JP3643401B2 - 静電荷像現像トナー用樹脂組成物およびそれを用いた静電荷像現像トナー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において使用される静電荷像現像トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法、静電記録法、静電印刷法等においては、静電荷像支持体上に形成された静電荷像は樹脂と着色剤を主成分とするトナー粒子により可視化される。この可視化された像はそのまま静電荷像支持体上に定着されるか、あるいは他の支持体に転写された後定着される。このためトナーには、単に現像性のみではなく、良好な転写性及び定着性が要求される。近年省エネルギーの観点から低エネルギーで定着できるトナーに関する要求が強い。
加熱定着方法は、オーブン定着のような非接触加熱方式と熱ローラ定着のような接触加熱方式とに大別される。接触加熱定着方式は、熱効率が高い、定着部に大きな電力を使用しない、定着部を小型化できるという利点がある。このため、省エネルギーの観点からは好ましい方式である。しかしこの方式は、オフセットの発生という問題を有している。オフセットとは、定着時に、像を形成しているトナーの一部が加熱ローラの表面に転移し、これが次に送られてくる支持体上に転写され、画像を汚染する現象をいう。このオフセット現象を防止するため、種々の提案が成されている。
【0003】
その一つは、トナー中にワックス等の離型性を有する化合物を含有させる提案である。この提案は広く実施されている。しかし、この化合物を配合した場合、感光体上にワックスが付着し、いわゆるフィルミングが発生し易くなると共に、貯蔵安定性に欠けるという問題を生ずるものであった。またトナーを構成する樹脂に、高分子量のポリマーを使用する提案もある。この場合オフセットは防止できるが、軟化点が高くなるため定着温度が高くなる、樹脂が強靱であるためトナー製造時の粉砕が困難になる等の問題点を有しており、実用的ではない。
この問題点を解決するものとして、樹脂として低分子量から高分子量までの広い分子量分布を有するスチレン等のビニル系ポリマーを用いたトナーが提案されている。このトナーは、オフセット防止と定着性に関してはある程度満足できるものであるが、低温での定着性は満足できるものではない。
一方、ポリエステル樹脂に代表されるような縮合系樹脂の場合には、比較的低分子量のポリマーが得られる。そこでこれを用いた低温定着が可能なトナーが提案されている。このトナーの場合、高い定着温度でオフセットが発生するという問題点を有している。さらには、高分子量のビニル系ポリマーと低分子量のポリエステル樹脂を混合配合したトナーが、特開昭54−114245号公報、特開昭58−11955号公報、特開昭58−14147号公報等で提案されている。このトナーは所定の定着温度以上に定着ローラーが温度上昇した場合のオフセット防止にはある程度の効果が認められるものの、両樹脂の均一混合が困難であり、このため摩擦帯電性が不均一になり易いという問題点を残している。
【0004】
また、ポリエステル樹脂の一モノマー成分として、3価以上のアルコール及び/または3価以上のカルボン酸を用いた架橋構造を有する樹脂を使用したトナーが、特開昭54−86342、特開昭56−1952、特開昭56−21136、特開昭56−168660、特開昭57−37353、特開昭58−14146、特開昭59−30542、特開昭61−105561、特開昭61−105563、特開昭61−124961、特開昭61−275769号公報などで提案されている。しかし、これらの樹脂を使用したトナーにおいても多価アルコールまたは多価カルボン酸の樹脂中における配合量が30モル%以下の場合には、架橋反応が十分に進行せず、オフセット防止効果は不十分である。また30モル%よりも多く配合した場合には、オフセット防止効果は認められる。しかし、未反応のアルコール性水酸基やカルボン酸のカルボニル基が残存し易く、トナーの耐湿性が大幅に低下するという問題点を有している。また、架橋反応が進み樹脂の溶融開始温度が上昇するためトナーの最低定着温度も上昇し、低温定着には有用ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来のトナーが有する課題を解決し、低温定着性に優れ、かつオフセット防止効果に優れた良好な定着性を有し、更に現像特性が優れた静電荷像現像トナーが得られる樹脂組成物を提供することにある。また、該結着樹脂を用いた静電荷像現像トナーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、スチレン系樹脂と脂肪族系モノマー成分で構成された架橋ポリエステルとからなり、スチレン系樹脂の存在下で架橋ポリエステルを合成することにより、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有し、該構造体はスチレン系樹脂の重量比が架橋ポリエステルより多いことを特徴とする静電荷像現像トナー用樹脂組成物である。
