本発明は、荷電制御剤、結晶性樹脂を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであって、
入力補償型示差走査熱量計を用いた該トナーの吸熱量測定において、80℃で5分保持した後、750℃/minで60℃まで冷却し、その後60℃で保持した際の発熱ピークの全面積の50%が生じるまでの時間t1/2が0.03分以上0.32分以下であり、
該荷電制御剤が下記式〔1〕で表される化合物であることを特徴とするものである。
(式中、A
1、A
2及びA
3は、相互に独立して、水素原子、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。B
1は水素原子又はアルキル基を示す。Mは、Fe原子、Cr原子、又は、Al原子を示し、X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、又は、これらの混合イオンを示す。)
本発明者らの検討によれば、上記トナー構成により、従来よりも高速化されたLBPにおいて、低温定着化した上で排紙接着を抑制したトナーを提供することが可能となる。以下にその概要を説明する。
排紙接着は先述の様に、定着時に熱溶融したトナーが印刷後も出力画像の束の中で高温状態で保持され、印刷面と直上の紙との間で粘度の低い状態が長時間続くために発生する。一般的に結晶性樹脂が含有されたトナーは低温定着性は良好であるものの、トナーの粘度が低下する方向であり、排紙接着は悪化する傾向であった。
これに対する対策として、結晶性樹脂ドメインの結晶化速度を向上させるアプローチが従来行われてきた。結晶性樹脂の再結晶化速度が速いほど、トナーの粘度も急速に上昇し硬化するため、排紙接着が抑制されると考えられる。
結晶性樹脂ドメインの結晶化速度を向上させる手法は様々なものが考えられるが、方向性としては結晶性樹脂ドメインの結晶化度を向上させるためのアプローチと同じものであり、従来広く用いられている結晶核剤の使用が有効であると考えられる。
結晶核剤として、比較的マクロなスケールのものとしては樹脂微粒子やシリカ微粒子などの微小粒子が挙げられ、また比較的ミクロなスケール、特に分子サイズのものとしては長鎖脂肪酸などが挙げられる。
これらの内、樹脂微粒子やシリカ微粒子などの比較的マクロなスケールの微粒子核剤は結晶化速度を向上させることは可能であるものの、核剤の単位質量あたりの生成される結晶核数が少ないため、単位質量当たりの結晶化速度向上の効果は少なかった。そのため排紙接着改善の手法としては十分ではなかった。
また核剤そのものが巨大であるため、その周囲に形成される結晶性樹脂ドメインも巨大となり、トナー中の結晶性樹脂ドメインの分散性が低下し、熱定着時の可塑効果が十分に発揮されず、低温定着性が低下する等の問題も生じる。
それに対し、比較的ミクロなスケールの結晶核剤である長鎖脂肪酸などは分子レベルで核剤作用を発揮するため、先述の微粒子核剤よりも効率的に結晶化速度を向上させることが可能であり、またドメイン径も小さくなる傾向があり好ましい。
しかしながら、長鎖脂肪酸は核剤同士の親和性が高く、核剤分子のトナー材料中での拡散性という観点からはまだ改良の余地があり、排紙接着の改善手法としては不十分であった。
そこで、本発明者らは比較的ミクロなスケール、つまりは分子レベルで核剤として作用し、更に核剤同士の親和性は低く、高い分散性が期待できる材料を探索した結果、ある種の多環式化合物の結晶核剤を配位子とする錯体が有効であることを見出した。
以下に本発明を具体的に説明する。
結晶化速度を向上させ、更に高い分散性が期待される結晶核剤に必要な要件としては、先述の様に(1)結晶性樹脂との高い親和性、及び(2)核剤単体としての高い分散性である。
しかし一般に結晶性樹脂との親和性が高い、つまりは結晶性樹脂と類似の構造を有する核剤は、核剤単体同士の親和性も高く、上記二つの要件を同時に満たしうるものではなかった。
そこで本発明者らは多環式化合物の結晶核剤に着目した。一般的に長鎖脂肪酸系の核剤は、その分子構造が結晶性樹脂の構成モノマーの分子構造と類似性が高いため、結晶性樹脂との親和性が高くなっている。これに対し、多環式化合物系の核剤は、分子構造自体は結晶性樹脂の構成モノマーとの類似性は低いものの、結晶性樹脂分子が配列して作るラメラ等の層状構造と、共晶を形成する程の高い親和性を持つ分子層状構造を形成することができる。このため核剤としての(1)の条件を十分に満たしている。
更に多環式化合物は長鎖脂肪酸に比べ分子構造が複雑で立体障害性が高く、分子層状構造を形成しても、配列方向以外には同種の分子でも立体障害により反発し易い。そのため核剤同士の親和性という点では比較的低く、トナー材料中での分散性は高くなるので(2)の観点からも好適である。
更に本発明者らの検討の結果、多環式化合物を配位子とする化合物を核剤として用いると、分子層状構造を形成しやすく、立体障害に由来する分散性を任意に制御しやすいことを見出した。
これにより結晶性樹脂との親和性と核剤単体としての分散性を、従来よりも飛躍的に高いレベルで両立し、結晶性樹脂の結晶化速度を大幅に向上させることが可能となる。
具体的なトナーの構成としては、結晶核剤としてのアゾ金属化合物、結晶性樹脂を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであって、入力補償型示差走査熱量計を用いたトナーの吸熱量測定において、80℃で5分保持した後、750℃/minで60℃まで冷却し、その後60℃で保持した際の発熱ピークの面積の50%が生じるまでの時間t1/2が0.03分以上0.32分以下であり、該アゾ金属化合物が下記式〔1〕で表される化合物であると、従来よりも高速化されたLBPにおいて、低温定着化した上で排紙接着を抑制することが可能となる。
(式中、A
1、A
2及びA
3は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。B
1は水素原子又はアルキル基を示す。Mは、Fe原子、Cr原子、又は、Al原子を示し、X
+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、又は、これらの混合イオンを示す。)
