本発明のハイブリッド樹脂を得る方法としては、まずポリエステルユニット及びその原料のポリエステルモノマーの非存在下でビニル系重合体ユニットの原料モノマーを付加重合する。その後、得られたビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの原料モノマーとエステル化触媒とピロガロール化合物を混合し、縮重合反応させることにより得ることができる。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニットやポリエステルモノマーの存在しない状態でビニル系モノマーを重合して、ビニル系重合体を得ることを特徴としている。さらに、得られた前記ビニル系重合体とエステル化触媒とピロガロール化合物の存在下でポリエステルモノマーを重合して得られるハイブリッド樹脂であることを特徴としている。
エステル化触媒とピロガロール化合物の存在下でポリエステルモノマーを重合すると、ポリエステルの重合反応性が高くなり、分子量分布のシャープなポリエステル樹脂を得ることが可能になる。その結果、オリゴマーのようなTgの低い低分子量成分が少なくなるので、トナーの保存性の改良が可能になる。また、保存性が悪化しにくい為、より低分子量の分子設計が可能になり、低温定着性を改良することが可能になる。さらには、低分子量成分が少ないことで、トナーの長期の使用による劣化が抑制される。トナーが劣化すると、トナーの流動性が低くなり、画像濃度が低下したり、カブリが発生しやすくなる。本発明は、オリゴマーのような低分子量成分が少ないことで、トナー劣化の抑制に優れるため、画像濃度が高く、カブリの少ない優れた画像を長期にわたり出力することが可能になる。
また、本発明者らが検討した結果、感光ドラムへのトナー融着(以降、ドラム融着と称する場合もある)という問題が、ハイブリッド樹脂のオリゴマー成分を少なくすることで飛躍的に向上することが分かった。感光ドラムへのトナー融着は主に、クリーニングブレードと感光ドラムとの当接部で起こっている。この当接部に存在するトナーは、感光ドラムとの摺擦により熱を持ちやすいために、オリゴマーのような低Tg成分が存在すると、トナーが熱と当接圧力で感光ドラムに融着してしまうことが分かった。
特に、プロセススピードが速い複写機・プリンター等においては、機内の温度が上昇し易くなり、かつ、高温高湿環境で連続使用する場合、トナーが熱を持ちやすくなるため、感光ドラムへのトナー融着を起こしやすく、従来感光ドラムへのトナー融着が起こらなかったトナーを用いても、使用状況によっては、感光ドラムへのトナー融着が発生する場合があることがわかった。
本発明者らが検討した結果、タルク成分を多く含有する紙を使用して、高温高湿環境で連続使用する場合、感光ドラムへのトナー融着が起こりやすくなることがわかった。特にタルク成分を多く含有する紙を用いると、感光ドラム表面へのタルクなどの不純物の付着が顕著になる。その付着した不純物を起点にトナーが感光ドラム表面に付着し、感光ドラムへのトナー融着を起こすことがわかった。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂は、低Tg成分が非常に少ないため、感光ドラムへのトナー融着の原因となる成分が少なく、感光ドラムへのトナー融着を抑制する効果が非常に大きい。
ピロガロール化合物はポリエステルの重合反応性を高める一方で、ラジカル重合の重合禁止剤としての働きを持つ。その為、ビニル系モノマーの重合時にピロガロール化合物が存在すると、ビニル系モノマーの重合が阻害され、ビニル系重合体由来の低分子量成分(オリゴマー)が生成しやすい。
さらに、ビニル系モノマーとポリエステル系モノマーの存在下でビニル系重合体を重合し、その後、ピロガロール化合物を添加してポリエステルユニットおよびハイブリッドユニットの重合をおこなう場合でも、ビニル系重合体由来のオリゴマーが多くなることがわかった。これは以下の理由によると考えている。
ポリエステル系モノマーの存在下でビニル系モノマーの重合を行うと、モノマーを全て反応させることが難しく、一部のビニル系モノマーが未反応で残存してしまう。その後、ピロガロール化合物を使用しないでポリエステルユニットを重合する場合、この残存モノマーはポリエステルユニットの重合中にも並行してラジカル重合が進むため、ビニル系重合体ユニット由来のオリゴマーが生成しにくい。しかし、ピロガロール化合物を使用していないためにポリエステルユニット由来のオリゴマーが生成しやすい。
ポリエステル系モノマーの存在下でビニル系モノマーの重合を行った後、ピロガロール化合物を使用してポリエステルユニットを重合する場合、ポリエステルユニットの重合反応は進みやすく、ポリエステルユニット由来のオリゴマーを生成しにくい。しかし、前記未反応の残存ビニル系モノマーは、ピロガロール化合物が重合禁止剤として機能してしまう為、ラジカル重合反応が進みにくく、ビニル系重合体ユニット由来のオリゴマーが生成したり、未反応のモノマーとして残存しやすい。その結果、保存性が悪化したり、トナーの劣化が進みやすくなったり、残存モノマーが材料の分散性を阻害し低温定着性が悪くなったり、感光ドラムへのトナー融着が発生したりする場合がある。
ポリエステル系モノマーやポリエステルユニットの非存在下でビニル系モノマーの重合を行うと、ビニル系モノマーの重合反応が進みやすく、ビニル系重合体ユニット由来のオリゴマーが生成しにくい。しかし、その後、ピロガロール化合物を使用しないでポリエステルユニットを重合すると、ピロガロール化合物を使用していないためにポリエステルユニット由来のオリゴマーが生成しやすい。
本発明では、ビニル系モノマーをポリエステルモノマーやポリエステルユニットの存在しない状態で重合する為、ビニル系モノマーの重合阻害が起こりにくく、ビニル系重合体ユニット由来のオリゴマーが生成しにくい。その結果、分子量分布がシャープなビニル系重合体が得られる。
さらには、前記ビニル系重合体を重合後に、減圧蒸留などにより前記ビニル系重合体から残存モノマーを極力除去しておくことが好ましい。残存モノマーを少なくすることで、ポリエステルモノマーの重合時に重合が進むビニル系モノマーの量が少なくなり、ビニル系重合体由来のオリゴマーの生成が抑制される。また、残存モノマーが少ない方がピロガロール化合物がビニル系モノマーの重合禁止剤として消費されにくいため、ポリエステルの重合反応を高める効果が得られ易く、好ましい。
前記ビニル系重合体中の残留モノマーとしては5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下が良い。
前記ビニル系重合体は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCによる、ピーク分子量Mpが2000以上30000以下、好ましくは2000以上20000以下、より好ましくは2000以上10000以下が良い。
ビニル系重合体のMpをこの範囲にすることで、低温定着性、保存性、感光ドラムへのトナー融着及びトナー劣化の抑制に優れたトナーを得ることができる。
本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。
本発明において「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。
本発明において、結着樹脂として用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニット及びビニル系重合体ユニットが化学的に結合した樹脂である。
そのため、両樹脂のモノマーのいずれとも反応しうる化合物(以下「両反応性化合物」という)を用いて重合を行う。このような両反応性化合物としては、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、及びフマル酸ジエステル等の化合物が挙げられる。これらのうち、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましく用いられる。
本発明において、両反応性化合物はビニル系重合体の重合時に添加することが好ましく、両反応性化合物は本発明ではビニル系モノマーとみなす。
