本発明者らは、トナーに使用される構成材料に関して検討を進めた結果、少なくとも結着樹脂及び、着色剤を含有するトナー粒子と、アルミナ微粉末とを有するトナーにおいて、アルミナの結晶系と表面微細構造を制御することで、従来以上の高速化対応や生産安定性が求められる用途においても、感光体の表面の傷を防ぐことが可能であり、且つ高品位な画質を環境に依らず長期に渡り安定的に得る事ができることを見出した。
すなわち、本発明は、少なくとも結着樹脂及び、着色剤を含有するトナー粒子と、アルミナ微粉末とを有するトナーにおいて、該アルミナ微粉末は細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲で測定される全細孔容積が0.200cm3/g以下であり、且つ該アルミナ微粉末のCuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibから式(1)で計算されるIcが0.20乃至1.00の範囲にあることを特徴とするトナーである。
(式1) Ic=Ib/(Ia+Ib)
従来のアルミナ微粉末の製造方法としては、バイヤー法、アルコキシド熱分解法、ミョウバン熱分解法が知られている。これらの製造方法は、何れも熱分解することにより得られ、出発原料、焼成条件の相違によって種々の経過を通り、最終的には高温安定相のαアルミナ微粉末になると言われている。しかしながら、αアルミナ微粉末は一般的に平均粒径が大きく、BET比表面積が小さいため、トナーに対する流動性の付与が十分に行われない場合がある。また、αアルミナは硬度が高いため、転写残トナー中にαアルミナ微粉末が存在すると、感光体の表面に傷を生じてしまうことがある。そのため、αアルミナ微粉末はトナー用途としては好ましくない。
一方、γアルミナ微粉末は、粒径、粒度分布、BET比表面積の如き粒子形状を好適な範囲に調整し易くトナー用途として好ましく用いられている。しかしながら、αアルミナ以外のアルミナは中間アルミナもしくは遷移アルミナと呼ばれている。γアルミナごとき中間アルミナは結晶構造が不安定で表面積も高く、細孔を多く有し、水を取り込み易いという特性を有している。そのために、凝集塊を生じ易く、αアルミナのように感光体の表面に傷を生じ易くなる。また、表面性が不均一のため摩擦帯電が不均一になり長期の耐久により画像濃度の低下やドット再現性の低下が生じ易い。このように、これまでのγアルミナ微粉末では、従来以上の高速化対応や生産安定性が求められる用途においては更なる改良が必要である。
即ち、上記課題を解決するためには、γ結晶相を有しても表面細孔が少なく低活性なγアルミナ微粉末が求められている。
そこで本発明者等は、アルミナ微粉末の結晶状態と表面細孔状態について鋭意検討した結果、γ結晶相を有するアルミナ微粉末においても、表面細孔が少なく低活性なγアルミナ微粉末を得られることを見出し、該アルミナ微粉末をトナー粒子に外添することで、従来以上の高速化対応や生産安定性が求められる用途においても、感光体の表面の傷を防ぐことが可能であり、且つ高品位な画質を環境に依らず長期に渡り安定的に得る事ができることを見出した。
すなわち、本発明では、少なくとも結着樹脂及び、着色剤を含有するトナー粒子と、アルミナ微粉末とを有するトナーにおいて、該アルミナ微粉末が細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲で測定される全細孔容積が0.200cm3/g以下であり、且つ該アルミナ微粉末のCuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibから式(1)で計算されるIcが0.20乃至1.00の範囲にあることを特徴とする。
(式1) Ic=Ib/(Ia+Ib)
本発明において、γアルミナの同定はX線回折測定を用いて行った。即ち、アルミナ微粉末は、CuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibから式(1)で計算されるIcが0.20乃至1.00、好ましくは0.50乃至1.00の範囲にあることを特徴とする。
アルミナ微粉末のCuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibから式(1)で計算されるIcが0.20乃至1.00の範囲にあることは、該アルミナ微粉末がγ結晶相を有することを示す。CuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0deg付近にはα結晶相に帰属される特徴的なピークが出現する。また、ブラッグ角2θ=32.0乃至33.0deg付近にはγ結晶相に帰属される特徴的なピークが出現する。α結晶相に帰属されるピークの最大強度をIa、γ結晶相に帰属されるピークの最大強度をIbとし、IaとIbから(式1)を用いIcを求めるとIcは該アルミナ微粉末中のγ結晶相の割合を表すことになる。すなわちIc=1.00は全てγ結晶相で構成されていることを示し、0に近付くほどα結晶相の構成割合が増すことを示す。
前述したように、トナー用途としてアルミナ微粉末を用いる場合は、γ結晶相の割合が高い方が好ましくい。Icが0.20より小さくなると、α結晶相の割合が高くなり、平均粒径が大きく、BET比表面積が小さくなるため、トナーに対する流動性付与が十分に行われず好ましくない。また、硬度が高いα結晶相の割合が高くなると、感光体の表面に傷を生じるため好ましくない。これらの現象は特に高速の現像システムにおいて顕著に表れる。
本発明におけるアルミナ微粉末のX線回折測定は、リガク社製の試料水平型強力X線回折装置(RINT TTRII)により以下の手順で測定されたものである。
[サンプル調製]
1)500mlのビーカーにトナー3gに対し、200mlのTHF(テトラヒドロキシ
フラン)を加える。
2)超音波で3分間分散させ、外添剤を遊離させる。
3)遊離した外添剤を含むTHF上澄み溶液を分離する。
4)トナーに再びTHFを200ml加え2)、3)の操作を繰り返す(3回程度)。
5)1)乃至4)の操作を必要量のサンプルが得られるまで繰り返す。
6)分離したTHF上澄み溶液を2μmのメンブレンフィルターにより真空ろ過を行い固
形分を回収し、外添剤サンプルを得る。
[X線回折測定条件]
使用測定機:リガク社製/試料水平型強力X線回折装置(RINT TTRII)
管球:Cu
平行ビーム光学系
電圧:50kV
電流:300mA
開始角度:30°
終了角度:50°
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:4.00°/min
発散スリット:開放