また、本発明は上記樹脂組成物を含有した静電荷像現像トナーである。
【0007】
前記本発明の樹脂組成物は、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有するため、これまで難しいとされてきたスチレン系樹脂と架橋ポリエステルとの分散を均一に行える。その分散は分子レベルにまでおよぶものである。分子レベルまでの分散を行うことにより、スチレン系樹脂と架橋ポリエステルの持つ長所を損なうこと無く複合化した樹脂組成物が得られる。
通常2種以上の高分子を複合化する場合、所望の性質を引き出すために相溶性が問題になる。互いの持つ性質のちょうど中間の性能を発揮させたい時は、両者を均一相溶させるのが通常の複合化の手段である。均一混合しない高分子同士を用いるときは、一般に相溶化剤を用いる。
スチレン系樹脂と架橋ポリエステルとの複合化においても、従来は相溶化剤を添加し通常の複合化手段(混合、混練など)を行うことによって両者の相溶性の向上を試みられていたが、トナー用樹脂に必要な特性を満足するほどの均一な分散状態は得られていない。これはトナー粒子が通常20μm以下の微粒子であるためである。また、トナーは静電記録法、静電印刷法などにより画像を形成するため、その電気的性質が特に重要である。そのため、相溶化剤の様な異種のものがトナー中に混入する事は帯電特性的に好ましくない。
本発明の複合化された樹脂組成物における分散状態は、スチレン系樹脂と架橋ポリエステルとを別々に製造してから複合化を行っても得られない。本発明の樹脂組成物は、どちらか一方を合成する際に他方を存在させてはじめて得られる分散状態である。本発明においてはスチレン系樹脂を先に合成してから後に、架橋ポリエステルをスチレン系樹脂の存在下で合成することが必要である。これは、ポリエステルが架橋反応を起こす際にその架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込ませるためである。
【0008】
本発明において、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体が有する分子レベルでの分散状態は、一般に相互侵入網目法(Interpenetrating Polymer Networks、以下IPNと略す)と呼ばれる。これは分子レベルでの相溶化法の一つであり、その製造法は様々であるが、一成分の網目中に他成分を取り込んだ構造になっている事がIPNの特徴である。
このIPNとは、「ポリマーアロイ 基礎と応用」、高分子学会編、1981、東京化学同人、P.338で述べられているように、高分子網目の人為的重なり合いを利用したポリマーブレンドの一種であり、本発明のようにスチレン系樹脂と架橋ポリエステルとをIPN化する場合、「架橋ポリエステル網目中をスチレン系樹脂が貫く構造」を完全なIPN化と呼ぶが、一般に認められているように、スチレン系樹脂と架橋ポリエステルとがミクロ相分離し電子顕微鏡観察でそれぞれの相が確認できるIPN(相分離IPN)、スチレン系樹脂と架橋ポリエステルとが部分相溶し単一のブロードな挙動を示すIPN(部分IPN)などの構造も本発明に有効である。
なお、この場合の単一のブロードな挙動とは、スチレン系樹脂および架橋ポリエステルの両者固有の特性、例えばガラス転移点(以下Tgという)については両者がIPN化された場合、2つの固有のTgのピークとして発現するのではなく、両者のTgが複合化されたなだらかな1つのピークとして発現する状態をいう。
本発明の樹脂組成物において、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体は、その樹脂の構造がスチレン系樹脂の長い「ひも」に架橋ポリエステルが数珠状に連なると予想される。
本発明においては、静電荷像現像トナーに特に低温定着性が要求される場合は、スチレン系樹脂として分子量分布の狭いものを選択し、その重量比は架橋ポリエステルよりも多くすることが必要である。これは、トナー粒子中に低温定着に寄与する分子量分布の狭いスチレン系樹脂を多く含有させるためである。
更に低温定着性が要求される場合は、架橋ポリエステルを構成するモノマー成分として脂肪族系のものを選択する事が必要である。このときモノマー成分のメチレン鎖長を伸ばす、芳香族環を水添する等の通常考えられる手段も有効である。
【0009】
本発明の樹脂組成物の構造は、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体が主成分でなくてはならない。スチレン系樹脂と架橋ポリエステルとをIPN化する際は、スチレン系樹脂と架橋ポリエステルとの挙動として、スチレン系樹脂が架橋網目に取り込まれる、あるいはスチレン系樹脂の反応点(スチレン以外の部分に由来するものなど)と架橋ポリエステルとが反応する等が推測できる。しかし、IPN化時にスチレン系樹脂と架橋ポリエステルとの反応が多数起こると、それはIPN化ではなく単なるスチレン系樹脂の架橋である。これではスチレン系樹脂の持つ低温定着への効果が少なくなる。
