本発明者等は、荷電制御剤に関して検討を行った結果、各種荷電制御剤の中でもピラゾロンモノアゾ金属化合物を用いると、高い帯電量を有し、且つ著しく高い帯電立ち上がり性を有する負帯電性トナーが得られることを見出した。ピラゾロンモノアゾ金属化合物が、高い帯電量と、高い帯電立ち上がり性を有する詳しい理由は明確になっていないが、ピラゾロン骨格を配位子内に有することで、帯電性が向上すると考えられる。
しかしながら、単にピラゾロンモノアゾ金属化合物を用いただけでは、高温高湿環境に放置された吸湿紙を用いると、静電オフセットや定着尾引きが悪化する場合があることも見出した。この現象は、単にトナーの帯電量を高くしただけでは解決が難しく、定着機に入る前の紙上の未定着画像のトナーの帯電量分布を制御することが重要であることが分かった。
感光体に現像されたトナーを紙等の転写材に転写する際、転写材の裏面からトナーと逆極性のバイアス(転写バイアス)を印加して感光体上のトナーを転写材に移行させる。この転写時に、トナーが転写バイアスの影響を受けて、帯電量分布がブロードになる場合がある。
転写バイアスは、転写材をトナーと逆極性に帯電させ、感光体上のトナーが転写材に移行しやすくするために印加している。しかし、転写材の紙が吸湿していると、水分により紙の電気抵抗が低くなり、転写バイアスが紙だけでなく感光体上のトナーにも印加され、トナーの帯電を緩和させたり、逆極性に帯電させてしまう。
この結果、紙上に転写されたトナーのなかの一部の粒子には、転写バイアスにより帯電量が低下したり、逆極性(正帯電)に帯電したものが存在して、トナーの帯電量分布がブロードになってしまう。
未定着画像に、帯電量が低かったり、帯電していない、または逆極性に帯電したトナーが存在すると、未定着画像と紙との静電的な付着力が弱くなる。その結果、加熱定着時の熱で吸湿した紙から発生する水蒸気でトナーが吹き飛ばされ、尾引きと呼ばれる画像欠陥が発生しやすくなる。
この尾引きを抑制する為に、定着機にバイアスを印加する手法がある。具体的には、トナーと接触する加熱ローラや加熱フィルムに、トナーと同極性のバイアスを印加してバイアスでトナーを紙へ押圧する。または、加圧ローラなど紙の裏側に接触する部材に、トナーと逆極性のバイアスを印加して、トナーを紙へ引き寄せたりする効果を得ようとする。
しかし、紙上のトナーの帯電量分布がブロードで、逆極性のトナーが存在すると、尾引きを抑制する為のバイアス印加により逆極性のトナーが定着前に紙から飛翔し、加熱ローラーや加熱フィルムに静電的に付着して、静電オフセットが発生する。
本発明者らが鋭意検討した結果、ピラゾロンモノアゾ金属化合物の粒径と流動性、およびトナーの粒径を制御することで、尾引きや静電オフセットを抑制しつつ、高い帯電量と高い帯電立ち上がり性を有する負帯電性トナーが得られることを見出した。
この理由は明確にはなっていないが、荷電制御剤の粒径と流動性、トナーの粒径を一定の範囲に制御することで、トナー粒子中での荷電制御剤の分散状態が良好になる。その結果、トナー粒子表面に荷電制御剤がむらなく均一に露出し、かつ表面に露出している荷電制御剤の分散粒径も均一になる為と考えている。つまり、トナーの表面状態が均一である為に、転写バイアスなどの影響を受けてもトナーの帯電量が緩和したり、逆帯電したりしにくい為、帯電量分布がブロードになりにくく、尾引きや静電オフセットが悪化しにくいものと考えられる。
これとは逆に、トナー中の荷電制御剤の分散状態が不均一で、トナー粒子表面に荷電制御剤の多い部分や少ない部分が偏在していると、トナー粒子ごとに転写バイアスによる帯電を緩和させたり逆帯電させたりする影響の差が大きくなる。その結果、紙に転写されたの未定着画像のトナーの帯電量分布がブロードになり、尾引きや静電オフセットが悪化し易い。
本発明では、体積平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下であり、体積基準の4.0μm以上の粒子の割合が20体積%以下であり、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら容器内の荷電制御剤粉体層中に垂直に進入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Eが、100mJ以上2000mJ以下であり、ピラゾロンモノアゾ系金属化合物を荷電制御剤として用いることが重要である。
トナー中の荷電制御剤の分散状態を制御するには、荷電制御剤の粒径を制御する必要がある。とくに、重量平均粒径が4.0μm以上12.0μm以下であるトナーに用いる場合には、荷電制御剤の体積平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下(好ましくは0.5μm以上2.5μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下)であり、4.0μm以上の粒子の割合が20%以下(好ましくは15%以下)であることが重要である。
荷電制御剤の体積平均粒径が0.5μm未満である場合には、荷電制御剤が凝集しやすく、トナー中で偏析しやすい為、尾引きや静電オフセットが悪化したり、画像濃度の低下やカブリの悪化が起こる。
荷電制御剤の体積平均粒径が3.0μmより大きい場合には、トナー中での荷電制御剤の分散粒径も大きくなり、トナー粒子表面の荷電制御剤の存在状態が不均一になって、画像濃度の低下やカブリの悪化、尾引きや静電オフセットの悪化が起きる。
荷電制御剤の4.0μm以上の粒子の割合が20体積%より多い場合、トナー中に分散粒径の大きな荷電制御剤が偏析しやすく、トナーの帯電量分布がブロードになり易く、カブリや尾引き、静電オフセットが悪化する。
本発明では、荷電制御剤の粒径を上記範囲に制御するだけでなく、荷電制御剤の流動性も制御することが非常に重要である。本発明者らは、荷電制御剤の流動性が、他のトナー原材料と混合する際の混合性を改良するうえで重要な因子であり、この原材料の混合性がトナー中での荷電制御剤の分散状態に大きく影響することを見出した。特に、溶融混練により原材料を混合、分散させるトナーの製造方法では、溶融混練だけでは荷電制御剤を十分に均一に分散できない場合がある。そのため、溶融混練前の原材料混合の段階で、荷電制御剤の分散状態を改良することで、トナー中の荷電制御剤の分散状態を改良する必要があることが分かった。
本発明で使用する荷電制御剤は、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら容器内の荷電制御剤粉体層中に垂直に進入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Eが、100mJ以上2000mJ以下(好ましくは100mJ以上1500mJ以下、より好ましくは100mJ以上1000mJ以下)であることを特徴としている。
荷電制御剤の回転トルクと垂直荷重の総和Eは、荷電制御剤の流動性を示しており、原材料の均一分散性を高める上で重要な指標である。
溶融混練によりトナーを得る製法では、溶融混練工程の前に各原材料をミキサーなどで混合する工程(原材料混合工程)がある。原材料混合工程では、各原材料の粉体特性が、均一に混合するうえで重要である。
Eが100mJ未満である場合、荷電制御剤の流動性が高く、回転するプロペラ型ブレードにかかる負荷が非常に小さいことを示している。この場合、荷電制御剤の流動性が高すぎる為に、トナーの原材料混合の工程で荷電制御剤が他のトナー原材料、特に結着樹脂と分離しやすく、混合が不十分となり均一混合性が悪化しやすい。その結果、静電オフセットや尾引きが悪化する。
Eが2000mJより大きいと、荷電制御剤の流動性が悪いために、原材料混合物全体の流動性が悪化し、原材料の均一混合性が悪化する。その結果、静電オフセットや尾引きが悪化する。
荷電制御剤の回転トルクと垂直荷重の総和Eの調整方法として好ましいのは、合成によって得られた荷電制御剤を粉砕して粒度分布を調整する方法がある。あるいは、合成によって得られた荷電制御剤を溶剤に溶解した後、水などの貧溶媒を加えて再析出させる方法などが挙げられる。これらの方法により荷電制御剤の流動性が変化する理由は明確になっていないが、粒度分布だけでなく、結晶の形状も変化することにより、粉体特性としての流動性が変化しているものと考えている。
本発明において、E(mJ)の測定には、上述のように、回転式プロペラ型ブレードを備えた粉体流動性分析装置[パウダーレオメータFT−4(Freeman Technology社製)](以下、「FT−4」と省略する場合がある)を用いた。
当該装置は、粉体サンプル中で回転式ブレードを移動させ、一定の流動測定とパターンの流れを起こさせる。サンプル中の粒子はブレードが近接すると流動し、通過するとブレード背後に落下して再び静止する。ブレードが粉体中を移動するのに必要としたエネルギーが計算され、この値から、種々の流動性指数が計算される。ブレードはプロペラ型で、回転すると同時に上又は下方向にも運動するので先端はらせんを描くことになる。回転速度と上下運動を変化させることによりブレードのらせん経路の角度や速度を調節することができる。ブレードが粉体層表面に対して右回りのらせん経路に沿って移動するときには粉体を均一に混ぜる作用がある。逆に粉体層表面に対して左回りのらせん経路に沿って移動するときにはブレードは粉体から抵抗を受けることになる。
具体的には、以下の操作により測定を行う。尚、全ての操作において、プロペラ型ブレードは、FT−4測定専用48mm径ブレード(図1、48mm×10mmのブレード板の中心に法線方向に回転軸が存在し、ブレード板は、両最外縁部分(回転軸から24mm部分)が70°、回転軸から12mmの部分が35°といったように、反時計回りになめらかにねじられたもので、材質はSUS製。型番:C210。以下、「ブレード」と省略する場合がある)を用いる。
まず、FT−4測定専用[50mm×160ml]スプリット容器(型番:C203。容器底面からスプリット部分までの高さ82mm。材質は、ガラス。以下、容器と省略する場合がある。)に温度23℃、湿度60%環境に3日以上放置された荷電制御剤を40g入れることで荷電制御剤の粉体層とする。