発散縦スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:1.0mm
得られたX線回折ピークの帰属は、リガク製解析ソフト「Jade6」を用いて行い、αアルミナ、γアルミはそれぞれJCPSDカードから判別される(JCPDS−International Center for Diffraction Data, PDF αアルミナ:46−1212,γアルミナ:23−1009)。各々帰属されたピークのうちαアルミナの特徴的なピークの一つであるブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとγアルミナの特徴的なピークの一つであるブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibを求め、(式1)により結晶構造を構成するγ結晶相の割合Icを求める。
また、本発明は、アルミナ微粉末がγ結晶相を有し且つ表面細孔が少ないことを特徴とする。すなわち、本発明のアルミナ微粉末は細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲で測定される全細孔容積が0.200cm3/g以下であり、好ましくは0.100cm3/g以下、より好ましくは0.050cm3/g以下であることを特徴とする。
細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲で測定される全細孔容積を0.200cm3/g以下にすることは、表面細孔が少ないことを表す。このように、細孔が無く均一な表面構造を有することで、アルミナ微粉末表面が不活性となり、局所的な摩擦帯電過多による帯電の不均一や、吸湿による凝集を防止することができ、スペーサーとしての機能も最大限発揮することが可能となる。また、凝集塊による感光体の表面の傷を防ぐことが可能となる。このように本発明の特徴である表面細孔の少ないγアルミナ微粉末を用いることで、高速の現像システムのような、現像器内で大きなシェアを受ける環境においても流動性の低下を防ぎ、長期に渡り安定した性能をトナーが維持することが可能となる。
全細孔容積が0.200cm3/gより大きい場合、アルミナ微粉末表面に細孔が多く存在していることを示す。このようなアルミナ微粉末の場合、局所的な帯電過多による摩擦帯電の不均一や吸湿による凝集塊を生じ易く、αアルミナのように感光体の表面に傷を生じ易くなる。その結果、長期の耐久により画像濃度の低下やドット再現性の低下が生じ易くなり好ましくない。
本発明においては、アルミナ微粉末の表面細孔状態を再現良く測定可能であり、細孔状態がロングレンジで正確に測定される細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲における全細孔容積を測定した。
本発明におけるアルミナ微粉末の細孔容積は、細孔分布測定装置Tristar3000(島津製作所社製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させるガス吸着法により測定したものである。測定の概略は、島津製作所社発行の操作マニュアルに記載されており、以下の通りである。細孔分布の測定前には、試料管にサンプルを約1.5g入れ、温度100℃で24時間真空引きを行う。真空引き終了後サンプル重量を精秤し、サンプルを得た。得られたサンプルを上記細孔分布測定装置を用いて、BJH脱着法により細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲における全細孔容積を求めた。細孔分布の評価には測定データ情報に最も近い全細孔容積を指標として用いるのが好ましい。
本発明の特徴であるが細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲で測定される全細孔容積が0.200cm3/g以下であり、且つ該アルミナ微粉末のCuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibから式(1)で計算されるIcが0.20乃至1.00の範囲にあるアルミナ微粉末を得る手段としては、一般的な製造法において、合成濃度及び温度や冷却速度をコントロールすることで達成可能である。また、アルミナ微粉末の結晶構造及び細孔が上記範囲内に制御されていれば粒子形状に関しての制限は特に無い。
本発明で用いられるアルミナ微粉末としては上記の特性を有しているものであれば如何なるものでも使用することが出来るが、以下に示す特性を有することが好ましい。
本発明におけるアルミナ微粉末は、温度28℃における水分の吸・脱着の等温線において、相対湿度80%RHにおける吸着過程の吸着水分量が0.01乃至1.50質量%が好ましく、より好ましくは0.01乃至1.00質量%である。相対湿度80%RHにおける吸着水分量が1.50質量%より大きい場合、吸着する水分量が多いことを示す。このようなアルミナ微粉末の場合、吸湿によりトナーの摩擦帯電性の低下や凝集性が低下するため、特に高湿環境での長期の耐久により画像濃度が低下し、好ましくない。一方、該吸着水分量が0.01質量%より低い場合、アルミナ微粉末が過度の疎水性を有することを示す。疎水性が過度に強すぎるとトナーのチャージアップが発生し易く、摩擦帯電のバランスが崩れ、画像濃度が低下する傾向になる。
本発明におけるアルミナ微粉末の吸着水分量は、吸着平衡測定装置(JTトーシ社製「EAM−02」)によって測定したものである。これは、対象とする気体(本発明の場合は水)のみが存在する条件下で固−気平衡に到達させ、この時の固体重量と蒸気圧を測定する装置である。
実際の吸・脱着の等温線の測定は、以下に示す乾物重量の測定、水中の溶存空気の脱気から、吸・脱着の等温線の測定まで、全てコンピューターによって自動的に行われる。測定の概略は、JTトーシ株式会社発行の操作マニュアルに記載されており、以下の通りである。なお、本発明においては溶媒液として水を用いる。
先ず、吸着管内の試料容器にアルミナ微粉末を約5g充てん後、恒温槽温度、試料部温度を28℃に設定した。その後、空気弁V1(主バルブ)、V2(排気バルブ)を開き真空排気部を作動させ、真空容器内を0.01mmHg程度に真空引きすることにより、試料の乾燥を行う。試料の質量変化がなくなった時点の質量を「乾物質量」とする。
溶媒液としての水中には空気が溶解しているため、脱気を行う必要がある。先ず、水を液だめに入れ、真空排気部を作動させ、空気弁V2、V3(液だめバルブ)を交互に開閉し、溶存している空気を除去する。上記操作を数回繰り返し、水中に気泡が見られなくなった時点で脱気終了とする。
