本発明者等は、荷電制御剤に関して検討を行った結果、各種荷電制御剤の中でもピラゾロンモノアゾ金属化合物を用いると、高い帯電性を有し、且つ著しく高い帯電立ち上がり性を有する負帯電性トナーが得られることを見出した。また、ピラゾロンモノアゾ金属化合物を用いたトナーにおいて、磁性酸化鉄の含有量を少なくし、低磁化トナーとすることで、特に高温高湿環境における帯電性に優れ、画質が大幅に改善され、ドット再現性に優れた画像が得られることを見出した。
しかしながら、ピラゾロンモノアゾ金属化合物を含有するトナーの磁性酸化鉄含有量を単純に減らしてしまうと、低湿環境において黒ポチと呼ばれる画像欠陥の弊害が発生することも見出した。
本発明者らが、黒ポチの解析を行ったところ、黒ポチはトナーの平均粒径よりも非常に大きな粒子と小さな粒子が凝集した粒子であり、凝集粒子はほとんど帯電していないことが分かった。これらのことから、黒ポチ発生メカニズムは以下のように推測できる。
通常、トナーは粒度分布を有する為、粒径の大きなもの(以下トナー粗粉ともいう)は帯電が低く、粒径の小さなもの(以下トナー微粉ともいう)は帯電が高くなる傾向がある。本発明のピラゾロンモノアゾ金属化合物を含有するトナーは帯電性が高いうえに、低湿環境ではトナーの帯電をリークしにくい為、特にトナー微粉は非常に高い帯電を持つ。帯電の高すぎる粒子は安定して存在することが難しい為、高い帯電を持つトナー微粉は、静電的に反発しにくい帯電量の低い粒子(トナー粗粉)に付着して安定しようとする。この結果、トナー粗粉とトナー微粉が静電的に凝集した凝集粒子が生成する。凝集粒子は帯電性がコントロールされていない為、非画像部に現像して黒ポチの原因となる。
本発明者らは、電気抵抗率が1.0×103Ω・cm以上1.0×106Ω・cm以下である磁性酸化鉄を、結着樹脂100質量部に対して20質量部以上70質量部以下含有させることで、ピラゾロンモノアゾ金属化合物を含有するトナーであっても、低湿環境において黒ポチを発生させずに、高温高湿環境における高画質化を達成できることを見出した。
磁性酸化鉄の電気抵抗率と、トナー中の磁性酸化鉄の含有量を上記範囲に制御することで、トナー表面に磁性酸化鉄を適度に露出させ、トナー微粉の過剰な帯電をリークさせる働きを持たせることが出来る。
本発明で用いる磁性酸化鉄は、電気抵抗率が1.0×103Ω・cm以上1.0×106Ω・cm以下、好ましくは5.0×103Ω・cm以上5.0×105Ω・cm以下、より好ましくは1.0×104Ω・cm以上1.0×105Ω・cm以下であることが重要である。磁性酸化鉄の電気抵抗率が1.0×103Ω・cm未満であると、トナーの帯電をリークする働きが強すぎて、トナーの帯電が低くなりすぎ、画像濃度の低下やカブリの悪化を起こしやすい。電気抵抗率が1.0×106Ω・cmより大きいと、トナー微粉の帯電をリークする働きが弱く、黒ポチが発生しやすい。
本発明では、磁性酸化鉄を結着樹脂100質量部に対して20質量部以上70質量部以下、好ましくは30質量部以上60質量部以下、より好ましくは40質量部以上60質量部以下含有させることが重要である。磁性酸化鉄の含有量が、結着樹脂100質量部に対して20質量部未満であると、トナーの磁気力が弱くなりすぎてカブリが悪化したり、トナー表面に露出する磁性酸化鉄が少なすぎてトナー微粉の帯電をリークする働きが弱くなり、黒ポチが発生する場合がある。磁性酸化鉄の含有量が70質量部より多いとトナーの磁気力が強くなりすぎて、現像スリーブ上に形成される磁気穂が大きくなり、ドットの再現性が悪化する場合がある。
本発明では、式〔1〕で示される荷電制御剤を結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下、好ましくは0.1質量部以上4.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下を含有することが重要である。荷電制御剤の含有量が0.1質量部未満では、高温高湿環境における帯電性を改良する効果が小さく、画質の改善効果が得られない場合がある。荷電制御剤の含有量が5.0質量部より多いと、トナー微粉の帯電量が高くなりすぎて、黒ポチが発生する場合がある。
ピラゾロンモノアゾ金属化合物が、高い帯電量と、高い帯電立ち上がり性を有する詳しい理由は明確になっていないが、ピラゾロン骨格を配位子内に有することで、帯電性が向上すると考えられる。
本発明では、体積平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下(好ましくは0.5μm以上2.5μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下)であり、体積基準の4.0μm以上の粒子の割合が20体積%以下(好ましくは15体積%以下)であるピラゾロンモノアゾ系金属化合物を荷電制御剤として用いることが好ましい。
荷電制御剤の粒度分布が上記範囲の場合に、高温高湿環境でドット再現性に優れた画質の画像が得られる為、好ましい。
更に本発明で用いられる荷電制御剤は、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら容器内の荷電制御剤粉体層中に垂直に進入させる。該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をEとする。総和Eが、100mJ以上2000mJ以下(好ましくは100mJ以上1500mJ以下、より好ましくは100mJ以上1000mJ以下)であり、ピラゾロンモノアゾ系金属化合物を荷電制御剤として用いることが好ましい。
荷電制御剤の回転トルクと垂直荷重の総和Eは、荷電制御剤の流動性を示しており、原材料の均一分散性を高める上で重要な指標である。
荷電制御剤の流動性は、他のトナー原材料と混合する際の混合性を改良するうえで重要な因子であり、この原材料の混合性がトナー中での荷電制御剤の分散状態に大きく影響する。本発明では、トナーの帯電を高める荷電制御剤と、過剰な帯電をリークさせ、適正な帯電量を保つ機能を有する磁性酸化鉄との、両方の分散性を改良する必要がある。特に、溶融混練により原材料を混合、分散させるトナーの製造方法では、溶融混練だけでは荷電制御剤と磁性酸化鉄を十分に均一に分散できない場合がある。荷電制御剤の流動性を上記範囲に制御することで、溶融混練前の原材料混合の段階で、荷電制御剤と磁性酸化鉄の分散状態を改良でき、トナー中の荷電制御剤と磁性酸化鉄の分散状態を改良出来る為、好ましい。
荷電制御剤のEが100mJ以上2000mJ以下である場合、荷電制御剤の流動性が適正に制御されている為、トナーの原材料混合の工程で荷電制御剤が他のトナー原材料、特に比重の大きい磁性酸化鉄と分離しにくく、均一混合性が改良できる。
荷電制御剤の回転トルクと垂直荷重の総和Eの調整方法として好ましいのは、合成によって得られた荷電制御剤を粉砕して粒度分布を調整する方法がある。あるいは、合成によって得られた荷電制御剤を溶剤に溶解した後、水などの貧溶媒を加えて再析出させる方法などが挙げられる。これらの方法により荷電制御剤の流動性が変化する理由は明確になっていないが、粒度分布だけでなく、結晶の形状も変化することにより、粉体特性としての流動性が変化しているものと考えている。
本発明において、E(mJ)の測定には、上述のように、回転式プロペラ型ブレードを備えた粉体流動性分析装置[パウダーレオメータFT−4(Freeman Technology社製)](以下、「FT−4」と省略する場合がある)を用いた。
当該装置は、粉体サンプル中で回転式ブレードを移動させ、一定の流動測定とパターンの流れを起こさせる。サンプル中の粒子はブレードが近接すると流動し、通過するとブレード背後に落下して再び静止する。ブレードが粉体中を移動するのに必要としたエネルギーが計算され、この値から、種々の流動性指数が計算される。ブレードはプロペラ型で、回転すると同時に上又は下方向にも運動するので先端はらせんを描くことになる。回転速度と上下運動を変化させることによりブレードのらせん経路の角度や速度を調節することができる。ブレードが粉体層表面に対して右回りのらせん経路に沿って移動するときには粉体を均一に混ぜる作用がある。逆に粉体層表面に対して左回りのらせん経路に沿って移動するときにはブレードは粉体から抵抗を受けることになる。
具体的には、以下の操作により測定を行う。尚、全ての操作において、プロペラ型ブレードは、FT−4測定専用48mm径ブレード(図1、48mm×10mmのブレード板の中心に法線方向に回転軸が存在し、ブレード板は、両最外縁部分(回転軸から24mm部分)が70°、回転軸から12mmの部分が35°といったように、反時計回りになめらかにねじられたもので、材質はSUS製。型番:C210。以下、「ブレード」と省略する場合がある)を用いる。
まず、FT−4測定専用[50mm×160ml]スプリット容器(型番:C203。容器底面からスプリット部分までの高さ82mm。材質は、ガラス。以下、容器と省略する場合がある。)に温度23℃、湿度60%環境に3日以上放置された荷電制御剤を40g入れることで荷電制御剤の粉体層とする。
(1)コンディショニング操作
(a)ブレードの回転スピード(ブレードの最外縁部の周速)を60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、移動中のブレードの最外縁部が描く軌跡と粉体層表面とのなす角(以降、「なす角」と省略する場合がある。)が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層が均一に混ぜられる方向)の回転方向に、粉体層表面から粉体層の底面から10mmの位置までブレードを進入させる。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から1mmの位置までブレードを進入させる操作を行う。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層からの抜き取り速度をなす角が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から100mmの位置までブレードを移動させ、抜き取りを行う。
抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着した荷電制御剤を払い落とす。
(b)一連の上記(1)−(a)の操作を5回行うことで、粉体層中に巻き込まれている空気を取り除き、安定した粉体層を作る。
(2)スプリット操作
上述のFT−4測定専用セルのスプリット部分で粉体層をすり切り、粉体層上部のを取り除くことで、同じ体積の粉体層を形成する。
(3)測定操作
(i)E(mJ)の測定
(a)上記(1)−(a)と同様の操作を一回行う。
(b)次にブレードの回転スピードを100(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して反時計回り(ブレードの回転により粉体層が押し込まれる(粉体層が抵抗を受ける)方向)の回転方向に、粉体層の底面から10mmの位置までブレードを進入させる。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から1mmの位置までブレードを進入させる操作を行う。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から100mmの位置までブレードの抜き取りを行う。
抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着した荷電制御剤を払い落とす。
(c)上記、(b)の一連の操作を計7回行う。上記(c)の操作において、7回目のブレードの回転スピードが100(mm/sec)であるときの、粉体層の底面から100mmから10mmの位置までブレードを進入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をE(mJ)とする。
該荷電制御剤は、下記式〔1〕
(式中、A
1、A
2及びA
3は、相互に独立して、水素原子、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。B
1は水素原子又はアルキル基を示す。Mは、Fe原子、Cr原子、又は、Al原子を示し、X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、又は、これらの混合イオンを示す。)
で示される化合物を含有することを特徴とする。
本発明において、式〔1〕で表されるピラゾロンモノアゾ金属化合物は、公知のモノアゾ金属化合物の製造方法を用いて製造することができる。以下に代表的な製造方法を記載する。まず、4−クロロ−2−アミノフェノール等のジアゾ成分に、塩酸や硫酸のような鉱酸を加え、液温が5℃以下になったら、水に溶解させた亜硝酸ナトリウムを液温10℃以下に維持しながら滴下する。10℃以下で30分以上3時間以下撹拌して反応させることにより、4−クロロ−2−アミノフェノールをジアゾ化する。スルファミン酸を加え、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認する。
次に、3−メチル−1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−ピラゾロンであるカップリング成分、水酸化ナトリウムの水溶液、炭酸ナトリウム、有機溶媒を添加し、室温で撹拌溶解する。そこに前記ジアゾ化合物を注加し、室温で数時間撹拌し、カップリングを行う。撹拌後、ジアゾ化合物とレゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とする。水を加えた後十分に撹拌し、静置してから分液する。更に水酸化ナトリウム水溶液を加え、撹拌洗浄し分液を行う。これによって、モノアゾ化合物の溶液を得る。
上記カップリングの際に使用する有機溶媒としては、1価アルコール、2価アルコール、ケトン系有機溶媒が好ましい。1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコールモノアルキル(炭素数1乃至4)エーテルが挙げられる。2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。ケトン系としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
次に、金属化反応を行う。上記モノアゾ化合物の溶液に、水、サリチル酸、n−ブタノール、炭酸ナトリウムを添加し撹拌する。配位金属として鉄を用いる場合は、塩化第二鉄水溶液と炭酸ナトリウムを添加する。
液温を30℃乃至40℃に昇温し、TLCで反応を追跡する。5時間乃至10時間経過後、原料のスポットが消失したことを確認し、反応終了とする。撹拌停止後、静止し、分液を行う。更に水、n−ブタノール、水酸化ナトリウム水溶液を加え、アルカリ洗浄を行う。濾過を行いケーキを取り出し、水で洗浄する。
さらに、本発明で好ましく用いられる粒度分布と流動性を有するピラゾロンモノアゾ金属化合物を得るために、上記で水洗浄したケーキを有機溶剤に溶解させる。この時用いる有機溶剤としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1価アルコール、2価アルコールが好ましい。1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコールモノアルキル(炭素数1乃至4)エーテルが挙げられる。2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。
この溶解液を50℃に昇温し、撹拌させながら水を添加していくことで、徐々に荷電制御剤を析出させる。あらかじめ水に消泡剤を添加しておくと、系内で発生する泡を除去することで、荷電制御剤を均一にできる。冷却濾過後、水によりケーキを洗浄し、さらにケーキを真空乾燥することで、本発明のピラゾロンモノアゾ金属化合物を得ることができる。この溶解、析出の条件を調整することで、ピラゾロンモノアゾ金属化合物の結晶構造や粒度分布が変化し、流動性が変化すると考えられる。
また、本発明に用いられる荷電制御剤は、下記式〔2〕で表されるモノアゾ鉄化合物であることが好ましい。
(式中、A
1、A
2及びA
3は、相互に独立して、水素原子、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。B
1は水素原子又はアルキル基を示す。X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン又はこれらの混合イオンを示す。)
即ち、配位金属が鉄であることが好ましい。配位金属を鉄とすることで、高温高湿環境においてもトナーに安定な帯電性能を与えることが出来る。
本発明に用いられる荷電制御剤は、下記式〔3〕で表されるモノアゾ鉄化合物であることがさらに好ましい。
(式中、X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン又はこれらの混合イオンを示す。)
式〔3〕に示す構造をとることで、より帯電の立ち上がりがはやいトナーが得られる。
本発明で用いられる荷電制御剤は、体積平均粒径が4.0μm以上であるものを、粉砕により0.5μm以上3.0μm以下(好ましくは0.5μm以上2.5μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下)にしたものを用いても良い。
さらに本発明では、荷電制御剤の粒度分布を上記範囲に調整する為、粉砕した荷電制御剤を分級したものであることが好ましい。
荷電制御剤を合成する工程の粒径を大きくすることで、ろ過や洗浄などの工程の生産性が向上するうえに、粒径の大きな荷電制御剤を粉砕により小粒径化することで、粒度分布のシャープな荷電制御剤を得やすい。
また、荷電制御剤を粉砕することで、荷電制御剤の流動性が変化する。この理由は明確になっていないが、粉砕時の衝撃により、荷電制御剤の結晶構造が一部変化して、粉体特性に影響していると推測している。
荷電制御剤の粉砕に用いられる粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
本発明における荷電制御剤の粒度分布の測定法を述べる。
荷電制御剤の粒径はレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計(コールター社製)を用いて測定する。測定溶媒としてはエタノールを使用する。エタノールにて粒度分布計の測定系内を数回洗浄、置換し、バックグラウンドファンクションを実行する。
次に下記のようにして試料液を得て、前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDS(濃度)が45%以上55%以下になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、体積分布から頻度比率を求める。
装置係数としてはエタノールの屈折率を1.36とし、光学モデルとしては1.08(実数部)−0.00i(虚数部)として測定を行った。なお、本発明におけるレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計の粒度測定範囲は0.04μm以上2000μm以下である。測定温度としては20℃以上25℃以下の範囲で行った。
本発明におけるサンプルの調製法としては、測定する微粉末を0.4g秤量し、これをエチルアルコール100mlの入ったビーカーにいれ、スターラー撹拌により1分間撹拌しなじませる。ビーカーを超音波振動層に移し、3分間処理する。処理終了後、直ちにエタノールで満たされた測定部に分散溶液を測定許容濃度になるまで加え、測定を開始する。
