JP2015203092A - ホース用ゴム組成物及び油圧ホース - Google Patents

Abstract

【課題】良好な耐油性を有しつつ、耐寒性及び製造時の作業性にも優れたホース用ゴム組成物及び油圧ホースを提供する。【解決手段】ゴム成分として、アクリロニトリル含有量が26％未満のアクリロニトリルブタジエンゴム（ＮＢＲ）Ａ、及び、アクリロニトリル含有量が26％以上のＮＢＲＢを含み、ＮＢＲＡとＮＢＲＢとの質量比が、15：85〜45：55の範囲であるホース用ゴム組成物。更に、ＮＢＲＢは、アクリロニトリル含有量が２６〜３０％のＮＢＲＣ、及び、アクリロニトリル含有量が３０％以上のＮＢＲＤを含み、ＮＢＲＡとＮＢＲＣとＮＢＲＤとの質量比が、１５〜２５：４０〜６０：３５〜４５の範囲であるホース用ゴム組成物。【選択図】図１

Description

本発明は、ホース用ゴム組成物及び油圧ホース、特に、良好な耐油性を有しつつ、耐寒性及び製造時の作業性にも優れたホース用ゴム組成物及び油圧ホースに関するものである。

建設・土木・農業・輸送等の分野で用いられるホースの内管ゴムについては、油を圧力の伝達媒体として使用することから耐油性が要求される。
そして、上記耐油性を向上させるために、特許文献１に開示されているように、ゴム成分としてアクリロニトリルブタジエンゴムを用いる技術が知られている。

特開平５−２８７１２１号公報

しかしながら、アクリロニトリルブタジエンゴム中のアクリロニトリル含有量が大きくなると、耐油性については高い効果が得られるものの、耐寒性（低温時の柔軟性や強度など）が低下するという問題があった。
そのため、従来の技術では、高いレベルでの耐油性及び耐寒性を実現することはできなかった。特許文献１の技術では、耐油性を高めるためにある程度のアクリロニトリル含有量が必要となるため、耐寒性をある程度犠牲にしなければならないためである。

さらにまた、ホースの製造時、液体窒素等を用いてゴムを外から冷却しながら、ブラスめっきワイヤー等により編み上げを行っているが、冷却されたゴムの厚さ方向における温度差によって、ホースを均一に編みあげることができないという問題があり、この点についての改善も望まれていた。

そこで、本発明の目的は、ゴム成分の適正化を図ることで、良好な耐油性を有しつつ、耐寒性及び製造時の作業性にも優れたホース用ゴム組成物及び油圧ホースを提供することにある。

本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意研究を行った結果、ゴム成分として、アクリロニトリル含有量が26％未満のアクリロニトリルブタジエンゴム、及び、アクリロニトリル含有量が26％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムを用い、それぞれのアクリロニトリルブタジエンゴムの質量比を特定の範囲とすることによって、良好な耐油性を確保しつつ、優れた耐寒性を実現できることを見出した。加えて、複数のアクリロニトリルブタジエンゴムを混合しているため、得られたゴム組成物の粘弾性温度分布の変化は、従来よりも緩やかになっており、上述のゴムの厚さ方向の温度差に起因した作業性の問題を解決できることも見出し、本発明を完成させるに至った。

本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
本発明のホース用ゴム組成物は、ゴム成分として、アクリロニトリル含有量が26％未満のアクリロニトリルブタジエンゴムＡ、及び、アクリロニトリル含有量が26％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムＢを含み、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢとの質量比が、15：85〜45：55の範囲であることを特徴とする。

また、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢは、アクリロニトリル含有量が26％以上30％未満のアクリロニトリルブタジエンゴムＣ、及び、アクリロニトリル含有量が30％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムＤを含み、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＣと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤとの質量比が、15〜25：40〜60：35〜45の範囲であることが好ましい。

さらに、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤのアクリロニトリル含有量が、30％以上35％以下であることがより好適である。