乾物質量の測定、水中の溶存空気の脱気に続いて、真空容器内を真空下に保持したまま空気弁V1、V2を閉じ、空気弁V3を開くことによって、液だめから水蒸気を導入し、空気弁を閉める。次いで、空気弁V1を開くことによって、溶媒蒸気を真空容器内に導入し、その圧力を圧力センサーにより測定する。真空容器内の圧力が設定圧力に達しない場合は、上記操作を繰り返すことにより真空容器内の圧力を設定圧力にする。平衡に達すると、真空容器内の圧力と重量が一定になるので、その時の圧力と温度、及び試料重量を平衡データとして測定する。
以上のように操作して、水蒸気の圧力を変更することにより、吸・脱着の等温線を測定することができる。実際の測定においては、予め、吸着量を測定する相対蒸気圧を設定する。設定圧として、例えば、5%、10%、30%、50%、70%、80%、90%、95%とした場合、本発明における「吸着過程」とは、5%から順に水分吸着量を測定し等温線を測定していく過程であり、「脱着過程」とは、吸着過程に引き続き行う、吸着過程とは逆に95%から相対蒸気圧を下げていきながら水分吸着量を測定していく過程を示す。
本装置では、圧力の設定は相対蒸気圧(%RH)で行い、吸・脱着の等温線は、吸着量(%)と相対蒸気圧(%RH)で表示される。吸着量と相対蒸気圧の計算式を以下に示す。
M={(Wk−Wc)/Wc}×100
Pk=(Q/Q0)×100
(ここで、Mは吸着量(%)、Pkは相対蒸気圧(%)、Wk(mg)は試料質量、Wc(mg)は試料の乾物質量、Q0(mmHg)は、吸・脱着平衡時の温度Tk(℃)からAntoineの式により求められる水の飽和蒸気圧、Q(mmHg)は平衡データとして測定した圧力、をそれぞれ示す。)
また、本発明で用いられるアルミナ微粉末の比表面積は1.0乃至15.0m2/gが好ましい。
比表面積が15.0m2/gよりも大きな場合、アルミナ微粉末がトナー粒子中に埋め込まれるために、トナーの劣化が生じ易くなり、耐久後半に画像濃度が低下し易い。また比表面積が1.0m2/gよりも小さい場合、トナーに十分な流動性が得られず耐久後半に濃度が低下し易い。
比表面積の測定法としては、BET比表面積法に従って、比表面積測定装置ジェミニ2375(島津製作所)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET比表面積多点法を用いて比表面積を計算した。
また、本発明の特徴である細孔径1.7nm乃至300.0nmの範囲で測定される全細孔容積が0.200cm3/g以下であり、且つ該アルミナ微粉末のCuKα特性X線回折において、ブラッグ角2θ=25.0乃至26.0degの範囲における最大強度Iaとブラッグ角2θ=32.0乃至33.0degの範囲における最大強度Ibから式(1)で計算されるIcが0.20乃至1.00の範囲にあるアルミナ微粉末は気相酸化法で製造することが好ましい。
前述したように、バイヤー法、アルコキシド熱分解法、ミョウバン熱分解法の如き従来のアルミナ製法では、γアルミナは細孔が多く表面が不均一なものが生じ易い傾向にある。
本発明では、γ結晶相を有しかつ表面細孔が少なくなる製法について検討した結果、気相中で金属アルミニウムを酸素で直接酸化させアルミナ微粉末を得る、気相酸化法を用いると、容易に本発明に係るアルミナ微粉末が得られることを見出した。
特に本発明に係るアルミナ微粉末を得るためには、アルミニウム粉末を搬送媒体である不活性ガスにより、反応炉中で形成した燃焼火炎中へ搬送して、アルミニウム粉末を燃焼酸化させる製法が好ましく用いられる。
気相酸化法は、反応系内を瞬間的にアルミナの融点以上にすることが可能であり、表面の細孔を少なくすることが可能である。従来製法では反応温度を高温にすると高温安定相のαアルミナになる懸念があった。これに対し、気相酸化反応では瞬時に反応が進むためγアルミナの状態を維持可能であり、本発明の特徴であるγ結晶相を有し且つ表面細孔の少ないアルミナ微粉末を好適に得ることが出来ると考えられる。また細孔状態や粒径調整は、アルミニウム粉末を供給する不活性ガスの流量またはアルミニウム粉末の供給量を変更することにより行われる。
また、本発明のアルミナ微粉末は体積基準のメジアン径(D50)が0.01乃至3.00μm、好ましくは0.10乃至2.00μmであることを特徴とする。アルミナ微粉末の粒径を上記範囲に制御することで、より高速の現像システムのように、トナーが現像器内で大きなシェアを受ける環境においてもアルミナ微粉末の埋め込みによるトナー劣化が起こらず、良好な濃度安定性、ドット再現性を環境に依らず長期に渡り安定的に得ることができる。
メジアン径(D50)が0.01μmよりも小さいアルミナ微粉末は、トナー粒子に埋め込まれ易く、高速の現像システムにおいてトナーが凝集し易く、ドット再現性が低下する。一方3.00μmより大きいアルミナ微粉末は、トナー粒子から遊離し易くなり、耐久後半に画像濃度が低下する。
本発明における粒度分布測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA製)により測定したものである。測定方法としては、分散媒となるイオン交換水100mlにサンプルを、例えば約30mg入れ、この分散液を超音波分散機で1分間処理し、分散液とする。この分散液をサンプル濃度が透過率80%前後になるように測定セルに滴下する。測定サンプルと水の相対屈折率をサンプルの種類に応じ設定して、前記測定装置を使用し体積基準の粒度分布を測定して、メジアン径(D50)を求める。
また、本発明で用いられるアルミナ微粉末の含有量はトナー粒子100質量部に対して、0.05乃至2.00質量部であることが好ましく、より好ましくは0.10乃至1.00質量部である。
アルミナ微粉末の含有量が2.00質量部よりも大きい場合、トナーの帯電のバランスがくずれ、濃度低下が生じ易い。また、アルミナ微粉末含有量が0.01質量部よりも小さい場合、トナーに対して添加量が少なくなり、アルミナ微粉末添加の効果が得られない。
また、トナー粒子に添加するアルミナ微粉末は1種類であることが好ましい。例えばα結晶の単一層からなるαアルミナとγアルミナの二種類を混合し添加した場合、αアルミナの単一層が一部でも存在しているため、感光体の表面への傷が生じ易くなり好ましくない。
また、本発明におけるトナーは更にBET比表面積が50乃至300m2/gの疎水性無機微粉末を含有することが好ましい。
トナー粒子表面への流動性付与能が高い、BET比表面積が大きな疎水性無機微粉末を併用することで、アルミナ微粉末をトナーに均一に分散させることが可能となる。
疎水性無機微粉末のBET比表面積が50より小さい場合、アルミナ微粉末が十分分散されないため好ましくない。また、疎水性無機微粉末のBET比表面積が300m2/gより大きな場合、トナーがチャージアップし易く濃度低下が生じ好ましくない。
