JP2015196759A - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れ、タイヤを構成するための材料として好適に用いられる架橋物を与えることができ、しかも、加工性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が−60〜−10℃である共役ジエン系ゴム(A)と、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が−120〜−50℃であり、前記共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20〜100℃低い共役ジエン系ゴム(B)と、を含むゴム成分、窒素吸着比表面積(BET法)が200〜250m2/gであるシリカ、および1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物であるシランカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ガラス転移温度が−60〜−10℃である共役ジエン系ゴム(A)と、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が−120〜−50℃であり、前記共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20〜100℃低い共役ジエン系ゴム(B)と、を含むゴム成分、窒素吸着比表面積(BET法)が200〜250m2/gであるシリカ、および1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物であるシランカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、より詳しくは、低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れ、タイヤを構成するための材料として好適に用いられる架橋物を与えることができ、しかも、加工性に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
近年、自動車用のタイヤには、環境問題および資源問題から低燃費性が強く求められ、また、耐久性の面から優れた耐摩耗性が求められ、さらに、高速走行時操縦安定性の面から、優れた強度特性も求められている。
ている。
ている。
充填剤としてシリカを配合したゴム組成物を用いたタイヤは、カーボンブラックを配合したゴム組成物を用いたタイヤに比べて、低燃費性に優れる。しかし、従来のゴムをシリカと配合しても、シリカとの親和性が劣るため、ゴムとシリカとが分離しやすく、未架橋ゴム組成物の加工性が劣り、得られるタイヤの低燃費性および耐摩耗性が不十分となる。
そこで、種々のシランカップリング剤を添加してタイヤを改良することが多い。しかし、シランカップリング剤を扱うには高度な加工技術が必要であり、また、シランカップリング剤が高価なことから配合量が多くなると、タイヤの製造コストが高くなるという問題がある。このような問題を解決するために、近年、ゴムの活性末端に特定の変性剤を反応させることにより、ゴム自体にシリカとの親和性を持たせる技術が検討されている。
しかし、このような変性されたゴムを用いても、ガラス転移温度が低い変性ゴムを用いたタイヤでは低発熱性は改良されるがウェットグリップ性は悪化したり、ガラス転移温度が高い変性ゴムを用いたタイヤではウェットグリップ性は改良されるものの低発熱性と耐摩耗性は悪化したりするという問題がある。そこで、異種のゴムを混合して用いることにより、これら性能バランスを得ることが検討されている。
たとえば、特許文献1には、窒素原子を含有する特定の変性剤で変性されたスチレン−ブタジエンゴムと、当該特定の変性剤で変性されたブタジエンゴムとを混合した変性共役ジエン系重合体組成物が開示されている。また、特許文献2には、ガラス転移温度が異なる変性共役ジエン系ゴムと未変性共役ジエン系ゴムとを含有するゴム組成物が開示されている。また、特許文献3には、変性スチレン−ブタジエンゴムと、シス−1,4−結合の含有量が80%という高い値の変性共役ジエン系ゴムとを含有するゴム組成物が開示されている。
しかし、近年の自動車用タイヤに対する要求性能の高まりを鑑みると、上述の特許文献に記載されたゴム組成物を用いても、そのゴム組成物から得られるゴム架橋物の耐摩耗性や低発熱性が不足する場合があった。そこで、特許文献4に開示されるように、それぞれ特定の変性剤で変性された、それぞれ異なる特定の範囲のガラス転移温度を有する変性共役ジエンゴム2種を特定の比率で混合することにより構成された、低発熱性、耐摩耗性およびウェットグリップ性に優れるゴム架橋物を得ることができる、変性共役ジエン系ゴム組成物が提案されている。
しかしながら、特許文献4に具体的に記載された変性共役ジエン系ゴム組成物では、その加工性、ならびに得られるゴム架橋物の低発熱性、耐摩耗性、および強度特性のバランスが必ずしも十分でない場合があり、特に、ゴム組成物としての加工性や得られるゴム架橋物の耐摩耗性および強度特性の点において改良の余地があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れ、タイヤを構成するための材料として好適に用いられるゴム架橋物を与えることができ、しかも、加工性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定範囲内のガラス転移温度を有する共役ジエン系ゴムと、その共役ジエン系ゴムよりも低い特定範囲内のガラス転移温度を有し、特定の変性剤で変性された共役ジエン系ゴムとを用いてゴム成分を構成し、そのゴム成分に、特定範囲の窒素吸着比表面積を有するシリカおよび特定のシランカップリング剤を配合すると、目的のタイヤ用ゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
かくして、本発明によれば、ガラス転移温度が−60〜−10℃である共役ジエン系ゴム(A)と、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が−120〜−50℃であり、前記共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20〜100℃低い共役ジエン系ゴム(B)と、を含むゴム成分、窒素吸着比表面積(BET法)が200〜250m2/gであるシリカ、および1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物であるシランカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物が提供される。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記シラン化合物がアルカノイルチオ基を有するものであることが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記共役ジエン系ゴム(A)と前記共役ジエン系ゴム(B)との含有比率が、(共役ジエン系ゴム(A):共役ジエン系ゴム(B))の重量比で、55:45〜85:15であることが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記ゴム成分100重量部に対して、前記シリカ10〜200重量部を含むことが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、さらに、架橋剤を含むことが好ましい。
また、本発明によれば、上記のタイヤ用ゴム組成物の架橋物を含むタイヤが提供される。
本発明によれば、低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れ、タイヤを構成するための材料として好適に用いられる架橋物を与えることができ、しかも、加工性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、必須の成分として、(1)ガラス転移温度が−60〜−10℃である共役ジエン系ゴム(A)と、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が−120〜−50℃であり、前記共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20〜100℃低い共役ジエン系ゴム(B)と、を含むゴム成分、(2)窒素吸着比表面積(BET法)が200〜250m2/gであるシリカ、および(3)1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物であるシランカップリング剤を含むものである。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分に含まれる必須のゴムのうちの一方である共役ジエン系ゴム(A)は、ガラス転移温度が−60〜−10℃である共役ジエン系ゴムである。また、本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分に含まれる必須のゴムのうちの他方である共役ジエン系ゴム(B)は、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであって、ガラス転移温度が−120〜−50℃であり、共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20〜100℃低いものである。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)は、それぞれ、共役ジエン単量体単位を必須の単量体単位として含み、さらに、芳香族ビニル単量体単位や他の単量体単位を含んでいてもよい重合体からなるものである。