(1)コンディショニング操作
(a)ブレードの回転スピード(ブレードの最外縁部の周速)を60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、移動中のブレードの最外縁部が描く軌跡と粉体層表面とのなす角(以降、「なす角」と省略する場合がある。)が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層が均一に混ぜられる方向)の回転方向に、粉体層表面から粉体層の底面から10mmの位置までブレードを進入させる。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から1mmの位置までブレードを進入させる操作を行う。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層からの抜き取り速度をなす角が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から100mmの位置までブレードを移動させ、抜き取りを行う。
抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着した荷電制御剤を払い落とす。
(b)一連の上記(1)−(a)の操作を5回行うことで、粉体層中に巻き込まれている空気を取り除き、安定した粉体層を作る。
(2)スプリット操作
上述のFT−4測定専用セルのスプリット部分で粉体層をすり切り、粉体層上部の荷電制御剤を取り除くことで、同じ体積の粉体層を形成する。
(3)測定操作
(i)E(mJ)の測定
(a)上記(1)−(a)と同様の操作を一回行う。
(b)次にブレードの回転スピードを100(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して反時計回り(ブレードの回転により粉体層が押し込まれる(粉体層が抵抗を受ける)方向)の回転方向に、粉体層の底面から10mmの位置までブレードを進入させる。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から1mmの位置までブレードを進入させる操作を行う。
その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が5(deg)になるスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から100mmの位置までブレードの抜き取りを行う。
抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着した荷電制御剤を払い落とす。
(c)上記(b)の一連の操作を計7回行う。上記(c)の操作において、7回目のブレードの回転スピードが100(mm/sec)であるときの、粉体層の底面から100mmから10mmの位置までブレードを進入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をE(mJ)とする。
該荷電制御剤は、下記式〔1〕
(式中、A
1、A
2及びA
3は、相互に独立して、水素原子、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。B
1は水素原子又はアルキル基を示す。Mは、Fe原子、Cr原子、又は、Al原子を示し、X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、又は、これらの混合イオンを示す。)
で示される化合物を含有することを特徴とする。
本発明において、式〔1〕で表されるピラゾロンモノアゾ金属化合物は、公知のモノアゾ金属化合物の製造方法を用いて製造することができる。以下に代表的な製造方法を記載する。まず、4−クロロ−2−アミノフェノール等のジアゾ成分に、塩酸や硫酸のような鉱酸を加え、液温が5℃以下になったら、水に溶解させた亜硝酸ナトリウムを液温10℃以下に維持しながら滴下する。10℃以下で30分以上、3時間以下撹拌して反応させることにより、4−クロロ−2−アミノフェノールをジアゾ化する。スルファミン酸を加え、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認する。
次に、3−メチル−1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−ピラゾロンであるカップリング成分、水酸化ナトリウムの水溶液、炭酸ナトリウム、有機溶媒を添加し、室温で撹拌溶解する。そこに前記ジアゾ化合物を注加し、室温で数時間撹拌し、カップリングを行う。撹拌後、ジアゾ化合物とレゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とする。水を加えた後十分に撹拌し、静置してから分液する。更に水酸化ナトリウム水溶液を加え、撹拌洗浄し分液を行う。これによって、モノアゾ化合物の溶液を得る。
上記カップリングの際に使用する有機溶媒としては、1価アルコール、2価アルコール、ケトン系有機溶媒が好ましい。1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコールモノアルキル(炭素数1乃至4)エーテルが挙げられる。2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。ケトン系としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
次に、金属化反応を行う。上記モノアゾ化合物の溶液に、水、サリチル酸、n−ブタノール、炭酸ナトリウムを添加し撹拌する。配位金属として鉄を用いる場合は、塩化第二鉄水溶液と炭酸ナトリウムを添加する。
液温を30℃乃至40℃に昇温し、TLCで反応を追跡する。5時間乃至10時間経過後、原料のスポットが消失したことを確認し、反応終了とする。撹拌停止後、静止し、分液を行う。更に水、n−ブタノール、水酸化ナトリウム水溶液を加え、アルカリ洗浄を行う。濾過を行いケーキを取り出し、水で洗浄する。
さらに、本発明の目的とする粒度分布と流動性を有するピラゾロンモノアゾ金属化合物を得るために、上記で水洗浄したケーキを有機溶剤に溶解させる。この時用いる有機溶剤としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1価アルコール、2価アルコールが好ましい。1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコールモノアルキル(炭素数1乃至4)エーテルが挙げられる。2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。
この溶解液を50℃に昇温し、撹拌させながら水を添加していくことで、徐々に荷電制御剤を析出させる。あらかじめ水に消泡剤を添加しておくと、系内で発生する泡を除去することで、荷電制御剤を均一にできる。冷却濾過後、水によりケーキを洗浄し、さらにケーキを真空乾燥することで、本発明のピラゾロンモノアゾ金属化合物を得ることができる。
この溶解、析出の条件を調整することで、ピラゾロンモノアゾ金属化合物の結晶構造や粒度分布が変化し、流動性が変化すると考えられる。
また、本発明に用いられる荷電制御剤は、下記式〔2〕で表されるモノアゾ鉄化合物であることが好ましい。
(式中、A
1、A
2及びA
3は、相互に独立して、水素原子、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。B
1は水素原子又はアルキル基を示す。X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン又はこれらの混合イオンを示す。)
即ち、配位金属が鉄であることが好ましい。配位金属を鉄とすることで、トナーに長期に渡り安定な帯電性能を与えることが出来る。
本発明に用いられる荷電制御剤は、下記式〔3〕で表されるモノアゾ鉄化合物であることがさらに好ましい。
(式中、X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン又はこれらの混合イオンを示す。)
式〔3〕に示す構造をとることで、より帯電量分布がシャープで、転写バイアスの影響を受けにくいトナーが得られる。
本発明で用いられる荷電制御剤は、体積平均粒径が4.0μm以上であるものを、粉砕により0.5μm以上3.0μm以下(好ましくは0.5μm以上2.5μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下)にしたものであることが好ましい。
さらに本発明では、荷電制御剤の粒度分布を上記範囲に調整する為、粉砕した荷電制御剤を分級したものであることが好ましい。
荷電制御剤を合成する工程の粒径を大きくすることで、ろ過や洗浄などの工程の生産性が向上するうえに、粒径の大きな荷電制御剤を粉砕により小粒径化することで、粒度分布のシャープな荷電制御剤を得やすい。その結果、帯電量分布がシャープで、転写バイアスの影響を受けにくいトナーが得られる。
また、荷電制御剤を粉砕することで、荷電制御剤の流動性が変化する。この理由は明確になっていないが、粉砕時の衝撃により、荷電制御剤の結晶構造が一部変化して、粉体特性に影響していると推測している。
荷電制御剤の粉砕に用いられる粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
本発明における荷電制御剤の粒度分布の測定法を述べる。
荷電制御剤の粒径はレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計(コールター社製)を用いて測定する。測定溶媒としてはエタノールを使用する。エタノールにて粒度分布計の測定系内を数回洗浄、置換し、バックグラウンドファンクションを実行する。
次に下記のようにして試料液を得て、前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDS(濃度)が45%以上55%以下になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、体積分布から算術した分布から頻度比率を求める。