そのため、本発明の樹脂組成物ではスチレン系樹脂の反応点は少ない方がよい。具体的には、架橋ポリエステル製造時にエステル結合形成する可能性のあるスチレン系樹脂の酸価と水酸価の合計が500KOHmg/g未満であることが好ましい。本発明では架橋用樹脂がポリエステルであるため、スチレン系樹脂の酸基、水酸基等が、架橋用ポリエステルとの反応点となるためである。
スチレン系樹脂の酸価、水酸価の合計が500KOHmg/gよりも多い場合は、そのスチレン系樹脂はIPN化時の反応性が高すぎ、本発明が目的とするIPN化構造をとることが難しくなる。
なお、上記スチレン系樹脂の酸価および水酸価は、JISK0070に準じて測定することができる。
本発明の樹脂組成物は、スチレン系樹脂のスチレン以外の部分が架橋ポリエステルと相溶していることが好ましい。相溶性を知る目安としては、顕微鏡観察、屈折率および示差走査熱量計(以下、DSCという)によるTgの測定などがある。DSCによるTgの測定は、簡便でnmオーダーの相溶性についても判別できるとされている。(「ポリマーアロイ 基礎と応用」、高分子学会編、1981、東京化学同人、P.136参照)
このDSCによるTgの測定においては、樹脂組成物を測定したとき前記で述べた単一のブロードな挙動を示す場合にスチレン系樹脂のスチレン以外の部分と架橋ポリエステルとの両者の相溶性が優れているといえる。
本発明でいうスチレン系樹脂とは、スチレンモノマーのホモポリマーであるポリスチレンおよびスチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂を総称していうものである。この場合のスチレンモノマーと共重合し得るモノマーとは、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらのエステル化物、酢酸ビニル、アリルアルコール等のビニル系モノマー、マレイン酸、ブタジエン等が挙げられるが、これらを組み合わせてもよく、また、これらに限定されるものではない。
また、ポリスチレンまたはスチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用して使用してもよい。
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、DSCで測定したTgが50℃以上、フローテスターで測定したフロー軟化点が70℃以上であることが望ましい。この場合、Tgが50℃より低いとトナーの保存安定性が低下し、またフロー軟化点が70℃より低いとトナーの保存安定性が低下し好ましくない。
【0010】
本発明で使用される架橋ポリエステルとしては、ジオール成分と、ジカルボン酸またはその低級アルキルエステルまたはその無水物と、ポリオールまたはポリカルボン酸またはその無水物またはその低級アルキルエステルとを主成分とする組成物を縮重合させたポリエステル樹脂が特に好ましい。
ジオール成分としては、次の化合物が例示される。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、オクタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、スピログリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等。
ジカルボン酸としては次の化合物が例示される。フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、メサコニン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イミノジカルボン酸等およびこれらの無水物、およびこれらの低級アルキルエステル等が使用できる。この中でもドデカンジカルボン酸に代表されるような炭素数6以上のアルキルまたはアルケニルジカルボン酸等、脂肪族系の成分が特に有用である。
ポリオールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセロール等が例示される。
ポリカルボン酸としては、次の化合物が例示される。ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、およびこれらの無水物、およびこれらの低級アルキルエステル等が使用できる。
【0011】
架橋ポリエステル中におけるジオール成分、ジカルボン酸またはその無水物またはその低級アルキルエステルおよびポリオールまたはポリカルボン酸の配合比は、任意に変えることができる。
また架橋ポリエステルは、単独で架橋ポリエステルのモノマーを重縮合して得た樹脂の熱的性質が、DSCで測定したTgが100℃以下、フローテスターで測定したフロー軟化点が180℃以下であることが望ましい。