共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、および1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンまたはイソプレンを用いることが好ましく、1,3−ブタジエンを用いることが特に好ましい。これらの共役ジエン単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、または4−メチルスチレンを用いることが好ましく、スチレンを用いることが特に好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外の他の単量体単位を構成するために用いられる他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)において、これら他の単量体により構成される他の単量体単位の含有量は、それぞれ、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)が、2種以上の単量体単位を含む共重合体で構成される場合、その共重合様式は、特に限定されず、例えば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の共重合様式とすることができるが、ランダム状であることが好ましい。
共役ジエン系ゴム(A)のガラス転移温度は、−60〜−10℃であり、−50〜−20℃であることが好ましい。共役ジエン系ゴム(A)のガラス転移温度がこの範囲内にあると、得られる架橋物がウェットグリップ性と低発熱性とのバランスに優れたものとなる。
共役ジエン系ゴム(B)のガラス転移温度は、−120〜−50℃であり、−100〜−55℃が好ましい。共役ジエン系ゴム(B)のガラス転移温度がこの範囲内にあると、得られる架橋物が耐摩耗性と低発熱性とのバランスに優れたものとなる。また、共役ジエン系ゴム(B)のガラス転移温度は、共役ジエン系ゴム(A)のガラス転移温度より、20〜100℃低く、30〜80℃低いことが好ましい。共役ジエン系ゴム(B)と共役ジエン系ゴム(A)とのガラス転移温度の関係がこの範囲内にあると、得られるタイヤ用ゴム組成物の加工性が良好なものとなり、さらにそれから得られる架橋物が、低発熱性、耐摩耗性およびウェットグリップ性の性能バランスに優れるものとなる。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)のガラス転移温度は、常法にしたがって、それぞれの共役ジエン系重合体鎖の共役ジエン単量体単位含有量と芳香族ビニル単量体単位含有量との比率や共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節することにより、調節することができる。
共役ジエン系ゴム(A)の共役ジエン単量体単位の含有量は、40〜95重量%であることが好ましく、50〜80重量%であることがより好ましい。また、共役ジエン系ゴム(A)の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、5〜60重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましい。
共役ジエン系ゴム(B)の共役ジエン単量体単位の含有量は、70〜100重量%であることが好ましく、80〜100重量%であることがより好ましい。また、共役ジエン系ゴム(A)の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、0〜30重量%であることが好ましく、0〜20重量%であることがより好ましい。
共役ジエン系ゴム(A)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、90重量%以下が好ましく、68重量%以下がより好ましい。また、共役ジエン系ゴム(A)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、5重量%である。
共役ジエン系ゴム(B)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、55重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。また、共役ジエン系ゴム(B)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、5重量%である。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)における、共役ジエン単量体単位中のシス−1,4結合の含有量は、特に限定されないが、それぞれ、60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下であることが特に好ましい。また、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)における、共役ジエン単量体単位中のシス−1,4結合の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、5重量%である。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)の重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、それぞれ、10,000〜3,000,000であることが好ましく、100,000〜2,000,000であることがより好ましく、300,000〜1,500,000であることがさらに好ましい。共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)の重量平均分子量がこの範囲内であると、得られるゴム組成物の加工性と、得られる架橋物の低発熱性とのバランスが特に良好なものとなる。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、1.1〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.5であることがより好ましく、1.3〜2.2であることがさらに好ましい。共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)の分子量分布がこの範囲内であると、得られる架橋物の低発熱性が特に優れたものとなる。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)のムーニー粘度(ML1+4,100℃)も、特に限定されないが、それぞれ、20〜110であることが好ましく、30〜100であることがより好ましく、40〜90であることがさらに好ましい。なお、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)を油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
共役ジエン系ゴム(B)は、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものである必要がある。共役ジエン系ゴム(B)として、このような変性ゴムを用いることにより、得られる架橋物の低発熱性、耐摩耗性およびウェットグリップ性が優れたものとなる。このような変性ゴムが得られる限りにおいて、共役ジエン系ゴム(B)の合成方法は限定されないが、不活性溶媒を用いた溶液重合法が好適である。一方、共役ジエン系ゴム(A)は、変性剤で変性された共役ジエン系ゴムであっても、変性剤で変性されない未変性共役ジエン系ゴムであってもよい。また、共役ジエン系ゴム(A)の合成方法も特に限定されず、例えば、溶液重合法で合成されたものであっても、乳化重合法で合成されたものであってもよい。ただし、得られるゴム架橋物の低発熱性、耐摩耗性およびウェットグリップ性を特に良好なものとする観点からは、共役ジエン系ゴム(A)は、不活性溶媒を用いた溶液重合法で重合されたものが好ましく、なかでも、極性基を有する化合物からなる変性剤で変性されたものであることが好ましく、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであることがより好ましい。