本発明者らの検討の結果、式(1)で表されるようなピラゾロン骨格を有するアゾ金属化合物が結晶核剤としての機能と、分子の分散性の観点から好ましいことが明らかとなった。
t1/2が0.32分より大きい場合、結晶性樹脂ドメインの定着後の冷結晶化が迅速に行われず、排紙接着に関して劣るようになる為に好ましくない。また結晶性樹脂ドメインの結晶性が低下し、熱定着時のトナーの溶融が過剰となるためホットフセットが生じやすくなる為に好ましくない。またt1/2が0.03分より小さい場合、結晶性樹脂の結晶性が過剰となる為に、熱定着時の結晶性樹脂ドメインの溶融速度が遅くなり、低温定着性が低下する為に好ましくない。
t1/2が0.14分以上0.28分以下であると、低温定着性を良好に保ちつつ、結晶化速度を向上し、排紙接着を良化することが可能となるため特に好ましい。
式〔1〕で表されるアゾ金属化合物は、置換基として、塩素原子を有することが好ましい。塩素原子を有するようなアゾ金属化合物は、結晶性樹脂と共晶を形成しやすく、結晶性樹脂の結晶化を促進する。より好ましくは、下記式〔2〕で表される化合物である。下記式〔2〕で表される化合物であると、錯体分子の原子サイズが大きく高い負電荷を持つ塩素原子で包囲する形になるため、化合物間で高い立体障害による反発力と静電反発力が生じる。そのためトナーの製造時や熱定着時などの樹脂が溶融した状態で化合物の分散性が向上し、結晶性樹脂ドメインの分散性と結晶化速度が向上する為に好ましい。
また該トナー一粒子の断面に対して、走査型透過電子顕微鏡STEM−EDS(Energy−Dispersive−Spectroscopy)を用いて、Cl元素マッピングを行った際、式〔2〕の化合物に由来する塩素ドメインが観察されることが好ましい。尚、塩素ドメインとは、塩素元素の密度が周辺より高い領域であって、ドメインとして認識される領域のことである。観察領域に対する全ドメインの合計割合が0.02面積%以上2.00面積%以下であることが好ましい。また、各ドメインの平均面積は0.001μm2以上0.1μm2以下であり、各ドメインの変動係数が0.10以上0.58以下であることが好ましい。この場合には、結晶性樹脂ドメインの分散が良化し、排紙接着がより良化する為に好ましい。
式〔2〕で表される構造を有する化合物は、結晶核剤として作用し、結晶性樹脂と共晶を形成するものであるため、塩素元素マッピングで観測される塩素ドメインは結晶性樹脂のドメインに等しいと考えられる。
結晶性樹脂は一般的に溶融時の粘性や付着性が高くなるため、ドメイン径が大きくなると高い付着力を発揮し、排紙接着が生じやすくなる。
また熱定着時においても結晶性樹脂ドメインが分散し、効率よくトナー樹脂全体を可塑し軟化させることができるため好ましい。さらに耐ホットオフセット性の観点からも、変動係数が上記範囲内であると、結晶性樹脂ドメインの分散が細かくなり過ぎず、熱定着時のトナーの可塑が適切なレベルで行われる為に、トナー樹脂の過剰な溶融が抑制されるため好ましい。
該アゾ金属化合物の含有量Aと該結晶性樹脂の含有量Bの比率A/Bが0.10以上10.00以下であると、結晶化速度が十分に向上する為に好ましい。特にA/Bが0.10以上1.33以下であると、結晶核剤が過剰となり熱定着時の結晶性樹脂の溶融を阻害する等の弊害を抑制した上で、核剤である荷電制御剤と結晶性樹脂の分散状態を最適化し、結晶化速度を向上させることが可能であり好ましい。
該トナーが、非晶性ポリエステル系樹脂組成物を含有しており、該非晶性ポリエステル系樹脂組成物が、(i)炭素数の平均値が27以上50以下の脂肪族炭化水素、(ii)ポリエステル樹脂の末端に存在する炭素数の平均値が27以上50以下の長鎖アルキルモノアルコールに由来するユニット、及び(iii)該非晶性ポリエステル樹脂の末端に存在する炭素数の平均値が27以上50以下の長鎖アルキルモノカルボン酸に由来するユニットのいずれかを有することが、トナーの製造時、樹脂が溶融した状態で該アゾ金属化合物の分散性が良好となるため好ましい。上記の炭素数の平均値が上記範囲内であると、適度な結晶化と可塑化を促し、耐ホットオフセット性が良好となるために好ましい。
該長鎖アルキルモノアルコールに由来するユニットと結晶性樹脂のアルキル鎖部分とは構造的に極めて類似しており、核剤として作用する該アゾ金属化合物との間には同様に高い親和性が発揮される。そのため樹脂全体に存在する該長鎖アルキルモノアルコールに由来するユニットにより該アゾ金属化合物の分散性を向上させることが可能となる。
なお、非晶性ポリエステル樹脂において、長鎖アルキルモノアルコール/長鎖アルキルモノカルボン酸に由来するユニットは、樹脂中に散在しているため、通常、結晶性になることはないと考えられる。
該炭素数の平均値が27以上50以下の脂肪族炭化水素、該非晶性ポリエステル樹脂の末端に存在する炭素数の平均値が27以上50以下の長鎖アルキルモノアルコールに由来するユニット、及び該非晶性ポリエステル樹脂の末端に存在する炭素数の平均値が27以上50以下の長鎖アルキルモノカルボン酸に由来するユニットの添加量が、該非晶性ポリエステル系樹脂組成物の質量を基準として、2.5質量%以上15.0質量%以下であると低温定着阻害・ホットオフセット悪化などの弊害なく結晶性樹脂ドメインの分散を良化させることが可能である為に好ましい。
次に本発明のトナーに用いられる荷電制御剤について記載する。
本発明のトナーにおいて、結晶核剤として添加されるアゾ金属化合物は、荷電制御剤としての機能をも有しているため、その他の荷電制御剤を必ずしも用いなくてもよいが、既知の他の荷電制御剤を併用してもよい。
荷電制御剤としては、アゾ系鉄錯体又は錯塩、アゾ系クロム錯体又は錯塩、アゾ系マンガン錯体又は錯塩、アゾ系コバルト錯体又は錯塩、アゾ系ジルコニウム錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のクロム錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体の亜鉛錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のアルミ錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のジルコニウム錯体又は錯塩が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。