本発明に用いられるトナーに含まれる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、保存安定性の観点から45℃以上であることが好ましい。また、低温定着性の観点から、Tgは75℃以下であることが好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。
本発明に用いられるトナーに含まれる結着樹脂は、良好な定着性を確保する為に、少なくともポリエステルユニットを50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましい。本発明におけるポリエステルユニットの含有量とは、ポリエステル樹脂として存在するもの、ハイブリッド樹脂等の中に存在するポリエステルユニットを合わせたものである。
また、本発明のトナーは、テトラヒドロフランに不溶な樹脂成分(ゲル成分)を3質量%以上50質量%以下(好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下)含有することが好ましい。ゲル成分がこの範囲であると、長期の使用によっても劣化しにくく、低温定着性、保存性に優れた、感光ドラムにトナー融着を起こしにくいトナーを得ることが出来る。
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン可溶分のGPC分子量分布において、分子量2,000以上30,000以下(好ましくは3,000以上20,000以下、より好ましくは3,000以上10,000以下)の範囲にメインピークを有することが好ましい。メインピーク分子量がこの範囲であると、低温定着性、保存性、感光ドラムへのトナー融着及びトナー劣化の抑制に優れたトナーを得ることができる。
本発明で用いられる結着樹脂は、ハイブリッド樹脂単独で用いることも可能であるが、少なくともハイブリッド樹脂を含有していれば、他の樹脂成分を含有する混合物であっても良い。
例えば、ハイブリッド樹脂とビニル系樹脂との混合物、又はハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、ハイブリッド樹脂とハイブリッド樹脂との混合物、又はポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系樹脂の混合物などが挙げられる。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂中のビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、少なくともスチレンが用いられていることが好ましい。スチレンは分子構造中の芳香環の占める割合が大きく、ビニル系重合体ユニットの剛性・粘度を高くする設計上、有利である。スチレンの含有量は、ビニル系モノマー中、10質量%以上100質量%以下、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下が良い。
スチレン以外のビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン誘導体が挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。
さらに、ビニル系重合体ユニットのモノマーとしては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
ビニル系重合体ユニットには、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン系不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また、上記ビニル系重合体ユニットは、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーには、例えば、芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤等が挙げられる。芳香族ジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
上記ビニル系重合体ユニットは、重合開始剤を用いて製造された樹脂であっても良い。これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05質量部以上10質量部以下で用いるのが好ましい。
このような重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
ビニル系モノマーの重合は、ポリエステルユニットおよびその原料の非存在下で、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、あるいは懸濁重合法などにより行う。本発明では、分散剤や乳化剤等の不純物を含まないビニル系重合体が得られることから、塊状重合法や溶液重合法が好ましく用いられ、特に塊状重合法が好ましく用いられる。
塊状重合法は、ビニル系モノマーに重合開始剤を添加し、不活性ガス気流中で、重合開始剤の10時間半減期温度マイナス30℃以上、10時間半減期温度プラス30℃以下の温度範囲で、ビニル系モノマーの重合転化率が95%以上、好ましくは97%以上になるまで反応を続ける。
更に、2段目の重合として重合開始剤の10時間半減期温度を超え、200℃未満の温度で、ビニル系モノマーの転化率が99%以上になるまで重合を行うことが好ましい。
このとき、2段目の重合時に、重合開始剤を追加で添加することも、残存モノマーを減少させる観点で好ましい。
さらに、残存モノマーを低減させる為に、150℃以上200℃以下、好ましくは150℃以上180℃以下の温度に加熱しながら減圧を行い、残存モノマーを減圧蒸留により除去することが好ましい。
さらに、得られたビニル系重合体は、残存モノマーが5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下であることが好ましい。残存モノマーを低減することで、ハイブリッド樹脂を製造した際に、ビニル系重合体ユニット由来のオリゴマーを低減することができる。更に、ピロガロール化合物が残存モノマーの重合禁止剤として消費され難いため、ポリエステルの重合反応を高める働きが阻害され難く、ポリエステルユニット由来のオリゴマーも低減できる。
本発明において、ポリエステルユニットの縮重合反応は、反応性、低分子量成分低減の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことが重要である。エステル化触媒とピロガロール化合物の存在下でポリエステルモノマーを重合することで、オリゴマーが少ない、分子量分布がシャープなハイブリッド樹脂を得ることができる。
エステル化触媒としては、通常ポリエステル化に用いられる触媒が使用可能であり、例えば、スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)が挙げられる。この中で、低分子量成分を生成しないためには、チタン触媒を用いることが好ましい。
チタン触媒の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C3H7O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4H10O2N)2(C3H7O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C5H11O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C2H5O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(OHC8H16O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C18H37O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)1(C3H7O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6H14O3N)3(C3H7O)1〕などが挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましい。