共役ジエン系ゴム(B)を得るために用いられ、また、共役ジエン系ゴム(A)を得るために用いられうる変性剤は、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤である(以下、このような変性剤を「変性剤(C)」という。)。変性剤(C)としては、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有するものであれば特に限定されないが、例えば、下記の式(I)で示されるポリオルガノシロキサン;N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン;などを挙げることができ、なかでも下記の式(I)で示されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。このポリオルガノシロキサンを用いることにより、耐摩耗性、低発熱性、およびウェットグリップ性のバランスに優れる架橋物を得ることができる。
(式(I)中、R1〜R8は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X1およびX4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、からなる群より選ばれるいずれかの基であり、X1およびX4は同一であっても相違していてもよい。X2は、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、であり、複数あるX2は同一であっても相違していてもよい。X3は、アルキレングリコールの2〜20の繰返し単位を含有する基であり、X3が複数あるときは、それらは同一であっても相違していてもよい。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
式(I)で示されるポリオルガノシロキサンにおいて、式(I)のR1〜R8、X1およびX4を構成しうる炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらのなかでも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
式(I)で示されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4を構成しうる炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらのなかでも、共役ジエン系重合体鎖の活性末端との反応性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
また、式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2、およびX4を構成しうる、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基としては、下記の式(II)で表される基が挙げられる。
−Z1−Z2−E (II)
(式(II)中、Z1は、炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数1〜10の炭化水素基である。)
(式(II)中、Z1は、炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数1〜10の炭化水素基である。)
式(II)で表される基において、Z2が酸素原子であるものが好ましく、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z1が炭素数1〜3のアルキレン基であり、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1およびX4としては、上記したもののなかでも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、また、X2としては、上記したもののなかでも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましく、X1およびX4が炭素数1〜6のアルキル基であり、X2がエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であることがより好ましい。
式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X3、すなわちアルキレングリコールの2〜20の繰返し単位を含有する基としては、下記の式(III)で表される基が好ましい。
(式(III)中、tは2〜20の整数であり、Pは炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。)
式(III)で表される基のなかでも、式(III)において、tが2〜8の整数であり、Pが炭素数3のアルキレン基であり、Rが水素原子であり、かつ、Qがメトキシ基であるものが好ましく用いられる。
式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは3〜200、好ましくは20〜150、より好ましくは30〜120の整数である。mが3以上であると、得られる共役ジエン系ゴムを含有するタイヤ用ゴム組成物の加工性、および得られる架橋物の低発熱性がより優れたものとなる。また、mが200以下であると、ポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
また、式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。kは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜130の整数である。m、nおよびkの合計数は、3〜400であることが好ましく、20〜300であることがより好ましく、30〜250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が上記の範囲内であるとポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
変性剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性剤(C)の使用量は、目的とするタイヤ用ゴム組成物の性能などに応じて適宜設定できるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤(C)に含まれるエポキシ基および/またはアルコキシ基を、当該エポキシ基およびアルコキシ基の総量/当該活性末端の比が0.03〜0.6当量にて反応させる量であることが好ましく、0.1〜0.5等量で反応させる量であることがより好ましく、0.2〜0.5等量で反応させることが特に好ましい。この範囲であれば、低発熱性、耐摩耗性およびウェットグリップ性の性能バランスに優れる架橋物を与える共役ジエン系ゴムを得ることができる。また、当該エポキシ基およびアルコキシ基の総量/当該活性末端の比をこの範囲にすることにより、変性剤(C)を介して、高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい共役ジエン系ゴムを得ることができ、その結果、得られる架橋物は耐摩耗性に優れる。
共役ジエン系ゴム(B)を得るために用いられ、また、共役ジエン系ゴム(A)を得るために用いられうる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、目的とする共役ジエン系ゴムのガラス転移温度などに応じて、共役ジエン単量体単独で、または共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体や他の単量体とを組み合わせて、この単量体を不活性溶媒の存在下で、特定の開始剤を用いて重合することにより得ることができる。なお、このとき用いる、共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体および他の単量体の例や好ましく用いられるものは、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)の単量体単位を得るために用いる単量体として前述したものと同様である。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るために用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであって、重合反応を阻害しないものであれば、特に制限なく使用できる。その具体例としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、および2−ブテンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、およびシクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、例えば、1〜50重量%となる量であり、好ましくは10〜40重量%となる量である。