装置係数としてはエタノールの屈折率を1.36とし、光学モデルとしては1.08(実数部)−0.00i(虚数部)として測定を行った。なお、本発明におけるレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計の粒度測定範囲は0.04μm以上2000μm以下である。測定温度としては20℃以上25℃以下の範囲で行った。
本発明におけるサンプルの調製法としては、測定する微粉末を0.4g秤量し、これをエチルアルコール100mlの入ったビーカーにいれ、スターラー撹拌により1分間撹拌しなじませる。ビーカーを超音波振動層に移し、3分間処理する。処理終了後、直ちにエタノールで満たされた測定部に分散溶液を測定許容濃度になるまで加え、測定を開始する。
なお、本発明における超音波振動層としては井内盛栄堂社製のULTRASONIC CLEANER VS−150型(周波数50kHz、最大出力150W)を使用した。
この測定におけるサンプル濃度は、微粉体の凝集および分散を観測するのに適しており、微粉体の粒径の分布を正確に観測することができる濃度である。尚、粒径が小さいもの、或いは、凝集性が低いサンプルを測定する場合には、サンプル量を0.2gとし、エチルアルコールの量を50mlとしても良い。
尚、コールターLS−230型粒度分布計においては、先ず各粒子の粒径を求め、以下のチャンネルに振り分ける。そして、各チャンネルの中心径をそのチャンネルの代表値とし、その代表値を直径として有する球を想定し、その球の体積をもとに体積基準の粒度分布を求めている。
本発明の荷電制御剤は、イオン交換水に1質量%分散させたときの電気伝導度が300μS/cm以下(好ましくは200μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下)であることが好ましい。電気伝導度は、荷電制御剤中に含まれる水溶性のイオンなどの含有量を表しており、電気伝導度が高いほど、これらイオンなどの物質が多く含まれていることを示す。荷電制御剤に含まれる水溶性のイオンを少なくすることで、高温高湿環境でトナーが吸湿した場合であっても、トナーの帯電量を高く維持することが出来るため、高い画像濃度を維持できる。また、未定着画像上のトナーに転写バイアスが印加されても、帯電量が変化しにくくなる為、尾引きや静電オフセットが抑制される。
荷電制御剤の電気伝導度を300μS/cm以下に調整する方法としては、十分な量の水を用いて繰り返し洗浄、濾過を行う方法があり、濾過方法としてはフィルタープレスや遠心濾過などがある。更には逆浸透膜、半透膜を用いる方法、あるいは、荷電制御剤を溶解し、結晶を再析出させる晶析操作による精製方法などがある。
電気伝導度の測定方法は以下のようにして行う。
荷電制御剤乾燥品1.5gをイオン交換水150mlに分散して、15分間煮沸する。流水により、室温まで冷却後、5A濾紙で濾過する。この濾液について蒸留水またはイオン交換水で150mlに調整し、電気伝導度計(HORIBA導電率メーターES−14)で測定する。
更に本発明で用いられる荷電制御剤は、酢酸エステルを0.1ppm以上1000ppm以下、好ましくは0.1ppm以上500ppm以下、より好ましくは1.0ppm以上100ppm以下、さらに好ましくは1.0ppm以上50ppm以下含有することが好ましい。
荷電制御剤中に上記範囲の酢酸エステルを含有することで、トナーの帯電性が非常に良好となり、画質改良効果がより高くなる。この理由は明確ではないが、以下のように考えている。
ピラゾロンモノアゾ金属化合物中に含まれる酢酸エステルは、トナー製造工程の混練工程で大部分が揮発する。混練工程で荷電制御剤に含まれる酢酸エステルが揮発する際は、トナー中に含まれる荷電制御剤と結着樹脂の界面から揮発していく為、酢酸エステルが結着樹脂と荷電制御剤の密着性を弱める働きをする。その為、粉砕工程で結着樹脂と荷電制御剤との界面で粉砕されやすく、荷電制御剤がトナー表面に露出しやすくなる。その結果、荷電制御剤の効果がより顕著となり、画質改良効果が高まるものと考えられる。
好ましい酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル等が挙げられ、特に酢酸ブチル、より好ましくは酢酸n−ブチルが用いられる。酢酸ブチルや酢酸n−ブチルは、沸点が低すぎない為に、長期間にわたって保存しても揮発しにくく、荷電制御剤に安定して含有されやすい。また、沸点がトナーの溶融混練の温度に近い為、溶融混練時に揮発しやすく、上記効果を得られやすい。
ピラゾロンモノアゾ金属化合物中に酢酸エステルを含有させる手法としては、合成後の洗浄水に混合する方法や、洗浄、乾燥後の荷電制御剤に噴霧するなどの方法が挙げられる。
荷電制御剤中に含まれる酢酸エステルの含有量の測定は以下のように行われる。
<酢酸エステル含有量の測定方法>
ヘッドスペース法による加熱温度120℃における有機揮発成分分析による荷電制御剤のトルエン換算の有機揮発成分量の定量は以下のようにして測定することができる。
ヘッドスペース用バイアル瓶(容積22ml)に荷電制御剤50mgを精秤し、クリンパーを用いてクリンプキャップとフッ素樹脂コーティングされた専用セプタムでシールする。このバイアルをヘッドスペースサンプラーにセットし、下記条件でガスクロマトグラム(GC)分析を行なう。そして、得られたGCチャートのピークの総面積値をデータ処理により算出する。この際、荷電制御剤を封入していない空のバイアルもブランクとして同時に測定し、ブランク測定における測定値については荷電制御剤測定データから差し引く。
一方、バイアルの中にトルエンのみを精秤したものを数点(例えば0.1μl、0.5μl、1.0μl)準備し、荷電制御剤サンプルの測定を行なう前に下記分析条件にてそれぞれ測定を行なった後、トルエンの仕込み量とトルエン面積値から検量線を作成する。
トルエン換算の有機揮発成分量は、この検量線を元に荷電制御剤の有機揮発成分の面積値をトルエンの質量に換算し、更に荷電制御剤質量を基準とした量に換算することによって得られる。
(測定装置および測定条件)
ヘッドスペースサンプラー:Turbo Matrix HS40(株式会社パーキンエルマージャパン製)
オーブン温度 :120℃
トランスファーライン温度:125℃
ニードル温度:125℃
保温時間:60分
サイクルタイム:65分
加圧時間:2.5分
注入時間:0.08分
キャリアーガス:He
GC :TRACE GC Ultra(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
MS:ISQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
カラム :HP−5MS(内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、カラム長:60m)
昇温条件:(1)40℃:3分ホールド、(2)2℃/分で70℃まで昇温、(3)5℃/分で150℃まで昇温、(4)10℃/分で300℃まで昇温後1分ホールド。
Inlet条件
温度:200℃
圧力:150kPa
Split flow:10mL
Split ratio:7
また、本発明の荷電制御剤の比表面積は、3.0m2/g以上、30.0m2/g以下、好ましくは5.0m2/g以上、25.0m2/g以下、より好ましくは10.0m2/g以上、20.0m2/g以下であることが好ましい。荷電制御剤の比表面積がこの範囲である場合に、トナーの画質改良効果が最も高くなる。
本発明における、荷電制御剤の比表面積は、細孔分布測定装置Tristar3000(島津製作所社製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させるガス吸着法により測定したものである。測定の概略は、島津製作所社発行の操作マニュアルに記載されており、以下の通りである。測定前には、試料管にサンプル0.3乃至0.5gを入れ、23℃で24時間真空引きを行う。真空引き終了後サンプル重量を精秤し、サンプルを得た。得られたサンプルを上記細孔分布測定装置を用いて、温度77KにおけるN2分子の吸・脱着等温線を得た。得られた、吸・脱着等温線より、比表面積を算出した。
本発明では、トナーは重量平均粒径(D4)が4.0μm以上12.0μm以下、好ましくは5.0μm以上10.0μm以下であることを特徴としている。トナーの粒径がこの範囲である時に、高い画像濃度でカブリが少なく、画質に優れたトナーを得ることができる。
トナーの重量平均粒径(D4)が4.0μm未満の場合、カブリが悪化しやすい。12.0μmより大きい場合、画像濃度が低くなったり、画質が悪化したりする場合がある。
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
本発明に使用する荷電制御剤であるモノアゾ金属化合物をトナーに含有させる方法としては、以下のものがある。結着樹脂に着色剤等とともに添加し、混練し、粉砕する方法(粉砕トナー)、又は重合性の単量体モノマーにモノアゾ金属化合物を添加し、重合せしめてトナーを得る方法(重合トナー)のように、予めトナー粒子の内部に添加(内添)する方法;予めトナー粒子を製造し、トナー粒子の表面に添加(外添)する方法。
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。中でも好ましく用いられる樹脂として、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、または両者が一部反応した、ハイブリッド樹脂。
本発明にかかる結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂或いは上記ハイブリッド樹脂のポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては以下の化合物が挙げられる。本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来するユニットを意味する。