疎水性無機微粉末としては、例えば二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化錫が挙げられる。この中でも特にケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカが好ましく用いられる。
疎水化処理は、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用して行うことができる。
また、本発明の着色剤は高速機における耐久安定性の点からも磁性酸化鉄であることが好ましい。
磁性酸化鉄としては、マグネタイト,マグヘマイト,フェライトの如き酸化鉄が用いられる。また、本発明の磁性酸化鉄はトナー粒子中への微分散性を向上させる目的で、製造時のスラリーにせん断をかけ、磁性酸化鉄を一旦ほぐす処理を施すことが好ましい。
本発明においてトナーに含有させる磁性酸化鉄の量は、結着樹脂100質量部に対して20乃至200質量部が好ましく、より好ましくは30乃至150質量部である。
また本発明において、トナー粒子の重量平均粒子径(D4)は、4.0乃至9.0μmであることが好ましい。トナー粒子の粒径を上記範囲に制御することでより高精細な静電潜像をより忠実に再現することが可能となり、高画質化の点で好ましい。
トナー粒子の重量平均径(D4)が4.0μm乃至9.0μmであると、アルミナ微粉末との粒径のバランスが崩れにくく、トナーは十分な流動性が得られ、耐久後半においての画像濃度の低下が生じない。さらに、より高精細な静電潜像への再現性が向上するため、高画質化の点で好ましい。
本発明に使用される結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。中でも好ましく用いられる樹脂として、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、または両者が一部反応した、ハイブリッド樹脂が挙げられる。
本発明にかかる結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂或いは上記ハイブリッド樹脂のポリエステル系ユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては以下の化合物が挙げられる。
アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェールA、下記(I−1)式で表わされるビスフェノール誘導体及び下記(I−2)式で示されるジオール類。
酸成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物、またさらに炭素数6乃至18のアルキル基またはアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物。
また本発明にかかるポリエステル樹脂或いはポリエステル系ユニットは、三価以上の多価カルボン酸またはその無水物及び/または三価以上の多価アルコールによる架橋構造を含むポリエステル樹脂であることが好ましい。三価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステル。三価以上の多価アルコールとしては、以下のものが挙げられる。1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール。本発明の結着樹脂においては、環境変動による安定性も高い芳香族系アルコールが特に好ましく、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物が挙げられる。
本発明にかかる結着樹脂に用いられるビニル系樹脂或いはハイブリッド樹脂のビニル系重合体ユニットを構成するビニル系モノマーとしては、次の化合物が挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体。
さらに、以下のものが挙げられる。マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの如きアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂に用いられるビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有してもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。芳香族ジビニル化合物(ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレー卜をメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で緒ばれたジアクリレート化合物類[ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの];ポリエステル型ジアクリレート化合物類(日本化薬社製「MANDA」)。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して0.01乃至10質量部、さらに好ましくは0.03乃至5質量部用いることができる。
これらの架橋剤のうち、結着樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
上記ビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットの重合に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエイト、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−プチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレート。
本発明において、結着樹脂に前記したハイブリッド樹脂を用いる場合には、ビニル系樹脂及び/またはポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系樹脂と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物が挙げられる。ビニル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