重合開始剤としては、目的の単量体を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、有機アルカリ金属化合物および有機アルカリ土類金属化合物が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物の具体例としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、およびスチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、および1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;が挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、およびジケチルバリウムなどが挙げられる。これらの重合開始剤のなかでも、有機モノリチウム化合物および有機多価リチウム化合物を用いることが好ましく、有機モノリチウム化合物を用いることがより好ましく、n−ブチルリチウムを用いることが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミン(好ましくは、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミン)などの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系ゴムの分子量に応じて決定すればよいが、単量体合計1,000g当り、例えば、1〜20mmol、好ましくは1.5〜15mmol、より好ましくは2〜10mmolの範囲である。
これらの単量体を重合するに際し、重合温度は、例えば、−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式等、いずれの様式をも採用できるが、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とをランダム共重合する場合には、結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体鎖とする場合、各単量体の結合様式は、例えば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができ、そのなかでもランダム状が好ましい。共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との結合様式をランダム状にする場合、重合系内において、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との合計量に対する芳香族ビニル単量体の比率が高くなりすぎないように、共役ジエン単量体または共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを、連続的または断続的に重合系内に供給して重合することが好ましい。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、および2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、そのなかでも、重合開始剤の金属とキレート構造を形成し得るものがより好ましく、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、およびテトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1molに対して、好ましくは0.001〜100mol、より好ましくは0.01〜10molの範囲で調節すればよい。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量は、特に限定されないが、10,000〜2,000,000が好ましく、100,000〜1,500,000がより好ましく、100,000〜1,000,000が特に好ましい。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3である。
共役ジエン系ゴム(B)を得る際、および共役ジエン系ゴム(A)を活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものとする場合にそれを得る際、において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、変性剤で一部を変性される他に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の一部は、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合停止剤、変性剤(C)以外の重合末端変性剤、およびカップリング剤などを重合系内に添加して一部の共役ジエン系重合体鎖の活性末端を不活性化してもよい。これらのなかでも、一部の共役ジエン系重合体鎖をカップリング剤と反応させることが好ましい。
カップリング剤としては、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5−ビス(トリクロロシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンなどのハロゲン化ケイ素化合物;テトラメトキシシラン、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エタン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エタンなどのアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)は、ハロゲン化ケイ素化合物をカップリング剤として、変性剤(C)と併用して得られるものであることが好ましく、1分子中に5以上のケイ素−ハロゲン原子結合を有するハロゲン化ケイ素化合物をカップリング剤として併用して得られるものであることがより好ましく、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンを用いることが特に好ましい。カップリング剤を変性剤(C)と併用して得られる共役ジエン系ゴムを用いて得られる架橋物は、耐摩耗性がより優れる。なお、カップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カップリング剤の使用量は、特に限定されず、カップリング剤の種類や要求されるカップリング率によって適宜選択されるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、カップリング剤の反応点を、カップリング剤の反応点の総量/当該活性末端の比が、0.01〜0.9当量であることが好ましく、0.05〜0.7当量であることがより好ましく、0.1〜0.5当量であることがさらに好ましい。カップリング剤の使用量が上記範囲内であると、カップリング剤を介して、高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい共役ジエン系ゴムを得ることができ、その結果、得られる架橋物は耐摩耗性に優れる。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、変性剤(C)およびカップリング剤などを添加する際には、反応を良好に制御する観点から、それらを不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましい。変性剤(C)およびカップリング剤などの不活性溶媒中溶液濃度は、1重量%以上、50重量%以下の範囲とすることが好ましい。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と変性剤(C)およびカップリング剤などとの反応は、例えば、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、変性剤(C)およびカップリング剤などを添加することにより行なうことができる。変性剤(C)およびカップリング剤などを添加する時期は、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、好ましくは100ppm以上、より好ましくは300〜50,000ppm以下の単量体を含有している状態で、この溶液に変性剤(C)およびカップリング剤などを添加することが望ましい。変性剤(C)およびカップリング剤などの添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
