以下、本発明を実施するための形態について、図1から図17を参照しながら説明する。図1は、エレベータの全体構成を示す斜視図である。図1は、機械室を有していない、いわゆるマシンルームレスタイプのエレベータを例示する。
図1に示すように、エレベータは、昇降路1内に、かご2と、かご2を案内する第1ガイドレール3と、釣合い錘(カウンターウェイト)4と、釣合い錘4を案内する第2ガイドレール5と、かご2と釣合い錘4とを連結するロープ6と、巻上機7とを備える。
さらに、昇降路1の上部には、ロープ6を巻きかけるための返し車8が配置されている。昇降路1の下部には、巻上機7を制御するための制御盤9と、エレベータの速度を調速するための調速機10と、緩衝器11とがさらに設けられている。
エレベータは、制御盤9を介して巻上機7を駆動することにより、かご2を第1ガイドレール3に沿って上下動させる。巻上機7は、トラクションシーブ12を備えるとともに、このトラクションシーブ12を介してロープ6を駆動することにより、かご2を上下動させることができる。
釣合い錘4は、ロープ6を介してかご2に連結されているため、かご2の上下動に応じて、このかご2の動きとは逆に、第2ガイドレール5に沿って上下動する。釣合い錘4がかご2に連結されることにより、巻上機7は、小さな動力で、かご2を上下動させることができる。調速機10は、かご2の上下動の速度が規定以上になったときに、かご2を停止させることができる。緩衝器11は、かご2に接触したときに、その衝撃を緩和することができる。
かご2は、昇降路1を上下動するとともに、建物の各階に設けられる乗場13に停止できる。図1に示すように、かご2は、かご側ドア開閉装置14を備える。乗場13には、かご側ドア開閉装置14に対応するように、乗場側ドア開閉装置15が設けられている。図1には、これらのドア開閉装置14,15の例として、いわゆるサイドオープンタイプのものが示されている。
乗場側ドア開閉装置15は、図1から図4に示すように、第1ドア15Aと、第1ドアに連動する第2ドア15Bと、敷居15Cとを有する。
乗場13には、乗場13における出入口を区画するための枠26が設けられている。本実施形態において、この枠26には、いわゆる三方枠が採用されている。枠26は、図1に示すように、水平方向に沿って設けられる上枠26aと、上下方向に沿って設けられる左右一対の側枠26bとを備える。
図3、図4に示すように、上枠26aには、第1ドア15A及び第2ドア15Bの上部を支持するためのフレーム27が設けられている。フレーム27には、第1ドア15Aを案内するための第1ドアレール28Aと、第2ドア15Bを案内するための第2ドアレール28Bとが設けられている。なお、このフレーム27は、上枠26aに設けられることなく、昇降路1内の壁面にブラケットを介して固定されてもよい。
第1ドア15Aの上部には、第1ドアハンガ29Aが設けられている。第2ドア15Bの上部には、第2ドアハンガ29Bが設けられている。第1ドアハンガ29Aには、第1ドアレール28Aに係合する複数の第1ローラ30Aが設けられている。第2ドアハンガ29Bには、第2ドアレール28Bに係合する複数の第2ローラ30Bが設けられている。
第1ドア15Aは、速度調整機構32を介して第2ドア15Bと連結されている。速度調整機構32は、第1ドア15Aの移動速度が、第2ドア15Bの移動速度の1/2倍となるように、第1ドア15Aの速度を調整(減速)するためのものである。このように、第1ドアAと第2ドア15Bの移動速度が異なることから、移動速度の大きな第2ドア15Bは「ファーストドア」と呼ばれ、移動速度の小さな第1ドア15Aは「スロードア」と呼ばれる。
第2ドア15Bは、第2ドアハンガ29Bの第2ローラ30Bを第2ドアレール28Bに係合させた状態で、かご側ドア開閉装置14側に設けられる駆動機構(図示せず)に駆動されることにより、開閉方向に移動するように構成される。第1ドア15Aは、速度調整機構32を介して第2ドア15Bと連結されていることから、第1ドアハンガ29Aの第1ローラ30Aを第1ドアレール28Aに係合させた状態で、第2ドア15Bと連動して、開閉方向に移動するように構成されている。