このハイブリッド樹脂においては、ポリエステル系モノマーとビニル系モノマーとの質量比が、50/50乃至90/10であることが良く、好ましくは60/40乃至85/15であることが良い。ポリエステル系ユニットが50%未満であると、摩擦帯電性が損なわれやすく、90%超となった場合は摩擦帯電性のバランスが崩れやすく、保存性が低下し易く、離型材の分散性が低下し易い。
また、該結着樹脂は低温定着性の観点から、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCで測定される、分子量1万以下の低分子量成分を30質量%以上含有されていることが好ましい。
また、該結着樹脂のガラス転移温度は、定着性や保存性の観点から53乃至62℃が好ましい。
上記のような結着樹脂を単品で使用してもよいが、本発明においては、軟化点の異なる2種類の高軟化点樹脂(A)と低軟化点樹脂(B)を90/10乃至10/90の範囲で混合して使用しても良い。このような系では、トナーの分子量分布の設計を比較的容易に行うことができ、幅広い定着領域を持たせることができるので好ましい。
本発明においては、トナーに離型性を与えるために必要に応じてワックスを用いることができる。該ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。必要に応じて一種または二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。例としては次のものが挙げられる。
酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、以下のものが挙げられる。アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したワックス。
前記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、以下のものが挙げられる。金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンの如きアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
使用できる具体的な例としては、以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200 (三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)。
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時において添加しても良いが結着樹脂製造時であっても良く、既存の方法から適宜選ばれる。また、これらの離型剤は単独で使用しても併用しても良い。
該離型剤は結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られにくく、20質量部を超える場合はトナー中での分散も悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材やクリーニング部材の表面汚染が起こりやすく、トナー画像が劣化し易い。
非磁性トナーとして用いる場合には、着色剤として以下のような顔料または染料を用いることができる。
着色剤としては、カーボンブラックやその他従来より知られているあらゆる顔料や染料の一種又は二種以上を用いることができる。
染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ダイレクトレッド1,C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1,C.I.べーシックレッド1,C.I.モーダントレッド30,C.I.ダイレクトブルー1,C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15,C.I.べーシックブルー3,C.I.べーシックブルー5,C.I.モーダントトブルー7,C.I.ダイレクトグリーン6,C.I.べーシックグリーン4、C.I.べーシックグリーン6。顔料としては、以下のものが挙げられる。黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG。
本発明のトナーをフルカラー画像形成用トナーとして使用する場合には、次の様な着色剤が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35。
上記マゼンタ顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料を併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28の如き塩基性染料。
シアン用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45又は下記構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料。
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,35,73,83、C.I.バットイエロー1,3,20。
非磁性トナーの着色剤は樹脂成分100質量部に対して、0.1乃至60質量部が好ましく、より好ましくは0.5乃至50質量部である。
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることができる。電荷制御剤は、その種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10質量部含まれることが好ましく、0.1乃至5質量部含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
トナーを負帯電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属錯体(モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体);芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩。その他にも、トナーを負帯電性に制御するものとしては、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩や無水物;エステル類やビスフェノール等のフェノール誘導体が挙げられる。この中でも特に、安定な帯電性能が得られる芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体又は金属塩が好ましく用いられる。