本発明に用いられるアゾ金属化合物と他の荷電制御剤とを併用する場合、他の荷電制御剤を結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下使用することが好ましい。
次に本発明のトナーに用いられる結晶性樹脂ついて記載する。
結晶性樹脂の一例としては、結晶性ポリエステルを例示できる。結晶性ポリエステルとしては、炭素数4以上20以下の脂肪族ジオールおよび多価カルボン酸を少なくとも原料として用いることが好ましい。さらに、前記脂肪族ジオールは直鎖型であるのが好ましい。直鎖型であることで、樹脂の結晶性を上げやすい。
結晶性ポリエステルを合成する際に用いることのできる脂肪族ジオールとしては、例えば以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。尚、これらのジオールは混合して用いることも可能である。1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールが挙げられる。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。前記二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、例えば以下のものを挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオールが挙げられる。
次に、結晶性ポリエステルを合成する際に用いることができる多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が好ましい。中でも脂肪族ジカルボン酸が好ましく、結晶性の観点から、特に直鎖型のジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。尚、これらの時カルボン酸は混合して用いることも可能である。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。これらのうち、セバシン酸、アジピン酸、1,10−デカンジカルボン酸あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば以下のものを挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。これらのうちテレフタル酸が、入手容易性、低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物も挙げられる。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量Mwが10000以上22000以下であると、結晶性ポリエステルの分散性が良好となり、トナーの低温定着性達成と、排紙接着を改善した上でホットオフセットなどの弊害を抑制できる為好ましい。
前記結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば直接重縮合、エステル交換法を、モノマーの種類によって使い分けて製造すればよい。
前記結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180℃以上230℃以下で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の低いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の低いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させることが好ましい。
前記結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、例えば以下のものを挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等のチタン触媒;ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド等のスズ触媒が挙げられる。
該結晶性樹脂は示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、降温時の発熱ピークの面積の90%以上が60℃以上80℃以下の範囲にあると、トナーの低温定着性が良好となり、ホットオフセットや排紙接着といった弊害も抑制されるため好ましい。
次に本発明のトナー粒子に用いられる結着樹脂について記載する。
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が一部反応したハイブリッド樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の組成は例えば以下の通りである。
アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェールA、芳香族ジオールとしては、下記式[3]で表わされるビスフェノール及びその誘導体、下記式[4]で示されるジオール類、が挙げられる。
酸成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物、またさらに炭素数6以上18以下のアルキル基またはアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物。3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンが挙げられる。
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。
ビニル系樹脂の組成は例えば以下の通りである。