この他のチタン触媒の具体例としては、テトラ−n−ブチルチタネート〔Ti(C4H9O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C3H7O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C18H37O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C14H29O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)2(OHC8H16O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C14H29O)2(C8H17O)2〕などが挙げられ、これらの中ではテトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましい。
これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができる。また、チタン化合物は、芳香族カルボン酸チタン化合物を含むことが、より好ましい。芳香族カルボン酸チタン化合物は、芳香族カルボン酸とチタンアルコキシドとが反応することにより得られるものであることが好ましい。また、芳香族カルボン酸としては、2価以上の芳香族カルボン酸(即ち、2つ以上のカルボキシル基を有する芳香族カルボン酸)及び/又は芳香族オキシカルボン酸であることが好ましい。上記の2価以上の芳香族カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸類又はその無水物、トリメリット酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸類又はその無水物、エステル化物などが挙げられる。また、上記芳香族オキシカルボン酸としては、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸などが挙げられる。これらの中でも、芳香族カルボン酸としては2価以上のカルボン酸を用いることがより好ましく、特にイソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましい。
縮重合反応におけるエステル化触媒の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、0.01質量部以上2.5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上2.0質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下が更に好ましい。
ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、下記式(1)で表すことができる。
((式中、R
1〜R
3はそれぞれ独立して、水素原子又は−COOR
4(R
4は水素原子、炭素数1以上12以下の炭化水素基を示す。)を示す。)
具体的には、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。この中で特に反応性の観点から、ピロガロールもしくは没食子酸が好ましい。
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、0.001質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.005質量部以上1.0質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上0.2質量部以下が更に好ましい。
ピロガロール化合物とエステル化触媒との質量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、反応性の観点から、0.01以上0.5以下が好ましく、0.02以上0.3以下がより好ましく、0.03以上0.3以下が更に好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、前記エステル化触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中にて、180℃以上290℃以下が好ましい。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニット及びその原料の非存在下でビニル系モノマーを重合させて得られるビニル系重合体ユニットと、エステル化触媒とピロガロール化合物の存在下でポリエステルユニットを縮重合させて得られるハイブリッド樹脂であれば、特に製造方法は限定されない。
ポリエステル樹脂を構成する成分について説明する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いる事ができる。
ポリエステル樹脂を構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1以上50以下のアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル。
一方、ポリエステル樹脂を構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I−1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:および式(I−2)で示されるジオール類。
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
(式中、R’はエチレン又はプロピレン基であり、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0以上10以下である。)
本発明では、本発明の効果を最大限に発揮する点で、特に式(I−1)で表わされるビスフェノール及びその誘導体を使用することが好ましい。
本発明で使用される、ポリエステル樹脂の構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物以外に、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
本発明において、ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物をエステル化反応またはエステル交換反応、および縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃の範囲が好ましい。
本発明のハイブリッド樹脂を得る方法としては以下のような方法が挙げられる。
i)ポリエステルユニットおよびその原材料の非存在下で、塊状重合法や溶液重合法によりビニル系重合体ユニットの重合(付加重合反応)を行う。残存モノマーの低減や、溶液重合の場合には溶媒を除去する為に、適宜減圧蒸留を行い、所望のビニル系重合体ユニットを得る。得られたビニル系重合体ユニットの存在する反応器に、ポリエステルユニットの原料、エステル化触媒、およびピロガロール化合物を添加し、ポリエステルユニットの重合(縮重合反応)を行う。この時、ビニル系重合体に含まれる両反応性モノマー由来の官能基(例えばアクリル酸由来のカルボキシル基)とポリエステルユニットの原料、あるいはポリエステルユニットとの反応も同時に起こり、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂が得られる。