上記ポリエステルユニットを構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いる事ができる。
ポリエステルユニットを構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;炭素数1乃至50のアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル。
一方、ポリエステルユニットを構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:および式(2)で示されるジオール類。
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0乃至10である。)
本発明で使用される、ポリエステルユニットの構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物以外に、3価以上の多価カルボン酸又はその無水物及び/または3価以上の多価アルコールを構成成分として含有してもよい。
3価以上の多価カルボン酸又はその無水物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上の多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
本発明において、ポリエステルユニットの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物を仕込み、エステル化反応またはエステル交換反応、および縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステルユニットの重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。特に、本発明における結着樹脂は、チタン系触媒の存在下で、縮重合される事により得られたポリエステルユニットを含有することが好ましい。
チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C3H7O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4H10O2N)2(C3H7O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C5H11O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C2H5O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(OHC8H16O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C18H37O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)1(C3H7O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6H14O3N)3(C3H7O)1〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましい。
この他のチタン触媒の具体例としては、テトラ−n−ブチルチタネート〔Ti(C4H9O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C3H7O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C18H37O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C14H29O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)2(OHC8H16O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C14H29O)2(C8H17O)2〕等で挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましい。これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができる。また、チタン化合物は、芳香族カルボン酸チタン化合物を含むことが、より好ましい。芳香族カルボン酸チタン化合物は、芳香族カルボン酸とチタンアルコキシドとが反応することにより得られるものであることが好ましい。また、芳香族カルボン酸としては、2価以上の芳香族カルボン酸(即ち、2つ以上のカルボキシル基を有する芳香族カルボン酸)及び/又は芳香族オキシカルボン酸であることが好ましい。上記の2価以上の芳香族カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸類又はその無水物、トリメリット酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸類又はその無水物、エステル化物等が挙げられる。また、上記芳香族オキシカルボン酸としては、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシカルボン酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等が挙げられる。これらの中でも、芳香族カルボン酸としては2価以上のカルボン酸を用いることがより好ましく、特にイソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましい。
本発明にかかる結着樹脂に用いられるビニル系樹脂あるいはハイブリッド樹脂中のビニル系共重合ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、少なくともスチレンが用いられていることが好ましい。スチレンは分子構造中の芳香環の占める割合が大きい為、耐久安定性がより有利となる。スチレンの含有量は、ビニル系モノマー中、70mol%以上が好ましく、85mol%以上がより好ましい。
スチレン以外のビニル系共重合ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン誘導体が挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、ビニル系共重合ユニットを構成するモノマーとしては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
ビニル系共重合ユニットには、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン系不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また、上記ビニル系共重合ユニットは、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーには、例えば、芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤等が挙げられる。
上記芳香族ジビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる
上記アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
上記エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
上記芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
上記多官能の架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
上記ビニル系共重合ユニットは、重合開始剤を用いて製造された樹脂であっても良い。これらの重合開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05質量部以上10質量部以下で用いるのが好ましい。
このような重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
上述のように、ハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットが化学的に結合した樹脂である。
そのため、両樹脂のモノマーのいずれとも反応しうる化合物(以下「両反応性化合物」という)を用いて重合を行うことが好ましい。このような両反応性化合物としては、前記の縮重合系樹脂のモノマー及び付加重合系樹脂のモノマー中の、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びフマル酸ジメチル等の化合物が挙げられる。これらのうち、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましく用いられる。
ハイブリッド樹脂を得る方法としては、ポリエステルユニットの原料モノマーとビニル系共重合ユニットの原料モノマーを同時に、もしくは順次反応させることにより得ることができる。例えば、ビニル系共重合体モノマーを付加重合反応させた後、ポリエステルユニットの原料モノマーを縮重合反応させた場合は、分子量コントロールが容易となる。
ハイブリッド樹脂において、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットの混合比(質量比)は50/50乃至90/10であることが分子レベルでの架橋構造の制御の観点で好ましく、50/50乃至80/20がより好ましい。ポリエステルユニットを50質量%以上含有する事で低温定着性が良好となり、またビニル系共重合ユニットが10質量%以上含有する事で帯電安定性が良好となる。