ビニル系樹脂成分を生成する為のビニル系モノマーとしては、次の様なものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、の如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロールの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリルの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体。
さらに、以下のものが挙げられる。マレイン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸の如きカルボキシル基を有するモノマー。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレートの如きアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、ビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有してもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。芳香族ジビニル化合物(ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で緒ばれたジアクリレート化合物類;ポリエステル型ジアクリレート化合物類(日本化薬社製「MANDA」)。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下、さらに好ましくは0.03質量部以上5.00質量部以下用いることができる。
これらの架橋剤のうち、樹脂成分に低温定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
本発明において、ハイブリッド樹脂を用いる場合には、ビニル系樹脂及び/またはポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系樹脂と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物が挙げられる。ビニル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーの存在下で、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせて得る方法が好ましい。
本発明のトナーの樹脂がハイブリッド樹脂であると、結晶性ポリエステルドメインの分散性が良好となり好ましい。
また、本発明で用いられるポリエステル系樹脂組成物は、アルコール成分を含有する組成物(A)と酸成分を含有する組成物(B)との存在下、該アルコール成分と該酸成分とを反応させる工程を含む方法によって得られるポリエステル系樹脂組成物である。ここで、該組成物(A)及び該組成物(B)に関し、下記i)及びii)の規定:
i)該アルコール成分が、炭素数の平均値27以上50以下の長鎖アルキルモノアルコールを含み、該組成物(A)が炭素数の平均値27以上50以下の脂肪族炭化水素を含有する、
ii)該酸成分が、炭素数の平均値27以上50以下の長鎖アルキルモノカルボン酸を含み、該組成物(B)が炭素数の平均値27以上50以下の脂肪族炭化水素を含有する、
の少なくとも一方を満足することが好ましい。
また、該ポリエステル系樹脂組成物は、カルボキシル基を末端に有するポリエステル樹脂と、炭素数の平均値27以上50以下の長鎖アルキルモノアルコール及び炭素数の平均値27以上50以下の脂肪族炭化水素を含有する組成物(C)の存在下、ポリエステル樹脂の有する該カルボキシル基と該長鎖アルキルモノアルコールとを反応させる工程を含む方法によって得られるポリエステル系樹脂組成物であることが好ましい。
また、該ポリエステル系樹脂組成物は、水酸基を末端に有するポリエステル樹脂と、炭素数の平均値27以上50以下の長鎖アルキルモノカルボン酸及び炭素数の平均値27以上50以下の脂肪族炭化水素を含有する組成物(D)との存在下、ポリエステル樹脂の有する該水酸基と該長鎖アルキルモノカルボン酸とを反応させる工程を含む方法によって得られるポリエステル系樹脂組成物であることが好ましい。
長鎖アルキル成分として、長鎖アルキルモノアルコールを用いることで、変性率をより安定的に高め易くなる。そして、長鎖アルキル成分をポリエステル合成反応の初期から投入することで、効率的且つ均一に樹脂中へ長鎖アルキル成分を取り込むことができる為好ましい。
本発明のトナーは着色剤を含有しても良い。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック、グラフト化カーボン、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して用いることができ、更には固溶体の状態で用いることもできる。
本発明のトナーは磁性体を含有しても良い。尚、磁性体は、着色剤の役割を兼ねることが一般的である。
本発明において、トナー中に含まれる磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ビスマス、カルシウム、マンガン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金およびその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下、好ましくは0.06μm以上0.50μm以下のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し30質量部以上120質量部以下、特に好ましくは結着樹脂100質量部に対し40質量部以上110質量部以下である。
本発明に用いられる離型剤には次のようなものがある。例えばポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、ライスワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、炭素数30以上50以下の脂肪族アルコール(例えばトリアコンタノールなど)、炭素数30以上50以下の脂肪酸(例えばトリアコンタンカルボン酸など)及びこれらの混合物などが挙げられる。また、これらの離型剤を、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものなどがある。