ii)ビニル系重合体ユニットの重合(付加重合反応)をあらかじめ行っておき、所望のビニル系重合体ユニットを得る。ビニル系重合体ユニットの重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、任意に選べばよい。得られたビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの原料、エステル化触媒、およびピロガロール化合物を反応器に添加し、ポリエステルユニットの重合(縮重合反応)を行う。この時、i)と同様に、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂が得られる。
iii)ビニル系重合体ユニットの重合(付加重合反応)と、ポリエステルユニットの重合をあらかじめ行っておく。反応器にビニル系重合体ユニットとポリエステルユニット、ポリエステルモノマー、エステル化触媒、およびピロガロール化合物を添加し、ポリエステルユニットの重合(縮重合反応)を行う。この時、i)と同様に、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂が得られる。
上記のなかでも特に好ましいハイブリッド樹脂の重合方法としては、ii)が挙げられる。ビニル系重合体ユニットの重合条件とポリエステルユニットの重合条件は、反応温度や反応器内部の圧力が大きく異なることが多い為、両者を別々の反応器で重合するii)の手法は、生産効率を高めることが出来、好ましい。
本発明において、トナーには、帯電性をより安定させるために、荷電制御剤として金属化合物を結着樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、トナー粒子中に配合(内添)、またはトナー粒子と混合(外添)することが好ましい。荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適な荷電量コントロールが容易に可能となる。
トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。
本発明では、荷電制御剤として、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸金属化合物を使用するのが好ましい。上記芳香族ヒドロキシカルボン酸を使用することにより、低温定着性、保存性、感光ドラムへのトナー融着及びトナー劣化の抑制に優れたトナーを得ることができる。更に、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸金属化合物に加えて、スルフォン酸基、スルフォン酸基塩、スルフォン酸エステル基のいずれかを有する荷電制御樹脂を併用することが好ましい。上記2種類の荷電制御剤を併用することにより、低温定着性、保存性、感光ドラムへのトナー融着及びトナー劣化の抑制に優れたトナーを得ることができる。
荷電制御樹脂としては、本発明の効果を最大限に発揮する点で、特にスチレン系単量体及びアクリル系単量体とスルフォン酸含有アクリルアミド単量体との共重合体(スルフォン酸基含有共重合体)を好ましく用いることができる。
荷電制御樹脂に用いられるスチレン系単量体及びアクリル系単量体としては、上述のビニル系共重合体を生成する為のビニル系モノマーの中から適宜選択される。好ましくはスチレンとアクリル酸エステル、又は、スチレンとメタクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
荷電制御樹脂に用いられるスルフォン酸含有アクリルアミド系単量体の例として以下のものが挙げられる。2−アクリルアミドプロパンスルフォン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルフォン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルフォン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルフォン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルフォン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジン)プロパンスルフォン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルフォン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルフォン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルフォン酸、2−メタクリルアミド−n−テトラデカンスルフォン酸など。
荷電制御樹脂を合成する際に使用される重合開始剤としては、上述のビニル系共重合体を生成する際に使用される開始剤の中から適宜選択される。好ましくは過酸化物開始剤が使用される。また、荷電制御樹脂の合成方法としては特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、塊状重合の如き製造方法のいずれも使用可能であるが、低級アルコールを含む有機溶剤中で共重合させる溶液重合が好ましい。
本発明では、トナーに離型性を与えるために、トナーは離型剤(ワックス)を含有することが好ましい。ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。必要に応じて一種又は二種以上のワックスを、併用してもかまわない。
脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、以下のものが挙げられる。金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンのようなアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素。
具体的には、以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業株式会社);ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学株式会社);サゾール H1、H2、C80、C105、C77(サゾール社);HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精蝋株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社);木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODA)。
酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又は、それらのブロック共重合物;モンタン酸エステルワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
離型剤を添加するタイミングは、粉砕法でトナーを作製する場合においては、溶融混練時に添加してもよいが、結着樹脂の製造時であってもよい。また、これらの離型剤は単独で使用しても併用してもよい。離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
離型剤は、示差走査熱量測定(DSC)において、60℃以上150℃以下に最大吸熱ピークのピーク温度を有することが好ましい。
本発明のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性一成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物が挙げられる。
トナーに含有させる磁性酸化鉄の量は、結着樹脂100質量部に対して15質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上95質量部以下である。