また、上記のような結着樹脂を単独で使用してもよいが、軟化点の異なる2種類の高軟化点樹脂(H)と低軟化点樹脂(L)とを任意の範囲で混合して使用しても良い。高軟化点樹脂(H)は、軟化点が120℃以上170℃以下であることが好ましい。また、低軟化点樹脂(L)は軟化点が70℃以上120℃未満であることが好ましい。
このような系では、トナーの分子量分布の設計を比較的容易に行うことができ、幅広い定着領域を持たせることができるので好ましい。特に、低温定着性、現像性、および材料分散性とのバランスの観点から、高軟化点樹脂(H)としてはハイブリッド樹脂、低軟化点樹脂(L)としてはポリエステル樹脂が好ましい。
結着樹脂1種類を単独で使用する場合、軟化点Tmは95℃以上170℃以下が好ましい。さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。Tmが上記の範囲内であれば、耐高温オフセット性と低温定着性のバランスが良好となる。
なお、軟化点は、以下のようにして測定される。樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度Tmである。
測定試料は、約1.0gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、保存安定性の観点から45℃以上であることが好ましい。また、低温定着性の観点から、Tgは75℃以下であることが好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。
トナー用結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて、常温常湿下で測定する。測定試料として、結着樹脂約3mgを精密に秤量したものを用いる。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。測定温度範囲を30℃以上200℃以下とし、一旦、昇温速度10℃/minで30℃から200℃まで昇温した後、降温速度10℃/minで200℃から30℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温させる。2回目の昇温過程で得られるDSC曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度Tgとする。
本発明のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性1成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、およびこれらの混合物が挙げられる。
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独或いは2以上のものを併用して用いる。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独或いは2以上のものを併用して用いる。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられる。これらのものを単独或いは2以上のものを併用して用いる。
トナーに離型性を与えるために、トナーは離型剤(ワックス)を含有することが好ましい。ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。必要に応じて一種または二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。例としては次のものが挙げられる。
酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;プラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、以下のものが挙げられる。アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低気圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したワックス。
脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、以下のものが挙げられる。金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンの如きアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素。具体的には、以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業株式会社);ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学株式会社);サゾール H1、H2、C80、C105、C77(サゾール社);HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精蝋株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社);木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODA)。
離型剤を添加するタイミングは、粉砕法でトナーを作製する場合においては、溶融混練時に添加しても良いが、トナー用樹脂の製造時であっても良い。また、これらの離型剤は単独で使用しても併用しても良い。離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
本発明のトナーは、荷電制御剤として、上記モノアゾ金属化合物以外に、既知の他の荷電制御剤と併用することができる。他の荷電制御剤としては、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。本発明に用いられる荷電制御剤と他の荷電制御剤とを併用する場合、他の荷電制御剤をトナー用樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下使用することが好ましい。
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独あるいは複数を併用して用いることができる。
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉末をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉末は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることがより好ましい。シリカ微粉末のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉末の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
シリカ微粉末は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物の如き処理剤で、或いは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
更に本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。このような外部添加剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられ、中でもチタン酸ストロンチウム粉末が好ましい。
トナーを製造する方法としては、以下の方法を用いることができる。結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、必要に応じてワックス、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により充分混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により混合し、トナーを得ることができる。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例における「部」は、特に断りが無い限り、質量部を表す。実施例12、13および14は参考例である。
<結着樹脂の製造例>
・テレフタル酸 18部
・イソフタル酸 3部
・無水トリメリット酸 7部
・下記式(I−1)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基でx+y=2.2) 70部
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5部を添加し、240℃で縮合重合して、架橋ポリエステル樹脂(Tg=59℃、軟化点=131℃、メインピーク分子量=7,500、テトラヒドロフラン不溶分=14質量%)を得た。これを本発明のトナー用の結着樹脂1とした。
<荷電制御剤の製造例1>
水580部及び35%塩酸84部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの57.4部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃以上、5℃以下になるように維持し、水50.7部に溶解させた亜硝酸ナトリウム28.2部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−ピラゾロンの101部を水475部、炭酸ナトリウム95部、及びn−ブタノール840部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃以上22℃以下で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水226部、サリチル酸29部、n−ブタノール823.7部、及び15%炭酸ナトリウム242.4部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、38%塩化第二鉄水溶液89.6部を添加し、液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行い、反応物を濾過した。この濾過物を水1000部で洗浄した。温度60℃で24時間真空乾燥し、モノアゾ金属化合物98.8部を得た。これを荷電制御剤1とする。