本発明では、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有しているため、架橋ポリエステルの樹脂成分についてはTgが室温以下でも良いが、このとき同時に複合化に用いるスチレン系樹脂のTgが高いかあるいは配合比がスチレン系樹脂の方が多い場合が低温定着性に好ましい。
前記フロー軟化点の測定は、島津製作所製高架式フローテスターCFT−500Cを用いて、以下のようにして行うことができる。
50〜80℃に予備加熱された、面積がほぼ1cm2のシリンダー中に樹脂ペレットを入れる。このシリンダーの底部には直径1mm、長さ1mmのノズルが設けられている。20KgFの荷重をかけた面積1cm2のプランジャーを樹脂ペレットの上部にセットする。シリンダー内の樹脂ペレットを昇温速度6℃/minで加熱し、軟化した樹脂をノズルから排出する。プランジャーの下降開始を溶融開始温度とし、プランジャーの下降開始からプランジャーがシリンダー底部に至る距離の1/2に達した時点での温度をフロー軟化点とした。
【0012】
本発明の静電荷像現像トナーは、前記架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有してなる樹脂組成物中に着色剤、電荷制御剤、必要に応じて磁性粉等を分散混合し、熱溶融混練の後粉砕して製造する。
着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、キノリンイエロー、マラカイトグリーン、ランプブラック、ローダミン−B、キナクリドン等が例示される。通常樹脂に対して1〜20重量%が添加される。
電荷制御剤としては、正帯電用と負帯電用とがある。正帯電用としては、ニグロシン染料、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジン等が例示される。また、負帯電用としては、クロム錯体、鉄錯体等が例示される。これらの電荷制御剤は、樹脂組成物に対し通常0.1〜10重量%添加される。
また、本発明の静電荷像現像トナーは、前記樹脂組成物以外の樹脂、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を含有させてもよい。
【0013】
【実施例】
以下本発明を合成例、実施例に基づいてより詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
(a−1)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂として、スチレンモノマー50モル%、メタクリル酸モノマー25モル%およびアクリル酸ブチルモノマー25モル%を共重合した樹脂を用いた。
このスチレン系樹脂のTgは60℃、溶融開始温度は86℃、フロー軟化点は105℃で、数平均分子量は4000であった。
(b−1)架橋ポリエステル
架橋ポリエステルを合成するためのモノマーとして、ポリエチレングリコール(分子量200、水酸価558KOHmg/g)とブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸とを使用した。
但し、該架橋ポリエステルは下記に述べるようにスチレン系樹脂の存在下で合成し、スチレン系樹脂との複合化をおこなった。
(c−1)スチレン系樹脂と架橋ポリエステルの複合化
前記(a−1)に記したスチレン系樹脂100重量部を攪拌機、コンデンサーおよび窒素導入管を備えた4つ口丸底フラスコに入れ、窒素ガス導入管から窒素ガスを導入しながら140℃に加熱攪拌した。スチレン系樹脂が均一溶融した後、4つ口丸底フラスコ内にポリエチレングリコール10重量部とブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸5.8重量部(ポリエチレングリコールの水酸価に対してブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸の酸価が等モルになる量)および触媒としてジブチル錫オキシド0.001重量部を添加した。その後160℃で2時間、180℃で2時間加熱攪拌した。
そして溶融状態で取り出し、本発明の架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有してなる樹脂組成物を得た。
樹脂の物性を測定したところ、Tgが1つのピークとして発現しその値が58℃、溶融開始温度が90℃、フロー軟化点が122℃であった。
(d−1)静電荷像現像トナーの作製
前記(c−1)の樹脂組成物 100重量部
カーボンブラック 5重量部
(三菱化成社製、商品名:MA−100)
ニグロシン染料 2重量部
(オリエント化学工業社製、商品名:ボントロンN04)
上記配合からなる混合物を二軸混練機を用いて約150℃で溶融混練した。該溶融混合物を冷却した後、粉砕、分級して平均粒子径8.5μmの負帯電性トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に疎水性コロイダルシリカ0.5重量部を外添して本発明の静電荷像現像トナーを得た。