共役ジエン系ゴムを得るにあたり、変性剤(C)およびカップリング剤等を2種以上併用する場合において、それらを重合系に添加する順序は特に限定されないが、カップリング剤の添加を変性剤(C)の添加より先に行なうことが好ましい。このような順序で添加を行なうことにより、カップリング剤を介して高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい共役ジエン系ゴムを得ることができ、その結果、得られる架橋物は耐摩耗性に優れる。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、変性剤(C)およびカップリング剤などを反応させるときの条件としては、温度が、例えば0〜100℃、好ましくは30℃〜90℃の範囲であり、それぞれの反応時間が、例えば1〜120分、好ましくは2〜60分の範囲である。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、変性剤(C)および所望により添加するカップリング剤などを反応させた後は、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤およびスケール防止剤などを重合溶液に添加し、その後、直接乾燥およびスチームストリッピングなどにより重合溶液から重合溶媒を分離して、目的の共役ジエン系ゴムを回収する。重合溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよく、この場合、共役ジエン系ゴム(A)と共役ジエン系ゴム(B)の両方を油展ゴムとしても、どちらか一方を油展ゴムとしてもよい。
共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100重量部に対して、例えば、5〜100重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは15〜50重量部である。
共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)は、2つ以上の共役ジエン系重合体鎖が、変性剤(C)、変性剤(C)以外の変性剤、または上述したカップリング剤を介して結合された構造体を有していてもよく、そのような構造体を、それぞれの共役ジエン系ゴムあたり、10〜80重量%含有していることが好ましく、20〜70重量%含有していることがより好ましい。2分岐以上の構造体を形成する場合、2つ以上の共役ジエン系重合体鎖は、反応後の変性剤(C)の残部、反応後の変性剤(C)以外の変性剤の残部、または反応後のカップリング剤の残部を介して結合されている。このような構造体が上記の範囲内であると、分子量が大きい共役ジエン系ゴムを得ることができ、その結果、得られる架橋物は耐摩耗性に優れる。なお、本願においては、それぞれの共役ジエン系ゴムにおいて、その全体に対する、2つ以上の共役ジエン系重合体鎖が、変性剤(C)、変性剤(C)以外の変性剤または上述したカップリング剤を介して結合された構造体の割合(重量分率)をカップリング率と表す。
カップリング率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定により得られたチャートより、全溶出面積に対する、分子量の最も小さいピークが示すピークトップ分子量の2倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積比を、2以上の共役ジエン系重合体鎖が変性剤(C)、変性剤(C)以外の変性剤、またはカップリング剤を介して結合された分子の重量分率、すなわち、共役ジエン系重合体鎖の2分岐以上のカップリング率とする。このときの分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めるものとする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物における、共役ジエン系ゴム(A)と共役ジエン系ゴム(B)との含有比率は、特に限定されないが、(共役ジエン系ゴム(A):共役ジエン系ゴム(B))の重量比として、(55:45)〜(85:15)であることが好ましく、(60:40)〜(80:20)であることがより好ましく、(65:35)〜(75:25)であることがさらに好ましい。タイヤ用ゴム組成物における、共役ジエン系ゴム(A)と共役ジエン系ゴム(B)との含有比率がこの範囲内であると、低発熱性、耐摩耗性およびウェットグリップ性の性能バランスに優れる架橋物を得ることができる。なお、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)を油展ゴムとする場合は、伸展油分を除いたゴム成分の重量比を上記の範囲内とすることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を構成するゴム成分は、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)以外のその他のゴムを含んでいてもよい。なお、その他のゴムは、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶成分を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどの各種のゴムうち、共役ジエン系ゴム(A)および共役ジエン系ゴム(B)のいずれにも該当しないものをいうものとする。これらのその他のゴムのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴムおよびスチレン−ブタジエンランダム共重合ゴムが好ましい。その他のゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を構成するゴム成分において、その他のゴムは、ゴム成分中の15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を得るにあたり、共役ジエン系ゴム(A)、共役ジエン系ゴム(B)および必要に応じて用いられるその他のゴムは、予め、ウエットブレンドまたはドライブレンドで混合することにより混合されたゴム成分としてから、そのゴム成分にシリカやシランカップリング剤などのタイヤ用ゴム組成物を構成するゴム以外の成分を添加してもよいし、別々のゴムの状態から、シリカやシランカップリング剤などとともに一括で混合してもよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述したゴム成分に加え、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される窒素吸着比表面積が200〜250m2/gであるシリカを含むものである。本発明のタイヤ用ゴム組成物では、このような範囲の窒素吸着比表面積を有するシリカを含むことにより、得られる架橋物が、耐摩耗性および強度特性に優れるものとなる。
このシリカの窒素吸着比表面積(BET法)は、205〜240m2/gであることが好ましく、210〜230m2/gであることがより好ましい。また、このシリカのpHは、特に限定されないが、7未満であることが好ましく、5以上、6.9以下であることがより好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、上述したような窒素吸着比表面積(BET法)が特定の範囲であるシリカの含有量は、特に限定されないが、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10〜200重量部であることが好ましく、20〜150重量部であることがより好ましく、30〜120重量部であることがさらに好ましい。このような量で特定のシリカを用いることにより、得られる架橋物が、耐摩耗性および強度特性に特に優れるものとなる。
本発明において用いるシリカは、窒素吸着比表面積(BET法)が所定の範囲を満たす限り、その製法によって、特に制限されない。具体的には、一般的に四塩化珪素を酸水素炎中で燃焼させて得られる乾式シリカ、珪酸アルカリを酸で中和することによって得られる湿式シリカ、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシドを酸性又はアルカリ性の含水有機溶媒中で加水分解することによって得られるゾル−ゲル法シリカ、珪酸アルカリ水溶液を電気透析により脱アルカリすることによって得られるコロイダルシリカ等を用いることができる。これらのなかでも、生産性に優れる湿式シリカが好ましく、その中でも特にゲルを経ないで得られる沈降シリカが好ましい。なお、本発明において用いるシリカとして、市販のシリカを用いることも可能であり、例えば、ローディア社製の「ZeosilPreimum200MP」を用いることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述したような窒素吸着比表面積(BET法)が特定の範囲であるシリカに加え、窒素吸着比表面積(BET法)がその範囲外のシリカを含んでいてもよい。窒素吸着比表面積(BET法)が上記の範囲外のシリカの含有量は、シリカ全体に対して、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物であるシランカップリング剤を含むものである。このシランカップリング剤は、シランカップリング剤として機能するための有機官能基と加水分解性基とを持ち、かつ、1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物によりなるものである。本発明のタイヤ用ゴム組成物では、シランカップリング剤として、1分子あたりの平均値として1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物を用いることにより、シランカップリング剤元来の架橋物の低発熱性改良効果に加え、タイヤ用ゴム組成物自体の加工性改良効果も得ることができる。