なお、本発明における超音波振動層としては井内盛栄堂社製のULTRASONIC CLEANER VS−150型(周波数50kHz、最大出力150W)を使用した。
この測定におけるサンプル濃度は、微粉体の凝集および分散を観測するのに適しており、微粉体の粒径の分布を正確に観測することができる濃度である。尚、粒径が小さいもの、或いは、凝集性が低いサンプルを測定する場合には、サンプル量を0.2gとし、エチルアルコールの量を50mlとしても良い。
尚、コールターLS−230型粒度分布計においては、先ず各粒子の粒径を求め、以下のチャンネルに振り分ける。そして、各チャンネルの中心径をそのチャンネルの代表値とし、その代表値を直径として有する球を想定し、その球の体積をもとに体積基準の粒度分布を求めている。
本発明の荷電制御剤は、イオン交換水に1質量%分散させたときの電気伝導度が300μS/cm以下(好ましくは200μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下)であることが好ましい。電気伝導度は、荷電制御剤中に含まれる水溶性のイオンなどの含有量を表しており、電気伝導度が高いほど、これらイオンなどの物質が多く含まれていることを示す。荷電制御剤に含まれる水溶性のイオンを少なくすることで、高温高湿環境でトナーが吸湿した場合であっても、トナーの帯電量を高く維持することが出来るため、高い画像濃度を維持できる。
荷電制御剤の電気伝導度を300μS/cm以下に調整する方法としては、十分な量の水を用いて繰り返し洗浄、濾過を行う方法があり、濾過方法としてはフィルタープレスや遠心濾過などがある。更には逆浸透膜、半透膜を用いる方法、あるいは、荷電制御剤を溶解し、結晶を再析出させる晶析操作による精製方法などがある。
電気伝導度の測定方法は以下のようにして行う。
荷電制御剤乾燥品1.5gをイオン交換水150mlに分散して、15分間煮沸する。流水により、室温まで冷却後、5A濾紙で濾過する。この濾液について蒸出水はイオン交換水で150mlに調整し、電気伝導度計(HORIBA導電率メーターES−14)で測定する。
更に本発明で用いられる荷電制御剤は、酢酸エステルを0.1ppm以上1000ppm以下、好ましくは0.1ppm以上500ppm以下、より好ましくは1.0ppm以上100ppm以下、さらに好ましくは1.0ppm以上50ppm以下含有することが好ましい。
荷電制御剤中に上記範囲の酢酸エステルを含有することで、トナーの帯電性が非常に良好となり、画質改良効果がより高くなる。この理由は明確ではないが、以下のように考えている。
ピラゾロンモノアゾ金属化合物中に含まれる酢酸エステルは、トナー製造工程の混練工程で大部分が揮発する。混練工程で荷電制御剤に含まれる酢酸エステルが揮発する際は、トナー中に含まれる荷電制御剤と結着樹脂の界面から揮発していく為、酢酸エステルが結着樹脂と荷電制御剤の密着性を弱める働きをする。その為、粉砕工程で結着樹脂と荷電制御剤との界面で粉砕されやすく、荷電制御剤がトナー表面に露出しやすくなる。その結果、荷電制御剤の効果がより顕著となり、画質改良効果が高まるものと考えられる。
好ましい酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル等が挙げられ、特に酢酸ブチル、より好ましくは酢酸n−ブチルが用いられる。酢酸ブチルや酢酸n−ブチルは、沸点が低すぎない為に、長期間にわたって保存しても揮発しにくく、荷電制御剤に安定して含有されやすい。また、沸点がトナーの溶融混練の温度に近い為、溶融混練時に揮発しやすく、上記効果を得られやすい。
ピラゾロンモノアゾ金属化合物中に酢酸エステルを含有させる手法としては、合成後の洗浄水に混合する方法や、洗浄、乾燥後の荷電制御剤に噴霧するなどの方法が挙げられる。
荷電制御剤中に含まれる酢酸エステルの含有量の測定は以下のように行われる。
<酢酸エステル含有量の測定方法>
ヘッドスペース法による加熱温度120℃における有機揮発成分分析による荷電制御剤のトルエン換算の有機揮発成分量の定量は以下のようにして測定することができる。
ヘッドスペース用バイアル瓶(容積22ml)に荷電制御剤50mgを精秤し、クリンパーを用いてクリンプキャップとフッ素樹脂コーティングされた専用セプタムでシールする。このバイアルをヘッドスペースサンプラーにセットし、下記条件でガスクロマトグラム(GC)分析を行なう。そして、得られたGCチャートのピークの総面積値をデータ処理により算出する。この際、荷電制御剤を封入していない空のバイアルもブランクとして同時に測定し、ブランク測定における測定値については荷電制御剤測定データから差し引く。
一方、バイアルの中にトルエンのみを精秤したものを数点(例えば0.1μl、0.5μl、1.0μl)準備し、荷電制御剤サンプルの測定を行なう前に下記分析条件にてそれぞれ測定を行なった後、トルエンの仕込み量とトルエン面積値から検量線を作成する。
トルエン換算の有機揮発成分量は、この検量線を元に荷電制御剤の有機揮発成分の面積値をトルエンの質量に換算し、更に荷電制御剤質量を基準とした量に換算することによって得られる。
(測定装置および測定条件)
ヘッドスペースサンプラー:Turbo Matrix HS40(株式会社パーキンエルマージャパン製)
オーブン温度 :120℃
トランスファーライン温度:125℃
ニードル温度:125℃
保温時間:60分
サイクルタイム:65分
加圧時間:2.5分
注入時間:0.08分
キャリアーガス:He
GC :TRACE GC Ultra(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
MS:ISQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
カラム :HP−5MS(内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、カラム長:60m)
昇温条件:(1)40℃:3分ホールド、(2)2℃/分で70℃まで昇温、(3)5℃/分で150℃まで昇温、(4)10℃/分で300℃まで昇温後1分ホールド。
Inlet条件
温度;200℃
圧力:150kPa
Split flow:10mL
Split ratio:7
また、本発明の荷電制御剤の比表面積は、3.0m2/g以上、30.0m2/g以下、好ましくは5.0m2/g以上、25.0m2/g以下、より好ましくは10.0m2/g以上、20.0m2/g以下であることが好ましい。荷電制御剤の比表面積がこの範囲である場合に、トナーの画質改良効果が最も高くなる。
本発明における、荷電制御剤の比表面積は、細孔分布測定装置Tristar3000(島津製作所社製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させるガス吸着法により測定したものである。測定の概略は、島津製作所社発行の操作マニュアルに記載されており、以下の通りである。測定前には、試料管にサンプル0.3乃至0.5gを入れ、23℃で24時間真空引きを行う。真空引き終了後サンプル重量を精秤し、サンプルを得た。得られたサンプルを上記細孔分布測定装置を用いて、温度77KにおけるN2分子の吸・脱着等温線を得た。得られた、吸・脱着等温線より、比表面積を算出した。
本発明で用いる磁性酸化鉄は、電気抵抗率が1.0×103Ω・cm以上1.0×106Ω・cm以下、好ましくは5.0×103Ω・cm以上5.0×105Ω・cm以下、より好ましくは1.0×104Ω・cm以上1.0×105Ω・cm以下であるものを用いる。
磁性酸化鉄の電気抵抗率については、磁性酸化鉄の基体の組成や、表面にコートする材料の組成等により調整可能である。例えば、電気抵抗率の高い基体の表面に、電気抵抗率の低い材料をコートしたり、あるいは、電気抵抗率の低い基体の表面に、電気抵抗率の高い材料をコートすることで、所望の磁性酸化鉄を得ることが出来る。
本発明で用いられる磁性酸化鉄は、個数平均粒径が0.05μm以上0.15μm以下(好ましくは0.10μm以上0.14μm以下)であり、かつ、磁性酸化鉄の個数平均粒径(μm)と比表面積(g/m2)の関係が下記式(1)を満たすことが好ましい。
[個数平均粒径]×[比表面積]≦1.10・・・(1)
磁性酸化鉄の個数平均粒径を従来よりも小さく、上記範囲に制御することで、トナー粒子表面への磁性酸化鉄の露出状態が均一になり、トナー微粉の高帯電をリークさせる働きが増す為、黒ポチ抑制効果が高まりやすい。
通常、磁性酸化鉄の個数平均粒径を小さくすると磁性酸化鉄の比表面積が大きくなり、高温高湿環境においてトナー表面に露出した磁性酸化鉄が吸湿して帯電性が低下し、画質が悪化する場合がある。
本発明で好ましく用いられる磁性酸化鉄は、個数平均粒径を小さくしても、比表面積が小さい為、磁性酸化鉄が高温高湿環境においても吸湿しにくく、高い帯電性を維持することが出来る。
本発明における磁性酸化鉄の個数平均粒径と比表面積の関係について説明する。
本発明における磁性酸化鉄の個数平均粒径と比表面積の積は、1.10以下、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.95以下である。一方、上記磁性酸化鉄の個数平均粒径と比表面積の積は、0.60以上であることが好ましい。
次に、本発明で好ましく用いられる磁性酸化鉄のような、小粒径かつ従来よりも比表面積の小さい磁性酸化鉄を得るための手段について説明する。個数平均粒径と比表面積の積が1.10以下となるような磁性酸化鉄を得るためには、磁性酸化鉄の結晶成長を丁寧に行い、さらに、磁性酸化鉄の結晶成長が均一に進むようにする必要がある。そのためには、酸化反応の際に、磁性酸化鉄を含むスラリー状の溶液を、均一に混合して、磁性酸化鉄粒子の成長を均一化する必要がある。