図3に示すように、敷居15Cは、昇降路1の壁面に設けられる支持フレーム31に支持されている。敷居15Cは、ボルト及びナットからなる締結手段33により、支持フレーム31に固定されている。
敷居15Cは、第1ドア15A及び第2ドア15Bの開閉方向に沿って所定の長さを有する長尺状に構成される。図3に示すように、敷居15Cは、第1ドア15Aを案内するための第1溝部35Aと、第2ドア15Bを案内するための第2溝部35Bとを有する。第1溝部35Aと第2溝部35Bは、敷居15Cの長手方向に直交する方向(以下「敷居の幅方向」という)において、所定の間隔をあけて離れて形成されている。
図2、図5から図7に示すように、第1溝部35Aは、敷居15Cの上部152に形成されている。第1溝部35Aは、上方に向かって開口するように(上方開口状に)構成されている。第1溝部35Aは、図5、図6に示すように、敷居15Cにおける長手方向の端部153aから敷居15Cの中途部にわたって直線状に形成されている。
図5から図7に示すように、第2溝部35Bは、敷居15Cの下部154に形成されている。第2溝部35Bは、下方に向かって開口するように(下方開口状に)形成されている。第2溝部35Bは、敷居15Cの一端部153aから他端部153bにわたって直線状に形成されている。したがって、第2溝部35Bは、第1溝部35Aよりも長くなっている。
第1ドア15Aは、敷居15Cの第1溝部35Aに係合するとともに当該第1ドア15Aを案内するための第1案内部(ガイドシュー)41Aと、第1案内部41Aを支持する第1支持部(ブラケット)42Aとを備える。
第1案内部41Aは、例えばゴム等の合成樹脂材料によって形成される弾性体である。第1案内部41Aは、長尺状の板部材として構成される。
第1支持部42Aは、金属製であり、敷居15Cの長手方向に沿って長い、長尺状の板形状に構成される。図3に示すように、第1支持部42Aは、第1案内部41Aと第1ドア15Aの下部150Aとを連結している。
第2ドア15Bは、敷居15Cの第2溝部35Bに係合するとともに当該第2ドア15Bを案内するための第2案内部(ガイドシュー)41Bと、第2案内部41Bを支持する第2支持部(ブラケット)42Bとを備える。
第2案内部41Bは、第1案内部41Aと同様に、例えばゴム等の合成樹脂材料によって形成される弾性体である。第2案内部41Bは、長尺状の板部材として構成される。
第2支持部42Bは、金属製であり、敷居15Cの長手方向に沿って長い、長尺状の板形状に構成される。第2支持部42Bは、例えば、プレス成形によって所定の形状に成形される。図3に示すように、第2支持部42Bの一端部は、取付部材44を介して第2ドア15Bの下部150Bの背面側に固定される。第2支持部42Bの他端部には、第2案内部41Bが一体に形成されている。
上述したように、敷居15Cは、通常時において、締結手段33を介して、乗場13に設けられる支持フレーム31に支持されている。しかしながら、例えば地震の発生等によって、昇降路1が大きく振動した場合には、締結手段33による締結が緩み、そして、支持フレーム31の位置がずれること等の要因により、敷居15Cの位置が、昇降路1内で上下方向に大きくずれることが想定される。
この点に関し、以上説明したエレベータの乗場側ドア開閉装置15によれば、第1ドア15Aの第1案内部41Aが敷居15Cの第1溝部35Aに係合することから、敷居15Cが上方にずれようとする場合に、大きな位置ずれが生じないように、この第1案内部41Aが敷居15Cを係止することになる。また、第2ドア15Bの第2案内部41Bが、敷居15Cの第2溝部35Bに係合することから、敷居15Cが下方にずれようとする場合に、大きな位置ずれが生じないように、第2案内部41Bが敷居15Cを係止することになる。
また、第1溝部35Aの長さが第2溝部35Bの長さよりも短くされていることから、上方開口状に構成される第1溝部35Aに入る塵芥等の異物の量を可及的に低減できるようになる。
なお、本発明に係るエレベータのドア開閉装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るエレベータのドア開閉装置は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係るエレベータのドア開閉装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、敷居15Cについては、上記の実施形態に限らず、以下のように、種々の変更・変形が可能である。