本発明において、シランカップリング剤として用いられるシラン化合物の例としては、ビス(トリエトキシシリル)プロピルジスルフィド、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピル−トリエトキシシランが挙げられる。
本発明において、シランカップリング剤として用いるシラン化合物は、たとえば、3−オクタノイルチオ−1−プロピル−トリエトキシシランのように、アルカノイルチオ基を有するシラン化合物であることがより好ましい。ここで、アルカノイルチオ基は、カルボキシル原子団の酸素を硫黄で置換したアルカノイル基であり、式R−C(=O)−S−(ここで、Rは水素原子またはアルキル基である)で表される基である。シランカップリング剤として、アルカノイルチオ基を有するシラン化合物を用いることにより、タイヤ用ゴム組成物自体の加工性がさらに良好なものとなる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物におけるシランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックおよびグラファイトなどのカーボンブラックをさらに配合してもよい。カーボンブラックの中では、ファーネスブラックがより好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、N234およびFEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、特に限定されないが、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、例えば、120重量部以下である。また、シリカおよびカーボンブラックの合計量も、特に限定されないが、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、25〜120重量部が好ましく、30〜100重量部がより好ましく、35〜90がさらに好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に限定されないが、好ましくは5〜200m2/g、より好ましくは20〜150m2/g、さらに好ましくは40〜130m2/gである。また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸着量も、特に限定されないが、好ましくは5〜200ml/100g、より好ましくは50〜160ml/100g、さらに好ましくは70〜130ml/100gである。カーボンブラックの窒素吸着比表面積がこの範囲であると、低発熱性に特に優れる架橋物を与える、加工性が良好なタイヤ用ゴム組成物を得ることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物に、シリカおよびカーボンブラックなどの充填剤やシランカップリング剤を添加する方法は特に限定されず、固形ゴムに対して添加して混練する方法(乾式混練法)およびゴムの溶液に添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物およびメチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられるが、なかでも、硫黄が好ましく用いられる。架橋剤の配合量は、特に限定されないが、本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜4重量部である。架橋剤の配合量がこの範囲内にあると、架橋が十分に行われ、特に機械的特性に優れる架橋物が得られる。
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系;グアニジン系;チオウレア系;チアゾール系;チウラム系;ジチオカルバミン酸塩系;キサントゲン酸系;などの各架橋促進剤を挙げることができ、なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましく用いられる。架橋活性化剤としては、例えば、酸化亜鉛;ステアリン酸などの高級脂肪酸;などが挙げられる。架橋促進剤および架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
架橋促進剤および架橋活性化剤の配合量は、特に限定されないが、本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分100重量部に対して、それぞれ、好ましくは0.05〜15重量部であり、より好ましくは0.5〜10重量部であり、さらに好ましくは1〜5重量部である。架橋促進剤および架橋活性化剤の配合量がこの範囲内にあると、架橋が十分に行われ、特に機械的特性に優れる架橋物が得られる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、老化防止剤、スコーチ防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、充填剤、粘着付与剤などの、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を、配合目的に応じて、適宜配合できる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を得る方法は、特に限定されないが、常法に従って各成分を混練すればよい。例えば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤とゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤および架橋促進剤を混合して目的のタイヤ用ゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤とゴム成分との混練温度は、特に限定されないが、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃であり、その混練時間も、特に限定されないが、好ましくは30秒〜30分である。混練物と架橋剤および架橋促進剤との混合は、例えば100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加工性に優れるものであり、しかも、低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れる架橋物を与えることができるものであるから、その架橋物がタイヤを構成材料として好適に用いられるものである。すなわち、本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物の架橋物を含むものである。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて、タイヤ(の部材)を製造する場合の架橋および成形方法は、目的とする架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中に、架橋剤を配合したタイヤ用ゴム組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、架橋剤を配合したタイヤ用ゴム組成物を予め成形した後、それを加熱して架橋してもよい。成形時の温度は、特に限定されないが、好ましくは20〜140℃、より好ましくは40〜130℃である。架橋温度も、特に限定されないが、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、例えば、1〜120分である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の架橋物は、低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れるので、例えば、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、スタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用が可能であるが、特に低発熱性および耐摩耗性に優れるので、低燃費タイヤのトレッド用として、特に好適に用いられる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は、以下の記載に従って行った。
〔重量平均分子量〕
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的には、以下の条件で測定した。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的には、以下の条件で測定した。
測定器 :HLC−8020(東ソー社製)
カラム :GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した
検出器 :示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
カラム :GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した
検出器 :示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔重合体のミクロ構造〕