これらの磁性体は795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6kA/m以上12.0kA/m以下、飽和磁化が50.0Am2/kg以上200.0Am2/kg以下(好ましくは50.0Am2/kg以上100.0Am2/kg以下)である。さらに、残留磁化は2.0Am2/kg以上20.0Am2/kg以下のものが好ましい。磁性酸化鉄の磁気特性は、振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉も用いられる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162などが挙げられる。これらのものを単独又は2以上を併用して用いる。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66など、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95などが挙げられる。これらのものを単独又は2以上を併用して用いる。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254など、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122など、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27など、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40など、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28などの塩基性染料などが挙げられる。これらのものを単独又は2以上を併用して用いる。
着色剤の添加量は樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上60質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上50質量部以下である。
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイトなどのキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性向上のために、シリカ微粉末をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉末は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉末を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることが好ましい。シリカ微粉末のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオ二クス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉末の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
シリカ微粉末は、必要に応じ、疏水化、摩擦帯電コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物の如き処理剤で、或いは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
更に本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。このような外部添加剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられ、中でもチタン酸ストロンチウム粉末が好ましい。
トナーを製造する方法としては、以下の方法を用いることができる。結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、必要に応じてワックス、その他の添加剤などを、ヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような混合機により混合し、トナーを得ることができる。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
以下に、物性の測定方法を示す。後述の実施例もこの方法に基づいている。
(1)重量平均粒径(D4)の測定方法
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
(2)結着樹脂のガラス転移温度Tgの測定
本発明における結着樹脂のDSC曲線の吸熱ピークは以下の方法で測定される。結着樹脂の吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、結着樹脂約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この昇温過程において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
(3)THF可溶分の分子量の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。カラムとしては、103以上2×106以下の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー(株)製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSK gaurd columnの組み合せを挙げることができるが、特に昭和電工社製のshodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連カラムの組み合せが好ましい。
トナー、樹脂をテトラヒドロフランに分散し溶解後、24時間静置した後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー(株)製)などが使用できる。)で濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として樹脂成分が0.5mg/ml以上5mg/ml以下となるように調整したトナーのTHF溶液を50μl以上200μl以下注入して測定する。なお、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6.0×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2.0×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
(3)テトラヒドロフラン不溶分量(ゲル量)の測定
トナーを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28mm×10mm 東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、テトラヒドロフランの抽出サイクルが約4乃至5分に1回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、秤量することによって結着樹脂又はトナーの不溶分を得る。
トナーが樹脂成分以外のテトラヒドロフラン不溶分(例えば、磁性体、顔料、ワックス、荷電制御剤)を含有している場合、円筒ろ紙に入れたトナーの質量をW1gとし、抽出されたTHF可溶樹脂成分の質量をW2gとし、トナーに含まれている樹脂成分以外のテトラヒドロフラン不溶成分の質量をW3gとすると、トナー中の樹脂成分のテトラヒドロフラン不溶分の含有量は下記式から求められる。
テトラヒドロフラン不溶分(質量%)=[{W1−(W3+W2)}/(W1−W3)]×100
(4)残留モノマー量の測定
ビニル系重合体1質量部又はトナー1質量部にテトラヒドロフラン5質量部を加え、超音波で30分、分散、溶解させた後、上澄み液を液体クロマトグラフィー(Prominence、島津製作所製)で分析し、ビニル系重合体中又はトナー中の残存モノマー量を測定した。
残存モノマーの定量はガスクロマトグラフを用いて以下の方法により行う。2.55mgのDMFを内部標準とし、100mlのアセトンを加えて内部標準品入り溶媒をつくる。次に現像剤400mgを上記溶媒で10mlの溶液とする。30分間超音波振とう機にかけた後、1時間放置する。次に0.5μmのフィルターで濾過をする。打ち込み試料量は4μlとする。