そのための手法として例えば、磁性酸化鉄を製造する際の酸化反応工程を分割し、さらに、磁性酸化鉄を含むスラリー状溶液のpHを調整し、溶液の粘度を下げる。これにより撹拌しやすくし、その状態で溶液を均一に撹拌し、磁性酸化鉄の結晶成長を均一に進行させる方法が挙げられる。また、磁性酸化鉄の結晶成長を一度停め、機械的にスラリー状溶液を強く撹拌することで、溶液中の磁性酸化鉄の結晶成長を均一に進行させてもよい。
本発明で好ましく用いられる磁性酸化鉄は、以下のように製造できる。磁性酸化鉄の種粒子を形成する第1反応工程、上記種粒子を成長させる第2反応工程を経た後、第2反応工程後に磁性酸化鉄を含むスラリー状の溶液を十分に撹拌する。撹拌しながらさらに粒子を成長させて、目的とする磁性酸化鉄を得る第3反応工程を行うことで得ることができる。このように、反応工程を3段階に分けることで、磁性酸化鉄の結晶成長を、従来よりも丁寧に行う。また、反応の間に磁性酸化鉄を含むスラリー状の溶液を撹拌して磁性酸化鉄の結晶成長を均一に進行させることで、磁性酸化鉄の結晶の形状が揃い、表面が平滑な磁性酸化鉄を得ることができる。
次に、磁性酸化鉄を得るための各反応工程について詳細に説明する。
<第1反応工程>
第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し0.90〜1.00当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させる。得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩溶液に水可浴性ケイ酸塩をFeに対しSi換算で0.05〜1.00原子%添加する。次いで、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応液のpHを8.0〜9.0に調整する。次いで、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して鉄の酸化反応率が7〜12%となるまで酸化反応を行い、マグネタイト核晶粒子を生成させる。
<第2反応工程>
得られたマグネタイト核晶粒子と水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応液に対し1.01〜1.50当量となるように水酸化アルカリ水溶液を添加する。70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して、鉄の酸化反応率が40〜60%となるまで酸化反応を行う。
<第3反応工程>
撹拌を行いながら、pHを好ましくは5.0〜9.0に調整し、反応液の粘度を低下させて撹拌しやすくした上で、反応液が均一になるまで撹拌する。ここで、pHをアルカリから中性側に調整する理由は、スラリー粘度を低下させ、撹拌しやすくするためである。このように、反応液の粘度を低下させて撹拌しやすくするための反応液のpHを「中継条件」という。その後、pHを9.5以上に再調整する。そして、水可溶性ケイ酸塩を第1反応工程で添加した水可溶性ケイ酸塩に対して20〜200%(第1反応工程と第3反応工程で添加するケイ素元素が合計で1.9原子%以下となるように)添加する。70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して酸化反応を行う。
さらに、必要に応じて、上記工程により得られた磁性酸化鉄の表面を被覆する工程を行ってもよい。
本発明に用いられる磁性酸化鉄は、粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄の個数の割合が磁性酸化鉄粒子全体の個数の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄の個数の割合がこの範囲であると、磁性酸化鉄の比表面積が大きくなりすぎず、トナーの高温高湿環境における帯電性が高く維持されやすい為、好ましい。個数平均粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄の個数の割合が磁性酸化鉄粒子全体の個数の10%以下となるような磁性酸化鉄は、上述したようにして得られる。具体的には、磁性酸化鉄を製造する際に、酸化反応を分割したり、酸化反応中に撹拌を行うなどして、酸化反応を均一に進めることで得られる。また、分級機を用いて、個数平均粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄粒子を分級して得ることもできる。
本発明で用いる磁性酸化鉄の形状は、八面体形状であることが好ましい。磁性酸化鉄の形状が八面体形状であると、結着樹脂中に分散した時の磁性酸化鉄の分散性が良好となるため、より帯電性の安定したトナーを得ることができる。
本発明で使用する磁性酸化鉄は、ケイ素元素を鉄元素に対してケイ素元素換算で0.19原子%以上1.90原子%以下含有していることが好ましい。また、本発明で使用する磁性酸化鉄は、アルミニウム元素を鉄元素に対してアルミニウム元素換算で、0.10原子%以上1.00原子%以下含有していることが好ましい。さらには、ケイ素元素とアルミニウム元素の両方を上記範囲で含有していることが好ましい。
ケイ素元素とアルミニウム元素の含有量がこの範囲であると、磁性酸化鉄の帯電性が適正化される為、トナーの帯電性制御が良好になり、高温高湿環境における画質の改良や、低湿環境における黒ポチの抑制により高い効果を得られる。
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
本発明に使用する荷電制御剤であるモノアゾ金属化合物をトナーに含有させる方法としては、以下のものがある。結着樹脂に着色剤等とともに添加し、混練し、粉砕する方法(粉砕トナー)、又は重合性の単量体モノマーにモノアゾ金属化合物を添加し、重合せしめてトナーを得る方法(重合トナー)のように、予めトナー粒子の内部に添加(内添)する方法;予めトナー粒子を製造し、トナー粒子の表面に添加(外添)する方法。
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。中でも好ましく用いられる樹脂として、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、または両者が一部反応した、ハイブリッド樹脂。
本発明にかかる結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂或いは上記ハイブリッド樹脂のポリエステル系ユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては以下の化合物が挙げられる。
アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェールA、下記(I−1)式で表されるビスフェノール誘導体及び下記(I−2)式で示されるジオール類。
酸成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物、またさらに炭素数6以上18以下のアルキル基またはアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物。
また本発明にかかるポリエステル樹脂或いはポリエステル系ユニットは、三価以上の多価カルボン酸またはその無水物及び/または三価以上の多価アルコールによる架橋構造を含むポリエステル樹脂であることが好ましい。三価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステル。三価以上の多価アルコールとしては、以下のものが挙げられる。1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール。本発明の結着樹脂においては、環境変動による安定性も高い芳香族系アルコールが特に好ましく、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物が挙げられる。
本発明にかかる結着樹脂に用いられるビニル系樹脂或いはハイブリッド樹脂のビニル系重合体ユニットを構成するビニル系モノマーとしては、次の化合物が挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体。
さらに、以下のものが挙げられる。マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの如きアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂に用いられるビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有してもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。芳香族ジビニル化合物(ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレー卜をメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で緒ばれたジアクリレート化合物類[ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの];ポリエステル型ジアクリレート化合物類(日本化薬社製「MANDA」)。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下、さらに好ましくは0.03質量部以上5.00質量部以下用いることができる。
これらの架橋剤のうち、結着樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
上記ビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットの重合に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエイト、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−プチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレート。