1H−NMRと13C−NMRにより測定した。
1H−NMRと13C−NMRにより測定した。
〔ガラス転移温度〕
示差走査熱量測定(DSC)にて、以下の条件で測定した。
示差走査熱量測定(DSC)にて、以下の条件で測定した。
測定器 : Pyris1 DSC(パーキンエルマー社製)
昇温速度 : 10℃/分
昇温速度 : 10℃/分
〔重合体(ゴム)とゴム組成物のムーニー粘度〕
JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。なお、油展ゴムにしなかったゴムは、油展しない状態でムーニー粘度を測定した。ゴム組成物については、ムーニー粘度が低いものほど、加工性に優れる。
JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。なお、油展ゴムにしなかったゴムは、油展しない状態でムーニー粘度を測定した。ゴム組成物については、ムーニー粘度が低いものほど、加工性に優れる。
〔シリカの窒素吸着比表面積(BET法)〕
ASTM D3037−81に準じて、BET法で測定した。
ASTM D3037−81に準じて、BET法で測定した。
〔耐摩耗性〕
上島製作所社製FPS摩耗試験機を用い、荷重1kgf、スリップ率15%で測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、耐摩耗性に優れる。
上島製作所社製FPS摩耗試験機を用い、荷重1kgf、スリップ率15%で測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、耐摩耗性に優れる。
〔低発熱性〕
レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、低発熱性に優れる。
レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、低発熱性に優れる。
〔破断強度〕
JIS K6251に従い、自動引張試験機(東洋精機製作所社製)を用い、破断時の応力を測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、強度特性に優れる。
JIS K6251に従い、自動引張試験機(東洋精機製作所社製)を用い、破断時の応力を測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、強度特性に優れる。
〔製造例1〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、スチレン370g、1,3−ブタジエン205g、イソプレン25gおよびテトラメチルエチレンジアミン2.7mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3−ブタジエンおよびイソプレンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として3.3mmolを加え、40℃で重合を開始した。
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、スチレン370g、1,3−ブタジエン205g、イソプレン25gおよびテトラメチルエチレンジアミン2.7mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3−ブタジエンおよびイソプレンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として3.3mmolを加え、40℃で重合を開始した。
重合を開始してから30分経過後、スチレン50g、1,3−ブタジエン335gを90分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、イソプレン15gを添加し10分間反応させた後、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。サンプリングした重合体の重量平均分子量は56.7万であった。
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、カップリング剤として1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.083mmolを20%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
次に、変性剤として下記の式(IV)で表されるポリオルガノシロキサン0.017mmolを40%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
その後、重合停止剤として、重合反応に使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムA1を含有する溶液を得た。
この共役ジエン系ゴムA1を含有する溶液の一部を取り出し、ゴム成分(共役ジエン系ゴムA1)100部あたり、老化防止剤として、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.2部を添加した。次に、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥し、共役ジエン系ゴムA1を得た。この共役ジエン系ゴムA1のスチレン単位含有量、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量およびシス−1,4結合含有量、重量平均分子量、ならびにガラス転移温度を測定した。この結果を表1に示す。
この共役ジエン系ゴムA1を含有する溶液の残部に、ゴム成分(共役ジエン系ゴムA1)100部あたり、老化防止剤として、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.2部、および伸展油として、T−DAE(JX日鉱日石エネルギー社製)25.0部を添加した。次に、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥し、油展共役ジエン系ゴムA1を得た。油展共役ジエン系ゴムA1について、ムーニー粘度を測定した。その値を表1に示す。
〔製造例2〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、1,3−ブタジエン600gおよびテトラメチルエチレンジアミン0.1mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、および1,3−ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.5mmolを加え、40℃で重合を開始した。
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、1,3−ブタジエン600gおよびテトラメチルエチレンジアミン0.1mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、および1,3−ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.5mmolを加え、40℃で重合を開始した。
重合を開始してから30分経過後、1,3−ブタジエン400gを90分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。サンプリングした重合体の重量平均分子量は24.3万であった。
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、カップリング剤として1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.298mmolを20%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
次に、変性剤として上記の式(IV)で表されるポリオルガノシロキサン0.043mmolを40%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
その後は、伸展油を添加せずに、油展ゴムとしなかったこと以外は、製造例1と同様の操作を行ない、共役ジエン系ゴムB1を得た。また、共役ジエン系ゴムB1のムーニー粘度を測定した。その値を表1に示す。
〔共役ジエン系ゴムA2〕
共役ジエン系ゴムA2として、市販の溶液重合スチレンブタジエンゴム(「Nipol NS522」日本ゼオン社製)を使用した。共役ジエン系ゴムA2のスチレン単位含有量、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量およびシス−1,4結合含有量、重量平均分子量、ガラス転移温度、ならびにムーニー粘度の値を表1に示す。
共役ジエン系ゴムA2として、市販の溶液重合スチレンブタジエンゴム(「Nipol NS522」日本ゼオン社製)を使用した。共役ジエン系ゴムA2のスチレン単位含有量、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量およびシス−1,4結合含有量、重量平均分子量、ガラス転移温度、ならびにムーニー粘度の値を表1に示す。