ガスクロマトグラフの条件としては;
・キャピラリカラム(30m×0.249mm,DBWAX,膜厚0.25μm)
・検出器FID,窒素圧0.45kg/cm2
・インジェクション濃度200℃,ディテクター温度200℃とし、カラム温度は50℃から5℃/1分の割合で30分間昇温する。
・検量線の作製
サンプル溶液と同量のDMF、アセトン溶液に対象となるモノマーを加えた標準サンプルについて同様にガスクロマトグラフ測定し、モノマーと内部標準品DMFの質量比/面積比を求める。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
<ビニル系重合体1の重合例>
ビニル系モノマーとして、スチレン:65質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:30質量部、アクリル酸:5質量部、開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド(10時間半減期温度123.7℃):3質量部を混合した。このビニル系モノマー混合物を120℃で5時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が98%以上になるまで塊状重合を行った。これを1段目の重合反応とする。
その後、温度を150℃に上げて開始剤:1質量部を追加し、1時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合転化率が99%以上になるまで重合した。これを2段目の重合反応とする。
さらに、温度を170℃まで上げて、反応容器を10kPaに減圧し、5時間減圧蒸留を行って残留モノマーを除去してビニル系重合体1を得た。
得られたビニル系重合体1は、THF可溶分のGPCで測定される分子量分布において、メインピーク分子量が5,300であり、残存モノマーは20ppmであった。
<ビニル系重合体2の重合例>
ビニル系モノマーとして、スチレン:65質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:30質量部、アクリル酸:5質量部、開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド(10時間半減期温度123.7℃):3質量部を混合した。このビニル系モノマー混合物を120℃で5時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が97%以上になるまで塊状重合を行った。これを1段目の重合反応とする。
その後、温度は120℃に維持したまま、開始剤:1質量部を追加し、1時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合転化率が98%になるまで重合した。これを2段目の重合反応とする。
さらに、温度を170℃まで上げて、反応容器を10kPaに減圧し、3時間減圧蒸留を行って残留モノマーを除去してビニル系重合体2を得た。
得られたビニル系重合体2は、THF可溶分のGPCで測定される分子量分布において、メインピーク分子量が6,700であり、残存モノマーは310ppmであった。
<ビニル系重合体3の重合例>
ビニル系モノマーとして、スチレン:70質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:25質量部、アクリル酸:5質量部、開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド(10時間半減期温度123.7℃):5質量部を混合した。このビニル系モノマー混合物を115℃で10時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が97%以上になるまで塊状重合を行った。
その後、温度を170℃まで上げて、反応容器を10kPaに減圧し、3時間減圧蒸留を行って残留モノマーを除去してビニル系重合体3を得た。
得られたビニル系重合体3は、THF可溶分のGPCで測定される分子量分布において、メインピーク分子量が9,900であり、残存モノマーは2910ppmであった。
<ビニル系重合体4の重合例>
ビニル系モノマーとして、スチレン:70質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:25質量部、アクリル酸:5質量部、開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド(10時間半減期温度123.7℃):5質量部を混合した。このビニル系モノマー混合物を115℃で10時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が97%以上になるまで塊状重合を行った。
その後、温度を150℃まで上げて、反応容器を10kPaに減圧し、3時間減圧蒸留を行って残留モノマーを除去してビニル系重合体4を得た。
得られたビニル系重合体4は、THF可溶分のGPCで測定される分子量分布において、メインピーク分子量が9,900であり、残存モノマーは4,880ppmであった。
<ビニル系重合体5の重合例>
ビニル系モノマーとして、スチレン:70質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:25質量部、アクリル酸:5質量部、開始剤として2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(10時間半減期温度107℃):2質量部を混合した。このビニル系モノマー混合物を160℃で10時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が95%以上になるまで塊状重合を行った。
その後、150℃の温度で反応容器を10kPaに減圧し、3時間減圧蒸留を行って残留モノマーを除去してビニル系重合体5を得た。
得られたビニル系重合体5は、THF可溶分のGPCで測定される分子量分布において、メインピーク分子量が3,400であり、残存モノマーは8,240ppmであった。
<結着樹脂(ハイブリッド樹脂)1の重合例>
・ビニル系重合体1を30質量部と下記のポリエステルモノマー原料の混合物70質量部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2mol付加物):100.0モル部
・テレフタル酸: 65.0モル部
・無水トリメリット酸: 20.0モル部
・フマル酸: 15.0モル部
を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で撹拌した。その後、230℃に昇温して、エステル化触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対し0.5質量部、助触媒として没食子酸をポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対して0.1質量部入れて、15時間縮重合反応を行い、結着樹脂1を得た。
<結着樹脂2〜15>
表1に示す様に、ビニル系重合体の種類、エステル化触媒と助触媒の種類と添加量を変更する以外は、結着樹脂1の重合例に従い、結着樹脂2〜15を得た。
<荷電制御樹脂1の製造例>
・メチルエチルケトン:60質量部
・イソプロピルアルコール:140質量部
・水:200質量部
・スチレン:468質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート:96質量部
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸:48質量部
・ラウロイルパーオキサイド:3質量部
上記原料をフラスコに仕込み、撹拌装置、温度測定装置、窒素導入装置を前記フラスコに装着して、窒素雰囲気下80℃で溶液重合させ、所定の粘度になるまで重合した。この後温度を120度に上げ、脱溶媒し、減圧乾燥、粉砕して重量平均分子量が28000、ガラス転移温度(Tg)が73℃の荷電制御樹脂1を得た。
〔実施例1〕