また、本発明の油圧ホースは、本発明のホース用ゴム組成物を用いることを特徴とする。

本発明によれば、良好な耐油性を有しつつ、耐寒性及び製造時の作業性にも優れたホース用ゴム組成物及び該ゴム組成物を用いた油圧ホースを提供することができる。

実施例及び比較例のサンプルについて、粘弾性の温度分布を示したグラフである。

（ホース用ゴム組成物）
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
本発明のホース用ゴム組成物は、ゴム成分として、アクリロニトリル含有量が26％未満のアクリロニトリルブタジエンゴムＡ、及び、アクリロニトリル含有量が26％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムＢを含む。

ここで、アクリロニトリルブタジエンゴム（ＮＢＲ）とは、アクリロニトリル（ＡＮ）とブタジエンとの共重合体であり、以下の構造式で示される。
─（ＣＨ_２─ＣＨ−ＣＮ）_ｍ─（ＣＨ_２─ＣＨ＝ＣＨ─ＣＨ_２）_ｎ─

前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢとの違いは、アクリロニトリル含有量（結合アクリロニトリル量）が26％未満か以上かで判断される。

そして、本発明では、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢとの質量比が、15：85〜45：55の範囲であることを特徴とする。
アクリロニトリルブタジエンゴムは、上述したように、アクリロニトリル含有量が大きいほど、耐油性については高い効果が得られるものの、耐寒性については効果が劣ることとなる。そのため、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢとの質量比を当該範囲にすることで、耐油性についてはアクリロニトリルブタジエンゴムＢによって確保でき、耐寒性についてはアクリロニトリルブタジエンゴムＡによって確保できる結果、高いレベルで耐油性及び耐寒性の両立が可能となる。
また、アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含有量に応じて、ある温度範囲で急激に粘弾性が変化するという特性があることから、本願発明では２種類のアクリロニトリルブタジエンゴムを適正範囲で混合することで、急激な粘弾性の変化を抑えることが可能となる。その結果、ホースの製造において、冷却されたゴムの厚さ方向における温度差に起因した粘弾性の変化は小さくなり、製造時の作業性を向上できる。

ここで、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢとの質量比が上記範囲を超える場合には、本発明の効果を得ることはできない。
前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡの質量比が15：85を下回る場合、十分な耐寒性を得ることができず、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡの質量比が45：55を上回る場合、十分な耐油性を確保できない。

前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢは、アクリロニトリル含有量が26％以上30％未満のアクリロニトリルブタジエンゴムＣ、及び、アクリロニトリル含有量が30％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムＤを含み、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＣと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤとの質量比が、15〜25：40〜60：35〜45の範囲であることが好ましい。
前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢを、２つに分けることで、アクリロニトリルの量をより詳細に制御できるため、さらに高いレベルで耐油性及び耐寒性の両立が可能となる。各アクリロニトリルブタジエンゴムの質量比が上記範囲を外れる場合には、所望の耐油性又は耐寒性を得ることができないおそれがある。

また、前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤについては、そのアクリロニトリル含有量が、30％以上35％以下であることがより好ましい。前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤのアクリロニトリル含有量が、35％を超える場合、ポリマー相溶性の問題が生じるおそれがあり、また、かかるアクリロニトリルブタジエンゴムは、温度に応じて急激な粘弾性の変化が生じることとなり、ゴム組成物の製造時の作業性が低下するおそれがあるためである。

なお、ゴム成分中に、複数のアクリロニトリルブタジエンゴムが含まれるか否か、各アクリロニトリルブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量がどの程度であるかについては、特に限定はされないが、例えば、ゴム組成物の粘弾性温度分布測定や、ニトリル基の分布を分析することで把握することが可能である。

また、前記アクリロニトリルブタジエンゴムの製造方法については特に限定はされない。たとえば、アクリロニトリルとブタジエンを乳化重合し、凝固・乾燥することですることもできるし、市販品を購入することで調達することも可能である。