離型剤の具体的な例としては、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12、HNP−51(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)が挙げられる。
本発明のトナーはトナーの流動性や帯電性を向上させるために小粒径(一次粒径の個数平均粒径が5乃至30nm程度)の流動性向上剤を添加することが好ましい。
流動性向上剤としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフウルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ;酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物が挙げられる。
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、以下のものを例示できる。AEROSIL(日本アエロジル社)130、200、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84、Ca−O−SiL(CABOT Co.社)M−5、MS−7、MS−75、HS−5、EH−5、Wacker HDK N 20(WACKER−CHEMIE GMBH社)V15、N20E、T30、T40、D−C Fine Silica(ダウコーニングCo.社)、Fransol(Fransil社)。
さらには、本発明に用いられる流動性向上剤としては、前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上300m2/g以下であることが好ましい。
本発明に係るトナー粒子の製造方法は、特に限定されず、例えば、粉砕法、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、分散重合法等の公知の製造方法を用いることができる。
懸濁重合法は、モノマー、重合開始剤、着色剤、離型剤等を、分散安定剤を含む水相中に撹拌しながら加えて油滴を形成させ、その後、昇温して重合反応を行わせることにより、トナー粒子を得る方法である。また、乳化重合凝集法は、ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用し、水相中で乳化分散した後、脱溶剤して得られた微粒子と、着色剤、離型剤(ワックス)等を水相中で分散させて形成した分散体とを凝集させ、加熱融着させることによりトナー粒子を製造する。
粉砕法では、
i)結着樹脂及び離型剤、及びその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により混合し、
ii)得られた混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練し、
iii)溶融混練物を冷却固化した後、粉砕し、
iv)得られる微粉砕物に対して分級を行う、
ことによってトナー粒子を得ることができる。
またトナー粒子の形状及び表面性の制御のために、粉砕あるいは分級後に、表面処理工程を有することが好ましい。
混合機としては、以下のものが挙げられる。FMミキサ(日本コークス工業株式会社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
表面改質装置としては、例えばファカルティー(ホソカワミクロン社製)、メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)が挙げられる。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
本発明に係る物性の測定方法に関して記載する。
<トナーのt1/2の測定方法>
t1/2はTA Instruments社製の入力補償型示差走査熱量測定装置DSC8500によって測定される。
サンプルの調製は、試料約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを使用する。
測定条件としては、80℃で5分間定温放置後、昇温速度750℃/minで60℃まで冷却した後60℃で保持する。その冷却の際発生する結晶性樹脂由来の発熱ピークが生じ始める点を始点とし、全発熱ピークの面積の50%が生じるまでの時間をt1/2とした。測定の概念図を図2に示す。
<トナー一粒子の断面中のCl元素マッピングで観測されるClドメインの面積、面積の変動係数、および面積割合の測定方法>
まず約1.0gのトナーを25℃の環境下で錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約40kNで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたトナーペレットを得る。
次に該トナーペレットをウルトラミクロトーム(商品名:LEICAEMUCT、ライカ社製)にて常法に従ってカッティングし250nm厚に薄片化した走査型透過電子顕微鏡STEM−EDS用トナー断面試料を得る。
該STEM−EDS用トナー断面試料の切断面を走査型透過電子顕微鏡で撮影し、10μm×10μmの視野中のEDS元素マッピングで塩素を検出、画像化し変動係数算出用画像を得た。
該変動係数算出用画像を画像解析ソフトImage−Pro Plus ver.5.0を使用して2値化処理を実施する。具体的にはツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2〜107と入力する。「処理」−2値化で自動2値化し、各塩素ドメインの面積を算出する。得られた各塩素ドメインの面積の標準偏差を平均面積で割ることで変動係数を得る。また、観察領域内のトナーの総断面積に対する塩素ドメインの総面積の割合を算出した。これらの解析を10視野について行い、それらの相加平均値をもって本発明で規定する各値とした。尚、上記装置、上記条件による測定では、塩素ドメインは自動的にドメインとして認識される。