(トナー1の製造例)
・結着樹脂1:100質量部
・磁性酸化鉄粒子:90質量部
(平均粒径0.14μm、Hc(抗磁力)=11.5kA/m、σs(飽和磁化)=90Am2/kg、σr(残留磁化)=16Am2/kg)
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物(化合物A:下記式II):1質量部
・荷電制御樹脂1:1質量部
・フィッシャートロプッシュワックス(融点105℃):2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。このとき、混練された樹脂の温度が150℃になるように滞留時間をコントロールした。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで粉砕し、得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機(エルボージェット分級機、日鉄鉱業社製)を用いて分級し、重量平均粒径7.0μmのトナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部に対し、疎水性シリカ微粉体(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m2/g)1.0質量部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナー1の物性を表2に示す。
トナー1について下記の様な評価を行った。評価結果を表3に示す。
評価は、画像形成装置として、市販のデジタル複写機(image RUNNER 4251 キヤノン株式会社製)をプロセススピード400mm/sに改造したものを用いた。
<定着性評価>
低温定着性の評価は、市販のデジタル複写機(image RUNNER 4251 キヤノン株式会社製)をプロセススピード400mm/sに改造して、低温低湿(15℃、10%RH[L/L])環境下で行った。評価紙はOCE RED LABEL(80g/m2紙、A3)を用いた。20mm×20mmサイズのハーフトーンのパッチをA3用紙に均等に9点書かせて、画像濃度が0.6になるように現像バイアスを設定した。次いで、定着器の加圧ローラーの温度が15℃になるまで冷却した後、20枚片面で連続通紙した。低温定着性評価用のサンプルとして、1枚目、3枚目、5枚目、10枚目、20枚目をサンプリングし、得られた定着画像に、4.9kPaの荷重をかけ、シルボン紙によりその定着画像を5往復摺擦した。5サンプルの内、摺擦前後での前記9点の画像濃度低下率の平均値の最悪値を各温度の画像濃度低下率とした。定着温調を180℃から220℃まで5℃おきに変えて、画像濃度低下率が20%以下となる定着温調を定着開始温度とし、これを基準に低温定着性を評価した。
なお、画像濃度は、マクベス濃度計(RD−914;マクベス社製)により、SPI補助フィルターを用いて測定した。
(評価基準)
A(非常に良い):定着開始温度が190℃未満である。
B(良い):定着開始温度が190℃以上200℃未満である。
C(普通):定着開始温度が200℃以上210℃未満である。
D(やや悪い):定着開始温度が210℃以上220℃未満である。
E(悪い):今回の測定範囲では定着しなかった。
<保存性>
トナー5gを100ccのポリカップに計りとり、50℃で72時間放置した。その後、ポリカップ中のトナーの状態を目視で確認し、以下の基準で保存性の評価を行った。
A(非常に良い):トナーが、全く固まっている様子がない。
B(良い):トナーの塊があるが、カップを回すうちにほぐれる。
C(普通):トナーの塊があり、カップを回してもトナーの塊が残る。
D(やや悪い):トナーの大きな塊があり、軽く指で押すと解れる。
E(悪い):トナーの大きな塊があり、軽く指で押して解れない。
<常温常湿環境における画像濃度とカブリの評価>
常温常湿(23℃、50%RH)環境下において、印字比率が5%の画像を10万枚連続プリントアウトした。評価紙はCS−680(68.0g/m2紙、A4)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を使用した。10万枚出力後に20mm四方のベタ黒パッチが現像域内に5箇所配置されたオリジナル画像を出力し、その5点平均を画像濃度とした。
なお、画像濃度は、X−Riteカラー反射濃度計(X−rite社製、X−rite 500Series)を用いて測定した。
A:画像濃度1.45以上
B:画像濃度1.40以上1.45未満
C:画像濃度1.35以上1.40未満
D:画像濃度1.30以上1.35未満
E:画像濃度1.30未満
次に、べた白画像を出力し、以下の基準でカブリを評価した。なお、測定は反射率計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部反射濃度の最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr−Dsをカブリ量としてカブリの評価を行った。したがって、数値が小さいほどカブリが抑制させていることを示す。
(評価基準)
A(非常に良い):カブリが1.0未満
B(良い):カブリが1.0以上2.0未満
C(普通):カブリが2.0以上3.0未満
D(やや悪い):カブリが3.0以上4.0未満
E(悪い):カブリが4.0以上
<低温低湿環境における画像濃度とカブリの評価>
低温低湿(15.0℃、10%RH)環境下において、印字比率が5%の画像を10万枚連続プリントアウトした。評価紙はCS−680(68.0g/m2紙、A4)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を使用した。10万枚出力後に20mm四方のベタ黒パッチが現像域内に5箇所配置されたオリジナル画像を出力し、その5点平均を画像濃度とした。
なお、画像濃度は、X−Riteカラー反射濃度計(X−rite社製、X−rite 500Series)を用いて測定した。
A:画像濃度1.40以上
B:画像濃度1.35以上1.40未満
C:画像濃度1.30以上1.35未満
D:画像濃度1.25以上1.30未満
E:画像濃度1.25未満
次に、べた白画像を出力し、以下の基準でカブリを評価した。なお、測定は反射率計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部反射濃度の最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr−Dsをカブリ量としてカブリの評価を行った。したがって、数値が小さいほどカブリが抑制させていることを示す。
(評価基準)
A(非常に良い):カブリが1.0未満
B(良い):カブリが1.0以上2.0未満
C(普通):カブリが2.0以上3.0未満
D(やや悪い):カブリが3.0以上4.0未満
E(悪い):カブリが4.0以上
<高温高湿環境における画像濃度とカブリ及びトナー劣化の評価>
高温高湿(35.0℃、80%RH)環境下において、印字比率が2%の横線画像を10万枚連続プリントアウトした。評価紙はCS−680(68.0g/m2紙、A4)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を使用した。10万枚出力後に20mm四方のベタ黒パッチが現像域内に5箇所配置されたオリジナル画像を出力し、その5点平均を画像濃度とした。
なお、画像濃度は、X−Riteカラー反射濃度計(X−rite社製、X−rite 500Series)を用いて測定した。
A:画像濃度1.40以上
B:画像濃度1.35以上1.40未満
C:画像濃度1.30以上1.35未満
D:画像濃度1.25以上1.30未満
E:画像濃度1.25未満
次に、べた白画像を出力し、以下の基準でカブリを評価した。なお、測定は反射率計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部反射濃度の最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr−Dsをカブリ量としてカブリの評価を行った。したがって、数値が小さいほどカブリが抑制させていることを示す。