〔未変性ポリブタジエンゴム〕
未変性ポリブタジエンゴムとして、ハイシスポリブタジエンゴム(「Nipol BR1220」日本ゼオン社製)を使用した。未変性ポリブタジエンゴムのビニル結合含有量、シス−1,4結合含有量、重量平均分子量、ガラス転移温度、およびムーニー粘度の値を表1に示す。
未変性ポリブタジエンゴムとして、ハイシスポリブタジエンゴム(「Nipol BR1220」日本ゼオン社製)を使用した。未変性ポリブタジエンゴムのビニル結合含有量、シス−1,4結合含有量、重量平均分子量、ガラス転移温度、およびムーニー粘度の値を表1に示す。
〔実施例1〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、油展共役ジエン系ゴムA170部および共役ジエン系ゴムB1 30部を30秒間素練りした。(各ゴムの部数は、油展ゴムにおいては伸展油分を除いたゴム成分としての値であり、「部」は、各々の実施例および比較例にて使用した、各ゴムの伸展油分を除いたゴム成分の合計量を100部としたときの値であり、以下の記載においても同様である。)次いで、シリカ(商品名「ZeosilPreimum200MP」ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):220m2/g)46.6部、およびシランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(商品名「NXTシラン」モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)6.3部を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練した。次に、プロセスオイルとしてT−DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、シリカ(商品名「ZeosilPreimum200MP」ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):220m2/g)16.3部、カーボンブラック(「シースト7HM」東海カーボン社製)5部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部、および老化防止剤(「ノクラック6C」大内新興化学社製)2部を添加した。その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、油展共役ジエン系ゴムA170部および共役ジエン系ゴムB1 30部を30秒間素練りした。(各ゴムの部数は、油展ゴムにおいては伸展油分を除いたゴム成分としての値であり、「部」は、各々の実施例および比較例にて使用した、各ゴムの伸展油分を除いたゴム成分の合計量を100部としたときの値であり、以下の記載においても同様である。)次いで、シリカ(商品名「ZeosilPreimum200MP」ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):220m2/g)46.6部、およびシランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(商品名「NXTシラン」モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)6.3部を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練した。次に、プロセスオイルとしてT−DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、シリカ(商品名「ZeosilPreimum200MP」ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):220m2/g)16.3部、カーボンブラック(「シースト7HM」東海カーボン社製)5部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部、および老化防止剤(「ノクラック6C」大内新興化学社製)2部を添加した。その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。
混練終了時のゴム混練物の温度は150℃であった。ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、3分間混練した。次に、ブラベンダータイプミキサーからゴム混練物を排出させた。
次いで、50℃のオープンロールで、ゴム混練物、硫黄2.1部、および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド2.0部とジフェニルグアニジン2.0部の混合物)を混練した。そして、シート状のゴム組成物を取り出した。
このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して試験片を作製した。この試験片について、低発熱性、耐摩耗性、および破断強度(強度特性)の測定、ならびに加工性の評価(ムーニー粘度の測定)を行なった。表2にその結果を示す。なお、これらの評価の結果は、後述する比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
〔実施例2〜4、比較例1〜6〕
用いるゴムの種類および量、用いるシリカの種類、および用いるシランカップリング剤の種類を表2に示した量に変えたこと以外は、実施例1と同じ操作を行ない、試験片を作製して、低発熱性、耐摩耗性、および破断強度(強度特性)の測定、ならびに加工性の評価(ムーニー粘度の測定)を行なった。表2にその結果を示す。なお、比較例2、4および6で用いたシリカは、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)であり、比較例5および6で用いたシランカップリング剤は、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(商品名「Si69」デグッサ社製)である。なお、実施例1〜4、および比較例1〜6のそれぞれのゴム組成物は、オイル量が油展ゴムに含まれる伸展油分を含めて等しくなるように、プロセスオイルにより調整した。
用いるゴムの種類および量、用いるシリカの種類、および用いるシランカップリング剤の種類を表2に示した量に変えたこと以外は、実施例1と同じ操作を行ない、試験片を作製して、低発熱性、耐摩耗性、および破断強度(強度特性)の測定、ならびに加工性の評価(ムーニー粘度の測定)を行なった。表2にその結果を示す。なお、比較例2、4および6で用いたシリカは、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)であり、比較例5および6で用いたシランカップリング剤は、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(商品名「Si69」デグッサ社製)である。なお、実施例1〜4、および比較例1〜6のそれぞれのゴム組成物は、オイル量が油展ゴムに含まれる伸展油分を含めて等しくなるように、プロセスオイルにより調整した。
表1から判るように、本発明のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜4)は、加工性に優れ、しかも、低発熱性、耐摩耗性、および強度特性に優れる架橋物を与えるものである。
Claims (6)
- ガラス転移温度が−60〜−10℃である共役ジエン系ゴム(A)と、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が−120〜−50℃であり、前記共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20〜100℃低い共役ジエン系ゴム(B)と、を含むゴム成分、
窒素吸着比表面積(BET法)が200〜250m2/gであるシリカ、
および1分子中に1個または2個の硫黄原子を有するシラン化合物であるシランカップリング剤
を含むタイヤ用ゴム組成物。 - 前記シラン化合物がアルカノイルチオ基を有するものである請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記共役ジエン系ゴム(A)と前記共役ジエン系ゴム(B)との含有比率が、(共役ジエン系ゴム(A):共役ジエン系ゴム(B))の重量比で、55:45〜85:15である請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記ゴム成分100重量部に対して、前記シリカ10〜200重量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- さらに、架橋剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項5に記載のタイヤ用ゴム組成物の架橋物を含むタイヤ。
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