<結晶性樹脂のMwの測定方法>
結晶性樹脂のMwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
まず40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製あるいは、昭和電工社製の分子量が100〜10000000程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせて使用するのが良い。
例えば、昭和電工社製のShoed GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguardcolumnの組み合わせを挙げることができる。
試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR、ゲルマン サイエンス ジャパン社製などが使用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
<トナー及び樹脂のTgの測定方法>
本発明におけるトナー及び結着樹脂のDSC曲線のガラス転移点(Tg)は示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲20乃至220℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度220℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温速度10℃/minで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度20乃至220℃の範囲におけるDSC曲線の吸熱ピークから、本発明で規定する物性を求める。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、トナー及び結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
<トナー及び樹脂のTmの測定方法>
結着樹脂の軟化点Tmは、以下のようにして測定される。樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点Tmとする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<アゾ金属化合物1の製造例>
水76.5部及び35%塩酸15.2部の混合溶液中に、4−クロロ−2−アミノフェノールの10部を加え、冷却下で撹拌した。氷冷し、溶液の温度が0℃〜5℃になるように維持し、水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を塩酸水溶液に滴下し、2時間撹拌しジアゾ化した。これにスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消失させた後、濾過を行ってジアゾ溶液とした。
次に、3−メチル−1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−ピラゾロンの12.0部を水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部の混合溶液に添加し溶解させた。そこに上記ジアゾ溶液を加え、温度20℃〜22℃で4時間撹拌し、カップリング反応を行った。その後、水92.8部、25%水酸化ナトリウム水溶液43.5部を加え撹拌洗浄し、下層の水層を分液除去した。
次に、水42.2部、サリチル酸5.9部、ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し撹拌した。さらに、38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム18.0部を加え、酢酸で反応液のpHを4.5に調整した。液温を温度30℃に昇温した後、8時間撹拌し錯体化反応を行った。撹拌停止後、静置して下部水層を分液した。更に水189.9部を加え撹拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過後、水253部でケーキを洗浄した。温度60℃で24時間真空乾燥の後、アゾ金属化合物1を得た。
<アゾ金属化合物2の製造例>
アゾ金属化合物1の製造例において、3−メチル−1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−ピラゾロンを3−メチル−1−(3−クロロフェニル)−5−ピラゾロンに変更した。それ以外は、アゾ金属化合物1の製造例と同様にして、アゾ金属化合物2を得た。
<結晶性ポリエステル1の製造例>
・1,12−ドデカンジオール 100.0部
・セバシン酸 100.0部
上記原料及びモノマー総量に対して、0.2質量%のジブチル錫オキシド1.0質量%を窒素導入管、脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、180℃で4時間反応させた後、10℃/1時間で210℃まで昇温、210℃で8時間保持した後8.3kPaにて60分反応させることにより、結晶性ポリエステル1を得た。得られた結晶性ポリエステル1の重量平均分子量Mwは16448であった。
また示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、降温時の発熱ピークの始点は68.1℃、終点は60.5℃、ピーク面積の60℃以上80℃以下の範囲に存在する割合は100%であった。
<結晶性ポリエステル2の製造例>
結晶性ポリエステル1の製造例中、8.3kPaでの反応時間を45分としたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造例と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。得られた結晶性ポリエステル2の重量平均分子量Mwは10133であった。