荷電制御剤1の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤1の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が5.5μm、4.0μm以上の粒子の割合が73%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、3230mJであった。さらに、荷電制御剤1をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は560μS/cmであった。
<荷電制御剤の製造例2>
荷電制御剤の製造例1で得られた荷電制御剤1を、ジェット気流を用いたジェット気流式衝突式気流粉砕機で粉砕した。
得られた粉砕物を分級機により分級して粒度分布を調整したモノアゾ金属化合物を得た。このモノアゾ金属化合物100部を水1000部で洗浄する作業を3回繰り返し、60℃で24時間真空乾燥させた。得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸n−ブチル0.003部を添加混合し、荷電制御剤2を得た。
荷電制御剤2の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤2の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.3μm、4.0μm以上の粒子の割合が5%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは240mJであった。さらに、荷電制御剤2をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は17μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤2に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸n−ブチルを22ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例3>
荷電制御剤の製造例1で得られた荷電制御剤1を80部、ジメチルスルホキシド320部に添加し溶解させた。そこに、消泡剤KF995(環状ジメチルシリコーン)5部と水5000部の混合溶液を滴下し、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄する作業を3回繰り返し、60℃で24時間真空乾燥させ、分級した。得られたモノアゾ金属化合物100質量部に、酢酸n−ブチル0.002質量部を添加混合し、荷電制御剤3を得た。
荷電制御剤3の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤3の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.1μm、4.0μm以上の粒子の割合が6%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは690mJであった。さらに、荷電制御剤3をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は19μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤3に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸n−ブチルを14ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例4>
荷電制御剤の製造例3の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄する作業を3回繰り返し、60℃で24時間真空乾燥させ、分級した。得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸n−ブチル0.0002部を添加混合し、荷電制御剤4を得た。
荷電制御剤4の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤4の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が0.5μm、4.0μm以上の粒子の割合が2%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは110mJであった。さらに、荷電制御剤4をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は27μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤4に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸n−ブチルを1.1ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例5>
荷電制御剤の製造例3の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄する作業を2回繰り返し、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級した。得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸ブチル0.01部を添加混合し、荷電制御剤5を得た。
荷電制御剤5の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤5の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.0μm、4.0μm以上の粒子の割合が15%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは970mJであった。さらに、荷電制御剤5をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は44μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤5に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸ブチルを53ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例6>
荷電制御剤の製造例3の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄する作業を2回繰り返し、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級した。得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸プロピル0.1部を添加混合し、荷電制御剤6を得た。
荷電制御剤6の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤6の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは730mJであった。さらに、荷電制御剤6をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は63μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤6に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸プロピルを374ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例7>
荷電制御剤の製造例6で得られたモノアゾ金属化合物100部に、酢酸エチル0.4部を添加混合する以外は同様にして、荷電制御剤7を得た。
荷電制御剤7の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤7の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは740mJであった。さらに、荷電制御剤7をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は95μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤7に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エチルを988ppm含有していた。
<荷電制御剤の製造例8>
荷電制御剤の製造例6で得られたモノアゾ金属化合物を、水1000部で洗浄する作業を1回行い、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級し、荷電制御剤8を得た。
荷電制御剤8の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤8の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは720mJであった。さらに、荷電制御剤8をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は197μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤8に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例9>