本発明において、結着樹脂に前記したハイブリッド樹脂を用いる場合には、ビニル系樹脂及び/またはポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系樹脂と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物が挙げられる。ビニル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
結着樹脂1種類を単独で使用する場合、軟化点Tmは95℃以上170℃以下が好ましい。さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。Tmが上記の範囲内であれば、耐高温オフセット性と低温定着性のバランスが良好となる。
なお、軟化点は、以下のようにして測定される。樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度Tmである。
測定試料は、約1.0gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、保存安定性の観点から45℃以上であることが好ましい。また、低温定着性の観点から、Tgは75℃以下であることが好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。
トナー用結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて、常温常湿下で測定する。測定試料として、結着樹脂約3mgを精密に秤量したものを用いる。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。測定温度範囲を30℃以上200℃以下とし、一旦、昇温速度10℃/minで30℃から200℃まで昇温した後、降温速度10℃/minで200℃から30℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温させる。2回目の昇温過程で得られるDSC曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度Tgとする。
トナーに離型性を与えるために、トナーは離型剤(ワックス)を含有することが好ましい。ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。必要に応じて一種または二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。例としては次のものが挙げられる。
酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、以下のものが挙げられる。アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低気圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したワックス。
脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、以下のものが挙げられる。金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンの如きアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素。具体的には、以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業株式会社);ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学株式会社);サゾール H1、H2、C80、C105、C77(サゾール社);HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精蝋株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社);木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODA)。
離型剤を添加するタイミングは、粉砕法でトナーを作製する場合においては、溶融混練時に添加しても良いが、トナー用樹脂の製造時であっても良い。また、これらの離型剤は単独で使用しても併用しても良い。離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
本発明のトナーは、荷電制御剤として、上記モノアゾ金属化合物以外に、既知の他の荷電制御剤と併用することができる。他の荷電制御剤としては、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。本発明に用いられる荷電制御剤と他の荷電制御剤とを併用する場合、他の荷電制御剤をトナー用樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下使用することが好ましい。
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉末をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉末は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることがより好ましい。シリカ微粉末のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉末の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
シリカ微粉末は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物の如き処理剤で、或いは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
更に本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。このような外部添加剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられ、中でもチタン酸ストロンチウム粉末が好ましい。
トナーを製造する方法としては、以下の方法を用いることができる。結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、必要に応じてワックス、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により充分混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により混合し、トナーを得ることができる。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
次に、本発明に係る磁性酸化鉄の各物性の測定方法に関して記載する。
(1)磁性酸化鉄の形状と個数平均粒子径の測定と、粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄の個数の割合の算出
磁性酸化鉄の粒子形状、個数平均粒径及び粒度分布は、「走査型電子顕微鏡S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察・測定する。磁性酸化鉄の個数平均粒径は、電子顕微鏡写真から磁性酸化鉄粒子の縦横2辺の長さを測定し、2辺の長さの平均を粒径とし、300個の磁性酸化鉄の平均粒径の算術平均として算出する。また、粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄の個数の割合は、算出した300個の磁性酸化鉄の中から、粒径が0.05μm未満の磁性酸化鉄の個数を求め、その個数を全体の300個で割ることで算出する。
なお、磁性トナーに含まれる磁性酸化鉄は、テトラヒドロフラン溶液に磁性トナーを溶解させた後、磁石を用いて上記の溶液から磁性酸化鉄のみを取り出すことにより得ることができる。
(2)磁性酸化鉄のBET比表面積の測定
磁性酸化鉄のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行う。また装置には、真空ポンプ、窒素ガス配管及びヘリウムガス配管を接続する。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本願発明におけるBET比表面積とする。
具体的には、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、磁性酸化鉄に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と磁性酸化鉄の窒素吸着量Va(モル・g-1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g-1)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、磁性酸化鉄の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g-1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈される(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片の値を算出する。これらの値を用いて上記の傾きと切片の連立方程式を解き、VmとCを算出する。