また示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、降温時の発熱ピークの始点は67.4℃、終点は60.4℃、ピーク面積の60℃以上80℃以下の範囲に存在する割合は100%であった。
<結晶性ポリエステル3の製造例>
結晶性ポリエステル1の製造例中、8.3kPaでの反応時間を70分としたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造例と同様にして、結晶性ポリエステル3を得た。得られた結晶性ポリエステル3の重量平均分子量Mwは21800であった。
また示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、降温時の発熱ピークの始点は68.3℃、終点は60.7℃、ピーク面積の60℃以上80℃以下の範囲に存在する割合は100%であった。
<結晶性ポリエステル4の製造例>
結晶性ポリエステル1の製造例中、8.3kPaでの反応時間を30分としたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造例と同様にして、結晶性ポリエステル4を得た。得られた結晶性ポリエステル4の重量平均分子量Mwは9021であった。
また示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、降温時の発熱ピークの始点は66.2℃、終点は60.2℃、ピーク面積の60℃以上80℃以下の範囲に存在する割合は100%であった。
<結晶性ポリエステル5の製造例>
結晶性ポリエステル1の製造例中、8.3kPaでの反応時間を75分としたこと以外は結晶性ポリエステル1の製造例と同様にして、結晶性ポリエステル5を得た。得られた結晶性ポリエステル5の重量平均分子量Mwは23560であった。
また示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、降温時の発熱ピークの始点は68.5℃、終点は60.9℃、ピーク面積の60℃以上80℃以下の範囲に存在する割合は100%であった。
<長鎖アルキルモノマー1の製造例>
平均炭素数35の脂肪族炭化水素1200gをガラス製の円筒型反応容器に入れ、硼酸38.5gを温度140℃で添加し、直ちに空気50容量%と窒素50容量%の酸素濃度約10容量%の混合ガスを毎分20リットルの割合で吹き込み、200℃で3.0時間反応させた後、反応液に温水を加え、95℃で2時間加水分解を行い、静置後上層の反応物を得た。反応物20部をn−ヘキサン100部に加え、未変性成分を溶解除去させ、長鎖アルキルモノマー1を得た。
<長鎖アルキルモノマー2の製造例>
長鎖アルキルモノマー1の製造例中、脂肪族炭化水素を平均炭素数48のものに変更した以外は長鎖アルキルモノマー1の製造例と同様にして、長鎖アルキルモノマー2を得た。
<長鎖アルキルモノマー3の製造例>
長鎖アルキルモノマー1の製造例中、脂肪族炭化水素を平均炭素数27のものに変更した以外は長鎖アルキルモノマー1の製造例と同様にして、長鎖アルキルモノマー3を得た。
<長鎖アルキルモノマー4の製造例>
長鎖アルキルモノマー1の製造例中、脂肪族炭化水素を平均炭素数55のものに変更した以外は長鎖アルキルモノマー1の製造例と同様にして、長鎖アルキルモノマー4を得た。
<長鎖アルキルモノマー5の製造例>
長鎖アルキルモノマー1の製造例中、脂肪族炭化水素を平均炭素数25のものに変更した以外は長鎖アルキルモノマー1の製造例と同様にして、長鎖アルキルモノマー5を得た。
<ハイブリッド樹脂1の製造例>
・ビスフェールAエチレンオキサイド付加物(2.0mol付加) 50.0部
・ビスフェールAプロピレンオキサイド付加物(2.3mol付加) 50.0部
・テレフタル酸 60.0部
・無水トリメリット酸 20.0部
・アクリル酸 10.0部
上記ポリエステルモノマーに加えて、長鎖アルキルモノマー1を樹脂全体に対して7.5質量%になるように添加した混合物70部を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で撹拌する。そこに、ビニル重合体部位を構成するビニル系重合モノマー(スチレン:60.0部、アクリル酸−2−エチルヘキシル:40.0部)30部と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.0部を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、160℃で5時間反応した後、230℃に昇温してテトライソブチルチタネートを0.05質量%添加し、所望の粘度となるように反応時間を調節した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してハイブリッド樹脂1を得た。得られたハイブリッド樹脂1の物性を表1に示す。
<ハイブリッド樹脂2〜9の製造例>
ハイブリッド樹脂1の製造例において、長鎖アルキルモノマーの種類と添加量を表1の様に変更した以外はハイブリッド樹脂1の製造例と同様にして、ハイブリッド樹脂2〜9を得た。得られたハイブリッド樹脂2〜9の物性を表1に示す。
<非晶性ポリエステル1の製造例>
・ビスフェールAエチレンオキサイド付加物(2.2mol付加) 100.0部
・テレフタル酸 60.0部
・無水トリメリット酸 12.8部
・アクリル酸 10.0部
上記ポリエステルモノマーを4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で撹拌し重縮合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル1を得た。得られた非晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<非晶性ポリエステル2の製造例>
・ビスフェールAエチレンオキサイド付加物(2.2mol付加) 100.0部
・テレフタル酸 60.0部
・無水トリメリット酸 12.8部
・アクリル酸 10.0部