トナーを正帯電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体;ホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等);高級脂肪酸の金属塩。本発明ではこれらの一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。トナーを正帯電性に制御するものとしては、これらの中でもニグロシン系化合物、四級アンモニウム塩等の電荷制御剤が特に好ましく用いられる。
使用できる具体的な例としては、以下のものが挙げられる。Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89 (オリエント化学社)。正帯電用としては以下のものが挙げられる。TP−302、TP−415 (保土谷化学社)、BONTRON(登録商標) N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)。
また、電荷制御樹脂も用いることができ、上述の電荷制御剤と併用することもできる。
本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラー定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子などである。
滑剤としては、ポリ弗化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられ、中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。また研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。これらの外添剤はヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて十分混合し本発明のトナーを得ることができる。
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、着色剤、その他の添加剤を、ヘンシェルミキサー又は、ボールミルの如き混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行いトナー粒子を得、更にトナー粒子にアルミナ微粉末をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明のトナーを得ることが出来る。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
本発明のトナーに係る物性の測定方法は以下に示す通りである。後述の実施例もこの方法に基づいている。
(1)結着樹脂の軟化点の測定
結着樹脂の軟化点はJIS K 7210に示される測定方法に則り、降下式フローテスタにより測定される。具体的な測定方法を以下に示す。
降下式フローテスタ(島津製作社製)を用いて1cm3の試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1960N/m2(20kg/cm2)の荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
(2)結着樹脂及びトナーのガラス転移温度の測定
測定装置 :示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)
ASTM D3418−82に準じて測定する。
測定試料約3mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いて、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下測定を行う。2回目の昇温過程で得られる、温度30乃至200℃の範囲におけるDSC曲線をもって解析を行う。
(3)GPCによる分子量分布の測定
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102乃至107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。又、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。尚、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることができる。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、温度25℃で数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2乃至0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5乃至5mg/mlとなるように調整する。
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例にもとづいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。
<結着樹脂A−1の製造例>
テレフタル酸 24mol%
ドデセニルコハク酸 16mol%
トリメリット酸 7mol%
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 31mol%
(プロピレンオキサイド2.5mol付加物)
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 22mol%
(エチレンオキサイド2.5mol付加物)
ポリエステルユニットを生成するためのモノマーとして、上記の酸成分及びアルコール成分及び触媒として2−エチルヘキサン酸錫を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて温度130℃の温度で攪拌しつつ、上記のポリエステルユニットを生成するためのモノマー成分100質量部に対し、下記に示すスチレン−アクリル系樹脂ユニットを生成するためのモノマー25質量部を重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド)とともに混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。
スチレン 82質量%
2−エチルヘキシルアクリレート 16質量%
アクリル酸 2質量%