さらに、前記ゴム成分中の他の成分については特に限定はされず、上述した複数のアクリロニトリルブタジエンゴムのみから構成することもできるし、ホースの用途に応じて、他のゴムを混合することもできるが、他のゴムを混合した場合も、上述した範囲でアクリロニトリルブタジエンゴムを混合することで、本発明の効果を得ることは可能である。

さらにまた、本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分以外の成分についても特に限定はされず、ホースの用途に応じて、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分に対して、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。

（油圧ホース）
本発明の油圧ホースは、上述したゴム組成物を用いて製造したものであり、特に、前記ゴム組成物を内管ゴムとして用いることが好ましい。前記ゴム組成物を内管ゴムに用いた場合、耐油性及び耐寒性の両立に加えて、製造時の作業性についても優れた効果を享受できるためである。
なお、本発明の油圧ホースは、上述のゴム組成物を油圧ホース部材のいずれかに用いること以外特に制限はなく、常法に従って製造することができる。

以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。

（アクリロニトリルブタジエンゴム）
以下のアクリロニトリルブタジエンゴムを用意した。

なお、アクリロニトリルブタジエンゴム１〜５の情報は以下の通りである。
＊アクリロニトリルブタジエンゴム１：ＪＳＲ（株）製 「Ｎ２２０Ｓ」
＊アクリロニトリルブタジエンゴム２：ＪＳＲ（株）製 「Ｎ２３０Ｓ」
＊アクリロニトリルブタジエンゴム３：日本ゼオン（株）製 「Ｎｉｐｏｌ ＤＮ３０６」
＊アクリロニトリルブタジエンゴム４：ＪＳＲ（株）製 「Ｎ２４０Ｓ」
＊アクリロニトリルブタジエンゴム５：ＪＳＲ（株）製 「Ｎ２５０Ｓ」

＜実施例１〜４、比較例＞
表２に示す配合に従って、ゴム組成物を調製した。なお、配合量の単位「phr」とは、ゴム成分100質量部に対する比（質量部）である。

＊大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラーDM-P」、ジ-２-ベンゾチアゾリルジスルフィド

＜評価＞
得られた各ゴム組成物について、通常の条件で加硫処理を行った後、粘弾性測定装置（レオメトリックス社製）を用い、粘弾性の温度分布について測定した。測定結果を図１に示す。

図１から、実施例１〜４のサンプルは、比較例のサンプルに比べて、粘弾性の変化が緩やかであり、−40℃くらいまでは、粘弾性が低いことがわかった。これは、実施例１〜４のサンプルが耐寒性及び低温での作業性に優れることを示す。

本発明によれば、良好な耐油性を有しつつ、耐寒性及び製造時の作業性にも優れたホース用ゴム組成物の提供を可能とし、該ゴム組成物を用いた油圧ホースは、高いレベルで耐油性及び耐寒性を両立できる点で産業上有用である。

Claims (4)

1. ゴム成分として、アクリロニトリル含有量が26％未満のアクリロニトリルブタジエンゴムＡ、及び、アクリロニトリル含有量が26％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムＢを含み、
   前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢとの質量比が、15：85〜45：55の範囲であることを特徴とするホース用ゴム組成物。
2. 前記アクリロニトリルブタジエンゴムＢは、アクリロニトリル含有量が26％以上30％未満のアクリロニトリルブタジエンゴムＣ、及び、アクリロニトリル含有量が30％以上のアクリロニトリルブタジエンゴムＤを含み、
   前記アクリロニトリルブタジエンゴムＡと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＣと前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤとの質量比が、15〜25：40〜60：35〜45の範囲であることを特徴とするホース用ゴム組成物。
3. 前記アクリロニトリルブタジエンゴムＤのアクリロニトリル含有量が、30％以上35％以下であることを特徴とする請求項２に記載のホース用ゴム組成物。
4. 請求項１〜３のホース用ゴム組成物を用いることを特徴とする油圧ホース。
   

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