上記ポリエステルモノマーに加えて、長鎖アルキルモノマー1を樹脂全体に対して7.5質量%になるように添加した混合物を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で撹拌し重縮合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル2を得た。得られた非晶性ポリエステル2の物性を表1に示す。
〔実施例1〕
・結着樹脂(ハイブリッド樹脂1) 100.0部
・磁性酸化鉄粒子(個数平均粒径=0.20μm) 45.0部
・離型剤(フィッシャートロプッシュワックス(サゾール社製、C105、融点105℃)) 2.0部
・アゾ金属化合物1 0.5部
・結晶性ポリエステル1 4.0部
上記材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T−250)で粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.7μmの負帯電性の原料トナー粒子を得た。
その原料トナー粒子を、表面改質装置ファカルティー(ホソカワミクロン社製)で表面改質処理を行った。その際、分散ローターの回転周速を150m/secとし、微粉砕品の投入量を1サイクル当たり7.6kgとし、表面改質時間(=サイクルタイム、原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)を82secとした。またトナー粒子排出時の温度は44℃であった。
以上の工程を経てトナー粒子1を得た。トナー粒子1のTgは54.9℃、Tmは131.5℃であった。トナー粒子1の物性を表2に示す。
トナー粒子1 100部に対し、疎水性シリカ微粉体[BET比表面積150m2/g、シリカ微粉体100部に対しヘキサメチルジシラザン(HMDS)30部及びジメチルシリコンオイル10部で疎水化処理]を1.0部とチタン酸ストロンチウム微粉体(D50:1.0μm)0.6部をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM−75型)で混合し目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナー1の物性を表2に示す。
また、得られたトナーを用いて、後述の評価を行った。評価結果を表3に示す。
〔実施例2〜19、比較例1〜3〕
実施例1において、結着樹脂、多環式化合物結晶核剤を配位子とする錯体、結晶性ポリエステル樹脂の種類及び添加量を表2の様に変更した以外は同様にしてトナー2〜22を得た。トナー2〜22の物性を表2に示す。尚、トナー20〜22は、比較例用のトナーである。
また、得られたトナーを用いて、後述の評価を行った。評価結果を表3に示す。
<評価>
トナーの評価は図1に示した汲み上げ現像方式のプロセスカートリッジを用いて行った。ここで本実施例におけるプロセスカートリッジの構成部材の一例を、具体的な数値を挙げながら説明する。
現像スリーブ105は、直径14mmの非磁性アルミスリーブを用いた。現像スリーブ105の表面は、トナーの搬送及びトリボ付与を行うために導電性粒子を含有する樹脂層でコートしたものを用いた。
現像スリーブ105は、感光ドラムに対し1.0倍の周速度で駆動されており、周速400mm/secで駆動される。
マグネット106としては、その周方向にN極とS極とが交互に配置された4極のマグネットロールが使用され、現像スリーブ105内部に固定的に配置した。
上記に設定されたプロセスカートリッジに対して、トナー700gを充填し、HP LaserJet Enterprise M606dnをベースに上記汲み上げ現像方式のプロセスカートリッジを装着し、画像形成が出来るよう改造した装置を用いて、以下の評価を行った。
[低温定着性の評価]
評価機の定着器の温度を170℃以上220℃以下の範囲で5℃おきに温調制御を行い、フォックスリバー社製ボンド紙(坪量105g/m2)に画像濃度が0.60乃至0.65となるようにハーフトーン画像を出力する。得られた画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率を測定した。
定着器の設定温度横軸に、濃度低下率を縦軸にして座標平面にプロットし、全てのプロットを直線で繋ぎ、濃度低下率10%の時の定着器の設定温度をトナーの定着開始温度とし、下記の基準により低温定着性を評価した。定着開始温度が低い方が低温定着性が良いことを示す。低温定着性の評価はトナーの熱定着に対し不利な条件である低温低湿環境下(7.5℃/15%RH)で行った。
a:定着開始温度が190℃未満
b:定着開始温度が190℃以上195℃未満
c:定着開始温度が195℃以上200℃未満
d:定着開始温度が200℃以上
[耐ホットオフセット性の評価]
耐ホットオフセット性評価では、評価機の定着器の温度を任意に設定できるように改造し、定着器の温度190℃以上240℃以下の範囲で5℃おきに温調して、普通紙(坪量75g/m2)紙にベタ黒画像を出力した。得られた画像上のオフセット現象による汚れを目視で確認し、汚れが発生した最も低い温度をもって耐オフセット性の評価とした。この温度が高い程、耐オフセット性が優れていることを示す。
a:オフセット発生が230℃以上
b:定着開始温度が225℃以上230℃未満
c:定着開始温度が220℃以上225℃未満
d:定着開始温度が220℃未満
[耐排紙接着性の評価]
耐排紙接着性の評価ではまず印字比率6%のテストチャートを用いてオフィスプランナーA4紙(坪量68g/m2)に両面で500枚の連続プリント試験を行った。その後、10枚重ねた状態で未開封のオフィスプランナー用紙の束(500枚/束)を7束(3500枚に相当)重ねて1時間荷重をかけ、剥がした際の状態を評価した。試験は耐排紙接着性にはより厳しい条件である高温高湿環境下(32.5℃,85%RH)で行った。耐排紙接着性の評価基準は以下の通りである。
a:排紙接着が発生しない。
b:紙同士の接着は見られるが剥がした際に画像に欠陥が見られることはない。
c:剥がした際に画像に欠陥が見られるが実用上問題になるレベルではない。
d:剥がした際に画像に顕著な欠陥が見られる。
〔実施例2〜19、比較例1〜3〕
トナー2〜22を用いる以外は実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表3に示す。