これを温度130℃に保持したまま3時間熟成し、230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し後粉砕し、ポリエステル樹脂成分、ビニル系重合体成分、及び、ポリエステルユニットとスチレン−アクリル系樹脂ユニットとが化学的に結合したハイブリッド樹脂成分を含有し、軟化点が131℃である結着樹脂A−1(H)を得た。
次に、
テレフタル酸 27mol%
ドデセニルコハク酸 13mol%
トリメリット酸 3mol%
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 31mol%
(プロピレンオキサイド2.5mol付加物)
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 26mol%
(エチレンオキサイド2.5mol付加物)
ポリエステルユニットを生成するためのモノマーとして、上記の酸成分及びアルコール成分及び触媒として2−エチルヘキサン酸錫を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて温度130℃の温度で攪拌しつつ、上記ポリエステルユニットを生成するためのモノマー成分100質量部に対し、下記に示すスチレン−アクリル系樹脂ユニットを生成するためのモノマー25質量部を重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド)と共に混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。
スチレン 84質量%
2−エチルヘキシルアクリレート 14質量%
アクリル酸 2質量%
これを温度130℃に保持したまま3時間熟成し、230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し後粉砕し、ポリエステル樹脂成分、ビニル系重合体成分、及び、ポリエステルユニットとスチレン−アクリル系樹脂ユニットとが化学的に結合したハイブリッド樹脂成分を含有し、軟化点が99℃である結着樹脂A−1(L)を得た。
結着樹脂A−1(H)60質量部と結着樹脂A−1(L)40質量部とをヘンシェルミキサーで混合し、結着樹脂A−1とした。
この結着樹脂A−1は、ガラス転移温度が59℃であり、軟化点が128℃であり、GPCにおける分子量1万以下の成分を37質量%含有するものであった。
<結着樹脂A−2の製造例>
テレフタル酸 31mol%
ドデセニルコハク酸 11mol%
トリメリット酸 6mol%
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 35mol%
(プロピレンオキサイド2.5mol付加物)
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 17mol%
(エチレンオキサイド2.5mol付加物)
上記に示す酸成分及びアルコール成分と、エステル化触媒を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し、冷却、粉砕し、軟化点が142℃である結着樹脂A−2(H)を得た。
次に、
テレフタル酸 26mol%
ドデセニルコハク酸 11mol%
トリメリット酸 11mol%
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 30mol%
(プロピレンオキサイド2.5mol付加物)
前記式(I−1)で示されるビスフェノール誘導体 22mol%
(エチレンオキサイド2.5mol付加物)
上記に示す酸成分及びアルコール成分と、エステル化触媒を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着し、窒素雰囲気下にて230℃に昇温して反応を行った。反応終了後、生成物を容器から取り出し、冷却、粉砕し、軟化点が97℃である結着樹脂A−2(L)を得た。
結着樹脂A−2(H)70質量部と結着樹脂A−2(L)30質量部とをヘンシェルミキサーで混合し、結着樹脂A−2とした。
この結着樹脂A−2は、ガラス転移温度が56℃であり、軟化点が134℃であり、GPCにおける分子量1万以下の成分を36%含有するものであった。
<結着樹脂A−3の製造例>
スチレン 81質量部
アクリル酸ブチル 19質量部
マレイン酸モノブチル 0.5質量部
ジ−tert−ブチルパーオキサイド 2質量部
上記モノマー組成物を還流温度まで上昇させたキシレン200質量部に混合した。キシレン還流下、6時間で溶液重合を完了し、低分子量樹脂溶液を得た。一方、脱気水200質量部、ポリビニルアルコール0.2質量部に下記のモノマー組成物を混合懸濁分散させた。
スチレン 67質量部
アクリル酸ブチル 27質量部
マレイン酸モノブチル 6質量部
ベンゾイルパーオキサイド 0.1質量部
この懸濁分散溶液を加熱し、窒素雰囲気下において温度80℃に24時間保持し、重合を完了させ、脱水、乾燥させて高分子量樹脂を得た。
この高分子量樹脂77質量部を前述の低分子量樹脂溶液(樹脂分23質量部含有)中に投入し、溶液中に完全に溶解せしめ混合を行い、その後高温(180℃)で減圧蒸留を行って溶媒を除去して、結着樹脂A−3を得た。
この結着樹脂A−3は、ガラス転移温度が60℃であり、軟化点が128℃であり、GPCにおける分子量1万以下の成分を38%含有するものであった。
<アルミナ微粉末B−1の製造例>
燃焼器に酸素を50Nm3/Hr、アルゴンガスを2Nm3/Hrで供給してアルミニウム粉末の着火用の火炎を形成した。次ぎにアルミニウム粉末(平均粒径約60μm 供給量20kg/Hr)をアルミ粉末供給装置から窒素ガス(供給量10Nm3/Hr)と共に燃焼器を通して反応炉へ供給した。反応炉内でアルミ粉末は火炎により燃焼して酸化されてアルミナ粉末B−1を得た。X線回折チャートを図1に、水分吸着等温線を図3に示す。
<アルミナ微粉末B−2の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を15Nm3/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−2を得た。
<アルミナ微粉末B−3の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を5Nm3/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−3を得た。
<アルミナ微粉末B−4の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を5Nm3/Hr、酸素濃度を65Nm3/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−4を得た。