さらに、算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、磁性酸化鉄のBET比表面積S(m2・g-1)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。)
次に、上記Vmの算出方法について詳述する。本装置を用いたVmの算出方法は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤する。ロートを使ってこの試料セルの中に約2gの磁性酸化鉄を入れる。
磁性酸化鉄を入れた前記試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚、真空脱気の際には、磁性酸化鉄が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。この試料セルの質量を精秤し、風袋との差から磁性酸化鉄の正確な質量を算出する。尚、この際に、試料セル内の磁性酸化鉄が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、磁性酸化鉄が入った前記の試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、前記装置の分析ポートに試料セルをセットする。尚、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入して磁性酸化鉄に窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより前記した吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。尚、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、前記したように磁性酸化鉄のBET比表面積を算出する。
(3)Si及びAl元素量
磁性酸化鉄のSi量及びAl量は「蛍光X線分析装置RIX−2100」(理学電気工業株式会社製)にて測定し、磁性酸化鉄に含まれるFeに対して元素換算で求めた値として算出する。
(4)表面Si量及び表面Al量
磁性酸化鉄の表面Si量及び表面Al量は、磁性酸化鉄とイオン交換水を混合した後、分散させて懸濁液としたものを、水酸化アルカリ水溶液と混合して30分間以上撹拌した後、懸濁液を濾過、乾燥して得られた磁性酸化鉄のSi量及びAl量を測定し、前記アルカリによる処理前の全Si量及びAl量との差を以って磁性酸化鉄表面のSi量及びAl量とし、磁性酸化鉄に含まれるFeに対して元素換算で求めた値として算出する。
(5)磁性酸化鉄の電気抵抗率
試料10gを薬包紙に秤量し、測定セルに試料を入れ、油圧シリンダーにより、成形圧600kg/cm3(ゲージ圧)にて成形する。圧力を解放後、抵抗計をセットし、油圧シリンダーにより測定圧150kg/cm3(ゲージ圧)を加える。抵抗計スイッチを入れ、測定を開始し、3分後の測定値を読み取る。
次に、試料の成形品を試料セルより抜き出し、成形厚み(cm)をノギスにて測定する。下記計算式にて電気抵抗率(Ω・cm)を算出する。
電気抵抗率(Ω・cm)=抵抗測定値(Ω)×断面積(cm2)/成型品厚み(cm)
(測定器具)
抵抗計:横河電気製YEW MODEL 2506A DIGITAL MALTIMETOR
油圧シリンダー:理研製機(株)理研 POWER MODEL P−18 700kg/cm2
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例における「部」は、特に断りが無い限り、質量部を表す。
<結着樹脂の製造例>
・テレフタル酸 18部
・イソフタル酸 3部
・無水トリメリット酸 7部
・下記式(I−1)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基でx+y=2.2)
70部
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5部を添加し、240℃で縮合重合して、架橋ポリエステル樹脂(Tg=59℃、軟化点=131℃、メインピーク分子量=7,500、テトラヒドロフラン不溶分=14質量%)を得た。これを本発明のトナー用の結着樹脂1とした。
<荷電制御剤の製造例1>
水580部及び35%塩酸84部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの57.4部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃以上、5℃以下になるように維持し、水50.7部に溶解させた亜硝酸ナトリウム28.2部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−ピラゾロンの101部を水475部、炭酸ナトリウム95部、及びn−ブタノール840部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃以上22℃以下で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水226部、サリチル酸29部、n−ブタノール823.7部、及び15%炭酸ナトリウム242.4部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、38%塩化第二鉄水溶液89.6部を添加し、液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行い、反応物を濾過した。この濾過物を水1000部で洗浄した。温度60℃で24時間真空乾燥し、モノアゾ金属化合物98.8部を得た。これを荷電制御剤1とする。
荷電制御剤1の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤1の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が5.5μm、4.0μm以上の粒子の割合が73%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、3230mJであった。さらに、荷電制御剤1をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は560μS/cmであった。
<荷電制御剤の製造例2>
荷電制御剤の製造例1で得られた荷電制御剤1を、ジェット気流を用いたジェット気流式衝突式気流粉砕機で粉砕した。
得られた粉砕物を分級機により分級して粒度分布を調整したモノアゾ金属化合物を得た。このモノアゾ金属化合物100質量部を水1000質量部で洗浄する作業を3回繰り返し、60℃で24時間真空乾燥させた。得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸n−ブチル0.003部を添加混合し、荷電制御剤2を得た。
荷電制御剤2の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤2の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.3μm、4.0μm以上の粒子の割合が5%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは240mJであった。さらに、荷電制御剤2をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は17μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤2に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸n−ブチルを22ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例3>
荷電制御剤の製造例1で得られた荷電制御剤1を80部、ジメチルスルホキシド320部に添加し溶解させた。そこに、消泡剤KF995(環状ジメチルシリコーン)5部と水5000部の混合溶液を滴下し、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄する作業を3回繰り返し、60℃で24時間真空乾燥させ、分級した。得られたモノアゾ金属化合物100質量部に、酢酸n−ブチル0.002質量部を添加混合し、荷電制御剤3を得た。
荷電制御剤3の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤3の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.1μm、4.0μm以上の粒子の割合が6%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは690mJであった。さらに、荷電制御剤3をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は19μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤3に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸n−ブチルを14ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例4>
荷電制御剤の製造例3の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄する作業を2回繰り返し、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級した。得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸プロピル0.1部を添加混合し、荷電制御剤4を得た。