この静電荷像現像トナーのTgは58℃、溶融開始温度は95℃、フロー軟化点は130℃であった。
【0014】
<実施例2>
(a−2)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂として、スチレンモノマー70モル%とアリルアルコール30モル%とを共重合した樹脂を用いた。
このスチレン系樹脂のTgは65℃、溶融開始温度は84℃、フロー軟化点は99℃で、数平均分子量は3000であった。
(b−2)架橋ポリエステル
前記実施例1と同様のモノマー組成のものを使用した。
(c−2)スチレン系樹脂と架橋ポリエステルの複合化
(a−1)の代わりに前記(a−2)に記したスチレン系樹脂を用いる以外は実施例1と同様の製造方法により本発明の架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有してなる樹脂組成物を得た。
そしてこの樹脂の物性を測定したところ、Tgが1つのピークとして発現しその値が63℃、溶融開始温度が89℃、フロー軟化点が124℃であった。
(d−2)静電荷像現像トナーの作製
前記(c−2)の樹脂組成物 100重量部
カーボンブラック 5重量部
(三菱化成社製、商品名:MA−100)
ニグロシン染料 2重量部
(オリエント化学工業社製、商品名:ボントロンN04)
上記配合からなる混合物を二軸混練機を用いて約150℃で溶融混練した。該溶融混合物を冷却した後、粉砕、分級して平均粒子径8.5μmの負帯電性トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に疎水性コロイダルシリカ0.5重量部を外添して本発明の静電荷像現像トナーを得た。
この静電荷像現像トナーのTgは63℃、溶融開始温度は93℃、フロー軟化点は127℃であった。
【0015】
<実施例3>
(a−3)スチレン系樹脂
Tgが84℃、溶融開始温度が112℃、フロー軟化点が132℃および数平均分子量が3700のポリスチレンと、前記実施例2のスチレン系樹脂とを用いた。
(b−3)架橋ポリエステル
前記実施例2と同様のモノマー組成のものを使用した。
(c−3)スチレン系樹脂と架橋ポリエステルの複合化
実施例2において、ポリスチレンを24重量部添加し、かつ(a−2)のスチレン系樹脂を96重量部とした以外は同様の製造方法により本発明の架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有してなる樹脂組成物を得た。
そしてこの樹脂の物性を測定したところ、Tgが1つのピークとして発現しその値が65℃、溶融開始温度が88℃、フロー軟化点が126℃であった。
(d−3)静電荷像現像トナーの作製
前記(c−3)の樹脂組成物 100重量部
カーボンブラック 5重量部
(三菱化成社製、商品名:MA−100)
ニグロシン染料 2重量部
(オリエント化学工業社製、商品名:ボントロンN04)
上記配合からなる混合物を二軸混練機を用いて約150℃で溶融混練した。該溶融混合物を冷却した後、粉砕、分級して平均粒子径8.5μmの負帯電性トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に疎水性コロイダルシリカ0.5重量部を外添して本発明の静電荷像現像トナーを得た。
この静電荷像現像トナーのTgは64℃、溶融開始温度は92℃、フロー軟化点は130℃であった。
なお、上記の実施例1〜実施例3における各成分の組成と物性値を表1にまとめて示した。
【0016】
【表1】
【0017】
<比較例1>
実施例1のスチレン系樹脂 100重量部
カーボンブラック 5重量部
(三菱化成社製、商品名:MA−100)
ニグロシン染料 2重量部
(オリエント化学工業社製、商品名:ボントロンN04)
上記配合からなる混合物を二軸混練機を用いて約150℃で溶融混練した。該溶融混合物を冷却した後、粉砕、分級して平均粒子径8.5μmの負帯電性トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に疎水性コロイダルシリカ0.5重量部を外添して比較用の静電荷像現像トナーを得た。
この静電荷像現像トナーのTgは60℃、溶融開始温度は88℃、フロー軟化点は103℃であった。
<比較例2>
実施例2で使用したポリエチレングリコール(分子量200、水酸価558KOHmg/g)10重量部とブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸5.8重量部(ポリエチレングリコールの水酸価に対してブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸の酸価が等モルになる量)および触媒としてジブチル錫オキシド0.001重量部を攪拌機、コンデンサーおよび窒素導入管を備えた4つ口丸底フラスコに入れ、窒素ガス導入管から窒素ガスを導入しながら160℃に加熱攪拌した。この160℃で2時間加熱攪拌した後、180℃で2時間加熱攪拌し架橋ポリエステル樹脂を得た。