荷電制御剤の製造例6で得られたモノアゾ金属化合物を、水500部で洗浄する作業を1回行い、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級し、荷電制御剤9を得た。
荷電制御剤9の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤9の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは770mJであった。さらに、荷電制御剤9をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は291μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤9に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例10>
荷電制御剤の製造例6で得られたモノアゾ金属化合物を、水300部で洗浄する作業を1回行い、温度60℃で24時間真空乾燥し、分級し、荷電制御剤10を得た。
荷電制御剤10の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(4)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤10の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.6μm、4.0μm以上の粒子の割合が11%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eは710mJであった。さらに、荷電制御剤10をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は330μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤10に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例11>
水580部及び35%塩酸84部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの57.4部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃以上、5℃以下になるように維持し、水50.7部に溶解させた亜硝酸ナトリウム28.2部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンの70部を水475部、炭酸ナトリウム95部、及びn−ブタノール840部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃以上、22℃以下で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水226部、サリチル酸29部、n−ブタノール823.7部、及び15%炭酸ナトリウム242.4部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、38%塩化第二鉄水溶液89.6部を添加し、液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行い、反応物を濾過した。この濾過物を水1000部で洗浄する作業を1回行った。温度60℃で24時間真空乾燥し、モノアゾ金属化合物70.1部を得た。得られたモノアゾ金属化合物を荷電制御剤11とする。
荷電制御剤11の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤11の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が0.4μm、4.0μm以上の粒子の割合が33%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、3810mJであった。さらに、荷電制御剤11をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は1060μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤11に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例12>
荷電制御剤の製造例11で得られた荷電制御剤を80部、ジメチルスルホキシド320部に添加し溶解させた。そこに、消泡剤KF995(環状ジメチルシリコーン)5部と水5000部の混合溶液を滴下し、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水1000部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤12を得た。
荷電制御剤12の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤12の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が1.8μm、4.0μm以上の粒子の割合が14%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、820mJであった。さらに、荷電制御剤12をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は482μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤12に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例13>
荷電制御剤の製造例12の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水500部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤13を得た。
荷電制御剤13の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤13の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.4μm、4.0μm以上の粒子の割合が15%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、980mJであった。さらに、荷電制御剤13をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は859μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤13に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例14>
荷電制御剤の製造例12の、消泡剤と水の混合溶液の滴下速度を変更すること以外は同様の操作を行い、モノアゾ金属化合物を析出させた。滴下終了後、得られた析出物を水500部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤14を得た。
荷電制御剤14の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤14の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.9μm、4.0μm以上の粒子の割合が19%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、1460mJであった。さらに、荷電制御剤14をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は911μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤14に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例15>
荷電制御剤11を分級して、粗粉粒子、微粉粒子を除去して粒度分布を調整し、目的化合物である荷電制御剤15を得た。
荷電制御剤15の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(5)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤15の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.9μm、4.0μm以上の粒子の割合が19%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、1880mJであった。さらに、荷電制御剤15をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は1060μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤15に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<荷電制御剤の製造例16>