(評価基準)
A(非常に良い):カブリが1.0未満
B(良い):カブリが1.0以上2.0未満
C(普通):カブリが2.0以上3.0未満
D(やや悪い):カブリが3.0以上4.0未満
E(悪い):カブリが4.0以上
続いて、現像器内のトナーを採取して、トナー劣化の評価を行った。
プリントアウト前後のトナーの凝集度をパウダテスタP−100(ホソカワミクロン社製)を使用し、測定した。具体的には、振動台の上に、上から目開き250μm、150μm、75μmの順でふるいをセットし、振動振り幅を0.5mm、振動時間を60秒として、トナー5gを静かにのせて振動させる。振動停止後、それぞれのふるいに残った質量を測定した。a+b+c=凝集度(%)として算出した。
(上段のふるいに残ったトナー量)÷5(g)×100 ……………a
(中段のふるいに残ったトナー量)÷5(g)×100×0.6……b
(下段のふるいに残ったトナー量)÷5(g)×100×0.2……c
プリントアウト前後での凝集度の値が変わらないほど劣化に強いトナーである。
A(非常に良い):凝集度の差が5未満である。
B(良い):凝集度の差が5以上10未満である。
C(普通):凝集度の差が10以上20未満である。
D(やや悪い):凝集度の差が20以上30未満である。
E(悪い)凝集度の差が30以上である。
<感光ドラムへのトナー融着>
市販のデジタル複写機(imageRUNNER ADVANCE 4251 キヤノン株式会社製)をプロセススピード400mm/secに改造して、高温高湿環境(35.0℃、80%RH)下で印字比率が3%の画像を10万枚連続プリントアウトした。10万枚連続プリントした後、ベタ黒画像を出力し、ベタ黒画像上に生ずる白点の発生程度を評価した。評価紙はCS−680(68.0g/m2紙、A4)(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を使用した。評価は、下記の基準によって行った。評価紙にCS−680を使用した場合は、A評価であった。続いて、評価紙をタルクを填料として用いている紙(以降、タルク紙と称することもある。タルク量:13.1〜13.7(wt%))に変更して、同様の評価を行った。
A(非常に良い):ドラム表面、画像ともに欠陥は全く認められない。
B(良い):ドラム表面に汚れが若干認められるが、画像に欠陥は認められない。
C(普通):ドラム表面に汚れが若干認められ、画像上に白点が5個未満発生。
D(やや悪い):ドラム表面の汚れが若干認められ、画像上に白点が5個以上15個未満発生。
E(悪い):ドラム表面の汚れがひどく、画像上に白点が15個以上発生。
〔実施例2〜16〕
(トナー2〜16の製造例)
結着樹脂を変更する及び荷電制御樹脂の種類を変更する以外は、トナー1の製造例に従いトナー2〜16を得た。トナー物性を表2に示す。
化合物Bは、下記式IIIで示されるモノアゾクロム化合物を使用した。
実施例2〜16は実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
〔比較例1〜3〕
<結着樹脂17の製造例>
ビニル系重合体5を30質量部とポリエステルモノマー原料の混合物70質量部を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で撹拌した。その後、230℃に昇温して、エステル化触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対し0.5質量部入れて、ピロガロール化合物は添加しないで、20時間縮重合反応を行い、結着樹脂17を得た。
<結着樹脂18の製造例>
下記ポリエステルモノマー原料を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して、窒素雰囲気下にて160℃で撹拌する。
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2mol付加物): 30.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2mol付加物): 70.0モル部
・テレフタル酸: 70.0モル部
次に、下記のビニル系モノマーと両反性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
・スチレン: 80質量部
・アクリル酸2−エチルヘキシル: 15質量部
・アクリル酸: 5質量部
・ジタミルパーオキサイド: 4質量部
160℃に保持したまま、1時間撹拌を続けた後、200℃まで昇温させ、8.3kPaで1時間、未反応のスチレン系樹脂成分の原料モノマーの除去を行った。その後、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートをポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対し0.75質量部及び没食子酸をポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対し0.075質量部を入れ、230℃にて15時間反応を行った。200℃に降温し、アルケニル無水コハク酸を10.0モル部及びトリメリット酸15.0モル部を加え2時間反応させて結着樹脂18を得た。
<結着樹脂19の製造例>
下記ポリエステルモノマー原料及び2エチルヘキサン酸錫(II)をポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対し0.6質量部、没食子酸をポリエステルモノマー成分の総量100質量部に対し0.06質量部を、4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して、窒素雰囲気下にて180℃で撹拌する。
・2,3−ブタンジオール: 50.0モル部
・1,2−プロパンジオール: 50.0モル部
・テレフタル酸: 83.0モル部
その後、180℃から230℃まで10℃/hrで昇温し、その後230℃で10時間縮重合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。160℃まで冷却した後、下記のビニル系モノマーと両反応性モノマー(アクリル酸)及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
・スチレン: 80質量部
・アクリル酸2−エチルヘキシル: 15質量部
・アクリル酸: 5質量部
・ジブチルパーオキサイド 3質量部
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、無水トリメリット酸17.0モル部を投入し、210℃にて2時間反応を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、結着樹脂19を得た。
<トナー17〜20の製造例>
表2に表わすように、結着樹脂と荷電制御剤を変更した以外は実施例1と同様にして、トナー17〜20を得た。
化合物Cは、下記式IVで表わされるモノアゾ鉄化合物を使用した。
トナー17〜20を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。
比較例1はビニル系モノマーをポリエステルモノマーもしくはポリエステルユニットの存在しない状態で重合したため、ビニル系モノマー由来の残留モノマーは少なかった。しかし、ポリエステルユニットの重合の際に、ピロガロール化合物を使用しなかったため、ポリエステルユニット由来の残留モノマーが多く残った。そのため、低温定着性、保存性、ドラム融着及びトナー劣化の抑制が悪化した。
比較例2はビニル系モノマーをポリエステルモノマーとピロガロール化合物の存在下で重合したため、ビニル系重合体由来の残留モノマーが多く残った。そのため、低温定着性、保存性、ドラム融着及びトナー劣化の抑制が悪化した。
比較例3及び4はビニル系モノマーをポリエステルユニットの存在下で重合したため、ビニル系重合体由来の残留モノマーが多く残った。そのため、低温定着性、保存性、ドラム融着及びトナー劣化の抑制が悪化した。