られた親水性部材1及び2の線状微細凹凸層側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものを用いて、以下の光学特性を測定した。同様に、比較例1で得られた比較部材1の樹脂組成物Aの硬化膜表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものを用いて、以下の光学特性を測定した。測定結果を表1に示す。
(全光線透過率)
全光線透過率は、親水性部材1及び2の線状微細凹凸層側表面、又は比較部材1の樹脂組成物Aの硬化膜表面を光源に向けて、JIS K−7361−1に従って測定した。測定機器としては、反射・透過率計HR−100(村上色彩技術研究所)を使用した。
(ヘイズ)
ヘイズ値は、親水性部材1及び2の線状微細凹凸層側表面、又は比較部材1の樹脂組成物Aの硬化膜表面を光源に向けて、JIS K−7136に従って測定した。測定機器としては、反射・透過率計HR−100(村上色彩技術研究所)を使用した。
(反射Y値)
反射Y値は、分光光度計(島津製作所製 MPC3100)にて測定した。
Figure 2015212046
<光学特性の考察>
実施例1、2で得られた親水性部材1及び2について、全光線透過率(%)はそれぞれ92.9%、92.5%となり、線状微細凹凸表面を有しない比較例1に比べて、透過率が優位に向上することが明らかにされた。
実施例1、2で得られた親水性部材1及び2について、ヘイズ(%)はそれぞれ0.8%、2.2%となり、特に実施例1では線状微細凹凸表面を有しない比較例1に比べて、遜色のないヘイズ値であることが明らかにされた。また、同じ形状の場合には、隣接する線状凸部間隔pが小さいほど、ヘイズ値が小さく傾向が見られた。
実施例1、2で得られた親水性部材1及び2について、反射Y値(5度反射)はそれぞれ3%を下回り、比較例1と比べ低いことが明らかになった。
これは、線状凸部を有することで空気界面との屈折率が連続的に変化し、その結果、界面反射が低減しているものと考察する。
<指紋拭き取り試験>
実施例1、2で得られた親水性部材1及び2の線状微細凹凸層側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けた後、指を押し付けて指紋を付着させた。その後、ザヴィーナミニマックス(富士ケミカル製)にて指紋を乾拭きした。乾拭きは3kg/cm程度の力で10往復行い、拭取り後の外観を評価した。
親水性部材1及び2共に、線状凸部が柔軟性及び復元性に優れており、線状凹凸方向に拭き取り性に優れ、指紋汚れが視認できなかった。また、拭き取りに際し、線状凸部が潰れたり、先端同士の付着は生じなかった。
1 線状微細凹凸層
1’ 受容層
2 線状凸部
3 線状微細凹凸形状
4 基材
5、5’ 凸部の端部
5a、5’a 凸部の一方の端部
5b、5’b 凸部の他方の端部
6 透明基材
10 親水性部材
11 ダイ
12 押圧ローラ
13 剥離ローラ
20 賦型用ロール金型
30 円柱状母材
31 バイト
X,Y,Z 線状凸部の延在方向をYとした場合のXYZ座標軸

Claims (2)

  1. 複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、
    前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満である、親水性部材。
  2. 複数の互いに平行な線状凸部が一方向又は略一方向に延在する線状微細凹凸形状を表面に有し、且つ樹脂組成物の硬化物からなる線状微細凹凸層を備え、前記線状微細凹凸形状において、隣接する線状凸部間隔pの平均値pAVGが500nm以下であり、前記樹脂組成物は、平坦な硬化膜表面における水の接触角が90度未満である、親水性部材の製造方法であって、
    刃先に線状微細凹凸形状が加工されたバイトによる切削により、円柱状母材の外周面に、円周方向に沿って並列した複数の溝を順次形成することにより、賦型用ロール金型を製造する工程と、
    前記賦型用ロール金型を使用した賦型処理により、前記線状微細凹凸表面を形成する工程とを有する、親水性部材の製造方法。
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