荷電制御剤6の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤4の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは730mJであった。さらに、荷電制御剤4をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は63μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤4に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸プロピルを374ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例5>
荷電制御剤の製造例5で得られたモノアゾ金属化合物を、水1000部で洗浄する作業を1回行い、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級し、荷電制御剤5を得た。
荷電制御剤5の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤5の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは720mJであった。さらに、荷電制御剤5をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は197μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤5に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例6>
荷電制御剤の製造例4で得られたモノアゾ金属化合物を、水300部で洗浄する作業を1回行い、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級し、荷電制御剤6を得た。
荷電制御剤10の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤6の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは710mJであった。さらに、荷電制御剤6をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は330μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤6に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例7>
水580部及び35%塩酸84部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの57.4部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃以上、5℃以下になるように維持し、水50.7部に溶解させた亜硝酸ナトリウム28.2部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンの70部を水475部、炭酸ナトリウム95部、及びn−ブタノール840部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃以上、22℃以下で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水226部、サリチル酸29部、n−ブタノール823.7部、及び15%炭酸ナトリウム242.4部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、38%塩化第二鉄水溶液89.6部を添加し、液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行い、反応物を濾過した。この濾過物を水1000部で洗浄する作業を1回行った。温度60℃で24時間真空乾燥し、モノアゾ金属化合物70.1部を得た。得られたモノアゾ金属化合物を荷電制御剤7とする。
荷電制御剤7の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤7の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が0.4μm、4.0μm以上の粒子の割合が33%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、3810mJであった。さらに、荷電制御剤7をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は1060μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤7に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例8>
荷電制御剤の製造例7で得られた荷電制御剤を80部、ジメチルスルホキシド320部に添加し溶解させた。そこに、消泡剤KF995(環状ジメチルシリコーン)5部と水5000部の混合溶液を滴下し、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水500部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤8を得た。
荷電制御剤8の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤8の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.4μm、4.0μm以上の粒子の割合が15%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、980mJであった。さらに、荷電制御剤8をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は859μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤8に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例9>
荷電制御剤の製造例8の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水500部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤9を得た。
荷電制御剤9の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤9の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.9μm、4.0μm以上の粒子の割合が19%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、1460mJであった。さらに、荷電制御剤9をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は911μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤9に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例10>
荷電制御剤7を分級して、粗粉粒子、微粉粒子を除去して粒度分布を調整し、目的化合物である荷電制御剤10を得た。
荷電制御剤10の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤10の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.9μm、4.0μm以上の粒子の割合が19%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、1880mJであった。さらに、荷電制御剤15をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は1060μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤10に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例11>
水580部及び35%塩酸84部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの57.4部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃以上、5℃以下になるように維持し、水50.7部に溶解させた亜硝酸ナトリウム28.2部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンの70部を水475部、炭酸ナトリウム95部、及びn−ブタノール840部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃以上、22℃以下で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水226部、サリチル酸29部、n−ブタノール823.7部、及び15%炭酸ナトリウム242.4部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、クロムサリチル酸ナトリウム250部を添加し、液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行い、反応物を濾過した。この濾過物を水1000部で洗浄する作業を1回行った。温度60℃で24時間真空乾燥し、モノアゾ金属化合物68.5部を得た。