<アルミナ微粉末B−5の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を5Nm3/Hr、酸素濃度を80Nm3/Hr、アルミニウム粉末の供給量を30kg/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−5を得た。
<アルミナ微粉末B−6の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を15Nm3/Hr、アルミニウム粉末の供給量を10kg/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−6を得た。
<アルミナ微粉末B−7の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を2Nm3/Hr、酸素濃度を100Nm3/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−7を得た。
<アルミナ微粉末B−8の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を15Nm3/Hr、酸素濃度を30Nm3/Hr、アルミニウム粉末の供給量を5kg/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−8を得た。
<アルミナ微粉末B−9の製造例>
製造例B−1において、窒素ガスの流量を5Nm3/Hr、酸素濃度を120Nm3/Hrとする以外は製造例B−1と同様にしてアルミナ微粉末B−9を得た。
上記アルミナ微粉末(B−1)乃至(B−9)の物性値を表1に示す。
[実施例1]
・結着樹脂A−1 100質量部
・磁性酸化鉄粒子 60質量部
(平均粒径0.15μm、Hc=11.5kA/m、σs=90Am2/kg、σr=1 6Am2/kg)
・ワックスb(フィッシャートロプシュワックス、融点105℃) 4質量部
・後記の電荷制御剤c(負荷電制御剤) 2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。この時、混練された樹脂の温度が150℃になるように滞留時間をコントロールした。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径5.8μmの負摩擦帯電性のトナー粒子を得た。トナー粒子100質量部に対し、疎水性無機微粉末a(シリカ、BET140m2/g、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)30質量部及びジメチルシリコーンオイル10質量部で疎水化処理)を1.0質量部とアルミナ微粉末B−1を0.2質量部、及びチタン酸ストロンチウム3.0質量部を外添混合し目開き150μmのメッシュで篩い、負摩擦帯電性の磁性を有するトナー1を得た。
トナー1の評価は、より高速な条件で評価を行うため、市販の複写機(IR−6570 キヤノン製)のプリントスピードを1.7倍にした改造機を用いて、高温高湿環境(30℃,80%RH)、常温常湿環境(23℃,50%RH)及び常温低湿環境(23℃,5%RH)の各環境下で印字比率5%のテストチャートを用いて50万枚の連続プリントを行い、以下の評価を行った。
(感光体の表面の傷)
50万枚出力後の感光体の表面を目視観察した。また、ハーフトーン画像を出力し画像上に発生したスジ(感光体の周方向に発生するもの)の発生状況を目視観察し、下記の評価基準に従って評価した。その評価結果を表5,6,7に示す。
(評価基準)
A(非常に良い):傷未発生
B(良い):よく観察するとわずかに見られる程度の傷が見られる
C(普通):傷は見られるが画像には影響が無い程度
D(悪い):傷は目視ではっきり確認でき、画像不良が顕著である程度
(画像濃度)
画像濃度については、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して5mm丸の画像の反射濃度を測定した。この評価を、各試験環境において、初期および50万枚プリント時に行った。その評価結果を表5,6,7に示す。
(ドット再現性)
ドット再現性の評価は、各試験環境において、初期と50万枚画出し後、上記画出し試験機を用いて600dpiの孤立した1ドットのパターンの画出しを行い、光学顕微鏡で画像を観察してドット再現性を検査し、以下の基準により評価した。結果を表5,6,7に示す。
A(非常に良い):潜像からのトナーのはみ出しが全く無く、ドットを完全に再現してい る。
B(良い) :潜像からのトナーのはみ出しが僅かにある。
C(普通) :潜像からのトナーのはみ出しが見られる。
D(悪い) :潜像からのトナーのはみ出しが顕著に生じる。
[実施例2乃至8]
表4に記載の処方(アルミナ微粉末に関しては表1、疎水性無機微粉末に関しては表3、ワックスに関しては表2)とした以外は実施例1と同様にトナー2乃至8を得た。このようにして得られたトナーについて実施例1と同様の試験をした結果を表5,6,7に示す。
[実施例9]
表4に記載の処方(疎水性無機微粉末に関しては表3、ワックスに関しては表2)とし、アルミナ微粉末として、B−1 0.3質量部とTM10(大明化学工業社製) 0.1質量部の混合物を用いた以外は実施例1と同様にトナー9を得た。このようにして得られたトナーについて実施例1と同様の試験をした結果を表5,6,7に示す。
[比較例1乃至3]
表4に記載の処方(疎水性無機微粉末に関しては表3、ワックスに関しては表2)とし、アルミナ微粉末として、TM10、TM40、TM100(大明化学工業社製)を其々用いた以外は実施例1と同様にトナー10乃至12を得た。このようにして得られたトナーについて実施例1と同様の試験をした結果を表5,6,7に示す。また、比較例1で用いたアルミナ微粉末TM10のX線回折チャートを図2に、比較例2で使用したアルミナ微粉末TM40の水分吸着等温線を図4に示す。
[比較例4]
表4に記載の処方(疎水性無機微粉末に関しては表3、ワックスに関しては表2)とし、アルミナ微粉末として、B−9を用いた以外は実施例1と同様にトナー13を得た。このようにして得られたトナーについて実施例1と同様の試験をした結果を表5,6,7に示す。
[比較例5]
表4に記載の処方(疎水性無機微粉末に関しては表3、ワックスに関しては表2)とし、アルミナ微粉末として、AEROXIDE Alu C(日本アエロジル社製)を用いた以外は実施例1と同様にトナー14を得た。このようにして得られたトナーについて実施例1と同様の試験をした結果を表5,6,7に示す。