水580部及び35%塩酸84部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの57.4部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃以上、5℃以下になるように維持し、水50.7部に溶解させた亜硝酸ナトリウム28.2部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンの70部を水475部、炭酸ナトリウム95部、及びn−ブタノール840部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃以上、22℃以下で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水226部、サリチル酸29部、n−ブタノール823.7部、及び15%炭酸ナトリウム242.4部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、クロムサリチル酸ナトリウム250部を添加し、液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行い、反応物を濾過した。この濾過物を水1000部で洗浄する作業を1回行った。温度60℃で24時間真空乾燥し、モノアゾ金属化合物68.5部を得た。
このモノアゾ金属化合物を分級して、粗粉粒子、微粉粒子を除去して粒度分布を調整し、目的化合物である荷電制御剤16を得た。
荷電制御剤16の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(6)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤16の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が3.0μm、4.0μm以上の粒子の割合が20%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、1950mJであった。さらに、荷電制御剤16をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は1154μS/cmであった。
<荷電制御剤の製造例17>
荷電制御剤の製造例1で得られた荷電制御剤1を80部、ジメチルスルホキシド320部に添加し、90℃で溶解させた。そこに、水3000部を滴下した後、温度を徐々に室温まで低下させてモノアゾ金属化合物を析出させた。得られた析出物を水1000部で洗浄した後、温度60℃で24時間真空乾燥し、目的化合物である荷電制御剤17を得た。
荷電制御剤17の構造を、赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより同定したところ、式(3)の化合物であることを確認した。
荷電制御剤17の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が2.8μm、4.0μm以上の粒子の割合が14%であった。また、回転トルクと垂直荷重の総和Eを測定したところ、2640mJであった。さらに、荷電制御剤17をイオン交換水に1質量%分散させた時の電気伝導度は360μS/cmであった。また、ヘッドスペース法により荷電制御剤17に含まれる酢酸エステルの測定をしたところ、酢酸エステルは含有していなかった。
<実施例1>
・トナー用結着樹脂1:100部
・磁性酸化鉄粒子:70部
(平均粒径0.20μm、Hc=11.5kA/m、σs=85Am2/kg、σr=16Am2/kg)
・フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製、C105、融点105℃):4部
・荷電制御剤2:1部
上記材料をヘンシェルミキサーFM−10C(回転数1500rpm、混合時間1分間)で前混合した。この時、ヘンシェルミキサー内での荷電制御剤の均一混合性を評価する為、ヘンシェルミキサーの中央付近、側壁付近から混合物をサンプリングした。このサンプルに含まれる荷電制御剤の含有量を分析し、中央付近に含まれる荷電制御剤量と、側壁付近に含まれる荷電制御剤量の比で、荷電制御剤の均一混合性を評価した。
前記混合物をPCM−30(池貝鉄工所社製)を用い、混練軸の回転数200rpmで、吐出口における溶融物温度が150℃になるように温度を設定し、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.9μmのトナー粒子を得た。
次に、トナー粒子100質量部に対し、疎水性シリカ微粉体(BET比表面積150 m2/g、シリカ微粉体100部に対しヘキサメチルジシラザン30部及びジメチルシリコンオイル10部で疎水化処理をしたもの)1.0部とチタン酸ストロンチウム微粉体(D50:1.0μm)3.0部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
得られたトナー1に対して下記の評価を実施した。結果を表2に示す。
[荷電制御剤の均一混合性]
トナー用原材料を前混合後の、ヘンシェルミキサーの中央付近、側壁付近からサンプリングした混合物に含まれる荷電制御剤量を蛍光X線装置にて定量し、中央付近の荷電制御剤含有量/側壁付近の荷電制御剤含有量(以下C/Sと表す)で評価した。C/Sは1.0に近いほど、均一混合性に優れていることを表している。
A:C/Sが1.0±0.05の範囲内。
B:C/Sが1.0±0.05の範囲を超え、1.00±0.10の範囲内。
C:C/Sが1.0±0.10の範囲を超え、1.00±0.15の範囲内。
D:C/Sが1.0±0.15の範囲を超え、1.0±0.20の範囲内。
E:C/Sが1.0±0.20の範囲を超える。
[現像性の評価]
市販のデジタル複写機imageRUNNER iR 3245(キヤノン(株)社製)を用い、常温常湿環境(23℃−60%RH)で印字比率5%のテストチャートを用いて1万枚の連続プリントを行った。1万枚プリント後の画像濃度を測定した。なお、画像濃度は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm丸のベタ黒画像の反射濃度を測定することにより測定した。
[カブリ値の評価]
現像性の評価において、1万枚プリント後の画像の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr−Dsをカブリ値とした。白地部反射濃度の測定には、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いた。数値が小さいほどカブリ抑制が良いことを示す。
[尾引きの評価]
高温高湿環境(30℃‐80%RH)において、高温高湿環境48時間以上放置して十分に吸湿した紙を用いてプリントを行った。画像は横線チャートを用い、画像上の横線から発生した尾引きを数えて下記判断基準により判定した。
A:尾引き発生なし。
B:横線1ラインあたり3個以下の尾引き発生。
C:横線1ラインあたり5個以下の尾引き発生。
D:横線1ラインあたり10個以下の尾引き発生。
E:横線1ラインあたり11個以上の尾引き発生。
[静電オフセットの評価]
高温高湿環境(30℃‐80%RH)において、高温高湿環境48時間以上放置して十分に吸湿した紙を用いてプリントを行った。画像は孤立1ドットのハーフトーンチャートを用い、画像後端に発生した静電オフセットを下記判断基準により判定した。
A:発生なし。
B:目視でわずかに確認できるレベル。
C:目視で確認できるが軽微なレベル。
D:発生がはっきりと確認できる。
E:画像全域で発生している。
<実施例2乃至14>
表2に記載のように、荷電制御剤を変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー2乃至14を作製した。
得られたトナーに対して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表3に示す。
<比較例1乃至3>
表1に記載のように、荷電制御剤を変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー15乃至17を作製した。
得られたトナーに対して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表3に示す。
実施例1に関しては、何れも良好な結果が得られた。
実施例2、3、4に関しては、何れも良好な結果が得られたが、実施例1より少し現像性が低く、カブリが多めであった。
実施例5に関しては、酢酸エステルが酢酸プロピルであり、含有量が少し多めであることから、静電オフセットが少し悪目であった。
実施例6に関しては、酢酸エステルが酢酸エチルであり、含有量が少し多めであることから、静電オフセットが少し悪目であった。
実施例7、8に関しては、酢酸エステルを含有せず、電気伝導度が少し高いことから、尾引き、静電オフセットが少し悪目であった。
実施例9に関しては、酢酸エステルを含有せず、電気伝導度が高いことから、尾引きが悪目であった。
実施例10に関しては、荷電制御剤の構造が異なる為、画像濃度やカブリ、尾引き、静電オフセットが悪化した。
実施例11に関しては、荷電制御剤の構造が異なり、平均粒径も少し大きい為、荷電制御剤の均一混合性が少し悪化し、画像濃度やカブリ、尾引き、静電オフセットが悪化した。
実施例12に関しては、荷電制御剤の構造が異なり、平均粒径も大きく、回転トルクと垂直荷重の総和Eも少し大きいことから、荷電制御剤の均一混合性が悪化し、画像濃度やカブリ、尾引き、静電オフセットが悪化した。
実施例13に関しては、荷電制御剤の構造が異なり、平均粒径も大きく、回転トルクと垂直荷重の総和Eも大きいことから、荷電制御剤の均一混合性が悪化し、画像濃度やカブリ、尾引き、静電オフセットが悪化した。
実施例14に関しては、荷電制御剤の中心金属が異なり、平均粒径も大きく、回転トルクと垂直荷重の総和Eも大きいことから、荷電制御剤の均一混合性が悪化し、画像濃度やカブリ、尾引き、静電オフセットが悪化した。
比較例1に関しては、荷電制御剤の構造は実施例1と同じだが、体積平均粒径が大きく、4.0μm以上の粒子の割合が多く、回転トルクと垂直荷重の総和Eが大きいことから、本発明の効果が得られなかった。
比較例2に関しては、荷電制御剤の構造は実施例1と同じだが、おそらく結晶構造の違いから、回転トルクと垂直荷重の総和Eが大きくなっており、本発明の効果が得られなかった。
比較例3に関しては、荷電制御剤の構造は実施例10と同じだが、体積平均粒径が小さすぎ、4.0μm以上の粒子の割合が多く、荷電制御剤の粒度分布がブロードであり、回転トルクと垂直荷重の総和Eも大きいことから、本発明の効果が得られなかった。