図8、図9は、敷居15Cの他の例を示す。本例における敷居15Cでは、第1溝部35Aの構成が図5から図7の例とは異なる。上述した図5から図7の例では、第1溝部35Aは、敷居15Cの端部153aから中途部にわたって形成されていた。すなわち、第1溝部35Aの一端部は、敷居15Cの端部153aに達するように形成されていた。これに対し、図8、図9に示す本例では、第1溝部35Aの一端部は、敷居15Cの端部153aに達していない。すなわち、第1溝部35Aは、敷居15Cの中途部に所定の長さで形成されている。
図10、図11は、敷居15Cの他の例を示す。上述した図5から図7の例では、敷居15Cは、2枚のドア、すなわち、第1ドア15Aと第2ドア15Bとを案内するように構成されていた。これに対し、図10及び図11に示す本例では、3枚のドアを案内するように構成される。すなわち、本例に対応する乗場側ドア開閉装置15は、第1ドア15A、第2ドア15Bの他、これらのドアと連動する第3ドア(図示せず)を備える。
敷居15Cは、図10、図11に示すように、第1ドア15Aを案内するための第1溝部35Aと、第2ドア15Bを案内するための第2溝部35Bと、第3ドアを案内するための第3溝部35Cとを有する。
第1溝部35A、第2溝部35Bは、図5から図7に示す例と同じ構成である。第3溝部35Cは、図11に示すように、敷居15Cの上部152に上方開口状に形成される。第3溝部35Cは、敷居15Cの幅方向において、第1溝部35Aと第2溝部35Bとの間に形成されている。第3溝部35Cは、第2溝部35Bと同様に、敷居15Cの端部153aから中途部にわたって直線状に形成されている。第2溝部35Bは、図10に示すように、第1溝部35Aよりも長く、第2溝部35Bよりも短くなっている。
なお、本例に係る乗場側ドア開閉装置における第3ドアは、第3溝部35Cに係合する第3案内部と、第3ドアの下部に固定されるとともに第3案内部を支持する第3支持部とを備える。
図12、図13は、敷居15Cの他の例を示す。本例における敷居15Cは、図10、図11の例と同様に、第1溝部35A、第2溝部35B、及び第3溝部35Cを有する。本例では、第1溝部35Aと第3溝部35Cの構成が、図10、図11の例とは異なる。図10、図11の例では、第1溝部35Aの端部、及び第3溝部35Cの端部が、敷居15Cの端部153aまで達している。これに対し、図12、図13に示す本例では、第1溝部35Aの端部及び第3溝部35Cの端部は、敷居15Cの端部153aに達していない。
図14、図15は、敷居15Cの他の例を示す。本例における敷居15Cは、いわゆるセンターオープンタイプの乗場側ドア開閉装置に用いられるものである。本例に対応する乗場側ドア開閉装置(図示せず)は、2枚の第1ドアと、2枚の第2ドアの合計4枚のドア(4CO)を備える。
敷居15Cは、2枚の第1ドアが係合する2つの第1溝部35A,35A、及び2枚の第2ドアが係合する1つの第2溝部35Bを有する。2つの第1溝部35A,35Aのうち、一方の第1溝部35Aは敷居15Cの一端部153a側に形成され、他方の第1溝部35Aは敷居15Cの他端部153b側に形成されている。各第1溝部35Aの端部は、敷居15Cの各端部153a,153bに達するように形成されている。なお、第2溝部35Bは、図5から図7の例と同じ構成である。
図16、図17は、敷居15Cの他の例を示す。本例に係る敷居15Cは、図14、図15の例と同様に、2つの第1溝部35A,35Aと、1つの第2溝部35Bとを有する。本例では、2つの第1溝部35A,35Aの構成が、図14、図15の例とは異なる。図14、図15の例では、各第1溝部35Aの端部が、敷居15Cの各端部153a,153bに達するように形成されていたが、本例では、各第1溝部35Aの端部は、敷居15Cの端部153a,153bに達していない。
また、上記の実施形態では、乗場側ドア開閉装置15に対して、本発明を適用した例を示したが、かご側ドア開閉装置14に対しても本発明を適用可能である。