このモノアゾ金属化合物を分級して、粗粉粒子、微粉粒子を除去して粒度分布を調整し、目的化合物である荷電制御剤11を得た。
荷電制御剤11の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(6)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤11の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が3.0μm、4.0μm以上の粒子の割合が20%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、1950mJであった。さらに、荷電制御剤11をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は1154μS/cmであった。
<荷電制御剤の製造例12>
荷電制御剤の製造例1で得られた荷電制御剤1を80部、ジメチルスルホキシド320部に添加し、90℃で溶解させた。そこに、水3000部を滴下した後、温度を徐々に室温まで低下させてモノアゾ金属化合物を析出させた。得られた析出物を水1000部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤12を得た。
荷電制御剤12の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(3)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤12の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.8μm、4.0μm以上の粒子の割合が14%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、2640mJであった。さらに、荷電制御剤12をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は360μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤12に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<磁性酸化鉄1の製造例>
(第1反応工程)
Fe2+ 1.5mol/Lを含む硫酸第一鉄水溶液16L(Fe2+ 24mol)と3.0Nの水酸化ナトリウム溶液15.2L(Fe2+に対し0.95当量に相当する。すなわち、2OH/Fe=0.95)を混合し、pH8.5に調整して第一鉄塩懸濁液を調製した。この際、ケイ素成分として、3号水ガラス(SiO2 28.8質量%)13.3g(Feに対してSi換算で0.25原子%に相当する。すなわち、Si/Fe(原子%)=0.25)を0.5Lのイオン交換水に希釈したものを、水酸化ナトリウムに添加した。上記第一鉄塩懸濁液を温度90℃において毎分70Lの空気を通気して、第一鉄塩の酸化反応率が10%になるところまで酸化反応を行い、マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液を得た。
(第2反応工程)
上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に3.0Nの水酸化ナトリウム溶液3.2Lを加え(Fe2+に対し1.15当量に相当する。すなわち、2OH/Fe=1.15)、温度90℃において毎分70Lの空気を通気して、第一鉄塩の酸化反応率が50%になるところまで酸化反応を行った。
(第3反応工程)
次いで、上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に16.0Nの硫酸を適量加えpH7.5に調整し、懸濁液を撹拌した。なお、この時のpH条件を中継条件という。次いで、3.0Nの水酸化ナトリウム溶液を適量加えpH10.5に調整した。この際、ケイ素成分として3号水ガラス(SiO2 28.8質量%)21.3g(Feに対してSi換算で0.40原子%に相当する。すなわち、Si/Fe(原子%)=0.40)を0.5Lのイオン交換水に希釈したものを、上記磁性酸化鉄核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に添加し、温度90℃において毎分70Lの空気を通気して磁性酸化鉄を得た。
また、Si及びAlの被覆層については、マグネタイト核晶粒子を含む懸濁液に、ケイ素成分として3号水ガラス、アルミニウム成分として1.9mol/Lの硫酸アルミニウム溶液を表1に示すように適量加え、pH7.0に調整して被覆層を形成し、磁性酸化鉄1を得た。
得られた磁性酸化鉄1は、常法により、水洗、濾別、乾燥及び粉砕した。得られた磁性酸化鉄1は八面体であり、個数平均粒子径が0.12μm、Si含有量が0.65原子%、Al含有量が0.86原子%であった。
表2に磁性酸化鉄1の諸物性を記す。
<磁性酸化鉄2〜9の製造例>
第1反応工程における硫酸第一鉄と水酸化ナトリウムの当量比(2OH/Fe)、添加するケイ素元素量(Si/Fe(原子%))、酸化反応率10%までのpH、第2反応工程における硫酸第一鉄と水酸化ナトリウムの当量比(2OH/Fe)、添加するケイ素元素量(Si/Fe(原子%))、中継条件のpH、及び、第3反応工程におけるpH、添加するケイ素元素量(Si/Fe(原子%))を変更した以外は、磁性酸化鉄1と同様にして、磁性酸化鉄を得た。さらに、SiおよびAlの被覆層について、マグネタイト核晶粒子を含む懸濁液に、ケイ素成分として3号水ガラス、アルミニウム成分として1.9mol/Lの硫酸アルミニウム溶液の添加量を変更した以外は磁性酸化鉄1と同様にして被覆層を形成し、磁性酸化鉄2〜9を得た。
表2に磁性酸化鉄2〜9、の諸物性を記す。
<実施例1>
・トナー用結着樹脂1:100部
・磁性酸化鉄1:50部
・フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製、C105、融点105℃):4部
・荷電制御剤2:1.5部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、PCM−30(池貝鉄工所社製)を用い、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.9μmの磁性トナー粒子を得た。
次に、トナー粒子100部に対し、疎水性シリカ微粉体(BET比表面積150m2/g、シリカ微粉体100部に対しヘキサメチルジシラザン(HMDS)30部及びジメチルシリコンオイル10部で疎水化処理をしたもの)1.0部とチタン酸ストロンチウム微粉体(D50:1.0μm)3.0部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
得られたトナーに対して、下記の評価を実施した。結果を表4に示す。
[現像性の評価]
市販のデジタル複写機imageRUNNER iR 3245(キヤノン(株)社製)を用い、高温高湿環境(30℃−80%RH)で印字比率5%のテストチャートを用いて1万枚の連続プリントを行った。1万枚プリント後の画像濃度を測定した。なお、画像濃度は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm丸のベタ黒画像の反射濃度を測定することにより測定した。
[カブリ値の評価]
現像性の評価と同様の評価機を用い、、常温低湿環境(23℃−5%RH)で印字比率5%のテストチャートを用いて、1万枚プリント後の画像の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr−Dsをカブリ値とした。白地部反射濃度の測定には、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いた。数値が小さいほどカブリ抑制が良いことを示す。
[ドット再現性の評価]
現像性の評価において、1万枚のプリント後に、高温高湿環境48時間以上放置して十分に吸湿した紙を用いてプリントを行った。画像は孤立1ドットのハーフトーンチャートを用い、下記判断基準により判定した。
A:ドットを忠実に再現している。
B:目視でわずかにドットサイズの変化が確認できる。
C:目視でドットサイズの変化が確認できるが軽微なレベル。
D:目視でドットサイズの変化がはっきりと確認できる。
E:現像できていない(欠落した)ドットがわずかに存在する。
F:現像できていない(欠落した)ドットが多数存在する。
[黒ポチの評価]
カブリの評価において、1万枚のプリント後に、常温低湿環境(23℃‐5%RH)にてベタ白画像のプリントを行い、下記判断基準により判定した。
A:黒ポチ発生なし。
B:画像内に3個以下の黒ポチが発生している。
C:画像内に4〜5個の黒ポチが発生している。
D:画像内に6〜8個の黒ポチが発生している。
E:画像内に9〜12個の黒ポチが発生している。
F:画像内に13〜17個の黒ポチが発生している。
G:画像内に18個以上の黒ポチが発生している。
<実施例2乃至15>
表3に記載のように、荷電制御剤と磁性酸化鉄の種類と添加量を調整した以外は、実施例1と同様にして、トナー2乃至15を作製した。
得られたトナーに対して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表4に示す。
<比較例1乃至4>
表3に記載のように、荷電制御剤と磁性酸化鉄の種類と添加量を調整した以外は、実施例1と同様にして、トナー16乃至19を作製した。
得られたトナーに対して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表4に示す。