実施例2のスチレン系樹脂 100重量部
上記の架橋ポリエステル樹脂 10重量部
カーボンブラック 5重量部
(三菱化成社製、商品名:MA−100)
ニグロシン染料 2重量部
(オリエント化学工業社製、商品名:ボントロンN04)
上記配合からなる混合物を二軸混練機を用いて約150℃で溶融混練した。該溶融混合物を冷却した後、粉砕、分級して平均粒子径8.5μmの負帯電性トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に疎水性コロイダルシリカ0.5重量部を外添して比較用の静電荷像現像トナーを得た。
この静電荷像現像トナーのTgは57℃、溶融開始温度は110℃、フロー軟化点は132℃であった。
【0018】
実施例1〜3および比較例1〜2で製造した静電荷像現像トナーとフェライトキャリアー(パウダーテック社製、商品名:FL−96−2030)を5/95の重量比で混合して二成分現像剤を製造した。
次に上記の各二成分現像剤を用いて三洋電機社製SFT−Z133複写機で未定着画像を撮像した後、テフロン表面コートした定着ローラと、シリコーンゴムで表面被覆した圧着ローラからなる定着器を用いてトナー像を上質紙に熱定着した。このとき定着ローラの表面温度は130±5℃、線速度は200mm/秒とした。
次に定着画像に対して綿パッドによる摺擦を施し、下記式によって定着強度を算出し、低エネルギー定着性の指標とした。画像濃度はマクベス反射濃度計RD−914により測定した。
【数1】
また、前記各二成分現像剤、複写機を使用し、該複写機の定着ローラの表面温度(線速度は200mm/秒)を段階的に変化させて定着画像を撮像し、各表面温度におけるオフセット現象の発生の有無を目視で確認して非オフセット温度領域を評価した。なお、前記非オフセット温度領域の最大値と最小値の差を非オフセット温度幅とした。
前記定着強度、非オフセット温度領域および非オフセット温度幅の評価結果を表2に示した。
【0019】
【表2】
【0020】
表2の評価結果から明かなように本発明の樹脂組成物から製造された静電荷像現像トナーは、定着ローラの表面温度が130℃という低温度にもかかわらず、定着強度が87%以上という実用上十分な特性を有し、かつ非オフセット温度幅も実用上問題のない範囲であることが確認された。
これに対し、比較用の静電荷像現像トナーでは、130℃では定着できず、非オフセット温度幅も全域にオフセットが発生するか、実施例よりも狭い非オフセット温度幅を有し実用上問題があるものであった。
なお、実施例1〜3で得られた二成分現像剤を市販の複写機を用い10000枚の連続複写を行ったところ、ベタ画像のマクベス反射濃度がいずれも1.4以上であり、かつ非画像部の地カブリは0.1以下であって実用上問題のない画質の画像を得ることができた。
【0021】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物およびそれを用いた静電荷像現像トナーは、低温定着性に優れ、広い温度範囲においてオフセット現象が生じなく、かつ良好な現像特性を奏するものである。
Claims (6)
- スチレン系樹脂と脂肪族系モノマー成分で構成された架橋ポリエステルとからなり、スチレン系樹脂の存在下で架橋ポリエステルを合成することにより、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有し、該構造体はスチレン系樹脂の重量比が架橋ポリエステルより多いことを特徴とする静電荷像現像トナー用樹脂組成物。
- スチレン系樹脂が、ポリスチレンおよびスチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像トナー用樹脂組成物。
- スチレン系樹脂が、スチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像トナー用樹脂組成物。
- 結着樹脂および着色剤を主成分とする静電荷像現像トナーにおいて、該結着樹脂が少なくともスチレン系樹脂と脂肪族系モノマー成分で構成された架橋ポリエステルとからなり、スチレン系樹脂の存在下で架橋ポリエステルを合成することにより、架橋ポリエステルの架橋網目中にスチレン系樹脂を取り込んだ構造体を含有し、該構造体はスチレン系樹脂の重量比が架橋ポリエステルより多いことを特徴とする静電荷像現像トナー。
- スチレン系樹脂が、ポリスチレンおよびスチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂であることを特徴とする請求項4記載の静電荷像現像トナー。
- スチレン系樹脂が、スチレンモノマーと該スチレンモノマーと共重合し得るモノマーとの共重合樹脂であることを特徴とする請求項4記載の静電荷像現像トナー。
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